EDXによる和泉層群泥岩の続成変質に関する知見
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(2) 144. さらに,各試料について研磨片を作製し, "細粒基質"部分の元素分析を行った。使用 した機器は,走査型電子顕微鏡(Hitachi, S-450)とエネルギー分散型Ⅹ線マイクロ アナライザー(Horiba, Emax 2000)である。測定値を厳密に比較するために,全試料 を同時に蒸着し,検出器と試料面との距離およびⅩ線取出角はそれぞれ, 18mmおよび300 に固定した。電子線の加速電圧は15KV,試料電流は0.03nA,測定時間は100秒である。 測定部位として,粗粒の砕屑粒子を避け,できるだけ平滑に研磨されている"細粒基質" 部分をえらび, 25urnx20 amの範囲の全域を,各試料15箇所ずつ走査電子線で測定した. 鉱物粒子E:との分析ではなく,基質部分のできるだけ広い範囲をえらんだのは,その範囲 の平均的な値を求めるためである。各試料の基質部の1例を図版1に,測定結果を表1に 示す。表1に示したのは, Mg, Al, Si,およびKのカウント数,およびSi/Kの 値であり,今回は予察的検討を目的としているので,化学組成は敢えて求めていない。 お,表lには,西村(1984), Nishimura (1984)による試科のかさ密度と孔隙率,西村 はか(1980)による沸石続成帯と埋没深度の値も列挙してある。. 3.結果と考察 偏光顕微鏡下での観察によると,いずれの試料も,その大部分が極めて細粒の粘土鉱物 の集合体であり,不透明鉱物もかなり含まれている。砕屑性の粒子のほとんどは径0.020.05mmくらいの石英で,他にごく少量の斜長石も認められる。松山地域の試料では,他 の2地域の試料よりも,やや粗粒(径0.1mmくらい)の砕屑粒子が多く認められる。洲 本地域の泥岩試料のかさ密度および孔隙率は, 2.54g/c道, 3.155%>であり,砥部地域お よび松山地域のそれらはそれぞれ, 2.45g/cd, 3.61&,および, 2.61g/dfi, 0.で ある(西村, 1984 ; Nishimura, 1984)c X線回折分析の結果(図1)によると,いずれの試料でも,石英,斜良石,緑氾石,お よび粘土鉱物が認められる。塩酸処矧こより6- (20 , CuKcc ,以下同様)および12.4-の ピ-クが消滅することから緑泥石の存在が確認される。粘土鉱物としては,洲本地域の 試料ではイライト・モンモリロン石混合層粘土,砥部地域・松山地域の泥岩ではイライト が認められる。しかし,緑泥石の確認のために行った塩酸処理の際に, 8.8-のピークが 低角側にずれる。このことは,砥部・松山両地域の試料の水簸物のⅩ線回折パターンにお いて8.8。のピークが非対称であることと考え合わせると,イライトとしての結晶度がそ れほど高くはないことを示しているものと思われる。 各試料でみられる元素の量に関しては,表1に示してあるように,各元素のカウント数 のばらつきはかなり大きいものである。これは,できるだけ平滑な面をえらんで分析した ものの,無視できない凹凸がまだ残っていることと,孔隙量の大小によるものであろう。 また,ごく局所的な鉱物組成のちがいもその原因のひとつであろうが,今回は,局所的な ちがいを少なくするためにできるだけ広い部分の平均値を求めているのであり,この点に 関するさらに詳細な検討が今後必要であるo上記のように,かなりのばらつきがあるにし ても,洲本地域と砥部・松山地域との問では,有意と思われる差が認められる。つまり, 洲本地域の方が他の2地域よりも, MgとSiのカウント数が大きく, Kのそれは小さい。 従って, Si/Kの値は洲本地域の方が有意に大きい。一方, Alの量には有意の差が 認められない。 この事実は, Ⅹ線回折の結果と調和するものであるoすなわち, Ⅹ線回折パターンの ピークの強さから判断すると,各試料に含まれる緑泥石の量にはほとんど差がないとみな.
(3) EDXによる和泉層群泥岩の続成変質に関する知見. 145. 30 29(CuK〆) 40. 20. 30. 29(CuK〆). 図1.泥岩試料のⅩ線粉末回折パターン 1:全岩, 2:水簸物, 3:塩酸処理. 40.
(4) 146. 表1.泥岩基質部の各元素カウント数およびSi/K比. Ra n g e Hg. A1. Si. T0BE. 136-55 5. 3 5- 3 4 9. MATSUYAMA 90-6 36. Ave .. 34 5. 152. 2 46. S .D .. 13 8. 80. 14 5. Range. 3 6 7 9- 5 6 18. 3863- 569 0. 40 59-78 2 1. A ve .. 叫8 6 4. 4662. 53 84. S .D .. 533. 48 5. 948. Range. 3 1 7 7- 4 3 6 9 8. 26798-3 3 119. 26 62 1-37 749. A ve .. 3 7230. 308 66. 3 0 3 97. S .D .. 3 03 6. 2 0 16. 28 38. R an g e K. SUMOTO. 7 8 0 - 1 58 8. 1379-2 203. Ave .. 1 136. S .D .. 24 1. 269. 2 4 .3 - 4 7 . 1. 1 3 . 8 ー2 3 . 5. Ran ge. 168 叫. 1328 -30 14 173 9 4 15 8 .9 - 2 4 .9. S i ′又 A v e .. L l. 1 8 .7. 1 8 lq. S .D .. 7 .5. 3 .1. 4 .4. 15. 15. 15. N umb er o f S a m p le Bulk. (g / cm 3 ). 2 .5 4. 2 .4 5. 2 .6 1. P o r o s i t y (% ). 3 .1 5. 3 .6 1. 0 .6 6. Zeo lite. Ⅱ. Ⅲ. IV. D en sity. B震. 昌. Zo n (k m ). 2 .9. 3- 4. 6 .3.
(5) EDXによる和泉層群泥岩の続成変質に関する知見. 147. すことができること,および,砕屑性の石英や斜長石の粒子を避けて極細粒部分の等面積の 範囲を分析していることを考慮すれば,洲本地域の試料でMgが多いのは,モンモリロン石 が相対的に多いことに由来するものであり,砥部・松山地域でKが多く,従ってSi/Kの 値が小さいのは,イライトの相対的増加によるものであると考えられる。 しかるに,和泉層群の凝灰岩に含まれる沸石の研究から,和泉層群の変質は埋没続成作 用によるものであり,その埋没量は,洲本地域で約2.9km,砥部地域で4km,松山地 域で約6.3kmと見積られている(西村ほか, 1980)。また,埋没深度が増すにつれ,泥質 岩中の粘土鉱物がモンモリロン石からイライトに変化することが知られている(Aoyagi andKazama, 1980)。従って,本稿で明らかになったように,洲本地域ではイライト・モ ンモリロン石混合層粘土,砥部・松山地域ではイライトであるという事実は,洲本地域か ら砥部地域,さらに松山地域に向うにつれて和泉層群の埋没深度が大きくなるという事実 と調和するものである。さらにこのことは,洲本-砥部-松山地域と向うにつれ,各地蟻 の砂岩のかさ密度が大きくなり,孔隙率が小さくなるという報告(Nishimura, 1985)と も調和する。 これからの展望: すでに述べたように,層位的に上位の洲本地域よりも下位の砥部・松山地域において, Kが 多く,従ってSi/Kが小さい。このことは,埋没深度が大きい地域にイライトが多く認めら れるということを元素レベルで表わしているものであるが,さらにそれ以上のことをも暗 示してはいないであろうか。もとより筆者は,本稿で示したデータではまだ不充分であり, 各鉱物内での各元素の量,分布に関するデータが必要であることを承知しているが,分析 方法の項で述べたように,電子線の加速電圧・試料電流を始めとする分析条件は厳密に一定 を保ち,しかも一定の面積の基質部分を測定したものである。従って,測定されたカウント 数は,ある単位面積あたりのある元素の原子の数量をあらわしているはずであり,埋没深度 の大きい松山地域の方が,より密にKがつまっていることをあらわしているとは考えられ ないだろうか。今回使用した泥石試料は,間隙水の排除で特徴づけられる初期および後期 圧密段階(Aoyagi and Kazama, 1980)をすぎ,再結晶段階(同左)に属するものであり, 続成作用に基づく変化量は少ないものであろうと思われる。従って,和泉層群よりも,哩 没量がもっと小さく,変質程度の低い新期の泥岩や,逆に,もっと変質の進んだ泥岩を注 意深くえらんで,データを増やせば,上に述べたようなことが明らかになるのではないだ ろうかと考えている。このような目的で,ある部分の元素の分布を調べたり,化学組成に 関するデータを迅速に得るには, EDXシステムは最適であり,その果たす役割はますます 大きくなるであろう。 文献 Aoyagi, K. and Kazama, T. (1980) : Transformational changes of clay minerals, zeohtes and silica minerals during diagenesis. Sedimentology, 27, 179-188. Athy, L.F. (1930) : Density, Porosity, and Compaction of Sedimentary Rocks. Amer. Asso. Petrol. Geologists Bull., 14, 1 -24. Hedberg, H. D. (1936) : Gravitational compaction of clays and shales. Amer. Jour.Sci., 31 , 241-287.. 広渡文利・片山信夫(1973) : EPMAによる登米スレートおよび那智黒泥岩の鉱物組成の検討. 九大理研報(地質), ll, 311-319..
(6) 148. 都城秋穂・原村寛(1962) :古生層の粘板岩の化学組成. Ⅳ.地向斜堆積物の帯状分布と変成帯の位 置.地質経, 68, 78-82. 西村年暗(1984) :四国西部の上部白亜系和泉層群の堆積盆解析.地質経, 90, 157-174. Nishimura, T. (1984) : Geology and basin analysis of the Upper Cretaceous Izumi Group in western Shikoku, Japan. Hyogo Univ. Teacher Educ. Jour., 3 271-294.. (1985) : Properties of clinoptilolite in some diagenetic conditions.. ibid., 5, 93-107.. 西村年晴・飯島東・歌Ef]実(1980) :四国・淡路島の和泉層群の沸石続成帯と堆積盆解析. 地質経, 86, 341-351. 奥山(楠瀬)康子(1985) :エネルギー分散型マイクロプローブによる泥質堆積岩中の層状珪酸塩紘 物の化学分析;予察的検討.堆積学研究会報特集号(細粒砕屑性堆積物とその堆積機構), 90-94..
(7) EDXによる和泉層群泥岩の続成変質に関する知見. 図版1.和泉層群泥岩の基質部分の走査電子顕微鏡像. 1 :洲本地域 2 :砥部地域 3 :松山地域 スケールは5am.. 149.
(8) 150. A PRELIMINARY NOTE ON THE DIAGENESIS OF MUDSTONES OF THE IZUMI GROUP. TOSHIHARU NISHIMURA. The diagenetic alteration of mudstones of the Izumi Group was investigated by the uses of the X-ray powder diffractometer and the energy dispersive electron probe microanalyser (EDX) , and results were reported preliminarily. Clay. minerals. of. illite一montmorillonite. mixed. layer. are. recognized. in. mud-. stones in the Sumoto district with shallower depth of burial, and lllite in the. Tobe and the Matsuyama districts with deeper depth of burial. The EDX analysis clarified that fine-grained matrices of mudstones in the Tobe and the Matsuyama districts contain more potassium and less magnesium than those in the Sumoto district.. Moreover, the possibility of a new approach to the diagenesis of argillaceous rocks was supposed..
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