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モンゴルにおける地域経済発展の趨勢

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モンゴルにおける地域経済発展の趨勢*

平井貴幸

はじめに 一国レベルの視点からモンゴル経済をみると、2010 年代前半は二桁の 実質成長率を示してきたが、その後は徐々に低下していき、2016 年に 1.2% となった。2017 年には 5.3%と回復し、翌 18 年は 6.9% となり、実質成長 率の上昇傾向が続いている1 拙著(2018)で示したように、モンゴルでは 1990 年代初頭の市場経済 化以降も伝統的な牧畜業が盛んであり、それはモンゴル経済にとって重要 な産業の一つとして挙げることができる。本稿では、モンゴルの首都ウラ ンバートルと 21 のアイマグ(県)を合わせた 22 地域別の経済関連統計を 整理し、モンゴルにおける地域経済の発展趨勢を示す。また、地域間の経 済発展水準に関する収束性や、経済水準格差の有無ついて分析する。 1.地域経済の動向 まずアイマグ別の経済動向の基本的な指標を確認するために、人口およ び牧民の地域分布を表 1 に示す2。2017 年の人口はウランバートル以外の 四大地域、すなわち西部、ハンガイ、中部、東部地区のシェアは低く、そ れぞれ約 13%、約 19%、約 16%、約 7% となる。ウランバートルの人口比 率は約 46%となり、首都への人口流入が継続的に進んでいる。 2017 年の牧民数の全国シェアを見ると、ハンガイ地区が約 41%、西部 地区が約 26% であり、他地区に比して高いことがわかる。また、牧民数 の人口に対する比率を見ると、おおむね 20% から 30% の比率を示してお り、牧畜業が各アイマグにおいて重要なセクターであることが確認できる

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が、ウランバートルや、エルデネット鉱山を抱えるオルホン県、そしてモ ンゴル第二の都市ダルハンを有するダルハン・オール県などは例外である。 さらに 2000 年から 2017 年にかけての年平均増加率をみると、人口のそ れはウランバートル、首都近郊に位置するゴビスンベル県、そしてタバン トルゴイ炭田とオユントルゴイ鉱山の開発が進むウムヌゴビ県でそれぞれ 3.7%、2.1%、2.0% と高い成長率を維持している。一方、牧民数の年平均 増加率は、首都の北部に近接するセレンゲ県のみで増加していることが示 されている。 2000年 2017年 2000年 2017年 2000年 2017年 人口 牧民 西部地区 17.4% 12.6% 29.8% 26.1% 30.0% 19.8% -0.3% -2.7% バヤンウルギー 3.9% 3.2% 5.6% 5.7% 24.8% 16.8% 0.5% -1.8% ゴビアルタイ 2.6% 1.8% 5.3% 4.3% 35.1% 22.5% -0.6% -3.2% ザブハン 3.6% 2.3% 7.3% 5.5% 35.3% 23.4% -1.2% -3.5% オブス 3.6% 2.6% 5.7% 5.7% 27.7% 20.8% -0.3% -2.0% ホブド 3.6% 2.7% 6.0% 5.0% 28.7% 17.5% -0.1% -3.0% ハンガイ地区 23.0% 18.7% 40.2% 41.1% 30.6% 21.0% 0.4% -1.8% アルハンガイ 4.0% 3.0% 8.8% 8.9% 38.0% 28.4% -0.1% -1.8% バヤンホンゴル 3.5% 2.7% 7.0% 7.3% 34.9% 25.7% 0.1% -1.7% ボルガン 2.6% 1.9% 4.1% 4.8% 27.6% 23.6% -0.1% -1.0% オルホン 3.2% 3.3% 0.8% 0.5% 4.4% 1.3% 1.9% -5.0% ウブルハンガイ 4.7% 3.6% 9.5% 9.3% 35.5% 24.6% 0.1% -2.0% フブスグル 5.0% 4.1% 9.9% 10.3% 34.9% 23.7% 0.6% -1.7% 中部地区 18.5% 15.9% 18.0% 19.9% 17.0% 12.0% 0.7% -1.3% ゴビスンベル 0.5% 0.5% 0.3% 0.4% 10.0% 6.7% 2.1% -0.3% ダルハンオール 3.5% 3.3% 0.7% 0.8% 3.5% 2.2% 1.2% -1.4% ドルノゴビ 2.1% 2.1% 2.3% 2.4% 18.8% 10.6% 1.7% -1.6% ドンドゴビ 2.1% 1.4% 4.5% 4.0% 36.7% 26.7% -0.7% -2.5% ウムヌゴビ 1.9% 2.1% 3.6% 3.2% 32.1% 14.8% 2.0% -2.6% セレンゲ 4.2% 3.4% 1.4% 2.7% 6.0% 7.6% 0.5% 1.8% トゥブ 4.1% 3.0% 5.2% 6.4% 22.6% 20.7% -0.2% -0.8% 東部地区 8.4% 6.8% 10.7% 12.0% 22.4% 16.8% 0.4% -1.3% ドルノド 3.1% 2.5% 2.5% 2.9% 14.3% 11.0% 0.4% -1.1% スフバートル 2.3% 1.9% 4.2% 4.9% 31.8% 24.2% 0.5% -1.1% ヘンティ 3.0% 2.4% 4.0% 4.3% 23.5% 17.1% 0.3% -1.5% ウランバートル 32.7% 46.0% 1.3% 1.0% 0.7% 0.2% 3.7% -3.6% 総計 240.8万人 317.8万人 42.2万人 30.4万人 17.5% 9.6% 1.6% -1.9% (全国シェア) (全国シェア) 牧民/人口比率 年平均増加率 人口 牧民 表1 人口および牧民数の地域分布

出所:National Statistical Office of Mongolia, Mongolian Statistical Yearbook 2017より作成。 注:年平均増加率は2000年から2017年にかけての数値。

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つぎに、アイマグ別の域内総生産(Gross Regional Product:GRP)の 分布構造を表2に示す。2017 年のモンゴルの国内総生産(GDP)に対して、 ウランバートルの GRP は約 65%、次いでオルホン県が約 7%となり、首 都経済への一極集中化が進んでいることが示されている。また、2000 年 と 2017 年の GRP に占める第 1 次産業の割合(Y1/GRP 比率)を見ると、 西部地区で約 68% から約 41%、ハンガイ地区で約 54% から約 26%、中部 地区で約 45% から約 27%、そして東部地区で約 65% から約 29% へと急激 に低下している。ただ 2017 年の第1次産業の比率が 40%以上であるアイ 表2 域内総生産および第 1 次産業比率の地域分布 出所:表1に同じ。 注:Y1は第1次産業を表す。また年平均成長率は2000年から2017年にかけての数値。 2000年 2017年 2000年 2017年 2000年 2017年 GRP Y1 西部地区 9.8% 5.7% 67.8% 41.4% 265 1,570 20.0% 14.1% バヤンウルギー 2.0% 1.2% 61.7% 37.2% 235 1,262 16.2% 12.9% ゴビアルタイ 1.7% 1.0% 69.7% 46.5% 311 1,914 16.4% 13.0% ザブハン 1.9% 1.2% 64.9% 44.9% 250 1,798 16.1% 13.3% オブス 1.9% 1.2% 62.5% 36.7% 255 1,551 16.5% 14.0% ホブド 2.2% 1.2% 78.3% 42.6% 288 1,535 16.4% 12.8% ハンガイ地区 21.5% 14.1% 54.1% 26.1% 440 2,643 15.7% 11.6% アルハンガイ 3.1% 1.5% 59.2% 59.1% 363 1,770 17.1% 12.2% バヤンホンゴル 2.0% 1.4% 74.3% 46.6% 272 1,797 15.0% 15.0% ボルガン 2.3% 1.0% 70.3% 50.9% 417 1,878 17.4% 14.2% オルホン 8.4% 6.7% 7.0% 0.6% 1,259 7,181 14.5% 12.3% ウブルハンガイ 2.4% 1.6% 68.5% 50.7% 243 1,553 18.4% 2.5% フブスグル 3.2% 1.8% 70.4% 41.4% 302 1,555 17.2% 15.1% 中部地区 11.6% 9.9% 44.5% 26.5% 297 2,181 16.2% 12.6% ゴビスンベル 0.3% 0.3% 18.7% 20.4% 308 2,055 18.9% 15.3% ダルハンオール 2.1% 1.6% 14.6% 7.8% 281 1,724 19.7% 20.4% ドルノゴビ 1.3% 1.1% 45.0% 27.2% 296 1,803 18.2% 13.9% ドンドゴビ 1.1% 0.9% 54.2% 58.5% 235 2,260 18.7% 15.2% ウムヌゴビ 1.2% 2.0% 56.7% 19.7% 303 3,392 19.1% 19.6% セレンゲ 3.0% 2.1% 46.0% 19.1% 332 2,152 23.3% 15.9% トゥブ 2.6% 1.8% 64.9% 43.6% 303 2,136 17.7% 11.8% 東部地区 5.0% 5.8% 64.5% 28.9% 284 2,962 17.4% 14.7% ドルノド 1.4% 3.0% 47.0% 13.7% 212 4,198 20.9% 15.4% スフバートル 1.7% 1.5% 75.4% 33.8% 340 2,773 25.6% 16.8% ヘンティ 2.0% 1.2% 68.0% 59.7% 316 1,818 19.3% 13.8% ウランバートル 52.1% 64.6% 1.5% 0.4% 753 4,919 16.7% 15.8% 総計 11.4億ドル111.3億ドル 24.9% 10.6% 472 3,504 21.5% 12.4% GRP Y 1 / GRP比率 一人当たりGRP 年平均成長率 (全国シェア) (USドル)

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マグは 11 県も存在していることを考慮すると、地域経済における牧畜業 の重要度が依然として高いといえる。 2017 年のアイマグ人口一人当たりの GRP は、約 7,200 ドルのオルホン 県が最も高い。この数値を 100 とすると、西部地区は約 22、ハンガイ地 区は約 37、中部地区は約 30、東部地区は約 41、そしてウランバートルで は約 68 の水準になる。ちなみに、2000 年のオルホン県の数値(約 1,300 ドル)を 100 として指数化すると、西部で約 21、ハンガイで約 35、中部 で約 24、東部で約 23、そしてウランバートルでは約 60 の水準であった。 それぞれの数値を比較すると上昇していることから、この観点からの経済 的な格差は縮小しているように見える。 2.牧畜労働生産性の地域分布 ここで、モンゴルの農牧産出量の約8割を占める牧畜部門の数量統計 の地域分布を見ることにしよう。表3は「小型家畜換算係数」による家 畜総数を示したものである3。小型家畜換算による家畜総数の地域分布を みると、2000 年から 2017 年にかけて、西部・ハンガイ地区ではそれぞれ 23.2%から 21.6%、38.6%から 38.0%へと減少しているが、中部・東部地 区ではそれぞれ 21.8%から 22.3%、15.5%から 17.1%へと増加している。 ここで、小型家畜換算による家畜総数を産出、牧民数を投入として、そ の比率を牧畜部門の労働生産性とすることにしよう。2017 年では、トゥ ブ県で約 7,200、次いでバヤンホンゴル県で約 4,900 となり、前者を 100 としたとき後者は約 68 となる。ただ西部地区は約4、ハンガイ地区は約 5、中部地区は約6、東部地区は約7となり、その差は非常に大きい。と はいえ、2000 年のトゥブ県の数値(約 3,600)を 100 と場合の指数はバヤ ンホンゴル県が約 33、西部地区が約3、ハンガイ地区が約4、中部地区 が約5、東部地区が約6であったことを考慮すれば、牧畜労働生産性の格 差もやや縮小しているとみることができる。

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2000年 2017年 ヒツジ ヤギ ウマ ウシ ラクダ ヒツジ ヤギ ウマ ウシ ラクダ 2000年 2017年 家畜 P 西部地区 23. 2% 21. 6% 30. 0% 33. 4% 17. 8% 18. 0% 27. 5% 22. 9% 28. 2% 17. 2% 18. 6% 23. 9% 114 303 3. 1% 5. 9% バヤンウルギー 3. 5% 3. 2% 4. 4% 5. 1% 2. 6% 3. 1% 2. 2% 3. 3% 3. 6% 2. 4% 3. 7% 1. 2% 71 210 2. 9% 6. 6% ゴビアルタイ 4. 7% 4. 4% 6. 1% 9. 8% 3. 5% 1. 9% 9. 9% 4. 0% 8. 6% 3. 1% 1. 9% 9. 7% 131 380 3. 1% 6. 5% ザブハン 5. 7% 5. 1% 7. 6% 5. 7% 5. 2% 5. 1% 2. 7% 6. 1% 4. 9% 5. 3% 4. 4% 1. 7% 151 331 2. 8% 4. 7% オブス 4. 2% 4. 2% 6. 2% 5. 1% 2. 8% 3. 4% 5. 6% 5. 2% 4. 6% 3. 0% 4. 0% 5. 4% 102 311 3. 6% 6. 8% ホブド 5. 1% 4. 7% 5. 6% 7. 7% 3. 7% 4. 4% 7. 1% 4. 4% 6. 5% 3. 4% 4. 6% 5. 9% 130 301 3. 0% 5. 0% ハンガイ地区 38. 6% 38. 0% 33. 6% 34. 4% 38. 5% 46. 2% 18. 6% 37. 6% 35. 2% 36. 5% 44. 1% 20. 3% 141 338 3. 4% 5. 3% アルハンガイ 9. 6% 9. 6% 7. 0% 5. 3% 10. 3% 13. 8% 0. 2% 9. 4% 5. 2% 9. 7% 14. 3% 0. 3% 148 374 3. 4% 5. 6% バヤンホンゴル 6. 5% 6. 2% 6. 1% 11. 6% 5. 3% 5. 1% 11. 5% 4. 6% 10. 0% 4. 6% 5. 5% 12. 5% 1, 203 4, 881 3. 1% 8. 6% ボルガン 6. 1% 5. 6% 5. 5% 3. 3% 7. 1% 7. 3% 0. 3% 6. 0% 3. 7% 6. 6% 6. 5% 0. 3% 218 432 3. 0% 4. 1% オルホン 0. 6% 0. 3% 0. 6% 0. 5% 0. 4% 0. 8% 0. 0% 0. 2% 0. 1% 0. 3% 0. 5% 0. 0% 10 11 -1. 1% 0. 7% ウブルハンガイ 6. 6% 8. 4% 7. 6% 7. 1% 6. 7% 5. 6% 5. 1% 8. 8% 8. 7% 9. 2% 6. 8% 6. 6% 138 418 4. 9% 6. 7% フブスグル 9. 2% 8. 0% 6. 8% 6. 6% 8. 6% 13. 4% 1. 4% 8. 6% 7. 3% 6. 1% 10. 5% 0. 5% 136 283 2. 6% 4. 4% 中部地区 21. 8% 22. 3% 22. 4% 23. 3% 24. 5% 15. 9% 46. 0% 22. 2% 24. 2% 22. 9% 17. 5% 51. 5% 178 409 3. 6% 5. 0% ゴビスンベル 0. 4% 0. 6% 0. 4% 0. 4% 0. 5% 0. 3% 0. 1% 0. 7% 0. 7% 0. 6% 0. 3% 0. 2% 81 275 5. 9% 7. 5% ダルハンオール 0. 7% 0. 6% 0. 7% 0. 5% 0. 5% 1. 0% 0. 0% 0. 5% 0. 3% 0. 4% 1. 1% 0. 0% 28 68 2. 6% 5. 3% ドルノゴビ 3. 7% 2. 9% 3. 3% 3. 4% 4. 5% 2. 9% 9. 2% 2. 9% 3. 3% 3. 4% 1. 7% 9. 4% 121 265 2. 1% 4. 7% ドンドゴビ 3. 6% 4. 4% 4. 8% 4. 3% 4. 3% 1. 4% 6. 5% 5. 6% 6. 0% 4. 1% 1. 7% 8. 5% 100 252 4. 8% 5. 6% ウムヌゴビ 4. 0% 3. 4% 2. 9% 8. 5% 3. 7% 0. 8% 28. 8% 2. 0% 6. 5% 2. 5% 0. 6% 32. 5% 410 455 2. 5% 0. 6% セレンゲ 2. 4% 2. 8% 2. 4% 1. 6% 1. 7% 3. 5% 0. 2% 2. 3% 1. 8% 2. 4% 5. 0% 0. 1% 152 432 4. 6% 6. 3% トゥブ 7. 1% 7. 5% 7. 9% 4. 7% 9. 4% 5. 9% 1. 1% 8. 2% 5. 6% 9. 5% 7. 1% 0. 8% 3, 588 7, 176 3. 8% 4. 2% 東部地区 15. 5% 17. 1% 13. 3% 8. 4% 18. 4% 18. 4% 7. 9% 16. 7% 12. 0% 22. 3% 17. 8% 4. 2% 212 519 4. 1% 5. 4% ドルノド 3. 5% 4. 1% 3. 2% 1. 3% 4. 0% 4. 6% 1. 8% 3. 3% 2. 2% 6. 4% 4. 7% 1. 3% 206 524 4. 4% 5. 6% スフバートル 6. 0% 5. 9% 5. 2% 3. 5% 7. 2% 6. 8% 3. 8% 6. 0% 4. 2% 8. 0% 5. 4% 1. 9% 208 442 3. 4% 4. 5% ヘンティ 6. 0% 7. 1% 5. 0% 3. 6% 7. 2% 7. 0% 2. 2% 7. 3% 5. 7% 7. 9% 7. 6% 1. 0% 221 605 4. 5% 6. 1% ウランバートル 0. 9% 1. 0% 0. 7% 0. 6% 0. 8% 1. 6% 0. 0% 0. 6% 0. 4% 1. 1% 2. 0% 0. 1% 104 370 3. 8% 7. 7% 総計 6, 194万 頭 11, 080万 頭 13, 876万 頭 10, 270万 頭 2, 661万 頭 3, 098万 頭 323万 頭 30, 110万 頭 27, 347万 頭 3, 940万 頭 4, 388万 頭 434万 頭 147 365 3. 5% 5. 5% 家畜総数 五畜頭数(全国シェア) 労働生産性[ P] 年平均増加率 (全国シェア) 2000年 2017年 (頭/ 人) 表3 家畜総数・五畜頭数・牧畜労働生産性の地域分布 出所:表1に同じ。 注:家畜総数は小型家畜換算による数値。また年平均増加率は2000年から2017年にかけての数値。

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3.地域経済の収束性と経済水準の格差 これまで見てきたように、モンゴルの地域経済は農牧部門の比重が高い アイマグが多く、一人当たりの GRP や牧畜労働生産性にはバラツキがあ るが、その程度は過去から現在にかけてやや小さくなっているように見え る。ここでは、アイマグ別の発展水準にある種の収束性があるのか否かに ついて考察することにしよう。 経済成長論には、「貧困の状態にある経済は豊かな経済より、一人当た りでより急速に成長する傾向がある」という仮説がある4。初期時点にお ける一人当たりの経済水準に対して、その後の年平均成長率をプロットす ることで、両者の間に負の相関があれば、すなわち初期時点でより貧しい 状態である経済はより急速に成長する傾向があれば、この仮説が成り立つ と判断することができる。 ここで、2000 年時点での一人当たり実質 GRP の対数値を横軸に、一人 当たり実質 GRP の 2000 年から 2017 年までの年平均成長率を縦軸にとっ たものを図1に、また 2000 年の牧畜労働生産性の対数値を横軸に、牧畜 労働生産性の 2000-17 年平均増加率を縦軸にとったものを図2に示す5 直観的には、GRP に関する収束性については負の相関がありそうである が、牧畜労働生産性のそれは相関があるとはいえない。 最後に、地域間の経済水準格差の大きさを数値化した「ジニ係数」を示 すことにする。この係数は1に近ければ近いほど、不平等度が大きいこと を意味する。一人当たり実質 GDP に対する一人当たり GRP によるジニ 係数をプロットした図3を見ると、2000 年から 17 年にかけてモンゴルの 経済水準は順調に上昇していく。その間、アイマグ間の経済水準格差は 2007 年まで拡大していったが、それをピークに 15 年まで縮小していき、 その後の 16 年、17 年と格差が再び拡大していることが明らかとなった。

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地域名 一人当たり一人当たり実質GDP(2000年基準)の年平均成長率 2000年 2000-17 1 バヤンウルギー 5.5 5.3% X Y 2 ゴビアルタイ 5.8 6.3% 4.3 6.6% 3 ザブハン 5.3 8.1% 4.9 6.5% 4 オブス 5.5 6.5% 5.0 4.7% 5 ホブド 5.7 5.4% 4.6 6.8% 6 アルハンガイ 6.0 4.5% 4.9 5.0% 7 バヤンホンゴル 5.7 7.0% 5.0 5.6% 8 ボルガン 6.1 4.2% 7.1 8.6% 9 オルホン 7.1 6.7% 5.4 4.1% 10 ウブルハンガイ 5.4 7.9% 2.3 0.7% 11 フブスグル 5.8 4.8% 4.9 6.7% 12 ゴビスンベル 5.7 7.9% 4.9 4.4% 13 ダルハンオール 5.6 6.6% 4.4 7.5% 14 ドルノゴビ 5.5 7.3% 3.3 5.3% 15 ドンドゴビ 5.5 9.1% 4.8 4.7% 16 ウムヌゴビ 5.8 10.3% 4.6 5.6% 17 セレンゲ 5.8 6.8% 6.0 0.6% 18 トゥブ 5.7 7.2% 5.0 6.3% 19 ドルノド 5.5 12.8% 8.2 4.2% 20 スフバートル 5.9 8.0% 5.3 5.6% 21 ヘンティ 5.8 5.2% 5.3 4.5% 22 ウランバートル 6.5 3.8% 5.4 6.1% 4.6 7.7% 8.2 0.086 X Y 2.3 0.006 X 1 概要 Y 0.14469 1 回帰統計 重相関 R 0.35984 重決定 R2 0.129485 補正 R2 0.085959 標準誤差 0.019949 観測数 22 分散分析表 自由度 変動 分散 測された分散 有意 F 回帰 1 0.001184 0.001184 2.974904 0.099987 残差 20 0.007959 0.000398 合計 21 0.009143 係数 標準誤差 t P-値 下限 95% 上限 95% 下限 95.0%上限 95.0% 切片 0.177579 0.06311 2.813812 0.010724 0.045934 0.309223 0.045934 0.309223 一人当たり実質 -0.01877 0.010883 -1.72479 0.099987 -0.04147 0.003931 -0.04147 0.003931 一人当たり実質GDP(2000年(2000年基準)の年平均成長率 一人当たり実質 1 一人当たり実質 -0.35984 1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 0.0% 2.0% 4.0% 6.0% 8.0% 10.0% 12.0% 14.0% 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 7.5 一人当たり実質 G RP の年平均成長率 (2000 -17 年 ) 2000年の一人当たり実質GRPの対数値 1 バヤンウルギー 2 ゴビアルタイ 3 ザブハン 4 オブス 5 ホブド 6 アルハンガイ 7 バヤンホンゴル 8 ボルガン 9 オルホン 10 ウブルハンガイ 11 フブスグル 12 ゴビスンベル 13 ダルハンオール 14 ドルノゴビ 15 ドンドゴビ 16 ウムヌゴビ 17 セレンゲ 18 トゥブ 19 ドルノド 20 スフバートル 21 ヘンティ 22 ウランバートル 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 0.0% 1.0% 2.0% 3.0% 4.0% 5.0% 6.0% 7.0% 8.0% 9.0% 10.0% 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 牧畜労働生産性 の年平均成長率 (2000 -17 年 ) 2000年の牧畜労働生産性の対数値 1バヤンウルギー 2ゴビアルタイ 3ザブハン 4オブス 5ホブド 6アルハンガイ 7バヤンホンゴル 8ボルガン 9オルホン 10ウブルハンガイ 11フブスグル 12ゴビスンベル 13ダルハンオール 14ドルノゴビ 15ドンドゴビ 16ウムヌゴビ 17セレンゲ 18トゥブ 19ドルノド 20スフバートル 21ヘンティ 22ウランバートル X Y log y 年平均成長率 2000年 2000-17 log y 年平均成長率 地域名 一人当たり一人当たり実質GDP(2000年基準)の年平均成長率 2000年 2000-17 1 バヤンウルギー 5.5 5.3% X Y 2 ゴビアルタイ 5.8 6.3% 4.3 6.6% 3 ザブハン 5.3 8.1% 4.9 6.5% 4 オブス 5.5 6.5% 5.0 4.7% 5 ホブド 5.7 5.4% 4.6 6.8% 6 アルハンガイ 6.0 4.5% 4.9 5.0% 7 バヤンホンゴル 5.7 7.0% 5.0 5.6% 8 ボルガン 6.1 4.2% 7.1 8.6% 9 オルホン 7.1 6.7% 5.4 4.1% 10 ウブルハンガイ 5.4 7.9% 2.3 0.7% 11 フブスグル 5.8 4.8% 4.9 6.7% 12 ゴビスンベル 5.7 7.9% 4.9 4.4% 13 ダルハンオール 5.6 6.6% 4.4 7.5% 14 ドルノゴビ 5.5 7.3% 3.3 5.3% 15 ドンドゴビ 5.5 9.1% 4.8 4.7% 16 ウムヌゴビ 5.8 10.3% 4.6 5.6% 17 セレンゲ 5.8 6.8% 6.0 0.6% 18 トゥブ 5.7 7.2% 5.0 6.3% 19 ドルノド 5.5 12.8% 8.2 4.2% 20 スフバートル 5.9 8.0% 5.3 5.6% 21 ヘンティ 5.8 5.2% 5.3 4.5% 22 ウランバートル 6.5 3.8% 5.4 6.1% 4.6 7.7% 8.2 0.086 X Y 2.3 0.006 X 1 概要 Y 0.14469 1 回帰統計 重相関 R 0.35984 重決定 R2 0.129485 補正 R2 0.085959 標準誤差 0.019949 観測数 22 分散分析表 自由度 変動 分散 測された分散 有意 F 回帰 1 0.001184 0.001184 2.974904 0.099987 残差 20 0.007959 0.000398 合計 21 0.009143 係数 標準誤差 t P-値 下限 95% 上限 95% 下限 95.0%上限 95.0% 切片 0.177579 0.06311 2.813812 0.010724 0.045934 0.309223 0.045934 0.309223 一人当たり実質 -0.01877 0.010883 -1.72479 0.099987 -0.04147 0.003931 -0.04147 0.003931 一人当たり実質GDP(2000年(2000年基準)の年平均成長率 一人当たり実質 1 一人当たり実質 -0.35984 1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 0.0% 2.0% 4.0% 6.0% 8.0% 10.0% 12.0% 14.0% 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 7.5 一人当たり実質 G RP の年平均成長率 (2000 -17 年 ) 2000年の一人当たり実質GRPの対数値 1 バヤンウルギー 2 ゴビアルタイ 3 ザブハン 4 オブス 5 ホブド 6 アルハンガイ 7 バヤンホンゴル 8 ボルガン 9 オルホン 10 ウブルハンガイ 11 フブスグル 12 ゴビスンベル 13 ダルハンオール 14 ドルノゴビ 15 ドンドゴビ 16 ウムヌゴビ 17 セレンゲ 18 トゥブ 19 ドルノド 20 スフバートル 21 ヘンティ 22 ウランバートル 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 0.0% 1.0% 2.0% 3.0% 4.0% 5.0% 6.0% 7.0% 8.0% 9.0% 10.0% 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 牧畜労働生産性 の年平均成長率 (2000 -17 年 ) 2000年の牧畜労働生産性の対数値 1バヤンウルギー 2ゴビアルタイ 3ザブハン 4オブス 5ホブド 6アルハンガイ 7バヤンホンゴル 8ボルガン 9オルホン 10ウブルハンガイ 11フブスグル 12ゴビスンベル 13ダルハンオール 14ドルノゴビ 15ドンドゴビ 16ウムヌゴビ 17セレンゲ 18トゥブ 19ドルノド 20スフバートル 21ヘンティ 22ウランバートル 図 1 アイマグ別 GRP の収束性 図 2 アイマグ別牧畜労働生産性の収束性

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おわりに 本稿では、モンゴルの 22 地域別の経済関連統計を整理し、地域経済の 基本構造と牧畜部門の発展趨勢を示した。首都であるウランバートルや鉱 業が盛んなアイマグ以外の地域では牧民比率や第 1 次産業比率が高く、一 人当たり GRP の水準は低い。2000 年と 2017 年の統計データの比較にお いて、各アイマグの経済規模が拡大していることは確かなことであり、一 人当たり GRP に関する相対的な格差は縮小しているように見えた。 また、一人当たり GRP に関する収束性については直観的には負の相関 が確認された。さらにアイマグ間の経済水準格差をみるためにジニ係数を 測定すると、2007 年から 15 年にかけて格差は縮小傾向にあったことが示 された。ただその後のジニ係数は 2016 年に 0.20、17 年に 0.25 へと上昇し 図 3 一人当たり実質 GDP とジニ係数の趨勢 一人当たり実質GDP ジニ係数 X Y '00 1,600 0.227 '01 1,633 0.173 '02 1,693 0.239 '03 1,793 0.265 '04 1,962 0.288 '05 2,079 0.292 '06 2,229 0.408 '07 2,425 0.415 '08 2,603 0.300 '09 2,532 0.303 '10 2,650 0.322 '11 3,056 0.300 '12 3,373 0.264 '13 3,699 0.221 '14 3,921 0.214 '15 3,946 0.177 '16 3,995 0.197 '17 4,207 0.249 '00 '01 '02 '03'04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15'16 '17 0.000 0.050 0.100 0.150 0.200 0.250 0.300 0.350 0.400 0.450 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 一人当たり GR Pに 基づく ジニ係 数 一人当たり実質GDP(USドル)

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1. 執筆時点において、モンゴル国家統計局『モンゴル統計年鑑』(National Statistical Office of Mongolia, Mongolian Statistical Yearbook)では、2017年 までの情報しか得ることができなかった。そのため、2018年の数値について は、アジア開発銀行(Asian Development Bank:ADB)Key Indicators for Asia and the Pacific 2019を参照した。

2. モンゴル国の行政区分とその地理的な位置関係については拙著(2018)を参 照されたい。 3. モンゴルでは、2種類の「家畜換算係数」が存在する。一方は家畜からの食 肉等の生産量を把握するために用いられる「大型家畜換算係数」、他方は家 畜の飼料必要量を把握するために用いられる「小型家畜換算係数」である。 「小型家畜換算係数」とは、ウマに7、ウシに6、ラクダに5、ヒツジに1、 そしてヤギに0.9のウェイトを付したもの。ここでは各家畜数にそのウェイト を掛け、合計したものを家畜総数としている。家畜換算係数については、小 宮山(2010)を参照されたい。

4. これを「絶対的収束性」と呼ぶ(Barro and Sala-i-Martin (2004)を参照)。モ ンゴルの地域間の収束性を分析したものとして、ビヤンバジャウ(2007)を 挙げることができる。 5. モンゴル国家統計局『モンゴル統計年鑑』では、アイマグ別GRPの実質値や デフレーターなどは入手できないが、アイマグ別の消費者物価指数(CPI)は 掲載されている。本稿では、アイマグ別GRPの名目値と2000年を基準とした CPIを用いて実質GRPを計測することにする。 ており、この意味での格差は増大していることが確認された。 アイマグ間における経済水準の格差や、収束性などについては、さらに データを整理することで高度な計量経済分析を行うことができるだろう。 より詳細な分析については、今後の研究課題としたい。 *本稿は平成31年度札幌大学研究助成(個人研究)を受けて行った研究成果の一部である。

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参考文献・参考資料

Asian Development Bank, Key Indicators for Asia and the Pacific 2019.

Barro, R.J. and Sala-i-Martin, X.(2004)Economic Growth[2nd Edition], MIT

Press(大住圭介訳『内生的経済成長論Ⅰ』[第2版]九州大学出版会, 2006年). National Statistical Office of Mongolia, Mongolian Statistical Yearbook(various

issues), Ulaanbaatar, Mongolia.

小宮山博(2010)「モンゴル国のラクダ飼養の現状―ウムヌゴビ県の事例から―」『日本 とモンゴル』第44巻第2号,pp. 43-52. 平井貴幸(2018)「モンゴル牧畜業の生産性変化の計測」『札幌大学女子短期大学部 紀要』第66号,pp.65-78. ビヤンバジャウ・エンクーアムガラン(2007)「モンゴル国の経済成長の実証分析」『アジ ア経済』第48巻第10号,pp. 2-24.

参照

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著者 研究支援部研究情報システム課.

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