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異動動作の表現における「へ」と「に」の使い分けの法則――朝鮮資料『捷解新語』を中心に――

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(1)

古く、 日本語の助詞「へ」は動詞のあらわす動作の進行する方 向を表し、 「に」は動詞 の表す動作の到達点をあらわすという対 注ー 立が見られるが、 i 六0八年成立 のロドリゲスのr日本大文典」 には 助詞 II ILIIは書きことばに於いて は往々IIへIIの代りに用 いられる」と言い「京へ、 筑紫に、 坂東さ」の諺をあげながら而i 詞“沼<IIはIIに II 又はIIへIIをとろ」と記している。すなわち、 .助詞「へ」と に」の使い分けには単なろ位相上 の問題として片 付られないような問図がひそんでいろようである。 注2 て、 17世紀初に成立したと口われていろ

i

解新話」では「へ」 及び「に」のいずれか一方をとる移動動詞もあれば、 両者が用い られる動詞もかなり存在してい る。 ここでr捷解新語』と前後す 注3 注4 るキリシタン資料のr天京本平家物語」及び国内賓料の大蔵虎明 本狂言を参照しながら、 一兄 へ」と「に」の使い分けに混乱が 一、 はじめに 朝鮮資料r捷解新語」を中心に

「へ」

「に」

移動動作の表現における

あると思われるr捷解新語』にも、 ある種の使い分け の法則が存 在していたことを明らかにしたいと思う。 方法として、 まず、 移動動詞を「へ」と「に」の選択に関して 次の三グループに分け、 各グループととに使い分け の法則を考察 していく。 L へ」と「に」ともに用いられる動詞 a.「行く」「来ろ」とその尊敬話・謙譲語。 b.「遺ろ」c.「任せる」d.「下りろ」 2 へ」 だけが用いられる動詞 a.「沼く」 b.「上がる」「上る」 下ろ」「戻る」 通る」「廻ろ」 3 に」だけが用いられる動詞。 「置く」「乗る」「途う」「臥す」 「負う」 二、 「へ」と ともに用いられる動飼 0「行く」「来る」とその葛敬語・謙譲語の場合

. .

の使い分けの法則

(2)

-30-「行く」「御ざろ」「参る」「おちゃる」の動詞の中で

R?

「来る」の埠敬語と しての「御ざる」'「おぢやる 」などの動詞は 助詞「へ」だけが用いられている。そ れぞれの用例は次のようで ある •ひにひにここもとゑ御座て ものかたりもめされたれば(巻 .10) •あ いのしま のしゅく しょゑたいしゅみまいにおちゃて(巻八 •12) 一方、 「行く」及びその謙譲語「 参る 」とそれ から「来る」の謙 譲語「参る」は「へ」と 「に」ともに用いられていろ。

•そなたのね んの いたとこ ろはかみかたゑいて(巻七•7•ウ)

•なにがしこちこいそらがたいくわんにいて(巻一・・1)

•しん しゑ御 たいめんのや うす をじきにまいてさうを申いれと あるときこそ御ざる(巻七・18)

•みがじきに とねぎに まいて(巻一・25•ウ) 狂宮及び『天草本平家物語 での用法はr捷解新語」の用法と 同じである。 すなわら、 「御ざる」の場合は狂言とr天草本平家 物語」ともに「行く」「来る」の意味で用いられたものはすべて 「へ」をとっており 、'r捷解新語』の用法と一致している。 ①狂言 の用例

•都へ御ざらは同通いた したいが (餅洒43) •唯今はなにと思ふて是へ御ざったぞ(どん太郎259)

•よそへお じやったらは (すゑ ひろが り70)

•唯今はどれへ御ざったぞ(二人袴394) ®天草本平家物語の用例

•その夜の中に大覺寺へとざって見らろれば(巻四350 )

•なぜに これならではどこへとざらうか(巻二98 ) しかし、 存在動詞として使われてい る場合にはすぺて「に」をと っている ①狂言の用例

•こなたにお馬がとざらぬほどに(財のつら88)

•今まで是にとざる程に(あさう154) ®天草本平家物語の用例 75 )

•三四の官ばかり都にとざったを(巻三ー

・大膳の 大夫と いふ者が宿 所に 御自由に とざって(巻四203) 「おぢ やる」の場合はr天雖本平家物語」では「行く」「来る」 の意味で使われた 用例は見えない。すぺて、 存在動詞として使わ れていろため 「に 」をと っている。

•成親卯の北の方は都の北山辺に忍うておちやった(巻l55)

・少将の母上は慧山に おちやった(巻一73) 一方、 狂言では「行く」「来る」の意味で用いられたものはすぺ て「へ」をとっており、rti解新語』の用法と一致している。「に」 をとる例も少しあるが すぺて存在動詞として用いられたものであ

(3)

ここで考えられることは「とざる」「おぢやろ」という動詞は一 つの語で二つの意味を持っている。つまり、存在と移動をあらわ していろ、そういうあい まいさを助詞によって区別するために移 ・動性には「へ 」 を、存在性には「に」が用いられたということが 言えろだろう。 ・③「逍ろ」の場合 '‘ 「追ろ」という動詞には物品をさずけると いう用法と人を派週 するという用法があるが、現代語においては前者の場合に「に」 が用いられろのが一般的であ ろのに対して、後者の場合には比較 的自由に「へ」も「に」も使うこと ができる。ところがr捷解新 捷 解 助詞

,.

パロ 動詞 と さ・ おぢやろ 動詞 ビ ざ おぢやる 詞 狂_助 動詞 と ざ

「へ」

ろ 44 おぢやろ 15 •こなた~

ii

(うろさし223) 存在勁詞として使われている「に」の用例、

・内におじゃらふかぞんぜぬ(八幡の前381)

•そなたは足におじゃれ(しうろん似) 語』では、前者の用法に「に」のみが現れることは現代語と同様 であるが、後者の用法 には「へ」のみが用いられ、僭沼点を表す 「に」が使われる明らかな例は見えない。 . . ①人を派逍すろ場合の用例 •とおいところゑ御ね んとろにくんか んをやらしられとはしら ろほどに(巻一・ 22 .ウ) •しゃう<ゎんしゑみもひとをやりまる せうほどに(巻一・ 23)

•たつのときにはんすしゅをしまのかみと ころゑやて(巻八・ ではなく「代り つか さどろ」 29 ) 醤品をさずける場合の用例 ー 一 •くろうしたけにんにやたものを(巻八. 8 ) 2 3 •さきいくふねにやりまるせうかとおもいまろする(巻三・ 25)

_

なお、次の例は一見例外のようであるが韓国語対訳では「代官に」 対して「代宮の 」 の意味であるからここでは 「に 」 が「ーとし て」の意で用いられていることがわかる。すなわち悧沼点の 「に 」 ではない。又、この場合の「代官」は具体的な官暉名をさすもの 注6 (『日葡辞苔」)役人を意味するの •みもたいくゎんにひとをやりまるせうか (巻一一・15・ウ) そして、「逍ろ」の類似語 「辿す」も人を派逍する意で用いられ 「逍る」と同様に「へ 」が用いられている。 •しんす たたしられてみがらのところゑまかないぶぎゃうしゅ である。

(4)

狂君之類23) ている。 . • ••••••••••• •其手へやる物ではおりなひ(日近箭骨94) よりわざとひとを週いて申は(巻八・1) r天草本平家物語』での「逍る」という動詞は「へ」のみが用い られているがすべて「人をやる」という用法である。

・歴々の侍ともをそへて顆朝の許へやられたれば(巻三・143)

•その子述のうらか ら一人豊後へ追りまらして(巻三・179) •国々へ討手をやらるれど も(巻一―-•156) 「に」が用いられている用例はないのである。一方、狂言での「逍 る」という動詞の用法は基本的にはr捷解新語』と同じだが((つ まり 「IC」がものをやる場合で、 「へ」は人 をやる場合))、 もの をやろ堪合でも「へ」が用いられる例が数例見える。そ れらの「へ 」 に上接することば は「かた」「さき」などの 方向性を持った名詞 ゃ「やま」「うみ」「そら」「こち」などの相対性を持つ名詞、 代名詞である。 ...... •大臣ばしらのかたへやって(こひ聟371)

••••••

.

•ささへ(竹筒) をもたせてさきへやれ(さるざとう436)

•••

.

•••

•さいぜん(最前)の山な舟を海へやって海な鹿を山へやった ら(うじまつ祖) ....... ....... •そらへやればこらのうらみ、 こらへやればそらの うらみ(集 また、 述語が否定型をとっている例においては「へ」も用いられ

.

••

•こ こなどのへうった 程にそなたへやる事はならぬ (雁盗人110) 次の用例は例外である。

△よそへやる文をひきさひて(文荷113) 団「任せる」の場合。 「まかせる」という動詞は現代語において は「に」をとろのが自 然な表現であるが、 r捷解新語』においては「へ」も「に」もと り、 「へ 」をとる場合はまかせる 対象が二人称(聞き手)の場合 に限られている。 ①対象が二人称(聞き手)の場合 .......... •ともかくもそなたゑまかせまるするほどに(巻六・2)

•••••••

••.

•ろじのことをばこなたゑまかせまるするほどに(巻六•23)

••••••

•••

.

-•そなたゑまかせまるする(巻八・12) これはまかせろ対象を特に「に」で指し示めすことなく「へ」 によっ て方向として捉え、 委託された事柄の遂行の資任を軽該さ せ、 問き手への配慮を表明するものであるので「へ」が用いられ たと思う。 それに対して対象が一人称の場合には言うまでもなく 敬意を表す必要がない、 又、 三人称の場合もその褐にいないので あるから配慮を表明する対象とはなりえな いので「に」で指し示 したと思うのである。 ®対象が一一人称(聞き手)以外の場合 ••••••. •とかく こらにまか せてしやり(巻七•7•ウ ) ............. •とかくしゅっせんのひはていしゅにまかせて(巻八•22・ウ)

(5)

®「に」の用例

••••••.

•こちにまかせしられ(巻九・10・ウ) r天草本平家物語」では(人+「へ」「に」+まかせる)の用例 はないが狂言ではr捷解新語』の 用法と同じように一人称の場合 には「に」、 二人称の場合には「へ」が用いられている。 三人称 の用例はない。 ① 対象が二人称(聞き手)の場合 。

••••••

•••

.

•そなたへまかせまらする程に(鼻取ずまふ185) ®対象が二人称(聞き手)以外の場合。

••••••

.

) 2 •それははらはにまかせておけ(はなと21

••••••

●わらはにまかせておけ(はなと223) 〇「下りる」の場合。 「下りる」という動詞の場合はr捷解新語」で「へ」と「に」と もに用いられているが、下りる地点が特定の地点を示さないよう な場合は方向を表す「へ」 を用いざるを得ないが、 船のように限 定された比較的せまい地点へ 下り る場合には 「に」が用いられて いる 。 ①「へ」の用例

•••••

•..

•おかゑおりてふるまいのときでもあり(巻六•23・ウ)

•••••

•.

•とまりととにふねにおりさしらる御むつかしさはすこしなり (巻六•21) Lの場合の「おか」は「陸」の意味であり、 海に対立するもの であるから 場所は相対的にしか捉えられない。つま り、 方向とし か表現できない。 一方「船に」は「船上に」という意であろから きわめて具体的な地点をさしていろ。 r天草本平家物語」での用 法も甚本的にはr捷解新語」の用法と同じであるが「に」の用例 だけある。 狂言の用例はない。

...

•みな庭にざっと下りた(巻二•99) この用例も「 庭に」は「庭の中に」 という場所をさす意である からきわめて具体的な地点をさしていろ。 三、 助飼「へ」だけが用いられている動詞 0「著く」の場合 「著く」という動詞は現代話では「へ」と「に」ともに用いられ ているが、 すで に沼いている結果を表 す時には「に」をとり、 ま だ、 はっきり沿いてない状想や出発して着くまでの途中経過にあ る時には「へ」を とる傾向が強いのが一般的である。 r捷解新語」 でも「著く」という動詞はまだ箸いていないという事態に対応す る形で「へ」のみが現れ、 「に」をとる 例は認められない。 この 「IC」に代るもの として「ま で」がすでに着いたという頭態に対 応する形で 用いられている。 ①「へ」の用例

•おくれたふねがいづかたゑ つくと も(巻一・12・ウ)

•あすはみしまゑつかしられうほどに(巻七・10)

•もんあんを申、 このにさんにちのうちにはゑとゑつか しられ

(6)

-34-しかし ほどに(巻七・14) ®「まで」の用例 •おしらるやうにじゃうげたにんちうぶじにここまでついてめ てたさたがいにとうせんによろこびのまゑで御ざる(巻八・ 17 ) .. •またかい じゃうゑんろにひきまわいてここま でぶじについた ゑは(巻八・19) 「通る」「廻る」の場 「珀く」という動詞はロ ドリゲスr日本大文典 では 記」も「へ」もとると記して「都に着いた」「舟が茨に着いた」 「都へ若いた」9大物の浦へ京よりの御使が沼いた」という用例 に、 r天草本平家物語』及び狂宮 をあげながら指摘しているよう にも 「IL」の用例は多い 俎、 「へ」も少数用いられており、その 使い分けには厳密な法則性が見出せない。 ③「あがる」「上る」「下る」「戻る」 合。 これらの動詞は「とおる」と「まわる」を除いていずれも相対 的な移動を表す動詞である。そのため「おか 」「あ と」「ここも と」など相対的な位設を示す「名詞」「代名詞」+「 へ」という 形をとっている。 又、 「とおる」と「まわる」はそれ自体が経由 性を持つものであろから「へ」が 用いられるのである。 しかし、 「上る」の場合は行くの意 味として用いられている。 • l •おかゑあがらしられていらにち にも御くつろぎなされて(巻 五・17•ウ)

•申ても申ても あとゑもどるやうな御こころもち(巻四・

•おとついここもと ゑくだて(巻一・1)

•しんすかみかたゑ御とうろのとき(巻五・23) •わいのうらゑ

ii

はつにてとざる・(巻十・19・ウ) •あすのあさは とねぎゑのぼて(巻l.20・ウ r天草本平家物梧』と狂言では「とおる」「 まわる」「もどる」 の用法はr捷解新語」と同じである。それぞれの用例は次の通り である。 「通る」の場合 ①狂言の用例

●是へとをらせられ ひ( 老武者137)

•こなたへとおらせられい(毀聾336) ®r天草本平家物語』の用例

.

•丹波の鹿は播磨の南野へ通りまらすろが(巻四232)

·蘇武これは皆わが故繹へ通ふものちゃとなつかし(巻一•62) 「廻る」の場合 ①狂言の用例

•左右へまはり(財っち87)

•今は上へまはれといふ は(入間川163) ®r天草本平家物語」の用例

・此の勢が黒板へまはらうずる串は(巻一―-146)

(7)

•わが人数が後ろへまはったと知って(巻三148) しかし、 狂言の中では一っの例外が見える。

△さゆにまはれと云(二人袴394) 「戻る」の坦合 ①狂コの用例

•宿へもどったらは( まんぢう302 )

•国本へもどる事がなりまらすまひ(栗田口213) r天草本平家物語』の用例はない。 しかし、 「のぼる」「くだる 」の動詞は『天革本平家物語」と狂 笞では「へ」も「に」も用いられているが、 「のぼる」という動 ・ 注 7 詞はr国語大辞典」では低い所から高い所へ移動する。 また、 移 動してある物の上に乗る、 そして、 地方から都へ向かって行くの 意味がある。 「くだろ」も姦い所から低い所へ 移 り勁く、 または 注8 都から地方へ行くの意味がある。 そして、 橋本巡吉博士のr肋詞 ・助動詞の研究」によると「平安時代以後に於ても奈良朝以前の 用法と同じように「に」の用法は大抵かはりがない 。 た だ、平安 朝にはT宮な云ひ万として主語に「に」をつけるものが出来た。 しかし、 室町時代になると「に」のかはりに「へ」を用ゐるもの がようやく出来て来た」と記している。 すなわら、 室町時代には 「fjく」などの動詞にはすで に「へ」も「に」も用いられていた のである。 r天な本平家物語」と狂言で の「 上る」 「下る」 の動詞は「上京」 または「下向」の意味として用いられた場合には「へ」も「に」 もとっているが、 「上る」が 「ものの上にあがる」又は「ものの 上に乗る」のようにきわめて具体的な所へあがるの意味として用 いられた場合に は「に」だけとっている。 一万、 「下ろ」も「も のの下に下りる」の意味として 用いられた場合には「に」だけと っているが、 狂言では「下る」が「ものの下に下りる」の意味と して用いられた用例はない。 r天な本平家物語」の「上る」の場合 ①「上京」の意味としての用例

•これ を取って笈のかたにさいて都へ上り(巷一い)

•これから山侍ひに都に のぼって(巻四277) ®「ものの上にあがる」の意味としての用例

• 東の築垣に上 って(巻四214)

・磁に 上り(巻l76)

(8)

-36-狂言の「上る」の場合 「上京」 の意味としての用例

•都へのばる者で御とるか(餅酒43)

9此ほど某をたつね てみやこにの ぽる(はなC217) ®「ものの上にあがる」の意味としての用例

●●らいじゃうにて 出、だいにのぼる(た うずまふ134)

,•娑股にて手馴し木すえにのほれば幼の枝にて(仰413) .r天草本平家物語』の「下る」の場合 ①「下向」 意味としての用例

•お使八島へ下って(巻四261)

•この程に関東に下らうと問く(巻四磁) ⑨「ものの下に下りる 」の意味としての用例

•谷に下れども(巻一76)

•ある時湯殿にお下りあれば(巻四函) 狂言の「下る」の場合 ①「下向」の意味としての用例

・急で本国へくだら ばやと存る (柿山伏416)

•東に下り給ふ(雁かりかね57) ②「ものの下に下りる」の窯味としての用例はないのである。そ して、「あがる」もr天草本平家物語」と 狂言と もに「へ」 「に」が用いられている。 四、助詞「に」だけが用いられている動R 「因く」「乗る」「 迷う」「臥す」「負う」これらの動洞はい ずれも「に」の みをとって おり、きわめて具体的な到箸点を有す ろ移動を表すものであろ。

•ま ゑにもたいてきにおいて(巻四・27•ウ)

•御むづかしながらししやにあわしられて(巻七•一・ウ)

•いまこそふねにのりまるするほど に(巻八.29.ウ)

•しやうくわんはふなけにてしゃうたいなくしたにふしまるし た、(巻一・15・ウ)

•うまうしにおうせて(巻四・24・ウ) これら の動洞はr天裕本平家物語」と狂苔でも同じ用 法で用いら れているが、狂甘にお いて「乗る」の場合に「へ」と一緒に使わ れた例が一っ見える

•とをいへのっておじゃらは(人馬224)

捷解新語

g 匹IP'り の ぼ

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あ が る一る一る E1で 一く一あ ぼ一だ一が る一ろ_る

臼[

(9)

·

•9 この用例は「とおい所へ馬に乗って行く」の意で「馬に」が省略 された文であろので例外ではないと思う。 そして、 「采ろ」の尊 敬語としての「召す」の場合も「乗ろ」と同じようにもっばら「に」 だけが用いられていろ。 五、 鈍粋に方向を表す 「へ」の場合9 石垣謙二氏のr助詞の歴史的研究』によると助詞「へ」は鎌含 言 集 捷 解 新 語 因l

「へ」

I

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天互本平家物語 C.I.oコI I

に」

時代に至って接沼点より方向性を独<示すようになり、 室町時代 にはその似向性が鋲密になったということである。この傾向はr捷 解新語」 r天昭本平家物話』及び狂言にも受け継がれており、 動性曲作に対応しない「へ」の用法が認められる。 これらは 「l に向って」「ーに向けて」というような純粋な方向性の意味を突 現してい ①r捷解新話』の用例 •みらくだりのくにくにゑせったいのけしをさしられうためら やほどに(巻五•4・ウ) •たこくゑみかけわろければ(巻五27) ®r天草本平家物語』の用例 •四方へ宜旨をなし下され(巻三142) •西国の方へ御幸をなし奉って(巻四叩) ®狂言の用例 •中々はうじゃう川へおともいたひて(八幡の前函) ) ー •毎年此

c

ろ諸国へ旦那まはりをいたす(ねぎ山ぶし41 六、 純粋な場所を表す「に」の場合 注 10 九山 · 岩椅摂子氏のr現代語 助動飼助詞 によると 詞「IC」の機能として場所(事物の存在すろ場所、 またはB物を 存在させる場所、そして、動作作用の行なわれる抽象的な場所) を示すと記していろ。すなわら、 れは純粋な場所を表す 「に」 の機能であろ。 たとえば、 純粋な場所を表す 「に をとる動詞に

(10)

-38-は「すむ」「寝る」及び存 在動罰であろ「いろ」「ある」「御ざ る」「おぢやる」など がある。 r捷解新語」r天草本平家物語」 及ぴ狂言でもこのような用法が認められており、 単なる場所を示 してい る。 . ① r捷解新語」の用 例 ・ • • このおくににかいのせ うゑんを持ちまろ したほどに(巻六6) •かほどにいわにく ぎをうつやうにめされず(巻四17) ②r天草本平家物話」の用例 •それによって平家は向うの山に陣をとって (巻三144 ) •御子右衛門督側にねさせられたに(巻四313) ③狂言の用例 ・是はあたと山にすむこのは天狗にて候(むこ入天狗山伏之閻 129 ) ・ひかりかヽやきいきやうよもにくんずるはいかに(ゑひす大 黒27) 七、 助窮「へ+の」の運体的用法の場合 現代語では助詞「へ 」 に格助詞「の」が接続して迎体的機能を 果たし、 この用法はすでにr天草本平家物語 」と狂言にもいくつ か見出されるが、 r捷解新語』ではこのような表現法 はとられて いない。 ①『天草本平家物語」の用例 ・女房の許への文(巻―-134) ⑨狂宮の用例 .. •おうちが方への見まひではおりやろ まひ(こしいのり407 .. •おとうさまへのことつ てが御ざる(集狂言之類98) 八、 動尼が省略された場合

注"

松村明氏のr日本文法大辞典」では、助詞「へ」 の場合には ょうはどちらへ」「海は近<てきれいな房総へ」のように動詞が 略された形はもっばら 「へ」が用いられる所に「へ」のもつ本来 の意味が示されようと記している。 これは動詞が省略されて方向を表すために「へ」が用いられたと 思う。 このような用法もr捷解新語』には見えないがr天草本平 家物栢』と狂言ではいくつかある。 ①『天草本平家物語』の用例 / . これは西方浄土へと申して(巻四307) •大臣殿いかに副終これへと仰せらるれば(巻四318) ®狂言の用例 ・何やら はなのさきへ(鼻取ずまふ191) •子にき る物きせてさきへ( まヽこ423) 九、 まとめ 当時の日本語の教科困であったr捷解新語」での助詞「へ」と 「に」の用法は甚本的にはそ れぞれ方向と場所をあらわしている 所が多いが助詞「へ」と「に 」は―つの距で二つの意味を持って .. •西国への首途をすると(巻四205)

(11)

, . 注3 注1 表現社) られていろ。 いろ動洞「御ざる」「おぢやろ」の意味を区別するためにも用い つまり、 移動性には「へ」 を、 存在性には「に」を とっている。 そして、 現代話では一般的に「に」だけをとろ動詞 「辿ろ」「任せろ」などはそれなりに区別がはっきりして用いら れて「へ」も「に」もとってい ろ。 このような用法はr捷解新語」 だけではなくて、 r天菜本平家物話」及び狂百でも同じ用法とし て用いられているので、 当時の日本語の特性とも言えよう。特に 『捷解新話」は当時の朝鮮の役 人と日本の役人との 会話文 であろ 9ので相手を敬って使われている所が多い が、 助蹄「へ」と「に」 も「任せろ」と一緒に用いた場合に、 助詞「IC」で相手を直接指 し示めさずに「へ」をとって相手を敬う気持として用いられたも のと思う。 そして、 r捷解新語』には助詞「へ+の」の連体的用 法と勁詞が省略された用法はないがr天草本平家物語』及び狂言 にはあろ。 三本問における「へ」と「に」の用法の区別は、 方向 と場所の区別に原則的に対応して いろように思われる。 土井忠生訳 (l月8三省堂) 0ドリゲスr日本大文典」 京都大学文学部国語学国文学研究室編r三本封照捷解新語』 .. 本文組(昭和47•京都大学国文学会) 記井高孝翻字r天江本平家物語』(昭和2 •岩波宙店) 池田跛司・北原保雄r大蔵虎明本狂言集の研究』(昭和47 注2 注1 本稿は昭和61年度国語学会秋季大会(鹿児島大学)での発表を もとにまとめたものである。 間む院) 注 11 注10 注9 注8 注7 . . i . . , • ' ー . . . , , . , .

•. ,.

.1 . (の) 「代官に」の対訳は「代官

a.wl

」となっていろ。 土井忠生・森田武•長南実絹訳r邦訳日而辞笞』 岩波也店) r8本国語大辞典 』 注6 注5 (一九八六年+月三十一日提出) (本学大学院文学研究科) (昭和46•明治困院) (昭和51・小学館) 橋本巡吉r助詞・助曲詞の研究』(lt§岩波也店) 石垣謙二r助詞の歴史的研究 」(昭和30•岩波掛店) 丸山和雄・岩椅摂子r現代話法助動詞助詞」(昭和44.笠 松村明r日本文法大辞典』 参考文献 京都大学文学部国語学国文学研究室顧r三本封照捷解新語』 繹文・索引・解厖編(昭和47•京都大学国文学会) 『大蔵虎明本狂言集総索引』 (昭和59・武祓野宙院) (I980

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