• 検索結果がありません。

寄生原虫の生き残り戦略 ―南米型トリパノソーマ感染による宿主アポトーシス抑制分子機構の解析―

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "寄生原虫の生き残り戦略 ―南米型トリパノソーマ感染による宿主アポトーシス抑制分子機構の解析―"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

寄生原虫の生き残り戦略

南米型トリパノソーマ感染による宿主アポトーシス抑制 子機構の解析

は じ め に 寄生虫はさまざまな環境に適応してその生活環を維持 しており, その生存のために多様な順応性を獲得してい る. 一方, 宿主は免疫系を活性化することにより, 寄生虫 を排除する機構を備えている. その結果, 宿主と寄生虫 の間で攻防がおこり, 両者の微妙なバランスの上に寄生 と い う 現 象 が 成 立 す る. 南 米 型 ト リ パ ノ ソーマ Trypanosoma cruzi は中南米でシャーガス病という心臓 疾患を引き起こす単細胞寄生原虫で, サシガメとよばれ る媒介昆虫の刺咬によりヒトに感染する. 血流中では鞭 毛を って泳ぎ, 心筋, 神経細胞などに侵入する. 細胞内 に入ると原虫は鞭毛のない形に形態変化し, 細胞質で 裂・増殖を繰り返す. 数十個まで増えると再び鞭毛が出 現し, 宿主細胞を破壊して血流に出現する. この過程を 繰り返すことにより, 十数年という長い慢性的経過をた どり, 心筋炎, 巨大食道・巨大結腸を引き起こす. ここで はトリパノソーマの生き残り戦略の 1つとして, 宿主細 胞のアポトーシス抑制という観点から, 我々の研究につ いて紹介したい. トリパノソーマ感染は Fas を介する宿主アポトーシス シグナル伝達経路の初期過程を抑制する アポトーシスは発生過程や生体の恒常性の維持などに おいて主要なはたらきをしており, 生体防御においても 重要な役割を担っている. 生体内の有害な細胞, たとえ ばがん細胞や感染細胞はアポトーシスにより排除される ことが知られている. 一方, ある種のウイルスはゲノム 上にアポトーシス抑制遺伝子をもち宿主の免疫機構から 逃 れ て い る. 我々は, ト リ パ ノ ソーマ と 培 養 細 胞 (HT1080) を用いた in vitro 感染系を用い,原虫感染が宿 主細胞のアポトーシスを誘導するかどうかを調べたとこ ろ, 抑制することを見出した. X 線や紫外線照射, 過酸化 水素, コルヒチン, 抗がん剤であるエトポシド添加によ り, 感染, 非感染細胞いずれでもアポトーシスが誘導さ れたが, Fasリガンドや TNF-αを添加した場合には感 染細胞で抑制が認められた. すなわち, トリパノソーマ 感染は death receptorを介する宿主アポトーシスを抑制 することが示された. 次にアポトーシスの生化学的指標として DNA 断片化 について調べると, 感染細胞では Fas刺激により DNA ladderが観察されず, DNA 断片化が顕著に抑制されて いた. また, アポトーシスシグナル伝達経路におけるプ ロテアーゼカスケードについては,death receptorを介す るアポトーシスの初期過程ではたらくカスペース-8, お よびアポトーシス経路で中心的にはたらくカスペース-3 の活性化も抑制された. トリパノソーマは宿主アポトーシス抑制因子 c-FLIP を利用している カスペース-8の酵素活性測定系に, 感染細胞のライ セートを添加すると阻害がみられたが, 原虫ライセート では阻害が認められなかった. このことから, トリパノ ソーマの何らかの因子が宿主細胞の調節機構を修飾し, 349 Kitakanto Med J 2006;56:349∼350 1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部保 学科 平成18年9月28日 受付 論文別刷請求先 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部保 学科 嶋田淳子

(2)

活性を抑制していると えられた. そこで, DNA マイク ロアレイ法を用い, 感染および非感染細胞で転写が上昇 している遺伝子を解析した. その結果, アポトーシスに 抑制的にはたらく cellular FLICE inhibitory protein (c -FLIP),apoptosis inhibitor 1 (c-IAP1),bcl-W 遺伝子発 現が有意に上昇していることがわかった. この中で c -FLIPはカスペース-8とホモロジーがあり,本アポトー シス抑制の主要な因子である可能性が えられた. そこ で small interfering RNA (siRNA) 法を用い c-FLIPを ノックダウンしたところ, c-FLIPタンパク質含量が 60%減少した. この時 Fas刺激によりアポトーシスを誘 導すると, siRNA 添加した細胞では添加しないコント ロールに比べ, アポトーシスを起こす細胞の割合が増加 し, アポトーシス抑制が解除されることがわかった. 以 上の結果は, トリパノソーマが宿主の抑制因子 c-FLIP を利用してアポトーシスを抑制し, 宿主の免疫系を回避 している可能性を示している. 今後, トリパノソーマがどのようなメカニズムで c-FLIPの発現を上昇させ宿主細胞のアポトーシス機構を 修飾しているのかを解明していきたいと えている. 文 献

1. Hashimoto M, Nakajima-Shimada J, Ishidoh K and Aoki T. Gene expression profiles in response to Fas stimulation in Trypanosoma cruzi infected host cells. Int J Parasitol 2005: 35: 1587-1594.

2. Hashimoto M, Nakajima-Shimada J and Aoki T. Trypanosoma cruzi posttranscriptionally up-regulates and exploits cellular FLIP for inhibition of death-induc-ing signal. Mol Biol Cell 2005: 16: 3521-3528. 寄生原虫の生き残り戦略―南米型トリパノソーマ感染による宿主アポトーシス抑制 子機構の解析―

図1 トリパノソーマ感染による宿主細胞のアポトーシス抑制のモデル 350

参照

関連したドキュメント

[Publications] Asano,T.: "Liposome-encapsulated muramyl tripeptide up-regulates monocyte chemotactic and activating factor gene expression in human monocytes at the

前述のように,本稿では地方創生戦略の出発点を05年の地域再生法 5)

解約することができるものとします。 6

子ども・かがやき戦略 元気・いきいき戦略 花*みどり・やすらぎ戦略

子ども・かがやき戦略 元気・いきいき戦略 花*みどり・やすらぎ戦略

前年度に引き続き、現地提携団体の要請により南インド・タミルナードゥ州ディンディガル・ナマカル地区の HIV 感 染症の子ども及びその家族(条件として平均 3〜5

★西村圭織 出生率低下の要因分析とその対策 学生結婚 によるシュミレーション. ★田代沙季

今年度は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、これまでの「生活習慣」が大きく見直され