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アルゼンチン -- 南米におけるクラシックの殿堂コロン劇場 (特集 途上国のエンターテイメント事情)

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Academic year: 2021

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アルゼンチン -- 南米におけるクラシックの殿堂コ

ロン劇場 (特集 途上国のエンターテイメント事情)

著者

宇佐見 耕一

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

203

ページ

22-23

発行年

2012-08

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00003904

(2)

  アルゼンチンでのエンターテイ ンメントといえばアルゼンチンタ ンゴが有名であり、ブエノスアイ レスの下町サンテルモ地区には外 国人観光客向けのタンゴ劇場か ら、地元の人の集うタンゴバーが 数多くみられる。日本からの観劇 ツアーも多い。タンゴと並んでブ エノスアイレスの観光名所に世界 三大オペラ座のひとつとされるコ ロン劇場がある。 コロン劇場では、 クラシック音楽のコンサートの他 にバレエやオペラが開催され、ク ラシック部門の充実度はラテンア メリカ随一である。   ブエノスアイレスの中心を通る セリート通りとリベルタ通りの間 に一九〇八年に建設されたコロン 劇場は、ブエノスアイレスの人々 の自慢である。地元の人は、ミラ ノのスカラ座とパリのオペラ座に 並ぶ世界の三大オペラ座のひとつ であるという。もっとも、世界三 大オペラ座はスカラ座とオペラ座 のほかにウィーンのウィーン国立 歌劇場であるという人も多く、そ の他にも著名なオペラ座は多数あ り 、 その定義は定まっていない 。 このコロン劇場は歌劇団、バレエ 団および劇団付きオーケストラと ブエノスアイレス・フィルハーモ ニーの本拠地となっており、多彩 な公演が行われている。クラシッ クというと入場料が高く、高所得 者や中所得者が観劇者の中心であ るが、天井桟敷は非常に安い価格 に設定されており、庶民でも観劇 できるようになっている。筆者は タクシーで運転手が熱心にオペラ の出し物の話をしていたのを数度 経験している。また、近年ブラジ ルからの観光客も多く来場してい るように思われる。コロン劇場な らびにバレエ団等はブエノスアイ レス市の外郭団体となっている 。 そのため、コンサートやバレエは コロン劇場以外でも市内にいくつ かある公会堂で安価な価格で公演 を行っており、クラシックはブエ ノスアイレス市民の身近な存在と なっている。また、コロン劇場か ら数ブロックのところにコリセオ 劇場 が あ り、 こ ち らも で も コ ン サー トやオペラが上演されている。   コロン劇場がブエノスアイレス 市により建設された一九世紀末か ら二〇世紀初頭にかけてアルゼン チンはパンパ平原で生産される農 牧産品の輸出により経済はひとつ の黄金期を迎え、当時のアルゼン チンの推定一人当たりGDPは ヨーロッパの主要国並みであっ た。この時代にブエノスアイレス の街並みもヨーロッパ風になり 、 コロン劇場はそうしたヨーロッパ 風の街並みの不可欠な一部となっ ていった。ヨーロッパから遥かに 遠い南米のラプラタ川の河畔に 、 ヨーロッパに負けないオペラ座を 建設することは、ヨーロッパから 移民してきた人々の夢であったに 違いない。   コロン劇場の建設はブエノスア イレス市の委嘱により一八九〇年 に始まり、三人の建築家が関わり を持った。前任者二名の建築家の 死 去 の 後 、 ベ ル ギ ー 人 建 築 家 ジュールス・ドルマルが事業を引 継ぎ、一九〇八年に劇場を完成さ せた 。建物はイタリアのネオル ネッサンス様式とフランスのバ ロック様式の混合と言われてい る。 正面入り口から劇場に入ると、 彫刻と絵画で装飾されたサロンが いくつかある。さらに階段を上が ると、 豪華絢爛な装飾が施された、 座席収容人員が約二五〇〇人の ホールに至る 。内部は平土間座 、 側面はパルコと呼ばれる桟敷席と なっており、桟敷席は六名分の座 席がある。その上に天井桟敷があ る。コロン劇場は二〇〇六年から 開場一〇〇周年を期した大規模改 修工事に入り、二〇一〇年に再開 している。改修期間も近隣のコリ セオ劇場を中心に、市内の劇場で コロン劇場によるコンサートやオ

アル

チン

南米

殿堂

宇佐見

特 集

途上国の エンターテイメント 事情

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ペラ と バ レエの 公 演 は 続 け ら れ た 。   コロン劇場は、一九〇八年の五 月二五日のアルゼンチン独立記念 日にベルディ作のオペラ・アイー ダで正式に幕を開けた。一九二五 年にブエノスアイレス市は、劇団 付きオーケストラ、歌劇団、バレ エ団およびスタッフを持つに至っ た。また同劇場には、コロン劇場 高 等 芸 術 院 ︵ I S A Instituto Superior de Arte T eatro Colón ︶ が付置され、 同芸術院にはバレエ、 声楽、オーケストラ ・ アカデミー、 オペラ振り付け、オペラ音楽、演 出コースがあり、コロン劇場で活 躍する芸術家のみならず、アルゼ ンチンのクラシック芸術の養成機 関の役割を果たしている。   公演される演目は、既に定評の あるクラシックが中心である。二 〇一二年度のブエノスアイレス ・ フィルハーモニーの定期公演は 、 年一三回予定されている。公演曲 をみると 、ショスターコビッチ 、 エルガー、プロコフィエフ、マー ラー 、シベリウス 、ドビッシー 、 リヒャルト・シュトラウス、ベー トーベン、ブルックナーなど名の 通った作曲家の作品が中心であ る。とはいえ、演目のなかには現 代タンゴの第一人者であるピアソ ラの作品も二回の演奏会で取りあ げられている。 ブエノスアイレス ・ フィルハーモニーは職人肌の奏者 がそろったオーケストラである が、ブエノスアイレスという移民 の故国ヨーロッパから遠く離れた ボヘミアン的雰囲気のある街で聴 くその演奏は、深く心に染みるも のがあった。指揮者はアルゼンチ ン人に限らず、他のラテンアメリ カや欧米から招聘されて振る場合 も多々みられる。また、一月から 二月にかけての夏期のオフシーズ ンには、ブエノスアイレス市内の 公園で市民に向けた無料の野外コ ン サ ー トが行 われ る場 合があ っ た。   二〇一二年度のオペラの公演 は、九回の公演が予定され、一回 の公演は通常五日間行われる。ベ ルディなどのクラシックなものが 中心であるが、アルゼンチンでは 初演される作品も披露されてい る。舞台監督はアルゼンチン人の 他に欧米から招聘される場合も多 い。出演者は、主役級では欧米か らの招聘者に加えてコロン劇場高 等芸術院出身者も多く、コロン劇 場歌劇団が中心となっている。伴 奏はコロン劇場付き管弦楽団が行 う。なお、 コロン劇場管弦楽団は、 オペラとバレエの伴奏が多く、通 常オーケストラピットのなかで演 奏しているが、年に数度独自の演 奏会も行っている。   バレエの公演も、二〇一二年の 演目をみると七回の公演が予定さ れており、一演目は通常五日間公 演される 。カルメン 、ラ ・シル フィード、眠れる森の美女、もと もとはオペラ曲であるがチャイコ フスキーのオネーギンなどクラ シックな作品が中心となる。とは いえ、音楽はクラシックであるが 振り付けは独自のものであったり する。振り付け師も欧米から招聘 したりする場合が多い。ダンサー も主役級は欧米からの招聘者が 多々みられるが、ほとんどがコロ ン劇場高等芸術院出身者であり 、 プリンシパルのカリーナ ・オル メードとアリシア・クアダリも同 芸術院出身である。また、同バレ エ団には世界的に名声を博した男 性ダンサーのフリオ・ボカとマク シミリアーノ・ゲーラが名誉ダン サーとなっている。伴奏はコロン 劇場付き管弦楽団が行う。なおブ エノスアイレス市は、クラシック バレエのコロン劇場バレエ団の他 にモダンバレエ団も持っている 。 有名な演目中心のコロン劇場バレ エ団がほぼ満席であるのに対し て、市立サンマルティン劇場等で 公演するモダンバレエ団は週末で も空席が目立つこともある。とは いえ、同じ年にコロン劇場バレエ 団がベートーベンの交響曲第七番 を振り付けて演じたのに対し、モ ダンバレエ団もショパンのピアノ 協奏曲第一番を振り付けて演じた ことがあった。モダンバレエの方 は 、 数こそ少ないが熱心な フ ァ ン の熱 い視 線が注がれ て い る 。   このようにコロン劇場は、コン サート、オペラ、バレエの公演で 南米の中心であり、アルゼンチン の芸術の水準向上に貢献してい る。日本ではアルゼンチンといえ ば 、タンゴのみが注目されるが 、 ブエノスアイレスはこうしたクラ シックが盛んであることも知って いただきたい。また、コロン劇場 は、劇場自体が芸術品であり、国 の記念建造物に指定されている 。 劇場をみるツアーもあるので、劇 場だ け で も鑑賞する こ と が で き る 。 ︵うさ み  こう いち /ア ジ ア 経 済 研 究 所  ラテ ン ア メリカ研 究 グ ル ー プ︶ ︽参考︾ http://teatrocolon.org.ar/es/ index.php?id=home

アルゼンチン

― 南米におけるクラシックの殿堂コロン劇場 ―

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