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Academic year: 2021

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生活科学研究誌のゆくえ

八藤後 忠 夫

(生活科学研究所 研修部主任)  学問は生物学に根ざし、科学は数学をモデルにする  この言葉は、フランス文学者で元京都大学人文科学研究所教授を務めた桑原武夫博士 (1904-1988)の表現であると聞いた。桑原が文字通りいわゆる理数系の学者であれば簡単に 頷ける。しかし彼は文学者であり思想家、つまり文系に属していた。  桑原自身が、当時の研究仲間である理系のフィールドワーク研究者でありその独自の進化 論で高名な今西錦司博士(1902-1992)らから多くの影響を受けていることも想像に難くな いが、私は桑原のこの言葉の謂いを次のように解釈している。 1 ) すべての研究論文は、数学的な論理性と整合性に従って統制されるべきであり、 2 ) 人間科学であれ生活科学であれ、ともにそのようなスタイルによって表現・統一され なければならない。  科学がこの世のすべてを解明できると盲信することは即ち科学“主義”に陥ることとな り、それは他ならぬ“宗教”への転化を意味する。一方、客観的なサーヴェイ(実験や調 査・文献資料)をその基盤に持たない研究論文は、どんなに声高に綴っても単なる「演説」 に過ぎない。  さて、われらが『生活科学研究』誌は、それらの要件を十分に果たして来ただろうか。  紀要論文だから学術雑誌に劣る、或は劣っても良い、などと考えるのは研究者として最も 恥じなければならないことではなかろうか。  換言すれば、紀要論文にも科学的なエセンスとノイエスが必要なのであり、優れた論文に は共通する論理的な整合性と一貫性があり、その表現にはあたかも音楽性すら伴うものであ ると信じたい。もちろん私自身、まだまだそのレヴェルには達していないし、途上にある。 一生賭けても到達できないだろう。しかし志だけは高く保持したいものだ。  ここ 4 〜 5 年、われらが研究所は論文の採用に当たり、上述した内容を具体的に検討して きた。  編集委員会をきちんと表記し、学会誌レヴェルの査読とはいかないまでも一定程度の「審 査」を行い、時には投稿者に注文を付けることも多くなってきている。  そのことにより掲載論文数が減少することを恐れない。  むしろ今まで以上に本誌が注目されるように編集委員会は努力を重ねてゆく覚悟である。

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