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音楽様式の理解とつまずきの解決 : 伝統邦楽,和製ポップス,西洋芸術音楽の関連と相違

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Academic year: 2021

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(1)Title. 音楽様式の理解とつまずきの解決 : 伝統邦楽,和製ポップス,西洋芸術音 楽の関連と相違. Author(s). 浅井, 良之. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. C, 教育科学編, 47(2): 333-346. Issue Date. 1997-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2168. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 平 成 9 年 2月 February,1997. 7巻 第2号 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第4 i l i i fEduca i doUn i t t t lo fHokka on (Sec onIC) Vo Journa ver s .2 yo .47 ,No. 音楽様式の理解とつまずきの解決 -伝統邦楽, 和製ポッ プス, 西洋芸術音楽の関連と相違- 浅. 井. 良. 之. は じめ に. 私達にとって西洋芸術音楽は, 接する時間, 関係する資料, 関心において 「音楽」 のほとんどを占め基準 とな っ て いる. しか し, 学生 ・ 生徒 にと っ て は, 「和 製 ポ ッ プ ス」 が 放送, CD, の 量の多 さ, 接す る 時 間. 的な長さ, 演奏家に関する情報量, 身近な感情を対象とする表現の内容, 表現そのものに関する心情などに おいて基準となっている‐ 例えば 「砂山」 「叱られて」 といった日本歌曲の演奏を見ると, 和製ポップスと 共通し, 私達からみると崩した歌い方が 「身近である, 親しみやすい」 と受け入れられている. こうした状 況から, 西洋芸術音楽の様式を中心とした教科書の教材と和製ポップスの様式上の相違が一つのきっかけと なって, 「学校音楽」 を受け入れることに対するつまずきがおきると考えられる亘} 和製ポッ プスをみると, 伝統邦楽と共通する作曲上, 演奏上の技法を見ることができる. 伝統邦楽は, か けごえ, はやし言葉, わらべうたなど身近な音の動きをもとに工夫され, 能楽, 浄瑠璃, 長唄など 「日本語 のうた」 の典型を作ってきた. そこで3者の類似点と相違点を, 生徒と教師双方が意識することが, 「学校 音楽」 に対する違和感が原因となったつまずきを理解するために役立つと考えられる‐ ここではつまずきの解決のために 「邦楽と洋楽の違い」 という視点から 「なじみがある, または違和感が ある」 について考える‐ 次につまずきを引き起こさない, または解決するために, 教師が意識し, 理解して いる方が望ましいと考えられる事柄について, 初等音楽科教育法の授業において行なった講義を振り返り, 考察を行なう.. 「なじみがある, または違和感がある」 工 .拍. 1・付点音符 小学校では1拍を付点8分音符と16分音符のように分割したリ ズムを, 「タッカのリ ズム」 と呼んでリ ズム唱をさせることがあるが, この唱えかたが最良であろう か‐ 1) 「た っ か た っ か」 ま た は 「た っ か」 という 日本 語 の単 語 はな いが 「チ ッ ク タ ッ ク」 な らば, 秒針の 音の. 真似として意味を持ち, 児童が知っている身近な単語である‐ 私達は付点のリ ズムを既に知っていて, そこ に 「タッカ」 の文字を当てているが, これは順番が逆であり, 生徒が知っている言葉のリズムを 「付点のリ ズム」 として整理, 系統化することがより望ましい順番であろう. 2) 「タ ッ カ のリ ズム」 と発 音 し生徒 に復 唱 させ る 時の言 葉 のリ ズム に は, 「タ ッ ・力 の・ リ ズ・ ム ー」 と. 発音され, 付点が含まれない. 譜例1-a. 小学生には何がタッカで何が付点なのか分かりにくかろう‐ 付点音符 (はねるリ ズム) については, 小泉文夫氏が 「日本語のツメル音は全然聞こえない」 という金田 333.

(3) . 浅. 井. 良. 之. -春彦氏の意見を紹介した上で「私がここで,付点音符のはねるリ ズムと呼ぶのは, 必ずしも日本語の “行っ た” ”勝 っ た” の “ッ” の 音 のこ とを意 味 して い るの で はなく, 文字道 り 付点 音 符の よう な リ ズム を指 して “ い る の だが」 と して英 語 の 歌Thi s old Manの 楽譜 を あ げ 「 Kni ck, Knack, Wack”は1 シラ ブル だ か ら. 4分音符1つにあてられているが, 語尾のckは, 母音を伴わないとはいえ, 実際には発音される」 と付点 1 2 8分音符にKni ,16分音符にckを割り振った譜例をあげている三 3) タッカーと2つの4分音符の連続に読まれる, または付点8分音符のあとの16分音符に次の拍の4分 音符がタイで結ばれたリズムと読まれることを避けるために, 2回以上繰り返す必要があるが, タッカタッ カと1拍 ごとの同音の繰り返しよりもチックタックの方が2つの拍による強弱のまとまりを作ることから, リ ズム 唱 に はより 望ま しい といえ る.. 4) 付点のリ ズムで繰り返し発音する場合, 「タッカ」 の 「夕」 と 「力」 は同じアの母音が続き, 2つ が同 じ強さ で発 音さ れや す い‐ この ため 付点 音 符の 弾 む よう な ニ ュ ア ンス が表 現 しにく い‐ これ に比 べ 「チ ッ ク. タック」 の 「ク」 はウの母音を伴うためアクセントが弱くなり, 付点のリズムの表現に適している‐ 以上の事柄から, 「付点はチックタック」 と譜例1-bのようなリズムで復唱させるほうが, 付点音符と 付点でない音符のリ ズムの対比も作ることができ望ましいと思われる‐ 譜 例 1 - a,. 譜例 1-b. 刀自風 月 タ ッ カ の リ ズ ム. ふて んはチックタック. この問題は発音される様子において, 欧米の言語にあり, 日本語にない事柄に起因すると考えられる. 2・付点のリ ズムに歌詞がつく場合 1) 2つ の パ タ ー ンが ある. 1つ は ”チ ッ クタ ッ ク“ のよ う に, 1拍 の な か に1つ のま とま り の あ る単 語が つく 場 合, もう 1つ は “ク タ ッ ク チ ッ” の よう に拍 をま た ぐ場 合. シ ュ ー ベ ル ト 「水 車小屋 の 娘」 第 6 曲,. 5・7小節は1つの単語で1拍の中でグルーピングされ, 13/ j ・節は16分音符と次の音符がアクセントと単 語の機能からグルー ピングされる. 前者は滝廉太郎作曲 「箱根八里」 1小節目, 後者は小学校歌唱共通教材 では3年 「ふじ山」 の 「み‐おろして」 「いちの‐やま」 などの付点4分音符と8分音符の形ではあるがや や似たものとしてあり, 中学校1年生の合唱教材, スメタナの 「モルダウ」 に平井多美子が作詞した9小節 目からの 「わこーうど-さざ-めく一」 があげられるが, 小中歌唱教材をつうじて非常に少ない. 0, 11小節の記 2) 滝廉太郎作曲 「花」 (小学校5年・鑑賞曲) の 「はるの・うららの」 および5, 9, 1 譜は付点8分音符と16分音符の形でなく「う」の前に16分休符を記している‐これは「は一るのーう」 「ら- ら一の」 と歌われることを防ぐ意味もあろうが, 伝統邦楽において 「ンッ」 「ムッ」 と気合いをかけて間を 計って発音する表現を念頭に置いたとも受け取れる‐ それぞれの音の発音されるタイミングが同じとはいえ, 洋楽の付点音符の 「はねるリ ズム」 と異なる点が興味深い. この16分休符を前においた 「う」 と続く 「らら の」 を拡大するとアウフタクトの問題となる‐ 3・アウフタクト・特にその拍子の最後の弱拍から始まる音楽. (弱起の曲). 3 } 1) ドイツ民謡は 「アウフタクトで始まるものが多い. リズム構造が規則的である{ 」 とされる. 例 え ば, ブラ ーム スの 「ドイ ツ 民謡 集」 42 曲のう ち 37 曲が, ま た シ ュ ー ベ ル トの 「美 しい水 車屋 の娘」. 20曲中17曲がアウフタクトで始まる. その音楽的意味として, 柴田南雄氏は 「ロシア, ソ ヴィ エトの音楽 にも楽譜の上ではアウフタクトや休符はいくらも発見できるが, ドイツ音楽とちがってフレー ジングやアー ティ キュ レーショ ンは一般に散文的である. だからアウフタク トはあっても和声的に, 律動的に強調されて 334.

(4) . 音楽様式の理解 とっ ま づきの 解決. いない‐ ドイツ語の定冠詞, 不定冠詞などがそのままアウフタクトと当価値だとはいわないが, ある民族の 言葉と音楽が一体不可分なことはいうまでもあるまい…」 とのべられている‐ 2) 教材の場合はどうであろう‐ アウフタクトから始まる歌は小学校歌唱共通教材では6学年の 「おぼろ月 夜」 1曲, 中学校歌唱共通教材では2・3年の 「早春賦」 1曲. 共通教材以外の曲を考慮しても, その数は 少ない. 「雪山賛歌」 は英語では3拍目のアウフタクトから始まるが, 日本で は1拍目から始まるように変 更さ れ てい る.. 6分休符を前においた 「う」 のように, 「大地讃頒」 3)アウフタクトの表現をみると,前にふれた 「花」 の1 を歌う時に 「ンッ母なる大地の」 と 「ンッ」 を声には出さないだろうが, 歌う時にそれぞれの拍を洋楽より も均等な強さとして意識しているのではないだろうか‐ その結果 「ウンはは・なーる」 と4拍目と1拍目が分 離した演奏をしばしば耳にすることがある‐ 能楽では声楽(謡) が大ノリ, 平ノリというリズムの場合, 嘱子 の刻む拍より も半拍早く始まる. 現象として洋楽のアウフタク トと似ているが, 能楽では気合い, 意気込み を強く込められたために 「思わず言葉が半拍前に押し出された」 ニュアンスがあり, 洋楽のそれとは異なる‐ 4) 日本語の発音される様子をみてみよう. 「ほっ かいどう」 という文字は, 俳句の場合には 「勝った」 の 「ッ」 の よう にツメ ル音 も1 文 字 に数 え るので, 6文 字 となる. この数 え 方 の 場合 は 「リ ズム」 は関心の 外 ” ”おう” とい っ た母 音 の 連続 は1つ に教え る の で3 “ にあ る‐ フ ラ ンスの 詩 の 場 合 は母 音 を数 え るが あ い. 音節となる‐ リズムを強調しながら俳句を読むと, 1句目と2句目の間のとりかたに2種類がある‐ 「古 池や. 蛙 と びこ む. 「五月 雨 を. 集 め て早 し. ” 水 の 音」 “ふ る ・ い け・ や - ・ ウ ン・ ウ か ・わ ず ・ と び・ こ む ・ みず・ の お・ と 最 上川」 “さ み・ だ れ・ を一 ・ ウ ン・ あっ ・ め て ・ はや ・ し一・ もが・ みが ・わ. 「 、る ・い け・や -」 の よ う に2 文 字 を 1拍 に割 り 当 て て読 むと, 1拍 半あ と に 「かわ ず」 が, 「さ み・ だ. れ・を-」 の場合は1拍あとに 「あっ めて」 が発音される. 歌曲になった場合は 「かわず」 が半拍遅れて始 まるとしても, ドイ ツ歌曲のアウフタクトにおけるような律動的な強調はされない. このことは拍子の問題 につ なが る.. 4・拍 子. 例えば, 校内合唱コンクールなどにおいて, 普通の生徒が4拍子の曲を指揮 した場合に 「個々のビートは 合っているのだが, 鳴っている音が1拍目の時に指揮者が間違えて3拍目を振っ ている」 ことがある. 日本 にお い て 「拍 子」 と は何 だろう‐. 1) 「さく らさくら」 の歌について, 「インドの人に聴かせて, どこを第1拍と感じるかをテストした結果 を見ると, 日本人とは全くことなり長い音符の所を拍の解放点と感じ, その部分を第1拍として音楽を分節 5 } 」 という 報告 が ある‐ してい る‐ 例 え ば 『さく ら』 の部 分 で は 『ら』 の 音 を第 1拍 と して感 じる の で ある. t しか し私 たち はこの 曲 を,例 え ばよく 似 た 旋律 とテ ン ポの, グリ ー グ作 曲 「ペ ー ル ・ ギ ュ ン ト・オ ー ゼ の死」 の よう に, 洋楽 で いう ところ の 4拍 子 と して 感 じて い るだろ う か‐ 2) 三, 三, 七, 拍 子 とい っ て 手拍 子 を “チ ャ ッ チ ャ ッ チ ャ ッ, チ ャ ッ チ ャ ッ チ ャ ッ, と打つ‐ 洋 楽で 考 え “ る と 4 拍 目 が 休 止 符 に な っ た 4 拍 子 と な る が, 能 楽 の 拍 につ い て の 考 え で は チ ャ ッ チ ャ ッ チ ャ ァ 一 % チ ャ ッ チ ャ ッ チ ャ ァ ー ッ”と3 つ 目の チ ャ ッ が 長く 延 ばさ れ,三段 飛 びで例 え る と 「足 が 地 に 着 いた点 を も っ て拍 に数え ている」 と捉 え, 「三 ッ 地」 と いう 拍 の扱 い と して しば しば用 い られ る. 「拍 の 間合 いが均 一 で. ある」 というのは洋楽にとって当然とされるが, 能楽では 「拍の間合いが意図的に不均一である」 が当然と さ れる‐. 3) 言葉が発音さ れる時の周期的リズムについて比較するために, 英語, ドイツ語のように強弱のアクセン 335.

(5) . 浅. 井. 良. 之. トが 強く ない フラ ンスの 詩 につ い て見て みよ う . ア ル マ ン・ シル ヴ ェ ス トルの 詩 「秋」 (G ・ フ ォ ー レ作 曲) につ い て 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8 9. lo ll. 12. Au/ton・/ne au/ciel/bru左neux //aux/ho/ri/zons/na/vrants// ,. 「詩を解するには先づ第一に音綴を正して読み 律動の感覚を身に着けなければならぬ 一中略- 十二音 , ‐ 綴の詩句は原則として中央に句切り (セジュウル) があり, 六音綴づつ2つの半句に分かれてゐるといふこ とも, 律動の構成を味はふ上か ら是非とも心得て置かなければならない 句切りとは 簡単にいへば詩句の . , 意味や内容から来る心理的な休止であり, これによって音単位の或る集団を組み立て それぞれの集団の終 , りに律動強調音 (アクサン・リトミク) を置いて, リズムの印象をあざやかにするものである 更にまた ‐ , この律動感を一段と鮮明ならしめ,同時に詩句と詩句との結合を緊密にし,快い譜調を醸し出す脚韻 (リム) 6 } の効果を意識して味はふやうにしなければならぬ.E 」 このように, 数を揃えた母音や脚韻による, 周期的 なアクセントを意識することを勧めている. 4) 目に見える動きとしての 「踊り」 と拍子のまとまり 「リズムは基本的には身体的なものであり, 音楽的な意識は身体的な経験の結果である 」 ダルクローズ ‐ ‐ 「 古典舞曲の動きにおいて 膝を曲げることを総称してプリエと呼び, それに対して腫を上げること また , はプリエの状態から脚を伸ばすことをエルヴェという-中略-ダンスの上のアクセントは体が上方向へ働く エネルギーをもっ ということである. -中略一拍との関係は次のようになる‐ アウフタクトとなる第1拍目 の前拍は準備の動きと してプリエで始まり, その連続動作としての第1拍は両足とも腫の上ったエルヴェの 状態となる. 」 「メヌエッ トについてであるが, 通常楽譜では四分の三拍子で書かれている‐ 一方ダンスと してのメヌエッ トステッ プは六拍で構成され二小節を要する. この事実から考えると音楽上のフレーズも当 } 然の事として二小節を単位としてとらえることが本質的と言えよう. ” 」 こうした古典舞曲の演技は1 9 8 9年1 0月 25 日に東京 グローブ座で公演されたオペラ・バ レー 『妖精の女 王』, 音楽H・パーセル, 演出, 振付横井茂, バ レー森下洋子, 清水哲太郎ほか, 指揮早川正昭, 東京ヴィ ヴァ ル ディ 合 奏 団の 公演 で行 な わ れた ク ラ シ ッ ク バ レーや ウイ ンナ ワ ル ツ にお い て も この動 き は多く 用 . ,. いられる‐しかし私達の一般的な 音楽に関する動きはどう であろう‐ 「強拍」の外国語doun beat Niedr‐ , schlagは どれ も下 方へ の動 きを意 味 し, 「弱拍」 のup-beat, Auf taktは上 へ の 動き を 意 味す る. ま た 音楽. に合わせて行進する時, 拍に合わせて足を下げ, ロックやポップスにおいても 「縦ノリ」 といって拍に合わ せて, 演奏者, 観客がともに体を上下に動かすが, その動きのエネルギーは下方向に動く時にあり 上方向 , に拡散されるものとしてではない. 何小節かにまたがって拍子を決める動きの単位とその繰り返しは, ラ ジ オ体操や大勢で組んだフォークダンスに見られるが, 生徒にとって身近なポッ プスは, 各拍毎であり小節単 位でない‐ 伝統邦楽を見ると,雅楽においては「打楽器のリズム型の区分は, 管楽器によって奏される主旋律のフレー 8 〉 ジングとかならずしも一致していない.( 」 また能の 「中の舞」 では, 螺子方の鼓に対し, 能管の節は1拍 半遅れて始まる. 江・音階, 高さ 1・様々な音楽を演奏, 聴取すると, 洋楽では音の階段が限りなく上下にのびていることを強く感じる. た とえ ばR ・ シ ュ トラ ウスの 「バ ラの 騎 士」 の 最終 部 分, 元 帥夫 人, ソ フィ ー オク タ ビア ンの 3重 唱や 幕 , ,. 切れのゾフィ ー, オクタビアンの2重唱などの箇所では, 前もってしっかり用意された音の階段が限りなく 336.

(6) . 音 楽様式の理解 とっ ま づきの 解決. 上に続き, 声がその中を浮遊しているかのように聞こえる‐ これに反して伝統邦楽およびその様式を取り入 れた芸術音楽やポピュラー音楽では,ある一定の高さで頭打ちになっているような感じを受ける‐例えば 「北 の宿から」 のサ ビの終り 「あなた恋しい」 の 「い」 は下から音を一生懸命持ち上げて獲得したかのような高 さに聞こえ, 更に上の音の階段はないか, または非常に努力しないと上にあがれないかのように感じる. こ のように感じるのは私一人ではないのだが, なぜか‐ 伝統邦楽の多くは音域の狭い声または楽器による旋律 だから? ブルックナーの交響曲の主題は2オクター ブを超える. しかし筆の音域も2オクター ブを超える‐ 2. 「日本民謡や日本の多くの芸術音楽では, オクターブも5度も3度も重要ではない‐ むしろそれらの存 在に無関心でさえある- -中略-西洋のオクター ブに相当する重要な枠組は完全4度である. あくまで完全 } 4度を基本に, 音の組織が成り立っている 一9 」 「旋律の音が上方に向かっ て拡大していく時には, ある核音の長2度上のディ スタンツ音が核音に変質し, 下方に音域を拡大する時は長2度下のディ スタンツ音が同じく核音に変質し, それぞれ, そこから4度のコ 1 D ンソナ ンツ の 連鎖 を 新 た に形 成 し始 め る こと であ. Q. “ディ スタンツ音が核音に変質” するためには “長2度をなす2音は上の音で終止する” 原則があるので , この2音の間を何回か往復するなどしてから核音になれる. このように上 に延びていくためには音にそれな り の エネ ル ギー を 必要 とす る‐ 次の コ ンソ ナ ンツ が “新 しく 形成 し始 め” た場 合, こ の新 しい4度 の コ ンソ. ナンツの中の核転位音の位置が前のものと異なる場合もある‐ 例えば 「木遣音頭」 の音階は下の4度枠のな かは都節音階であり, 上の4度枠のなかは律音階である‐ こうして一歩一歩先を探りながら音階を構成して いく様相を呈する‐ このため, 高い音を 「高そうに」 演奏することがふさわしいことになる‐ 30西洋のオクター ブの間隔の場合は, 3度5度が重要であることから和音の支えが何オクター ブにも渡っ て予想でき, このため上下に何回でも繰り返 し拡げることができる‐ さしあたり以上のように考えることで説明がつくのではないだろうか‐ m ・ 発声. 1・小中学校の授業で, 「□を大きく開けて歌いなさい」 という指示をしばしば教師がするが, どのような 音 楽 にお い て, 有効 で あ ろう. 生 徒 の 聞 い て いる和 製 ポ ッ プ ス で はそ のよ う に 口 を大 きく 開 ける こと はな い‐. 生徒は 「口を大きく開ける」 という指示を 「口の前を大きく開ける」 と受取り, 違和感があると思われる. ク ラ シ ッ ク 音 楽 の発 声 で もウイ ー ン系 の 歌手, 例 え ばE ・ シ ュ ワ ルツ コ ッ プ フ が 草津 で お こ な っ た公 開 レ ッ ス ンで は 「魔 笛」 の 「何 と美 しい 絵姿」 を 歌 う二期 会 の 岩淵 嘉 蛍 にた い し, 「パ パ ロ ッ テイ の よ う に 前を 開. m けて歌うのでなく ドミンゴのように」 「口の奥をあげて鼓膜を内から押すように{ 」 と指導している‐ 2・ 「旋律線」 をはっ きり作るためには, 子音をリ ズムを刻むようにはっ きり発音し, 母音の響きを均一化 し, 音を途切らせずにフレーズを作る必要がある‐ パ レス トリ ー ナ の マ ルチ エ リ 教皇 ミ サ の 「キリ エ」 で は, は っ きり と 目立つ Kの子 音 が, 「クリ ステ ・ エ レイ ソ ン」 で はChr stes onがそれぞれ原則的には強拍にあり拍を刻む‐ バッハのマタイ受難曲第1曲では Kom mt tの 子 音 が 小節 の 強拍 にあり, 子 音 の響 きが 音 楽表 現 に 大 きな 効 果 を作 る. ,Tocht , K1agen,Sehe 仮 に, 「来 なさ い, 娘 たち, と もに 嘆きま しょ う‐ ご覧 な さ い」 と訳 して 歌詞 に使 っ て も, 来 なさ いの K,. 娘たちのM, ともにのT, ご覧なさいのGは, それぞれ各単語の高さのアクセントが2音節目にある単語な 337.

(7) . 浅. 井. 良. 之. ので強調することはできない‐ また, 常にこのように固く発音するだけでなく, 第5曲 「いとしい救い主の land duの子音は文脈に応じて, 柔らかく発音される‐ このような子音に先行され 君 よ」 Duliebr Hei ,旋 律線を描くために均等化した母音が途切れることなく続く. 子音の発音に関するアタックの強さの多様さと その持続は弦楽器を典型とする様々な音の立ち上がりに, ドイツ語の単語の最後にあるcht l d等は旋律 t rr , , の構造に関係しよう‐ 日本語の歌曲においては, そのような演奏法, 歌唱法は困難である‐ 日本歌曲の演奏 では子音を拍にはっきり当てて歌うことが常に有効とは限らない‐ 「宵待草」 で 「待てど暮らせど来ぬ人」 の T, D, K, S, H と い っ た硬 い子 音 をそ れ ぞれ ドイ ツ 語 のよう に, はっ きり拍 に当てて 歌 っ た な ら, 恋. 人を待ちこがれる歌の表現に相応しいであろうか‐ とくに 「ギター, ピアノ, ドラム」 などの単語の, 本来 第1音節にあるアクセントを第2音節にずらして発音する今の若者にとって, 抵抗感があろう‐ 外国語の芸 術歌曲の場合, 子音を拍の直前に響かせる‐ 日本歌曲の場合もほぼ同様に歌われるが, 和製ポッ プスの場合 は多くの場合, 拍よりも僅かに遅らせる‐ 以上の基本的事項につ いての考察をふまえ, 講義においては洋楽と邦楽の相違について, 学期の前半は実 技の中で意識を向け, 後半に言語化して整理することとした.. 初等音楽科教育法の講義経過 1・歌いながら指揮をする練習 1) 打点をはっきり示せる‐ 拍を分割する‐ 拍点の明確さに意識を向けるため 「教師が打点を明確に示すと生徒は拍をしっかりとれる」 例として, 打 点を明確にした指揮とあいまいな指揮の両方を振り, 指揮棒に合わせて手拍子を打たせ, 技術の必要性を意 識させた. このあと斉藤秀雄の 「指揮法教程」 をアレンジしながら 「たたき」 「はねあげ」 を練習した‐ 2) 指揮棒が下のポイントを打った瞬間に拍の頭がある指揮として, エカ・ペッカ・サロネンの映像を, 下 のポイ ントから跳ね上げる瞬間に拍の頭がある指揮として,ギョルグ・ショルティ の映像をみせ, 「たたき」 「はねあ げ」 のイメ ー ジを つ かま せ る こ とを 狙 っ た‐. 3) バ レー 「白鳥の湖」 の第1幕から 「杯の踊」 を映像と共に鑑賞させ強拍の時にジャ ンプする様子を指摘 して 「強拍 の上 に むかう エネ ル ギー」 につ いて理 解さ せ, ポ ッ プ ス との違 い を意 識さ せ た‐. 4) 4拍子を振りながら 「むすんでひらいて」 を歌わせた. 次に 「合唱はちがうパートを聞くことが大事」 と 言 っ て 「むすん で ひ らいて」 を学 生 に 歌わ せ, 5 小節 目か ら教 師が 「ロ ン グ. ロ ング. に歌い, 次 に学 生の 半 数 に 「むすんで ひ らいて」 を, 残り の半 数 に 「ロ ン グ ロ ン グ が ら指 揮 をさ せ た.この 曲 の仕 上 げと して「むすん で ひ らいて」「ち ょ う ち よ」 「ロ ン グ. ゴ ー」 を 一緒. ア ア. ゴー」 を 歌いな. ロ ング. ア. コ ー」. 「線路は続くよ」 の4曲が一緒になった楽譜2を歌わせた. 学生の感想 「 (跳ねあげの練習で) 小指と薬指を (内側に) にぎった時ピクッと跳ねあげができたので嬉し くなりました」 「隣から違う歌が聞こえてくるし, 指揮の図形と拍点を意識すると声がでないし, 自分が分 裂したみたいで面白かった」 「発声が難しかった‐ でも歌が上手にハモってきれいだった‐ 違う歌を歌っ て いるの にこん な にハ モ る と は驚 きだ っ た」. 5) 拍を分割した指揮をしながら 「翼をください」 を一通り歌わせた後実習を行なっ た. 「この大空に」 か らは拍を分割したほうが言葉をはっ きり歌いやすいことを理解させた. 特に, この曲の 「おおぞらアにイっばさをひろオげ」 のように, 逆付点のリ ズムで気合いを入れて歌いた い場合には, 分割した裏拍を振る動作において 「イチトッニイ トッ」 と指揮棒を固く, しっかり止め, 旋律 を中心にのびのびと歌いたいときには裏拍を止めずに軽く分割したほうが効果的なことを, 理解させた. 338.

(8) . 音楽様式の理解 とっま づき の 解決. 6) この 曲 のよう にポ ッ プ ス で は2, 4拍 でアク セ ン トをつ ける ことが多 い‐ 1, 3拍 で 体 を沈 め, 2, 4. 拍でバ レエのように上方向に跳ね上がるように働くエネルギーを感じながら歌うように指示した‐ 「指揮の仕方で, こんなにも歌いやすくもうたいづらくもなるものか, 分割がとてもいい効果をうむこと がよく分かりました. 」 「この大空」 の1・3拍で分割すると2・4拍の上がる感じがうまくでるような気 がしました. 先生になってから, “大きな声ではっきりと” と指導するよりずっ と子供に分かりやすいと思 つ」. 7) 発声について以下のポイントを意識させた. 「今私のオ」 のオは遠くの友達を呼ぶつもりで, 喉の奥を 開 け, 目線 を遠 い 所 に おく. 「か なう な ら ば」 の ウ とナ は同 音な の で2つ 目の ナ を 目立 たせ る‐ その ため に. は子音の発音を利用して口を開け直す. 以下同じパターンの所を練習した. 8) 「いま私の」 をずりあげながら歌い, 「この大空に」 のリ ズムを8分音符の連続に単純化すると, 演歌 のようになることをあげ, 次に中島みゆき作詞作曲 「時代」 の教科書の楽譜Aと中島みゆき自身のうたった CDから採譜した楽譜Bの2つ をのせたプリントを配布し, 楽譜Aを変えていることに注意させ聞かせた. 「この よう に変え る と いか に も この 人 の 歌 ら しいが, な ぜ か?」 考 えさ せ, この よう な 変 更 は和 製 ポ ッ プ ス. にしばしば見受けられることを, 井上陽水 「少年時代」 を同様な例としてあげ, 関心を持たせた. 譜例 2. むすんでひら いて, ほか3曲の合唱. ラ フ. よ. ク. く. 後 -. 可” .. 、 t. ‐. て′. 鵡. て. く. 可. 必. ,. ▲ Zv. て“. た ‐. く. ヒ き. う. れ. て. ・・. ぬ. そ. た一. の. ん. の t ぃ た び、 の. う た. の. は .た. た ヮ. と. に し. て. J. 3. 339.

(9) . 浅. 井. 良. 之. 2 ・ 「サ ンタ ・ ル チア」 をイ タ リア 語 で 歌わ せ る.. 1) イタリア語の発音と各単語の意味を書いたプリ ントと和声記号, カデンツの位置, アポジアトゥーラを 記入 した楽 譜 を使 用. 「 “サ ンタ ル・ チア” だと思 っ て い る人 が あ る けれ ど “サ ンタ・ ル チ ア” 聖 ルチ ア.. (“実は私もサンタル・チア” だと思っていました” という学生の感想が複数あった) 歌詞の2度目の “ル チア”の チ はア ポ ジ ア トゥ ーラ だか らア ク セ ン トを付 け,次 の 音 に寄り 掛か るよ う にスラ ー を 付 ける- 」 「日 本 人が 呼ぶ と “山 田” を ”や -ま だ” と始 め にアクセ ン トを付 ける が, 外 国人 な ら “やま - だ” と2 音節 目 にアク セ ン トを付 ける. シ ュ ー ベ ル ト, バ ッ ハ ー グノ ー の ア ベ ・ マ リア も同 じよう に2 音節 目 にアク セ ン ト. が付き, 上に向かうエネルギーを表現する‐ 」 「道路から4階にいるルチーアを呼ぶように」 発声をかねて 呼びかける練習を行なった. 歌の練習では, 上に跳躍する時に 「音をずりあげない, 子音も下で重く発音し ない, 高めに発音したLuc i aのCの子音を利用してその音を正確にとる」 ことを指示した‐ 2) 文の終りに相当する段落はカデンツ終止の所にあり, 2小節目は終わらない属和音, 旋律は音階の7音 だから, また3小節目も属和音だから緊張を保ち, 4小節目で安定感をつくる‐ 「2小節目は属和音で旋律が終わらない音だから, 絶対に次の音まで切らない 音階の7音はピアノより ‐ “ も高く歌うほうが, その特徴がでる」 (この2項目については 頭ではそうした方がいいことも, やること も理解できるけれど, 自分でやってみると演歌みたいになってしまう” という学生の感想が多かった) 4) 2・4小節の終わりの母音は6・8小節の終わりの母音と同じ韻を踏み, また1 4小節以外の偶数小節 はす べ て1拍 目 にアポ ジ ア トゥ ーラ が あ る‐ 2・4・8小節のまとまりを持っていることを意識させた‐. 5) 「音が高くてつらい」 という感想があったのでイ長調, 変ロ長調で歌わせた後, 音階練習を行なっ た‐ 「声を出す時は頭の中に音階の階段をイメージします‐ これがクラシックの発声の特徴なんですけど, 後ろ に向かっ て階段を上がって行くんです‐q も という意識は, 高い声の発声がつらい学生に非常に分かりやす い説明らしく, 「わかったぞ」 という感想, 意見が多かった‐ 音階の階段が上下にのびていることを意識さ せ よ う と低 い F ・Fi s・ Gか ら2 オ ク タ ー ヴ上 行音 階を 歌わ せ た‐「マ ライ ア ・ キ ャ リ ーが 出来 るの だか ら」. と頑張らせたが, 学生の声域が予想よりも狭く, この方法は駄目だった. 「声を出さずに, 下からずーっと 上に音の階段を想像して上がりなさい. もし4オクターヴ想像できたらすごい」 といって ピアノと合わせて 1度 や っ て か ら, ピアノ な しで想像さ せ た.. 学生の感想 「言葉の意味がだいたい分かれば, あとは発音と発声でイタリアの歌らしくなるというのは, 考えて見るとすごいことだ‐ 旋律とコー ドがそれだけで表現力を持っ ている」 「音の階段がずーっと上にの びて い る感 じは, そう 思 っ て 歌う と気 分 が い い し, 理 解 で きた が, 声 がつ いてい か な い」 「上 に想 像 して い. くと途中でUターンして下がってしまう‐ 不思議な気がする」 3・ 「夏のゆうべ」. 無伴奏混声4部合唱フインランド民謡, 「合唱のよろこび」 河合出版, p,7 7を使用‐. 「な一つ」 のTの子音で始めの拍の刻みを作る. 同音が続く時は後の拍をやや目立たせるが, 「どき」 は 2 ・3拍 な の で 「な っ」 の ア ウ フタク トと対 にな っ て フ レー ズの ま とま り を作 る. 「ま き ば」 の 「き」 は日. 本語として強調しても不自然ではなく強拍にあって前半の最高音である‐ 2段目 「緑に輝いて」 は音楽のフ レーズのまとまりと言葉のまとまりが一致しないが 「かがーや・いて」 とやや許容できる範囲と考えられる. 3段目の 「ラララー」 はフォルテの指示がありフレー ズとしても曲の盛り上がりを作りやすい. 和声的には 2段目に副三和音のD, 3段目に班, mの副三和音, ララの前にバスが完全4度上がるV-1の完全終始が あり (教科書にはこの完全終始が多く, ワンパターンでつまらないととらえている生徒が多い‐ この曲では 他には, 4段目の 「うたが」 と2回だけ使われる), 曲の最後にバロック音楽 (ヘンデル他) に多く用いら れる古風なフリギア終止がある‐ このような, 教科書には少ない要素をもっているので大学生に新鮮な感じ 340.

(10) . 音楽様式の 理解とっま づきの 解決. を与えるだろうと考え, 子音を拍の直前で はっきり揃えること, 母音を丁寧に響かせることを, 歌う技法と して, また, アウフタク トから歌い始める時の指揮の練習教材として, 取り上げ指導した. 学生の感想 「「ラララレイで気合いをいれたらうまくいった. いい曲ですね」 「4年間も音楽の授業がな か っ た の で, つ られ て しま っ た」 「子 音 を は っ きり とる とき れいな こ と は分 かる が, 自分 でや る の はむ ず か. しい」 「女声だけであわせたとき新鮮な感じに聞こえてうれ しくなりました」 4・ 同 じ音の 順番 がリ ズム, テ ンポ を変 え て使 わ れ て い る こ と. 都はるみの 「北の宿から」 の 「変わりはないですか」 の部分の階名を移動 ドで歌って黒板に書き, ニール ・セ ダカ の 「恋 の 片 道切 符」, 瀧廉 太 郎 「荒 城 の月」, シ ョ パ ンの ピアノ 協 奏 曲第 1 番 の 独 奏 ピアノ の 17 ~ 20 小 節, チ ゴイ ネ ルワイ ゼ ンと スメ タ ナ の モ ル ダウの 冒 頭 を テ ー プ 録 音で 聞 か せ, い ず れ もミ ラ シ ドで. 始まることに気付かせた‐ 次に 「恋の片道切符」 はミラシ ドシラが2回歌われ, 続くラレミファミレで4度 上がっ て同 じ音型が2回繰り返されることに意識をむけた‐ 最後に始めのミをオクター ヴあげた旋律として 「白鳥の湖」 の有名な主題と 「ドナ ドナ」 をあげ, 「歌詞」 でなく 「音の動き」 にも関心を持たせた‐ ” 学 生の 感想 「ミ ラ シ ドで いう とユ ーミ ンの “リ フ レイ ン とい う 曲 もありま すね. 全く 違う 曲な の に, 音. の動きがいっ しょで, こういう視点でみるとおもしろかった」 「楽器やテンポをかえると全くちがった感じ の曲に感じる. これは普段あまり音階というものを意識 して聞いていないせいもあり考えさせられた」 5 ・ 「荒城 の月」 「こ の道」 の 日本 語 と ドイ ツ語 によ る演 奏. 歌詞は村上紀子さんが日本語を ドイツ語に翻訳し, マルグリッ ト・畑中さんが音楽に合った言葉を選ぶ作 1月18 日・ 王 子 ホ ー ル で の演 奏 会 とイ ンタ ビュ ー, 教 育 T V の 放 送 によ る) 99 2年1 業を経て作られた.(1 その ドイツ語を直訳すると次のようになる‐ 「むか しの光. いま い ず こ」. 「昔 の月 の 光を 私 は探 し, 見つ け られ な か っ た」. 「天上影は 変わらねど 栄枯は移る 世の姿. 写さんとてか 今もなお ああ荒城の 夜半の月」. 「天空は永遠に等 しく, 変わらない‐ 浮沈と無常はこの世におびただしい. 汝人間よ, 考え, 心せよ, そしてそのことを忘れるな‐ 没落した城, 真夜中の穏やかな月の光」 言 葉 と音 楽 の 関 わり につ いて みる と 「この 道」 で は, 「こ の ・道」 と2 つ の単 語 が そ れ ぞれア ウ フタ ク ト. と強拍の結び付きを作る. ドイツ語では 「ヤア」 で切れ, 「ディ ー ゼン」 と1拍の長さのアウフタクトのま とまりを作り, 第1拍の 「ヴェーク」 に緊張を伴って結び付く‐ 「ああ そうだよ」 という歌詞では文脈の ニ ュ ア ンス か ら, 強拍 に あ た る 「そ う」 の 「う」 「だ よ」 の 「よ」 を 強く 歌 う こ と は で き な い‐ しか し, “J ja,aufdiesem a,. Weg”ならば強い子音による言葉の強調と旋律のアクセントが一致する‐ 他にもアク. が 次 の単 語 の 強 い第 1音 節, 1拍 目 に結 び 付き, フ レー ズ の 音楽構 セ ン トの な い単 語, 音 節 ( in,der ,aus). 造を効果的に表現する例がたくさんみられる‐ 「忘れがたき故郷」 は 「遠い故郷よ, 私はお前のことを考え in と そ れ ぞ れ に ア ク セ ン トを 付 けて, 思 い を こ i る」 と 訳 さ れ 「ふ る さ と」 の 4つ の 音 に “ ch den-ke de めた 表 現が 作 られ る‐ (CD・イ ー ス トワー ル ドTOCB-8016 “ヘ フリ ガ-/ 日 本の 歌 曲を 歌う” ). 講義では日本語歌詞, 上にあげた箇所の各単語に日本語を付け, 脚韻をマークした ドイツ語歌詞, 直訳を 書いた プリントを配って説明 し, 教育TVの録画を鑑賞させた. 学 生 の感 想 「ヨー ロ ッ パ と 日本 の発声 を 聞 き比 べ て み る と, 実 に性 格 の違 う こ とが わ か っ た」 「荒城 の月. を ドイツ語でうたうとテンポがゆっくり (単語を1つ1つ) して, 重くうたえると思った. 同じ曲でも日本 語とはまた別な感じを受けた」. 341.

(11) . 浅. 井. 良. 之. 6・鮫島由美子, 白鳥恵美子, 2人の異なったタイプの歌い方 歌い方の詳細, 学生の感想につ いては次の項と共に別稿を参照いただきたい. 醐 7・和製ポッ プスと伝統邦楽に類似する表現 言葉の扱い, 旋律の動き, 曲の構成に注意させ, 映像と共に聞かせた. 詳細は別稿を参照いただきたい. 学生の感想に 「自分一人で聞いている歌を講義のなかで聞いて, なんかちょっと恥ずかしかった」 とあり, ポッ プスがいかに個人的な感情と生活に強く結び付いているかを示している例としてあげられる . 8・ 「踊り」 の対比. 「京鹿子娘道成寺」 と 「白鳥の湖」. ク ラ シ ッ ク バ レー はせ りふ の部 分 を マイ ム で 表 現す る. 「動 き」 につ い て 次の 説 明を し て 映像 を見 せ た ‐. 「泣く」 はバ レーでは柔らかく指を丸め 中指を更に内側に曲げ 両手で目の位置から下に動かす 「私」 , , . は心臓の位置に手を当てる. 「愛する」 は両手を左の心臓の位置に当てる‐ 「結婚」 は右手で左手の薬指を 指す. 「誓う」 は右手の人差し指, 中指の2本を離さず真っ直ぐに伸ばし親指ほか残りの3本は丸め, その 右腕を上に高く伸ばし, 手のひら側を相手に向ける. 左手を心臓の位置に当てる. 醐 「白鳥の湖」の第1場から, 王子が愛を誓うマイムの動きその他を また第2場から 「ポーランドの踊り」 , 「ス ペイ ンの踊り」 「ノ・ンガリー の踊 り」 「ロ シア の踊 り」 を 民族 舞踊 の例 と し て 映像 と共 に鑑 賞さ せ た , ‐. 邦楽の踊りとして 「京鹿子娘道成寺」 をとりあげた. 「謡がかり, 町娘の手踊り, 手穂唄, 笠踊り, ク ドキ, 山づくし, 田植え歌, 鐘入り」 から構成され, 道成寺伝説に関係する言葉は7行, その他24行は 「恋の手 習いつい見習ひて」 と恋を主題とする. 前半, 「謡ガカリ」 と後半 「田植え歌」 から終わりの 「鐘入り」 の 部分を, 音楽と体の動き, 目線, 手や指の表情に気をつけさせ坂東玉三郎の演じた映像によって鑑賞させた‐ 学生の感想 「日本では秘めて想う愛にたいして外国では表にだす想いというところ, 音楽もむ こている」 「玉 三郎の演じる女の人はしなしなしてる. あんな女の人は今はいないのに魅かれてしまうのはやはり日本人だ か らなの で しょ う か」. 9・伝統邦楽の実習 能の声楽 「謡」 を取り上げ五線譜を用いて歌わせた‐ その理由は楽器を使わない 「素謡」 という演奏形態 がある, 音域, 技巧ともにその形をなぞるだけな らば, 義太夫, 清元よりは取り付きやすい, 題材として, 伊勢物語 (井筒) 百人一首 (松風) など主に活字の古文として知っているものを, 音楽, 舞の動き, 日本語 の表現として味わえることにある. 五線譜を用いた理由は本来の記譜法のゴマ譜では洋楽その他と比較がで きない, 200人を対象に短時間で実習できないなどであり, ゴマ譜の説明は該当する箇所でおこなっ た. 能の全曲を実習するのは長すぎるので 「キリ」 (1曲の最終部分) の部分を取り上げた‐ その理由として, 「キリ」 はリ ズムパターンが分かりやすい, 噂子がついた時とおなじ間合いなので ビデオの映像と一緒に , 歌える. レミソラの動きが大半を占める‐ 譜面が細部において変更されるが, その理由が理解しやすい‐ 能 の特徴的な 「動き」 があり, その意味を画面, 文脈から理解しやすいなどがあげられる‐ 謡には譜例に示したような民謡音階が用いられ, 安定した 「核音」 と, 核音が下に移動した 「核転位音」 からなる‐ 歌の高さの基準は歌い手に合わせ, 相対音高をとる‐ 3つの 「核転位音」 は機能和声における転 位音がその転位前の音に進行することと似て, 転位前の核音に進行しようとする指向性を持つ. ただし, 機 能和声の俺音 (下方転位音・アポジアトゥーラ) は半音上行して本位音に進行するが, 民謡音階の核転位音 は全音上行して核音に進行する. また音の機能としては機能和声における椅音から協和音への緊張と解決に 似た強い表現力を持つ. 342. 譜例3は能 「松風」 のキリをシテ関根祥六ほかの観世流の演奏をNHK教育TV.

(12) . 音楽様 式の 理解とっま づきの 解決. s音から始 が放送したものを資料として採譜したものである. 実際の演奏では 「中ウキ音」 の 「松に」 がFi s音になる‐ まり基準音が徐々に上昇し, 10小節目の 「帰る波の」 までに基準音が全音上り 「中音」 がFi 譜例ではゴマ譜の示す標準的な音の動きを表すために, 相対音高 「上」 を第二線にとり, 1拍を四分音符と してリ ズム を 示 した‐ 譜例 の 部分 で は 「松 に」 の 「つ ウ」 「吹 き」 の 「きイ」 の よう に 「中ウ キ」 か ら 「上」 の 核転 位 音を通過. することにより緊張を高めながら 「上ウキ」 に進行する‐ また, 能楽では一般に1小節 (能では8拍で一つ の長さの単位 ”ひとくさり” を作る) の前半に核転位音が多く用 いられ, 後半は一段目の 「狂じて」 二段目 「夜すがら」 の様に核音が多いことから, テンポを早め (文字の間をつ め) 曲の緊張が失われることを防ぐ‐ 譜例で丸で囲んだ1から5まで は, 下段に別に記譜したように演奏する‐ 何気なく聞く と気付かない, ま た は演 奏 家 の癖 と も聞 こえ る と ころ で ある が, そう で はなく, そ の文 脈 にお ける 言 葉 のニ ュ ア ンス をより て. いねいに表すためである. 例えば 「吹き来る風」 の 「く」 は 「フリ」 の記号が付き, 上に跳ね上げ強い感じ を出す. 「我が跡弔いて」 は女性が僧に願う言葉なので, 柔らかい感じをだすため 「が」 の強い子音を拍に 当てない‐ 「申して」 も 「て」 の強い子音を柔らかく するため同音を前に予備する‐ 「関路」 は 「クリ」 と いう “いかにも高そうに” うたうところなので二重転位音と考えられる上ウキ音の更に全音上の音で飾る. 講義では, 謡の 「立ち分かれ 中の舞-稲葉の山の峰に生ふる」 から終わりまでの 「ごま譜」 と 「松に吹 き来る」 以後の謡を採譜 し, 嚇子の打点を記した楽譜の2種をのせた プリ ントを配布‐ 映像と共に, 楽譜の 部分 (約4分) を見せる‐ シテ (松風の亡霊) の動きの意味するところを説明する‐ 五線譜をみると, ほと ん どの節 は しミ ソラ, およ びそ の 一部 分 の繰 り 返 し で 作 られ てい る こ と, ラ ン ミ レという 下 降進 行 はな い こ. とに気付かせ, 歌詞で歌わせる‐ 謡のミソラと同じ進行である 「物売りの呼び声・相撲の呼び出し」 を例に 核転位音から核音に進行する時のニュアンスを思い出させ, 表現させる. 以上の方法と順番で練習 した. 能楽の動きは, 謡によって言葉が示されているのでマイ ムほど具体的でなくともすみ, 意味を表わすこと よ り も文脈 にニ ュ ア ンス を添 え る こ と に意 味が あ る. そ の ため に動 き と言 葉の タイ ミ ン グが 問題 とさ れ る.. 「泣くといふ言葉を人に聞かせてその言葉より少し後ろる様に袖を顔に当っ れば風情にて止まるなり‐ 泣 くとも聞きも定めぬより袖を顔に当っれば言葉が遅れて残る程に言葉にて止まるなり. さるほどに風情が先 聯 に果てて外るる気色あり. 然れば風情にて止まるべきが故に先づ聞かせて後に見せるとなり.d 能で は, 型 と言 葉が ぴ っ たり 合う こ と を 「当 て振 り」 とい っ て避 ける‐ シテの 動 きと して 「シオ ル」 (泣. く) は片手を眉の前に指を揃えて水平にかざす‐ 強調する場合は 「双 ジオリ」 として両手で行なう. 「風も 狂じて」 で 「ナ ビゲ扇」 風になびかせるように扇を左右にうごかす‐ 「須磨の高波」 には口伝 「音を聞くに は腰で聞け」 「見みゆるなり」 には口伝 「ものを見るには胸でみよ」・「帰る波の」 では恋人行平の姿を松に 二重うつしに見て名残を惜しむ, などを説明し映像を見せた. 複数の学生が 「遅いテンポの 、しのせいか, なんか恥ずかしいし間が持たない. 簡単で身近な音程だと思 うけど, 独特な感じで音が取りにくい」 と感想に記していたので, リズムに合わせて言葉を読む練習を行な い, 「感情を込めた結果, その音程に近く なる」 というつもりで歌うこと, を目指させた‐ 一通り音が取れ た後, 譜例に示した細部の変更を説明し, 練習した‐ 学生の感想 「まさか謡を歌うとは思っ ていなかった. 日本人が長く声をだす場合, 心地よい音程とリ ズム があるのだと思う」「あまり構えないで,お経の一種だと頭を切り換えたら,けっこう謡っ ぽくできた」 「もっ と人生経験と修行がないと分からない音楽だ」 「楽譜で見ると単純だがよく聞くと微妙な節回しがあったり して, なるほどと思った」 「能とバ レエを両方みておなじ音楽でも軽く弾むものと, 重々しく沈むものとあ るのだなぁ, とあたりまえですが思いました」. 343.

(13) . 浅. 井. 之. 良. 譜例 3. r松 風 キリ(観 世 流) MM.=37 1 6. z① , , ,. , 一 ) ま 丁. 4 Mふ .襟50. き イ く ウ. ふ. つ ウ に Z . ,. ) エ. ▼. , す ウ ー ま ア の. ) ー た 丁 か な. ~し. v 主 , , , ,. . , 1 一. み. 」. 一 ゆ ウ ー め エ. Z. } か ア ア ぜ. ) ) も オ ー き よ う じ て. y. ー. も オ う し う の. ア. る. ハル. ¥. に. v. 」 ≦. .. ) ) し イ き イ ー よ オ す が ら. は. げ. ,. 当 ,. み. み イ. ¥. ] ゆ ウ る. ,. 一 な ア. リ. Mふんご57. が. わ. イ. と. と. あ. い. MM.:47. .エ ー. て. おそく. た ア. ③ . 〉 エ. い イ. ,. ぬ. ,R ォ. イ. - g M. {. ー. か ぜ ば丁か り や. 下. 中の腕シ. ー :. ◆. ① β . . 室≠ イ. =. くウ ウ. せ エー エ き イ じ. 344. え 工. 愈がない(ノリをはずす). 一 か え. る な み. の お と の .. ノ M ‐ 三. ウ ー く や. ④ クル. .う しイ ろ の ォ や ま,お ろ し. せ. . . . イ ゆ め も あ と な くウよ ォ も あ げ て む ウ. 入. ⑤. ,. け さ みイれ ば ン. 中ウキ. ー. た ア ー ま ア. 〉. 』 日. ま つ か ぜ ば か. り や. の こ る ら ア. ん. ん. の こ る ら. 中.. . 司 ,. .. の と り もォこ ォ え ごオえ エ に イ. ら さア め と き き し も オ 一. き. エ. . . エ きイ じ. ま つ. ー. 「. す ま の オ う ら か け て ふ. ー. . ^. も ォ し て. ま ア ー. と. び. 上. 上ウキ. クリ. 1 0核音 ・転位音. 」. ② 墓 志 . わ ア. げ が 一 ア ア. の こ ろ らア ーア. ヨ あ. ン. - -. ③ 基 を ≧ ヨ も. オ. ヨ 日 一. ,. し イ てエ エ. 肴.

(14) . 音 楽様式の 理解とっま づきの 解決. 考察. .. 講義においては 「なじみがある, または違和感がある」 であげた事柄に触れながら, 講義の過程でのべた 実技と鑑賞を行なった. 講義終了時に 「西洋クラシック・和製ポッ プス・日本の伝統音楽の音楽的関連と相 違 につ い て 考え を述 べよ」 と いう レポー ト課題 を 課 した‐. レポートを読むと, ほとんどの学生が, 自分の好きな, または関心のある, または講義で取り上げたポッ プスを例にあ げ, 曲の中の言葉の扱い, 曲の構成, 音の動きについて述べ, 自分なり に分析を行なっていた‐ 特に多かった結論は 「和製ポッ プスは曲の前半では, 言葉を中心に物語りをする日本の伝統音楽の特徴を使 い, 曲の後半では 「ふし」 を中心としたサ ビを作り西洋音楽の特徴を取り入れている. このように和製ポッ プスは両者の特徴を取り入れながら変化している, 現代日本の音楽文化である」 というものであった. 学生のレポート 「和製ポップスは明治以降の音楽教育と日本人の民族性がもつ暗好の音楽が共存 した一つ の形なのであろう」 「西洋人の表現が “私はこう感じた” とはっ きり示すのに対し, 日本人は “このような ことがあった” と示 し, どう感じるかは受け手に任せている違いがあるように思える. 音楽においても, 西 洋クラシックは明確な音楽構造を持ち, 日本の伝統音楽は日本語を大事にし明確な音楽構造を持たず音楽の テーマは鑑賞者の感じるところに任せていて, 和製ポッ プスは両者の面を持ち合わせたものといえる」 次に多かっ た意見は 「色々な音楽の演奏や作りかたの違いを知る方法が理解できた‐ 音楽の色々な聞き方 が 分 か っ た‐ 」 という もの で あ っ た‐ こ こか ら は, フィ ー リ ン グと いう あ いま いな感 覚 だ けの 受容 や, 言葉. を中心に聞く, という聞き方以外の理解の方法を学生が知ることができたと考えられる‐ 学生のレポート 「日本の和歌と ドイツ語の詩を比べると, 和歌は伸び縮みが自由になされるが, ドイツ語 の詩はリ ズムはその枠組みが固定されていて, 分割することで変化がもたらされている. ここの間の違いを 和製ポッ プスは取り入れている」 「日本語は子音をはっきり言わないのが普通なので洋楽とちがった音楽に なっ た」 「洋楽と和製ポップスはCDをかけて指揮をしてみたがうまくいった. 能はCDがないので講義を 思い出しながらやったが, 指揮がしにくいし, かえっ てない方がいい」 「日本の着物は激しい動きには適し ていない‐ 動きにくいために, それに適した音楽ができていったのではないか」 「私が歌う時は無意識のう ち に, 和 製 ポ ッ プ ス の様 式 で 歌 っ て いるの で はな いか と思 いま した」 「私 を含 め他 の多 く の若 者の 中に も,. 昔からの日本の伝統音楽の流れが知らず知らずのうちに受け継がれていることに気付いて驚いた次第だ」 このことは言い換えると, ポッ プスが音楽全体の中でどのような位置にあるのか理解でき, 対象化, 客観 化できたことであり, 教師となってから教える音楽が, 文化的にも音楽的にもどのようなものかという漠然 とした不安感を, 知的に解決し理解するための方法を把握したと考えられる. 学生のレポート 「私も, 小学校時代は旋律も音程も考えないで大声で歌っていた. しかし, 音楽の性質は 多様であり, 西洋クラシックと日本の伝統音楽の相違点を確認できた為, これからは私自身が教師になっ て も, 極めて違和感なく指導できるように思える. 私達は子供の歌い方を否定してはいけない‐ どのような特 徴があるか見極め, それに応じた指導を行ない, 更に子供の特性を伸ばすように, 努力していかなければな らないのである」 「音楽には多様な種類があり, もちろん自分のフイーリングに合うものばかりではないが, それでもそれぞれの特徴を前向きにとらえ, 教師になって伝えたい‐ 新たな発見があり, とてもよかったで す」 そ の 他, 「よ か っ た, 役 に 立 っ た, お も しろ か っ た」 と 書 いて いる レポ ー トが 目 につ いたが, そ の意 味. するところは, 自分の関心の高い和製ポッ プスが音楽的にどのような内容であり, どのような位置にあるの かを理解できたことに対する満足感の表明であると考えられる‐ 以上のことから次のように考えられる‐ 1) 生徒が, 様々な様式を理解することは, 自己の音楽に対する関心のありかたを, 客観的にとらえるため 345.

(15) . 浅. 井. 良. 之. に役立つ‐ 特に和製ポップスの語法を意識化させ, 生徒の音楽体験と関連づけることは, 生徒の 「わかった ぞ」 という感動を引き出すために有効である. 私達は 「西洋芸術音楽」 にのみ基準をおいて始めるのでなく 「和製ポッ プス」 にも視野を広げ, その上で, 学校でなくては出来ない指導を考える必要があろう‐ 2) 生徒は音楽理解の1つ として言葉を基準にしているが, 個人的ノ登情の表明とその直接性において教科書 の 歌 は和 製 ポ ッ プ ス に遠く 及 ばない‐ そ のよ うな 状況 にお いて, 例 え ば 「月 の 光」 という 歌詞 に ふ れ, 「こ. の月はどんな月でしょう」 といった質問はどの程度に有効であろう‐ 生徒の気持ちを揃える効果はあるかも 知れないが, 発音や曲の構成に関わらなけれ ば, かえって音の動きがどのようになっているかという意識を 薄めてしまうと考えられる‐ 「音の動き」 (和声, 音型, 拍子など) を中心に言葉の扱いとして考えられる 演奏法を幾つか示し, 生徒に選択させ, 様々な演奏様式を意識化させ表現させることが重要と考えられる. 3) 「新しい学力観」 に立ち, 生徒自身が様々に判断し工夫するためにも, 「どこがよかったか, 聞き合い ましょう」 という発問に答えさせるためにも, 民族音楽の理解が珍らしさにとどまらないためにも, まず, 自分に身近な音楽様式を意識化させることが有効であろう‐ 4) 本稿では様式上の違和感から生徒がつまずくという前提の もとに論述してきた. 「何となく好きになれ ない」 という 「主観的価値判断」 を,′教師の指導によりポップスと異なった様式として理解または意識でき ることは, 「なぜそうなのか」 という 「客観的な事実判断」 を持てることにつながり, 学校音楽を受容する 際のつまずきの予防と解決に役立つ と考えられる.. 注 ) 浅井良之, 「音楽様式の理解とつまずき」 『教科教育学研究図書』 東京書籍 { 1. i 997, pp 2‐5 5 ,4. 0, 4, p,6 98 2 { ) 小泉文夫, 「日本伝統音楽の研究 2 リズム」, 音楽の友社, 1 i l lanl98Q p283 ionary・VOL,7 Germany,Folk mus ( 3 ) The New Grove Dict c Macmi. 98 - 199 976, pp { 4 ) 柴田南雄, 「レコー ドつれづれぐさ」, 音楽の友社, 1 ,1 1 9 96, p 23 5-4号』 日本音楽教育学会, i ( 5 ) 泉健 「普遍性と特殊性~異文化の音楽の理解を目ざして」 『音楽教育学, 第2. 9 54, pp,25 一 26 ( 6 } 斎藤磯雄 「フランスの詩と歌」 ダヴィッ ド社,1 3 - 92 6巻, 第1号, 音楽之友社pp,8 93, 第3 { 7 ) 浜中康子 「西洋音楽における<動き>」 『季刊音楽教育研究』 19 ) 増本喜久子 ( 8. 「雅楽」 伝統音楽への新しいアプローチ, 音楽之友社, 19 6 8, p 2 ,16. 8, p,8 97 ( 9 ) 柴田南雄, 「音楽の骸骨のはなし」, 音楽之友社, 1 0 ) 柴田南雄,i 0 bd,pp,33 冊 34 { ) NHK教育TV放送 「歌の心」 草津国際音楽祭マスタークラス, 草津天狗山レストハウスの録画による‐ 1 1 3年11月1日, 教育TV放送, テキスト, p 56 Q 2 } 佐藤しのぶ 「NHK趣味百科・アイ・ラ ブ・クラシック」 9 bd 回 浅井良之,i ,pp ,43 - 44 -112 1- 98 8年, 教育TV放送, テキスト, pp ( 聡 清水哲太郎, 森下洋子 「NHK趣味百科・クラシックバレエ入門」 1 , 111. 5 - 86 97 4, pp8 鱒 ) 世阿弥, 「花鏡」,岩波書店,1. (本学助教授 釧路校). 346.

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参照

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