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新聞の敬語 : 尊敬語の実体を探る試みとして

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(1)

新 聞 の 敬 語

尊敬語の実態 を探 る試み として

The honorific

expressions

in newspapers

Orie Endo

It is generally known that one uses honorific words or expressions about actions or possessions when he intends to respect someone in Japanese sentences.

But if he uses these expressions in each verb and noun about that respected person, these sentences will be so intricate and so annoying for the readers.

The present report deals with abridgement of the honorific words or expressions in written Japanese of some newspapers .

は じめ に 敬 語 は 日本 人に とっ て も、 その 日常 の 用 法 を め ぐって 常 に論 議 が く り返 され 、研 究 対 象 と して も幅 広 く深 く複 雑 な 問 題 が 多い 分 野 で あ る。 日本 語 教 育 の場 で 敬 語 を扱 う際 に は 、 こ う した 日本 語 の 中 で の 問 題 点 、複 雑 さを で きる だ け 捨 象 し、混 乱 を もち こ ま な い よ うに しな け れ ば な らな い と思 う その ため に 日本 語 の 中 の 敬 語 の 実 態 を で き る だ け 正 確 に把 握 して お く必要 が あ る。 一1一

(2)

新 聞 の 敬 語 一尊 敬 語 の実 態 を 探 る試 み と して 一 小 論 で は 、 書 き こ とば の 敬 語 の 実 際 と して 、新 聞 の敬 語 を取 り上 げ て 、 現 在 の新 聞 の 敬 語 の 実 態 を明 らか に した い と考 え た。 新 聞 記 事 で敬 語 表 現 が み られ るの は 主 と して 皇 室 関係 の もの で あ るか ら、 こ こで は1987年2月 高 松 宮 の 逝 去 を報 ず る新 聞 記事 と同 年4月 の 天 皇 誕 生 日の 記 事 を対 象 と し て み た 。 な お 、敬 語 の概 念 と して は 、 待 遇 表 現 全 般 を含 め る もの か ら語 彙 の レベ ル だ け を扱 う もの ま で そ の 規 定 の 仕 方 も 多様 で あ るが 、 こ こ で は 皇 室 関 係 の 記 事 に表 わ れ た 「お 元 気 ・ご 出 席 に な る」 な どの 、皇 族 の行 為 ・状 態 を 高 め て表 現 され て い る、 い わ ゆ る 尊 敬 語 に 当 た る もの だ け を扱 っ て い る。 こ こ で知 りた い と考 え た敬 語 の 実 態 とは 、 現 実 の 新 聞 記事 の 中 で ど う使 われ て い るか 、す な わ ち 、 皇族 の 行 為 ・状 態 を報 道 す る 際 に は 、 ど こ ま で 敬 語 が 用 い られ るの か 、裏 返 して み れ ば ど こで 敬 語 が 省 か れ る か 、 に 関 し て で あ る。 (1)新 聞 記 事 中 で の 敬 語 の 使 わ れ 方 尊 敬 語 と は 「話 題 の 人(行 為 ・所 有)に つ い て の 表 現 で 、 話 し 手 が そ の 人 へ の 敬 意 的 配 慮 を 表 す 敬 語 。 話 題 の 人 は 直 接 の 相 手 で あ る こ と も あ り 、 第 三 者 で あ る こ と も あ る 」(『 日 本 語 教 育 事 典 』 宮 地 裕)と さ れ 、 名 詞 の 場 合 の 「お ∼ 、 ∼ 殿 、 ∼ 氏 」、動 詞 の 場 合 の 「な さ る 、 い ら っ し ゃ る 、 お ∼ に な る 」、 助 動 詞 「∼ れ る 、 ∼ ら れ る 」 な ど が そ の 具 体 的 表 現 と さ れ る 。 し か し 、 こ れ ら は 、「山 田 氏 が い ら っ し ゃ る 」 だ け の 短 文 を 作 る に は 十 分 な 説 明 で あ る が 、 連 体 修 飾 語 を 伴 っ た り、 種 々 の 接 続 語 句 で 接 続 さ れ て い る よ う な 複 雑 な 文 章 の 中 で の 敬 語 の 使 い 方 を 示 し て は い な い 。 た と え ば 、 「… 自 制 す る よ う に 智 子 は う な ず い た 。い い な が ら 智 子 の 目 が 強 くな っ て 、 孝 平 を 見 た 」(『 朝 日 』88、8、8夕 刊)

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の 智 子 を皇 后 に変 え た場 合 、 A… 自制 され る よ うに 美 智 子 さ ま は うな ず か れ た。 い い なが ら美 智 子 さ まの 目が 強 くな られ て 、孝 平 を見 られ た」 で もい い し 、 B… 自制 な さ る よ うに 皇 后 陛 下 は お うな ず き に な っ た 。 お っ し ゃ りな が ら陛 下 の お 目が 強 くお な りに な っ て 、 孝 平 を ご覧 に な っ た。 で も間 違 い とは言 えな い。尊 敬 す る語 句 の組 み合 わせ を変 えれ ば何 通 りもの 文 章 が で き る こ とに な る。 助 詞 「なが ら」 を伴 う場 合 は そ の 動 詞 を必 ず し も敬 語 にす る必 要 が な い し、 「自制 す る よ うに」 も 「自制 さ れ る よ うに 」 で も 「自制 な さ る よ う に」 で もい ず れ も可能 で あ る。 この よ うに 、 文 中 に い くつ か の 動 詞 句 が 現 わ れ る場 合 、 実 際 に は 、 ど こ で 尊敬 語 を ど う使 わ れ て い る か を知 りた い と思 うの で あ る。 こ う し た 、 文 中 で の 具 体 的 な 一 般 的 な使 わ れ 方 が わか らな い と、 日本 語 教 育 の 現 場 で 、「教 師 が 急 ぎ足 で 教 室 に 入 っ て きて 、出 席 も と らず に 、大 声 で 話 して 、 出 て行 った 」 とい う状 況 を敬 語 を交 え た文 に 表 現 す る こ と を求 め る と き 、「先 生 が 教 室 に 入 って きて 、入 っ て こ られ て 、入 られ て きて 、入 っ て い ら っ しゃ っ て 」「出席 も とらず に 、と られ ず に 、お と りに な らず に」「出 て い っ た 、 出 て行 か れ た 、 出 て い ら っ しゃ っ た 」 な どの 中 か ら何 を選 び 、 ど う組 み 合 わせ た ら、 違 和 感 の な い 、 自然 な 文 章 に な るか の指 針 が 得 られ な い だ ろ う。 そ こ で 、 手 始 め に1987年2月4日 の 高松 宮 逝 去 を報 ず る新 聞 の敬 語 を 中 心 に そ の 実 態 を整 理 し て み た 。1989年1月 、2月 の 昭和 天 皇 関 係 の敬 語 に つ い て は 別 途 調 査 す るつ も りで あ る 。 新 聞 の 文 章 は 「省 略 と連 結 の 発達 した 文 体 で あ る。中 止 形 用 法 も 多い 」(佐 藤 洋 子 「教 材 と して 新 聞 記事 の 扱 い方 」『講 座 日本 語 教 育22分 冊 』早 大 語 研) 一3一

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新 聞 の 敬 語 一尊 敬 語 の 実 態 を探 る試 み と し て 一 とい う特 殊 性 を もつ 一 方 で 、 日夜 多 くの 人 々 の 目に触 れ る普 通 の 文 章 とい う点 で は ご く一 般 的 な 文 章 の代 表 とみ る こ と も で き る。 新 聞 社 に は そ れ ぞ れ の 用 法 を規 定 し た手 引 き書 が あ る。『朝 日新 聞 の 用 語 の 手 び き』(1988年 発 行)の 皇 室 用 語 の 項 目 に は 1.戦 前 、 皇室 だ け で 使 われ て い た特 別 な敬 語 は や め 、一 般 敬 語 の なか の最 上 の もの を 用 い る。 と記 され 、 特 別 の皇 室 用 語 の 具 体 例 は 示 さ れ て い るが 、一 般 的 な動 詞 の 場 合 や 、 そ の 文 中 で敬 語 の 省 略 可 能 な 場 合 の指 示 な ど は さ れ て い な い 。 こ の1.は 、1952年 に文 部 省 が 発 表 した 「これ か ら の敬 語 」 の 「11、皇 室 用 語 」 を受 け た もの で あ る。 そ こに は 次 の よ うに 記 され て い る 。 「こ れ ま で、 皇室 に 関 す る敬 語 と して 、特 別 に む ず か しい 漢 語 が 多 く使 わ れ て き た が 、 こ れ か ら は普 通 の こ とば の 範 囲 内 で最 上 級 の 敬 語 を使 う とい う こ とに 、昭 和 二 十 年 八 月 の 当時 の 官 内 当 局 と報 道 関係 との 間 に 基 本 的 了 解 が 成 り立 っ て い た(中 略)。 こ れ を今 日の 報 道 上 の 用 例 に つ い て 見 て もす で に 第六 項(=動 作 の こ とば 遠 藤 注)で 述 べ た 『れ る ・られ る 』の 型 ま た は 『お 一 に な る』 『ご 一 に な る』の 型 を とっ て 平 明 ・簡 素 な こ れ か ら の敬 語 の 目標 を示 して い る」 こ こ で 、皇 室 関 係 の動 作 に 「れ る ・られ る」「お 一 に な る ・ご一 に な る」の 型 を と る こ と、「平 明 ・簡 素 な もの が 望 ま しい 」と文 部 省 が 考 え て い た こ と が わか る。 簡 素 な もの が 望 ま しい な ら、先 の 変 形例A、Bで 、「自制 な さ る よ うに 美 智 子 さ まは うなず か れ た 」 よ り 「自制 す る よ うに 美 智 子 さ ま は うな ず か れ た」 の 方 が い い こ とに な るの だ が 、 実 際 の使 用 状 況 も そ うな の だ ろ うか 。 な お 、 話 し言葉 の場 合 も同 じ問 題 が 出 て くる が 、 放 送 の 敬 語 につ い て ① 皇 太 子 殿 下 は家 族 そ ろ って ス キ ー を お楽 しみ に な って い ます 。 ② 皇 太 子 殿 下 と家 族 お そ ろ い で ス キー を お楽 しみ に な っ て い ます 。(下線

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部 、 本 文 、 ゴ ジ ッ ク) の い ず れ を よ し と す る の か の ア ン ケ ー ト調 査 が あ る 。そ こ で は 有 識 者 の58%、 教 員 の66%、 主 婦 の79%、 大 学 生 の69%が ② を 指 示 し て い た 、 と の 結 果 が 出 て い る 。(稲 垣 吉 彦 『最 近 日本 語 事 情 』 大 修 館1983) 寡 聞 に し て 書 き 言 葉 で の こ の よ う な 調 査 を知 ら な い の で 、 手 近 な 新 聞 で そ れ を 調 べ て み よ う と考 え た の で あ る 。 対 象 と し た の は 、1987年2月4日 と4月29日 、30日 、1988年4月29日 、30日 の 『朝 日新 聞 』(略 号A)『 毎 日 新 聞 』(略 号M)『 日本 経 済 新 聞 』(N)『 サ ン ケ イ 新 聞 』(S)(1988年5月 以 降 『産 経 新 聞 』 と改 め た が 調 査 当 時 は 片 仮 名 書 き)『 読 売 新 聞 』(Y)の 5紙 の 都 内 最 終 版 で あ る 。 天 皇 誕 生 日 関 係 記 事 に つ い て は(A87、29=朝 日 、1987年4月29日)(M、88、30=毎 日 、1988年4月30日)の よ う に 記 す こ とに す る 。 (II)文 中 の 動 詞 句 の位 置 と尊敬 形 文 中 に 、 尊 敬 す べ き人 物 の 行 為 ・動 作 を示 す 動 詞 句 が い くつ も出 て くる 場 合 、 その い ず れ を も尊敬 の 形(以 下 厂尊 敬 形 」 と記 す)に す る必 要 が あ るの か 、 省 け る と した ら、 どの よ うな位 置 、用 法 の 時 な のか を新 聞 の 使 用 例 か ら考 え て い くこ とに す る。 尊 敬 す べ き 人物 の 行 為 ・動 作 を表 わ す 動 詞 で も、 尊 敬 の 形 を とら な い 場 合 が あ る 。 これ をハ ダ カ形 と呼 ん で 論 を進 め る こ とにす る。 文 中 い くつ か の 動 詞 句 が あ る場 合 の尊 敬 形 、ハ ダ カ形 の表 わ れ 方 に次 の よ うな4つ の 型 が あ る 。 A文 末 が 尊 敬 形 で 、文 中 はハ ダ カ 形 (1)a皇 太 子 ご一 家 を は じめ 各 皇 族 方 が 弔 問 に訪 れ 、 最 後 の お 別 れ を さ れ た。(Y)(傍 線 遠 藤 。一 はハ ダ カ形 、 一 一 は 尊 敬 形 を示 す) (2)b宮 さ まが 息 を 引 き取 る と、喜 久子 さ ま は(中 略)て い ね いに 感 謝 の 一5一

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新 聞 の敬 語 一 尊 敬 語 の 実 態 を探 る試 み と して 一 言 葉 を 述 べ ら れ た 。(M) (3)c黒 の 喪 服 に 身 を 包 ん だ 皇 太 子 ご 一 家 が(中 略)弔 問 の た め 宮 邸 に 入 ら れ た 。(N) B文 末 も文 中 も 尊 敬 形 (4)自 ら 十 年 計 画 の 「全 国 ス キ ー 場 行 脚 」 を 計 画 さ れ 、(中 略)立 山 な ど の 夏 ス キ ー ま で 足 を の ば さ れ た 。(A) C文 末 も文 中 も ハ ダ カ 形 (5)二 時 間 後 訃 報 に 接 し た 陛 下 は 「早 か っ た ね 」 と ポ ツ リ。(N) D文 中 は 尊 敬 形 ・文 末 は ハ ダ カ (6)し ば しば 呼 吸 困 難 に 陥 ら れ る よ う に な っ て い た 。(N) こ れ ら の う ち で はA、Bの 型 が 多 く 、C、Dは 少 な い 。(5)の 場 合 も 、 前 後 に 尊 敬 形 を 使 っ た 文 が 来 て い る た め 、 ∼ ポ ツ リ。 と 副 詞 で 文 を 終 え て い て も そ こ に は ポ ツ リ と 「言 わ れ た 、 も ら さ れ た 、 お っ し ゃ っ た 」 な ど の 尊 敬 形 の 動 詞 が 省 略 さ れ て い る と考 え ら れ る 。(6)の 「∼ よ う に な る 」 は 補 助 動 詞 的 に 考 え る こ と も で き 、 そ の 場 合 は た と え ば 、 「話 し て い る 」 を 「話 さ れ て い る 」 と し た と 同 じ 発 想 と考 え ら れ る 。 「陥 ら れ る よ う に な っ て い た 」 を一 ま と ま りの 動 詞 句 と考 え れ ば 、 こ こ で もハ ダ カ で は な く な る 。 A、Bの 型 の 中 で は 、 動 詞 句 の 用 法 に よ り尊 敬 形 と ハ ダ カ の ま ま の 現 わ れ 方 が 異 な っ て い る 。 そ の 用 法 と し て はa .文 中 の 動 詞 句 が 連 用 中 止 法 (例(1))b.接 続 助 詞 な ど の 助 詞 に 接 続 す る(例(2))c.連 体 修 飾 語 の 役 割 を果 た す(例(3))の 三 つ に 大 別 さ れ る 。 そ の ほ か 、 文 末 の 結 び を 尊 敬 形 に し て い る か ハ ダ カ 形 に し て い る か の 差 も現 わ れ て い る 。 ま ず 、2月4日 の 高 松 宮 逝 去 を 報 ず る5紙 と 、1987年 と1988年 の4月29 30日 の 天 皇 誕 生 日 の 天 皇 の 動 向 を伝 え る5紙 の 記 事 全 般 の 尊 敬 形 ・ハ ダ カ 形 の 現 わ れ 方 を 表 に し て み る(次 頁)。

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表1高 松宮逝 去 記事 朝 日 毎 日 日本 経済 サ ン ケ イ 詈士=レ P冗 冗 計 尊 敬 形 ノ丶 ダ カ 形 尊 敬 形 ノ丶 ダ カ 形 尊 敬 形 ノ丶 ダ カ 形 尊 敬 形 ノ丶 ダ カ 形 尊 敬 形 ノ丶 ダ カ 形 尊 敬 形 ノ 丶 ダ カ 形 連体修 飾用法 26 83.9 % 5 16.1 % 43 78.2 % 12 21.8 % 26 66.7 % 13 33.3 % 33 73.3 % 12 26.7 % 36 63.2 % 21 36.8 % 164 72.2 % 63 27.8 % 連用中 止用法 9 60.0 6 40.0 9 52.9 8 47.1 6 60 4 40 12 41.4 17 58.6 13 48.1 14 51.9 49 50.0 49 50.0 助詞など に接 続 6 54.5 5 45.5 14 46.7 16 53.3 10 71.4 4 28.6 8 57.1 6 42.9 12 66.7 6 33.3 50 57.5 37 42.5 文末に 位 置 21 77.8 6 22.2 37 :・1 6 14.0 18 64.3 10 35.7 25 :1・ 6 19.4 28 90.3 3 9.7 129 :1・ 31 19.4 計 62 73.8 22 26.2 103 71:0 42 29.0 60 65.9 31 34.1 78 65.5 41 34.5 89 66:9 44 33.1 392 68.5 :1 31.5 (%は 各 紙 、 各 用 法 ご との 尊 敬 形 とハ ダ カ形 の 比率) 全 体 の 尊 敬 形 と ハ ダ カ 形 の 比 は 表1、 高 松 宮 逝 去 記 事 で は68.5%対31.5% 表2、 天 皇 誕 生 日記 事Aで は76.6%対23.4%表3、 天 皇 誕 生 日 記 事Bで は 71.2%対28.8%で あ る 。 大 雑 把 に み て 、 皇 室 関 係 者 の 行 為 の23.4%∼31.5% は 尊 敬 語 な し で 表 現 さ れ て い る と い う こ と で あ る 。 こ れ を 新 聞 別 に み る と 、 表1で は 『サ ン ケ イ 』 の ハ ダ カ 形 の 比 率 が 最 も 高 く、 『朝 日』 の 比 率 が 最 も低 く な っ て い る 。 表2で は 『毎 日』 の ハ ダ カ 形 の 比 率 が 最 も 高 く 、 『朝 日 』 が 最 も 低 い 。表3で は 『日経 』 が 最 も高 く、 『朝 日 』 が 最 も低 い 。 つ ま り、5紙 の 中 で 『朝 日 』 が 最 も尊 敬 形 を 多 く 用 い て い る こ と に な る 。 ま た 、 尊 敬 形 、 ハ ダ カ 形 の 用 法 、 文 中 の 位 置 別 に み る と 、 ハ ダ カ 形 の 使 用 率 の 最 も高 い の は 表1で は 連 用 中 止 法 、 表2・ 表3で は 助 詞 な ど に 続 く 用 法 の 場 合 で あ る 。 ハ ダ カ 形 の 使 用 が 最 も 少 な い の は い ず れ の 表 で も 文 末 の 結 び の 部 分 に く る 場 合 で あ る 。 一7一

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新聞の敬語一尊敬語 の実態 を探 る試み として一 表2天 皇 誕 生 日 記 事A(1981年4月) 朝 日 毎 日 日本 経済 サ ン ケ イ 二士A冗 冗士 計 尊 敬 形

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力 形 尊 敬 形

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力 形 尊 敬 形

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力 形 尊 敬 形

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力 形 尊 敬 形

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力 形 尊 敬 形

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力 形 連体修 飾用法 11 0 5 4 6 1 5 4 6 4 33 71.7 % 13 28.3 % 連用中 止用法 9 2 4 7 3 2 13 3 8 3 37 68.5 17 31.5 助詞など に接 続 12 8 8 5 13 5 13 7 9 6 55 64.0 31 36.0 文末に 位 置 16 0 18 0 12 1 20 1 18 1 84 96.6 3 3.4 計 48 82.8 10 17.2 35 ・:. 16 31.4 34 79.1 9 20.9 51 77.3 15 22.7 41 74.5 14 25.4 209 76.6 64 23.4 表3天 皇 誕 生 日記 事B(1988年4月) 朝 日 毎 日 日本 経済 サ ン ケ イ 二士R冗 冗士 計 尊 敬 形

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力 形 尊 敬 形

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力 形 尊 敬 形

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力 形 尊 敬 形

力 形 尊 敬 形

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力 形 尊 敬 形

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力 形 連國【多 飾用法 14 5 6 3 9 7 14 3 12 2 55 73.3 % 20 26.7 % 連用中 止用法 7 4 2 7 4 3 17 6 6 3 36 61.0 23 39.0 助詞など に接 続 12 3 1 4 7 12 42 23 8 19 70 53.4 61 46.6 文末に 位置 17 2 16 1 15 2 43 1 22 0 113 45.0 6 5.0 計 50 78.1 14 21.9 25 62.5 15 37.5 35 59.3 24 40.7 116 77.9 33 22.1 48 66.7 24 33.3 274 71.4 110 28.6

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次 に 、連 用 中 止 法 で 打 消 の助 動 詞 「ず 」 を伴 う場 合 、助 詞 に 接 続 す る場 合 の 助 詞 に よ る違 い な ど、個 々 の例 に つ い て み て い く。 A連 用 中 止 法 の 連 用 形 が 打 消 の 助 動 詞 「ず 」 の 場 合 (7)母 、 貞 明 皇 后 の 急 な 逝 去 に は ご 臨 終 に 間 に 合 わ ず(中 略)… 果 た さ れ な か っ た 。(N) (8)ほ と ん ど 口 も 開 か れ ず(中 略)… に ひ た ら れ て い る よ う だ っ た 。(Y) (7)は ハ ダ カ の ま ま 、(8)は 尊 敬 形 の そ れ ぞ れ の 連 用 中 止 法 で あ る 。 こ う し た 「ず 」 を 伴 う 動 詞 旬 は 以 下 の も の な ど14例 あ っ た 。 (9)(陛 下 は)当 時 は … 顔 色 も さ え ず 、 声 に も 力 が な か っ た 。 (A,88,29) (10)(〃)出 席 さ れ ず …(M) (11)(高 松 妃 殿 下 は)笑 顔 を 絶 や さ ず …(Y) こ の14例 の 内 訳 は ハ ダ カ 形10例 、 尊 敬 形4例 で 、 ハ ダ カ 形 の 方 が 多 く現 わ れ て い る 。「∼ ず 」の 前 に く る 動 作 は 天 皇 の も の で あ っ て も尊 敬 形 に す る 必 要 が な い と い う こ と で あ る 。 文 語 の 「ず 」 を 用 い 、 連 用 中 止 で 簡 潔 に 引 き 締 ま っ た 表 現 を し よ う と し て い る 時 に 動 詞 部 分 を 尊 敬 形 に す る と 音 節 数 が 増 え て 、 そ の 意 図 が 生 か せ な く な る か ら 、 と い う こ と で あ ろ う。 B接 続 す る 助 詞 に よ る 違 い が あ る か B-1接 続 動 詞 「て 」 を 伴 う場 合 (12)お 体 に す が っ て 泣 か れ た 。(A) (13)天 皇 陛 下 が 病 室 に 見 舞 わ れ て 皇 居 に 戻 ら れ た 直 後 …(S) の よ う に ハ ダ カ 形(12)、尊 敬 形(13)と も現 わ れ て い る 。 数 の 上 で は 、 ハ ダ カ 形 41例 に 対 し 、 尊 敬 形10例 で あ っ た 。 こ の 場 合(12)の よ う に 他 の 動 詞 句 に 直 接 続 く例 で は す べ て ハ ダ カ 形 で あ り 、 尊 敬 形 は(13)のよ う に 「見 舞 う」 と 「戻 一g一

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新 聞 の 敬 語 一尊 敬 語 の 実 態 を探 る 試 み と して 一 る 」 の 二 つ の 動 詞 の 間 に 他 の 語 が 挿 入 さ れ る 場 合 に 用 い ら れ て い る 。 た だ し 、 間 に 他 の 語 が 挿 入 さ れ て も 、 そ の 前 の 「て 」 を伴 う動 詞 部 分 が ハ ダ カ 形 の もの も あ る 。 B-2接 続 助 詞 「が 」 を 伴 う場 合 (14)… 必 死 に こ ら え ら れ た が …(Y) ⑮ … 続 け ら れ た が …(A) な ど 、21例 中19例 ま で が 尊 敬 形 で (16)… 神 奈 川 県 藤 沢 市 の 宮 邸 別 邸 へ 見 舞 い に 向 か っ た が 、 到 着 さ れ た 時 は す で に …(M) (17)(陛 下 の)口 調 こ そ 乱 れ な か っ た が 、 た だ 静 か に 涙 が ほ お を伝 わ っ た 。(Y、88、29) の2例 の み が ハ ダ カ 形 で あ っ た 。(17)の例 は 「乱 れ る 」 の 主 体 は 天 皇 で あ る が 、 直 接 の 主 語 は 「口 調 」 と も考 え られ 、 「陛 下 が 乱 れ な か っ た 」 の 文 よ り 敬 意 が 低 い こ と も考 え ら れ る 。 B-3接 続 助 詞 「な が ら 」 に 接 続 す る場 合 (18)(高 松 宮 殿 下 は)光 景 を な が め な が ら(N) ⑲(陛 下 は)強 く希 望 さ れ な が ら …(N) とハ ダ カ 形 、 尊 敬 形 の 両 方 の 例 が あ る 。 こ の 「な が ら」 を 伴 う動 詞 の 例 は 9例 あ る が 、 こ の う ち ハ ダ カ 形 の も の7例 、 尊 敬 形 の も の2例 で あ っ た 。 B-4副 助 詞 「な ど」 を伴 う場 合 (20)食 べ た もの を 戻 さ れ る な ど …(Y) ⑳ 陛 下 は 四 月 か ら 国 、 公 賓 を は じめ 、 各 界 の 人 々 と会 う な ど 、 ご 公 務 も 大 幅 に 増 加 。(M、88、29) 「な ど 」 を 伴 う もの は14例 で あ っ た が、 こ の う ち13例 は(2①の よ う な 尊 敬 形 の も の で 、 ハ ダ カ 形 の も の は ⑳ の1例 の み で あ っ た 。

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C受 身 形 の場 合 (22)花 束 を贈 られ る高 松 宮 ご夫 妻 。(S) (23)母 を四 十 二 歳 の若 さで ガ ン に奪 わ れ た 妃 殿 下 。(Y) こ の種 の 受 身 表 現 は 全 て ハ ダ カ 形 で 用 い られ て い る 。受 身 表 現 で は 、一 般 の 尊 敬 形 と同 形 の 「れ る ・られ る」 が 用 い られ る の で 、 こ の受 身 の 部 分 を尊 敬 形 に す る と し た ら、「花 束 をお 贈 られ に な っ た/贈 ら れ な さ っ た/贈 られ あ そば した 」 とで も しな け れ ば な らな い だ ろ うが 、 そ う した 形 は今 回 の 新 聞 の調 査 で は 見 当 た らな か っ た 。 こ こ は 、 尊 敬 形 と受 身 形 をつ く る助 動 詞 「れ る ・ら れ る」 が 同一 語 彙 に よ る もの だ とす る 次 の よ う な考 え 方 で整 理 した い と思 う。 「… … これ ら(受 身 ・尊 敬 ・可 能 ・自発 遠 藤 注)の 意 味 は い ず れ も一 連 の 系 列 に あ るた め 、相 互 に 転 化 しや す く、個 々 の 用 例 につ い て は 意 味 が 決 め に くい場 合 が あ る」(『 日本 文 法 大 辞 典 』 田 中 章 夫P915) 今 回の 調 査 で も 、受 身 か 尊 敬 か 区 別 しに くい 次 の よ うな例 が あ っ た 。 (24)(陛 下 は)… 表 明 され た。 ま た 、二 月 に 亡 くな られ た 弟 宮 、 高 松 宮 さ ま を思 うお 歌 二 首 も披 露 され た。(A、87、29) (25)(陛 下 は)昨 年 十 月 に予 定 され て い た 沖 繩 訪 問 が 入院 ・手 術 に よ っ て 中 止 さ れ た こ と…(S、88、29) (24)の「披 露 され た 」 は歌 を主 体 とす れ ば 受 身 で あ り、陛 下 を主 体 とす れ ば 尊 敬 、㈱ も沖 繩 訪 問 を主 体 とす れ ば受 身 で 、陛 下 を主 体 とす れ ば 尊 敬 と、 両 様 に解 釈 され る。 この よ うに 、受 身 ・尊 敬 が 未 分 化 の部 分 を残 して い る と考 え る な らば 、「ガ ン に母 を奪 わ れ た妃 殿 下 」 な ど と表 現 して も、 書 く側 読 む 側 の どち ら に も ハ ダ カ 形 の 粗 末 な 扱 い との 意 識 は 薄 い こ とが 想 像 で き る。 一11一

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新聞の敬語 一尊敬語の実態 を探 る試み として一 (III)補 助 動 詞 を 伴 う 語 の 尊 敬 形 の 位 置 補 助 動 詞 を 伴 う動 詞 の 場 合 、 本 動 詞 と補 助 動 詞 の い ず れ を 尊 敬 形 に す る か 、 つ ま り、 「読 ん で い る 」 は 「読 ま れ て い る 」 か 「読 ん で お ら れ る 」 か の ど ち ら が 適 切 な の か 、 ど ち ら が よ り一 般 的 な の か が こ こ で の 問 題 で あ る 1.本 動 詞 が 尊 敬 形 1-a∼ て い る (26)(宮 さ ま は)入 院 さ れ る 際 に も 、 車 い す に は 乗 ら れ て い た が …(N) (27)宮 さ ま は す で に 十 月 下 旬 の 一 週 間 、 ガ ン セ ン タ ー に 入 院 さ れ て い た 。(M) ㈱ 陛 下 の 立 場 を い つ も お 考 え に な っ て い た 。(Y) 1-b∼ て く る (29)外 出 の ご 予 定 も い っ さ い … 宮 さ ま の 世 話 に あ た ら れ て き た 。(Y) (30)「 ガ ン 征 服 」 を 念 願 と さ れ て き た 喜 久 子 妃 殿 下 の …(Y) 2.補 助 動 詞 が 尊 敬 形 2-a∼ て い る (31)さ め た 目 で 物 事 を 見 て お ら れ た よ う で あ る 。(S) (32)気 さ く な 面 も持 っ て お ら れ た 高 松 宮 さ ま 。(A) (33)平 気 で 何 分 間 か 撮 影 の 光 景 を な が め な が ら 待 っ て い ら し た 姿 に …(N) 2-b∼ て く る (34)戦 前 は 各 方 面 に 力 を 尽 く し て こ られ た が …(S) (35)気 さ くに 国 民 の 間 に 入 る こ と を 心 掛 け て こ ら れ た 皇 族 で あ る だ け に 2-c∼ て い く (36)呼 吸 困 難 に な っ て い か れ る 宮 さ ま の 手 を …(S) (37)宮 さ ま は … 戦 後 の 混 乱 期 に 大 衆 の 間 に 入 っ て い か れ た 。(Y)

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2-d∼ て し ま う (38)宮 さ ま は 逝 っ て し ま わ れ た 。(S) 「∼ て い る 」、「∼ て く る 」 に は 「∼ て 補 助 動 詞 の 尊 敬 形 」(Aダ イ ブ とす る) と 、「尊 敬 形 て+い る(く る)」(Bタ イ プ とす る)の 両 方 の 型 が あ る が 、「∼ て い く」 「∼ て し ま う 」 に は 、Aタ イ プ の 例 だ け 採 集 で き た 。 2-a∼ て い る の 場 合 補 助 動 詞 を伴 っ た 「∼ て い る 」 の 尊 敬 形 で 、 本 動 詞 が 尊 敬 形 に な っ た 場 合 「い る 」の 部 分 は 変 化 し な い が 、「い る 」の 部 分 が 尊 敬 形 に な る 場 合 は 「い ら っ し ゃ る 」 「お ら れ る 」 の 形 で 使 わ れ て い る 。 「い ら れ る 」 も あ り う る の だ が 、 今 回 の 新 聞 の 調 査 で は1例 も な か っ た 。 尊 敬 形 の 「い ら れ る 」 が み ら れ な い こ と に つ い て は 「『妻 に 先 立 た れ る と、一 日 も生 き て は い ら れ な い だ ろ う 』 の よ う に 、可 能 表 現 に 多 く使 わ れ る よ う に な っ た こ と と無 関 係 で は な い と思 わ れ る」(『言 葉 に 関 す る 問 答 集13』 文 化 庁 ・1987) の よ う な 解 釈 が 成 り立 つ と思 う 。 ま た 、 「い ら っ し ゃ る 」 「お ら れ る 」 の 敬 意 の 差 に つ い て も 「敬 意 の 差 は ほ と ん ど な い と 考 え ら れ る 。 た だ 、 『お ら れ る 』 の ほ う が や や 文 章 語 的 で 改 ま っ た 言 い 方 で あ る の に 対 し 、 『い ら っ し ゃ る 』は 口 頭 語 的 で 日 常 的 な 言 い 方 」(同 上 書)に 従 う こ と に し て 、 こ こ で は 敬 意 の 質 に つ い て は 論 及 せ ず 、 形 の 上 の ヴ ァ リ エ ー シ ョ ン と 頻 度 に つ い て 考 え て み る 。 さ て 、 本 動 詞 と補 助 動 詞 の い ず れ を 尊 敬 形 に す る の が 適 切 な の か 。 (39)(天 皇 は)じ っ と悲 し み に 耐 え て お ら れ た ご 様 子 だ っ た と い う。(S) ㈹(天 皇 は)深 い 悲 し み に 耐 え ら れ て い た 。(M) と同 じ場 面 の 描 写 に 、 両 方 の 用 法 が 用 い ら れ て い る 。 こ こ に は 、 ど ち ら が 敬 意 が 高 い か の 敬 意 の 差 は な い 。Aタ イ プ 「耐 え て お ら れ た 」 とBタ イ プ 一13一

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新 聞 の 敬 語 一尊 敬 語 の 実 態 を探 る試 み と して 一 「耐 え られ て い た」 の 差 は 、 前 者 の よ うに 補 助 動 詞 部 を尊 敬 形 に して 動 詞 句 全 体 を尊 敬 で 括 ろ う と し たか 、 後 者 の よ うに 本 動 詞 部 だ け 、 つ ま り意 味 を持 つ 部 分 を尊 敬 形 に して 天 皇 の動 作 ・行 為 の 部 分 に敬 意 を表 し た の か 、 の違 い で あ るが 、表 現 意 図 に お い て そ の 違 い を明 らか に し よ う とす る もの が あ っ た とは思 わ れ な い 。 語 感 と して は 語 末 を尊 敬 形 に して 全 体 を括 る前 者 の 方 が 、「∼い た」 とハ ダ カ で 放 りだ す 後 者 よ り穏 や か で敬 意 も高 いか に 思 わ れ るが 、 そ の こ とは ま た 、 前 者 の情 緒 性 と後 者 の 簡 潔 性 ・機 能 性 との 差 と も言 え る こ とで 、 その 選 択 は 文 体 、 記事 の 内容 との つ り合 い を考 えて な され て い る もの と思 わ れ る。 量 的 に み る と、補 助 動 詞 を尊 敬 形 とす るAタ イ プ の もの12例 、本動詞 を 尊 敬 形 とす るBタ イ プ の もの55例 で 、Bタ イ プ の ものがAの3倍 を越 え て い る 。 いず れ もハ ダ カ形 の もの も4例 あ っ た ⑳ 昨 年 宮 内 庁 は 会 見 の 際 に 初 め て 陛 下 の た め に お 答 え の メ モ を用 意 し た 。しか し、慣 れ て い な い 陛 下 が 読 み違 え られ る こ と も あ っ た ため 、 今 年 は 従 来 通 りメ モ な しで 質 問 に 答7¥/`られ た 。(N、88、29) (42)今 で は 毎 日の よ うに 執 務 場 所 の 宮 殿 に 出 か け られ るな ど ご体 調 も安 定 して お り、 …(N、88、29) (41)は連 体 修 飾 句 と して で あ り、(42)は体 調 を主 語 とみ て少 し軽 く考 え られ た もの か も しれ な いが 、他 の 場 合 は連 体 修 飾 句 で あ って も尊 敬 形 に な っ て い る の だ か ら、 それ は 理 由 に な ら な い 。 一 般 に 書 きこ とば の 敬 語 の使 用 を説 明 す る際 、 い くつ か の 動 詞 句 を 含 む 文 で は 、 そ れ ぞ れ を尊 敬 形 にす る必 要 は な く、最 後 の部 分 だ け を尊 敬 形 に して も最 低 の 敬 意 は表 わせ る 、 と され る(大 石 初 太 郎 『敬 語 』P137な ど)。 とす れ ば補 助 動 詞 を伴 う場 合 も本動 詞 部 分 よ り補 助 動 詞 部 分 を尊 敬 す る方 が 妥 当 とい う こ とに な る が 、 新 聞 の 実 情 と して は 本 動 詞 部 分 の 尊 敬 形 が 圧 倒 的 に 優 勢 で あ る こ とが わ か っ た。

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補 助 動 詞 部 分 は 尊 敬 形 に す る よ りハ ダ カ 形 の 方 が 書 き 言 葉 と し て は 引 き 締 ま っ た 簡 潔 な 表 現 で あ り、新 聞 記 事 と し て は そ れ が 好 ま れ る の で あ ろ う。 次 に 他 の 補 助 動 詞 の 場 合 を み て み る 。 「∼ て い る」 の 場 合 は 、 意 味 の 上 で は ど ち ら を尊 敬 形 に し て も違 い は な か っ た が 、 補 助 動 詞 に よ っ て は 入 れ 替 え 不 可 能 な も の 、 置 き 換 え る と 意 味 が 異 な る も の が あ る 。 2-b∼ て く る の 場 合 (43)兄 の 天 皇 陛 下 と と も に 生 き て こ ら れ た 高 松 宮 さ ま が …(S) (44)… … 激 動 の 昭 和 時 代 を 乗 り切 っ て こ ら れ た 陛 下 の 一 側 面 を 垣 間 見 た 思 い が す る 。(A、88、29) で 、 「生 き ら れ て き た 」 「乗 り切 ら れ て き た 」 と置 き 換 え る の は 無 理 で あ る が 、 (45)各 方 面 に 力 を 尽 く し て こ ら れ た 。(S) (46)祝 宴 で は 陛 下 は 最 後 ま で 出 席 と 食 事 を と も に さ れ て き た が … 今 年 は 退 席 さ れ た 。(S、88、30) を そ れ ぞ れ 「尽 く さ れ て き た 」 「と も に し て こ ら れ た 」 に 置 き 換 え る こ と は 可 能 で あ る 。 こ の こ と は 動 詞 「生 き る 」 「乗 り切 る 」 と 「来 る 」 とが い ず れ も 変 化 を 表 わ す 動 詞 で あ る こ と に よ る 意 味 の 近 さ と 結 合 の 強 さ と 、 「尽 くす 」 「す る」 と 「く る 」 と の 関 係 の 弱 さ の 差 で あ る と思 わ れ る 。つ ま り 「生 き て く る 」「乗 り切 っ て くる 」 の 本 動 詞 と補 助 動 詞 の 結 合 の ほ う が 、 「尽 く し て く る 」 「し て く る 」 の 結 び つ き よ り 緊 密 で あ っ て 一 語 化 し た も の を 尊 敬 形 に す る と し て 「∼ く る 」 の 部 分 を 尊 敬 形 に し た と考 え ら れ る 。 そ の 一 方 で 「食 事 を と もに し て こ ら れ た/と も に さ れ て き た 」 の い ず れ も可 能 な の は 、前 者 で は 「と も に し て く る 」 を 一 括 り と し て 尊 敬 形 に し た 、 後 者 で は 「と も に す る 」 を 一 括 り と し て 尊 敬 形 に し 、 そ の よ う な こ と が 続 い て 行 わ れ て い る 、 と 力 点 の 置 き 方 は 異 な っ て 両 様 の 用 法 が 考 え ら れ る の 一15一

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新 聞 の 敬 語 一尊 敬 語 の 実 態 を探 る試 み と して 一 で あ る。「くる」本 来 の 意 味 が 薄 れ 、機 能 と して の役 割 の 強 い補 助 動 詞 の場 合 は いず れ を尊 敬 形 に して もよ い 、 とい う こ とで あ る。 2-c∼ て い くの場 合 (47)呼 吸 困難 に な って い か れ る宮 さ まの …(S) (48)大 衆 の 中 に 入 っ て い か れ た。(Y) こ こ で は 、㈲ 、(48)のよ うな タ イ プ の 用法 だ け を採 集 した。 この 例 の よ う な 状 況 を描 写 す るの に 「∼ に な られ て い く」「入 ら れ て い く」 とのBタ イ プ の 表 現 は しな い で あ ろ う。「な っ て い く」 とい う変 化 す る状 況 を描 写 した い の で あ り、 そ れ に 敬 意 を表 し た い の で あ るか ら、 全 体 を括 る形 の 尊 敬 表 現 を 選 択 す るの が 自 然 な の で あ る。 2-d∼ て しま うの場 合 (49)宮 さ ま は 逝 って しま わ れ た(S) こ の1例 しか な か っ たが 、 これ も 「∼ て い く」 の場 合 と同 じ く、「逝 か れ て し ま っ た」 と置 き換 え る こ とは で きな い 例 で あ る。 以 上 か ら、 補 助 動 詞 と本 動 詞 の い ず れ を尊 敬 形 に す るか は 、 補 助 動 詞 に よ って 異 な る こ とが わ か る。 「∼ て い る」 は補 助 動 詞 を尊 敬 形 に す るAタ イ プ 、本動 詞 を尊敬 形にす るBタ イ プ の いず れ も あ り、 そ れ ぞれ の置 き換 え も可能 な 例 が 多い が 、実 際 に はBタ イ プ の方 が 多 く使 わ れ て い る 。 「∼ て くる」 「∼ て い る」 「∼て し ま う」 は 、補助動 詞の本 来の意味 の度 合 い の 強 い もの 、 つ ま りそ の 結 合 に よ り本 動 詞 に新 し い意 味 を加 え た度 合 い の 強 い もの は補 助 動 詞 部 分 を尊 敬 形 に す る。言 いか え れ ば 本 動 詞+補 助 動 詞 の結 合 が 強 く一 語 の 意 識 が 強 ま っ た も の ほ ど一 語 の語 末 部 分 で あ る 補 助動 詞 部 分 を尊 敬 形 に す る とい う こ と で あ る 。 以 下 に今 回 採 集 した補 助 動 詞 を伴 う表 現 の 尊 敬 形 の現 わ れ 方 を示 す 表 を 掲 げ る 。 尊 敬 さ れ る 主 体 別 に分 け て み た。

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表4尊 敬形 に す る語 Aタ イ プ Bタ イ プ 一 s

h し や る 1 て お ら れ る s て こ ら れ る s て い か れ る S て し ま わ れ る お S て い る S ら れ て い る s ら れ て く る 87年 2月 4日 天皇 0 2 0 0 0 0 11 0 高松 宮 1 5 4 2 1 1 9 0 高松 宮妃 0 3 1 0 0 0 7 1 87年4月 29日 ・30日 天皇 ・皇 后 0 1 0 0 0 1 6 0 88年4月 29日 ・30日 天 皇 0 0 1 0 0 0 20 1 計 1 11 6 2 1 2 53 2 (IV)尊 敬 語 の レベ ル 冒 頭 に 「こ れ か ら の 敬 語 」 を 引 用 し た が 、 そ の 中 に 「『れ る ・ら れ る 』 ま た は 『お 一 に な る 』 『ご 一 に な る 』 の 型 を と っ て 表 現 し、 平 明 ・簡 潔 な も の が 望 ま し い 」 と記 さ れ て い た 。 こ こ で は 「れ る 」 「ら れ る 」 形、 「お 一 に な る 」 「ご 一 に な る 」 形 を 平 明 簡 素 な 表 現 と し て 同 列 に お か れ て い る が 、 尊 敬 語 の レ ベ ル を 問 題 に す る 場 合 は 、そ の 両 形 は 同 じ レ ベ ル で は な く、 「れ る 」 「ら れ る 」 形 は 「お(ご)一 に な る 」 形 よ り敬 意 の レ ベ ル は 低 い と さ れ て い る 。 そ こ で 、 新 聞 で 実 際 に は ど ち ら の レ ベ ル の も の が 多 く使 わ れ て い る の か を 調 べ て み た 。 そ の 前 に 高 松 宮 の 逝 去 を 報 ず る 各 紙 の 尊 敬 形 の 用 い 方 を み て み る 。 い ず 一17一

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新聞の敬語一尊敬語の実態 を探る試み として一 れ も2月3日 夕 刊 ト ッ プ 記 事 の 見 出 し と リー ドの 記 事 で あ る 。 (5① 高 松 宮 さ ま ご 死 去 … で 死 去 さ れ た 。 … 八 十 二 歳 だ っ た 。(A) (51)高 松 宮 さ ま ご 逝 去 … で お 亡 くな りに な っ た 。 八 十 二 歳 で あ ら れ た 。(M) (52)高 松 宮 さ ま ご 逝 去 … で 死 去 さ れ た 八 十 二 歳 だ っ た(N) (53)高 松 宮 さ ま ご 逝 去 … で お 亡 くな りに な っ た 。 八 十 二 歳 の こ 生 涯 だ っ た 。(S) (54)高 松 宮 さ ま ご 逝 去 … で お 亡 く な り に な っ た 。 八 十 二 歳 だ っ た 。(Y) 「死 去 」 と 「逝 去 」、 「死 去 さ れ る 」 と 「お 亡 くな りに な っ た 」、 「だ っ た 」 と 「で あ ら れ た 」 「∼ の こ 生 涯 だ っ た 」 の そ れ ぞ れ の 違 い を 、選 び な が ら 各 紙 が 見 出 し を つ け 記 事 を 書 い て い る 。 同 じ事 実 を わ ず か な こ と ば で 報 道 す る の に 、5紙 が そ れ ぞ れ ど こ か 異 な っ て い て 、 同 じ表 現 を し た も の は1紙 も な い 。 そ れ ぞ れ が 敬 意 の レ ベ ル の 選 択 に 独 自性 を 示 し て い る と も い え る 。 こ っ し た 見 出 しや リー ドは 、 短 い 語 句 や 文 で 要 点 を つ ふ た もの 、 し か も 予 め 敬 意 に つ い て 検 討 し て お く よ う な 余 裕 の な い 短 時 間 の 判 断 で 選 ば れ た も の で あ る か ら 、 い っ そ う純 粋 に 各 紙 の 日 ご ろ の 言 葉 遣 い が 出 て し ま っ て い る と 思 わ れ る 。 な お 、 宮 内 庁 の 発 表 で は 「宣 仁 殿 下 は … に お い て 薨 去 せ ら れ ま し た 」 で あ っ た と 『サ ン ケ イ 新 聞 』 は 報 じ て い る 。 「薨 去 」 は 天 皇 ・皇 后 ・皇 太 ・太 后 ・皇 太 后 以 外 の 皇 族 の 死 去 を 意 味 す る 語 だ が 、 『朝 日新 聞 用 語 の 手 引 き』 で は 、 こ の 語 は 使 わ ず 、 ご 逝 去 、 ご 死 去 、 ご 永 眠 、 お 亡 く な り に な る 、 亡 く な ら れ る 、 を 使 う と し て い る 。 『現 代 国 語 例 解 辞 典 』 で も 「も と 、 皇 族 や

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三 位 以 上 の 人 が 死 去 す る こ と」 と 記 述 さ れ て い る 。 「薨 去 」 だ け で も 敬 意 の レ ベ ル が 一 般 の も の よ り格 段 と 高 い の に、 そ の 上 に 「薨 去 せ ら れ る 」 と い う 。 「せ ら れ る 」 は 「高 度 な 敬 意 を 表 わ す 」(『広 辞 花 』 第 三 版)も の で 、 「薨 去 さ れ る 」 よ り一 段 と 高 い 敬 意 を表 し て い る 。 宮 内 庁 の 用 語 は 「こ れ か ら の 敬 語 」 の 線 に と ら わ れ ず 独 自 に 、 庶 民 感 覚 と 離 れ た と こ ろ に 今 な お あ る ら し い こ とが こ れ で 窺 わ れ る 。 以 上 は 、 同 じ 記 事 の 扱 い で 言 葉 遣 い の レ ベ ル の 違 う例 で あ る が 、 次 に 各 紙 を 通 し て 、 人 物 や 事 柄 に よ る 敬 意 の レ ベ ル の 差 を み て い く。 断 定 を 表 す 「∼ で あ る 」 の 表 現 に (55)ご 自 身 も ス ポ ー ツ マ ン で あ ら れ た が …(M) (56)病 気 に は ほ とん ど縁 の な い 元 気 な 宮 さ ま で い ら っ し ゃ っ た だ け に (s) ㈹ 戦 前 は"海 軍 の 宮 さ ま"で あ っ た 。(S) と 三 つ の レ ベ ル の 表 現 が あ る 。「あ ら れ る 」は 現 在 で は あ ま り使 わ れ な い(『言 葉 に 関 す る 問 答 集13』)レ ベ ル の 高 い 表 現 で あ る が 、今 回 の 調 査 で は3例 (高 松 宮 に 対 し て2、 天 皇 に 対 し て1)採 集 し て い る 。 一 般 の 動 詞 の 場 合 は 「お ∼ に な る 」 と 「∼(ら)れ る 」 の 二 つ の 型 が 使 わ れ て い る が 、 そ の 実 態 を調 べ て み る 。 (58)(陛 下 は)わ ず か 二 時 間 前 に 高 松 宮 さ ま を 見 舞 わ れ た ば か り だ っ た 。 (Y) (59)陛 下 が は じめ て 宮 邸 に お 見 舞 巨 に な っ た の は 一…(M) と 、 同 じ動 詞 で も二 つ の レベ ル で 用 い ら れ て い る 。 ま ず 全 体 と し て の 「れ る ・ら れ る 」 形 と 「お(ご)∼ に な る」 の 使 わ れ 方 を 考 え て み る 。 「い ら っ し ゃ る 」 「あ ら れ る 」 は こ こ に は 入 れ て い な い 。 ま た 「ご 出 席 」 「ご 訪 問 」 な ど は 動 作 性 の も の で あ る が 名 詞 の 尊 敬 形 と し て こ こ に は 入 れ ず 、 あ く ま で 動 詞 形 の 尊 敬 形 に 限 っ た 。 一19一

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新 聞 の 敬 語 一 尊 敬 語 の実 態 を探 る試 み と して 一 表5 レベ ル 動 作主 れ る ・られ る 形 お(ご)∼ に な る 形 87年 2月 4日 天 皇 11692.1 107.9/ 高松 宮 17889.4 2110.6/ 高 松宮 妃 7997.5 22.5/ 87年4月 29日 ・30日 天皇 14486.7 2213.3/ 88年4月 29日 ・30日 天皇 21894.8 125.2% 計 73591.6 678.4/ 「れ る ・ら れ る 」 形 が、 よ り敬 意 の レベ ル の 高 い 「お(ご)∼ に な る 」 形 と比 べ て は る か に 多 く使 わ れ て い る こ とが わ か る 。 書 き 言 葉 と し て は 、 こ の 形 が 最 も ふ さ わ し い と 新 聞 で は 考 え ら れ て い る こ とが わ か る 。 文 部 省 の 「平 明 ・簡 素 な 敬 語 」 が こ こ に 生 き て い る の で あ る (V)誤 用 と思 わ れ る尊 敬 表 現 敬 語 の 混 乱 が 問 題 に され 、誤 用 か 、 ゆ れ か 、 慣 用 と して 認 め る か 、 な ど を問 わ れ る際 、具 体 例 に 基 づ い て判 断 をす る こ とに な る が 、 今 回調 査 し た 新 聞 記 事 の 中 に も、 二 、 三 誤 用 か 許 容 で きる か 判 断 に迷 う もの が あ っ た 。 次 の よ う な例 で あ る。 ㈹ 妃 殿 下 は 、 天 皇 陛 下 に伝 え られ た以 外 は 本 当 に病 名 を ご 自分 の 胸 に し ま わ れ 、 外 出 の ご予 定 もい っ さ い と りや め に な っ て 、 宮 さ まの 世

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話 に あ た られ て きた 。(Y) 「と りや め に な る」 の 主 語 はA「 予 定 が と りや め に な る 」 かB「 妃 殿 下 が と りや め る」 か の い ず れ か で あ るが 、 この 文 中 の い くつ か の動 詞 の 主 体 は 全 て 妃 殿 下 で あ る こ とか ら、こ こ もBと 考 え るの が 自然 だ と思 う。「お ∼ に な る」 の 尊 敬 形 の 「お 」 が 脱 落 した の で あ ろ う。 この 箇 所 は 妃 殿 下 の行 為 で あ るか ら、「と りや め て 」「と りや め られ て」 「お と りや め に な っ て」 の い ず れ か が 正 しい が 、 同 一 文 中 に 「伝 え られ 」 「し ま わ れ 」 「あ た られ 」 と 多 くの 尊 敬 形 が 使 わ れ て い るか ら、 こ こ は 「と りや め て 」 に した い とこ ろ で あ る。 この 例 は敬 語 の 誤 用 とみ る以 外 に 、途 中 で 別 の 文 脈 が 挿 入 され た文 脈 の ね じれ とみ る こ と も で き る。 そ の場 合 は 「予 定 が と りや め に な る」 で 、「と りや め 」 は 名 詞 で あ る。 (61)陛 下 は 宮 さ ま 入 院 中 か らL度 、病 院 に たず ね な け れ ば な ら な い」 と侍 従 に 申 され る な ど、 ご心 配 の 色 を濃 くさ れ て い た。(M) 尊 敬 語 で 敬 意 を表 し て きた 陛 下 の 侍 従 に対 す る行 為 を 「申 さ れ る」 は 誤 りで あ る。 尊 敬 の 助 動 詞 「れ る」 をつ け て は い る が 「申 す」 は 謙 譲 語 で あ る 。「先 ほ ど先 生 が 申 され ま した よ うに」の 例 は よ くひ きあ いに 出 され るが 、 こ れ は 「『申 され る』を と くに あ ら た ま っ た場 合 の上 等 の 尊 敬 語 と感 じ る意 識 は か な り一 般 的 だ が 、これ を 認め な い 規 範 論 が 今 日優 勢 で あ る」(大石 『敬 語 』前 掲 書P86)で 、特 に 天 皇 の行 為 に 用 い るの は 明 らか に 誤 りで あ る。 (62)高 松 宮 さ ま は 、 小 さ い 時 か ら長 兄 の 陛 下 に 歯 に衣 を着 せ ず 率 直 に 意 見 な ど を 申 し上 げ て きた 。(M) これ は 高 松 宮 の 天 皇 へ の 謙 譲 で あ るか ら誤 り とは 言 え な い が 、 記 者 の 高 松 宮 に対 す る敬 意 は示 され て い な い 。 先 に み た よ う に 、 尊敬 す べ き 人物 に 対 して も必 ず し も尊 敬 形 で終 始 して い な いわ け で は な い 。現 在 の 新 聞 の実 情 か らす れ ば 、こ こが ハ ダ カ形 で あ っ て もか ま わ な い 。た だ 「申 し上 げ る」 一21一

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新 聞 の 敬 語 一尊 敬 語 の 実 態 を探 る試 み と して 一 を謙 譲 語 で あ る と意 識 し、 記 者 側 か らは ハ ダ カで あ る こ と を承 知 の 上 で表 現 して い るか ど うか は 疑 問 で あ る 。 次 の 例 も同 じケー ス で あ る。 (63)病 室 を 出 る 前 、 妃 殿 下 は 「お別 れ を した い 」 と特 に 申 し 出 て 、 約 十 五 分 間 、ご遺 体 の 前 に、寛 仁 ご夫 妻 と三 人 で ひ と時 を過 ご さ れ た 。(Y) 記事 で は 妃 殿 下 に対 して 尊 敬 語 で偶 して い る の だ か ら、 そ の 妃 殿 下 の 行 為 に 謙 譲 語 「申 し出 る」 を用 い る の は 誤 りで あ る。 仮 に 、妃 殿 下 の 天 皇 に 対 す る行 為 で あれ ば こ の 用 法 が 妥 当 とな るが 、 こ こで は 病 院 側 に対 す る行 為 で あ る か ら、 謙 譲 表 現 の 必 然 性 は な い 。(63)と同 じ く、 も しか し た ら、 記 者 の 尊 敬 ・謙 譲 表 現 を と り違 え た もの か も し れ な い 。 (64)高 松 宮 さ ま を お 見 舞 い 、 無 言 で 引 き あ げ られ る天 皇 陛 下 。(M) この 「お 見 舞 い」 は ど う解 釈 す べ きだ ろ うか 。動 詞 「見 舞 う」 の 連 用 中 止 な ら 「見 舞 い」 で な け れ ば い け な い し、 そ の尊 敬 形 の 連 用 中 止 な ら 「お 見 舞 い に な り」 「見 舞 わ れ 」 で な くて は い け な い。 名 詞 形 「見 舞 い 」 に尊 敬 の接 頭 語 「お 」 の つ い た もの な ら 「お 見 舞 い を し」 とか 「お 見 舞 い をす ま せ 」 と動 詞 を伴 わ な い と文 中 に 位 置 を 占め る こ とは で きな い 。 な お 「お 見 舞 い し」 は謙 譲 形 に な るか ら、 天 皇 か ら弟 で あ る 高松 宮 へ の 行 為 と して は 使 え な い。 「∼ を お 見舞 い 」は 新 聞 の場 合 「被 害 者 をお 見 舞 い」 の よ うな文 で 、 見 出 しや 、 記 事 中 の 省略 文 な ど で は 見 られ る使 い 方 で あ る 。 そ う した 用 法 も あ る た め 、 まだ 完 結 して い な い従 属 文 の 中 につ い使 っ て し ま っ た も の と思 わ れ る 。 読 む 方 もつ い 見過 ご して し ま い そ うで は あ る が 、や は りこ れ は 誤 用 で あ る 。 (65)昨 年 の 誕 生 日の 祝 宴 で 食べ た もの を吐 か れ てか ら一 年 … 励 まれ て い る。(M、88、29) ㈹ そ の 串 だ ん ご を,陛 下 と高松 宮 ご夫 妻 が 楽 し そ うに 食べ られ た 、 と 後 で聞 い た(M) ㈹ 若 い時 か ら酒や た ば こは 飲 まれ ず …健 康 に は気 を配 られ て い た 陛 下 。

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(S,88,29) これ らは 誤 用 で は な い 。(65)はハ ダ カ 形 で 天 皇 の 「食べ る」 動 作 を表 した もの 、㈹ ㈹ は 「食 べ る」 「飲 む」 を 「れ る ・ら れ る」 形 の 尊 敬 形 に し た もの で あ る。 日本 語 教 育 の 初 級 で も、「食べ る ・飲 む 」の 尊 敬 は 「食 べ られ る ・飲 まれ る」 で は な く 「め しあ が る」 が 適 当 と して 、 語 形 が 変 わ るだ け に 力 を 入 れ て 教 え て い るが(『 日本 語 初 歩 』(国 際 交 流 基 金)P267、 『日本 語 教 科 書 初 級 』 早 稲 田 大 学 語 学 教 育 研 究 所 編P359な ど)、こ れ らの 記 事 の 用 例 を 見 ると、 そ れ ほ ど無 理 を して 「め し あが る」を初 級 で 教 え る必 要 が あ るの か と思 わ れ て くる 。 も ち ろ ん 語 形 の 異 な る尊 敬 形 と して いず れ は教 え る必 要 は あ る し、 書 き こ とば と話 しこ とば の 違 い も見 逃 せ な いが 、敬 語 に それ ほ ど時 間 を割 け な い初 級 で は 見 送 っ て 、 さ ら に進 ん だ 段 階 で 提 示 して も よ い の で は な いか と思 わ れ る 。 おわ りに 以 上 、新 聞 の 実 例 か ら 、尊 敬 形 とハ ダ カ 形 の 現 わ れ や す い位 置 ・用 法 を 見 て きた 。 同 一 文 中 で い くつ も動 詞 句 が 重 な る場 合 の 、 敬 語 の 省 略 の 目安 が え られ た よ うに 思 う。 ま た 、 レベ ル の 上 で も 「れ る ・られ る」 が 圧 倒 的 に 多 い こ と、補 助 動 詞 を伴 う場 合 は 従 来 一 般 に い われ て きた末 尾 部 分 で は な く、本 動 詞 部 分 に 尊 敬 形 が 現 わ れ る こ と を知 っ た。 ま た 、 誤 用 あ る い は それ に準 ず る もの の例 が 、 わ ず か 数 日の新 聞 か ら こ れ だ け採 集 で き た こ とか ら 、 日本 語 の 中 の敬 語 の複 雑 さ難 解 さが 新 聞 の現 場 に如 実 に 反 映 さ れ て い る こ とが 理 解 で きた 。 先 の文 部 省 の指 針 に も示 さ れ て い る よ うに 、私 は敬 語 は で き るだ け簡 素 化 され るべ き だ と考 えて い る 。 特 に 日本 語 教 育 で は 敬 語 指 導 や 学 習 に 時 間 や エ ネ ル ギ ー を取 られ す ぎ る よ り 日本 語 の語 彙 や 表 現 を豊 か に し、 内容 の 一23一

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新 聞 の 敬 語 一 尊 敬 語 の実 態 を探 る試 み と して 一 豊 富 な 日本 語 運 用 能 力 を育 て る の に そ れ を費 した い と思 う。 文 章 表 現 に 際 して も、敬 意 を表 せ る箇 所 で は で き る だ け 尊 敬 形 に させ る 、 どい う の で は な く、簡 潔 で 引 き締 ま っ た 表 現 の 中 で 敬 意 を表 せ る よ うな 、 必 要 最 少 限 の 敬 語 使 用 の 指 導 が 必 要 だ と思 う。 そ の た め に も、 敬 語 形 省 略 の可 能 性 を 明 らか に す る必 要 が あ っ た 。今 回 の調 査 で 知 りえ た 現 在 の新 聞 の敬 語 の 実 態 は 、敬 語 全 体 の 観 点 か らみ れ ば極 め て 微 々 た る も の で あ るが 、 日本 語 教 育 の 実 際 の場 に 取 り入 れ られ る もの は取 り入 れ て い き た い と考 え て い る。

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