Title
座間味・阿嘉島の地形地質と赤士流出
Author(s)
渡辺, 康志
Citation
地域研究 = Regional Studies(1): 127-131
Issue Date
2005-06-30
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/5485
座間味・阿嘉島の地形地質と赤士流出
渡辺康志*
Gedogy,LandfOrmandRedSoilRun-offonZamamiIslandandAkalslandintheRyukyuIslands YasushiWatanabe 本調査は近海離島調査環境班の調査のうち,慶良間諸島の地形・地質・土壌分野の基礎的野外調査である。本調査地 域は琉球列島でも有数のサンゴ礁が健全な地域であり,沖縄島に隣接していることもあり,今後様々な観光開発等が行 われる可能性がある。地形・地質・土壌調査は,このような陸域での開発行為による「赤土流出」の危険性を予測する ための重要な環境情報である。 キーワード:慶良問諸島,地形地質,土壌,赤土流出 島は周辺地域の沈降により形成きれた島々であること を示している。以下,土地分類基本調査(沖縄県1986) による地形,地質,土壌の概略を示す。 (1)地形 慶良間諸島の島々の大部分は山地に区分きれ,小規 模に谷底低地や海岸低地が存在する。渡嘉敷島は諸島 中最大で,島は南北に細長く最高峰は島の北部の赤間 山(227.3m)である。古第三系砂岩が広く分布し,そ の南側には千枚岩が主体をなして丘陵地形が発達して いる。座間味島は諸島中2番目に大きな島である。山地 は島の北西部の海岸に面し最高峰は大岳(160.7m)で, 古第三系砂岩が広く分布するが,島の南西部は千枚岩 によって覆われている。その他の島々もほぼこの両島 と地質地形的に類似していて,山地が海岸まで迫り, 大部分急崖急斜面を呈し,河川の発達は見られない。 (2)地質 慶良間諸島の島々をつくる地層は緑色岩類,砂岩, 粘板岩一千枚岩の3岩相に区分されている。地層の走 行・傾斜は一般に北西一南東方向,南西傾斜である。 緑色岩類一屋嘉比島,久場島,奥武島の全島,慶留 間島の大部分,阿嘉島,座間味島,渡嘉敷島の一部に 分布する,緑色~暗緑色を呈する塩基性岩起源の千枚 1.前年調査の概要と本年度調査の目的 前年までの近海離島調査(渡辺2002)では,渡嘉敷 島の地質・土壌調査により,その分布の特徴として以 下の状況が判明した。 ①渡嘉敷島の大部分の土壌は黄色土や表層グライ系 赤黄色土よりなり,士層は非常に薄く,沖縄島中 北部の土壌の分布とは大きく異なる。 ②渡嘉敷島の赤土分布は,母材である地質によるこ とが判明した。地表踏査の結果,島中央部付近の 粘板岩分布地域では赤土の分布が確認できた。 ③このような土壌分布が,慶良問海域の赤土流出の 少なさ,ざらにはサンゴ礁の健全ざに役立ってい ると推定きれた。 2003年度の調査は,座間味・阿嘉島の地表調査から, 座間味・阿嘉島の地質・土壌状況の把握と前年調査結 果の検証を行うことを目的とした。 2.地形地質土壌概要 慶良間諸島周辺海域は大小20余の島々が点在する多 島海となっており,いずれの島も山地が海岸まで迫り, 海岸線は大部分急崖急斜面を呈する。このような地形 は沈降地域に典型的に見られる地形であり,慶良間諸 *GIS沖縄研究室,〒901-040l沖縄県東風平町東風平631-2-102,gis-okinawa@myadjp l27亡霊霜害つ
「地域研究」1号2005年6月 岩や結晶片岩で,玄武岩質の溶岩,凝灰岩類であり, 輝緑岩やはんれい岩の岩床や岩脈もみられる。 砂岩部層一渡嘉敷島,座間味島北東部,阿嘉島,慶 留間島,外地島,黒島などに広く分布しており,慶良 間列島のなかでもっとも広い面積を占める岩相である。 砂岩はアルコース質で,単層の厚ざが2~3mの塊状砂 岩が薄い粘板岩層をはさみながら互層する。 粘板岩部層一座間味島の南半分と渡嘉敷島,前島と 付近の小島などに分布し,千枚岩,粘板岩から構成さ れている。これらの岩石は暗灰色~黒色を呈し,層理 面がよく発達し,砂岩との数cm毎の互層部もはさまれ る。 (3)土壌 赤色土壌は,山地地域の緑色岩類が赤色風化を受け たものを母材にした土壌が一部分布する(野底統)。黄 色土壌は慶良間諸島の山地丘陵地に砂岩・千枚岩等を 母材として分布する。丘陵地の谷斜面,山地斜面には 乾性の久志岳1統,谷頭等にはスポット状に適潤性の久 志岳2統が分布する。表層グライ系赤黄色土は,慶良間 諸島の山地斜面や丘陵平担面,斜面等に広く分布する。 3.地表踏査結果と考察 (1)座間味島の地質・土壌 座間味島では,アルコース質砂岩の分布面積が広い。 アルコース質砂岩とは,石英,長石(花崗岩の主成分) を主体とした粗粒砂岩である。両鉱物とも風化には比 較的強く,風化作用により鉱物粒問の結合が弱まり, マサとよばれる土砂状になる。また,長石はさらなる蕊
艫臘
。・写真2,s 総EKF星1..-.'、鍵
鱗
ソフ <_11iiiilliiiii蕊11
灘WIDl
;鐘、 霧動 やら_- ̄ ̄PliiliiiⅢliiiilDlm9i[
掛
一▲ ̄!;i蕊miifi
--- ̄。~ぞb  ̄ 府 蕊田川ilhFmlliiⅢiliiilllill1iliIIliiillllIlliiiiliUMiJUi
島
'1 m円、 蟹《:i蕊i鍵露騨一、
({菱s三蕊i5kiL
図1.座間味島、阿嘉島の地形図と写真1~8の撮影場所 128風化作用により白色の粘士に変質するが,石英は非常 に風化に強く最後まで鉱物粒子として残る。このよう な岩石の性質のため,砂岩分布地域では赤色士が形成 されにくいものと考えられる(写真1,図l)。一方, 粘板岩(写真2)分布地域である座間味島東部では, 丘陵頂部や緩斜面などで,赤黄色土層の厚い地域も確 認された(写真3)。また,粘板岩分布地域では斜面崩 壊地形があり,植生の剥離による小規模な土壌流出も 見られた。同様な状態は,渡嘉敷島の渡嘉志久地区の 地滑りでもみられた(渡辺2002)。写真4は斜面崩壊 の修復工事現場の遠景写真である。沖縄島北部の同様 の工事現場と比較すると分布する土壌の違いがわかる。 以上の地質土壌状況は,渡嘉敷島と同様である。 写真3 写真4 写真1 (2)阿嘉島の地質土壌 阿嘉島中央,中岳から北西部にかけては広く緑色岩 類が分布する(写真5,図l)。緑色岩類は海岸など侵 食作用の激しい地域では,新鮮岩が広く露出した崖や 急斜面(阿嘉島北部海岸)をなすが,島中央部の山地 内の緩斜面では赤色士を厚く載せる(写真6)。 緑色岩と砂岩の境界部分では,それぞれの母岩を材 料にした土壌形成の差を観察することができる(写真 7,8)。写真7の左側は砂岩,右側は緑色岩であるが,緑 色岩の上部が著しく風化し,厚い赤色土を生じている のに対し,砂岩の上部は弱風化で,士層が薄い。 阿嘉島では,岩相の違いが赤色士の生成に大きな影 響を与えていることが確認できた。 写真2 129
<~調薔覇害つ
「地域研究」1号2005年6月 写真5 写真6 写真7 写真8 130赤土の分布が少ないものと考えられる。 慶良間諸島では,その地質状況によって,赤色土の 分布が粘板岩及び緑色岩類の分布する地域に部分的に 分布する。そこで,地質・土壌調査を行い,赤色士の 分布図を作成する事によって,開発行為による地表露 出時,赤士流出発生の可能性がある地域を推定できる。 また,これを利用して開発規制区域などの設定など, 赤土流出防止対策が可能になるものと考えられる。 4.まとめと今後の展開 慶良間諸島は,同じ地質状況である沖縄島北部地域 に比べ赤色土の分布が少ない。これは,沖縄島と慶良 間諸島の形成の違いによるところが大きいと考えられ る。沖縄島には,隆起作用によって形成された琉球石 灰岩よりなる台地や,海岸段丘由来と考えられる丘陵, 海岸段丘が島周辺部を広く取り巻いている。これらの 台地,丘陵は長期間地表付近に露出しており,そのた めに深層まで風化作用が及んで,土層が厚くなる原因 となっている。また,これら丘陵・台地地域に厚く分 布する国頭礫層は,それ自体が岩盤の風化作用により 生成された赤色の粘土を多量に含有している。一方, 慶良問諸島は沈降地域となっており,琉球石灰岩や国 頭礫層の分布する台地・丘陵は存在しない。従って, 引用文献 沖縄県,1986,「土地分類基本調査』. 渡辺康志,2002,「近海離島調査一渡嘉敷島の地形.地質と赤土 流出」,『沖縄大学地域研究所所報」30:9-16. 131