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難民保健 から避難民
援助
へ
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かんばつ き きん ●「難民の10年」といわれた1990年代には,羊魅 ・飢鐘や自然災害に加 え,氏 族的力つ 宗教色をともなった地域武力紛争が多数発生し,
「難民」に加え 「国内 避難民」が激増 した. ・最近の避難民援助では・力っ ての物質的また救急医療的援助でなく.人 間の尊 厳の保護 基本的人権の侵害への対応としての救援が必要な時代になっ ている ●以上のことが,本項で解説する人道憲章を柱としたスフイア ・プロジェ ク トが 生まれてきた理由で ある.避難民問題 の
変遷
難民の10年といわれた1990年代は何 をもたらしたのだろう特殊災害 401 第二次世界大戦 という人類が初めて経験 した悲劇は,兎にも角にも,その後の世界のバ ランスを形作った.宗主国の植民地政策の破滅消失により,1960年代にはアフリカなどに 多数の新興国が生 まれたが
,
「国」の統治,管理道営能力が ともなわない 自立はほ どな く破 きゅうきょ 綻 し,独立にともない,急遠,引かれた国境線 を挟 んだ民族的対立の芽が各地に発生した, しか し,アフガニス タン,アンゴラなど米 ソ二大国の政治的軍事的意図による代理戦争 は あった ものの, これらの局所的対立は冷戦構造 とい うある種 の均衡の中に埋没させ られて きた. 1980年代後半,東欧に政治社会変革の波が押 し寄せ, さらに1991年 には一方の雄であ つし\ るソビエ トが消滅 した.しか し世界は自由で平和 になるか との期待 はあっけな く潰 え,か ろうじて押 さえ込 まれていた各地の不満が一気に噴出 した. かんばつ き が 早魅,飢餓や 自然災害, また国家 間戦争 による古典的避難民は,いつの時代 にも繰 り返 し発生してお り, これらに対 して十分か どうかは別 として,国際社会は 「緊急人道援助」
たか の手を差し伸べて きた.救援 を必要 とする人々と救援活動が,量の多寡,質の良否 はあれ, 相互に向き合って きた. しか し,新たな世界秩序が生 まれる前に頻発 した,民族的かつ宗教色 をともなう過激 な 地域紛争の様相 は異なる,1991年のソマリア,ユーゴをは じめ として,ComplexHuman -itarianEmergencies(CHEs)と総称 される,以前 とは異 なる形の地域的武力紛争 の結晃 国境 を越 えて,また,国内にとどまっているものの,本来の居住地を離れざるをえない人 々 ゆ えん は激増 し, この年代が難民の<decade>(
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年)と呼ばれる所以 となった. この ように,1990年代 には,国際法上認知 され,国連高等弁務官事務所(UNHCR)が保 護責任 をもつ 「難民(refugee)」に加え,多数の 「国内避難民(InternallyDisplacedPeople: IDP)」が出現 したことは,国際保健 という学問分野において も,また,国際人道援助の実 践 にも新 たな問題 を突きつけたといえる.也
避難
民 をめぐる新 しい
問題
1
)自
然
資
源
と紛
争
CHEsが継続 しているかその危 険性 のあ る国や地域 は,行政機構 が破綻 し,いわゆる ぜ い じヤく fragilestate(脆 弱 な国)化 している.中央 もしくは地方行政組織 は存在 しないか,あって も機能 しておらず,住民全体 を適切 に統括で きていないことが多 く,代わって,武力権力 ひご 者が支配 している.住民の生存 はその庇護下に入 る しかない. 一方, この ような国や地域 には,豊富 に埋蔵された自然資源があ り,それをめ ぐる外部 介入がある.資源の支配,掘削権や流通 をめ ぐる地域権力者間に外部勢力が介在 し,ダイ きん ヤモ ン ドや金の獲得のため,あるいはそれ らを支払い手段 とする武器や麻薬が流入し,辛 態はいっそ う混沌 とす る.「難民援助」が周辺に 「援助経済圏」を形成す ることはよく知ら40
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れ るが,1990年代 に増えたCHEsの避難民援助周辺 には,従来の援助経済 圏 に加 えて, し ば しば武器や麻薬 のブ ラックマーケットが形成されている.本来,人道的であるべき外部 介入 の複雑化多様化とともに,善意 の人道救援者 と何らかのネガテ ィブな意 図 を もった外 来者が混 同 され,援助者が攻撃 の的 となる事態 もまれではな くなった.す なわち,新 しい 避難民 問題 では,助 け を求める人々と救援者が直接 的 に向 き合えない事態 も増 えることに なった. 2)避難民問題 にお けるグローバ リゼーション 近年 の避難民 問題 を複雑 に して きた要 因の1つにglobalization(地球規模化, ここでは グローバ リゼーション)があ る. そ もそ も1970年代 頃か ら始 まった グローバ リゼーシ ョンとは,経済面 で物理的な国境 や国際的取 り決 めの規制を越 え, 自由で柔軟 な交易 を想定 した ものだった. しか し,冷戦 後の混沌の中で,まだ新 た な国際秩序が確立 されていない にもかかわ らず,通信,特にI
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わいし上う 技術 が急激 に発展・拡散 した結果,世界 は接小 化 し,それ まで閉鎖社会におかれていた途 上 国のみ な らず, 中進国の非都 市部や紛争地を も含 め,文化や習慣 におけ るバ リヤーを崩 して しまった.古典的な習慣 がすっか り消 えたわけで はないが,若者を中心とす るある年 代 においては,地球規模 の習慣変化 が惹起 された とい える. その結果,経済 にお ける本質 的なグローバ リゼーションに よっては, 国家 間のそれに加 えて,一国内で も格差 が拡大 し, 中進国や先進 国内で も少数の成 金的富裕層 と多数 の新 貧 困層を生み出 している軌.一見 生活予備力 をきりつめて従来の生活 を維持 して いるこれ らの人々も,各種 のリスクに対 する備えは極めて希 薄であ る.すなわち, い った ん異常事 態が発生す る と,直ちに避難民化す る危 険性 が ある人々は,世界的に増加してい る といえ る. CHEsや避難民援助に関する グローバ リゼーションの典 型 的な出来事 は,1991年1月 17日に始 まった湾岸 戦争で あろう,多 国籍 軍のイラク侵攻 通告と ともに始 まったピンポ イント攻撃は, まるでその場にい るかの ような臨場感 を もって, 同時 に全世界 に報道され た.同様の状況 は,1999年コソボ をめぐるユーゴスラビア攻撃,2002年の アフガニス タ ン の タリバ ン政権 攻撃, さらにサダム・フセ イン下 の イ ラク攻撃に もみ られたが,安全 な場 所 で, ときにはぬ くぬ くと, あるいは飲食 を しなが ら戦争 の実況報道 を見 聞する こ とに, 荏)1:たとえば,わが国の所得格差 の拡大は経済成長への悪影響要因として懸念 されてい る (OECD<経済協力開発機構>
「対 日経済審査報告書」2006.07).この中で,2000年の低所得 「相対的貧困層」の割合は,OECD加盟国中,日本はアメリカに次いで2番 目に高い と指摘さ れている バブル崩壊後の景気低迷でコスト削減を進めた企業が,低賃金の非正社員を増や したことが,所得二極化 を助長させたことを裏づけている.また,厚生労働省の勤労統計で は,パートタイム労働者は2000年を 100とする指数で,1995年の82.7から2005年の1246 へと著増し,逆に正社員である一般労働者は1995年の103.3か ら2005年の93.6に低下 し ている.特殊災害 403 やがて私たちは慣 れ始めて きた. ピンポイント攻撃とは,民間(人)の被災を防ぐために軍事施設のみ を攻撃する目的で導 入 された,GPS往)2を用 いた人道的な攻撃手段 ともいわれるが, しば しば誤爆が発生 してい ること, また, いわゆる武力紛争地域 では,GPSが適応されうる正確 な地 図がない うえ, 軍事施設 と民 間居住地の区別が明確 でないなど,軍事大国の精密 な武力 と極 めて貧弱な局 所的武力 との対立での行使 には問題 を大 きくしているに過 ぎない感がある. いずれにせよ, 日本のゲームメーカー名 をも じって 「ニンテンドゥ戦争」 とよばれるよ うな武力行使 の結果は民 間の犠牲者数 を増加させているだけでな く, グローバル化 した映 像が,救援活動 を含めその後 の国際世論を形成していることは事実注)3であ る. 1970年代 までの難民救援は,いわゆる救急医療か ら始 まったが,やがて公衆衛生対応が 主流 とな り, さらに,その後は理念的な背景を強めて きた.その変遷理由は,以上の よう な経過 を考 えれば理解 できよう.
現在の避難民
UNHCRは 2006年1月,「難民」,「帰還民」
,「IDPs(国内避難民)
」のほか,庇護希望者, 無国籍者な どその援助対象者数は前年比6%強増加 の2,080万 人 と報じた.さらに国境を 越え隣国に避難 した,いわゆる「難民」は1980年来の最低で,前年比12%減の840万人 と している. さらに,2005年のアフガニス タンへ752,000人,リベリアへ70,000人な ど,計 110万人の 「自発的帰還」があ り,かつ 2005年の難民発生は136,000人と,過去5年間に 難民数は1/3減少 し,過去 29年間の最低 と報告している.しかし一方,イラクの120万人, ソマリアの40万人な ど,国境 は越 えていないが,地域武力紛争の結果,故郷 を追われた人 々 や無 国籍者 な どIDPs数 は前年比22%も増加 している.また,多数者が帰還した ものの, パキス タン,イランその他70カ国に滞留す るアフガ ン難民190万人 は,なお,世界の最大 の避難民であることは変 わらない. 表 11-9にUNHCR本部 による2006年の, また,図11-4には,過去25年間のUNHCR の救援対象者数注)4を示した.難民数の最大 は,1993年の1,783万人強,IDPsその他が数 荏)2 GPS(GlobalPositioningSystem :全地球測位 システム)とは,本来は,地球上の位置を調べ るために打ち上げられた軍事用の衛星測位システム 最大規模はアメリカの約30個の衛星. El本は数個,ロシアは十数個である. 荏)3 やや形の異なる救援にテロの被災者がある.テロは,従来,警察が扱 う 「事件」であった が,2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ以後 民間が対応するレベルを逸脱 している こと,また,現在のイラクやアフガンなど,紛争地で発生する不特定者攻撃まで含むため, ここでは触れない 注)4:長らく難民問題 を専門に扱っているアメリカのNGOUSCommitteeforRefugeesand Migrants(USCR)は,2005年12月31日の姓民および庇護希望者数は1,200万,IDPsは 2,100万,計3,300万 と推定 している.4
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表 11-9:UNHCRによる被援助音数(2006) (地域別援助対象音数) 地 域 2005年1月1日 2006年1月 1日 アジア 7,230,100 8,60 3,600 アフリカ 4,855,200 5 ,169,300 ヨーロッパ 4,426,400 3,666,700 中南米 2,070, 800 2,513,000 北アメリカ 853,300 716,800 太 平洋地区 82,600 82,500 総 計 19,518,400 20.751,900 20,000 - 15,000 -⊂)⊂)Oく_ こ 10, 000 5,000 0 Lfh ∫_
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と
多様な
避難民
難民(refugee特殊災害 405 す る条約」
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年,通称,難民条約)と,その後の 「難民の地位 に関する議定書」(
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年, 同議定書),
「アフリカでの難民問題についてのアフリカ統一機構条約」(
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年,同OAU
条約)に基づいて認定 される.実際の救援活動では,特殊 な場合や,研究を除 き,一般的に, 「難民 とは,さまざまな要因によ り,本来の居住地か ら離れることを余儀 な くされ,国境 を 越 えた人」と理解 されるが,難民であれIDPsであれ,救援のあ り方 は変わってはな らない し,通常の保健医療活動では,被援助者の国際法上の立場 を考 える状況はない. しか し, 最近の地域紛争では, ときに現地の政治的権力的思惑 に配慮 しなければな らない場合 も少 な くない. また,国際的認定の有無 にかかわ らず,すべての避難民の背景 はさまざまであ り,同 じ避難民集団で も,時期 によって状況は著 しく異 なる.救援活動がその時々のニー ズに合致 していなければな らないのは当然である.1
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年代 に入 って,世界各地で増 えた地域武力紛争 は,宗教や民族の対立を背景 とす る ことが多 く, また,人道援助 に武器 をもった護衛が必要など,援助者の治安す ら保証 され ず, また,中立不偏 なはずの人道援助の在 り方が問われる事態 も多い これ らの事態は, 新たな災害形態 としてCHEs(人道的緊急事態)と総称 される.CHEsは,
「内乱や戦争な ど を含 むさまざまな要因に基づ くある人口集団における比較的急性の状況で,食糧不足や人 口移動 などの影響 もあって,過剰の死亡や催恩 をきたす事態」 と考 え られるが, この際, 従来の居住地 を離れているが国境 を越 えてはいないため,国際的に 「難民」と認定 されず, より悲惨 な状況 にあるIDPsを多数発生 させ ることが特徴 ともいえる, この ような避難民- の緊急的支援 は人道上不可欠ではあるが,発生原因が民族宗教問題 化す る中で,従来か らの人道援助 は膨大 な資金 を要 しなが ら根本解決につ なが らないこと か ら,特 に途上国での難民対策はその発生予防を目指 した開発支援 に重点 を置 くべ きとす る意見 も強 まっている.いずれに して も,人道上必須 なが ら対症療法的な 「発生 した避難 民が抱 えている問題」対策 と,恒久的 ・根治的ではあるが政治的で実践困難 な 「難民問題 の発生予防」への取 り組みが,不可分 なまま,あい まいに混 同されて きた きらいはある. さらに,た とえばイラク,アフガニス タンの ように,紛争地での無差別テロが常態化す る現在,善意や意欲だけでの救援が不可能なだけでな く,武力 をともなわない文民 (civil -ian)による人道援助が限界 にある事態が増 えている. 古典的な援助のあ り方は周知 してお くべ きだが,それを修得 したか らといって,ただち に救援現場で活動で きる時代 ではないことを十分理解 してお く必要がある,避難民援助
災害や紛争の被災者-の救援 は,救急医療 の一部 として始 まったが,やがて公衆衛生活動 を中心 とするようになった UNHCRやUNICEF,国際的なNGO/NPOな どは,それぞ
406 に,人道援助に従事す るNGOと国際赤十字 ・赤新 月社連盟(IFRC)が主体 とな り,WHO な ど国際機 関 も関与して合 意 したス フ イア ・プロジェクトSphereProJect(http//ww spherepro」ectorg/Index.php)のハ ンドブ ックにそって解説したい. 著者の一人は,WHO本部緊急人道援助部勤務当時,同僚か らスフイア ・プロジェク ト への関与を要請 され,ハ ン ドブ ック作成を手伝 ったが,その副題が 「人道憲章 と災害救援 に関す る最低基準」 とされた最大の理由は
,
「基準 とは,与 えられる/救援 されるべ きもの の最低量や数値ではな く,被災者であれ,人間として持つべ き尊厳のある最低の生活の質」 であり, どこで も当た り前のこととして適応されるもの との考 えか らであった. スフイア ・プロジェク トの特徴は,以下のようである. まず,それまでの具体的な医療 ・保健活動 またはロジック的支援ではな く, (1)救援 の柱 は人道憲章 としたこと (2)5主要セクターとして, i)水 と衛生, ii)栄養,iii)食糧援助,iv)シェル ター, Ⅴ)保健活動が置かれ,現実の地域集団の生存 に沿った救援 を想定 したこと (3)プロジェクトの主導権 はNGOを持つ こと (4)救援時の各セクターでの決定時には,必ず,被災者が参加す ることを求めた うえ,男 性だけでな く女性 の関与 を求めていること など,画期的な発想が含まれている. スフイア ・プロジェクトのハ ンドブックは,2000年 に完成 し,翌年 に発行 された初版(日 本語 は2001年)のプロジェクトを試行した多数のNGOの現場経験 のフィードバ ックを含 めた改訂版(2004年)がある.上記HPでダウンロー ドで きる.日本語版は,アジア福祉教 育財団 難民事業部が扱 っている, い かん 改訂版 も初版同様,人道憲章 を最初においているが,紛争や災害など,原因の如何を問 わず,本来の居住地を離れざるをえない「避難」を,「人権 を侵 された事態」として取 り組 む必要があることを示している.今後,救援者が十分認識 し,理解してお くべ きであろう. 改訂版では, さらにある集団が実際に居住 ・生存で きることに沿 った救援 のあ り方が強化 され,食糧の安全性 (確保)の追加とともに,避難民の参画,初期評価, (救援)活動,援助 の対象,モニタリング,救援活動の評価お よび救援ス タッフの能力や管理な ど,セクター とは関係 な く,救援 に共通す る事項 について も基準が示 されたことである.さらに,セク ターに関わ りな く考慮すべ きもの として,子ども,高齢者,障害者, ジェンダー,保護, HIV/AIDS,環境 とい う7事項が取り上げ られている. 以下,同ハ ンドブ ックの内容 に準じて避難民救援 を解説す る.1
)
救援
と
人権
被災者 は援助を必要 としていて も,すべての人々が無力で無能なわけではない.個々の 人々だけでな く,家族や地域集団 としての能力や回復力 をもってお り,それ を尊重するこ とは救援の基本である.一方,だれで も, どのような状況で も,人間としての尊厳 は護 ら特殊災害 407 れるべ きである.スフイア ・プロジェクトがい う人道憲章
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は,い わゆる国際人道法往)5と呼ばれる多様 な条約が含 まれるが,その骨子 は,
「災害または武力 紛争の被災者 に対 して一定レベルのサービスの提供 により,基本的な人道原則が遵守 され ることを目指す」 ことである.2
)
水の安全
性
と衛生
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血 邑 生物の集団生活で,最 も重要 なものは水 の確保と排推物の処理に尽 きる.どの ような避 難民であれ,水補給 は最初かつ必須 のn
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であ り,排壮物処理 を含 む衛生対策 は最初か つ必須のmustである. 0 水 生存 に必要な水の量1日2.5-3.OL,調理 に必要 な水3-6L,基本的な衛生状態 を維持 す る2-6Lな ど,-人当た り1日最低7.5-15Lが推奨 される.日本人の1日当た り平 均水使用量324Lか らす ると,極めてわずかであるが,実際にはこれを確保することす ら 困難な場合が多い.最も近い給水源 を500 m以内,また簡易水道では 1蛇口当た り人口を 250人,1手動ポ ンプでは500人,1開放井戸では400人 とす る. 水質の問題 も重要であ り,排壮物 による汚染 を防 ぐことは必須(100mL当り大腸菌ゼロ を基準 とす る)だが,下痢性疾患が発生している場合 には,塩素などの消毒薬 による殺菌水 配布 も考慮する.化学物質は軍事的な放射性物質の汚染の危険がある場合には,早急 に専 門的な調査 を行 う. ふた せん 給水 に関 して重要なことは,10-20L程度の蓋 または栓付きの容器最低2個 と,清潔 を 保つための石鹸の配布などにも留意す ることである.ただ し,水不足 の避難地での石鹸使 用 は,ある種の矛盾 もあってジレンマ を感 じることもある. 0 トイ レと排水 集団生活では,排継物処理 を含 む衛生対策 も極めて重要である.1家族 あるいは最大4, 5家族 または最大20人に1トイ レを居住区か ら50m
以内に設置することが推奨 される. しか し,避難当初 は最大50人 までを許容するが,それ も不可能な場合,用便用の穴 を含め, 厳重 に排湛区域 を規定 し,水源汚染対策 を徹底する.集団が大 きくなれば,通常,男女別 比率 を1:3の公共トイレ設置も必要になる. また,避難当初 には,インフラのない避難地 しにょう での排水問題 も重要である. まず,尿 尿 と生活廃水 の混合 を防止し,洗濯 な どの排水は菜 園などに利用す ることも考える, 注)5丁国際人道法」という固有名詞をもった条約はなく,1971年に 「武力紛争に適用される国際 人道法の再確認と発展」に関する会議で用いられた国際的な条約や慣習法を総称したもので ある.基本的には,武力紛争で傷ついたり病気になったりした戦闘員,捕虜さらに紛争に従 事 しない一般住民(
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を人道的に取 り扱うことに関する合意基盤となる 「ジュネーブ4
条約(1949年)
」とそれに対する「第2追加議定書(1977年)
」を中心に,「世界人権宣言」,「難 民の地位に関する条約」
,
「子 どもの権利に関する条約」など多様なものが含 まれる408 いずれ にせ よ,水, トイ レの安全対策は,避難民の関与 な くしては成功 しない.合 わせ て衛生教育 を行うこ とが重要 となる.
3
)食糧 の確保(
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救援 時,栄養 障害は最大 の公衆衛生的問題 であ り,実際,
「食糧 は最良の医療/くす りで あ る」 といえる. また,
「すべての人 は,生存 に必要 で,かつ汚染されてお らず,文化 的に も許容 で きる食糧 を保 障 されてい るべき」 との考 えに基づくと,災害や紛争時の安全な食 べ物補給 は,水 を除 き,最大 の柱 となる. 実際 に行うべきこ とは,避難地 の地理 的条件 や生活状況 を も考慮 しての食糧 の入手,移 送,保存 ,配布 を含 む 「食糧確 保」 の評価 と個々人お よび集 団の 「栄養状態」の初期評価 を同時並行 して実施 し,その結果 か ら,適切な対応 を迅速 に決定す る.しか し,極 めて多 数 の避難民の救援 で は,まず,① 集 団生存 のため,②救命活動,③健康増進(補助 レベル) に分 けて考 えね ばな らないが,規模 の小 さな救援 活動 で は成果 は限定されて しま うため, た とえば,妊婦 や授乳女性 または小児,高齢者 な どに特化 したプログラム を考えることも 必要 となる また,救援 のため食糧が買 い 占め られ,食糧不足 や物価 高騰 のためにホスト おぴや 地域住民 の生活 が 脅 か され た り,過剰 の食糧 配布 に よって,避難民 の 自助努力 を阻害する ようなことがあってはな らない.一方,「
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(働 いて食糧 を)」 という雇用 と食 糧配布 を結 びつ けた活動 もあ る. 栄養評価 は,集 団の概観注)6,食糧保持量 の推 定,指導者を含む一定 人数への問診な どを 行 うが,計測 は通常,5歳未満児 の栄養 障害 をみ る.短期 間の食糧不足 を反映 しやすい年齢 別 身長対 体 重比
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祉)7を参考 とす る.各種 栄養 障害 の有無 と頻度,下痢症な ど栄養状態 と関連 す る要 因 と程 度,食糧備 蓄や配布 状況,難民 の調理手段 や栄養知識 も参考 にす る.4
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) 栄養 に関 しては,前項 の食糧確保 にお ける具体 的 な栄養障害の有無 の初期 評価に続 く段 階だが,一般 的栄養支援 と具体 的 な栄養障害- の対応 に分 けて考 えるが,最近 では,1人 当 た り1日2,1∞ k
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注)8,内10-12%をたんぱ く質 で,17%を脂肪 で補 うことが推奨されて い る. 症)6通常,人口構成をみる晩 5歳未満 と 10歳 までおよび15歳までを各10-12%,計 30-35%, 妊産婦は約5%,高齢者を5-7%と想定する. 注)7:1歳頃までは筋肉発達未熟だが,かなりの脂肪があ り,5歳境には筋肉発達に応 じて脂肪が 減少するため,上腕中部の太さの変動がわずかなことを利用 した測定法.一見簡単そ うだが, 実際は数mm
の誤差が判断を誤 まらせることがあ り,訓練が必要 注)8:このカロリーが継続的に補給可能な救援計画はほとんどない また,緊急時には500k
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の削減 も提言されているが,1980年代には 1,600k
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程度が基準であったこと,さらに健常 者 と治療食 を同列に論 じることはで きないが,わが国の糖尿病治療食が1,500k
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であるこ とか らすると,やや過大な感 を受ける特殊災害
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一般的に基本的な栄養支援 は,主食 となる穀物やイモ類,豆類 を中心 に,脂肪 さらに供 給可能な動物性たんば くを一定量確保することに始まる. トウモロコシ類 を主体の時には 豆,ナッツ類 によるナイアシン補給 を,また,ビタミン類,特 にAや鉄分補給 を考慮して 食糧品を選択す るが,緊急事態 には実践困難なことが多い. 次いで,栄養 障害 に陥りやす い集 団 として,妊婦,授乳女性,乳幼児 さらに高齢者や HIV感染者注)9やAIDSや結核 な ど慢性病を持つ者- の対応を考 える.この ような場合, 全避難民集団内で不公平が生 じないような計画が必要であ り,栄養セ ンターなどで対象集 団に平等 に配布す る. 5)
食
糧援助
(foodaid) 最近の武力紛争 による避難民での食糧援助 は,WFP(世界食量計画)な ど規模 の大 きな 組織 にゆだね られることが多いが,基本的な考 えは以下のようである. で きる限り,避難民が常食 して きた ものを主体 に,家庭で調理可能な固形食糧 を基本 と す る.また,過剰の無料配布 は極力避ける.配布は,食糧不足が最も深刻 な人々を優先 し, 可能な限 り,早 く配布 を終了す る.極めて緊急 な事態あるいは調理手段が ない場合 には, 調理済み食糧や集団給食の計画も必要 となるが,外部か らの過剰 なインスタント食糧の持 ち込みは極力制限す る.また,救援のための調達が,地域の食糧不足や価格の高騰 をもた らさない配慮 も必須である. 6)シェル ターおよび定住(shelterandsetuement) シェル ターは,かつては避難地の居住のみが想定 されていたが,最近では,本来の居住 地-の帰還 ・定着 までを考慮 した最終的かつ最良の解決を意味 している, 一時的避難地では,1人当たりの居住空間を最低45m
2とするが,この中には,家族の生 活の場,道路,教育 ・衛生施設,給水 ・貯水場 などの公共施設や管理事務所, さらに家庭 菜園や小動物の飼育区域 を含 む.集会や娯楽施設,特 に子 どものための施設 を含む公共の はんちゅう 場, また,安全 な通路の設置 などがシェルター計画の範 晴 に置かれる. 多 くの避難地では,テ ン トや一時的住居内で調理す ることが多いが,その際の換気,特 に煙の排 出に留意す る. 緊急時で,十分な場所 を確保で きない場合,最低阪,留意することは,寒暖,降雨,風 雪などの 自然現象か ら保護 されること,紛争地での武力襲撃か らの遮断と,避維地区内で は,トイ レ用穴などを含 む排継処理地域 を区画 し,居住地区の衛生 を保持す ることである. とむら ときに,死者への 弔 いや遺体処理の場が最重要な場合や,広 い墓地が必要 になることもあ るが,文化的風習は避難民の意向を尊重する酎 10必要がある. 荏)9:HIV/AIDSと授乳に関し,避難地でも途上国でもジレンマがある 母親(女性)のHIV感 染の認識の有無にかかわらず,赤ん坊に十分な代替栄養が保障できない場合,AIDS治療薬 のないまま母乳をすすめざるをえないこともある.410 表 11-10:各種災害が及ぼす公衆衛生面への影響 呈// 響 compleX 地 震 洪水を伴 洪 水 津波/ 昂ノ ー≡∃ eme「genCy わぬ 強風 鉄砲水 死 亡 多 多 少 少 多 重篤な外傷 色々 多 中 少 少 感染症のリスク 高 低 低 色々 少 食糧不足 よくある まれ まれ 色々 よくある 大規模避難 よくある まれ まれ よるある 色々 食糧調達同様, シェル ターのために近隣の山林が 伐採 された り,市場の建材が高騰 した りす ることのない ような 配慮 も必要である.
7
)食糧以外の補給(non-fooditems) かみそり この中には,衣類,毛布やマ ットなどの寝具,石鹸類や歯 ブラシ,剃刀な どの個 人的衛 生用品, さらに女性の生理ラ 用品や乳児のオムツ,高齢者の失禁対策用品, また料理鍋, フ イパ ン,包丁,スプーンなどの調理用品,最低10L以上の蓋 また栓付 きの貯水 タンク, 調理用 コンロまたはス トーブ,個 々人の食器,ランプ,ろうそ くなどの照明器具 も含 まれる. しば しば,援助物質 として噛乳 ビンが提供されるが,特別な事情で用いなければなら な い場合以外 は使用しない. 8)
保健活
動(healthservices) 現在の 避難民への保健医療支援 は,すべての人は健康 を維持 し,必要で適切 な保健サーまっと ビス を受 ける権利があ り,全 うす ることが基本の考 えとなっている.かつて救急 医療が 避難民援助の主体のように行われた時期 もあったが,現在 は人道的配慮 を加味 し,保健教 育 を同時に行 う,予防的注) 11なプライマリ・ヘルス ・ケア(PrimaryHealthCare:PHC)が主 体 と なる.表11-10に,各種災害が及ぼす公衆衛生面-の影響 を示 したが,緊急時には, 隔離 された少数者への支援 のために一時的な移動診療(mobi leclinic)が必要なこともある が,地域の保健機関 との連携が必要である また,いかなる保健活動 を行 うかは,避難民の集団 としての健康状態,ニーズ, どんな 健康の危機の発生 リスクがあるか を評価し,避難民 とともに対策を決定す る.その際,避 難民の中にどの ような人材 とどの ような資源があるか も含めて迅速 に決定す る.前述 した注)10:弔いのために遺体を抱擁する習慣がある地域では, 特に,エボラなど出血熱などの流行や 感染症がないかどうかの判定が重要である. 荏特殊災害 411 表 11-ll:地域ごとの粗死亡率・5歳未満児死亡率 地 域
C
MR
緊急事態指標となるCMR
∪5
MR
緊急事態となる∪
指標5
MR
サブサハラアフリカ0
.
4
4
0
.
9
1
.
1
4
2
.
3
中東 .北アフリカ0
.
1
6
0
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3
0
.
3
6
0
.
7
南アジア0
.
2
5
0
.
5
0
.
5
9
1
,
2
東アジア .太平洋地域0
.
1
9
0.
4
0
.
2
4
0
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5
中南米0
.
1
6
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3
0
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1
9
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.
4
中央.乗ヨーロッパ/
C
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S
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バル ト諸国0
.
3
0
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6
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.
2
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4
先進工業国0
.
2
5
0
.
5
0
.
0
4
0
.
1
発展途上国0
.
2
5
0
.
5
0
.
5
3
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.
1
後発 発展途上国0
.
3
8
0
.
8
1
.
0
3
2
.
1
全世界0
.
2
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4
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が(
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.
4
0
8
の注6
)
,大雑把に1
5
歳以下を3
0
-3
5%
,妊産婦 と高齢者 をそれぞれ5%
とみな して,保健活動 に必要 な資材 を算 出 し,計画を立てる. また,全体 としての健康状態は, 粗 死亡率(
C
MR:C
r
u
de
M
or
t
a
l
i
t
y
R
a
t
e
;
人口1
0,
0
0
0
人の1
日当た りの死亡数)と5
歳未満 児死亡率(
∪5
MR:
U
n
de
r
5
M
or
t
aH
t
yR
a
t
e
;
5
歳未満児1
0,
0
0
0
人の1
日当たりの死亡数)を 参考 に,すばや く判断 する必要がある. 表1
1
-1
1
にスフイア・プロジェクト(改訂版)が参照 に している地 域 ごとのC
M
R,U5
MR
を示 したが,いか なる理由であれ,粗死亡率が2
.
0
を超 える事態は,集団全体の生存に関 わる事態が差し迫 っていることを示している. 保健活動 は集団全体の過剰 の死亡や雁病 を減らす こと,予 防で きるものが優先 されるが, 可能な限 り受入国や地域の保健セクターの責任機関が主導 的役割 をもっ こと, また, どの ような状態でも全救援者/組織の連携が必要である.外部 救援はあ くまで支援の立場, ま た一時的であるべ きだが,中央 または地方政府が崩壊した り機能不全 に陥ったりしている 場合 には,主導的にな らざるをえないこともある, また,地域の保健セクタ ーや国連機関 (UN
H
C
R,WFP
,UNI
CEF,W
H
O
など)と の連携や救援活動の他分野との連携 も重要 だ が,最近の武力紛争では,軍隊との連携 も無視で きな い事態も増えている. スフイア ・プロジェクトでは,コミュニティーレベルでは住民5
0
0
-
1
,
0
0
0
人に対しヘル スワーカー1人 を,2
,
0
0
0
人に対 し訓練 を受けた分娩介助者 1人を412 5人の保健 ス タッフとその他の勤務者 を, またリフアレル施設 は人口 50,000人 をカバー し,医師 1人 を含め有資格保健
貞5
人以外 に,入院,調剤,検査などを担当す る約10人の 勤務員 を推奨している. 具体的な活動 については以下の ようである. 0 感染症予防対策 一般的な予防対策では,衛生 ・保健教育が重要である. 緊急時には,生後6カ月から15歳の全員への麻疹予防接種を優先する.麻疹の予防接種 率が90%以下 と判断 される場合 には,5歳未満児への集中的な予防接種キャンペーンを施 行 し,次いで,対象 を年長児に広げる.予防接種 の際には,ビタミンA投与 を同時に行 う. マラリア注)12,コレラ,赤痢,腸チ フス,黄熱,髄膜炎その他の感染症予防は状況に応 じ て行 う. 0 感染症治療対策 大規模集団発生への対応は,地域あるいは避難キャンプが一帯 とな り緊急的な対策を要 するが,通常W
H
O
などの関与 を求めることが多い. 急性疾患では短期間の対応を徹底す るが,HIV/AIDSや結核性)13など,経過が長期 にわ たるものでは,栄養,衛生その他のプログラム との連携が重要 になる.また,マラリア汚 染地区では,早期診断と感受性のある薬剤 の提供が必要である.一般的に,経口補水塩や 静脈用補液.基本的な抗生物質, ワクチ ン, さ らに投与 に必要 な消耗品などは必須医薬 品軌 4として継続的に補給で きるようにする. 通常,多 くの感染症 は臨床診断が可能なため検査診断に精力はおかれていないが,基本 的な治療 による効果が限定的な場合,検査が必要 になることも想定 し,連携 をもてる検査 室 を決めておく必要がある. 0 HIV/A旧S対策 世界各地で,一般的に行われているHIV/AIDS対策 を継続することに尽 きるが,緊急時, 男性用 コンドームの無料配布 と,その使用法の教育 を徹底す ることは極めて重要である. また,紛争地付近では,安全 な血液補給の徹底が必要 だが,実際には困難なことも多い. 不穏地域では, レイプによる感染 もまれではないが,特に居住地か ら離れた地点での水 汲みや燃料収集 における女性の保護,HIV感染者-の差別,偏見の解消への努力 も忘れて はならない 荏)12・殺虫剤付 き蚊帳の使用が有効だが,住居の構造などから,緊急時の避難キャンプでは,配 布および使用が困難なこともある.荏)13:避難民キャンプでも,DOTS(Directly-ObservedTherapy,Short-course:短期直接監視
下療法)が推奨される.
特殊災害 413 0 非感染症対策 外傷, リプロダクテ イブヘルス,精神衛生問題,悪性腫癌や生活習慣病な ど,先進国型 疾患が含まれる. 0 外 傷 大規模 自然災害では,通常,生存者の90%程度は72時間以内に近隣の住人か,地元の救 援隊によって放 出されている.したがって, 自然災害では初動救援その ものを地元住民が 担 える体制作 りが重要 となる.この際, トリアージが必要である(トリアージの項参照). 0 リプロダクテイブヘルス(RH) 通常,分娩の15%程度に合併症があり,5%程度の帝王切開を想定す る.避難民でのRH なおぎり の重要性は認識 されているが,実際の対応が等閑にされていることは多い.スフイア ・プ ロジェクトでは,緊急時の最小 限のRHのニーズ対応に,基礎的な用具 と消耗品往)15と実際 の活動 を組み合わせたMISP(Minimum InitialServicePacket:最低初期活動パ ッケージ) を想定している.この中には,女性への暴力(gender-basedviolence)対策,HIV感染予防, 新生児と妊産婦の過剰の死亡防止,総合的なRHサービスなどが含まれる. 0 メンタルヘルス 本来の居住地を離れざるをえない事態,避難,未知の地での生活 など,避難民のすべて が精神的にダメージを受けていても不思議はない. ことに最近の地域紛争 は,それ まで地 域住民として交流があった り, ときには親しい隣人であった りした ものが対立 し,家族同 士が殺しあ うこともあって,特 に子 どもでは耐え難い苦痛 を受けている.PTSD(Post -TraumaticStressDisorder:心的外傷後ストレス障害)を含め,で きるだけ早期か らメンタ ルヘルス対策を行うが,通常はPHC レベルでの対応を考 える.