Title
[総説]冷温・海洋深層水の農業利用について
Author(s)
小那覇, 安優; 安富, 徳光; 比嘉, 淳; 兼島, 盛吉
Citation
南方資源利用技術研究会誌 = Journal of the society tropical
resources technologists, 14(1): 13-22
Issue Date
1998-10-01
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/14149
南方資源利用技術研究会誌 Vol.14No,1 13-22 1998
冷温 ・海洋深層水の農業利用について
小那覇 安 優 、 安 富 徳 光、 比 嘉 淳、 兼 島 盛 書
沖縄県農業試験場
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AnyuONAHA,TokumitsuYASUTOMI,AtushiHIGA.MoriyoshiKANESHIMA
OkinawaPTlefecturlaLAgriculturalEこゆenlmenEStation 4-222Sakiyama-cho,Naha,Okinawa903-08
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. は じめ に 海洋深層水 とは、太陽光がほ とんど届かない 200m以深の海水のことで、深層の海水 は r低 水温性』
F富栄養性』r
清浄性』 によって特徴づ けられる。 この特徴のひとつである低水温性 を 作物生産に利用する試み を最初 に展開 させたの は、ハ ワイ大学である。その後、NELHA (ハ ワイ州立 自然エネルギー研究所 )のJ.CRAVEN 博士 は、80種類以上の温帯野菜の根城 を冷却 し 栽培実験 を行 っている。それ らの結果、根城 を 冷却することにより、野菜、花 き、果樹の生育 促進、開花促進、品質向上 に効果があったとの 報告がなされている2)3)-6)rl)18). 一方、我が国においては、地中に埋設 したパ イプに冷水 を流す ことで土壌 を冷却 し作物 を栽 培す る技術は、アルス トロメ1)ア6)やイチゴ9)、 ハ ウスみかん10)で実用化 されてお り、また、ス ポ ッ トエアコンを利用 した局所冷房によ り、フ リージャー1)や洋 ラン類5)を栽培する試み もな されているOまた、高温期 に地下水や電力 を利 用 して培養液 を冷却す る養液栽培法は、すでに 普及の段階にある。 本稿で提起する海洋深層水の低水温性利用は、 沖縄 県那覇市首里崎 山町4・222 海洋深層水の特徴である富栄養性 、清浄性 を魚 貝類や藻類の養殖 に利用す る前段で農業 に利用 することか ら、当然、超低 コス トの クリー ン熱 エ ネルギーの活用になる。図 1に、海洋深層水 の農水産分野における多段利用の システム概念 図を示 した。海洋深層水の低温性 、富栄養性、 清浄性は農業や水産業で利用する段階で除々に 失われ、放水する段階では、表層水の水質 とほ ぼ近い状態 になる。 この ような海洋深層水の資 源特性 を利用分野 ごとに十分に使い切 り、自然 環境への負荷 を最少減に軽減 ・抑制するシステ ムを構築す ることは、国際連合大学が提唱す る ゼロエ ミッシ ョンにも合致す るり。 ここでは、沖縄県における海洋深層水研究の 経緯 と農業利用の可能性 について述べ る。2.
沖 縄 県 に お け る海 洋 深 fi水研 究 の経 緯 我が国における海洋深層水利用の研究は、海 洋科学技術セ ンターと高知県海洋深層水研究所 の先導的取 り組みに端 を発 し、富山湾での洋上 設置型海洋深層水利用装置の実験 を経て、富山 県の大規模湧昇陸上生産型研究施設の建設に至っ ている13)。この ような本土各県における海洋深 層水研究は、魚介類 と藻類の養殖 、食品加工、 医療分野の利用に止 ま り、表1に示す ように農餌
図 1. 海洋深層水 の農水 産業 を中心 と した多段型利 用 システムの概念 図(
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低水温性、N:富栄養性、C
:
清 浄性 ) (月刊海洋(1994.3.1)海洋深層水の利用研究 ・中島敏光、豊田孝義 より改変) 表1 国内外 における海洋深層水利用施設の概要 地 域 研 究 機 関 主な研究分野 取水深度 覧孟宗 ら 水温 取水量 設置年 ハ ワ イ ハワイ州立自扶エネ エネルギー ・水産 600m 1.8km 6℃ 94.000t/日 1987年 ルギー研究所 健康食品 ノルウェー ベルゲン大学 水 産 65m 0.lh - 1,Soot/日 1988年 高 知 県 高知県海洋探層水研 水 産 320m.344m 2.4km 9.5℃ 920t/日 1989,94年 究所 宵 山 県 富山県水産試験場 水 産 300m 2.6km 5℃ 3,000t/日 1994年 沖 縄 県 海洋深層水総合利 水産、農業、 600m 2.3kn1 9℃ 15,000t/E1 2000年(予定) 用施設 食品、海洋環境 業利用の視点 は全 くない8))3
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沖縄 県 におけ る海洋深層水利用研 究 の取 り組 み は、財 団法人沖縄 農林漁業技術 開発協会 (辛 成9年3月解散 ) と株式会社 トロ ピカルテ ク ノ セ ンターに よる海洋深層水 共 同 プロジェク ト研 究が 、平成5年4月 に発足 したの に始 まる。 この海洋深層水共 同 プロジェク ト研 究 を契機 に、県内の6
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社 が参画 した沖縄 県海洋深層水利 用推進協議会 が設立 され、海洋深層水利用技術 の調査研 究が民 間主導 で進 め られた。沖縄 県海 洋深層水 利用推進協議会 は、調査研 究 の成果 を 踏 まえ、海洋深層水利用 の可能性 を県 に提言 し た。 この提言 を受 け、県 は平成6
年度 に海洋 深 層水研 究拠点立地条件等調査事業 を実施 し、取 水適 地等 の条件 提 示 と数 カ所 の 適 地 を選 定 し とIS).Vol.14No.11998 図
2.
冷温利用農業研究の フロー その後、平成7
年度 には、沖縄型海洋深層水 総合利用システム開発調査 を実施するとともに、 研究施設の建設場所 を久米島北部に決定 した。 平成8年度の研究施設基本設計、平成9年度 の 実施設計の完了をもって、平成12年の揚水開始 に向けて着実な事業進捗 を見ている。 この海洋深層水総合利用施設 ((仮称 )美 ら 海パーク)は、深層水の取水量1万5
千 トン/日 で、世界ではハ ワイ州立 自然エネルギー研究所 に次 いで第2位 、我 が国で は最大規模 を誇 る (表 1)。 さらに、取水 ・研究施設 とビジターセ ンターを併置する Fリサーチパー クJ、企業が 深層水 を活用 した ビジネスを展開する rエ コビ ジネスパークj、タラソテラピー (海洋療 法 ) 施設を中心 とする rエ コ1)ゾ- トパ ークJ、周 辺への冷熱供給 と環境調和型 コミュニティの形 成 を目指す rエ コレジデ ンスJの4部門で構 成 する世界 にも類 を見ないユニークな発想で海洋 深層水 を総合的に利用する施設 となっている川). この ように、21世紀 に夢が膨 らむ海洋深層水 利用研究の契機 に大 きな役割 を果 して きた沖縄 県海洋深層水推進協議会は、沖縄県海洋深層水 開発協同組合へ と発展 している。 また、海洋深 層水利用研究の気運 をここまで盛 り上げたのは、 鈴木俊行氏 (現 、沖縄県海洋深層水開発協同組 合 ・事務局長 )の献身的働 きと電撃的ひらめ き があったことをここに記 してお く。3.
冷 温 ・海 洋 深 層 水 の農 業 利 用 の可 能性 亜熱帯 に位置する沖縄県においては、夏場の 高温 ・強 日射が作物の生育阻害要因になって、 温帯作物の栽培 は極めて困難である。特 に、需 要が多い野菜類 は、夏場の 自給率が10%台の低 い状況にあ り、県農業試験場 において も夏場の 高温対策は重要課題 として位置づけられ、耐暑 性品種の導入や被覆資材利用等の研究が取 り組 まれて きている。 しか し、べたがけ栽培 による 温帯性葉菜類の生産技術11)や養液栽培 による夏 場 自給率向上の実績 はあるものの、抜本的夏場 対策技術の開発 による新作型確立 には至 ってい ないのが現状 である。 これ らの ことか ら、県農 業試験場 における園芸作物の研究対象は、冬春 期の温暖な気候 を生か し、本土産地の端境期 を ターゲ ッ トに した生産振興 を支 える技術開発 に 特化 して きた。 一方、冷温 を利用 した作物の生育制御 に関 し ては、感温性作物の開花調節や作物の生育環境 をコンピュータ管理する植物工場等で技術開発がなされている。 しか し、買電を利用 しての技 術開発では、コス ト的に多 くの問題が残 されて お り、実用技術 として普及 していない。海洋深 層水の冷熱利用は、エネルギー的には買電の
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%以下で得 られるといわれ、 しか も図1に示 し たように魚貝類や藻類の養殖等水産分野での利 用に影響 しない余剰的活用である。この超低 コ ス トのクリーンエネルギーを農業分野に利用で きれば、作物の高温障害対策 として画期的な革 新技術 となるであろう。 ここで海洋深層水の農業分野での利用につい て述べる。図2
は海洋深層水の冷温利用農業の 研究フローを示 してある。冷温利用農業の研究 には、三つの視点か らのアプローチが考えられ る。一つには、冷温 を直接利用する、高温障害回 避技術であるOこの課題については、メーカ-サイ ドでは、チラーを用いた養液栽培 システム として技術開発がなされてお り、また、海洋深 層水の冷熱を利用する熱交換 システムもすでに 確立 していることか ら、価格的に有利な作物で の検証をもって実用化の可能性が広がる。 した がって、この分野での研究をより深化 させるに は、ハ ウス内土耕栽培 と露地栽培への拡大があ る。ここでの課題は、地中に埋設 したパ イプに 冷水を流 し作物の根城 (地下部)を冷やすこと によって、高温障害を回避する技術開発である。 しか し、根城冷却による高温障害回避には、ク 1)ア-すべ き幾つかの問題があるOまず、根城 冷却に感応する作物のスクリーニ ングが必要 と なる。次に、根城冷却のために埋設するパイプ については、コス ト面 も考慮 したうえでより熱 伝導の高い資材選定はもとより、パイプの太さ、 埋設深度や間隔等の基礎的データが求められるO 県農業試験場では、8月にホウレンソウを栽培 し、根城冷却感応性 を確認 してお り、また、久 米島の土壌 を想定 した国頭マージでの熱伝導の 基礎的知見を得ている7)。 しか し、実用規模 に なると、ここで得たデータがそのまま活用で き ない場面 も予想されることから、より精密なデー タの蓄積が必要 となる。 南方資源利用技術研究会誌 二番 目の課題は、冷温利用による開花調節技 術である。ここでは、地下部冷却 による開花制 御 と地上部の局所冷却による開花制御及び施設 内での低温処理による開花制御、あるいはこれ らを組合わせることによる開花制御が考えられ る。地下部冷却による開花制御については、 ト ルコギキ ョウの花芽分化に及ぼす冷却効果は確 認 されたが、実用化には解決すべ き多 くの問題 が残 っている。地上部の局所冷房法については、 フリージャーや洋ラン類で技術的可能性 を示 し たい くつかの研究があるが、実用化には至 って いない4)5). しか し、これ らの発想は、本県のハウスパパ イヤで高温期 に発生する雄蕊退化対策技術開発 や洋ラン類の開花促進技術開発への応用が期待 される。また、コンテナ栽培 した果樹 を施設内 に持ち込んで低温処理する技術や苗の予冷及び 球根の春化処理技術等、多 くの作物で確立 して いることから、施設内での冷温処理による開花 制御は、品目を選定 して最適温度 と処理期間等 を検証すれば短期間で実用化技術が確立で きる ものと考える。 三番 目の保冷技術開発は、一般の冷蔵庫での 保冷技術 と同 じであ り、ここでは取 り分けて述 べない。4.
実用化 が期待 され る冷 温 利用 農 業技 術 の実験モデル 1)モモの高価格期生産技術 休眠性の落葉果樹であるモモは、自発休眠打 破に低温条件 (7℃、42日間)が必要であ り、 亜熱帯の沖縄の気候では栽培が不可能 とされて きた。 しか し、沖縄 と同緯度にあるイスラエルでは、 強制落葉による強制休眠 と低温処理による自発 休眠打破によって、高価格期に出荷する栽培技 術の開発に成功 しているとい う。図3に示 した 本土市場におけるモモの取扱い出荷数量 と卸売 単価をみると、本土産地の出荷時期には5
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程度で推移 しているが、端境期に当たる3月にVol.14No.11998 (円/ki)
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結実m -図4.
沖縄におけるモモの端境 ・高価格期 を想定 した実験モデル は9,000円/kg台の超高値になっているO このことは、薬剤 による強制落葉 と海洋深層 水を利用 した冷温処理による自発休眠打破技術 を確立 し、4月以前の収穫 を実現すれば、モモ を新規沖縄ブラン ド品 目として確立することが 期待 される。 沖縄における端境期 ・高価格期 を想定 した実 験モデルを図4に示 した。2
)スモモの大果高品質栽培技術 スモモの主生産地は山梨県、和歌山県、山形 県、長野県、福岡県、鹿児島県で、北か ら南 ま で広 く分布 している。本土での栽培品種は、東 洋系の北方 タイプで、花芽分化のための低温要 求量は多 く、また、果実 も大 きいことか ら高値 で取 り引 きされている。 しか し、亜熱帯地域の沖縄では、花芽分化の ための十分な低温が確保で きないことから東洋 系の北方 タイプは、栽培が不可能である。この ため、低温要求量が少 ない南方 タイプの品種 "カラリ"を国頭村 で栽培 しているが 、果実が 40gと小 さく、本土の品種に比べ る と見劣 りす る。南方資源利用技術研究会誌
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(月) 全4)雷景蝿流通統計年報(平成6年∼8年の平均龍)より 図5.
スモモの月別取扱い量 と単価温 度 管理
果
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小 さく
晶質
が
悪
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開 花期 が長く、掃 いが悪 い ため果実 晶質 がバラつく 気象的要田 ・花芽分化期の低温が足りない 技術的要因 ・整枝・せん定技術が未確立 ・檎黒が不十分 花芽分化期 ・ハウス栽
培で低温に遭遇させる ・土壌を冷却し、10℃以下の低 温に遭遇させる 開花期 ・20℃以上の気温に遭遇させる土壌 管理
・土壌乾燥による花芽分化の 促進 ・施肥や堆肥などの搬入栽培 管理
・高品質果実生産のためのせん 定技術確立 ・早期摘果の徹底 図6, スモモの冷温利用実験モデル★
収
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一方、本県よりもさらに南に位置する台湾で このことか ら、本県において大果系のスモモ は、温帯性落葉果樹の 日本な しの花芽分化 した を栽培する方法 として、低温に遭遇 した穂木を 穂木を導入 し、高接 ぎして開花結実 させる栽培 毎年導入 して高接 ぎ栽培する方法 と、県内で人 技術の開発に成功 している12)。 工的に低温 に遭遇 させ、花芽分化を誘導 (自発Vol.14No.11998 (トン)
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月) 全国雷果物流通統計年報(平成8年)より作成 図7.
ミカ ン及 びハ ウス ミカ ンの 月別取扱 い量 と単価 温 度 管 理 開 花 期 が 長 く、揃 い が 悪 い た め 果 実 晶 質 が バ ラつ く 気象的要因 ・花芽分化期の低温が足りない 技術的要因 ・転枝・せん定技術が未確立 ・摘果が不十分 花芽分化期 ・ハウス栽培で低温に遭遇させる ・土壌を冷却 し、15℃ 以下の低 温に遭遇させる 開花期 ・25℃程度の気温に遭遇させる栽培管理
・高品質果実生産のためのせん 定技術確立 ・早期摘果の徹底 図8.
カ ンキツ類 の冷温利用実験 モデル☆
収
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的休眠打破 ) し開花 結実 させ る方法 とが考 え ら 図5に、本土市場 におけるスモモの 月別取 扱 れ る。後者 の場 合 、海洋深層水 の低水温性 を利 い数量 と卸売単価 を、 また、図 6には、本 県 に 用 したスモモの 自発休 眠打破技術 が確 立 し、 5 おけるスモモの超早期 出荷 のための実験 モデル 月以前 の出荷 が可能 になれば、新規 の沖縄 プラ を示 した。 ン ド品 目と しての期待 は大 きい。3
)カ ンキ ツ類 の高 品質超早期 出荷技術(
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(月) 図9. 県内におけるホウレンソウの取扱 い量 と単価 図1
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根城冷却によるホウレンソウの栽培状況 (7月22日播種、 8月22日収穫 ) 亜熱帯原生のカンキツ類の うち、温州、タン カンでは花芽が分化するには15℃以下の低温 に 一定期間遭遇する必要があ り、本土の露地栽培 では冬季 の寒 さによ り花芽分化が誘導 され春 に 発曹する。沖縄県においては、冬季 において も 気温が高 く推移するため、開花期が長 くな り、 品質にバ ラツキが多 くなっている。 一方、本土の温州みかん産地では、通常の露 地栽培 とは別にハ ウスみかん栽培 にみ られるよ うに、初冬期 に加温 を開始 し発菅お よび発芽 を 制御する技術が確立 されている。その結果、図 7に示す ように、ハ ウスみかんは通常 4-10月 に出荷 されてお り、 4月 は、2,000円/kg、5月 は1,400円/kg、 6月は1,000円/kg、 7月は700 円/kgと高値で取 り引 きされている。 しか しな が ら、秋季 に気温が高 く推移すると花芽分化が 不十分にな り、早期加温が困難になるなど種 々 の問題が生 じる。そこで、 8-10月にチ ラー を 用いて、地下部 を冷却 し、安定 して花芽分化 を 誘発 させ、初冬期の加温の効果 を高める技術開 発がなされて きている10)。本県においては、ハ ウスで栽培すれば冬季 に加温の必要はな く、 さVol.14No.11998 らに海洋深層水の低水温性 を利用 し、根城 (也 下部)冷却技術が確立 されれば、本土のハ ウス みかん栽培 に比べ低 コス トで超早期 出荷の可能 性が生 まれて くる。本県におけるカンキツ類の 冷温利用実験モデルを図8に示 した. 4)夏季 ホウレンソウの栽培技術 ホウレンソウの生育適温は、10-20℃で冷涼 な気候 を好 む野菜である。低温 には比較的強い が、高温 には弱 く、25℃になると生育が抑制 さ れ、30℃以上 になると障害が発生する。 このた め沖縄では、10月以降6月までの比較的に気温 が低い時期 に栽培 されている。 図9に沖縄県中央卸売市場 におけるホウレン ソウの取 り扱い量 と価格の推移 を示 した。県内 での生産がほ とん どない6-10月は品薄になり、 価格は500円/kg以上 の高値水準 を維 持 してい る。 この時期は、高冷地のみでの生産 となるこ とか ら本土各地 とも絶対量が少 な く、端境期 に なっている。県農業試験場では、図10に示す よ うに、この時期 に根城冷却 したホウレンソウ栽 培の可能性 を確認 しているが7)、価格 とコス ト の面か らの検討が残 されている。
4.
おわ りに 冷温 ・海洋深層水の農業利用については、平 成7年 8月に県が実施 したハ ワイにおける海洋 深層水利用に関する調査報告書 に、ハ ワイ大学 高等海洋研究所の試験結果 として次のような記 述がある15)0 ①海洋深層水の冷水で地温 を制御すると良質 の レタスが収穫で きた。 (参イチゴの根城 を海洋深層水で冷や し、その 後冷水 を止め根城 を暖めた ら2週間後に花芽が 誘導 された。 ③収穫 まで4年かかるアスパ ラガスの根城 を 海洋深層水で間断冷却すると、収穫期が短縮で きた。 ④ハ ワイは、4,000フ ィー ト以上 の高地で な いと花が咲かない といわれている梨の根城 を冷 却 した ら平地で花が咲いた。 これ らの情報の真偽は別 として、作物の根城 や地上部 を温度制御することによ り、高温障害 対策や開花調節 に利用することは、種 々の作物 で試み られ、そのなかには実用技術 として普及 しているの もある。 本稿では、既知の生理生態的特性 を基 に した 冷熱利用の高温障害対策 と開花制御 を、海洋深 層水の冷熱 に置 き換 える技術的可能性を述べた。 しか し、この技術的可能性 を実用技術 にするに は、
r全 く再現性のない自然環境条件のなかで、 不偏的法則性 を発見 し、それを再現で きる技術 として組み立てる』農業技術開発研究の特異性 を認識する必要がある。 また、海洋深層水利用 という新 しい可能性 に富んだ科学技術の領域 に ふみ込む場合、それにふ さわ しい方法論 を持 っ て取 り組 む必要がある。 このことか ら、久米島での海洋深層水研究施 設で実施 される冷熱 .海洋深層水の農業利用研 究には、作物の生理生態的特性解明 とい う基礎 的研究分野 と、それを展開す る応用研究分野 を 併置 した研究体制が求め られる。 また、研究開 発 には、人材 としての知的集積 と潤沢 な研究費 の確保が技術開発の成否 を決定する大 きな要素 になることなどか ら、研究施設のハー ド的整備 に先行 した試験研究体制の整備が、まず もって 肝要であることを強調 してお く。参考文献
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