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[総説]HIV-1感染に対する新規治療法及び感染実験小動物モデルの開発: 沖縄地域学リポジトリ

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Title

[総説]HIV-1感染に対する新規治療法及び感染実験小

動物モデルの開発

Author(s)

大隈, 和

Citation

琉球医学会誌 = Ryukyu Medical Journal, 27(1・2): 1-9

Issue Date

2008

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/1925

(2)

I丑Vl1感染に対する新規治療法及び感染実験小動物モデルの開発

大隈 和

琉球大学医学部医学科地域環境医科学講座免疫学分野

Development of a Novel Anti-HIV I Therapy and

a Small Animal Model for the Testing of Anti-HIV I Drugs

Kazu Okuma

Department of Immunology, Graduate School and Faculty of Medicine, University of the Ryukyus, Okinawa, Japan

ABSTRACT

Highly active anti-retroviral therapy (HAART) is effective against human immunodeficiency virus type 1 ( HIV-1) infection, but several severe problems such as oc-currence of multi-drug resistant (MDR) viruses are emerging after use of the currently available drugs. Thus, development of novel therapeutics with a different mechanism of ac-tion is urgently needed. A recombinant vesicular stomatitis virus ( VSV) lacking its G gene ( △G) and instead encoding human CD4 and CXCR4 is known to control CXCR4-tropic (X4) HIV-1 infection in culture. To test the value of such a recombmant virus more, we

con-structed VSV A Gs expressing CD4 and CCR5 with or without modified dendritic cell-specific ICAM-3 grabbing nonintegrin ( DC-SIGN) from rhesus macaques and examined if these viruses were effective against simian immunodeficiency virus ( SIV) infection in cul-ture. Our data demonstrated that the VSVAGs specifically infected and killed SIV-infected cells, resulting in long-term control of SIV infection in vitro. These results indicate that such VSVs have potential for novel anti-HIV-1 therapeutic candidates. In ad-dition, to determine therapeutic value of anti-HIV-1 drug candidates, it is crucial to test them in animal models before clinical trials. Severe combined immunodeficiency ( SCID) mice reconstituted with human peripheral blood mononuclear cells (PBMCs) , termed hu-PBL-SCID mice or humanized mice, have served as such a valuable small animal model. How-ever, there was a limitation on use of this model because X4 HIV-1 does not efficiently infect these mice due to, at least in part, relatively low levels of expression of the CXCR4 coreceptor. To solve this problem, we generated human interleukin ( IL) -4-transgenic hu-PBL-SCID mice that spontaneously synthesized human IL-4 which has been shown to en-nance CXCR4 expression and promote X4 HIV-1 infection in vitro and investigated if X4 virus efficiently infected these mice. Our study showed that in vivo synthesis of human IL-4 augmented CXCR4 expression on human CD4 T cells and led to productive X4 HIV-1 infection, and that the in vivo infection was definitely blocked by CXCR4 antagonist ad-ministration. These data indicate that human IL-4-transgemc hu-PBL-SCID mice can be a useful model for the X4 HIV-1 study and the testing of anti-X4 HIV-1 drug candidates. Ryukyu Med. J., 27(1,2)1-9, 2008

Key words: HIV-1, VSV, viral receptor, animal model, mterleukm-4

はじめに

通じてヒトに感染し後天性免疫不全症候群(AIDS)を

ひき起こす原因ウイルスであるが,その感染は我が国を ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)は,性交などを  含め世界中に蔓延し,現在もなお多くの感染者を苦しめ

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HIV-1感染に対する新規治療法及び感染実験小動物モデルの開発 ている(UNAIDS/WHOによると, 2007年末で世界の 感染者数は約3320万人1).最近沖縄県でも急増している). HIV-1感染に対して開発されたHAARTと呼ばれる逆 転写酵素阻害剤を含んだ多剤併用療法は,現在の治療に おける有効な手段であり感染者の予後を顕著に改善した が2),薬剤の副作用や多剤耐性(MDR)ウイルスの出 現による治療効果の減弱等の種々の問題も明らかになっ てきた.そのためHAARTを補足或いは代替する新規 薬剤/治療法の開発が急務である. HIV-1受容体を発現する組換え水癌性口内炎ウイルス (VSV)は,その新規治療法を開発する目的で作製され, in vitroにおいてHIV-1感染細胞を標的として攻撃し, HIV-1感染を制御することが知られている3).我々は, この組換えウイルスの新規薬剤としての有用性をさらに 確かめるために,前臨床試験用として,アカゲザルにお けるサル免疫不全ウイルス(SIV)感染に対して使用可 能なSIV受容体を発現する組換えVSVを作製し, SIV 感染細胞及び感染に対する効果をin vitroにおいて検 討した. また一方, HIV-1感染に対する新規治療法を開発する 上で,前臨床試験としてHIV-1が感染する実験動物モデ ルを用いて上記のような新規抗HIV-1剤候補の実効性 を評価することは非常に重要なことである.ヒト末梢血 単核球(PBMCs)を移植して作製された高度免疫不全 マウスいわゆるヒト化マウス(hu-PBL-SCIDマウス) は, HIV-1の感染実験小動物モデルとして頻用されてき た4-10)特にヒトケモカイン受容体CCR5分子を補助受 容体として利用するHIV-1 (R5株)はそのマウスにお いて効率良く感染増殖するため, R5ウイルスの優れた 動物モデルである.しかしヒトケモカイン受容体CXC R4分子を補助受容体として利用するHIV-1 (X4株) の感染増殖効率は顕著に低いため9),必ずしもⅩ4ウイ ルスの良い動物モデルとは言えない.そこで,より有用 なX4 HIV-1の感染実験小動物モデルを開発する目的 で,我々はin vitroにおいてⅩ4ウイルスの感染性を増 強することが知られているヒトインターロイキン(IL) 14の遺伝子を高度免疫不全マウスに導入し,このマウス を用いて新規ヒト化マウスを作製し,本ヒト化マウスに おけるⅩ4ウイルスの感染増殖性や新規薬剤CXCR4ア ンタゴニストの感染防御効果を検討した. 本総説では,これらの研究に至った背景を概説しなが ら,著者らの最近の知見を紹介し,それらの有用性・発 展性を考察したい. I. HIV-1感染に対する新規治療法の開発 HIV-1感染に対する新規治療法を開発する目的で, G 蛋白の代わりにX4 HIV-1受容体を発現する組換え VSVが作製されin vitroにおいてその効果が示された が,さらにその有効性を評価するためにin vivoでその 効果を検討する必要があった.そこでサルAIDSモデ ルでの応用を目的にG蛋白の代わりにSIV受容体を発 現する新規組換えVSVを作製し,その実効性をまずin vitroにおいて検討した. A.組換えウイルスとしてのVSVの有用性 VSVは,ラブドウイルス科に属し,そのウイルス粒 子は弾丸形をしている.その粒子内部に5種類の蛋白 (N, P, M, G, L)をコードする比較的シンプルな RNAゲノムを保持しており,そのゲノムは非分節性の 1本鎖マイナス鎖RNAであるため,モノネガウイルス とも呼ばれる. vsvが発現している蛋白の中で, G蛋 白は唯一のエンベロープ蛋白であり,細胞-の吸着,倭 入に重要な役割を果たしている. vsvは,主にブタ, ウシ等の家畜の口腔内等に水痘を伴った炎症性病変を引 き起こす病原性ウイルスであるが,ヒトには感染しても 殆ど病原性を示さない.殆ど全ての動物培養細胞に感染 し細胞質内のみで複製増殖した後,大量の子孫ウイルス を産生し急速にアポトーシス等によりその感染細胞を死 滅させる. VSV粒子はプラスミドDNAから高感染価にその産 生が可能であり,プラスミドDNAに含まれているゲノ ムに外来遺伝子を挿入することによりそのゲノムから外 来遺伝子を発現できる11-13)例えば, vsv野生株のゲ ノムからG遺伝子を切除し(△G)代わりに他のウイル スのエンベロープ蛋白をコードする遺伝子を挿入すると, 産生されたVSV粒子の表面にはG蛋白ではなく他の ウイルスのエンベロープ蛋白を発現するようになる14,15) その結果,組換えVSVは自身の細胞指向性ではなく他 のウイルスの細胞指向性を示すようになる.このように 他のウイルスのエンベロープ蛋白を発現するVSV△G は,他のウイルスの「代理ウイルス」として応用できる. またその外来遺伝子としてHIV-1の受容体(ヒトの蛋 白)をコードする遺伝子を挿入すると,そのVSVAG はこれから紹介するHIV-1感染の制御が可能な「治療 用ウイルス」となる. B. HIV-1感染細胞を標的としてHIV-1感染を制御する 組換えVSV HIV-1は,ヒトのCD4分子を主要受容体とし,ヒト のCXCR4或いはCCR5分子を補助受容体として宿主細 胞に吸着し侵入する  HIV-1は,それらの補助受容 体指向性から, CXCR4指向性(X4)ウイルスとCCR5 指向性(R5)ウイルスに分類される'. HIV-1は,ウ イルス粒子上のエンベロープ蛋白gpl20を宿主細胞上 のCD4分子に結合させることにより細胞に吸着する. その結果. gp120のコンフォーメーションが変化し, gp 120は補助受容体にも結合できるようになる.その結合

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H IV -1 envelop e p rotein 会 合一 会 Ⅹ 辱▼▼▼ 辱辱 V SV △G -C C 4 4 HIV-1 cell 」ト " LA M (・*・サ*.*.サ;・<・.<官d g .. ● ● 辱▼▼1 1 甑 =コ C ellsurface cell ◎ ◎ killed V SV △G -C C4 K illed ‖ ト C o ntrol of X 4 H IV -1 in fection

Fig. 1 A potential anti-HIV-1 therapeutic based on a recombinant VSV. The recombinant virus ex-pressing X4 HIV-1 receptors, CD4 and CXCR4, in place of G protein (VSV△G-CC4) is able to bind to HIV-1 envelope protein on the surface of X4 HIV-iniected cells, not of normal cells, via the receptors on virions and enter the cells after virus-cell fusion catalyzed by the envelope protein. After the VSV is inside the cells言t replicates to produce progeny virus particles containing the receptors, rapidly kills X4 HIV-1-mfected cells, and greatly reduces X4 HIV-1 titer in culture.

により,もうひとつのエンベロープ蛋白であるgp41が ウイルス表面に露出され,その融合ペプチドが標的細胞 膜に突き刺さり,さらにエンベロープと細胞が近接する ことによりウイルス膜と細胞膜の融合が生じ, HIV-1は 自身のゲノム等を細胞内に送り込むことが可能となり, 侵入する. このHIV-1の感染機構を利用して逆にHIV-1感染細 胞に特異的に感染しうる治療用ウイルスとして開発され たのが, HIV-1受容体を発現する組換えVSVである (Fig. 1). Rose博士らのグループは, vsv野生株の ゲノムからG遺伝子を切除し代わりにⅩ4ウイルスの受 容体であるヒトのCD4及びCXCR4分子をコードする 遺伝子を挿入したプラスミドDNAからその組換え VSV (VSVAG-CC4)を作製した3).産生されたウイ ルス粒子は, G蛋白を欠損し代わりにウイルス表面に ヒトのCD4及びCXCR4分子を発現していた. HIV-1感 染細胞はその表面にエンベロープ蛋白を発現しているた め,上記の感染分子メカニズムにより, vsvAG-CC4 上のⅩ4ウイルス受容体はHIV-1感染細胞上のエンベロー プ蛋白と相互作用し,膜融合が引き起こされて,その組 換えVSVはHIV-1感染細胞(非感染細胞ではなく) に特異的に重感染(標的化)することができた.その結 果,その細胞は死滅し,リザ-バーである感染細胞を失っ たX4 HIV-1の感染価はin vitroにおいて顕著に抑制 された.以上のことからHIV-1受容体を発現するVSV AGは, HIV-1感染に対する有力な新規治療薬候補に なるのではないかと考えられた. C.サルAIDSモデルでの応用を目的としたSIV感染 を制御する組換えVSVの開発 上記の組換えVSVのような新規治療薬候補の効果を, 前臨床試験として感染実験動物モデルを用いたin vivo アッセイ系でも評価することは非常に重要なことである. そこで,我々は上記の組換えVSVの有用性をSIVが感 染したサルの感染実験モデルにおいて評価する目的で, VSVAG-CC4作製と同じ手法を用いて, SIV感染細胞 を標的として殺傷する組換えVSV (VSVAGrCC5)を 作製した¥ vsv△GrCC5には,ウイルス粒子表面にG 蛋白の代わりにSIV受容体であるアカゲザルのCD4及 びCCR5分子を発現させた23-25)またこの組換えウイル スの感染性を増強させる目的で,ウイルス上にDC-SIG N分子をさらに発現する組換えVSV (VSV△GrCC5D A35)も作製した. DC-SIGNはSIVェンベロープ蛋 白と結合し, SIV受容体と共発現するとSIVの感染性 を増強させることが知られているので26,27)追加発現さ せることで組換えVSVの感染性が増強されることが期 待された.但し,この追加分子は全長のままではウイル ス粒子上に取込まれず,興味深いことに分子の細胞質内 領域を35アミノ酸分短く削除することで(DA35)粒子 上に取込まれるようになった.それらの組換えVSVを SIVエンベロープ蛋白を発現する293T細胞に接種し, 抗VSV N蛋白抗体を用いた蛍光抗体法でその感染性 を検討したところ, SIV受容体を発現していないコン トロールのVSVAGはその細胞に感染できなかったが, VSV △GrCC5やVSV △GrCC5D △35は特異的に感染

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4 HIV-1感染に対する新規治療法及び感染実験小動物モデルの開発

4:#・

-葺-夢二

Human S CID hu-PBL- SCID

PBMC s

jfyT X4HIV-1

Fig. 2 A swall animal model for the HIV-1 study. SCID mice reconstituted with human PBMCs, termed hu-PBL-SCID mice (humanized mice) have served as a valuable model for the study of R5 HIV-1 pathogenesis. However, there was a limitation on use of this model because X4 HIV-1 did not efficiently infect and replicate in the mice.

した(エンベロープ蛋白を発現していない293T細胞に は感染しなかった).また重要なことに,その感染細胞 数をカウントしたところ, vsv△GrCC5DA35はVSV △GrCC5よりも効率良く感染することが分かった.そ の感染性の増強は抗DC-SIGN抗体にて消失したので, DC-SIGN分子特異的な作用によるものであった.次に それらの組換えVSVのSIV感染細胞に対する殺傷効 果を検討した.感染により緑色蛍光蛋白EGFPを発現 する組換えSIV (SIVAnefEGFP)を事前に感染させ たCEMxl74細胞に組換えVSVを接種して,経時的に EGFP陽性細胞数つまり SIV感染細胞数をフローサイ トメトリー(FCM)で調べた.コントロールのVSV△ GはSIV感染細胞を減少させず,最終的には全体の細 胞数の約70%がEGFP陽性だったが, vsv△GrCC5と VSV AGrCC5D A35はSIV感染細胞数を次第に減少さ せ,最終的に全体の細胞数の5 %以下まで減少させるこ とができ,その効果は約1ヶ月間持続した.殺細胞効果 の点で, vsv△GrCC5とVSVAGrCC5D△35の間には, 明らかな差異は認められなかった.また組換えVSVの SIV感染抑制能を検討するために,この実験と平行して 経時的に各サンプルから少量の培養上清を採取し上清中 のSIVの感染価を比較検討したところ,組換えVSV 接種後25日目においてVSVAGrCC5及びVSVAGrC C5D △35は組換えVSV未接種に比べ約1,000倍その感 染価を低下させることができた. vsvAGrCC5と VSV△GrCC5DA35による感染抑制効果には明らかな 差異は認められなかった.以上のように, DC-SIGNを 含むSIV受容体を発現する組換えVSVはin vitroに おいてSIV感染に対する有効性を示したので, SIVが 感染したアカゲザルにおいて即評価が可能となった. また一方で,我々はHIV-1受容体を発現する組換え VSVにおいても新規組換えウイルスを作製し,この組換 えウイルスを用いた効果的な治療法の開発を進めている. II. HIV-1の新規感染実験小動物モデルの開発 上記のような新規治療薬候補をin vitroアッセイ系 だけでなく感染実験動物モデルのようなin vivoアッセ イ系においても評価することが重要であることは,先に も述べた In vivoにおけるHIV-1研究において利用さ れてきた感染実験動物モデルの中で, 「ヒト化マウス」 はこれまで重要な役割を果たし頻用されてきた.しかし その利用には制限があったため,この問題を克服しヒト 化マウスの利用価値をさらに向上させる目的で新規のヒ ト化マウスを開発した.

A.ヒト化マウスのin vivo HIV-1感染研究-の応用 「ヒト化マウス」とはヒトの免疫機構を構築したキメ ラマウスのことで,重症複合免疫不全(SCID)マウス の腹腔内にヒトのPBMCsを移植して作製されるヒト化 マウスいわゆるhu-PBL-SCIDマウスは,比較的容易 に作製することができ, HIV-1 R5株感染においてはウ イルス血症状態を再現することも可能であることから R5 HIV-1の感染実験動物モデルとして極めて有用であ る(Fig. iy  しかし, HIV-1 X4株においては,少 なくとも一つの原因としてヒト化マウス内の移植ヒトリ ンパ球上でCXCR4補助受容体の発現が低下するためそ の感染増殖効率が非常に低く ¥ hu-PBL-SCIDマウス でX4 HIV-1の感染/病原性を研究するには制限があっ た(Fig. 2).そこで,このマウスを用いて詳細なⅩ4 HIV-1感染研究をするために, Ⅹ4ウイルス感染に高い 感受性を示す新たなhu-PBL-SCIDマウスモデルを開 発する必要があった.

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B. X4 HIV-1の新規感染実験小動物モデルの開発 X4 HIV-1の効率の良い感染増殖を可能にする新規 hu-PBL-SCIDマウスを開発するために,ヒトIL4の 生物活性に注目した.ヒトIL-4は,ナイーブCD4+(-ルパー) T(ThO)細胞を2型CD4+ T (Th2)細胞に 分化誘導するサイトカインであり,さらにその細胞上の CXCR4分子の発現を増強する28)そのため, Ⅹ4ウイ ルスはin vitroにおいてTh2細胞に効率良く感染し増 殖することが知られている28-30)そこで我々は,まず高 度免疫不全マウスであるC.B-n-scid及びBALB/cA-Rag2-'γcMdKO)の2系統にヒトIL-4遺伝子を導入 することにより,ヒトIL-4を生体内に恒常的に分泌す るマウス(IL-4+ C.B-n-scid及びIL-4+ BALB/cA-dKO)を作製した31)次にこれらのトランスジェニック マウスを用いて新規のhu-PBL-SCIDマウス(IL-4+ hu-PBL-SCIDマウス)を作製し,そのX4 HIV-1感染 に対する感受性が高まったかどうかを検討した. a. IL-4+ C.B-n-scidを用いて作製されたIL-4+ hu-PBL-SCIDマウスのⅩ4ウイルス感染に対する感受性 IL-4+ C.B-n-scid及びヒトIL-4の発現のない同系の マウスの腹腔内に抗マウスIL-2Rβ抗体を投与してNK 細胞枯渇処理をした後32)そのマウスの腹腔内に PBMCsを移植してIL-4+ hu-PBL-SCIDマウス及び hu-PBL-SCIDマウス(コントロール)を作製し,その 翌日にⅩ4株であるHIV-1N を腹腔内接種し,約1週 間後にマウスの血清及び腹腔内洗浄液を採取した.また 腹腔内洗浄液から回収した細胞の一部をIL-2添加培養 液で培養し,経時的に少量の培養上清を採取した. まずIL-4+マウス体内におけるヒトIL-4の分泌を確認 するために,マウス血清中のヒトIL-4の濃度をELISA で調べたところ, IL-4+ hu-PBL-SCIDマウス群では顕 著なヒトIL-4値の上昇を認め, hu-PBL-SCIDマウス 群ではヒトIL-4の産生を認めなかった.これらのこと からIL4十マウス内におけるヒトIL-4の分泌が確認され, また移植PBMCsによる外因性ヒトIL-4の明らかな産 生がないことも分かった. 次にマウス内に発現されたヒトIL-4のX4 HIV-1受 容体発現-の効果を調べるために,腹腔内洗浄液から回 収した細胞におけるヒト CD4及びCD4+ T細胞上のヒ トCXCR4の発現をFCMで角析したところ,コントロー ルマウス群に比べIL-4+ hu-PBL-SCIDマウス群から の細胞で顕著なヒト CD4及びCD4+ T細胞上のヒト C XCR4の発現の増強を認めた.このようにヒトIL-4の マウス内での発現によりヒトリンパ球におけるX4 HI Vl1受容体の発現の増強が見られたため IL-4+ hu-PBL-SCIDマウスのX4 HIV-1に対する感受性の向上 が期待された. X4 HIV-1のIL-4+ hu-PBL-SCIDマウス-の感染性 を調べるために,腹腔内洗浄液から回収した細胞におけ るヒトCD3及び細胞内Gag p24の発現をFCMで解析 したところ, CD3+p244細胞は両群にはあまり認められ ず,明らかな差も認められなかった.しかし腹腔内洗浄 液及び培養上清中のp24の濃度をELISAで調べたとこ ろ,コントロールマウス群に比べIL-4+ hu-PBL-SCID マウス群により高いp24の産生を認め,特に培養上清中 ではコントロールの100倍以上のp24値の上昇を認めた. 以上のことからin vivoにおいても内因性ヒトIL-4 の産生によりヒトリンパ球におけるCXCR4及びCD4 の発現が明らかに増強され,少なくともそのことにより Ⅹ4ウイルスのIL-4+ hu-PBL-SCIDマウス内での感染 増殖効率が著明に向上したことが分かった.

b. IL-4+ BALB/cA-dKOを用いて作製されたIL-4+ hu-PBL-SCIDマウスのⅩ4ウイルス感染に対する感受性 IL-4+ BALB/cA-dKO及びヒトIL-4の発現のない同 系のマウスを用いてIL-4+ hu-PBL-SCIDマウス及び hu-PBL-SCIDマウス(コントロール)を作製し,その 翌日にHIV-1* を腹腔内接種し,約1週間後にマウス の血清及び腹腔内洗浄液を採取した.また腹腔内洗浄液 から回収した細胞の一部をIL-2添加培養液で培養し, 経時的に少量の培養上清を採取した. マウス血清中のヒトIL-4の濃度をELISAで調べた ところ, IL-4+ C.B-n-scidと同様に, IL-4+ hu-PBL-SCIDマウス群では顕著なヒトIL-4値の上昇を認め, hu-PBL-SCIDマウス群ではヒトIL-4の産生を認めな かった. 腹腔内洗浄液から回収したヒトリンパ球におけるヒト CD4及びCD4+ T細胞上のCXCR4の発現をFCMで 解析したところ,これもIL-4+ C.B-n-scidと同様に, コントロールマウス群に比べIL-4+ hu-PBL-SCIDマ ウス群からの細胞では明らかなヒト CD4及びCD4+ T 細胞上のCXCR4の発現の増強を認めた. 次に腹腔内洗浄液から回収した細胞におけるヒト CD3及び細胞内Gag p24の発現をFCMで解析したと ころ,興味深いことにヒト CD3+ T細胞におけるp24 発現細胞の頻度はコントロールマウス群に比べIL-4+ hu-PBL-SCIDマウス群からの細胞において顕著に増加 (10倍以上)していた.また腹腔内洗浄液及び培養上清 中のp24の濃度をELISAで調べたところ,コントロール マウス群に比べIL-4+ hu-PBL-SCIDマウス群において p24値のより高い傾向を認めた. 以上のことから, IL-4+ BALB/cA-dKOを用いた IL-4+ hu-PBL-SCIDマウスにおいても,内因性ヒト IL-4の産生によりヒトリンパ球上のCXCR4及びCD4 の発現が明らかに増強され,少なくともそのことにより Ⅹ4ウイルスのIL-4+ hu-PBL-SCIDマウスにおける感

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HIV-1感染に対する新規治療法及び感染実験小動物モデルの開発 染増殖効率が顕著に向上したことが分かった.また細胞 内におけるHIV-1 p24の発現の解析結果から, IL-4+ BALB/cA-dKOで作製したIL-4+ hu-PBL-SCIDマウ スの方がIL-4+ C.B-n-scidで作製したものよりもHIV-1感染細胞をより効率よく検出できたので, Ⅹ4ウイルス に対する感受性がより高まったと考えられた. さらに両系統のIL-4+ hu-PBL-SCIDマウスとも血清 中のヒトIL-4濃度が高いほどX4 HIV-1感染に対する感 受性が高い傾向が認められたので,以後の実験にはヒト IL-4産生のより高いマウスが主に用いられた. C. X4 HIV-1の新規感染実験小動物モデルの薬剤評価 系への応用

IL-4+ hu-PBL-SCIDマウスモデルがX4 HIV-1感染 に対する新規薬剤の評価系としても応用できるかどうか を調べるために, Ⅹ4ウイルスの実験室適応株やMDR 臨床分離株の感染に対するⅩ4ウイルス侵入阻害剤CX CR4アンタゴニスト の防御能を本マウスモデルを用い て検討した. a. IL-4+ C.B-n-scidを用いて作製されたIL-4+ hu-PBL-SCIDマウスにおける,実験室適応株NL4-3感染 に対するCXCR4アンタゴニストの阻害効果 CXCR4アンタゴニストであるKRH-1636は, X4 HI V11の補助受容体CXCR4分子に競合的に結合してⅩ4 ウイルスの細胞内-の侵入を阻害するⅩ4ウイルス感染 に対する新規薬剤候補である33) この薬剤候補のⅩ4ウイルス感染に対する防御効果を in vivoにおいて検討するために, IL-4+ C.B-n-scid を用いて作製されたIL-4+ hu-PBL-SCIDマウスに実 験室適応株のHIV-1n を腹腔内接種する約1時間前と 接種した翌日にKRH-1636を腹腔内投与し,約1週間 後に腹腔内洗浄液を採取した.またその腹腔内洗浄液か ら回収した細胞をIL-2添加培養液で培養し,経時的に 少量の培養上清を採取した. 腹腔内洗浄液及び培養上清中のp24濃度をELISAで 検討したところ, KRH-1636未投与群では高いp24産生 を認めたものの, KRH-1636投与群においてはその産生 がほぼ完全に抑制されていた. このことから, KRH-1636のin vivoにおけるⅩ4ウ イルス感染に対する高い実効性が示され,またIL-4+ C.B-n-scidで作製されたIL-4+ hu-PBL-SCIDマウス が抗Ⅹ4ウイルス剤の評価系としても応用可能であるこ とが分かった. b. IL-4+ BALB/cA-dKOを用いて作製されたIL-4+ hu-PBL-SCIDマウスにおける, MDR臨床分離株感染 に対するCXCR4アンタゴニストの阻害効果 CXCR4アンタゴニスト KRH-1636のMDR臨床分離 株感染に対する抑制効果をin vivoにおいて検討するた めに, IL-4+ BALB/cA-dKOを用いて作製された IL-4+ hu-PBL-SCIDマウスにMDRウイルス(活性化 T細胞に効率良く感染し増殖する株を選択)を腹腔内接 種する約1時間前と接種した翌日にKRH-1636或いは コントロール薬剤の酒石酸を腹腔内投与し,約1週間 後にマウスの血清及び腹腔内洗浄液を採取した.またそ の腹腔内洗浄液から回収した細胞の一部をIL-2添加培 養液で培養し,経時的に少量の培養上清を採取した. 腹腔内洗浄液から回収した細胞を用いてヒト CD3発 現細胞における細胞内p24発現細胞の頻度をFCMで調 べたところ,酒石酸投与群に比べKRH-1636投与群にお いてその頻度の顕著な減少を認めた.また血清,腹腔内 洗浄液及び培養上清中のp24濃度をELISAで比較検討 したところ,コントロール薬剤投与群に比べKRH-1636 投与群においてp24産生の明らかな低下を認めた. これらのことから, KRH-1636はin vivoにおいて MDR臨床分離株に対しても高い感染防御効果を発揮で きることが示され,またIL-4+ BALB/cA-dKOで作製 されたIL-4+ hu-PBL-SCIDマウスも薬剤評価系とし て応用できることが分かった. おわりに HIV-1感染症/AIDSに対する新規治療薬候補として 現在我々が開発研究を進めている組換えVSVは,これ までin vitroアッセイ系においてその効果を示してき たが,即臨床試験で応用するにはその実効性や評価がま だ不十分である. 組換えVSVの改良すべき点としては,組換えVSV上 に発現しているHIV-1/SIV受容体分子の発現量が,本 来のエンベロープ蛋白であるG蛋白のそれに比べ非常に 低いことである.そのためHIV-1/SIV感染細胞-の感 染効率も低い.この感染効率を向上させる方法の1つとし て, vsv粒子上に接着分子のような宿主細胞由来の蛋白 を追加発現させることが考えられる.その追加分子の発現 によって組換えVSVの感染効率が向上すれば,その殺細 胞効果や感染抑制能もさらに増強できると期待される. 組換えVSVのさらなる評価法としては,感染実験動 物モデルを用いてin vivoアッセイ系で評価することで ある.現在既に感染実験小動物モデルとして先述したヒ ト化マウス(hu-PBL-SCIDマウス)の薬剤評価系にお いて検討を行っている. 以上のように今後は,本組換えVSVに改良・改善を 加えながら動物モデルにおいてその実効性を評価,それ を基に実験/治療方法の最適化を図ることによって,組 換えVSVの新規抗HIV-1療法としての臨床応用に向 けた開発研究をさらに進めてゆきたい. その一方で,我々はヒトIL-4遺伝子を導入した新規

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のhu-PBL-SCIDマウスモデル(IL-4+ hu-PBL-SCID マウス)を開発し,このマウスがMDR臨床分離株を 含めたⅩ4ウイルスの感染に対して従来のマウスモデル に認められなかった高い感受性を示すことを明らかにし た.その理由として,マウス内におけるヒトIL-4の持 続的な産生によりヒトリンパ球上のⅩ4ウイルス受容体 の発現が増強維持されたことが挙げられるが,その他に 産生されたヒトIL-4がマウスの生体内でヒト-ルパー T細胞の極性をより Th2細胞側にシフトしたことがⅩ4 ウイルスの感染増殖性に影響した可能性がある.

また, IL-4+ hu-PBL-SCIDマウスはIL-4+ BALB/ cA-dKOで作製する方がIL-4+ C.B-n-scidで作製する 方より X4 HIV-1感染に対して高感受性であったが, それはBALB/cA-dKOの方がC.B-n-scidよりも重度 の免疫不全であることに起因しているかもしれない. BALB/cA-dKOと異なり C.B-n-scidはマウスのNK 細胞が温存されているため,その細胞の枯渇処理がなさ れたとしてもごく少数のNK細胞が残存しその残存細 胞がCB-ll-scidで作製されたIL-4+ hu-PBL-SCIDマ ウスの感受性に多少とも影響を及ぼした可能性は否定で き'-kい. さらに, IL-4+ hu-PBL-SCIDマウスにおいて新規抗 X4 HIV-1剤候補CXCR4アンタゴニストの生体内評価 が可能であったが,本マウスモデルはそれ以外の先述し た組換えVSV等の様々なAIDS医薬品候補の評価・判 定に前臨床試験用として応用可能であろう.今後は,こ のマウスモデルがin vivoにおけるⅩ4ウイルス感染の 基礎的な研究や新規感染予防・治療戦略の開発に大いに 貢献することが期待される. 謝 辞 本稿で紹介した研究成果は,当大学医学部医学科地域 環境医科学講座免疫学分野の田中勇悦先生,田中礼子先 生,財団法人実験動物中央研究所の伊藤守先生,小倉智 幸先生,株式会社クレハ生物医学研究所の谷中幹郎先生, 熊倉成先生,国立感染症研究所エイズ研究センターの山 本直樹先生,杉浦亙先生,西津雅子先生及び米国Yale 大学医学部病理学講座のRose J.K.博士との共同研究 によるものです.この場を借りて深謝致します. 文 献

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参照

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