韓国オンラインゲーム産業を牽引する二人の企業家
(特集 経済・政治・社会の発展における企業家・経
営者の役割)
著者
安倍 誠
権利
Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア
経済研究所 / Institute of Developing
Economies, Japan External Trade Organization
(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp
雑誌名
アジ研ワールド・トレンド
巻
201
ページ
4-5
発行年
2012-06
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
URL
http://hdl.handle.net/2344/00003945
二〇一一年一二月一四日に韓国 のオンラインゲーム会社であるネ クソンが東証第一部に上場した 。 約九八〇億円と同年の日本国内市 場では最大規模の新規上場であっ た。世界のゲーム産業において韓 国企業のプレゼンスが高まってい ることを端的に示すニュースと言 える。本稿では成長を続ける韓国 オンラインゲーム産業を牽引して きた二人の企業家を紹介したい。
●ネクソンのキムジョンジュ
ネクソンを率いるキムジョン ジュは一九六八年生まれ、高校生 の頃からパソコンに親しんでいた キムジョンジュはソウル大学コン ピュータ学科に入学、卒業後は理 工系大学院である韓国科学技術院 ︵KAIST︶に進学した 。ソウ ル大、KAISTを通じた同期生 にソンジェギョンがいた 。ソン ジェギョンは在学中からパソコン 通信によるテキスト形式のオンラ インゲームの開発で頭角を現して いた。二人はグラフィックゲーム の開発で意気投合し、卒業後しば らくしてネクソンを立ち上げた 。 キムジョンジュは社長としてプロ ジェクト全体の統括や国内初の ウェブ制作事業の立ち上げなどに より予算獲得に奔走し、副社長の ソンジェギョンはプログラミング およびグラフィック制作を行った という。一九九六年、ついにネク ソ ン は 世 界 初 の M M O R P G ︵ Massively Multiplayer Online Role-Playing Game ︶ である ﹁風 の王国﹂を完成させた。風の王国 はパソコン通信の世界で爆発的な ヒットを記録した。 間もなく開発者のソンジェギョ ンはネクソンを去るが、その後キ ムジョンジュは経営者としての才 能を開花させた。まずパソコン通 信を基盤としていた風の王国をリ ニューアルしてインターネット版 を発表した。一九九七年の通貨危 機直後、韓国ではブロードバンド でつないだパソコンを揃えた﹁P C房﹂と呼ばれるネットカフェが 安価でゲームを楽しめる場所とし て急速に普及したが、PC房のコ ンテンツとして風の王国は大ヒッ トを記録した。 さらに、この時期に生まれた多 くのゲーム会社がひとつのゲーム を時間をかけて製作 、販売して いったのに対して、ネクソンは幅 広いユーザーを獲得するために多 様なゲームを短期間にリリースす る体制を目指した。そのために自 社の組織、人員を整備して﹁闇の 伝説﹂ 、﹁ エランシア﹂といったM MORPGだけでなくチェーシン グゲーム ﹁カートレイダー ﹂、 ク イズゲーム﹁クイズクイズ﹂など を次々に開発するとともに、中小 のゲームメーカーを次々に買収し ていった。そして自社のポータル サイトにアクセスすれば誰でも自 分の嗜好にあったゲームを楽しめ るような体制を整えた。ネクソン はこのビジネスモデルを日本、中 国など海外でも展開して成功をみ せている。積極的な企業買収の結 果、ネクソンは多くの系列企業を 抱えたグループとなり、キムジョ ンジュは持株会社ネクソンの会長 として個々のゲーム開発にはタッ チせずにグループ全体を統括する 立場にある。●
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ソフトのキムテクジン
一九六七年生まれのキムテクジ ンはアップルⅡをいじるのに夢中 な高校時代を過ごした。ソウル大 学電子工学科に入学後、はやくも ワープロソフト ﹁アレアハングル﹂ の開発に参加するなどコンピュー タプログラミングの世界で頭角を 現した。大学院卒業後に現代電子 に入社、アメリカで研修期間を過 ごした後はポータルサイトの開発 などを行っていた。一九九六年に 独立して NCソフトを設立、創業 まもなくは大企業向けのインター 経 済・政 治・社 会 の 発 展 に お け る 企 業 家・経 営 者 の 役 割安倍
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アジ研ワールド・トレンド No.201 (2012. 6)ネット環境の構築サービスなどで 事業を拡大したが、新規事業とし てゲーム開発に乗り出すために パートナーを探していた。ちょう どこのとき、ネクソンを離れたソ ンジェギョンがアイネット社で新 たなMMORPG ﹁リネージュ ﹂ の開発をスタートさせていたが 、 通貨危機により経営不振に陥った アイネット社は開発打ち切りを決 定してしまった 。﹁アレアハング ル﹂の開発などを通じてソンジェ ギョンと知己であったキムテクジ ンは、自らの会社でリネージュの 開発を行うためにソンジェギョン を含むアイネット社のゲーム開発 チームを買収した。 NCソフトはパソコン通信基盤 であったリネージュをインター ネット基盤に再構築し、そのため にキムテクジンはサーバ関連の開 発に没頭した 。一九九八年にリ ネージュが完成すると、PC房で 楽しめる新たなコンテンツとして 受け入れられ、大ヒットを記録し た。ソンジェギョンはやはりしば らくしてNCソフトを去ることに なるが、NCソフトは企業として その後も成長を続けた。NCソフ トが成長した最大の要因はオンラ インゲーム産業の収益モデルを確 立したことである。NCソフトは PC房を事実上の販売代理店・加 盟店として定額料金を徴収する方 法を初めて取り入れた。さらにア イテムと呼ばれるゲーム上のキャ ラクターに課金するシステムを導 入してゲーム自体を無料化する道 を開いた。 ネクソンと同様にNCソフトも 積極的に海外展開を行った。事業 開始当初から海外市場に目を向け ていたキムテクジンは二〇〇一年 にはリネージュの北米でのサービ スを開始した。さらに同年にアメ リカでロールプレイイングゲーム 製作の第一人者であるリチャー ド・ギャリオットを迎え入れるこ とに成功した。ギャリオットの支 援の下で買収したアレネットが製 作した﹁ギルドウォーズ﹂は世界 で六〇〇万枚を超えるヒット作と なった。他方でNCソフトは社長 キムテクジン自ら陣頭指揮して ﹁リネージュ 2﹂ 、﹁タワーオブア イアン﹂を開発して北米、さらに オンラインゲームゲーム市場が急 拡大をみせた中国で大ヒットさ せ、MMORPG分野で世界有数 の企業にまで成長を遂げることに なった。