教科「数学」と「情報」の関わりに関する研究
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(2) はじめに 現在,社会の情報化が進む中で,教育現場においても情報化が進展している。その1 つが今年度より,高等学校で必修教科となった教科「情報」の新設である。新教科「情 報」のねらいは,「情報活用の実践力」を深化・定着させるとともに,「情報の科学的 な理解」と「情報社会に参画する態度」の育成である。こうした主旨から「情報」は,. コンピュータに関わる教材がその主要な内容となっており,その設立によって,「数. 学」ではコンピュータを扱う内容が大きく軽減され,数学とコンピュータが密接に関 係しているという意識が教育現場において薄れるのではないかと危惧される。しかし,. 学習指導要領でも,「情報」の指導計画の作成にあたっての配慮事項として,r中学校 での学習の程度を踏まえるとともに,情報科での学習が他の各教科・科目等の学習に 役立つよう,他の各教科・科目等との連携を図ること」を挙げており,特に「情報」 には,「数学」に関わる内容が少なからずあるので,それらと「数学」との関係及び, それらをどのように.「数学」に活かすかを検討していく必要がある。. また,今まで「数学」において,コンピュータに関する内容は,学習指導要領に含 まれているにも拘わらず,それを実施している高校は非常に少ないように感じられる。. その理由として,「コンピュータの利用に関する学校の環境が整っていない」,「生徒. にコンピュータの扱い方を教えなければならず,その指導に時間が割かれてしまうの で,「数学」の内容を教える時間が削減される」などが考えられる。しかし,必修教科. として「情報1が設立されたことにより,どの学校にもコンピュータの設備が整い,. コンピュータの扱い方も「情報」において学習するので,上記のような事情は解決さ れ,「数学」でもコンピュータに関する内容が扱いやすくなる。コンピュータを利用し た「数学」の学習は,生徒に及ぽす視覚的効果が黒板よりも優れており,「生徒が数理 的現象を直観的に理解できる」,「生徒が主体的に「数学」を学ぶ態度を育成すること が期待できる」などの理由から,非常に有意義であると思われる。 そこで,「情報」で学習した内容を高校の数学学習にどのように活用すれば,生徒の 学習内容の理解を促す,もしくは,支援することができるかを検討・考察することを目的 として本研究に取り組んだ。. 2003年12月. 高田 政和.
(3) 目次. はじめに. 第1節 新教科「情報」の概要および学校・家庭の情報環境 …・……… 1 「情報」の新設の経緯 ・………………・・……………… 2 情報環境の現状 …・……・………・………………。●●・9 (1)学校へのコンピュータ・インターネットの普及 …・…・……・. (2)家庭へのコンピュータ・インターネットの普及 ……………. 第2節 本研究の目的と本論文の構成 ……・……・……・………… 1 研究の目的 ………・………・・…・…………・…・…… 2 論文の構成 ………・……・…・・…・…・……・・…・……. 111. 第1章 教科「情報」の新設と本研究の目的 ・・………………… ……. 第2章 新教科「情報」と「数学」 ………・………… ……………12 第1節 「情報」の目標 …・……………… ……………・…・・…13 第2節 「情報」の内容 ……・…・………・……・……・……・・…15. 1 情報A …・…・…………・……………・_・..___15 2 情報B ・…・……………・……………・…… ………16 3 情報C …・・……………・…・・……………・……・…18 第3節 「数学」と「情報」の関わり ・………………… …………21. 第3章 数学学習におけるインターネットの活用 ・…………・……9…・23 第1節. 数学学習におけるWebサイトの活用 ……・……・……………24 1.インターネットによる学習形態の変化 ・……………・…・…24 2。数学学習における活用 ・…・……………・・…………・……24. 3,Webサイト利用の留意点 ・…………・……・……………31. 第2節 E−Mai1,BBSの活用 ……・・…………・……・・…………… 34 1.E−Mai1の活用 …・・……………・……………・…・・…34 2.BBSの活用 ………・………… …………・……・…・・35 第4章 ソフトウェアの利用 …………・…・・……………・…・・……37. 第1節表計算ソフトウェアの利用・……………・…・……………938.
(4) 第2節フリーソフトウェアの利用 ……………●●●●●。”●●●●●●●●●●●’●043. 第5章 モデル化とシミュレーション ・……・…………・・………・…47 第1節 「数学的モデリング」と「モデル化とシミュレーション」 ……・・48 L数学的モデリング ……………。・●●●●。。●●●●●’●●。●●●’●●●。●’。48. 2.モデル化とシミュレーション ・・………………・…………52. 第2節プログラミング・・………………・…・・……………・…61 Lプログラミングの教科書での扱い ・……・…………・・…・…61. 2.数学の問題解決活動との関わり …… ………・…・・……・…61. 第6章 本研究のまとめと今後の課題 ……・・…………… …………67. 第1節 本研究のまとめ ……・……・……・……………………68 1,各章のまとめ …………・……・・………・……・…・・…68 2.全体のまとめ ・……・…………・一”●●…。”9−○’’”●●●’●●71 第2節 今後の課題 ………・…・……o●・・…●●’●●●。●●。。●””●●●。“72. おわりに …・……・………・…………・…・…・………・………73 引用・参考文献 …・…………・…・……・…・………・………・…74 引用・参考Webサイト …・…………・…・……・…・………・……76.
(5) 第1章. 新教科r情報」の新設と本研究の目的 本章では,まず,「情報」が開設された経緯,および,学校と家庭の情報環境の現状 について述べる。次に,本研究の目的と本論文の構成について述べる。. 第1節 新教科r情報」の概要および学校・家庭の情報環境. 1.「情報」の新設の経緯 2.情報環境の現状 (1)学校へのコンピュータ・インターネットの普及. (2)家庭へのコン』ピュータ・インターネットの普及. 第2節 本研究の目的と本論文の構成. 1研究の目的 2.論文の構成. 1.
(6) 第1節 新教科「情報」の概要 近年,社会は急速に情報化しており,社会の中で正しく情報を活用する能力が非常 に重要となっている。そのため,教育においても,情報に関する知識・技能を習得さ. せ,情報化社会に対応できる生徒を育てることが必要となってきた。そして,情報に 関する知識・技能を教育する教科として「情報」が設立されたのである。. 1.「情報」の新設の経緯 平成8年7月に,中央教育審議会はr21世紀を展望した我が国の教育の在り方にっ いて」と題する答申を行った。その中で,情報化が進む社会で,教育に何が必要であ. るかに関して,以下の4点を示した。 ①情報教育の体系的な実施. ②情報機器,情報通信ネットワークの活用による学校教育の質的改善 ③高度情報通信社会に対応するr新しい学校」の構築 ④情報社会の「影」の部分への対応. 上記の事柄を踏まえ,平成9年10月に,情報化の進展に対応した初等中等教育にお ける情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議は,第1次報告「体系的な情報教 育の実施に向けて」(以下,「第1次報告」と略す)をまとめ,体系的な情報教育につい. ての提言を行った。その中で,情報教育の目標を次の3つの観点から整理している。. ①課題や目的に応じて情報手段を適切に活用することを含めて,必要な 情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し,受け羊の状況などを 踏まえて発信・伝達できる能力(以下,「情報活用の実践力」と略す)。. ②情報活用の基礎となる情報手段の特性の理解と,情報を適切に扱った. り,自らの情報活用を評価・改善するための基礎的な理論や方法の理 解(以下,「情報の科学的な理解」と略す)。. ③社会生活の中で情報や情報技術が果たしている役割や及ぼしている. 2.
(7) 影響を理解し,情報モラルの必要性や情報に対する責任について考え, 望ましい情報社会の創造に参画しようとする態度(以下,「情報社会に 参画する態度」と略す)。. また,第1次報告の中で高等学校については,「高等学校では,普通教育に関する教 科として教科『情報(仮称)』を設置し,その中に科目を複数設定する(いずれも2単位. 程度)。内容としては,『情報の科学的な理解』及び『情報社会に参画する態度』に関. する事項のうち特定の内容に重点を置き,演習,実習を豊富に取り入れた科目や,コ ンピュータ等の情報手段を積極的に活用する科目を設けるなど,選択の幅を確保する ことが望ましい。∫と述べている。. さらに,平成10年7月の教育課程審議会答申では,高等学校については次のように 述べている。. 高等学校においては,情報手段の活用を図りながら情報を適切に判断・分 析するための知識・技能を習得させ,情報社会に主体的に対応する態度を. 育てることなどを内容とする教科「情報jを新設し必修とすることが適当 である。. 以上のような答申や報告を踏まえ,普通教科「情報」が新設されることになった。. この時点において,各学校間の情報環境にば格差があった。そこで,平成11年に政 府は,ミレニアム・プロジェクトを計画し,その中で「教育の情報化」が検討され, 以下のような提案がなされた。. ・2001年度までに,全ての公立小中高等学校等がインターネットに接続 でき,すべての公立学校教員がコンピュータの活用能力を身14つけら. れるようにする。さらに,2002年度には,我が国の教育の情報化の 進展状況を,国際的な水準の視点から総合的に点検するとともに,そ. の成果の国民への周知を図るため,国内外の子供たちの幅広い参加に よる,インターネットを活用したフェスティバルを開催する。. ・2005年度を目標に,全ての小中高等学校等からインターネットにアク. セスでき,全ての学級のあらゆる授業において教員及び生徒がコンピ ュータを活用できる環境を整備する。. 3.
(8) この提案に基づき,ハード面とソフト面の実施施策が進められることとなった。. ハード面の施策等. O公立学校のコンピュータ整備・インターネット接続等 ・全ての公立小中高等学校,盲・ろう・養護学校等(約39,700校)がイン. ターネットに接続できるようにする。[2001年度目標】. ・全ての公立小中高等学校等が,各学級の授業においてコンピュータを活. 用できる環境の整備を行えるようにする。[2005年度目標1. O公立学校の校内LANの整備 ・公立小中高等学校等が,校内ネットワーク(LAN)機能の整備を行えるよ うにする。[2004年度目標】. ソフト面の施策等. ○教員研修の実施. ・全ての公立学校教員(約90万人)がコンピュータの活用能力を身にっけ. られるようにする。[2001年度目標1 O学校教育用コンテンツの開発 ・学習資源を活用した学校教育用コンテンツの開発,成果の普及を図る。. [2005年度目標】. O教育情報ナショナルセンター機能の整備(ポータルサイトに係る研究開 発). ・全国的な視野から教育の情報化を推進する教育情報ナショナルセンター. 機能の整備を目指し,2000年度からポータルサイトの研究,コンテン ツ流通・管理プラットフォーム等の各種開発を行い,サイトを開設する。. 12005年度目標1 これらの実施により,各学校での情報環境は整備され,公立高等学校において,コ ンピュータ設置率およびインターネット接続率は,ほぽ100%(平成14年度)となった。. このことにより,生徒は,学校という身近な場所でコンピュータやインターネットを 活用できるようになった。. 4.
(9) 2.情報環境の現状 (1)学校へのコンピュータ・インターネットの普及. 先に述べたように,ミレニアム・プロジェクトにより,公立学校のコンピュータ整 備・インターネット接続などが急速に進められた。総務省による「通信利用動向調査」 から,実際にその推移を見てみる。表1−1は,各(公立)学校のコンピュータ設置率の推. 移を表したものであり,また,図1−1は,それをグラフ化したものである(生徒が使用. できるコンピュータが1台でもあれば設置されているとする)。グラフが示すように, 以前は,小学校,中学校,高等学校と校種が上がるごとにコンピュータ設置率が高く. なっていたが,現在では,どの校種でも差はほとんどない。また,高等学校は,10年 以上も前から90%以上の設置率である。. 表1−1.(公立)学校の校種別コンピュータの設置率 コンピュータの設置率(%). 学校の種類 正{3年度. H5年度 H7年度. H:9年度. H11年度. 小学校. 41.0. 57.7. 77.7. 90.7. 98.9. 中学校. 74.7. 94.7. 99.4. 99.8. 100.0. 高等学校. 98.5. 99.7. 100.0. 100.0. 100.0. 100. 80 ロ小学校. 60. 口中学校 ■高校. 40. 20. H3年度 H5年度 H7年度 H9年度 H11年度. 図1−1.(公立)学校の校種別コンピュータの設置率. 5.
(10) 次に,表1−2に(教育用のパソコンを保有している)各学校のインターネット接続率を. 表す。また,図1−2は,それをグラフ化したものである。表・グラフが示すように,. 以前は,校種が上がるごとにインターネットの接続率は増加していた。現在では,コ ンピュータ設置率と同様に,どの校種でもほぼ100%である。. 表1・2.(公立)学校の種類別インターネット接続校 インターネット接続校の割合(%). 学校の種類. H10年度. H11年度. H12年度. El3年度. H14年度. 小学校. 27.4. 48.7. 75.8. 97.2. 99.4. 中学校. 42.8. 67.8. 89.3. 99.2. 99.8. 高等学校. 63.7. 80.1. 90.6. 99.1. 99.9. 図1・2.(公立)学校の種類別インターネット接続校. 次に,次頁の表1−3に1(公立)学校当たりの教育用コンピュータ設置台数を表す。ま. た,次頁の図1・3は,それをグラフ化したものである。表・グラフが示すように,校. 種が上がるごとに,コンピュータの設置台数が増加している。小学校は,児童1人1 人がコンピュータを扱うことよりも,何人かのグループでコンピュータを扱うことを. 6.
(11) 目的としているのか,設置台数が他の2校種に比べ少ない。中学校においては,コン. ピュータは,主に「技術・家庭科」で扱うが,技術の教師が’1人なので,コンピュー. タを扱う時間が重複せず,コンピュータの利用できる教室は1部屋で十分という学校. が多いためか,高等学校よりも設置台数が少ない。また,小学校よりも多いのは,グ ループで扱うよりも,個人個人で扱うことのほうが多いからであろう。そのため,コ ンピュータを1クラス分以上は設置する傾向にある。高等学校では,「情報jの新設に. 伴い,コンピュータを設置している教室を複数用意しているため,他の2校種に比べ 設置台数が多い。. 表1・3.1(公立)学校当たりの教育用コンピュータ設置台数 1学校当たりの教育用コンピュータの設置台数(台). 学校の種類. H10年度. H11年度. H12年度. H13年度. H14年度. 小学校. 11.3. 14.1. 16.1. 20.7. 24.4. 中学校. 29.7. 34.1. 35.7. 38.7. 41.6. a)41.1. 71.4. 73.3. 85.9. 94.7. 高等学校. a)普通科のみの高等学校. 100,0. 80.0. □小学校. 60.0. □中学校. ロ高等学校. 40.0. 20.0. 0.0. H10年度 H11年度 H12年度 H13年度 H14年度. 図1−3.1(公立)学校当たりの教育用コンピュータ設置台数. 7.
(12) 以上3つの結果から,ミレニアム・プロジェクトの提案以降,全ての校種において 情報環境の整備が行われ,現在では,ほぼ全ての学校でインターネット接続されたコ ンピュータが使用できる。高等学校では,ミレニアム・プロジェクト以前からほとん どの学校でコンピュータが整備されていたが,これは「家庭」以外にも「数学」にお いてコンピュータを扱う単元があり,そのことを考慮してのことだと考えられる。. (2)家庭へのコンピュータ・インターネットの普及. 前述のように,ここ数年で,学校はコンピュータ・インターネットを使用できる環 境となった。しかし,生徒がコンピュータを自由に使用しようとしたとき,情報教室 の開放時間や設備台数などの制約がある。そこで,生徒がコンピュータを自由に使用. できる場所の侯補として家庭が挙げられる。そこで,総務省による「通信利用動向調. 査」から,家庭でのコンピュータ・インターネットの使用状況について考察する。表 1・4は,世帯におけるパソコン保有率及びインターネット利用率の推移を示したもので あり,享た図1−4は,それをグラフにしたものである。. 表1・4世帯におけるパソコン保有率及びインターネット利用率. パソコン 帯保有率(%). インターネット 帯利用率(%). H10年末. H11年末. H12年末. H13年末. H14年末. 32.6. 37.7. 50.5. 58.0. 71.7. 11.0. 19.1. 34.0. 60.5. 81.4. 1000. 0D. ロパソコン世帯. 0ρ. 保有率 Fl. rl. 0.0. インターネット. の世帯利用率. 00. 0.0. H10年 H11年 H12年 H13年 H14年. 図1−4世帯におけるパソコン保有率及びインターネット利用率. 8.
(13) 図・グラフが示すように,世帯におけるコンピュータの保有率は年々増加しており,. 今後もその増加が続くことが期待できる。これは,パソコンの値段も昔に比べると安 くなり,手に入りやすくなったためと考えられる。インターネットに関しても,コン. ピュータ購入時に接続してくれるサービスなどにより,パソコン初心者でも簡単に接. 続できるようになったため,その接続率は増加の一途をたどっている。もはや,コン ピュータ・インターネットは,一般家庭でも非常に身近なもので,テレビに次ぐメデ ィアになりつっある。したがって,今後,生徒が家庭でコンピュータ・インターネッ トを利用して学習するということは,十分可能になると考えられる。. 9.
(14) 第2節 研究の目的と本論文の構成 1.研究の目的 過去において,コンピュータを利用した学習は非常に少なかった。しかし,学校で コンピュータを学習に利用する適切な指導を行えば,生徒は数学学習にそれを効果的 に利用することができるであろう。例えば,コンピュータは,現在の学習形態(紙と鉛. 筆による学習)では表現できない動的な表現をすることができる。このことを数学教育 者Spicerは,r仮想教具」(virtual manipulatives)と表現し,コンピュータは,見るの. に困難で,イメー・ジが不可能なものを見せるカを持っていると述べている。っまり,. 今までは見ることができず,イメージすることも困難であった内容をコンピュータを 用いて表現することで,生徒はその内容の理解を促されるのである。では,このよう な利点があるにも拘わらず,なぜコンピュータが数学学習に利用されなかったのか。. それは,学校のコンピュータ環境が整っていない,あるいは,生徒にコンピュータを. 使わせようとすると,それを教えるための時間が必要で,数学の内容を教える時問が それに割かれるなどの理由からであった。しかし,前節で述べたように,「情報」の新. 設により,学校の情報環境は整備され,また,生徒が「情報」でコンピュータ操作を 学習するので,「数学」でも十分コンピュータを扱うことができる。また,家庭のコン. ピュータ普及率も年々増加しており,生徒は,今まで以上にコンピュータに触れる機 会が多くなることが予想される。. そこで,本研究では,「情報」で学習した内容を数学学習にどのように活用すれば,. 生徒の学習内容の理解を促す,もしくは,支援することができるかということについ て考察する。. 2.本論文の構成 本論文は,6つの章で構成されている。本章では,「情報」が開設された経緯,およ び,学校と家庭の情報環境の現状にっいて述べ,次に,本研究の目的について述べた。. 第2章では,「情報」の各科目の目標と,r情報」の各科目の内容を述べる。そして,. 本研究の主要なテーマである「数学」と「情報」の関わりについて述べる。. 第3章では,インターネットをどのように「数学」に取り入れれば,生徒の学習に 有効であるかを述べる。. 10.
(15) 第4章では,表計算ソフトウェアとフリーソフトウェアの「数学」への活用にっい て述べる。. 第5章では,数学的モデリングと「情報」のモデル化とシミュレーションの関連に ついての考察,および,数学の問題解決とプログラミングの関わりについて述べる。 第6章では,本論文のまとめと,今後の課題を述べる。. 11.
(16) 第2章 新教科「情報」と「数学」 本章では,まず,「情報」の各科目の目標を述べる。次に,各科目の内容を述べる。. そして,最後に,「情報」の学習内容の中で,数学学習に活用できるものにっいて述べ る。. 第1節 「情報」の目標. 第2節 「情報jの内容 1. 2.. 3.. 情報A 情報B 情報C. 第3節 r数学」と「情報」の関わり. 12.
(17) 第1節. r情報」の目標. 高等学校指導要領解説によれば,「情報」の目標は,以下のように述べられている。. 普通教科「情報」の目標は,「情報化の進展に主体的に対応できる能力と. 態度」を育てることである。言い換えれば,情報教育の3つの観点であ る「情報活用の実践力」,「情報の科学的な理解」,「情報社会に参画する態. 度」をバランスよく育てることである。. このように,3つの観点をバランスよく,特定の観点に偏ることのないように指導 することが,「情報」の指導において重要である。また,第1次報告(p.2参照)を受け,. 教科「情報」は必修教科とされ,「情報Aj,「情報B」,「情報C」の3科目で組織され ており,この中から1科目を選択して履修することになっている。. 中学校段階までに,生徒はコンピュータや情報通信ネットワークなどを活用した 様々な活動をしていると思われる。しかし,中学校段階まででは,学校間でその内容 に大きな格差があり,また,家庭の環境(コンピュータを持っている,持っていない など)によってコンピュータに対する基礎知識の有無などがあるため,コンピュータ. に関する経験の個人差が大きいと考えられる。また,高等学校段階では,生徒の情報 やコンピュータなどについての興味・関心の程度がはっきりしてくると考えられ,そ. れに応じた対応をしていくことも重要である。こうした生徒の経験や興味・関心の多. 様性を考慮し,上記の3科目のうち1科目を選択的に履修できるようにしている。し かし,選択的とは言いながら,開講する科目は教師に委ねられているので,生徒が3 科目から自由に選択できるとは限らない。. 「情報Aj,「情報B」,「情報C」は,次のような性格の違いをもっ。. 「情報A」には,コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報機器を活用する 実習が多く取り入れられている。それらの活動を通して基本的な技能の育成を図り, 「情報活用の実践力」を高めるとともに,活動の具体例を通して,帰納的にr情報の. 科学的な理解」を育成し,体験的にr情報社会に参画する態度」を育成することが「情 報A」の目標である。. 「情報B」の目標は,コンピュータの仕組みやコンピュータを活用した問題解決の 学習を通して,「情報の科学的な理解」を深めていくことである。また,コンピュータ 13.
(18) の機能や仕組みの理解だけにとどまらず1コンピュータを効果的に活用するための考 え方や方法を習得させ,r情報の科学的な理解」を深めるとどもに「情報活用の実践力」. を高めることが重要である。さらに,コンピュータなどで使われている情報技術が社 会の様々な分野で応用されていることを理解させ,情報社会を支える技術の在り方に ついて考えさせることを通して,「情報社会に参画する態度」を育てることも「情報B」 の目標である。. 「情報C」では,情報の表現方法やコミュニケーションについての学習,実際の調 査活動,情報社会の理解を通して,「情報活用の実践力」を高めるとともに「情報社会. に参画する態度」の育成を重視している。また,これらの活動に関連させて,情報機 器や情報通信ネットワークの仕組みや特性などの「情報の科学的な理解」も目指して いる。. このように,「情報A」は,実習に重きを置き,「実践力の育成」を主たる目標とし,. コンピュータや情報通信ネットワークに関する経験が浅い生徒であっても十分履修可. 能な科目になっている。また,「情報B」は,その性格上,プログラミングによるコン ピュータの活用が中心となり,他の2科目よりも「情報の科学的な理解」の促進を主. たる目標とした科目であり,コンピュータに関する基礎知識を持った理系の生徒向け といえる。「情報C」は,情報通信ネットワークの理解を通して,「情報社会に参画す る態度」のより一層の育成を目標とした科目といえる。. 14.
(19) 第2節. 「情報」の内容.. 以下に学習指導要領に見られる各科目の内容の項目を掲げ,そこから考えられる授 業内容を記述する。また,教科書から読み取った「情報」の内容についても考察する。. 1.情報A 学習指導要領には,「情報A」の内容として,以下の項目が掲げられている。. (1)情報を活用するための工夫と情報機器. ア 問題解決の工夫 イ 情報伝達の工夫. (2)情報の収集・発信と情報機器の活用. アイウ. .情報の検索と収集. 情報の発信と共有に適した情報の表し方 情報の収集・発信における問題点. (3)情報の統合的な処理とコンピュータの活用. ア コンピュータによる情報の統合 イ 情報の統合的な処理 (4)情報機器の発達と生活の変化. アイウ. 情報機器の発達とその仕組み 情報化の進展が生活に及ぼす影響 情報社会への参加と情報技術の活用. r情報A」は,1つの授業内容としてWebぺ一ジの作成が考えられる。Webぺ一ジ を作成する際は,まず,自分が発信したいテーマを決め,そのテーマについて情報を. 収集しなければならない。生徒は,情報収集をする際に,すべての情報が正しいとは 言い切れないという問題点や,情報社会の一員として守らなければならないルールな どを体感することができる。また,収集した情報は,ただ羅列するのではなく,ソフ トウェアなどを使用してWebぺ一ジを見る側が理解しやすい形で提示される必要があ 15.
(20) る。このことは,生徒に情報伝達の工夫や情報の統合的な処理を身につけさせる。学 習指導要領解説には,学習活動の例として,表計算ソフトウェアを用いた情報の比較. や図形処理ソフトウェアを利用した作図などが挙げられている。具体的な授業の流れ は,あるテーマに沿って必要な情報をインターネットなどで収集し,それらの情報を. 表計算ソフトウェアなどで利用しやすい形に変え,その変えたものに情報を見る側の ことを考えた処理(誰が見ても内容が理解できるような情報の整理)をソフトウェア などで加える,といった一連の活動を生徒に行わせる。そして,ζ:うした活動を通し て,生徒に情報の扱い方を習得させる。. 「情報A」の教科書は,コンピュータに関する基本的な内容を取り扱っているもの が多く,コンピュータを扱ったことのない生徒にもわかるような教科書となっている。. 授業としては,生徒にコンピュータの扱い方や電子メールの使い方,Webぺ一ジの見 方などの内容で,コンピュータ初心者向けの展開になっている。しかし,各社の教科 書の構成はそれぞれ個性があり,ソフトウェアを中心に扱っているもの,ハードウェ. アについて詳しいもの,携帯電話,ゲーム機などの身の回りにある題材を取り入れた ものがある。. 実際の授業は,コンピPユータに関する経験のない生徒のことを考慮し,電子メール でのやりとりやWebぺ一ジをみる,基本的なソフトウェアを使った文章作成の方法, 表計算ソフトウェアの使用方法などに止まると予想される。. 2情報B 学習指導要領には,「情報Bjの内容として,以下の項目が掲げられている。. (1)問題解決とコンピュータの活用. ア 問題解決における手順とコンピュータの活用 イ コンピュータによる情報処理の特徴 (2)コンピュータの仕組みと働き. ア コンピュータにおける情報の表し方 イ コンピュータにおける情報の処理 ウ 情報の表し方と処理手順の工夫の必要性. 16.
(21) (3)問題ゐモデル化とコンピュータを活用した解決. ア モデル化とシミュレーション イ 情報の蓄積・管理とデータベースの活用. (4)情報社会を支える情報技術. ア 情報通信と計測・制御の技術 イ 情報技術における人間への配慮 ウ 情報技術の進展が社会に及ぼす影響. 「情報B」では,生徒の身近な問題をテーマにして,その問題をどのように解決す るかという授業展開が考えられる。・具体的には,まず生徒に問題を考えさせ解決する. テーマを決めさせる。次にそのテーマのモデル化を行わせ,その問題を解決する手段 を考えさせる(コンピュータを用いたシミュレーションを行うか,行わないかなど)。. そして,コンピュータを用いる場合は,シミュレーションをプログラミングして実行 させる。また,コンピュータを用いた場合とそうでない場合の結果を比較して,コン ピュータシミュレーションの有効性にっいて議論させることも考えられる。このよう. な活動を通して,問題を解決するために必要な情報を判断する力やその情報の収集方 法を生徒に習得させるとともに,プログラミングによるアルゴリズムの理解や学習内 容の理解などを図ることができる。. 「情報B」の教科書は,プログラミングに関する内容が多いと予想していた。しか し,実際に教科書を見ると,プログラミングに関してはあまり触れられていない。こ. れは,新たにプログラミング言語を教えるとなると,授業を受ける生徒がコンピュー タに関する基礎知識を持った生徒に限定されてしまうことを懸念したものと思われる。. そのため,モデル化とシミュレーションに関する内容もシミュレーションまでは行わ ずに,アルゴリズム(手順)までを考えるといった内容のものや,表計算ソフトウェ アを用いたシミュレーションを行う内容の教科書が多い。. 「情報B」は,授業を受ける生徒のコンピュータ経験の程度に,授業内容が大きく 左右される。.つまり,コンピュータ経験の豊富な生徒に対してはプログラミング言語. を教えることが可能なように思われるが,コンピュータ経験のあまりない生徒には授 業内容が上述のような内容に限定されてしまう。そのため,授業内容は,他の2科目. と大差のないものになってしまうので,コンピュータ経験の乏しい生徒が多い学校で. は,教師がこの科目を開設せず,他の2科目から開設する科目を1つ選択したり,他. 17.
(22) の2科目を開設し,そのいずれかを生徒に選択させたりするように思われる(選択的 に履修できるのだが,3科目全てを開設する必要はないため)。. 3.情報C 学習指導要領には,「情報C」の内容として,以下の項目が掲げられている。. (1)情報のディジタル化. アイウ. 情報のディジタル化の仕組み 情報機器の種類と特性 情報機器を活用した表現方法. (2)情報通信ネットワークとコミュニケーション. アイウ. 情報通信ネットワークの仕組み 情報通信の効率的な方法 コミュニケーションにおける情報通信ネット ワークの活用. (3)情報の収集・発信と個人の責任. ア 情報の公開・保護と個人の責任 イ 情報通信ネットワークを活用した情報の 収集・発信 (4)情報化の進展と社会への影響. ア 社会で利用されている情報システム イ 情報化が社会に及ぼす影響. r情報C」では,テーマに沿ったプレゼンテーションを生徒が行うという授業が考 えられる。生徒はプレゼンテーションを通し,情報機器の活用能力やコミュニケーシ ョン能力などを身に付けることができる。当然,プレゼンテーションを行う内容につ いて,生徒は情報収集を行う必要がある。具体的には,生徒に共通のテーマを与える,. もしくは,複数のテーマの中から1っのテーマを選択させ,インターネットなどを用. いてそのテーマに関する情報を収集させる。そして,集めた情報をソフトウェア(例 えば,表計算ソフトウェア,グラフ作成ソフトウェアなど)により処理してプレゼン. 18.
(23) テーションを行わせる。プレゼンテーションという形を取ることで,生徒は「情報A」. よりも情報の受け取り手側の反応をより実感しながら情報の扱い方の重要性を習得す ることができる。. 「情報C」の教科書は1夙ンピュータ上での情報の扱われ方(ディジタル信号)や Webぺ一ジ,プレゼンテーションの作成,情報セキュリティなどのシステム面に関す る内容などが主である。r情報C」は,「情報A」の内容をより詳しく学習するという 印象を受けた。. 実際の授業においては,情報発信の責任やネットワーク上でのエチケット(いわゆ るネチケット)に関する内容が中心となるであろう。他の科目に比べ,情報化社会の 一員にふさわしい人間を育てることに重点を置いているといってもよい。そのため, 通信プロトコル(規約),セキュリティシステムに関する内容や,プレゼンテーション にもカが入れられると予想される。. 教科書から各科目の内容を考えると,どの科目の教科書においても表計算ソフトウ. ェアが何らかの形で取り上げられており,いずれの教科書も表計算ソフトウェアを重 視しているように思われた。確かに表計算ソフトウェアは汎用性に富んでおり,グラ フ作成やシミュレーションも行える。これはr数学」においても非常に有効に利用で きると思われる。. また,「情報Ajは,コンピュータ経験の全くない生徒のことを意識するあまり,あ る程度のコンピュータ経験のある生徒が,授業に物足りなさを感じると予想される。 「情報B」は,理系の生徒にとって有意義に感じるが,コンピュータ経験のない生徒 にとっては非常に難しい内容の授業になるであろう。しかし,大学に入ると,「情報B」. の内容は,工学系や理学系の学生にとって非常に役に立つものである。特に,シミュ レーションなどでプログラミングをするため,工学系や理学系に進学を考えている生 徒は是非とも学習しておいて欲しい,また,プログラミングに必要な能力は,「数学」. においても活かすことのできる可能性を秘めている。「情報C」は,「情報社会に参画. する態度」を育成することに重点を置いているため,これから情報化社会が進んでい くことを考慮すると,できれば全ての生徒に学んで欲しい科目である。. さらに,中学校との関連を考えると,以前は「技術・家庭科」の選択の1領域とし て「情報基礎」という内容が存在していた。これは,「情報Ajと目標が非常に似てい る。そして,平成14年度から施行されている新指導要領においては,「情報とコンピ ュータ」という領域になっており,これは選択ではなく必ず学習することになってい 19.
(24) る。従って,数年後には,コンヒ。ユータの基礎的知識をある程度学習している生徒が. 高等学校に入学してくる。そのため,教師がr情報A」よりもr情報B」やr情報C」 を開設する可能性が非常に高くなってくる。. 20.
(25) 第3節. 「数学」と「情報」の関わり. 前節では「情報」の概要を述べたが,本節ではその内容がr数学」にどのように活 用できるか,っまり,「数学」と「情報」の関わりについて述べる。筆者は,「情報の 検索・収集(インターネットの利用)」,「ソフトウェアの利用」,「モデル化とシミュレ. ーション」という3点において,特に「数学』と「情報」の関わりが深いと考える。. 「情報の検索・収集」は,学習指導要領において,情報Aの「情報の収集・発信と. 情報機器の活用」,情報Cの「情報の収集・発信と個人の責任」などが該当し,情報B の「問題のモデル化とコンピュータを活用した解決」においても,モデル化する題材 を探すことがr情報の検索・収集」. に該当しており,情報Bでも重要な役割を持って. いる。教科書においては,Webぺ一ジによる検索や電子メールでのやりとりなどがこ. れにあたる。このようにr情報め検索・収集」は,r情報」の3つの科目いずれにも含 まれており,「情報」において重要な内容である。. 「数学」との関わりとしては,生徒が「情報」で習得した情報の検索・収集方法を 活用し,数学に関連した用語をキーワードとして検索すれば,教科書には記載されて. いない内容や授業では触れられなかった内容など,学習内容に関する様々な情報に接. することができる。これにより,生徒は,数学に対する興味・関心が増し,学習内容 の理解の深化・発展が期待される。. 「ソフトウェア」の利用は,学習指導要領において,情報Aの「情報の統合的な処 理とコンピュータの活用」,情報Bのr問題のモデル化とコンピュータを活用した解決」. などがこれに該当し,情報Cにおいてもプレゼンテーションを行う際にソフトウェア が利用される。教科書においても「ノフトウェア」の利用は,重要な位置づけとなっ ている。. 「数学1にソフトウェアを取り入れる場合,図形処理ソフトウェアやグラフ作成ソ フトウェア,表計算ソフトウェアなどのソフトウェアが考えられる。図形処理ソフト. ウェアは,図形を作成することでその図形の特性を理解するのに役立つ。また,図形. 処理ソフトウェアで表示された図形は,紙と鉛筆で書いたものと異なり,簡単な操作 でそれを静的ではなく動的に変形することができる(一般の作図のように,別に図形 を書き直さなくてもよい)。そのため,「この場合はどうなるか」,「ここをこうすると. どうなるか」といった疑問を自由に図形を変形することで容易に解決できる。グラフ 21.
(26) 作成ソフトウェアも同様で,関数の係数などを簡単に変えることができるので,係数 を変えればグラフがどのような変化をするかといった関数どグラフの特性の理解を促. す。また,一次関数のグラフの垂直・平行関係や二次関数のグラフの接線・法線を表 示グラフで確認することができる。また,表計算ソフトウェアは,統計の理解を促進 するために活用できる。例えば,表計算ソフトウェアを用いたアンケートの集計など で,並び替え,集計,平均や標準偏差などの計算などが簡単に実行できるので,推定・. 検定といった推測統計が容易となり「数学」にも有効に利用できる。その他にも,表 計算ソフトウェアを生徒が使えるなら,r数学」での統計教材をより豊かにすることが でき,日常生活に関わりの深い統計教材をより充実したものにすることができる。ま た,ソフトウェアは様々な用途に応じた多種多様な種類があり,ネット上から簡単に,. しかも無料で手に入れられるものが多く,それらを生徒がネット上から探し出してく ることも可能である。このように,r情報」で学習する表計算ソフトウェアなどは,「数 学」でも活用できる。. 「モデル化とシミュレーション」は,学習指導要領において,情報Aの「情報を活 用するための工夫と情報機器」,情報Bの「問題解決とコンピュータの活用」,「問題の. モデル化とコンピュータを活用した解決」などがこれにあたる。教科書においても, 身の回りにある問題をモデル化して,シミュレーションを行うなどの内容がある。. 「情報」におけるモデル化は,現実世界の事象を定型化,単純化,理想化,形式化 するので,「数学」におけるモデル化と何ら変わりはないものであり,「情報」で習得 したモデル化の内容がそのまま「数学」でも活用できる。また,モデル化したものは,. シミュレーションなどで解析され,その結果が解釈,評価,比較され,現実世界の問. 題を解決するのに用いられる。シミュレーションに関しても,コンピュータによるも のは表計算ソフトウェアなどを利用して作成される。よって,「モデル化とシミュレー. ション」もr数学」と深い関わりをもつ。 次章以降では,本節の内容を具体例を交えて詳述する。. 22.
(27) 第3章 数学学習におけるインターネットの活用 本章では,前章の第3節で述べた「数学」と「情報」の関わりの1つであるインタ ーネットの利用にっいて述べる。具体的には,どのようにr数学」にインターネット を取り入れれば生徒の学習に有効であるかを検討する。そこで,まず,Webサイトを. 利用した数学学習にっいて述べる。そして,次に,E−Mail,BBSの活用法について述 べる。. 第1節 数学学習におけるWebサイトの利用 1.インターネットによる学習形態の変化. 2.数学学習における活用. 3.Webサイト利用の留意点 第2節 E・M&i1,BBSの活用. 1.E・Mai1の活用. 2.BBSの活用. 23.
(28) 第1節 数学学習におけるWebサィトの利用 1.インターネットによる学習形態の変化 Gerber&Shuell(1998)が「インターネットという世界的なコンピューター・ネットワ. ークは,教育に本質的な影響を及ぼし,多くの教科が教授方法を変更するであろう。」 (p.114)と述べているように,インターネットは,新しい教授・学習方法を産み出す可. 能性を秘めたメディアである。また,Michenerが「インターネットは,教育分野の様々. な新しい経験を利用可能にする見込みのあるコンピュータ間のリンクを提供する。」 (Micheneronlinel ass2.htm1)と述べているように,教師や生徒は,インターネットを. 利用することによって,今までに経験したことのない新しい教授・学習を行うことが できるであろう。特に,数学においては,従来の紙と鉛筆が主の教授・学習では生徒. の理解に限度があったが,コンピュータを利用して今までは静的にしか表現できなか ったものを動的に表現すれば,生徒の理解が向上することが期待できる。このことに 関して,Herrera(2001)は,r独特なインターネット活動は,(あるユーザ・インターフ. ェースにより操作される物体をコンピュータ上に提示するような)仮想教具にある。. 各体験は,学習者のためにスクリーン上の物を移動させて,移動の影響を観察する機 会を含んでいる。学習者は,この実地の環境で作業することにより,他のメディアで は容易にアクセスできない概念を見て探求することができる。このことを数学教育者 Judy Spicerが,仮想教具は,見るのに困難で,イメージが不可能なものを見せるカを 持っていると表現した。」(p.26)と述べ,紙と鉛筆ではできない仮想教具の重要性を示 唆している。. また,宮下は, 「『コンピュータはインターネットとペアになってはじめて学校で. 生きる』という認識参浸透していけば,学校へのインターネツト導入は今後加速度的 に進むでしょう。」(宮下 onli耳e:22』i.htm1)と述べているが,今年度より開始された. 「情報」やそれに伴った学校の情報設備の充実を考えると,数学学習におけるインタ ーネットの利用はそれほど難しいことではないであろう。. 2.数学学習における活用 Web上には,数学に関するぺ一ジが非常に多くある。実際に,サーチエンジンを使 用しキーワードを「math」として検索を行った。その結果,実に11,600,000件も該 24.
(29) 当するぺ一ジが存在した(サーチエンジンはGoogleを使用)。また,キーワードを「数 学」として検索してみると,1,650,000件も該当するぺ一ジが存在することが確認され. た(サーチエンジンはGoogleを使用)。これは,サーチエンジンがぺ一ジ上に「数学」. という文字列が存在するぺ一ジを列挙してしまうからで,単にキーワードを「数学」. としただけでは膨大な数のぺ一ジが表示されてしまう。実際,それらの内のいくつか. のぺ一ジを開いてみると,大学の数学教室や数学関係の学会紹介ぺ一ジや個人で開設 している数学に関連のある内容を含んだぺ一ジ,数学にはまったく関係のないぺ一ジ など様々である。これでは自分が必要としている(あるいは,知りたいと思う)情報に到. 達することが非常に困難である。そこでコンピュータにっいて全く知らない生徒がい る場合は,自分の必要とする情報をWeb上から引き出すためのテクニックというもの を教える必要がある。しかし,「情報」を学習した生徒がWeb上での検索テクニック. を全く知らないということはないので,数学教師の手を借りることなく生徒自身でそ. れを使用することができるであろう。また,ほとんどのサイトが他のサイトヘのリン クを持っているので,一っのサイトに行きさえすれば,生徒がリンクをたどり他のサ. イトを見に行くことが期待できる。従って,数学教師は,授業中に数学に関連したサ イトをいくつか紹介するだけでよいと考えられる。そして,生徒は,自分の都合のよ い時間にこれらのサイトを見ることにより自分で学習することができる。. 数学に関するWebサイトを利用する場合,以下の2通りが考えられる。 ① 生徒が自分自身の学習進度に見合ったWebサイトを選び,自分自身で授業内容の 理解・深化を図る。. ② Webを通して生徒が授業内容以外の数学に触れ,数学に対する興味・関心を深め る◎. ①では,Webサイトを利用し,「数学」の授業で学習した内容についてより深い理解 を生徒に促すことができる。生徒の中には,どうしても授業内容の理解が他の生徒よ りも遅れてしまうものが出てくる。そのような生徒に対し,現在は,授業中に生徒が. 問題を解く際の机間巡視や,休み時間や放課後に生徒の質問を受け付けるなど教師の 個別指導により対応している。しかし,授業中に机間巡視を頻繁に行うことはできず,. また,「数学」の授業時問外に少数の生徒に対してなら質問を受け付けることは可能で. あるが,多数の生徒になると質問を受け付けることが難レくなる。そこでWebサイト 25.
(30) を利用することにより,授業に遅れがちな生徒は,自分で授業の内容を復習すること. ができ遅れを取り戻すととができる。Webサイトの中には,r数学の内容を理解しやす くするように詳しく解説しているものもあるので上記のことは十分に可能である。ま. た,授業のように時問に制約がないので,生徒は,自分のぺ一スで学習することがで き,学習内容についての理解が深くなるであろう。Webサイトの活用は,それだけで はなく授業内容を理解している生徒が活用することもできる。それは,授業で学習し. た内容の発展的な学習である。Webサイトには,上記のように詳しい解説を行うもの のほかにも授業で学習した内容を応用していくというように発展的な内容を取り扱っ. たものもある。このようなWebサイトを授業の内容を理解した生徒が利用すれば,生. 徒は「数学」をより深く理解し,応用力が身に付くと考えられる。このように,授業 内容の理解が遅れがちの生徒に対してはそれを補助する形で,授業内容を理解してい る生徒に対してはそれを発展させる形で,Webサイトを利用することができる。. 以下にこのようなWebサイトの使用例をいくつか挙げる。. 生徒が校内の試験や入試に備えて多くの問題を解こうとしたとき,問題とその解 答・解説を掲載しているサイトが有効に利用できる。このようなサイトは,Web上に 多く存在しているので(Web全体を考えると)問題の量が豊富であり,問題のレベルの 幅も広く,大学入試やセンター試験の過去問も掲載されているので,問題集を何冊も. 買うよりも有効である。このようなWebサイトの例として,「高校数学問題集」(htt p:〃onohiro。hp.in£oseek.co.jplamanojack/top.htm)というサイトがある。このサイトは,. 大学入試やセンター試験の過去問以外に学習指導要領に沿った小単元ごとの問題が掲 載されており,授業と平行して問題演習を行ったり,自分の苦手とする単元の問題を 解くなどの使い方ができる。. 生徒が自主的に教科書の内容を予習・復習する場合,参考書のように学習内容の解 説をしているサイトが活用できる。このようなサイトは,教科書よりも詳細な説明が 記述されているので参考書と同じように利用できる。また,重要な語句や内容にリン クが張られており,すぐにその説明・解説を見ることができる。このことは,Webぺ 一ジならではの利点である。このぷうなサイトの例として,「青塚数学教室j(http:〃 wwwmeix−net.or.jp!∼aotsuka/),「数学ナビゲーター」(http:〃wwwcrossroad.jp!mat. hnavi!)がある。前者のr青塚数学教室」の特徴は,.次頁のように用語の解説文や問題. 文中にリンクが張ってあり,解説文や問題文中にわからない用語が出てきてもその解. 説をすぐに見ることができることである。また,リンクの選択的な使用,つまり,生 26.
(31) 徒が解説を読むか読まないかの選択ができるので,生徒は,自分の必要な用語の解説 だけをその都度読むことができ,効果的に予習・復習をすることができる。. 『平方完成』. 『3次関数の値域』. (completion of the square). 2次式. ax〈2+bx÷c. 1変数の関数の埴城を求めるには,も. を次のように変形する計算をr平方完成」. し可能ならば,その関数のグラフを書 ,. といいます。 ax〈2+bx+c. 関数の値の変化を追跡する追跡刑.. 法によって,関数がとり得る を 求めるのが自然です。. =(中略). たとえば,1次関” 。グラフは直 線であり, に す。また,2次 関数は,黒方完 することによって, 容易にグラフを書くことができます。2 次関数のグラフはすべて互いに相似な放. =a{x+(b!2a)}〈2・(b〈2・4ac)ノ4a. 平方完成 2次関数 グラフを書くと 謙べるときなどに. きや,2次. 物線だからです。. 利用します。また. しかし,3次関数. 式を導くときに. y=ax^3+bx〈2+cx+d (a,b,c,dは麹)の場合は事情が異なりま. 2次方程式σ)解の公 ll用します。. す。. ま“, … (以下省略). の画面へ. 『2次関数』 (quadraticfunct玉ons). 3次関数. xの鍵yがxの2次式を用いて. yニax〈2+bx+c(a,b,cは定数). y;=ax〈3+bx〈2+cx+d. という形で表されるとき,yはxの2次関 数であるといいます。. のx〈2の項の係数と定数項とが0にな. xの2次関数yにっいて,xの定義域が. るように平行移動すると,関数が・・…. 示されていないとき,定義域はふつう実. (以下省略). 数全体であると考えます。. 定義域が実数全体でないときは,たと えば. 【問題1】 関数. y=x〈2(1≦x≦3) のように書きます。. 2次関数のグラフは放物線です。たと. y−2x3−3x2−12κ+5(一2≦x≦3). えば,関数. y=4px〈2(pはoでない定数). の取り得る値の範囲を求めよ。. のグラフは,座鍵亙において,点(0,p) を焦点とし,直線 y=・pを準線とする放物線です。. ≧欠¢)画面・\. (青塚数学教室より). 後者の「数学ナビゲーター」は1特徴として,学習指導要領に沿った小単元ごとの 見出しつき解説やサイト内検索,用語の索引などがあり,検索機能に優れている。例 えば,生徒が自主学習をしているとき,わからない内容が出てきたとする。そのとき 27.
(32) 生徒は,解説の見出しによりわからない内容の解説があるぺ一ジを探す,もしくは,. わからない内容に関わる用語をキーワードにしてサイト内検索することにより,その. ぺ一ジを見っけ出すことができる。サイト内検索の別の利用方法としては,生徒が苦 手な内容(例え・ば,積分)を克服するために,それに関する問題を数多く解こうとする場. 合である。この場合,サイト内検索でキーワードを「積分 問題」として検索すれば,. 生徒は,サイト中の積分に関する問題を見つけることができる。. さらに,生徒が図形やグラフの特性を調べたいと思ったとき,図形・グラフ作成ソ フトウェアを掲載しているサイトが有効に利用できる。このようなサイトは,ブラウ. ザ上で図形やグラフを作成するものやそれらのソフトウェアがダウンロードできるよ. うになっているものがある。ソフトウェアの利用に関しては,第4章2節で述べるの で,ここではサイトのみを挙げておく。. 数学学習に効果的なソフトウェアを掲載しているサイトとして,r作図ツールコンソ ーシアム」(http:〃wwwauemath.aichi−edu.ac.jp/dgs/index.htm),「Math&Techno. home page」(http:〃wwwies.co.jp!math/)がある。前者は,Javaを利用しブラウザ上. での図形変形が可能であり,愛知教育大学の飯島が開発したGC!Javaを利用したサイ トである。そこには,中学校数学の教科書に準拠した使用例(導入,確認,発展など). やコンテンツが掲載されているので,生徒は,考察対象や考察方法を理解した上で図. 形を変形できる。後者は,・Javaアプレット集であり,例えば,方程式の係数を変化 させることでグラフが変化するといったアプレットが利用できる。このサイトは,ア. プレットの動作内容とその動作がどのような意味を持つかということが記述されてい る。. ②に関しては,サイトを利用し生徒に数学への興味・関心を持たせることができる と思われる。生徒は,一. 学が実社会においてどのように使われているのか,また数学. パズルなどを見たり体験したりすることにより,数学への興味・関心を持っことが期 待できる。. 具体例として以下のサイトがある。. 「ようこそYOSHITA号へ」 (http:〃www2.odn.nejp1%7Eaai55890ノ). 「数楽どん話」という教科書のトピックのような内容(身近な数学の話・ ドについて,視力検査表など)と,数学の問題を掲載している。. ぐ. ノ、一コー. 一28.
(33) rカフェ・プロトマヤ」 (http:〃www.bas.nias.ac。jp/∼ca£e/index.htm1). いろいろな数学パズルや問題を掲載している。以下の問題は,このサイトより抜 粋したものである。. 問題例1一筆書き 昔ケーニヒスベルグという町に図の様に橋がかかっていました。最初. に、この7つの橋をすべて、しかもただ1回だけ通って渡れた者には 賞金が出ることになりました。でも、町中の人が挑戦したのですが誰 も渡れませんでした。その時、あの数学者オイラーが不可能であるこ とを証明したのです。. 不可能の証明を考えてみてください。. (カフェ・プロトマヤより). このような不可能性の証明問題は,成り立つことの証明が多い数学において生徒に とって異質である。これにより,不可能なことも数学では証明できるという興味・関. 心を生徒は持っと考えられる。また,上記のケーニヒスベルグの橋のように有名な問. 題は,多くのサイトで様々なレベルで掲載されており,自分のレベルにあった問題を 選択できる。. ここまで,Webサイトの利点や利用にっいて述べてきたが,何故Webサイトを利用 29.
(34) することが生徒にとって有効なのか。それは,数学が積み重ねの必要な教科であり,. 問題が解けないときや内容が理解できないときに前の内容を見直さなければならない. 状況が出てくるからである。しかし,生徒は,わからない問題や内容に対し,前に戻 って自分で調べようとはせず,わからないままにしておく場合がある。何故,生徒が. 調べようとはしないのか。それは,生徒が教科書や参考書のどのぺ一ジを調べればい いのかわからないとか,調べたぺ一ジの内容がわからなければ別のぺ一ジを探さなけ ればならないという連鎖に陥ってしまい調べても結局わからないという考えに到達し,. 調べることに心理的抵抗が生まれてしまうからである。そして,生徒は,教科書や参 考書のぺ一ジを捲ることさえも嫌になってしまう。特に,分厚い参考書などは,その 心理的抵抗を助長する。しかし,Webサイトは,キーボードやマウスの操作によりぺ 一ジが変わるためぺ一ジを捲る煩わしさがなく,教科書や参考書のように厚みによる. 情報量の多さを感じさせないので,生徒の心理的抵抗が減らせる。また,Webは,サ ーチエンジンで検索することで,教科書や参考書と違い自分の必要な情報をすぐに見 ることができるので,ぺ一ジを探すといった煩わしさから生徒を解放することができ る。. しかし,Webサイトは利点ばかりだけではない。特に,個人で開設しているサイト. に言えることだがWebサイトは,突然,閉鎖・移転する場合や解答・解説が常に正し いという保障がないなどのサイト側の問題がある。また,知りたい情報がすぐに見る ことができるというWebサイトの利点は,欠点にもなり得る。それは,生徒がすぐに. 見ることのできる解答・解説に頼ってしまい,自分で考えようとはしなくなってしま う恐れがあるからである。. また,Web上には,非常に多くの情報が存在するため使いはじめの段階は,学習に 役立つサイトがどういうものか生徒がわからない,もしくは,どう使えばいいのかわ からないといった状況になる場合があるかもしれ奪い。そこで,教郎の役害!は,先に. も述べたように,Web上に存在する多くの揖一ジの中から生徒の学習に役立ち,しか も,解答・解説に信頼のおけるサイトを使用例も含めて生徒に紹介することである。更. に,生徒の学習能力がまちまちであることを考慮し,教師は,複数のサイトを紹介し ておくと良いであろう。そして,生徒は,放課後や家庭において,紹介されたサイト の中から自分に合ったサイトを利用しながら学習する。また,「情報」での学習(例え. ば,情報Aの「情報通信ネットワークを活用した情報の収集・発信」など)により,生 徒は,多くの情報の中から自分が必要としている情報を選択すること(もしくは,情報 の質の判断)も学んでいるので,「情報」での学習を経てある程度インターネットの利 30.
(35) 用に慣れれば,生徒は,学習に役立っサイトを自分で見つけ出すことも十分可能であ る。. 3.Webサイト利用の留意点 生徒がWebサイトで数学学習を行う場合,どのようなWebサイトを利用するかと いうことが重要になってくる。しかし,インターネットについて学習し始めの段階で は,どのサイトを利用すべきかという判断が生徒にはできない,または,不適切なWeb サイト(内容に誤りがある,利用効率が悪いなど)を利用してしまうことが予想できる。. したがって,既に述べたように,数学学習に効果的なWebサイトを教師が示すことが. 必要となってくる。そのために教師は,Webサイトを評価し数学学習に効果的なWeb. サイトを選択しておかなければならない。Webサイトを評価する基準として, Roemplerは以下の5つを挙げている(Roempleronline:consumer.htm)。. ナビゲーションと有用性 出所. 内容の確実性. 訪問者とのかみあい. Webテクノロジーの長所の使用 以下にそれぞれを簡単に説明する。. (a)ナビゲーションと有用性. Webサイトは,全てのブラウザで閲覧が可能であるものが良い。また,求める情報 への経路がわかりやすいことが重要である・例えば・.単元ごとのカテゴリー分けや. 数学用語の50音順の索引,サイト内検索機能などが付いているものである。. (b)出所. 情報の出所,っまり,Webサイトの管理者が明確であればその情報の品質をある. 程度確認することができる(URLの拡張子や,プロフィール,関連リンクなどを参考 にする)。また,管理者への連絡先(E・Mai1アドレスなど)が提示されていることも重 要な基準となる。. 31.
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