古く、 日本語の助詞「へ」は動詞のあらわす動作の進行する方 向を表し、 「に」は動詞 の表す動作の到達点をあらわすという対 注ー 立が見られるが、 i 六0八年成立 のロドリゲスのr日本大文典」 には 「 助詞 II ILIIは書きことばに於いて は往々IIへIIの代りに用 いられる」と言い「京へ、 筑紫に、 坂東さ」の諺をあげながら而i 詞“沼<IIはIIに II 又はIIへIIをとろ」と記している。すなわち、 .助詞「へ」と 「 に」の使い分けには単なろ位相上 の問題として片 付られないような問図がひそんでいろようである。 注2 ・ さ て、 17世紀初に成立したと口われていろ
i
解新話」では「へ」 及び「に」のいずれか一方をとる移動動詞もあれば、 両者が用い られる動詞もかなり存在してい る。 ここでr捷解新語』と前後す 注3 注4 るキリシタン資料のr天京本平家物語」及び国内賓料の大蔵虎明 本狂言を参照しながら、 一兄 「 へ」と「に」の使い分けに混乱が 一、 はじめに 朝鮮資料r捷解新語」を中心に「へ」
「に」
移動動作の表現における
あると思われるr捷解新語』にも、 ある種の使い分け の法則が存 在していたことを明らかにしたいと思う。 方法として、 まず、 移動動詞を「へ」と「に」の選択に関して 次の三グループに分け、 各グループととに使い分け の法則を考察 していく。 L 「 へ」と「に」ともに用いられる動詞 a.「行く」「来ろ」とその尊敬話・謙譲語。 b.「遺ろ」c.「任せる」d.「下りろ」 2 「 へ」 だけが用いられる動詞 a.「沼く」 b.「上がる」「上る」 「 下ろ」「戻る」 「 通る」「廻ろ」 3 「 に」だけが用いられる動詞。 「置く」「乗る」「途う」「臥す」 「負う」 二、 「へ」と 「 に 」 ともに用いられる動飼 0「行く」「来る」とその葛敬語・謙譲語の場合 。鄭
. .昌
の使い分けの法則
鏑
-30-「行く」「御ざろ」「参る」「おちゃる」の動詞の中で
R?
」 「来る」の埠敬語と しての「御ざる」'「おぢやる 」などの動詞は 助詞「へ」だけが用いられている。そ れぞれの用例は次のようで ある 。 •ひにひにここもとゑ御座て ものかたりもめされたれば(巻 九 .10) •あ いのしま のしゅく しょゑたいしゅみまいにおちゃて(巻八 •12) 一方、 「行く」及びその謙譲語「 参る 」とそれ から「来る」の謙 譲語「参る」は「へ」と 「に」ともに用いられていろ。.
•そなたのね んの いたとこ ろはかみかたゑいて(巻七•7•ウ).
•なにがしこちこいそらがたいくわんにいて(巻一・・1).
•しん しゑ御 たいめんのや うす をじきにまいてさうを申いれと あるときこそ御ざる(巻七・18)•
•みがじきに とねぎに まいて(巻一・25•ウ) 狂宮及び『天草本平家物語 」 での用法はr捷解新語」の用法と 同じである。 すなわら、 「御ざる」の場合は狂言とr天草本平家 物語」ともに「行く」「来る」の意味で用いられたものはすべて 「へ」をとっており 、'r捷解新語』の用法と一致している。 ①狂言 の用例.
•都へ御ざらは同通いた したいが (餅洒43) . •唯今はなにと思ふて是へ御ざったぞ(どん太郎259).
•よそへお じやったらは (すゑ ひろが り70).
•唯今はどれへ御ざったぞ(二人袴394) ®天草本平家物語の用例•
•その夜の中に大覺寺へとざって見らろれば(巻四350 ).
•なぜに これならではどこへとざらうか(巻二98 ) しかし、 存在動詞として使われてい る場合にはすぺて「に」をと っている 。 ①狂言の用例.
•こなたにお馬がとざらぬほどに(財のつら88).
•今まで是にとざる程に(あさう154) ®天草本平家物語の用例 75 ).
.
•三四の官ばかり都にとざったを(巻三ー•
・大膳の 大夫と いふ者が宿 所に 御自由に とざって(巻四203) 「おぢ やる」の場合はr天雖本平家物語」では「行く」「来る」 の意味で使われた 用例は見えない。すぺて、 存在動詞として使わ れていろため 「に 」をと っている。.
•成親卯の北の方は都の北山辺に忍うておちやった(巻l55).
・少将の母上は慧山に おちやった(巻一73) 一方、 狂言では「行く」「来る」の意味で用いられたものはすぺ て「へ」をとっており、rti解新語』の用法と一致している。「に」 をとる例も少しあるが すぺて存在動詞として用いられたものであ る 。ここで考えられることは「とざる」「おぢやろ」という動詞は一 つの語で二つの意味を持っている。つまり、存在と移動をあらわ していろ、そういうあい まいさを助詞によって区別するために移 ・動性には「へ 」 を、存在性には「に」が用いられたということが 言えろだろう。 ・③「逍ろ」の場合 '‘ 「追ろ」という動詞には物品をさずけると いう用法と人を派週 するという用法があるが、現代語においては前者の場合に「に」 が用いられろのが一般的であ ろのに対して、後者の場合には比較 的自由に「へ」も「に」も使うこと ができる。ところがr捷解新 捷 解 助詞 新
,.
パロ 動詞 と さ・ る おぢやろ 動詞 ビ ざ おぢやる 詞 狂_助 動詞 と ざ「へ」
ろ 44 おぢやろ 15 •こなた~ii
(うろさし223) 存在勁詞として使われている「に」の用例、.
・内におじゃらふかぞんぜぬ(八幡の前381).
•そなたは足におじゃれ(しうろん似) 語』では、前者の用法に「に」のみが現れることは現代語と同様 であるが、後者の用法 には「へ」のみが用いられ、僭沼点を表す 「に」が使われる明らかな例は見えない。 . . ①人を派逍すろ場合の用例 •とおいところゑ御ね んとろにくんか んをやらしられとはしら ろほどに(巻一・ 22 .ウ) •しゃう<ゎんしゑみもひとをやりまる せうほどに(巻一・ 23).
•たつのときにはんすしゅをしまのかみと ころゑやて(巻八・ ではなく「代り つか さどろ」 29 ) 醤品をさずける場合の用例 ー 一 •くろうしたけにんにやたものを(巻八. 8 ) 2 3 •さきいくふねにやりまるせうかとおもいまろする(巻三・ 25)_
なお、次の例は一見例外のようであるが韓国語対訳では「代官に」 対して「代宮の 」 の意味であるからここでは 「に 」 が「ーとし て」の意で用いられていることがわかる。すなわち悧沼点の 「に 」 ではない。又、この場合の「代官」は具体的な官暉名をさすもの 注6 (『日葡辞苔」)役人を意味するの •みもたいくゎんにひとをやりまるせうか (巻一一・15・ウ) そして、「逍ろ」の類似語 「辿す」も人を派逍する意で用いられ 「逍る」と同様に「へ 」が用いられている。 •しんす たたしられてみがらのところゑまかないぶぎゃうしゅ である。狂君之類23) ている。 . • ••••••••••• •其手へやる物ではおりなひ(日近箭骨94) よりわざとひとを週いて申は(巻八・1) r天草本平家物語』での「逍る」という動詞は「へ」のみが用い られているがすべて「人をやる」という用法である。
.
・歴々の侍ともをそへて顆朝の許へやられたれば(巻三・143).
•その子述のうらか ら一人豊後へ追りまらして(巻三・179) •国々へ討手をやらるれど も(巻一―-•156) 「に」が用いられている用例はないのである。一方、狂言での「逍 る」という動詞の用法は基本的にはr捷解新語』と同じだが((つ まり 「IC」がものをやる場合で、 「へ」は人 をやる場合))、 もの をやろ堪合でも「へ」が用いられる例が数例見える。そ れらの「へ 」 に上接することば は「かた」「さき」などの 方向性を持った名詞 ゃ「やま」「うみ」「そら」「こち」などの相対性を持つ名詞、 代名詞である。 ...... •大臣ばしらのかたへやって(こひ聟371)••••••
.
•ささへ(竹筒) をもたせてさきへやれ(さるざとう436)•••
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•••
•
•さいぜん(最前)の山な舟を海へやって海な鹿を山へやった ら(うじまつ祖) ....... ....... •そらへやればこらのうらみ、 こらへやればそらの うらみ(集 また、 述語が否定型をとっている例においては「へ」も用いられ.
•
••
•こ こなどのへうった 程にそなたへやる事はならぬ (雁盗人110) 次の用例は例外である。.
△よそへやる文をひきさひて(文荷113) 団「任せる」の場合。 「まかせる」という動詞は現代語において は「に」をとろのが自 然な表現であるが、 r捷解新語』においては「へ」も「に」もと り、 「へ 」をとる場合はまかせる 対象が二人称(聞き手)の場合 に限られている。 ①対象が二人称(聞き手)の場合 .......... •ともかくもそなたゑまかせまるするほどに(巻六・2)•••••••
••.
•ろじのことをばこなたゑまかせまるするほどに(巻六•23)••••••
•••
.
-•そなたゑまかせまるする(巻八・12) これはまかせろ対象を特に「に」で指し示めすことなく「へ」 によっ て方向として捉え、 委託された事柄の遂行の資任を軽該さ せ、 問き手への配慮を表明するものであるので「へ」が用いられ たと思う。 それに対して対象が一人称の場合には言うまでもなく 敬意を表す必要がない、 又、 三人称の場合もその褐にいないので あるから配慮を表明する対象とはなりえな いので「に」で指し示 したと思うのである。 ®対象が一一人称(聞き手)以外の場合 ••••••. •とかく こらにまか せてしやり(巻七•7•ウ ) ............. •とかくしゅっせんのひはていしゅにまかせて(巻八•22・ウ)®「に」の用例
••••••.
•こちにまかせしられ(巻九・10・ウ) r天草本平家物語」では(人+「へ」「に」+まかせる)の用例 はないが狂言ではr捷解新語』の 用法と同じように一人称の場合 には「に」、 二人称の場合には「へ」が用いられている。 三人称 の用例はない。 ① 対象が二人称(聞き手)の場合 。••••••
•••
.
•そなたへまかせまらする程に(鼻取ずまふ185) ®対象が二人称(聞き手)以外の場合。••••••
.
) 2 •それははらはにまかせておけ(はなと21••••••
•
●わらはにまかせておけ(はなと223) 〇「下りる」の場合。 「下りる」という動詞の場合はr捷解新語」で「へ」と「に」と もに用いられているが、下りる地点が特定の地点を示さないよう な場合は方向を表す「へ」 を用いざるを得ないが、 船のように限 定された比較的せまい地点へ 下り る場合には 「に」が用いられて いる 。 ①「へ」の用例•••••
•..
•おかゑおりてふるまいのときでもあり(巻六•23・ウ)•••••
•.
•とまりととにふねにおりさしらる御むつかしさはすこしなり (巻六•21) Lの場合の「おか」は「陸」の意味であり、 海に対立するもの であるから 場所は相対的にしか捉えられない。つま り、 方向とし か表現できない。 一方「船に」は「船上に」という意であろから きわめて具体的な地点をさしていろ。 r天草本平家物語」での用 法も甚本的にはr捷解新語」の用法と同じであるが「に」の用例 だけある。 狂言の用例はない。...
.
•みな庭にざっと下りた(巻二•99) この用例も「 庭に」は「庭の中に」 という場所をさす意である からきわめて具体的な地点をさしていろ。 三、 助飼「へ」だけが用いられている動詞 0「著く」の場合 「著く」という動詞は現代話では「へ」と「に」ともに用いられ ているが、 すで に沼いている結果を表 す時には「に」をとり、 ま だ、 はっきり沿いてない状想や出発して着くまでの途中経過にあ る時には「へ」を とる傾向が強いのが一般的である。 r捷解新語」 でも「著く」という動詞はまだ箸いていないという事態に対応す る形で「へ」のみが現れ、 「に」をとる 例は認められない。 この 「IC」に代るもの として「ま で」がすでに着いたという頭態に対 応する形で 用いられている。 ①「へ」の用例.
•おくれたふねがいづかたゑ つくと も(巻一・12・ウ).
•あすはみしまゑつかしられうほどに(巻七・10).
'
•もんあんを申、 このにさんにちのうちにはゑとゑつか しられ-34-しかし . う ほどに(巻七・14) ®「まで」の用例 •おしらるやうにじゃうげたにんちうぶじにここまでついてめ てたさたがいにとうせんによろこびのまゑで御ざる(巻八・ 17 ) .. •またかい じゃうゑんろにひきまわいてここま でぶじについた ・ う ゑは(巻八・19) 「通る」「廻る」の場 「珀く」という動詞はロ ・ ドリゲスr日本大文典 』 . では 記」も「へ」もとると記して「都に着いた」「舟が茨に着いた」 「都へ若いた」9大物の浦へ京よりの御使が沼いた」という用例 に、 r天草本平家物語』及び狂宮 をあげながら指摘しているよう にも 「IL」の用例は多い 俎、 「へ」も少数用いられており、その 使い分けには厳密な法則性が見出せない。 ③「あがる」「上る」「下る」「戻る」 合。 これらの動詞は「とおる」と「まわる」を除いていずれも相対 的な移動を表す動詞である。そのため「おか 」「あ と」「ここも と」など相対的な位設を示す「名詞」「代名詞」+「 へ」という 形をとっている。 又、 「とおる」と「まわる」はそれ自体が経由 性を持つものであろから「へ」が 用いられるのである。 しかし、 「上る」の場合は行くの意 味として用いられている。 • l •おかゑあがらしられていらにち にも御くつろぎなされて(巻 五・17•ウ)
.
•申ても申ても あとゑもどるやうな御こころもち(巻四・.
•おとついここもと ゑくだて(巻一・1).
•しんすかみかたゑ御とうろのとき(巻五・23) •わいのうらゑii
はつにてとざる・(巻十・19・ウ) . •あすのあさは とねぎゑのぼて(巻l.20・ウ ) r天草本平家物梧』と狂言では「とおる」「 まわる」「もどる」 の用法はr捷解新語」と同じである。それぞれの用例は次の通り である。 「通る」の場合 ①狂言の用例.
●是へとをらせられ ひ( 老武者137).
•こなたへとおらせられい(毀聾336) ®r天草本平家物語』の用例.
•
•丹波の鹿は播磨の南野へ通りまらすろが(巻四232).
·蘇武これは皆わが故繹へ通ふものちゃとなつかし(巻一•62) 「廻る」の場合 ①狂言の用例.
•左右へまはり(財っち87).
•今は上へまはれといふ は(入間川163) ®r天草本平家物語」の用例.
・此の勢が黒板へまはらうずる串は(巻一―-146).
•わが人数が後ろへまはったと知って(巻三148) しかし、 狂言の中では一っの例外が見える。.
△さゆにまはれと云(二人袴394) 「戻る」の坦合 ①狂コの用例.
•宿へもどったらは( まんぢう302 ).
•国本へもどる事がなりまらすまひ(栗田口213) r天草本平家物語』の用例はない。 しかし、 「のぼる」「くだる 」の動詞は『天革本平家物語」と狂 笞では「へ」も「に」も用いられているが、 「のぼる」という動 ・ 注 7 詞はr国語大辞典」では低い所から高い所へ移動する。 また、 移 動してある物の上に乗る、 そして、 地方から都へ向かって行くの 意味がある。 「くだろ」も姦い所から低い所へ 移 り勁く、 または 注8 都から地方へ行くの意味がある。 そして、 橋本巡吉博士のr肋詞 ・助動詞の研究」によると「平安時代以後に於ても奈良朝以前の 用法と同じように「に」の用法は大抵かはりがない 。 た だ、平安 朝にはT宮な云ひ万として主語に「に」をつけるものが出来た。 しかし、 室町時代になると「に」のかはりに「へ」を用ゐるもの がようやく出来て来た」と記している。 すなわら、 室町時代には 「fjく」などの動詞にはすで に「へ」も「に」も用いられていた のである。 r天な本平家物語」と狂言で の「 上る」 「下る」 の動詞は「上京」 または「下向」の意味として用いられた場合には「へ」も「に」 もとっているが、 「上る」が 「ものの上にあがる」又は「ものの 上に乗る」のようにきわめて具体的な所へあがるの意味として用 いられた場合に は「に」だけとっている。 一万、 「下ろ」も「も のの下に下りる」の意味として 用いられた場合には「に」だけと っているが、 狂言では「下る」が「ものの下に下りる」の意味と して用いられた用例はない。 r天な本平家物語」の「上る」の場合 ①「上京」の意味としての用例.
•これ を取って笈のかたにさいて都へ上り(巷一い).
•これから山侍ひに都に のぼって(巻四277) ®「ものの上にあがる」の意味としての用例.
• 東の築垣に上 って(巻四214).
・磁に 上り(巻l76)-36-狂言の「上る」の場合 ① 「上京」 の意味としての用例
.
•都へのばる者で御とるか(餅酒43).
9此ほど某をたつね てみやこにの ぽる(はなC217) ®「ものの上にあがる」の意味としての用例.
●●らいじゃうにて 出、だいにのぼる(た うずまふ134).
,•娑股にて手馴し木すえにのほれば幼の枝にて(仰413) .r天草本平家物語』の「下る」の場合 ①「下向」 の 意味としての用例.
•お使八島へ下って(巻四261).
•この程に関東に下らうと問く(巻四磁) ⑨「ものの下に下りる 」の意味としての用例.
•谷に下れども(巻一76).
•ある時湯殿にお下りあれば(巻四函) 狂言の「下る」の場合 ①「下向」の意味としての用例.
・急で本国へくだら ばやと存る (柿山伏416).
•東に下り給ふ(雁かりかね57) ②「ものの下に下りる」の窯味としての用例はないのである。そ して、「あがる」もr天草本平家物語」と 狂言と もに「へ」 と 「に」が用いられている。 四、助詞「に」だけが用いられている動R 「因く」「乗る」「 迷う」「臥す」「負う」これらの動洞はい ずれも「に」の みをとって おり、きわめて具体的な到箸点を有す ろ移動を表すものであろ。.
•ま ゑにもたいてきにおいて(巻四・27•ウ).
•御むづかしながらししやにあわしられて(巻七•一・ウ)•
•いまこそふねにのりまるするほど に(巻八.29.ウ).
•しやうくわんはふなけにてしゃうたいなくしたにふしまるし た、(巻一・15・ウ).
•うまうしにおうせて(巻四・24・ウ) これら の動洞はr天裕本平家物語」と狂苔でも同じ用 法で用いら れているが、狂甘にお いて「乗る」の場合に「へ」と一緒に使わ れた例が一っ見える.
•とをいへのっておじゃらは(人馬224)捷解新語
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•9 この用例は「とおい所へ馬に乗って行く」の意で「馬に」が省略 された文であろので例外ではないと思う。 そして、 「采ろ」の尊 敬語としての「召す」の場合も「乗ろ」と同じようにもっばら「に」 だけが用いられていろ。 五、 鈍粋に方向を表す 「へ」の場合 注 9 石垣謙二氏のr助詞の歴史的研究』によると助詞「へ」は鎌含 言 集 捷 解 新 語 因l「へ」
I
nc
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天互本平家物語 C.I.oコI Iに」
時代に至って接沼点より方向性を独<示すようになり、 室町時代 にはその似向性が鋲密になったということである。この傾向はr捷 解新語」 r天昭本平家物話』及び狂言にも受け継がれており、 移 動性曲作に対応しない「へ」の用法が認められる。 これらは 「l に向って」「ーに向けて」というような純粋な方向性の意味を突 現してい る 。 ①r捷解新話』の用例 •みらくだりのくにくにゑせったいのけしをさしられうためら やほどに(巻五•4・ウ) •たこくゑみかけわろければ(巻五27) ®r天草本平家物語』の用例 •四方へ宜旨をなし下され(巻三142) •西国の方へ御幸をなし奉って(巻四叩) ®狂言の用例 •中々はうじゃう川へおともいたひて(八幡の前函) ) ー •毎年此c
ろ諸国へ旦那まはりをいたす(ねぎ山ぶし41 六、 純粋な場所を表す「に」の場合 注 10 九山 和 雄 · 岩椅摂子氏のr現代語 法 助動飼助詞 」 によると 、 助 詞「IC」の機能として場所(事物の存在すろ場所、 またはB物を 存在させる場所、そして、動作作用の行なわれる抽象的な場所) を示すと記していろ。すなわら、 こ れは純粋な場所を表す 「に」 の機能であろ。 たとえば、 純粋な場所を表す 「に 」 をとる動詞に-38-は「すむ」「寝る」及び存 在動罰であろ「いろ」「ある」「御ざ る」「おぢやる」など がある。 r捷解新語」r天草本平家物語」 及ぴ狂言でもこのような用法が認められており、 単なる場所を示 してい る。 . ① r捷解新語」の用 例 ・ • • このおくににかいのせ うゑんを持ちまろ したほどに(巻六6) •かほどにいわにく ぎをうつやうにめされず(巻四17) ②r天草本平家物話」の用例 •それによって平家は向うの山に陣をとって (巻三144 ) •御子右衛門督側にねさせられたに(巻四313) ③狂言の用例 ・是はあたと山にすむこのは天狗にて候(むこ入天狗山伏之閻 129 ) ・ひかりかヽやきいきやうよもにくんずるはいかに(ゑひす大 黒27) 七、 助窮「へ+の」の運体的用法の場合 現代語では助詞「へ 」 に格助詞「の」が接続して迎体的機能を 果たし、 この用法はすでにr天草本平家物語 」と狂言にもいくつ か見出されるが、 r捷解新語』ではこのような表現法 はとられて いない。 ①『天草本平家物語」の用例 ・女房の許への文(巻―-134) ⑨狂宮の用例 .. •おうちが方への見まひではおりやろ まひ(こしいのり407 .. •おとうさまへのことつ てが御ざる(集狂言之類98) 八、 動尼が省略された場合
注"
松村明氏のr日本文法大辞典」では、助詞「へ」 の場合には ょうはどちらへ」「海は近<てきれいな房総へ」のように動詞が 略された形はもっばら 「へ」が用いられる所に「へ」のもつ本来 の意味が示されようと記している。 これは動詞が省略されて方向を表すために「へ」が用いられたと 思う。 このような用法もr捷解新語』には見えないがr天草本平 家物栢』と狂言ではいくつかある。 ①『天草本平家物語』の用例 / . これは西方浄土へと申して(巻四307) •大臣殿いかに副終これへと仰せらるれば(巻四318) ®狂言の用例 ・何やら はなのさきへ(鼻取ずまふ191) •子にき る物きせてさきへ( まヽこ423) 九、 まとめ 当時の日本語の教科困であったr捷解新語」での助詞「へ」と 「に」の用法は甚本的にはそ れぞれ方向と場所をあらわしている 所が多いが助詞「へ」と「に 」は―つの距で二つの意味を持って .. •西国への首途をすると(巻四205), . 注3 注1 表現社) られていろ。 いろ動洞「御ざる」「おぢやろ」の意味を区別するためにも用い つまり、 移動性には「へ」 を、 存在性には「に」を とっている。 そして、 現代話では一般的に「に」だけをとろ動詞 「辿ろ」「任せろ」などはそれなりに区別がはっきりして用いら れて「へ」も「に」もとってい ろ。 このような用法はr捷解新語」 だけではなくて、 r天菜本平家物話」及び狂百でも同じ用法とし て用いられているので、 当時の日本語の特性とも言えよう。特に 『捷解新話」は当時の朝鮮の役 人と日本の役人との 会話文 であろ 9ので相手を敬って使われている所が多い が、 助蹄「へ」と「に」 も「任せろ」と一緒に用いた場合に、 助詞「IC」で相手を直接指 し示めさずに「へ」をとって相手を敬う気持として用いられたも のと思う。 そして、 r捷解新語』には助詞「へ+の」の連体的用 法と勁詞が省略された用法はないがr天草本平家物語』及び狂言 にはあろ。 三本問における「へ」と「に」の用法の区別は、 方向 と場所の区別に原則的に対応して いろように思われる。 土井忠生訳 (l月8三省堂) 0ドリゲスr日本大文典」 京都大学文学部国語学国文学研究室編r三本封照捷解新語』 .. 本文組(昭和47•京都大学国文学会) 記井高孝翻字r天江本平家物語』(昭和2 •岩波宙店) 池田跛司・北原保雄r大蔵虎明本狂言集の研究』(昭和47 注2 注1 本稿は昭和61年度国語学会秋季大会(鹿児島大学)での発表を もとにまとめたものである。 間む院) 注 11 注10 注9 注8 注7 . . i . . , • ' ー . . . , , . , .