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野尻湖 にみ られ る数種 のプ ランク トンについて
落
合
照
雄
The Ecology of Some Plankton in Lake Nojir
Teruo Ochiai
は じめ に 野尻湖の陸水学的研究 については,田中阿 歌磨が 「野尻湖の研究」 (1924)を出版 して以 莱,多 くの調査研究がある。 このなかで水生生物,なかんず くプランク トンについて も沢山のレポー トが発表 されて いる。 しか し,長期 にわた り, しか も連続 し た観測データは少ない。 筆者 は1986年 6月野尻湖で淡水赤潮が発生 以来,毎月1回,湖心で水深0- 5m間のプ ランク トンネ ッ トによる垂直採集 を実施 して きた。 この一部 はすでに発表 しているが, こ の調査結果の中で最近変化のあった4種 のプ ランク トンについて, ここで述べてみたい。1. ウログ レナ
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野尻湖 におけるり ログ レナによる淡水赤 潮現象 について 1988年 6月29日午前10時頃, ある人 は西湖 畔で経営 している施設 にいて異臭 を感 じた。 誰 かが魚 を捨てて腐 っているのではないか と 思い探 したが,それ らしい ものは見つか らな か った。屋外 に出てみると湖面が茶褐色 とな り臭 っていた。 別の会社 に勤務 している人が湖面 の異常 に 気づいたのは,出勤 して きて午前8時30分頃 桟橋 の上であったO-瞬 目を疑 った とい う。 ドロッとした褐色 とも黄褐色 ともつかない湖 面,重油が流れ出たのかな と思 い新聞紙 に吸 わせ ようとしたが,油ではなか った。悪臭 も 鼻 をつ き湖畔 にいて も頭が痛 くなる程 の強 さ であった。 こんなことはこの40年間経験がな かった とい う。異臭 をはなった水塊 は吹 き出 した風 に運 ばれ西の方向に流れていった。 こ の時,淡水赤潮がみ られたのは,旅館,飲食 店 の集 まっている湖西側のほか,農業地帯の 東北部,東側菅川岸,湖南部 の国際部落 な ど かな り広範囲であった。 7月6日,長野市水道局の職員が湖南部 (水 穴) にある管理事務所へ行 った際,湖面が異 常 に茶色 に変色 していたので採水 し,持 ち帰 って検鏡 したが原因生物 の判定 はで きなかっ た。 それ はウログレナが分解 していたか らで あった。 7月 7日,水道局水質係が現地調査 した と ころ,湖心か ら水穴湾 にか けて異常 な茶褐色 となっていた という。 夕刻,再調査で黄金鞭毛藻類 のウログレナ102 清泉女学院短期大学研究紀要 (第17号) Uroglenaamen'cana
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と判明 した。 この時の湖表面 の個体数 は約2000/血 であっ た。 7月14日,昼頃,再び 7日と同様の状態で あった。 7月15日,水穴湾では赤潮 は全 く見 られな かった。野尻湖 に赤潮発生 と,新聞各紙,T
V各局 によ り一斉 に報道 された。 7月20日,公共用水定期水質測定の採水 と 合わせて淡水赤潮調査 を行 った。赤潮 は認 め られず,原因生物 も検出されなかった。透明 度及び水質検査項 目は平常値 を示 した。 7月28日,野尻湖浄化対策打合せ会議の決 定 に基 き,当 日, 8月3日,17日,22日,29 日, 9月21日,10月19日と調査 をお こなった が,赤潮現象及び原因生物 のウログ レナは認 め られなかった。 11月16日,12月14日,採水検査 では水質検 査項 目は平常値であったが, プランク トンネ ッ トによる0- 5m層採集物 中にはウログレ ナが認 め られた。 一方,地元有志の "水 を語 る会"が独 自に 観察 した結果 によると, 7月10回, 8月2回, 9月1回の計14回 (6月の1回を含 む)の赤 潮発生があった という。 以上 は,筆者が地元の信濃毎 日新聞及 び水 道局 な どによる見聞 をまとめて,当時の状況 を記 した ものである。 図1 野尻湖に出現 したウログレナ群休 Urogtenaamericana A 生長 した群体 (大型タイプ) B これから生長する群体 (小型タイプ) C 群体内の細胞 (拡大図) D 生長がオーバーして極めて不規則型 となった 群体 (これのみ中綱湖産)落合 :野尻湖 にみ られ る数種 のプランク トンについて 長野市 は野尻湖 を上水道水源の一つ として 利用 してお り,南部水穴湾 に管理事務所 を置 いている。 しか し,毎年6月1日か ら9月10 日までの間は申し合わせ によ り取水 してお ら ず, この時 この赤潮 を含んだ水 は利用 してい なかったので,臭 い水問題 は避 けられた。 B.りログ レナの形態 個々の細胞 は,長 さ12-20pm,幅8- 13 〃mの卵形 または楕 円球状,細胞質 は縦半分 に存在 し,前端 に大小2本の鞭毛 を持つ。葉 緑体 内にクロロフィルのほか, フイコク リシ 細 胞 数 1-100 101-500 501-1000 1001-2000 2001-3000 3001-4000 103 ンを含 むので黄金色 または褐色 を呈す ること か ら黄金鞭毛藻類
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とい う。 この細胞が,寒天被膜 の表面 に放射状 に並 んで群体 を形成 してい る。小 さい時 は球状で あるが,大 き くなると長卵球状 とな り,不規 則形 とな る こ ともあ る。球状 の時 の直 径 は 50- 200ノバnである。図1に示す。 この寒天被膜 は大変 もろ く,検鏡 していて あまり時間が経過せず に崩壊す る。 ウログレナは鞭毛 を持 ち運動す ることか ら ハ ダ カ ヒゲム シ科Chr
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として 原生動物 に も属 している。 個体 数 2 4 6 8 10 個体 数 2 4 6 8 10 図2 ウログ レナ群体 を構成 している細胞数 上 群体 を球体 と して扱 う時の半径R 下 1992年 1月 と6月の細胞 数 とその個体 数104 清泉女学院短期大学研究紀要 (第17号) 学名 に も混乱があったが,現在 はUroglena americanaG.N.Calk.となっている。 さて,群体 を作 っている細胞数 は何個体だ ろうか。1992年1月 と6月に出現 した ウログ レナ群体 について調 べてみた。群体 直径 は 65-315JLm であった。 条件 として,半径Rの球体 をな しているこ と。群体表面に細胞が均等 に存在す ることの 二つを仮定 した。 方法 として,群体表面中央 に写真の焦点 を 合わせ撮影する。 細胞数の推定法.群体の半径Rを直径 とし た円の表面積が群体全表面積 に占める割合 を 求めると,全表面積 は47tR2,半径Rを直径 と した表面積 は7T(R)2とな り,前者 は後者の16 倍 となる。半径Rを直径 とした円内細胞数 を 数 え16倍す ると,全表面 に存在す る細胞数が 算出され る。 推定方法のモデル図 と,算出 した個体数の ヒス トグラムを示 した ものが図2である。 1992年 1月 は10群体調査で平均780個体,6 月は22群体で平均750個体 とな り,時期 による 差 はなかった といえる。 この方法では繁殖が進行 して曲が りくねっ た不規則形の群体 には適応 しに くい面がある。
C.
これ までの野尻湖 における発生状況につ いて 1988年か ら現在 までの野尻湖 におけるウロ グレナの発生状況 を表1
に示す。発生量の多 い方か ら●○+
で表 している。 これ までに大 発生の赤潮●のあったのは1988年 6 ・7月の みで,多数個体○が見 られたのは6月 3回 と, 10月 1回,11月 6回,12月 7回であった。 1988年 6月の赤潮発生以前のウログレナの 記録 は, どうなっているのだろうか。筆者が 1980年 9月西湖岸で採集 したサ ンプルの中に 極 めて少量 なが ら, ウログレナが認 められた。 表1 野尻湖におけるりログレナUroglenaalnericanaの出現 ● は赤潮現 象,○は多量 に発 生 ,+ は出現落合 :野尻湖 にみ られ る数種 のプランク トンについて これが野尻湖 における初見 と思われ る。 さて,野尻湖 における出現月 は年によ り異 なるものの, 5月∼ 7月 と10月∼12月の2つ の ピークがあ り,出現回数 と個体数の多かっ たのは冬期の方で あった。 D.県内に見 られ るりログ レナの生息地 その後の調査で県内にウログレナの生息が 明 らか となった湖沼 は,以下の6カ所である。 場所 標高m 出現年/月 木崎湖 764 1992/6 ,1993/3・4・5 中綱湖 815 1992/10・11・12 青木湖 822 1992/5・10・12,1993/3・4 白樺湖 1416 1992/9・10・11,1993/4・5 飯綱大池 912 1994/12,1995/5 大座法師池1030 1995/8 6湖 沼 の うち,上記4湖 沼 は1992年6月 ∼1993年5月 まで冬期 を除 き毎月1回,下記 2池沼 は1994年10月か ら1995年10月 まで同 じ く冬期 を除いて月1回調査 した ものである。 この ことか ら,国内でのウログレナの記録が 少ないのは,充分 な調査が されていない結果 と考 えられ る。 E.りログ レナの生態 ウログレナは,古 くは1918年川村多実二 に より琵琶湖で記録 された。 このウログレナが 淀川 を通 じて大阪水道局関連施設 に出現 して いることを,近藤正義が報告 している。 この ほかでは,北海道の二か所 にも記録 されてい るが,いずれ も赤潮現象 にはなっていない。 しか し近年各地の湖沼で多量発生があ り, 上水道水源 として利用 している所では,水の 着色,ナマグサ臭 な どの弊害がお きている。 105 最近 の国内での発生地 は,琵琶湖,中禅寺 湖,湯の湖,河 口湖,精進湖等である。 国外では,1925年以来13件知 られ, その内 訳 はヨーロッパ11件,北 アメ リカ2件で,出 現 種 の殆 どがUroglena americana G.N. Calkであ り,赤潮の発生がみ られ る。 琵琶湖の発生 については,湖西岸寄 りで北 湖南部の高水温域で,多量発生 日は4月中旬 か ら6月中旬 の 2ヵ月間であるが, 5月中に 集中 している。 なお個体数 は少 ない ものの11 月・12月にかけて再 び増殖が見 られ るとい う。 よ く調査 されている日光中禅寺湖 では4月 か ら11月 まで出現するが,最大量 は6月 ・7 月であ り,その上流 にある湯 の湖で も年間見 られるが, 5月・6月頃 に大増殖が ある。出 現個体数 は湯の湖 の方が多 く, この湯の湖 か ら流下 して中禅寺湖 に入 った ものが,中禅寺 湖 のウログレナの発生源 となっている。 これ らの内容 をみると,発生時の生息水域 の水温 と何 らかの関連があるように思われ る。 図3は野尻湖 の出現月 と, その時の水温 と の関係 を示 した ものである。 野尻湖での出現回数が多 く,時 に多量 の増 殖が見 られ るのは4月∼ 7月 と,10月∼ 1月 の2期間である。 その時の水温 をみると, 4月は5- 9oC, 5月 は12-16oC, 6月 は18-22oC, 7月 は 23-24oCで, この うち最 も出現 率 の高 い6 月・7月水温 は18-24oCである。秋 ・冬期で は10月 は15-16oC,11月は10-12oC,12月は 7- 9oC, 1月は2- 4oCで, この うち最 も 出現率の高い10月∼12月の水温 は16- 7oCと なる。 琵 琶 湖 で の 最 多 発 生 月 は
5
月 で,水 温 16-17oCであ り,中禅寺湖 ・湯 の湖では15oC 時 に発生 ピークがみ られ るとい う。106 清泉女学院短期大学研究紀要 (第17号) ● 温 水 赤 潮
○
多量 + 存 在 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 ll 12 月 図3 ウログレナの出現時 (月) と水温 との関係 発生時の水温では琵琶湖 ・中禅寺湖 ・湯の 高水温の8月を比較 してみると,琵琶湖では 湖が16-17oC,15oCとほぼ同水温なのに対 し, 7月以降 は20oCを越 えて22-23oCであ り,中 野尻湖では18-24oCと高めである。 禅寺湖では20oCをわずかに越 える程度,湯の 逆 に発生が消滅 す るか, もしくは減退す る 湖 は標高の高い所 にあるので20oC以下である。落合 :野尻湖 にみ られ る数種 のプランク トンについて 野尻湖の8月水温 は22-29oCとなる。 このように比較 してみる と, ウログレナの 生育適温 はほぼ20oC前後であると言 える。 さて野尻湖の6月 は湖沼学的にみて春期循 環期 にあた り,10月′-12月は秋期循環期 に相 当す る。 こうしてみ る と出現 率 の高 い 4月 ∼ 6月 と,10月∼ 1月は循環期で湖底 にあっ た栄養塩が全層 に行 きわた り., それに生育適 温がかかわ って出現す る機会が多 くなるが, 夏 は高水温のほぼ20oC以上 におさえられ,冬 ∼春先 は低水温で活動が低下す るというのが, ウログレナの実態ではなかろうか。 ウログレナは比較的冷涼 な地域 にあ り,質 栄養湖か ら中栄養湖への移行期 に該当する湖 沼で発生 している。 この ような立場か らみると,野尻湖 をはじ め として県内でウログレナが発生 した6湖沼 は,上記 の条件 に該当 しているように思われ る。
2.
ス トケ シア
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原生動物,繊毛虫類 に属するス トケシア と 同定 され る動物 プランク トンが,最近野尻湖 にみ られ るようになった。 この種類 は今 まで 国内には出現 していように思われ る。 ス トケシアSt
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の形態 外観 は隅が丸 い斜 めの三角円錐形。平な前 表面 は一様 に繊毛がある。 口緑 に長めの繊毛 の部分があ り,底部 に細胞 口が位置 している。 最大直径部分で生物体 の まわ りにはより長 い 繊毛の帯がある。皮膜 の表面 には明瞭な傑線 がある。特 に注 目すべ きことは動物性葉緑体 をもっている。糸胞があ り。 自由遊泳。淡水 池沼 に生息す る。図4
に示す。St
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Wenich.現在 この属では 107 この1種 のみ。直径100-160pm。大核 あ り。 2- 4個の小核 あ り。淡水産。(KudoProtozoologyによる)
図4 ス トケシア
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(KudoProtozoologyより)
緑色 で斜 めの三角錐形の繊毛虫で,形が特 異である。形態 を多様 に変化 させて活発 に運 動 して判別 に苦労 した。野尻湖の出現状況 を 表2に示す。本湖の初見 は1991年11月で,以 来
7
年間に26回確認 された。 グルタルアルデ ヒ ド液で も形 を崩すので生体 で観察す る。出 現 は夏の高温期 には少ない.本種 はヨー ロッ パで は,湖沼の真正プランク トンとしてその 他の原生動物 とともに出現 している。3.
カ ブ トミジ ン コDa
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カブ トミジンコの出現 国 内 のハ リガ ナ ミジ ン コDa
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(0.F.Miiller)には,基本種 に較べて 頭部が伸 び,先端が尖 る仲間のいることが知 られて いた。 これ らはhyalina型 とgaleata 型の2型で,識別点があいまいであった。 最近,田中 (1992)は琵琶湖 と木崎湖 に生108 清泉女学院短期大学研究紀要 (第17号) 表2 野尻湖 にお けるス トケ シアStoheslaの出現 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1988 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98
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〇 は出現 息 してい る種 を調 べて,gal
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型 で あ る と し,カブ トミジンコDaphniagaleataSar
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と して発表 した。 また,荒河 ら (1997) は河 口湖 で湖底 か ら 表面 までの垂直採集 をお こない, 出現 した カ ブ トミジンコの季節的形態変化 を計測 し,捕 食関係動物 について も論 じてい る。 野尻湖 のハ リナガ ミジンコについては,上 野 (1934) によ り頭部 に尖 った突起 のない丸 頭 の亜種D
aphnialongispinahyalinaである とされた。 ところが,筆者 の調査の結果,頭部先端突 起 が明瞭 にある個体が見つか るようになった。 この結果,野尻湖 のハ リナガ ミジンコは, 田中のい うカブ トミジンコDaphnia galeataSa
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であることがわかった。 上野 の調査当時,野尻湖 のハ リナガ ミジン コには,頭部先端 に突起 のある個体 が生息 し ていなっかった事 になる。○
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表 3に10年間の出現状況 を示す。51回の出 現 の うち尖頭型 は5
回見 みつか っている。丸 頭型 を含 めて湖表層 に出現す るのは,主 に6 月以降12月頃 までであ り,尖頭型 は比較 的若 い個体 に多い ように思われた。 ミジンコ類 は,普通雌 が両性生殖 な しに形 成 され る卵が貯化 して また雌が生 まれ るいわ ゆる処女生殖pa
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を行 って いる ので,我 々が見 てい るの は殆 ど雌個体 である。 しか し,時々雄が出現 して両性生殖 を行 う。 今回1992年 9月,1996年 9月そ して1997年 7 月の3回,雄個体 を確認 す ることがで きた。 図5
にカブ トミジンコ雌個体 の頭部尖 出型, 雄個体 と,上野 の71年前 の個体 図 を示す。B.
形態変化 とカイ ロモ ン 以前 か らヨー ロ ッパ な らびに北 アメ リカ北 部産 の ミジンコ属 の種類 の中には,夏期 を中 心 として頭部が伸 び, その先端が突出 し,殻落合 :野尻湖にみられる数種のプランクトンについて 表3 野尻湖におけるカフ トミジンコDaphmiagaleataの出現 109 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
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〇 △○ △○
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○
○
△
○
○ は出現,△は尖頭型の出現 刺が伸長す ることが知 られていて, それ らは 夏の水温上昇 に伴 う水 の抵抗 を小 さ くす るた めの適応結果だ と説明 されて きた。 しか し,最近 これ らの現象が, ミジンコ属 の補食 者 に よ り水 中 に放 出 され た化学物 質 (臭 い) に反応 して,動物 プランク トンが形 態変化 させたためである ことが判 って きて, この化学物質 はカイ ロモ ンKa
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と名 ず けられた。 この被食者 と補食者 との関係 は, 原生動物 や魚で も発見 されている。 動物 プランク トンでは,被食者 の ミジンコD
aphniapulex(
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と,補食者の フサ カ幼虫(Chaeborus双題類)との関係が研究 の 糸 口 となった。 フサカ幼虫 と共存 した結果, ミジンコの幼個体 の後頭部 に尖 った歯が形成 されたのである。 筆者 は1954年∼56年 にか けて,長野市 内の 防火用水池 に ミジンコDaphniapulexが沢 山 生息 していたので,研究 した ことがある。〇
〇
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○
この時判 明 した事 は, ミジンコの生活史で 脱皮生長 に よるステー ジが5段 階 あること, 雄 の発生 と耐久卵形成,耐久卵筋化 までの非 出現期 間の存在, そ して生活史 の中で幼個体 の背中 に背面歯(
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ともい う)が認 め られた ことであ った。 背面歯が生 じた個体 は第2ステー ジ と,第 3ステー ジだ けで, 1- 2個が普通,希 に 3 個 の こともあった。 この時 の ミジンコの形態 を図6に示 した。 この池の共存 プランク トンはアオムキ ミジ ン コScapholeberismucronata(0.F.Mt
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phnia reticulata(
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phaericus(0.F.Mi
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, ケ ン ミ ジ ン コ Cycl
opssp.の4
種 が殆 どで,植物 プランク ト ンは極 めて少 なか った。植物 プランク トンが 少 ないため, この防火用水池 の夏期 のpHは110 清泉女学院短期大学研究紀要 (第17号) /へ 、 冠 警 二tf.tl i・、子 . ∫ .=・: [1 ・・・・ ・ .‖ 枯 _ / I.・ ・・-;I J㌧ . :,Jf 了 i・1 日ハ ー -図5 野尻湖のカブ トミジンコ DaphniagaleaEa A 上野が1927年 に採集 した個体図 (上野1934) B カブ トミジンコの全体 (雌) C カブ トミジンコの頭部 (雌) D カブ トミジンコの雄
落合 :野尻湖にみられる数種のプランクトンについて ¶ 5芯 ㌃一 図 6 ミジンコDaphniapulexの発育ステ-ジと背面歯をもつ幼体 上段左から右へ発育ステージ1- 5、 5、6はともに成熟個体で5は 処女生殖卵 をもつもの。 6は耐久卵をもつもの 下段 背面歯をもつ幼体 最高で8.4であった。 このほかの共存動物 としては,極 めて多量 のフサカ幼虫が生息 していた。すなわち, フ サカ幼虫 のカイロモ ンが背面歯形成 に関与 し ていた ことになる。 野尻湖 には以前 カイロモ ンを分泌す る共存 動物が生息 していなか ったが,最近生息す る ようになった。それ は何動物 であろうか
。
1
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年底生動物 を声べた宮地 の論文 に も,1
9
72年 調査 の北川 の研究で も本湖か らはフサカ幼虫 (Corethra)は見 つかっていない。かいあ し 頬Copepoda,輪虫類 フタロワム シA申kmchna や ワカサギ は以前か ら生息 してい るのでそれ に該 当 しない。 ひ とつ考 え られ るのは,10年 程前か ら外来魚のオオグチバ ス とコグチバ ス がかな り繁殖 してい る。補食者 としての魚 プ iFlil 体内の数字は採集年 ・月 ・日 )I,-ギルLepomismacrochirusR.が,カイ ロ モ ンを分泌 す ることが知 られてい るので,オ オ グチバ スや コグチバ ス も同 じような作用が あるので はないのだ ろうか。 なお,周囲の耕 地水 田等で使用 されてい る農薬 も河川 を通 じ て流入 す る可能性が あ り, これ らも原因物質 の1つか も知れ ない。4
.アオ コ
Micr
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cystisaerugmosaKt
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野尻湖 の ような きれいな湖 には, アオ コが 出現 しないので はないか と思われていたが, 最近発生 しは じめた。 表4
に示 した。初 めて見つか ったの は1
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1
年1
2
月で,それ以降,合計1
2
回観測 され,1
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112 清泉女学院短期大学研究紀要 (第17号) 表4 野尻湖におけるアオコMicrocystisaerzLginosaの出現 ○ は出現 年 には連続5か月出現 している。種類 はアオ コMicrocystisae7mginosaKtltizである。出現 量 はご く少量で,年間の後半6月∼12月の間 に見 られ る。アオコは富栄養湖 に出現す る代 表種である。図 7に示す。 ウログレナの大発生が見 られた琵琶湖では 1960年代初頭 まで はアオ コM.aeruginosaは 観測 されなかったが, それ以降,全湖 を通 じ て少量なが ら盛夏の頃 (7月
∼9
月)且 られ るようになった と,根来 は述べている。 そ して1983年 には,湖南部地区の大津市, 草津市近 くで本種 による水 の華が発生 し, そ 図7 野尻湖に出現 したアオコMicrocystisaenLginosa落合 :野尻湖にみられる数種のプランクトンについて れが今 日まで続 いてい る とい う。 最近 は高地 にあって水 の きれ いだ と思 われ てい る池沼で も, アオ コが見 つか ってい る。 長野 県 内で筆者 が確認 した所 で は,1995年 菅平 ダム湖 (標高1140m)で はアオ コM.aer -uginosaが, また長野 市飯 綱 高原上- の倉 池 (同1030m)で はアオ コM.aeruginosa,M. wesenbergiiが,大座 法師池 (同1030m)で は アオ コM.aeruginosaが,最近 か な り目立 つ 程度 に出現 してい る。 この下記両池 とも1989 年 にはすで に これ らの種 が観測 され ていた。 今後,野尻湖 で もアオ コの量 が増 える こ とが 予想 され,注意 を要す る と思 う。
5.
ま とめ 以上 と りあげた4種 の うち 1種 は以前 か ら 生息 していた種類 について, 3
種 は野尻湖 に 新 し く発生 した種類 につ いて述 べた。 湖 の湖沼型 はいずれ は貧栄養湖一 中栄養湖 113 - 富栄養湖 へ と変遷 す る. いわ ゆる富栄養化 現象で あ る。 ただ その進行速度 が速 いか遅 い かの問題 で あ る。 野尻湖 は,現在貧栄養湖 か ら中栄養湖 へ と 進行 中で あ る と思 われ る。 この まま進行 すれ ば, ここに述 べた4種 の出現状況 は どう変化 す るで あ ろ うか。 カブ トミジンコはやが て姿 を消 し, ウログ レナ も消滅 してい くで あ ろ う。 ス トケ シア は個体 数 を殖 やすであ ろ う。 ア オ コは しだい に増殖 して "水 の華" を形成 す る可能性 が高 まる と思われ る。 お忙 しいなか本稿 を見て下 さった本学前教授 安藤裕先生,日頃か らご指導頂いている藻類研究 所長福島博先生 に厚 くお礼申しあげる。 なお,採集調査 に大変お世話 になっている長野 市水道局水質試験室 の皆様方 に深 く感謝す る次 第 です。 ResumePlanktonsamplesinthesurfacelayer (0-5m) ofLakeNojiriwerecollectedmonthly from July1988toMarch1998. 1n thesesamplestheauthorobservedthefollowing4 species.
Uroglenaamericana,Stokesia,Daphniagaleata,Microcystisaerugin
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