想像力と行為(1)
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(2) 想像力と行為(-). ひだわたしの課題になった。おもへばそれほ、切羽つまった場合にだ. け、憧れが摂るうつ-しい手段であるかもしれない。憧れはそれ以前 からずっと夫人のなかに成長してゐた」. よいであろう。しかしこの二作品ほ素人っぽさが目立ち、けして優れ. た作品とほいえない。ところが「苧克と璃耶」、「聴」(1)は見のがすこ. とができない。「苧克と馬耶」の主題ほ愛と死の舵惚にたいする賛歌. 上人が語られるのだが、これほ勿論語り手の祖先の一人である。この. たしかであって、そういった点からけして無視することのできない作. な物語りのように見えるが、三島の根元的な特徴を示していることも. である.この作品ほl見すると子供じみた空想から生まれた荒唐無椿. 殿上人はある女とひそかな関係を続けていたが、男の愛情はもほや冷. 恋した」という単純、かつ幼稚な文章でほじまる。苧克と馬耶ほそれ. 品である。この物語は、「苧蒐は璃耶を見た。その日から彼ほ碍耶に. (叔母)が夫にみちたりたものを. のように、海へ行-。「苧蒐ほ'喝耶のなかに住んでゐる死が、苧菟. のなかの死に話しかけてゐるやうな気もちがしてならなかった」二人. ほ'おたがいのなかにひそんでいる「死」をとうして共鳴しあうので. ある。碍耶はただ死ぬためにだけに物語にあらわれるのであり、死は. いわば彼女の運命といえるo 「馬耶が死んだ」という言葉がリフレイ ンとして何度も-りかえされ、これがユドガ-・ポ-の詩、「大鶴」. の幼稚な模倣にすぎないと気がついた時、われわれはいささかげんな りとさせられるのだが、こういった点を引き算したあとでも、やほり. 長肥大することになる。彼女は苧菟の心に住みつき、苧菟は彼女との. 三島の原質はのこる。堀耶が死ぬと彼女は苧菟の内部で憧れとして成. いるのだが、彼女らのうち二人までが海にょって「憧れ」をふきこま. のである。. 神秘的な一体感を体験するようになる。「碍耶が喪なほれてから受動. をしか知らな-なった苧菟の心に、なにかが育ってゆ-やうなけはひ がうかがはれた」. 「花ざかり」のモチ-フが-りかえされている。というよりも、この. 公は毎日パン屋の二階の屋根にやって-る鳴に餌をあたえて飼いなら. 出て-る下層出身の浪漫的人間の原型といってよいだろう。この主人. 「鵡」の主人公はパン屋の小僧である。これほ三島の後期の作品に. 二作品ほ、「花ざかり」の部分を拡大した作品であるといったほうが. 「みのもの月」と「祈りの日記」ほやほり「憧れ」の物語りでありI. くりかえしあらわれることになる。. れることに注意しょう。海は三島の作品世界の中核的なイメ-ジであ り、「花ざかりの森」から「豊鏡の海」にいたる多-の作品において. これらの女性ほすべて、それぞれの仕方で「憧れ」にとりつかれて. が夫のなかに存在せぬからだとほすこしもきづかずに。-⊥. かんじられぬのほ、たとへば『夏』のやうなじぶんのあこがれの対象. なお満足できないでいる。「じぶん. 時に海を見て以来「憧れ」にとりつかれており'二度結婚したあとも. 下においては、語り手の祖母の叔母が語られる。この叔母は、幼い. 役わりを失った」愛人に失望するのである。. な伏惚、ああした快惚のなかに女ほゐた」やがて女は、「海の象徴の. た。殺される一歩手前、殺されると意識しながらおちいるあのふしぎ. 見るのである。「-・おぼわたつみはもはや女のなかに住んでしまっぞれ憧れにとりつかれていて、ある日、「花ぎかりの森」の愛人たち. 彼の生まれた魚村へ行-のだが、そこで彼女ほ生まれてほじめて海を. めていた。そこで女ほ別の男と関係する。彼女ほその男といっしょに. 「その三」ほ上と下にわかれている。上においてほ、平安時代の殿. 二六.
(3) イ長にならないかとすすめられる。最初主人公はためらうが、結局そ. な友達と偶然に会う。主人公ほこの幼な友達の「留公」に、船のボォ. しているのだが、ある日彼ほ散歩に出て、今でほ船員になっている幼. 納得がいくだろう。. 告白』以後の作品のためのいわば習作であったと考えればわれわれは. の作品をのぞけば成功していない。とはいえこの期の作品は『仮面の. なあ、と思いながら忍耐して読んだ記憶がある」(2)という「中世」や. 本多秋五氏が「なにを作者が狙っているのか判定できないまま、長. と会うために埠頭へ行-のだが、い-ら待っても友人ほあらわれない。. 「軽王子と衣通姫」も、死への憧れが主題となっているのだが、これ. の友人のすすめにしたがうことにする。彼ほ約束にしたがって、友人 それもそのはずで、彼はふと'その友人は三年前に死んでいたことを. ヽ. ヽ. 憶いだすのである。彼が散歩の時に会ったのは幻影だったのだ.この ように物語の筋ほ簡単なのだが、次のような主人公の独自にわれわれ. て分類できるであろう。特に「軽王子と衣通姫」は愛の陶酔の極致で. ヽ. 少年は竜二の原型であって、「鶴」は『午後の曳航』のための習作で. と考える、『午後の曳航』. 感覚にはじめて目覚め、おのの-少年が措かれている。この二作のい. 「煙草」においては、先輩の学生にそそのかされて煙草を吸い、悪の. ヽ. ヽ. ヽ. ヽ. ヽ. -. でほない。ところが「岬にての物語」と「煙草」. 二七. の主人公はまぎれも. 三島の、若き芸術家としての努力は、彼自身の内面のなかに巣喰った このほげしい願望'憧れをさまざまな意匠をほどこしながら、いかに. なく作者の自画像である。後の三島のエッセイやジャ-ナリズムでの 想像力と行為(-). して作品そのものに定着化するかということであった。しかしわずか. 陰気な雰囲気が最初の部分でかなり鮮明に措かれていたが、それも語 り手の少年が著者自身の自画像であると読者に確信させるほどのもの. 「花ぎかりの森」の語り手も少年であり、山の手の中流家庭の冷たい. 私が今注意をうながしたいのほ'少年主人公の扱い方、描き方である0. ずれにおいても、三島文学の特徴ともいうべき死と悪のテ-マが扱わ. では情死を目撃し、生の悲劇的な側面に目覚める少年が取り扱われ、. 扱ってきた憧れの物語とはいささか色調がちがう。「岬にての物語」. 憧れの物語を一方において、「岬にての物語」と「煙草」を読むと き'われわれは一種の戸迷いを感ずる。これらは、われわれが今まで. ヽ. いる。三島一流の死の形而上学が、すでにこの期においてほとんど完. 経験される死への願望が向のためらいもな-極めて明快に定着されて. ヽ. は注意しておく必要がある。「船・出帆。どんなにそれはよいだらう0. ヽ. 成されていることに注目しておこう。. らは、すでにわれわれが分析した短篇と同じように、憧れの物語とし. ヽ. 美しい雲が影を落してゐる真青な海を毎日毎日船がすべるやうに走っ てゆく。ときどき飛魚が甲板にとびこんで釆てお客も船員も一緒にな. ってそれをつかまへる。-・(中略)-・郁子の茂る南の島々。名前も 知らない賑やかな港々。さういふ港ではまだ俺の知らないどんな素晴 しい娯しみがあることだらう」. ヽ. れており、この点では憧れの物語と全-軌を一にしているのであるが、. このあわれな少年ほ、どこか外国の熱帯の国で栄光の死を死にたい. ヽ. あると言ったほうがよいだろう。「鵜」の少年も竜二と同じようにす. の船員竜二に似ている。というよりもこの. ヽ. でに知られざる熱帯の国への激しい憧れを持つのである。 ヽ. 以上の分析から、われわれはほぼ次のような結論を下せると思う。 ヽ. たとえば死とか海とか悲 すなわち、何か陶酔的でほるかなるもの が三島の内面をほげし-ゆり動かしていた.この期の. 劇的なもの. -.
(4) 想像力と行為(-). 二作品が「花ざかりの森」などが意匠をこらされた文体で擬装されて. 「私」ほ先輩の学生におだてられて煙草を吸う。彼は最初「吃驚して」. ことわりきれな-なって. すすめられた煙草を「押しかえ」すのだが(. の愛着から、今まで軽蔑してゐた騒がしいものギラギラしたものへと 傾いてゆ-やうな気がした」. これら二作品で扱われている主題は情死であり、「ギラギラ」した. れの物語と何ら変らないように見える。しかしこの二作品が憧れの物. 悪の世界であり、1見すると'「苧貰と靖耶」や「中世」などの憧. 年がある日家族のそばをほなれて、彼がかねがねひきつけられていた. 語と決定的にちがう点ほ次のようなことである. 事が作者の実生活のなかで実際におこったかどうかということほどう. 方法にほあまり関心がない。「岬にて」と「煙草」で語られている出莱. た人物の行動思想が現実の作者のそれと1致するか否かといった批評. か否かということが論議の対象にされるのだが、私は、小説に措かれ. はやがて『仮面の告白』にいたって精密化され、それが私小説である. るかという過程が問題にされているのである。そしてこのような手法. なぜ、どのようにして、主人公が異質な世界(憧れの対象)に目覚め. 「岬にて」と「煙. 美し-輝-岬のほうへむかって行-のだが、その途上、彼はある別荘. 草」においてほ憧れの内容そのものが問題になっているのでほな-、. いく。するとあきらかに彼よりも年上の少女が出てきて、彼らほすぐ. -. でもいいことなのであって、問題なのは、ここで三島が少な-とも自 ヽ. いわば自己認識の物語ともいうべき作品群はそのあと、「夜の仕度」. 「春子」「家族合わせ」と続いていき、以前の「夢想浮遊」. (本多氏). ずかながらあらわれていたことは先にも指摘しておいた。そしてこのI. お-ことである。このような自己認識はすでに「花ざかりの森」にわ. 己の存在についてきびしい認識を提出しているということをとらえて. ヽ. に友人になる。彼女は恋人といっしょに、少年を岬へつれていく。少. ヽ ヽ. 女と恋人と少年ほそこでか-れんぼをするのだが、少年が鬼になつて、. ヽ ヽ. 彼らをさがす段になると、少女とその恋人ほなかなか見つからない。. ヽ ヽ. 少年ほ夢中になって二人をさがすのだが'ほんの一瞬間、彼は叫び声. ヽ ヽ. のようなものを耳にする。そこで彼ほ、少女と愛人が海に飛びこんだ. ヽ. ヽ. のでほないかと気がつき、震憾する。少女と恋人ほ少年をおきざりに して情死したのである。この経験に少年はたとえようもな-魅惑され. ヽ ヽ. る。「しかし最早私にほ動かすことのできない不思議な満足があつた0. ヽ ヽ. 水泳ほ覚えずかへって釆てしまったものの、人間が容易に人に伝へ得 ないあの一つの真実、後年私がそれを求めてさすらひ、おそらくそれ とひきかへでなら、命さへ惜しまぬであら-一つの真実を、私は覚え て釆たからである」. ヽ. からオルガンの曲がきこえて-るのに引きつけられ、そこへはいって. 「岬にての物語」においてほ、海岸の避暑地で夏をすごしている少. ということである。. 突然外界の異質な世界に目覚め、震憾し、それに魅惑されてしまう、. いたのに対して、いわば力強い地声で語られており、憧れの物語群と. 二八. 吸う。彼ほ最初悔恨にさいなまれるのだが'この経験を-ぐることに. 「煙草」1作者. どのように関連づけたらよいのかわれわれほ戸迷うほどである。「岬. ヽ. ょって彼ほ自分が変容したことを感ずる。「私は讃かな動かぬものへ. ヽ. にての物語」と「煙草」に共通するテ-マを要約的に書けば'ほぼ次. ヽ. 発言を考慮にいれれば、このことは全-疑いをいれない。そしてこの. のようになる1深窓に育.
(5) る。. の作品から離れて、私小説風な傾向にかたむいてい-のだが、これら. 憧れの物語と. 二つの・J.}ヤソルの物語. な物語だが、小説手法の面から見ればこれもまたラデイゲイの影響下. にさそわれて彼女と関係し、そのあと義妹とも関係するという不道徳. 伯母とその義妹の同性愛を扱ったものである。主人公の「私」ほ伯母. 「春子」は、伯爵令嬢でありながらおかかえ運転手と駆けおちした. 種の無関係なものでほな-'表裏一体をなした、いわばコインの表と. に生まれたことはたしかである。しかしそういう意匠をとりはらって. われわれほ「三島的なもの」を読みとる必要がある。たとえば主人公. の「私」は不道徳な伯母の生活に憧れるのだが、その理由は次のよう. 謂ったもの、日ざかりの野を走る獣の熱い舌のあへぎのやうな、ある. に説明されている。「私もまた春子の名において、ある、生粋の野卑と. いて、彼ほある日軽井沢にいる恋人頼子を訪ねるo. ヽ. ヽ. ヽ. 意しておく必要がある。. 戦時中戦争に参加できないということほ大変な不名誉であったことを. 主人公主税を拡大すれば、そっ-りそのまま『仮面の告白』. の主人公. (庶民. 生活が健康的であるというのほ三島を終生とらえてほなさなかった幻. れて-る、粗暴なものへのあこがれ。ここでほ健康な庶民生活. クなほどの自己分析。おのれの女々しい肉体と環境から反動的に生ま. になる。自分を肉体的異端者として設定しながら行なうマゾヒティッ. ともいうべき主人公芝の無力感と自己嫌悪にである。. の小説に感動するのほそういった人間模様にではな-、ほとんど痛切. 想像力と行為(-). 二九. 全体をラデイゲイ風の心理小説に仕立てあげているが、われわれがこ. おもいだしておこう)不能の男の自己嫌悪がある。作者はさりげなく. た」(傍点筆者)ここにほ戦争に参加できない幸均的日本人にとって「家族合わせ」も、悲痛な響きをともなった自己嫌悪の物語である。. る大勢の健康な血色のよい若者たちを思い浮べることができなかっ. の道徳的で温室のように生ぬるい家庭環境と対比されていることに注 手だった-・彼は烈しい嫉妬なしには、戦争がすむと共にかえって来. うな世界にあふれている野卑な生命力といったものが'ブルジョア風. いずれも不道徳な世界がもっている活力といったようなもの、そのよ. から「初心」であると考えられるのを一番おそれている。この主人公 は「煙草」の少年が青年に成長した時の姿であると考えてよいだろう0. られた工場で勤労作業に従事している。彼は感受性が強-、また他人. は戦時下で、主人公ほやほり戦争に行-のをまぬがれ、学校にもうけ. 未知の熱情を夢みていたのかもしれない」われわれはここに三島の原. 質的な願望が投射されているのを見ることができる。この物語の舞台. ヽ. いている男の手でほなかった。もっと疲れたもっといやらしい何かの. ヽ. 考える。「頼子の腰へまはしている芝の手ほ、その露わな日ざしに照 らされて血の気のない薫いろい薄っぺらな手であった。それは女を抱. たいして深い嫌悪をいだ-にい七る。「これは戦争のせいだ」と彼ほ. るという内容から来ているのだが、主人公ほそういう消極的な自分に. 題名は消極的な男にたいして、恋人のほうが同会をそれとなく暗示す. 間模様と巧教な心理観察にわれわれほ注意をひかれるが、注目すべき という ことほ、主人公の自己嫌悪と性的不能である。「夜の仕度」. ラデイゲイ風の人. たとえば「夜の仕度」の主人公芝ほ病弱のために徴兵をまぬがれて. 必要がある・即ち三島においては、浪漫的な憧れにほ、その晩に、弱 々しい、女性的な、保護された自己の存在にたいする強烈な嫌悪があ. 裏のように密接に関連しあったものであることをここで理解しておく. -.
(6) 想である). 想像力と行為(-). への憧れが吐露されているのだが、これが後に三島の内部. で日本的共同体への関心となって生長するのである。さらに注目すべ. きことは、三島の同性愛的志向がこの作品においてすでにかなり明確 に表現されている。 三島が作家的地位を確立するのは『仮面の告白』にょるというのが 一般的な定説であり、そのこと自体に誤りほない。しかし『仮面』の もつ自信にあふれたゆるぎない文体と分析方法ほ一朝一夕で生まれた ものではない。『仮面の告白』は実に長いあいだにわたる習作群の集. (未完). この作品は同人誌『光耀』第三号に掲載されたが、以後単行本にほ収録 されず'三島の死後、『波』(新潮社)一九七三年六月号にほじめて再発 表された。 『物語戦後文学史』本田秋五(新潮社昭和四十一年). 積の上にできあがったものなのである。. 1. 2. 注. ≡.
(7) Aet. lmagination. and. Yukihito. (1). HIRANO. 想像力と行為(-). Summary. CHAPTER From. ln. my. categories:. categories therefore, as. a. and based. Yearning. These. be classified into two earliest stories can two These those of stories of yearning and self-recognition・ to do have, first glance, at the nothing with each other and once doubted integrity Some the consistency of Mishima critics and. the. writer's. apparently. fantastic. are. in. are. actual existence differnt genres the. with it more. from. gave,. and. witd each other within him yearning originates. a recognition concretely, its counteraction, birth. the. with. a. and. strong. romantic coloring, "Ⅰ-Novel" (Shish6setsu),. of. style. temperament.. of stories, are,however, closely interimagination, because confine of Mishima's. related. as. Self-Recognition. to. Mishima's. opinion,. writer. The stories of yearning those of self-recognition on. I. self-recognition of infirmity and to a yearning. to. and poor. something. to. versa:. vice. physique. in. romantic,. put. himself tragic. far-away.. (to be continued). *英語教室(°ept.. of. English).
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