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特集にあたって -- 農村開発ブームは再来するか (特集 農村開発と農村研究 -- パートI 日本の農村開発に農村研究の果たした役割)

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Academic year: 2021

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特集にあたって -- 農村開発ブームは再来するか (

特集 農村開発と農村研究 -- パートI 日本の農村

開発に農村研究の果たした役割)

著者

水野 正己

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

129

ページ

2-3

発行年

2006-06

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00005452

(2)

特集/農村開発と農村研究

二 一 世 紀 を 迎 え る こ ろ か ら 、 農 村 が 途 上 国 開 発 の 焦 点 の ひ と つ に ク ロ ー ズ ア ッ プ さ れ る よ う に な っ た 。 こ の 理 由 は い く つ か あ る 。 一 一 億 人 と も い わ れ る 世 界 の 貧 困 人 口 の 多 く が 農 村 に 居 住 し て い る こ と 。 イ ギ リ ス を は じ め と す る ド ナ ー ︵ 先 進 援 助 国 / 援 助 機 関 ︶ が 、 援 助 疲 れ か ら 、 開 発 援 助 の 重 点 化 を 図 り 、 貧 困 対 策 に 絞 り 込 ん だ こ と 。 そ し て 、 貧 困 問 題 が 国 際 社 会 の 不 安 定 性 の 根 底 に あ る と す る 認 識 の 高 ま り で あ る 。 問 題 が 途 上 国 の 農 村 地 域 の 貧 困 削 減 と い う こ と に な る と 、 開 発 の 中 心 は 農 村 開 発 と い う こ と に な る 。 そ こ で 問 題 に な る の は 、 農 村 開 発 と は 何 か と い う こ と で あ る 。 か つ て 、 農 村 開 発 が 世 界 の 開 発 の 流 行 の 先 端 だ っ た 時 代 が あ る 。 一 九 六 ○ 年 代 の 後 半 か ら 七 ○ 年 代 末 ま で の 期 間 だ 。 当 時 、 ア メ リ カ が フ ラ ン ス に 肩 代 わ り し て 介 入 し た も の の 泥 沼 化 し て し ま っ た ベ ト ナ ム 戦 争 が 終 結 期 を 迎 え て い た 。 ま た 、 ア ジ ア で は コ メ の 多 収 穫 技 術 ︵ 改 良 品 種 、 化 学 肥 料 、 灌 漑 ︶ が 登 場 し 、 あ と は そ の 普 及 に よ っ て ﹁ 緑 の 革 命 ﹂ を 実 現 さ せ る だ け だ っ た 。 か く し て 、 軍 事 力 よ り も 経 済 水 準 の 向 上 に よ っ て 、 貧 し い 農 民 を 取 り 込 む 開 発 戦 略 が 登 場 し た 。 当 時 の 農 村 開 発 の 眼 目 は 、 農 業 開 発 す な わ ち 農 業 に お け る 生 産 性 の 向 上 だ っ た 。 だ か ら 、 当 時 実 施 さ れ た 農 村 開 発 プ ロ ジ ェ ク ト の 内 容 に 即 し て い う と 、 農 業 開 発 と は 、 農 業 開 発 投 資 の 効 率 が 相 対 的 に 高 い 地 域 の 農 村 開 発 を 指 し 、 農 村 開 発 と は 貧 困 人 口 の 多 い 地 域 を 対 象 に し た 農 業 開 発 だ っ た 。 い ず れ に せ よ 、 政 府 や 公 共 部 門 が 緑 の 革 命 技 術 の 普 及 を 担 う 開 発 政 策 は 、 全 体 と し て み れ ば 食 料 増 産 に 大 き く 貢 献 し た 。 だ が 、 一 九 八 ○ 年 代 に 入 る と 財 政 負 担 の 大 き い 開 発 戦 略 は 見 直 し の 対 象 に さ れ て し ま っ た 。

農 村 開 発 を 今 日 の 開 発 の 表 舞 台 に 登 場 さ せ た の は 、 前 回 と 同 様 、 世 界 銀 行 で あ る 。 で は 、 今 回 は ど の よ う な 開 発 戦 略 で 農 村 開 発 に 臨 も う と し て い る の か 。 世 界 銀 行 は 、 一 九 九 七 年 に “R ura l D ev el-op m en t: F ro m V isio n t o A ctio n” と 題 す る 政 策 文 書 を 公 表 し 、 そ の 中 で 農 村 部 門 に 関 す る 開 発 戦 略 の 新 た な 方 向 づ け を 行 っ た 。 そ し て 、 持 続 可 能 な 農 村 開 発 を 通 じ て 、 ① 貧 困 と 飢 え の 削 減 、 ② 広 範 な 基 盤 に た つ 農 業 成 長 、 ③ 家 計 ・ 国 家 ・ 世 界 の 食 料 安 全 保 障 の 確 保 、 ④ 持 続 可 能 な 天 然 資 源 管 理 の 実 現 を 図 る と し た 。 こ の た め 、 農 村 開 発 に お い て は 、 ① 農 業 部 門 に 狭 く 限 定 せ ず 、 広 く 農 村 の 全 体 を 対 象 と し 、 ② 世 界 銀 行 グ ル ー プ 全 体 を 農 村 開 発 に 巻 き 込 み 、 ③ 関 係 す る 途 上 国 と 国 際 機 関 と の 連 携 を 図 り 、 当 該 国 の 開 発 全 体 の 中 に 農 村 開 発 を 統 合 し 、 ④ 過 去 の 経 験 を 踏 ま え た 新 た な ア プ ロ ー チ ︵ コ ミ ュ ニ テ ィ や 地 域 レ ベ ル で の 農 村 開 発 の 推 進 、 利 害 関 係 者 の 参 加 、 農 業 信 用 に お け る 新 た な 方 式 の 採 用 、 各 種 の 農 業 サ ー ビ ス の 民 間 部 門 に よ る 提 供 、 コ ミ ュ ニ テ ィ を 基 盤 に し た 持 続 可 能 な 資 源 利 用 ︶ を 活 用 す る と し た 。 ま た 、 二 ○ ○ 三 年 に “R ea ch in g t he R ura l Po or” と 題 す る 新 農 村 開 発 戦 略 を 公 表 し た 。 そ し て 、 開 発 戦 略 の 柱 に 、 農 村 貧 困 層 に 焦 点 を あ て る こ と 、 広 範 な 基 盤 を も つ 経 済 成 長 を 促 進 す る こ と 、 農 村 地 域 を 総 合 的 に 捉 え る こ と 、 す べ て の 利 害 関 係 者 の 協 同 を 促

特集/農村開発と農村研究

特集にあたって

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農村開発ブームは再来するか

特集/農村開発と農村研究

アジ研ワールド・トレンド No.129(2006.6)─2 3─アジ研ワールド・トレンド No.129(2006.6)

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特集/農村開発と農村研究

す こ と 、 地 球 規 模 の 開 発 が 途 上 国 に 与 え る 影 響 を 考 慮 す る こ と を 掲 げ た 。 そ の 上 で 、 戦 略 的 目 的 を 途 上 国 の 農 村 の 貧 困 削 減 、 す な わ ち 農 村 開 発 の 促 進 と 定 め 、 広 範 な 基 盤 を も ち か つ 持 続 可 能 な 農 村 成 長 を も た ら す 環 境 づ く り 、 農 業 の 生 産 性 お よ び 競 争 力 の 向 上 、 非 農 業 部 門 に お け る 経 済 成 長 の 促 進 、 社 会 的 福 利 の 向 上 ・ リ ス ク の 管 理 と 緩 和 ・ 脆 弱 性 の 低 下 、 天 然 資 源 の 持 続 可 能 な 管 理 の 促 進 を 図 る と し て い る 。 こ れ ら に み る 世 界 銀 行 の 農 村 開 発 戦 略 は 、 新 自 由 主 義 経 済 の 考 え 方 に 基 づ い て 途 上 国 の 農 村 経 済 活 動 を 効 率 的 に 促 進 す る た め に 資 金 の 貸 付 を 行 う 意 思 表 示 で あ る 。 し か し な が ら 、 そ の 農 村 開 発 の 中 身 は 不 明 だ し 、 実 効 の ほ ど も 明 ら か で な い 。

わ れ わ れ は 、 こ う し た 途 上 国 の 農 村 開 発 を め ぐ る 世 界 の 動 き に 対 し て 、 二 ○ ○ 五 年 に ﹁ 農 村 開 発 と 農 村 研 究 ﹂ と 題 す る 研 究 会 を 立 ち 上 げ 、 お よ そ 次 の よ う な 目 的 で 研 究 に 着 手 し た 。 す な わ ち 、 日 本 の 研 究 者 に よ る 農 村 研 究 や 農 村 開 発 研 究 、 あ る い は 日 本 の 開 発 援 助 と し て 行 わ れ た 農 村 開 発 計 画 の 経 験 な ど 、 こ れ ま で 研 究 資 料 と し て 十 分 に 活 用 さ れ て こ な か っ た 素 材 は す で に 相 当 な 数 に 上 っ て い る 。 そ こ で 、 こ れ ら に 着 目 し 、 研 究 素 材 と し て の 吟 味 を 行 い 、 あ る い は 既 往 の 農 村 開 発 に つ い て 実 態 把 握 を 行 う こ と を 通 じ て 、 今 後 の 途 上 国 農 村 開 発 に 対 す る 含 意 を 導 く こ と に し た 。 本 特 集 に 収 め ら れ た 論 文 は 、 い ず れ も 研 究 開 始 年 の 第 一 次 的 な と り ま と め で あ る 。 そ こ か ら 導 き 出 さ れ て き た 論 点 を 以 下 に ま と め て お く こ と に す る 。

第 一 に 、 農 村 開 発 と い う 用 語 は 、 そ れ 自 身 の う ち に 何 ら の 具 体 的 な 活 動 内 容 を も 含 ん で い な い 。 こ の こ と は 、 農 業 開 発 と 対 照 的 で あ る 。 こ の た め 、 戦 後 の 日 本 で は 、 農 村 経 済 の 段 階 に 応 じ て 農 村 生 活 改 善 の 事 業 内 容 の 革 新 が 行 政 の 責 任 者 に よ っ て 行 わ れ る 必 然 性 が あ っ た の で あ る ︵ 富 田 論 文 ︶。 カ ン ボ ジ ア 農 村 で 現 在 進 行 中 の 農 村 開 発 プ ロ ジ ェ ク ト に お い て 農 業 開 発 と 農 村 開 発 の 関 係 が 問 題 に さ れ る 所 以 も こ こ に あ る ︵ 佐 藤 論 文 ︶。 逆 に 考 え れ ば 、 国 連 ミ レ ニ ア ム 開 発 目 標 に 取 り 上 げ ら れ て い る 水 供 給 な ど 、 農 村 開 発 を 構 想 す る 糸 口 は 多 様 だ と い う こ と で も あ る ︵ 杉 田 論 文 ︶。 し か し な が ら 、 既 往 の 農 村 開 発 が 必 ず し も 内 外 の 山 村 開 発 の 場 に な じ ま な い こ と か ら ︵ 清 家 論 文 、 水 野 論 文 ︶、 農 村 開 発 概 念 の 成 熟 が 期 待 さ れ る 面 も 指 摘 さ れ る 。 第 二 に 、 先 述 の 通 り 、 農 村 開 発 の 用 語 は そ れ 自 身 の う ち に 、 そ の 方 法 に つ い て 何 も 示 唆 す る も の で な い 。 戦 後 の 生 活 改 善 運 動 の 実 践 過 程 に お い て 、 関 係 者 た ち が 農 村 社 会 学 の 既 往 の 研 究 成 果 を 巧 み に 活 用 し よ う と し て き た こ と に 、 こ の こ と が み て と れ る ︵ 池 野 論 文 ︶。 第 三 に 、 農 村 開 発 は 誰 が 行 う の か と い う 点 で あ る 。 第 一 義 的 責 任 は 当 事 者 で あ る 農 村 住 民 に あ る こ と は 間 違 い な い 。 し か し な が ら 、 日 本 の 戦 後 の 経 験 で は 、 農 村 社 会 学 や 民 俗 学 な ど の 農 村 研 究 者 が そ れ ぞ れ に 個 性 を 発 揮 し 、 時 代 性 を 見 抜 い て さ ま ざ ま な 形 で 農 村 開 発 に 関 与 し 、 関 係 者 や 村 民 に 対 す る フ ァ シ リ テ ー タ ー の 役 割 を 果 た し 、 あ る い は 自 然 の う ち に 後 継 者 を 育 て て き た 事 実 が あ る こ と も 見 落 と せ な い ︵ 松 井 論 文 、 辰 己 論 文 ︶。 か か る 日 本 の 経 験 を 踏 ま え れ ば 、 今 後 の 農 村 開 発 研 究 の 深 化 ・ 発 展 と 関 係 分 野 の 人 材 育 成 に お け る 大 学 等 に 対 す る 期 待 と 責 任 は 大 き い ︵ 板 垣 論 文 ︶。 最 後 に 、 す べ て の 収 録 論 文 が 強 調 し て い る こ と だ が 、 現 場 を 離 れ た 農 村 開 発 は あ り 得 な い と い う 点 で あ る 。﹁ 在 地 の 自 覚 ﹂ の 指 摘 ︵ 安 藤 論 文 ︶ の ご と く 、﹁ 現 場 ﹂ か ら 発 想 す る 農 村 開 発 の 強 靱 性 は 、 先 に み た 世 界 銀 行 の 農 村 開 発 戦 略 の ど こ に も 感 じ 取 れ な い 。 ︵ み ず の  ま さ み / 日 本 大 学 生 物 資 源 科 学 部 教 授 ︶ アジ研ワールド・トレンド No.129(2006.6)─2 3─アジ研ワールド・トレンド No.129(2006.6)

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