著者
郡司 隆男
雑誌名
Theoretical and applied linguistics at Kobe
Shoin : トークス
巻
9
ページ
17-30
発行年
2006-03-21
URL
http://doi.org/10.14946/00001552
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja日本 語 のNPIの
韻 律 と意 味*
郡 司 隆男
Prosody and Semantics of Japanese NPIs
GUNJI Takao
Abstract
Recently the effect of prosody in Japanese on interpretation has been activeiy
dis-cussed, Based on tbe behavior of so-called negative polarity items(NPIs), this
paper argues that prosody is a way of representing semantic scope of some oper-ators. Moreover, it is shown that sernanticaliy equivalent sentences with different prosody can correspond to different semantic representations that are equivalent. Thus, it is argued that prosody and semantic representation are more closely re-. fated than previously expected.
日本語 の韻律 が意味解釈 に影響 を与 えるこ とが最近 しき りに論 じられ ている
が 、本稿 は 、いわゆ る否定対極 表現(NPI)の 振 る舞 い を中心 に見 て、 韻律 が
ある種の演算子 の意味的ス コープ を表示す る方法 となっている ことを論 じる。
特 に、論理 的 には等価 な表現 であ って も、異 なる韻律 が、 同値で はあ るが異
なる意味 表示 に対応 する場合 があ る ことを示す。 したが って、韻律 と意味表
示 は従来 考 え られて きた よ りもず っと密接 に関連 してい るのであ る。
1. は じ め に 日本 語 の 否 定 対 極 表 現(NPI)と さ れ る 「何 も(… な い)」 「誰 も(… な い)」 は 、 関 東 の 発 音 で は 、全 称 量 化(あ る い はfree choice)の 「何 も(か も)」 「誰 も(か も)」 と は 異 な る 韻 律 を も ち 、 前 者 は 上 昇 音 調(あ る い は 話 者 に よ っ て は 平 板 音 調)、 後 者 は 下 降 音 調 を x本研 究 の 一部 は 、 日本 学術 振 興 会科 学 研 究 費 補 助 金(基 盤研 究(A)「 日常 的推 論 の 論 理 と言 語 形 式:量 化 表 現 、条 件 文 、 モ ー ダル表 現 を 中心 と して 」(平 成15年 度 ∼平 成18年 度 、研 究 代 表 者:郡 司 隆男 、課 題 番 号 15202009)お よび 、基 盤研 究(A)「 プ ロ ソ デ ィー の構 造 と文 法性 、 文理 解 に 関す る総 合 的研 究 」(平 成17年 度 ∼平 成20年 度 、研 究 代 表 者:窪 薗 晴夫 、 課 題 番 号172020】0)を 受 け て い る。Theoretical and Applied Linguistics at Kobe Shoin 9,17-30,200b. QKobe Shoin Institutefor Linguistic Sciences.
も つ 。 例 え ば 、 「だ れ 」 「な に/な ん 」 を含 む 例 文 は 、 格 助 詞 の 有 無 、 「で 」 の あ る な し な ど と合 わ せ る と 、 次 の よ う な パ ラ ダ イ ム を示 す 。1 (1)Everyone singsの 意 味 で2
1∀猷 歌 唱(x)l
a,だ れ も が 歌 う 。 b.#だ れ も 歌 う 。 c。 だ れ も か れ も 歌 う 。 a'#だ れ も が 歌 う 。 わ'#だ れ も 歌 う 。 c'#だ れ も か れ も 歌 う 。 (2)Nv ane singsの 意 味 で3隊 バ 歌唱(訓
a.だ れ も が 歌 わ な い 。 b.#だ れ も 歌 わ な い 。 c.?だ れ も か れ も 歌 わ な い 。ト ヨx人歌 唱 ω1
a'#だ れ も が 歌 わ な い 。 b'だ れ も 歌 わ な い 。 c'#だ れ も か れ も 歌 わ な い 。(3)Ken gets excited at everythingの 意 味 で4
1∀x物 興 奮(k,x)1 a,健 は な に に も興 奮 す る 。 b.#健 は な ん に も興 奮 す る 。 c.健 は な に に で も興 奮 す る 。 d.健 は な ん に で も興 奮 す る 。 ∀x物興 奮 伏,x} a'#健 は な に に も 興 奮 す る 。 b'#健 は な ん に も興 奮 す る 。 c'?健 は な に に で も興 奮 す る 。 d'?健 は な ん に で も興 奮 す る 。
(4)Ken gets excited at nothingの 意 味 で
i∀x物 、興 奮(k,x)1 a.健 は な に に も興 奮 し な い 。 b.#健 は な ん に も興 奮 し な い 。 c.#健 は な に に で も興 奮 し な い 。 d.#健 は な ん に で も興 奮 し な い 。 ヨヨ勘 興 奮(ん,X) a' 健 は な に に も興 奮 し な い 。 b'?健 は な ん に も 興 奮:し な い 。 c'健 は な に に で も興 奮 し な い 。 d'健 は な ん に で も興 奮 し な い 。 1以 下 で は、 文 字 で書 く と同 じで も、示 され てい る韻 律 で発 音 す る と正 し くな い文 を 「#∼」 で示 す。 こ の 中 に は 、 他 の韻 律 で 読 め ば 正 しい文 も、 どの よ う な韻 律 で読 んで も正 し くな い 文 も含 まれ る が 、区 別 しな い。 上 線 部 は相 対 的 に高 く発 音 され る 音 を示 す 。 な お、 以下 の 例 文 で は、語 彙 的 な韻律 の影 響 が 出 な い ように 、基 本 的 に、「歌 う」 「興 奮 す る」 「発 言 す る」 「小 説 」 の よ う な、平 板 ア クセ ン トの動 詞 ・名 詞 を用 い る。 また 、文 法 的 な 文 に対 応 す る簡 易論 理 表現 を与 え、 そ の 下 に、 左 側 に下 降 音 調 の 語 を含 む文 、 右 側 に上 昇 音 調 の語 を含 む文 を並 べ る。 2「 だ れ 」 は 人 に 限 定 され る の で 、 伝 統 的 な ∀x[人(x)→ 歌 唱(x)]の よ うに 書 くか 、 制 限 条 件 を 明記 して [∀x:人(x)][歌 唱(X)1の よ うに書 くこ と も考 え られ る が、 以 下 で明 らか にな る よ うに、 「だ れ」 が人 に限 定 され る とい う こ と は 、xの よ うな 変項 が種 類 分 け され て い る(sorted)と い う形 で と らえ た方 が よい の で 、 この よ う に 表 記 す る こ と にす る。x人 は人 間 の タイ プの 変 項 で あ る。注16参 照 。 3言 う まで も な く、左 側 の論 理式 と右 側 の論 理式 は 同値 で あ る。 こ こで は、 と りあ えず 、 「だ れ」 に は ∀ を含 む式 を、 「だれ 」 に は ヨ を含 む式 を与 え てお く。 後 に韻 律 と論 理 式 の形 式 の違 い につ い て論 じる。 4以 下 でkは 健 と い う個 体 を指 す定 項 で あ る。 ま た、 杁 と 同様 に 、勘 は事 物 の タ イ プの 変項 で あ る。
日本語 のNPIの
韻律 と意味
19 こ れ を見 る と 、 下 降 音 調 の 語 を含 む 文 と上 昇 音 調 の 語 を 含 む 文 の 文 法 性 に 関 し て 、 ほ ぼ 相 補 的 分 布 を し て い る よ う に 見 え る が 、 一 部 に 食 い 違 い が 見 ら れ る 。さ ら に 、 肯 定 文 と 否 定 文 で こ の よ う な 韻 律 の 違 い を 見 せ る 表 現 は 、 英 語 のwh語 に 対 応 す る も の 以 外 に 数 の1を 含 む 語 句 が あ る 。 「一 人(ひ と り)」 の 例 を 下 に 示 す 。 (5)One person singsの 意 味 で5
1ヨ!κ人 歌 唱(,X)
a'#ひ と りが歌 う。
a,ひ と り が 歌 う 。b.#ひ と り も 歌 う 。
(6)No one singsの 意 味 で6
a.#ひ と り が 歌 わ な い 。 b.#ひ と り も 歌 わ な い 。
(7)If one person singsの 意 味 で
1ヨ猷 歌唱 ω →_1
a.ひ と り で も 歌 っ た ら 、 b'#ひ と り も 歌 う 。トヨ杁 歌唱(釧
a'#ひ と り が 歌 わ な い 。 b'ひ と り も 歌 わ な い 。 a'#ひ と り で も 歌 っ た ら 、 (7c)は 譲 歩 文 で あ る。 「ひ と り」 の 場 合 に は 、 平 叙 文(肯 定 文)と 譲 歩 文 で 同 じ韻 律 を 示 す が 、 「1曲 」 の よ う な 語 句 は 、 平 叙 文 と譲 歩 文 の 間 で も異 な っ た 韻 律 を示 す 。 (8)Ken sings one sangの 意 味 で 1ヨ!勘[歌(x)A歌 唱(h,κ)】1 a.健 は 歌 を い っ き ょ く歌 う 。 b,#健 は 歌 を い っ き ょ く も 歌 う。(9)Ken sings no songの 意 味 で7
a'#健 は 歌 を い っ き ょ く 歌 う 。 b'#健 は 歌 を い っ き ょ く も 歌 う 。
i-1ヨx物 〔歌(x)^歌 唱(ゐ,x)]i
a.#健 は 歌 を い っ き ょ く歌 わ な い 。 a'#健 は 歌 を い っ き ょ く 歌 わ な い 。 b.#健 は 歌 を い っ き ょ く も 歌 わ な い 。b'健 は 歌 を い っ き ょ く も 歌 わ な い 。
(10)If Ken sings one songの 意 味 で
5ヨ!は 唯 一 の 存 在 を あ ら わ す 量 化 子 で あ り、 次 の よ う に 定 義 さ れ る 。 (i) ヨ!xP(x)≡ ヨx[・P(x)八∀y[P(Y)→x=y】]
6(6a)の 「ひ と りが 歌 わ な い 」 は 、 one person doen't singの 意 味 で な らば 正 しい 韻 律 だ が 、 no one singsの 意 味 で は 正 し くな い 。
7(9a)の 「健 は 歌 を い っ き,よ く歌 わ な い 」 お よ び 、 「健 は 歌 を い っ き ょ く 歌 わ な い 」 も 、Ken doesn't sing one
ヨx物 〔歌(x)A歌 唱(h,x)]→_ a,健 が 歌 を い っ き ょ く で も 歌 っ た ら 、a'#健 が 歌 を い っ き ょ く で も 歌 っ た ら 、
本稿 で は、 この よ うな韻律 と解釈 の間の相 互作用が見 られ る語句のふ るまい を整 理 し、
音 韻 的性 質 が どの よ うに意味 的性 質 に反映 され るのか を考察 す る。
2.否 定 対 極 表 現 否 定 対 極 表 現(negative polarity.ate皿s-NPI)は 、 元 来 、 否 定 の 環 境 の 中 で の み あ ら わ れ る 表 現 を 指 し て 使 わ れ た が 、 明 示 的 な 否 定 の な い 環 境 に も あ ら わ れ る こ と が で き る こ と がLadusaw(1979)以 来 指 摘 さ れ て い る 。 英 語 のanythingを 例 に と っ て 示 す と ・ 次 の よ う な 分 布 を 示 す 。 (11)動 詞 句 内 のNPI a. b C. d the student The studentdid not say never says seldom says said often says always says No student Few students
At mf-st five students
Every student
*Many students
At least five students
anything.
anything.
said anything.
said anything.
(12)主 語 内 のNPI
a. Every student who said anything was courageous. b.dew
studentswhosaidanythingwerecourageous. Atmostfive
c.No student who said anything was courageous.
否 定 表 現 が 明 示 的 な 場 合 以 外 で も 、 単 調 性(monotonicity)と い う 性 質 に よ り共 通 性 を こ ら え る こ と が で き る 。 こ れ に は4種 類 あ る が 、 次 の(13)を 例 に と る と 、 主 語 に 対 応 す る 集 合 よ り大 き い 集 合 に 対 応 す る 主 語 を も っ て き て も 同 じ こ と が 言 え る 場 合 に 、 こ れ を 左 単 調 増 加(left monotone increasing、 あ る い は 、・left upward monotone)↑MONと 呼 ぶ ・ 左 単 調 減 少(left monotone decreasing、 あ る い は 、 left downward monotone)↓MONは ・ 逆 に
B本 語 のNPIの
韻律 と意味
21主 語 に 対 応 す る 集 合 よ り小 さ い 集 合 に 対 応 す る 主 語 で 同 じ こ とが 言 え る 場 合 で あ る 。 こ れ らの 右 側 版(right monotone in/decreasing)は 動 詞 句 に 対 応 す る 集 合 の 大 小 を 問 題 に す る 点 を 除 い て 同 様 に 定 義 さ れ る 。
(13)↑MON(left monotone increasing): Q(A)(B)⇒Q(C)(B)if A⊆C
主 語 に 対 応 す る 集 合 よ り大 き い 集 合 に 対 応 す る 主 語 を も っ て き て も 同 じ こ と が 言 え る 。
例:Many male students ale singing⇒Many students are singing
(14) ↓MON(left monotone decreasing)l Q(A)(B)⇒Q(C)(B)if C⊆A
主 語 に 対 応 す る 集 合 よ り小 さ い 集 合 に 対 応 す る 主 語 を も っ て き て も 同 じ こ と が 言 え る 。
例:Every student is singisng⇒Every male student is singing
(15)MON↑(right monotone increasing): Q(A)(B)⇒Q(A)(C)if B⊆C
動 詞 句 に 対 応 す る 集 合 よ り 大 き い 集 合 に 対 応 す る 動 詞 句 を も っ て き て も 同 じ こ と が 言 え る 。
例:At least five students are singing a cappella⇒At least five students are singing
(16)MON↓(right monotone decreasing): Q(A)(B)⇒Q(A)(C)if C⊆B
動 詞 句 に 対 応 す る 集 合 よ り小 さ い 集 合 に 対 応 す る 動 詞 句 を も っ て き て も 同 じ こ と が 言Sる 。
例:At.most five students are singing⇒At most five students are singing a cappella
NPIのanythingが 生 起 で き る 環 境 を ま と め る と 次 の よ う に な る 。!は そ れ ぞ れ の 決 定 詞 が も つ 単 調 性 、 ゾ は そ の 中 で 、anythingが 生 起 で き る 場 合 を 示 す 。
(17)
↑MON 」,MONMON↑
MON↓no '* 1 * ノ few *
ゾ
* ノ atmost n *ゾ
* 6! every *ノ
/ * many / * ! * at least n ! * ! *MON↓ は 動 詞 句 内 でNPIが 生 起 で き る 場 合 、 ↓MONは 主 語 内 でNPIが 生 起 で き る 場 合 な の で 、 次 の 結 論 が 得 ら れ る 。
(18)anythingはMON↓ お よ び ↓MONの 環 境 で の み 生 起 で き る 。
こ れ は 、anythingに 限 ら ず 他 に 英 語 でNPIと さ れ て い る 表 現(e.9. budge an inch, lift a finger,)に つ い て も 一 般 に 成 り立 つ 。
3. 日 本 語 の 否 定 対 極 表 現 次 に 、 日本 語 の 「一 言(ひ と こ と)も 」 を 考 え よ う。 以 下 に 見 る よ う に 、 動 詞 句 内 で は 、 こ れ は 、 英 語 のanythingと 同 じ よ う に 振 る 舞 う。 (19)動 詞 句 内 の 「一 言 も 」 a.そ の 学 生 は ひ と こ と も発 言 し な い 。 b、#そ の 学 生 は ひ と こ と も発 言 した 。
C.{
;1懲 副
… と
一
騰ll愚}…
と
一 ・
(19b)の 動 詞 を 否 定 形 に した(19a)が 可 能 で あ る の と並 行 し て 、(19d)は 、 動 詞 を 否 定 形 に す れ ば 、 い ず れ も可 能 な 文 と な る 。⑳騰1測
砒こ
と
一
一 方 、 英 語 の(12)に 対 応 す る 文 を 作 っ て 、 主 語 内 に 入 れ て み る と 、 い ず れ も非 文 で あ る 。 (21)主 語 内 の 「一 言 も 」 ÷ 肯 定 形 の 動 詞 a.#ひ と こ と も発 言 し た あ ら ゆ る 学 生 は 勇 気 が あ っ た 。 h#ひ と こ と も発 言 した{少 しの1せ い ぜ い5入 の}学 生 しか 勇 気 が な か っ た 。 c.#ひ と こ と も発 言 した ど の 学 生 も 勇 気 が な か っ た 。 た だ し、 動 詞 を 否 定 形 に す れ ば 、 生 起 で き る 。 こ れ は 、 主 語 内 の 関 係 節 の 否 定 動 詞 句 内 で の 生 起 で あ る の で 、 英 語 のeveryの よ う な 、 否 定 を伴 わ な い も の も あ る(12)と は 異 な る 環 境 で あ る 。 (22)主 語 内 の 「一 言 も 」+否 定 形 の 動 詞 a,ひ と こ と も発 言 し な い あ ら ゆ る 学 生 は 勇 気 が あ っ た 。㌦
とことも発言しない{論
5人の}学生しか勇気がな一
8(19c)の う ち 、 否 定 の 述 語 を 要 求 す る 「∼ しか … な い 」 の 中 に 「一 言 も 」 を 入 れ た も の は 容 認 度 が や や 落 ち る 。 こ れ は 、 「∼ しか … な い 」 と 「一 言 も … な い 」 の 両 方 が 同 時 に 一 文 中 に 起 こ っ て い る た め か も し れ な い 。日本語 のNPIの
韻律 と意味
23 c.ひ と こ と も発 言 し な い どの 学 生 も 勇 気 が な オ・っ た 。 一 方 、 主 語 内 の 位 置 に は 、 「で 」 を 補 っ た 、 「一 言 で も」 な ら ば 生 起 で き る 。 た だ し、 文 は 肯 定 文 で な い とい け な い 。 ま た 、 「一 言 も」 と は 韻 律 が 異 な り、 「と 」 に ア ク セ ン トが あ る 発 音 に な る 。 (23)主 語 内 の 「一 言 で も 」 a.ひ と こ と で も発 言 し た あ ら ゆ る 学 生 は 勇 気 が あ っ た 。 #ひ と こ と で も発 言 し た あ ら ゆ る 学 生 は 勇 気 が あ っ た 。 b.#ひ と こ と で も発 言 し な か っ た あ ら ゆ る 学 生 は 勇 気 が あ っ た 。 #ひ と こ と で も発 言 し な か っ た あ ら ゆ る 学 生 は 勇 気 が あ っ た 。 c,ひ と こ と で も発 言 した{少 し の1せ い ぜ い5人 の}学 生 しか 勇 気 が な か っ た 。 #ひ と こ と で も発 言 し た{少 しの1せ い ぜ い5人 の}学 生 しか 勇 気 が な か っ た 。 d.#ひ と こ と で も発 言 し な か っ た{少 しの!せ い ぜ い5人 の}学 生 し か 勇 気 が な か っ た 。 #ひ と こ と で も発 言 し な か っ た{少 し の1せ い ぜ い5人 の}学 生 し か 勇 気 が な か っ た 。 e.ひ と こ と で も発 言 し た ど の 学 生 も勇 気 が な か っ た 。 #ひ と こ と で も発 言 し た ど の 学 生 も勇 気 が な か っ た 。 f.#ひ と こ と で も発 言 し な か っ た ど の 学 生 も勇 気 が な か っ た 。 #ひ と こ と で も発 言 しな か っ た ど の 学 生 も勇 気 が な か っ た 。 こ の 「一 言 で も」 は 、 逆 に 、 動 詞 句 内 に 生 起 す る と肯 定 文 で も否 定 文 で も非 文 に な る 。9 (24)動 詞 句 内 の 「一 言 で も 」 a.#そ の 学 生 は ひ と こ と で も発 言 しな か っ た. b.#そ の 学 生 は ひ と こ と で も発 言 した 。α
騰1
賑}に 一 一
薫 勢駈}癒 一一
織 欝闘 廊一 一 ・
9以 下 で は 、 「ひ と こ と で も」 を含 む 文 は い ず れ も 非 文 に な る の で 、 例 文 は 「ひ と こ と で も」 を 含 む もの の み' に す る 。f耀 敏
_}一
一
結 局 、 日 本 語 の 「一 言(で)も 」 は 、 英 語 のanythingと は 異 な り、 生 起 位 置 に 関 し て ・ 主 語 位 置 と 動 詞 句 位 置 と で 住 み わ け て い る よ う で あ る 。 ま た 、 「一 言 で も」 は 肯 定 文 に 限 る の で 、 よ り 正 確 に はPPI(positive polarity item)と い う こ と に な る 。
(25)a.ひ と こ と も: MON↓ の 環 境(動 詞 句 内)で の み 否 定 文 で 生 起 す るNPI b.ひ と こ と で も:↓MONの 環 境(主 語 内)で の み 肯 定 文 で 生 起 す るPPI 4. 「だ れ も ノな に も 」 と 単 調 性 以 上 の 「一 言 も1一 言 で も」 の 振 る 舞 い を 「だ れ も1な に も 」 の 振 る 舞 い と比 較 して み る こ と に す る 。 「な に も」 の 方 は 「な ん に も」 の 形 もあ っ て 複 雑 な の で 、 こ こ で は 「だ れ も」 の 振 る 舞 い を観 察 す る 。 「だ れ も」 は 動 詞 句 内 で は 目 的 語 と な り、 本 来 「を」 格 を伴 う場 合 に は 「も」 が そ れ に 代 わ っ て 「だ れ も」 の 形 で あ ら わ れ 、 本 来 「に 」 格 を伴 う 場 合 に は 、 「だ れ に も 」 と い う形 に な る 。 以 下 の 例 で は 、 「興 奮 す る」 と い う動 詞 を 用 い る た め 、 「だ れ に も」 と い う 形 で 考 え る 。 (26)動 詞 句 内 の 「だ れ に も」 a.そ の 学 生 は だ れ に も興 奮 し な か っ た 。 #そ の 学 生 は だ れ に も興 奮 し な か っ た 。 b.#そ の 学 生 は だ れ に も興 奮 し た 。 そ の 学 生 は だ れ に も興 奮 し た 。 C.ど の 学 生 も だ れ に も興 奮 し な か っ た 。 #ど の 学 生 も だ れ に も興 奮 し な か っ た 。 d.#あ ら ゆ る 学 生 が だ れ に も興 奮 し た 。 あ ら ゆ る 学 生 が だ れ に も興 奮 し た 。 (27)あ ら ゆ る 学 生 が だ れ に も興 奮 し な か っ た 。 #あ ら ゆ る 学 生 が だ れ に も興 奮 し な か っ た 。 (28)主 語 内 の 「だ れ に も 」+肯 定 形 の 動 詞 ゜a.#だ れ に も興 奮 し た あ ら ゆ る 学 生 は 愚 か だ っ た 。 だ れ に も興 奮 し た あ ら ゆ る 学 生 は 愚 か だ っ た 。 b.#だ れ に も興 奮 し た 少 し の 学 生 し か 愚 か で な か っ た 。 だ れ に も 興 奮 し た 少 しの 学 生 しか 愚 か で な か っ た 。 c.#だ れ に も 興 奮 し た どの 学 生 も愚 か で な か っ た 。 だ れ に も 興 奮 し た どの 学 生 も愚 か で な か っ た 。
日本 語 のNPIの
韻律 と意味
25 (29)主 語 内 の 「だ れ に も 」+否 定 形 の 動 詞 a.だ れ に も興 奮 し な か っ た あ ら ゆ る 学 生 は 愚 か だ っ た 。 #だ れ に も興 奮 し な か っ た あ ら ゆ る 学 生 は 愚 か だ っ た 。 b.だ れ に も興 奮 し な か っ た 少 しの 学 生 し か 愚 か で な か っ た 。 #だ れ に も興 奮 し な か っ た 少 しの 学 生 し か 愚 か で な か っ た 。 c.だ れ に も興 奮 し な か っ た ど の 学 生 も愚 か で な か っ た 。 #だ れ に も興 奮 し な か っ た ど の 学 生 も愚 か で な か っ た 。 (26)一(29)の 「だ れ に も 」 を 含 む 行 と(19)一(22)を 比 較 す れ ば 、 明 ら か に 、 「だ れ に も 」 は 「一 言 も」 と 同 じ振 る 舞 い を 見 せ る 。 一 方 、(28),(29)の 「だ れ に も」 を含 む 行 と(23)、 お よ び 、(26)の 「だ れ に も」 を含 む行 と(24)を 比 較 す る と 、 「だ れ に も」 は 「一 言 で も」 と 同 じ振 る 舞 い を 見 せ る 。 した が っ て 、 同 じ文 字 列 で は あ る が 、 「だ れ に も」 はNPI、 「だ れ に も」 はPPIで あ る とい う こ と に な る 。(30)a.だ れ に も:MON↓ の 環 境 で の み 否 定 文 で 生 起 す るNPI b.だ れ に も:↓MONの 環 境 で の み 肯 定 文 で 生 起 す るPPI 目 的 語 位 置 の 「だ れ に も」 の 振 る 舞 い は 、(1),(2)で み た 主 語 位 置 の 「だ れ も」 と は 異 な り、 肯 定 文 の 中 に しか 生 起 し な い と い う特 徴 が あ る 。 す な わ ち 、 次 の よ う な対 照 が あ る 。 (31)a.だ れ も が 歌 わ な い 。(=(2a)) b.#そ の 学 生 は だ れ に も興 奮 し な か っ た 。(=(26a)) す な わ ち 、 「万 れ も」 は全 称 量 化 詞 で あ り、 肯 定 ・否 定 ど ち ら の 文 中 で も使 え る が 、 「だ れ に も」 はPPIで あ っ て 肯 定 文 の 中 に しか 生 起 し な い 。 5.韻 律 と 意 味 (30)に 見 る 対 照 は 、 韻 律 を無 視 し て 見 れ ば 、 次 の よ う に 、 一 見 「だ れ に も」 と い う 語 に 多 義 性 が あ る 場 合 の よ う に 見 え て し ま う。
(32)a,だ れ に も:MON↓ の 環 境 で の み 否 定 文 で 生 起 す るNPI b.だ れ に も:↓MONの 環 境 で の み 肯 定 文 で 生 起 す るPPI
ま た 、(26)一(29)の 各 々 の 文 の 対 は 、 韻 律 を 無 視 す る と ま っ た く 同 じ 文 字 列 な の で ・ 文 法 性 の 判 断 が2通 り あ り得 る と い う 奇 妙 な 結 果 に な り か ね な い 。
日 本 語 の こ の よ う な 語 句 、 特 に 疑 問 詞("wh一 語 句'り を 含 む 文 の 文 法 性 の 判 断 に お い て 韻 律 が 重 要 で あ る こ と は 、Deguchi and Kitagawa{002), Ishi.hara(2002)を は じ め と し て ・ 数 多 く の 指 摘 が あ る 。 例 え ば 、 次 の2つ の 文(Deguchi and Kitagawa(2002)の(11),12))
は 韻 律 を 無 視 す る と ま っ た く 同 じ 文 字 列 と な る が 、 文 法 性 は 異 な る 。lo
LoDcguchi and Kitagawa(2002)で は 、(33a)の 「な に」 はEPD(emphatic prosody)、(33b)の 「な に」 と 「い
ま」 はDPD(default prosody))を もつ と 区 別 さ れ る の で 、(33a)のEPDの 「な」 は 太 字 で あ ら わ し て あ る ・ た だ し、 こ こ で は 、(33a)の 「い 」 に 通 常 置 か れ る は ず のDPDの ア クセ ン トが 失 わ れ る こ と の み に 注 目 す る 。 ま た 、 意 図 さ れ た 意 味 を 明 確 に す る た め に 、Deguchi and Kitagawa(2002)に よ る 英 訳 を つ け る 。
(33)a.ジ ョ ン は メ ア リ ー が な に を 選 ん だ と い ま で も 思 つ て い る の? `What does John still think that Mary selected`?'
b.#ジ ョ ン は メ ア リ ー が な に を 選 ん だ と い ま で も 思 っ て い る の? ま た 、埋 め 込 み 文 の 「な に 」 の 代 わ り に 「め が ね 」 に 変 え た(34a)(Deguchi and Kitagawa (2002)の(13))や 埋 め 込 み 文 の 補 文 標 識 を 「と 」 か ら 「か 」 に 変 え た(34b)(Deguchi a皿d Kitagawa(2002)の(14a))は 、(33b)と 同 じ 韻 律 で も 文 法 的 と な る 。 ま た ・(33b)の 「な に 」 を 強 調 し た 韻 律 に し た(34c)(Deguchi and Kitagawa(2002)の(14b))で も 、 「な に 」 が 広 い ス コ ー プ を と る 解 釈 は 得 ら れ な い 。 (34)a.ジ ョ ン は メ ア リ ー が め が ね を 選 ん だ と い ま で も 思 っ て い る の? `Does Sohn still think that Mary selected glasses?'
b.ジ ョ ン は メ ア リ ー が な に を 選 ん だ か い ま で も 知 ら な い の? `Doesn'tJohn know yet what Mary selected?'
c.#ジ ョ ン は メ ア リ ー が な に を 選 ん だ と い ま で も 思 っ て い る の? `What does John still think that Mary selected?'
ま た 、 興 味 深 い の は 、 北 川(2005)に よ る 次 の よ う な 最 小 対(北 川(2005)の(za, b))で あ る 。
(35)a.ジ ョ ン は メ ア リ ー が な に を 食 べ た か い ま で も 知 り た が っ て い る の? `Does John still wnat to know what Mary ate?'
b.ジ ョ ン は メ ア リ ー が な に を 食 べ た か い ま で も 知 り た が っ て い る の? `With respect to what does John still want to know whether Mary ate it?'
さ ら に 、 日 本 語 に 下 接 の 条 件(subjacency)の 制 約 が あ る と し て し ば し ば 指 摘 さ れ る(e.g., Nishigauchi(i990), Watanabe(1992))、 次 の よ う な 例 文(北 川(2005)の(3),(4))も 、 韻 律 に よ っ て 文 法 性 が 変 わ る 。
(36)a.#ジ ョ ン は メ ア リ ー が な に を 食 べ た か ど う か い ま で も 知 り た が っ て い る の? `Does John still want to know whether Mary ate what?
b,ジ ョ ン は メ ア リ ー が な に を 食 べ た か ど う か い ま で も 知 り た が っ て い る の? "With respect to what does John. still want to know whether Mary ate it?'
い ま ま で 、(36)が 非 文 と さ れ て きた の は 、・(暗黙 に)(36a)の 韻 律 で 読 ん で 、(36b)の 解 釈 が 得 ら れ な い と い う判 断 に 基 づ い て い た 。 埋 め 込 み 文 の 中 の 「な に 」 が 広 い ス コ ー プ を と る こ と が で き な い た め に 、LFで の 移 動 が 下 接 の 条 件 に よ っ て 阻 止 さ れ る とい う議 論 で あ る 。 し か し、 北 川 ら が 指 摘 す る よ う に 、 「な に 」 が 広 い ス コ ー プ を と る解 釈 ほ(36b) の 韻 律 な ら ば 可 能 で あ る 。 そ の た め 、 日本 語 に 下 接 の 条 件 の 制 約 が あ る と い う議 論 は 成 り立 た な い こ と に な る 。
日本 語 のNPIの
韻律 と意味
27 6.NPIの 韻 律 す で に見 たNPI「 だ れ(に)も 」 が も つ 韻 律 は 、 Kuroda(2005)が 指 摘 す る よ う に 、 先 導(pied-piping)さ れ た と き に も保 持 さ れ る ・ 以 下 はKuroda(2005)が 認 め る と し て い る 発 音 で あ る 。11 (37)a.花 子 は だ れ が 書 い た ほ ん も よ ま な か っ た 。 b.花 子 は だ れ が 書 い た ほ ん も よ ま な か っ た 。 c.花 子 は だ れ が 書 い た ほ ん も よ ま な か っ た 。 d.花 子 は だ れ が 書 い た ほ ん も よ ま な か っ た 。 こ の 中 で 、1つ だ け 韻 律 の 異 な る(37d)の 「だ れ が 」 は 、 次 が 非 文 で あ る こ とか ら、 NPI の 「だ れ が 」 で は な く、PPIの 「だ れ が 」 で あ る と考 え ら れ る 。12 (38)#花 子 は だ れ が 書 か な か っ た ほ ん も よ ま な か っ た 。 Kuroda(2005)は(37a, b)の 差 は 微 妙 だ と し て い る が 、 筆 者 に は 、(37a)の 発 音 は 不 自 然 に 聞 え る 。 こ れ は 「ほ ん 」 が も つ 語 彙 的 な ア ク セ ン トが 文 中 で 保 持 さ れ る 度 合 が 人 に よ り異 な る た め だ ろ う。 す べ て の 語 が 語 彙 的 ア ク セ ン ト を保 持 して い る(37c)も 筆 者 に は 不 自然 に 聞 え る 。 そ こ で 、 今 ま で と 同 じ よ う に 、 語 彙 的 な ア ク セ ン トの 影 響 が 出 な い よ う に 平 板 ア ク セ ン トの 語 に よ っ て 、 上 の パ ラ ダ イ ム を 作 り直 して み よ う。 (39)a.奈 緒 美 は だ れ が 絶 賛 し た 小 説 に も興 奮 しな か っ た 。 b.奈 緒 美 は だ れ が 絶 賛 し た 小 説 に も興 奮 し な か っ た 。 c.奈 緒 美 は だ れ が 絶 賛 し た 小 説 に も興 奮 しな か っ た 。 こ の 場 合 、(39a, b)の 違 い は よ り鮮 明 に 出 て い る 。(39a)で は 、 高 い 音 調 は 否 定 辞 の 語 幹 まで 保 持 さ れ る が 、(39b)で は 「も」 で 音 調 が 下 が る 。(39c)はPPIの 「だ れ 」 の 例 で あ り、 「絶 賛 し た」 「小 説 」 に は ア ク セ ン トが な い の で低 い ま ま だ が 、 「に 」 で 音 調 が 上 が る 。 (39a, b)の 「だ れ … 」 がNPI、(39c)の 「だ れ … 」 がPHで あ る と い う前 提 の も と に 、 そ の 簡 略 化 さ れ た 意 味 表 示 を 考 え て み る と次 の よ う に な る だ ろ う。(40)a.だ れ …(NPI):可 ヨx人 ヨ渤 〔小 説(y)八 絶 賛(x, y)A興 奮(n,y)] b.だ れ …(PPI):∀x人 ∀y物[[小 説r)A絶 賛:(x, y)]→ 可興 奮@, y)]
こ の2つ は 論 理 的 に 同 値 で あ り、(39)の3つ の 韻 律 の 問 に 意 味 の 違 い は な い こ と に な る 。13 11Kuroda(2005)は この よ う な韻律 を、 北 川 らのEPDに 対 して 、 RPD(rising prosody)と 呼 んで い る。 12(38)は 意 味 的 な不 整合 を起 こ してい る た め に非 文 で あ る と も考 え られ るが 、 次 の よ うな 例 は意味 的 に は 説 明 で きな い。 (i) a.花 子 は だ れ が 開封 しな か った 手紙 も開封 しなか った。 b.#花 子 は だ れ が 開封 しなか った 手紙 も開封 しなか った。 c.花 子 は だ れ が 開封 した手 紙 も読 ま な か った 。 13(39)の よ う な 例 と は 異 な り、Kuroda(2005,(73))は 韻 律 が 意 味 の 違 い を も た ら す 興 味 深 い 例 を あ げ て い る 。
(39)と そ の 論 理 表 現 の(40)を 比 較 す る と、NPIの 「だ れ … 」 とPPIの 「だ れ ・一」 は 意 味 論 的 に 次 の よ う に 特 徴 付 け る こ と が で き る 。 (41)a。NPIの 「だ れ … 」 は 音 調 的 に 強 調 さ れ な い と と も に 、 論 理 的 に 存 在 量 化 子 に 対 応 す る 。 存 在 量 化 子 は 音 調 の 高 い 部 分 を ス コ ー プ に も つ 。14 b.PPIの 「だ れ … 」 は 音 調 的 に 強 調 さ れ る と と も に 、 論 理 的 に 全 称 量 化 子 に対 応 し、 広 い ス コ ー プ を も つ ♂5 し た が っ て 、(39a)で は 「(花子 が)xが 絶 賛 し た 小 説 に 興 奮 す る 」 が 「な か っ た 」 の ス コ ー プ に な る 。 で は 、(39b)の よ う な 、 「も」 で 下 降 す る 韻 律 は ど の よ う な 意 味 論 的 な 特 徴 付 け が 可 能 な の だ ろ う か 。(39)の3つ の 文 は ど れ も 同 じ意 味 な の で 、(40)と 同 値 な 意 味 表 現 を も つ は ず で あ る 。(40)の い ず れ と も 同 値 な 第3の 表 示 と して 次 の 形 が あ る こ と に 注 目す る と 、 次 の 形 が(39b)に 対 応 す る と考 え られ る 。 (42)∀Y物[ヨx人[小 説r)A絶 賛(x,ン)]→ ヨ興 奮(n,ン)】 こ れ も 、(41a)に 従 い 、 高 い 音 調 を もつ 部 分 が 「だ れ … 」 に 対 応 す る ヨx人 の ス コ ー プ と な っ て い る 。 (41)と の 対 応 を 見 や す く す る た め に 、(40a, c)に も若 干 の 訂 正 を ほ ど こ して 再 掲 す る と 、 音 調 と(否 定)存 在 量 化 子 と の 対 応 が 次 の よ う に な っ て い る こ と が わ か る 。 (43)a,奈 緒 美 は だ れ が 絶 賛 した 小 説 に も興 奮 し な か っ た 。 ∀y物一1ヨx人[小説(y)へ 絶 賛(ろy)A興 奮(n,y)】
h 奈 緒 美 は だ れ が 絶 賛 した 小 説 に も興 奮 し な か っ た 。 ∀y物[ヨx人【小 説r)A絶 賛(κ,y)」→ ヨ興 奮(n,y)] c.奈 緒 美 は だ れ が 絶 賛 し た 小 説 に も興 奮 し な か っ た 。 ∀y物∀x人[[小説(y)A絶 賛(X,y)]→ ヨ興 奮(n,y)】
(i) a.花 子 は だ れ が 書 い た ほ ん も 買 っ て 読 ま な か っ た 。 b.花 子 は だ れ が 書 い た ほ ん も 買 っ て 読 ま な か っ た 。
こ の2つ は 、 「買 っ て 」 と 「読 ま な か っ た 」 の 間 に ポ ー ズ を 置 か な け れ ば 同 じ意 味 で あ り、 次 の ど ち ら の 表 現 に も対 応 す る 。
(ii) a. 門ヨx人 ヨy物[本 ◎)八 執 筆(x, Y)A購 買{h,y)A読 書(h,y)】 b. ∀x人∀y物「[本(y)八 執 筆(x,y)}→ 唖 購 買(h,y)A読 書(h,y)1]
と こ ろ が 、(ib)で は 、 「買 っ て 」 と 「読 ま な か っ た 」 の 間 に ポ ー ズ を 置 くこ とが で き 、 そ の 場 合 に は 次 の よ う な 意 味 に な る 。
(iii) Vx人by物[[本(y)A執 筆(x, y)]→ 【購 買(h,y)n,読 書(h, y)]]
(ii)は(jj a, b)と 論 理 的 に 同 値 で は な く、 異 な る 意 味 を も つ 。(iij)の 否 定 演 算 子 を 式 頭 に も っ て く る と ・ 論 理 的 に 同 値 な 次 を 得 る が 、 「購 買(h,y)」 に も否 定 を 置 か な くて は な ら ず 、(iia)と は 大 分 異 な っ た 形 に な る 。 (IV) ¶ヨx人 ヨY物 【本(Y)A執 筆(x,y)A【 一購 買 仙,y)V読 書@,y珊
14あ る い は 、 そ れ 自体 は 量 化 の 効 力 を も た ず 、Heim〔1982)の よ う な 存 在 閉 包(existential cEosure)カ ミ働 く と 考 え て も よ い だ ろ う。
日本語 のNPIの
韻律 と意味
29最後 に、以上 の ような取扱 いが 、先導 が ない場合 の不 可能 な韻律 を説 明で きる こ とを
見 てお こう。
(44)a,奈 緒 美 は だ れ に も興 奮 しな か っ た 。 可 ヨx人 興 奮(n,x) b,#奈 緒 美 は だ れ に も興 奮 しな か っ た 。 ヨx人???→ ヨ興 奮(n,x) ヨx人[???→ ヨ興 奮(n,x)1 ヨx人[???n,興 奮(η,切 ∀x人[???→ 可興 {n,κ)] c.奈 緒 美 は だ れ に も興 奮 しな か っ た 。 v瓶 門 興 奮@x) 問 題 は(44b)で あ り、い ろ い ろ な 論 理 式 の 可 能 性 を考 え て み て も、条 件 演 算 子 の 前 件 に お い て 存 在 量 化 す べ き述 語 が 存 在 しな い た め に 、整 合 的 な式 は 作 れ な い 。 す な わ ち 「だ れ に も」 に対 応 す る 変 項 が 項 と な る 述 語 が な い の で あ る 。 した が っ て 、 解 釈 で きず 、 こ の よ う な 音 調 は 認 め ら れ な い こ と に な る 。16 7.お わ り に 本 稿 で は 、 日本 語 のNPI、 特 に 「だ れ も」 を 中 心 に 、 そ の 韻 律 と 意 味 の 関 係 を見 た 。 も ち ろ ん 、 い く ら か の 記 述 的 一 般 化 を試 み た に す ぎ ず 、 数 多 くの 問 題 が 残 さ れ て い る 。 特 に 、(43)の 意 味 表 現 を統 語 構 造 か ら ど の よ う に 構 成 的 に 導 き 出 す か に つ い て は 、 何 も論 じて い な い 。 た だ 、 そ の よ う な プ ロ グ ラ ム を 完 成 さ せ る に は 、 「統 語 構 造 」 に は 韻 律 の 情 報 が 必 要 だ と い う こ と は 明 ら か に な っ た と思 う。17 (43)の3つ の 文 は 、 韻 律 を 無 視 して 文 字 で 書 く と 同 じ に な っ て し ま う表 現 で あ る 。 ま た 、 そ の 意 味 も 、3つ の 論 理 式 は 同 値 で あ る た め に 、 違 い は な い 。 そ れ な の に な ぜ 複 数 の 韻 律 が あ る の だ ろ う か 。 本 稿 で 提 示 した 、 意 味 表 現 の 違 い も 、 そ の ま ま で は 回 答 と は な り得 な い 。 論 理 的 に 同 値 な 論 理 式 は 新 しい 情 報 を も た ら さ な い か ら で あ る 。 お そ ら く、 意 味 表 現 に は 、 そ の 形 式 そ の も の に 、 論 理 で は と ら え きれ な い 何 ら か の1青 報 が あ る の だ ろ う。(43)の 論 理 式 は 静 的 な 表 示 だ が 、 人 間 の 情 報 処 理 に 即 した 形 で 、 動 16注2で 触 れ た よ う に 、 こ こ で は 、Cの よ う な 変 項 が 種 類 分 け さ れ て い る と い う前 提 を 用 い て い る が 、 伝 統 的 な 記 法 で は こ の よ う な 結 論 が 出 て こ な い こ と に 注 意 さ れ た い 。(44)に 対 応 す る 伝 統 的 な 論 理 式 は 次 の よ う に な る。 (i) a. 奈 緒 美 は だ れ に も興 奮 し な か っ た 。 _一一,3x[人(x)A興 奮(n,x)] b.#奈 緒 美 は だ れ に も興 奮 し な か っ た 。 コ コx[人(x)A興 奮(n,κ)]あ る い は ∀x[人(x)→ ヨ興 奮(n,x〕 ユ c, 奈 緒 美 は だ れ に も興 奮 し な か っ た 。 ∀x[人(x)→ コ興 奮{n,x)]す な わ ち 、(ib)に 対 して も(is)あ る い は(ic)と 同 じ論 理 式 を 与 え て 、 解 釈 可 能 だ と い う こ と に な っ て し ま う。 u特 に 、(43)の 全 称 量 化 子 と 「も」 の 関 係 を 明 示 化 す る 必 要 が あ る 。
的 意 味 論 の よ う な 考 え 方 に従 っ て 動 的 に解 釈 す る こ と も1つ の 可 能 性 と して 考 え られ る 。 い ず れ に せ よ 、 今 後 の 課 題 で あ る ♂8 最 後 に 、 本 稿 で は 基 本 的 に 語 彙 的 な ア ク セ ン ト を も た な い 語 を用 い て 基 本 的 な 韻 律 の パ タ ー ン を 抽 出 し た が 、Kuroda(2005)で 議 論 さ れ て い る よ う に 、 一 般 に は 、 RPDの 中 にEPDが 重 ね 合 わ さ れ る 現 象 が お こ る の で 、 そ の 場 合 の 意 味 的 な ス コ ー プ の 問 題 を 解 明 す る 必 要 が あ る 。
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Author,s E・ma藍l Address:gmj [email protected] Author's web site:http:〃sils.shoin.ac.jp/-gunji/
is本 稿 で は 触 れ な か っ た が 、 本 稿 で あ げ たNPIの 韻 律 は 関 東 の 発 音 で あ り、 関 西 で は ま っ た く異 な る 音 調 で 発 音 さ れ る 。 特 に 、NPIとPPIと に 発 音 の 差 が な い 場 合 に は 、 そ の 意 味 表 現 と の 対 応 も大 き く変 わ っ て こ ざ る を 得 な い 。 こ れ も 将 来 の 課 題 で あ る 。 現 在 ま で の 予 備 的 な 調 査 で は 、 関 西 方 言 で は 下 降 音 調 が 「も」 よ り.も早