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道路リンクの接続関係を考慮した畳み込みニューラルネットワークによる自動車交通量の短期予測の検討

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Academic year: 2021

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(1)

道路リンクの接続関係を考慮した畳み込みニューラ

ルネットワークによる自動車交通量の短期予測の検

著者

吉田 幸司, 井上 亮

雑誌名

土木学会論文集D3(土木計画学)

75

5

ページ

I_1059-I_1067

発行年

2019-12-26

URL

http://hdl.handle.net/10097/00130591

doi: 10.2208/jscejipm.75.I_1059

(2)

道路リンクの接続関係を考慮した

畳み込みニューラルネットワークによる

自動車交通量の短期予測の検討

吉田 幸司

1

・井上 亮

2 1正会員 株式会社富士通交通・道路データサービス (〒105-7123 東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンター) E-mail:[email protected] 2正会員 東北大学准教授 大学院情報科学研究科(〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉 6-6-06) E-mail: [email protected] 交通状態に関する詳細な観測データを活用した,深層学習による交通状態の短期予測が注目を集めてい る.本研究は,道路リンクが複雑な接続関係を持つ都市部の道路ネットワークを対象に,その接続関係を 考慮可能な構造を有する畳み込みネットワークを活用した交通量予測モデルを提案する.提案モデルの畳 み込み層は,道路リンクの接続関係を考慮した畳み込み操作を通して,道路ネットワークの局所的な特徴 を抽出する.その特徴は,プーリング層を経て道路リンクごとに集約され,更に全結合層を通して道路ネ ットワークの全体的特徴を抽出する.東京都墨田区の道路交通量データに対して提案手法を適用し,全結 合層のみで構成した深層学習による予測と比較した結果,提案モデルはパラメータ数が少ないが同等の予 測精度を実現できることを確認した.

Key Words : traffic volume prediction, deep learning, convolutional neural networks, road network 1. はじめに 交通渋滞は,旅行時間の増加や沿道環境の悪化などを 引き起こす深刻な社会問題の一つで,特に交通需要が大 きい都市部ではその影響が顕著である.交通渋滞の実態 把握や利用者への情報提供,また道路交通管理者による 管制への利用を目的として,車両感知器やプローブデー タなどの様々な技術を用いた交通状態観測が継続的に行 われ,観測データの蓄積が進んでいる.これら大量の蓄 積データから交通状態遷移に関する特徴を抽出し,即時 的に収集されるデータを使って短期間の道路交通量予測 を行う手法が注目を集めている. データに基づく交通状態の予測手法は,線形・非線形 モデルの二つに分類できる. 線形モデルの代表的手法として,時系列分析手法であ る自己回帰和分移動平均(Autoregressive Integrated Moving Average : ARIMA)モデルが挙げられる1), 2).ARIMAモデル

は,交通状態の差分系列が定常性を有することを利用し, ピーク時とオフピーク時の違いなどの,交通状態の非定 常性の影響を除いた分析が可能となる. 一方,非線形モデルでは,データ内の潜在的な特徴を 学習する機械学習手法が交通状態予測に応用され,高い 精度を有することが確認されている.中でも,ニューラ ルネットワークを多層化したモデルを用いる深層学習は, 様々な予測問題において高い精度を示し,産学で大きな 注目を集めている.Lv et al. 3) は自己符号化器を用いて多 層のニューラルネットワークを学習する交通量予測モデ ルを提案し,他の非線形モデルよりも高い予測精度を達 成できることを示した.深層学習を交通観測データに適 用すると,交通状態の「非定常性」を含む特徴を自動的 に学習し,予測に活用することが期待できる. ところで,ある道路リンクの交通状態に直接影響を与 えるのは,その接続リンクの交通流の流入・流出に限ら れ,直接繋がっていない道路リンクの交通状態から受け る影響は小さい.既存研究3) 5)は,道路ネットワーク内 全てのリンクの交通状態を入力し,ニューラルネットワ ークの各ニューロンが前層の全てのニューロンと結合す る全結合層6)を使ったモデルを用いた交通状態予測が提 案されているが,このモデルは前述の,道路ネットワー ク上の交通状態の「局所的な影響関係」を明示的に考慮

(3)

していない.道路リンクの接続関係を明示的に考慮した ニューラルネットモデルを構築すると,道路ネットワー ク上の交通状態の局所的な影響関係を利用した予測を実 行することが期待できる.

画像認識の分野で注目を集める畳み込みニューラルネ ットワーク (Convolutional Neural Network : CNN) 7) は,「畳

み込み」処理を通して,画像情報が有する局所的な空間 的特徴を明示的に抽出するモデルである.近年,グラフ 構 造 を 持 つ デ ー タ で 畳 み 込 み 演 算 を 行 うGraph Convolutional Network (GCN) が提案され,様々な分野の予 測問題に対して高い精度を示している8), 9).道路リンク の接続関係を表すグラフに基づく畳み込み演算を行う GCNを交通状態予測に応用すると,接続道路リンク間 の交通状態の影響を考慮した,高精度な予測が可能にな ると期待できる. 本研究は,道路リンクの接続関係を表すグラフを利用 したGCNモデルによる,都市内道路リンクの短期的交 通量予測手法を提案する.提案するニューラルネットワ ークモデルを,全結合層のみを用いたモデルやサポート ベクトル回帰モデルとの予測精度による比較を通して, その有用性を評価する. 2. グラフ構造のデータに対応したニューラルネ ットワークを用いた既存研究 (1) 道路ネットワーク構造を考慮したニューラルネット ワークによる交通量予測に関する既存研究

Li et al. 10)や Yu et al. 11)は,Laplacian-based GCN 12), 13)を使用

して道路ネットワーク構造を表現した手法を提案してい る.Laplacian-based GCNは,グラフ構造を持つデータに 対して,その構造を考慮した畳み込み演算を行うニュー ラルネットワークである.この畳み込み演算は,グラフ の次数行列と隣接行列によって定義されたグラフラプラ シアン行列を用いて,グラフフーリエ変換を行う.Li et al.や Yu et al.は,任意の道路リンク上の基準点間の距離を 用いて,隣接行列に重み付けを行っている. 高速道路のように道路リンクの接続関係を簡潔なグラ フで表現できる道路ネットワークでは,リンク間の距離 を用いて交通状態の影響を考慮できるであろう.しかし, 都市部の一般道のリンクは複雑に接続し,また,その接 続関係には複数の種類がある.例えば,十字路では繋が る道路リンクの接続関係には「直進」「右折」「左折」 の三種類がある.上流道路リンクの交通状態が下流道路 リンクの交通状態に与える影響は,接続関係によって異 なると考えられる.このように,都市部の一般道におけ る交通状態の影響は複雑で,距離だけに基づいて道路リ ンク間の交通変数間の関係を考慮するモデルでは不十分 で,道路リンク間の接続の種類まで考慮する必要がある. (2) リンクの接続関係の種類を考慮した畳み込み演算を 行うニューラルネットワーク

Schlichtkrull et al.14) は,Relational GCN (R-GCN) と呼ばれる

グラフの接続関係を考慮した畳み込み演算を行う新たな GCNを提案した.ここで,グラフ上のノードiをvi,ノー ドの集合をV,ノードvi と vjの接続関係の種類をrで表し, この2ノード間の関係を表すエッジを(vi, r, vj)と記す.な お,rの集合をRとする.以下では,ニューラルネットワ ークのニューロンがグラフの各ノードに対応している. ニューラルネットワークの第 l 層のニューロン i にお ける特徴量を  l i x ,第 l 層から第 l+1 層への接続関係の種 類 r に対応した重みを  l r w ,接続関係を考える際に基準 となるニューロンに対応した重みパラメータを  0l w ,バ イアスを ( )l i b ,接続関係 r で vi とつながるニューロンvj の 集合を r i N ,活性化関数を f ( ),正規化定数を1/ci, rとする. このとき,単層かつ1チャネルのモデルにおけるR-GCNの畳み込み演算は,式(1)で表現できる.  1         ( ) 0 , 1 r i l l l l l l i r j i i r R j N i r x f w x w x b c              

 

 (1) 交通状態の分析において,道路リンクの接続関係を考 慮することが重要であるため,接続関係の種類を明示的 に考慮する畳み込み演算は,交通量予測問題において有 用であると期待できる. 3. 提案手法 本研究は,分析対象の道路ネットワークの全ての道路 リンクを対象とした交通量予測手法を提案する.ある期 間に観測された対象道路ネットワーク上の全ての交通量 を入力情報とし,出力を次の観測期間の交通量とする. 以下では,道路リンクの接続関係を次のグラフGで表 す.道路リンクiをノードviで表し,道路リンクiとjの接 続関係の種類をrとしてエッジ(vi, r, vj)で表す.道路リンク の集合をV,道路リンク間の接続の集合をE,接続関係 の種類の集合をRとする. (1) ネットワーク構造 提案モデルを,畳み込み層,プーリング層,全結合層 の3種類の層で構成する(図-1).畳み込み層は,道路リ ンクの接続関係を考慮した畳み込み演算を行う.プーリ ング層は,畳み込み層の出力を集約する役割を持つ.全 結合層は,前後の全てのノードを結合する.提案モデル では,畳み込み層,プーリング層では各層のニューロン が分析対象道路ネットワークの各道路リンクに対応する.

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図-1 提案モデルのネットワーク構造 図-2 道路ネットワークの接続関係を明示的に考慮した畳み込 み演算 図-3 各道路リンクにおける畳み込み層の出力を集約するプー リング処理 (2) 畳み込み層 道路リンク間の接続関係の種類によって,道路リンク 間の交通状態の影響が異なることに注目して,その関係 を明示的に考慮した畳み込み演算を提案する.畳み込み 演算は,Schlichtkrull et al. 14)が提案したGCNを基本とする. 畳み込み演算に組み込む道路リンクの接続関係は, 「上流・下流」と「直進・右折・左折」の組み合わせの 6種類を考える.接続関係の種類による交通状態の影響 の違いは,畳み込み演算におけるエッジの重みによって 表現される.図-2はすべての種類の接続関係を持つ道路 リンクに対する畳み込み演算を表す. 第 l 層・チャネル k の道路リンク i の状態を  ,l i k x ,第 l 層のチャネル k から第 l + 1層のチャネル m への畳み込み 演算において接続関係の種類が r の重みパラメータを   , , l r k m w ,第 l 層のチャネル k から第 l + 1層のチャネル m へ の畳み込み演算における接続関係の基準となる道路リン クに対する重みパラメータを   0, , l k m w ,バイアス項を ( ) , l i m b , チャネルの集合をK,接続関係の種類の集合を r i N ,活 性化関数をf ( ) と表すと,畳み込み演算は式(2)で表せる.           , , , 1 , ( ) 0, , , , r i l l r k m j k l r R j N i m k K l l l k m i k k m w x x f w x b                      

 

(2) (3) プーリング層 畳み込み層のフィルタのパラメータは,畳み込み演算 において局所的な特徴を強調・抽出する役割を持つ.例 えば,上流の重みが大きく下流の重みが小さいフィルタ は,上流の交通状態を強調した特徴量を出力する. ここで,例えば,上流に接続道路リンクがない道路リ ンクにとっては,上流を強調するフィルタが意味を持た ないように,道路リンクごとにフィルタで変換された特 徴量の重要度は異なる. 画像認識分野では,各フィルタで抽出された特徴をま とめるために,チャネルごとに任意の範囲を対象として プーリング処理を行い,特徴の集約を図っている.しか し,道路交通の分析では,各チャネルに存在する各道路 リンクの情報を,1つの道路リンクに関する情報として 集約することが必要になると考えられる.そこで,畳み 込み層の出力に対し,道路リンクごとにチャネル方向に プーリング処理を行い特徴量の抽出を図る.図-3はK個 のチャネルを持つ入力に対して,プーリング処理を行う 様子を表す. 第 l 層から第 l + 1層へのプ-リング演算における,道 路リンク i のチャネル k にかかる重みパラメータを  ,l i k z と 表すと,プーリング処理は式(3)となる.  1     ( ) , , l l l l i i k i k i k K xf z x b       

 (3) (4) 全結合層 例えば「都心に向かう道路リンクは,朝ラッシュ時に 混雑する」ように,ある道路リンクの交通状態は,直接 接続していない道路リンクの交通状態と相関を持つ場合 がある.しかし,前述の畳み込み層とプーリング層のみ からなるニューラルネットワークは,接続道路リンク間 の関係のみを表すため,この相関関係を考慮できない. そこで,全結合層を導入し,対象道路リンクと非接続の 道路リンクの交通状態間の相関関係を考慮できるように 設定する. 4. 分析対象と性能評価方法 (1) 分析対象 提案モデルを,都市内の一般道の短期交通量予測に適

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用し,その性能を検証する.交通量データは,日本道路 交通情報センターが公開する,東京都墨田区で5分間隔 に観測された一般道の断面交通量15)を使用する.図-4に 示す97本の道路リンクを分析対象とする. 2017年1月から3月のデータを学習,4月のデータを精 度評価に用いる.なお,データには一部欠測している時 間があるため,その前後のデータを用いて線形補間した. (2) 予測手法と予測精度の評価方法の設定 まず前処理として,各道路リンクの交通量データから 極端に大きい異常値を除くため,上位0.01%のデータを 除去した後,最大値が1になるように正規化する. 入力を対象道路ネットワーク内の各道路リンクの正規 化交通量,出力を次の観測期間である5分後の各道路リ ンクの正規化交通量とする.予測精度の指標として,平 均二乗誤差 (Mean Squared Error : MSE) と平均絶対誤差 (Mean Absolute Error : MAE) を用いる.時刻 i の観測値をyi

予測値を ŷi ,すべてのレコードの数を n とすると,MSE とMAEは下記の式で表される.

2 1 1 n ˆ i i i MSE y y n

 (4) 1 1 n ˆ i i i MAE y y n

  (5) 5. 提案モデルの性能評価 提案モデルの性能を3種類の方法で評価する.まず, 畳み込み層とプーリング層で学習された重みを分析し, 抽出された特徴を考察する.次に,予測精度に対する畳 み込み層とチャネルの数を変えて,予測精度を比較する. 最後に,他の非線形モデルであるサポートベクトル回帰 による予測と精度を比較する. (1) 畳み込み層とプーリング層で抽出された特徴の分析 全結合層を持たない提案モデルを使って,畳み込み層 とプーリング層で学習された重みの分析を行う.分析に は,8チャネルを持つ畳み込み層とプーリング層をそれ ぞれ1層設定したモデルを用いる.バッチサイズを100と し,60エポック分の学習を行い,学習後のモデルの重み を分析する. 図-5は畳み込み層の各フィルターの重みを表す.どの フィルターにおいても対象道路リンクと上流の道路リン クに大きな重みが設定されていることが分かる. 次に,プーリング層の各チャネルの学習後の重みを使 って,各道路リンクをクラスタリングした.クラスタリ ングにはワーズ法を用い,閾値を重みの最大値の80%と 図-4 分析対象とする道路ネットワーク した.クラスタリング結果を表す図-6は,道路リンクが 2カテゴリに分けられていることを示す.直進して進入 する上流の道路リンクを持たない道路リンクが,一つの クラスタとして分けられている.この結果から,プーリ ング層は畳み込み演算によって抽出された局所的特徴を 適切に選択して集約していることが示唆された. 上記の結果から,提案モデルの畳み込み層とプーリン グ層のパラメータは,道路リンクの接続関係を反映した 学習を行っていると考えられる. (2) 畳み込み層とチャネルの数と予測精度の関係 本節では,畳み込み層・チャネルの数を増やすことが が予測精度の向上に寄与するかを確認する.畳み込み層 の設定が予測精度に与える影響に注目するために,全結 合層を持たない提案モデルを使って分析を行う. 畳み込み層の設定は以下に従う.畳み込み層の数を1 から3の3種類,各層のチャネル数を8,16,32の3種類で 変化させる.学習はバッチサイズを100として,60エポ ック行う.表-1と表-2は,各設定におけるMSEとMAEを 表す.これらから,畳み込み層を2層,チャネル数を32 としたモデルがMSE,MAE共に最も低い値となること が分かる.一般的に,パラメータを増やすとモデルの精 度は向上すると考えられる.しかし,提案したモデルで は,パラメータ数が最多となる畳み込み層を3層設定し たモデルが最良の精度とはならなかった.この原因とし て,過学習の発生,あるいは,複雑なモデルに対する学 習データの不足の,二種類の可能性が考えられる. 以下の分析では,最も高い精度を示した畳み込み層を 2層,チャネル数を32と設定したモデル構造を利用する.

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図-5 全結合層を使用しない提案モデルの畳み込み層のフィル タの重みパラメータ 図-6 各道路リンクのプーリング層重みのクラスタリング結果 表-1 提案モデルのMSE チャネル数 層数 1 2 3 8 0.06498 0.06215 0.06215 16 0.06502 0.06178 0.06272 32 0.06366 0.06102 0.06249 表-2 提案モデルのMAE チャネル数 層数 1 2 3 8 0.00755 0.00690 0.00698 16 0.00754 0.00684 0.00704 32 0.00723 0.00668 0.00694 (3) 提案モデルの予測精度評価 本研究で提案するニューラルネットワークを,全結合 層のみを用いたニューラルネットワークとサポートベク トル回帰モデル15)による予測精度と比較する.また,ベ ンチマークとして1時刻前に観測された交通量を予測値 とした場合の予測精度を設定する. a) 提案ニューラルネットモデル 前述の通り,提案モデルは畳み込み層,プーリング層, 全結合層の3種類の層で構成する.本分析では,畳み込 み層は(2)の分析で最高精度を示した2層・32チャネルを 用い,プーリング層1層と全結合層2層のモデルを使用す る.なお,全結合層の1層目のノード数は40・80・120の 設定を試行し,出力層となる全結合層2層目のノード数 は道路リンクの本数と同数の97となる. 提案モデルはバッチサイズを100として,100エポック の学習し,最もMAEが低くなったエポックのモデルを 用いる.全結合層1層目のノード数120のモデルがMAE 最低となった. b) 全結合ニューラルネットモデル 隠れ層の層数を2・3・4層,各層のノード数を40・ 80・120で組み合わせたモデルを試行した.バッチサイ ズを100として100エポックの学習を行った後に,最も MAEが低くなった隠れ層が1層で120ノードのモデルの 精度を下記に示す.なお,モデルの最終層は道路リンク の本数と同じ97となる.

c) サポートベクトル回帰 (Suport Vector Regretion : SVR) SVRは,機械学習手法の1つで,データの潜在的な特 徴をサポートベクトルとして自動的に学習する.交通状 態予測にSVRを用いた手法が提案されている16).本研究 では比較対象として,ガウシアンカーネルを用いたSVR を用いる.Pythonのscikit-learnのパッケージを用いて実装 し,ガウシアンカーネルのハイパーパラメータの候補を [0.0001, 0.001, 0.01, 0.1, 0]と設定し,最適な設定を選択した. なお,提案ニューラルネットワークと全結合ニューラ ルネットワークの学習は,深層学習のフレームワーク Chainerを用い,MSEの最小化はAdamを用いた.

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表-3は,対象ネットワークのすべての道路リンクの交 通量予測精度を示す.提案モデルは全結合モデルよりも パラメータが少ないにも関わらず,全結合モデルと同等 の予測精度を示した.この結果は,提案モデルが,道路 リンクの接続関係の構造に起因する道路交通の特徴を効 率的に抽出したことを示唆している. 図-7,8は墨田区の道路リンク(2次メッシュ番号: 533946, VICS ID: 808)の2017年4月1日から7日まで一週間 の,観測値と,提案モデル・全結合モデルの予測値を示 す.この道路リンクは「上流・下流」と「直進・右折・ 左折」の組み合わせで表現される全種類の接続関係で繋 がる道路リンクを持つ.図-7,8では,提案モデルと全 結合モデルの予測結果が似ているように見える.しかし, 2017年4月6日の結果だけを抽出した図-9からは,提案モ デルの予測値が全結合モデルよりも観測値の変動に追随 していることが分かる.例えば,11時6分付近の時間帯 では,観測値の増加に対し,提案モデルが全結合モデル よりも鋭敏に反応して観測値の変動に沿った予測値を算 出していることがわかる.この結果から,提案モデルが 道路交通の局所的な変動を表現できることが示唆される. なお,比較対象のSVRモデルは,ニューラルネットワ ークを用いたモデルよりも高い予測精度を示した.図-10は提案モデルとSVRの墨田区の道路リンク(2次メッ シュ番号: 533946, VICS ID: 808)の2017年4月6日の混雑時 表-3 各モデルの予測精度 モデル 提案 全結合 SVR 1時点前の 観測値 パラメータ 数 34,842 38,017 ― ― MSE 0.005485 0.005526 0.005104 0.009408 MAE 0.054799 0.055272 0.054549 0.071305 図-7 観測値と提案モデル・全結合モデルの予測値(4月第1 週,2次メッシュID: 533946, VICS ID: 808)

図-8 4月第1週の観測値に対する提案モデルと全結合モデルの 予測値の関係(2次メッシュID: 533946, VICS ID: 808)

図-9 観測値と提案モデル・全結合モデルの予測値(4月6日, 2次メッシュID: 533946, VICS ID: 808)

図-10 観測値と提案モデル・SVRモデルの予測値(4月6日午 後,2次メッシュID: 533946, VICS ID: 808)

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間帯である14時から22時の観測値と予測値を記したもの である.SVRモデルは提案モデルに比べ,交通量の大き な短期的変動に対する予測結果の反応が鈍感になってい る.例えば,16時40分付近では,提案モデルの予測値は 観測値の変化に追随するように上下に変化する一方, SVRモデルの予測値は観測値の上下変動に対し鈍感で, 安定した予測結果を示す.このように提案モデルが観測 値のデータに一時点遅れで追随し大きな誤差を出す反面, SVRモデルは観測値の短期的変動の影響を受けにくいた め予測誤差が小さくなったと考えられる. ここで,各リンクの交通量予測精度を確認するため, MAEを実際の交通量に換算した結果を表-4に示す.提案 モデルとSVRモデルは,100台前後の5分間平均交通量を 有する大半の道路リンクにおいて,約5台前後の誤差で 予測できていることが分かる.また,平均すると一時点 前の観測値より,約1.5台分精度よく算出できている. このことから,提案モデルは日常の交通状態予測する目 的において十分な精度を有し,直前の情報を参照するこ とより優れていると言える. 表-4 各リンクの交通量予測精度 VICS ID 最大交通量 (台/5分) MAE換算値(台/5分) VICS ID 最大交通量 (台/5分) MAE換算値(台/5分) 提案モデル SVR 1時点前の 観測値 提案モデル SVR 1時点前の 観測値 112 123 6.12 6.10 8.33 746 74 4.57 4.67 5.57 113 127 6.88 6.84 9.76 747 125 5.40 5.81 6.35 114 97 6.68 6.09 8.71 748 67 4.24 4.12 4.99 115 120 5.91 5.87 8.31 750 77 4.45 4.51 5.13 124 146 7.33 7.54 9.03 752 77 4.33 4.33 5.70 125 158 8.59 8.70 10.78 753 79 5.43 5.43 7.97 126 136 7.36 7.14 10.02 754 98 5.86 5.83 8.14 127 123 6.10 6.12 8.29 755 121 6.86 6.96 8.45 239 116 5.57 5.59 7.22 805 149 5.53 7.13 5.70 240 87 5.29 5.21 7.34 806 128 4.45 5.36 6.17 241 101 5.66 5.62 9.28 807 73 4.15 4.19 5.75 242 133 7.12 6.91 9.41 808 78 3.87 3.88 5.38 243 89 6.13 5.36 6.33 809 73 3.95 4.00 5.36 252 101 5.44 5.39 6.71 810 70 4.22 4.29 5.38 253 96 5.10 5.19 6.23 811 76 4.25 4.26 5.77 254 100 5.28 5.22 7.36 812 71 4.30 4.32 5.96 255 94 4.65 4.69 6.56 813 85 4.29 4.26 5.78 256 114 5.10 5.34 6.57 814 196 4.95 6.34 6.57 438 130 6.47 6.52 8.31 822 85 4.87 4.95 6.52 439 117 5.84 5.82 7.60 834 79 11.82 6.03 6.05 440 116 5.70 5.80 7.91 838 85 4.86 4.85 6.57 441 115 5.60 5.75 8.16 839 70 4.37 4.38 5.52 442 111 5.12 5.05 6.92 841 87 5.72 5.61 7.38 443 112 5.67 5.57 6.90 842 96 5.47 5.41 7.00 444 126 5.99 5.90 7.17 843 93 4.88 4.98 6.96 445 131 5.96 6.26 8.04 844 82 4.59 4.62 6.48 446 134 5.06 5.28 7.08 847 68 4.12 4.12 5.65 447 167 7.04 7.19 9.06 848 80 4.60 4.67 6.53 509 87 5.83 5.59 7.09 849 117 4.77 5.15 6.36 510 88 5.43 5.25 7.46 850 103 6.05 6.06 8.08 511 86 6.36 6.50 7.63 854 103 6.04 6.06 8.08 512 98 5.22 5.38 6.99 859 96 4.73 4.83 6.68 513 95 5.45 5.34 7.67 860 92 4.16 4.46 5.70 514 102 5.81 5.67 8.59 862 113 5.32 5.83 7.21 515 107 5.56 5.51 8.12 867 85 4.57 4.69 6.28 516 106 5.92 5.94 7.85 868 101 5.44 5.42 6.98 517 97 5.28 5.31 7.23 870 58 3.35 3.28 4.15 518 95 5.43 5.24 7.84 953 64 2.95 3.16 3.70 519 99 5.38 5.36 7.97 956 76 4.10 4.37 5.58 520 73 4.74 4.62 6.93 1114 76 4.09 4.37 5.58 521 99 5.64 5.47 8.11 1117 52 2.86 3.08 3.63 522 86 4.73 4.49 7.10 1156 162 6.78 6.90 9.17 731 87 5.16 5.23 6.40 1159 145 6.86 6.83 8.38 732 53 3.18 3.16 4.13 1167 92 5.27 5.36 6.72 734 77 4.24 4.37 5.52 1234 89 4.13 4.52 5.75 736 87 4.29 4.42 6.01 1236 80 3.58 3.88 4.78 744 59 3.68 3.74 4.63 1309 84 4.83 4.49 3.64 745 120 7.43 7.08 8.42 MAE平均値(台/5分) 5.31 5.30 6.91

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6. おわりに 本研究は,都市部の一般街路ネットワーク上の道路リ ンク交通量を予測するニューラルネットワークモデルと して,接続リンクの交通量の影響を明示的に考慮するこ とを目指した手法を提案した. 提案モデルは,道路リンクの接続関係によって異なる 影響を受けるように設計されたフィルタを使って畳み込 み演算を行う.この畳み込み演算を通じて,提案モデル は直接の接続関係を持つ道路リンクから受ける影響を考 慮することができる. 東京都墨田区の一般街路で観測された断面交通量デー タを用いて,提案モデルによる短期的将来の交通量予測 精度の検証を行った.提案モデルは全結合ニューラルネ ットモデルよりも少ないパラメータ数で,同等の交通量 予測精度を維持できることが明らかになった.この結果 から,道路リンクの接続関係の種類を考慮したフィルタ を用いることで,道路リンクの局所的な特徴を効率的に 抽出できる特性が示唆された.この特性は,全結合ニュ ーラルネットモデルの予測値と比較して,提案ニューラ ルネットモデルの予測値が観測された交通量の変動に大 きく追随するということからも示唆される.一方で,提 案モデルはSVRモデルの精度に及ばなかった.ただし, 提案モデルは過去情報の活用など,時間的な道路交通の 特徴を考慮することで精度向上が見込まれる. 今後の課題として,以下の2点が挙げられる.1つは, 転移学習の有用性の検討である.提案モデルは都市の道 路交通の一般的な特徴を抽出していると考えられる.そ の場合,ある道路ネットワークで学習した畳み込み層の パラメータを,他の道路ネットワークの予測モデルの初 期値とすることで,大規模なデータがなくとも効率的に 学習できることが期待できる. 2つめに,時系列データを考慮したモデルの構築であ る.提案モデルは道路交通の空間的特徴のみに焦点を当 てている.しかし,道路リンクが隣接道路リンクから受 ける影響は接続関係と言った空間的な特徴だけでなく, 時間や曜日による変動と言った時間的な特徴を持ってい る.既存研究では,GCNを時系列データの扱いに長け た再起型ニューラルネットワークと組み合わせて用いる 手法が検討されている.時系列データを考慮したニュー ラルネットワークを提案モデルに組み込むことは有効で あると考えられる. 謝辞:本研究はJSPS科研費18H01551の助成を受けた. 参考文献

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(Received February 22, 2019) (Accepted August 26, 2019)

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SHORT-TERM TRAFFIC VOLUME PREDICTION BY NEURAL NETWORK

CONSIDERING CONNECTIVITY TYPES BETWEEN ROAD LINKS

Koji YOSHIDA and Ryo INOUE

Detailed observation data on road traffic conditions enhance the possibility of accurate short-term traffic volume prediction. Deep learning is one method of predicting the short-term traffic volume of road sections on highway networks, and it provides high prediction accuracy. We propose a new convolutional neural network model that predicts the traffic volume of road links on urban networks, whose structure is more complex than that of highway networks. The proposed model is designed to consider the connectivity types of road links on urban networks through a convolution operation. The proposed model consists of three types of layers. A set of convolution layers extracts the local features of road networks through the convo-lution operation based on the connectivity types of road links. A pooling layer summarizes outputs of the convolution layers. A fully-connected layer extracts the global features of traffic conditions on a target urban network. We conducted an experiment to predict the traffic volume of road links on an arterial road network in Tokyo. The results indicated that the proposed model provides almost the same prediction ac-curacy as that of the fully-connected neural network model, even though the proposed model contains fewer parameters compared to the fully-connected neural network model.

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