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航空機の定時運行と環境負荷削減の関連性について

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2016 年度卒業研究論文

航空機の定時運行と環境負荷削減

の関係性について

[キーワード] 環境問題、航空、定時運行、温室効果ガス

東京都市大学

環境学部 環境マネジメント学科 枝廣研究室

学籍番号

1362132 山崎歩美

2017年1月30日

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内容

謝辞 ... 2 序章 はじめに ... 3 第一章 研究背景 ... 5 1.1 航空機と環境... 5 1.2. 国際航空における排出規制 ... 8 1.3 航空管制システム... 9 第二章 本論 ... 10 2.1 研究方法... 10 2.2 インタビュー結果... 10 2.3 アンケート結果 ...11 第三章 結論 ... 15 参考文献 ... 16 アンケート項目 ... 17

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謝辞 本研究論文を行うにあたって多くの方に支えられ書き上げることができました。この場をお借りし て感謝申し上げます。 特に、指導教授として担当して頂いた枝廣淳子教授には二年間にわたる熱意のあるご指導、ご支援 を賜りました。本論文を進めるにあたり、研究の方向付けから詳細に至るまで、大変有意義且つ的確 なご意見を頂き、どれほどの言葉を尽くしても足りないほど、感謝しております。 そして、本論文を書き上げることができたのは、日本航空株式会社コーポレートブランド推進部シチ ズンシップグループの喜田俊郎様、アンケートにご協力して頂いた方々が貴重な時間を割いてインタ ビュー・アンケート調査にご協力していただいたおかげです。皆さまへ心から感謝の気持ちとお礼を 申し上げます。 また同期生の皆様には研究やそれ以外の多くの場面で支えていただきました。皆様の助けがあった からこそここまで辿り着けることができました。ありがとうございました。 最後に、今日に至るまで、毎日暖かく見守り、応援してくれた家族に深く感謝申し上げます。本当 にありがとうございました。 2017 年 1 月 30 日 山崎歩美

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序章 はじめに

今日において“地球温暖化”という言葉を耳にする人が増えてきたのは、地球温暖化が進行し、異 常気象や海面上昇、生き物の絶滅など我々の目に見える形で世界的に起きているからである。その原 因としてあげられるのは、産業発展で人間活動が活発するために、大気中に放出される温室効果ガス である。温室効果ガスは森林などの生態系によって吸収されるが、それ以上に温室効果ガスが排出さ れるため、大気中に蓄積され続ける。気候変動に関する政府間パネル(IPCC1)によると世界平均地 上気温は1880 年から 2012 年の期間に 0.8℃上昇しており2最近の過去10 年間は 1850 年以降の各々 に先立つどの10 年間よりも高温であったとされている3また温室効果ガスである二酸化炭素(CO₂)、 一酸化炭素(N₂O)、メタン(CH₄)は 1750 年以降増加している。 温室効果ガス削減を実現させるため、各国で様々な対応がなされている中、先進国であり高い科学 技術を持った我が国での取り組みが期待されている。その技術の一つとして航空機があげられる。約 50 年ぶりと言われる国産旅客機 MRJ が開発されるなど、環境に配慮された航空技術が発展している。 ではその航空機による環境負荷削減策は一体どれだけ多くの人が認知しているのだろうか。グローバ ル化が進み、航空機の利用が増えていく中、空を通じ世界を股にかけていく航空業界の環境への取り 組みが重要となってきている。 国際民間航空機関(ICAO4)の国際民間航空条約付属書16によって窒素酸化物、一酸化炭素、炭化 水素、煤煙の排出基準が定められている。このように世界各国で温暖化対策の取り組みがなされてい る中で、日本国内においても様々な取り組みが行われている。代表的なものに気候変動に関する国際 連合枠組み条約5がある。2015 年、国連気候変動枠組条約第 21 回締約国会議(COP21)において、 その新たな法的国際枠組みである「パリ協定」が採択された。これは 1997 年の京都議定書以来の採 択 で あ り 、 ま た す べ て の 国 が 参 加 す る こ と か ら も 全 世 界 か ら 注 目 さ れ た 。

1 Intergovernmental Panel on Climate Change は 1988 年、世界気象機関(WMO)と国連環境計

画(UNEP)により設立。

2 IPCC AR5 WGⅠ SPM p.5, 5-6 行目 3 IPCC AR5 WGⅠ SPM p.5, 2-3 行目

4 International Civil Aviation Organization. 1947 年、国際民間航空条約に基づき発足した国連の専

門機関。

5 United Nations Framework Convention on Climate Change 1992 年にリオ・デ・ジャネイロで

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外務省,気候変動交渉と日本の取組より引用6 そしてその他の航空会社の取り組みの一つとして挙げられる定時運行は、環境負荷削の削減につな がる。だが、社会ではあまり知られていない。利用者である私たちが航空分野で協力することができ る取り組みというのは数少ない。定時運行は利用者ができる環境負荷削減に向けた重要な取り組みの 一つである。私たちはそのことを認識し理解を深め、認知度の低さの解決に向けて行動していく必要 がある。 6 外務省,気候変動交渉と日本の取組,2016/10/30 取得, http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000087932.pdf#search='%E3%83%91%E3%83%AA%E5%8D%9 4%E5%AE%9A+%E6%97%A5%E6%9C%AC'

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第一章 研究背景

グローバル化が進み、LCC7もまた世界各国で急成長を続けている。航空機の利用が増加していく ことが予想されており、その影響もまた大きなものになることが予想されている。そのため、日本に おける航空分野からの環境影響への対策が求められはじめている。そして利用者もまた航空機による 環境負荷削減への協力が求められている。 1.1 航空機と環境 航空機からの温室効果ガスの排出は大気の対流圏上部および成層圏下部に蓄積されるため、その影 響は潜在的であるが、結果として大きな影響をもたらす。航空機からの温室効果はジェット燃料から の一酸化炭素(N₂O)、メタン(CH₄)の排出である。2014 年度における日本の温室効果ガス総排出量 12 億6,500 万トンのうち 17.2%が運輸部門からの排出であり、そのうち航空からの排出量は 4.7 パー セントである。我が国の航空分野からの排出量は数値で見てみると少ない。だが航空から輸送量の増 加やグローバル化が進み、今後国際線の需要が増えていくと、2040 年にはその排出量が現在の3~4 倍に増えることが予測されている。 引用 温室効果ガスインベントリ8 また日本における航空輸送の需要を年々増えており、LCC 参入によってさらに加速された。それと 共にその排出ガスへの対策も強化していかなければならない。 7 Low-cost carrier サービスを簡素化し、低価格の運賃で提供している格安航空会社のこと 8 温室効果インベントリ,日本国温室効果ガスインベントリ報告書 2016,2016, http://www.cger.nies.go.jp/publications/report/i129/i129.pdf,2016/10/13

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年度 国内航空旅客(千人) 国内航空旅客L/F(%) 国内航空貨物(千トン) 全路線 幹線 ロ ー カ ル線 全 路 線 幹線 ロ ー カ ル 線 全路線 幹線 ローカ ル線 平成18 年度 96,971 38,630 58,341 64.4 66.6 62.7 934.1 563.7 370.4 平成19 年度 94,849 38,267 56,582 64.2 65.9 62.8 951.6 587.9 363.7 平成20 年度 90,662 37,265 53,396 64.1 67 61.8 995.9 621.7 374.1 平成21 年度 83,872 34,926 48,946 61.7 64.9 59.2 959.6 620.6 339 平成22 年度 82,211 34,659 47,552 63.7 66 61.8 941.1 646.4 294.7 平成23 年度 79,052 33,596 45,455 63.1 65.3 61.2 895.8 642.2 253.5 平成24 年度 85,996 36,898 49,099 63.7 66.5 61.2 905.8 650.2 255.5 平成25 年度 92,488 39,353 53,134 64.4 68.2 61.2 934.6 673.3 261.2 平成26 年度 95,197 40,165 55,032 66 70.4 62.4 928.8 673.9 254.9 平成27 年度 96,063 41,509 54,554 68 72.5 64.2 918 679.2 238.8 引用(http://www.jacinc.jp/db/pdf/dom_pax_cargo1827.pdf) 航空機による地球温暖化は人間が及ぼす影響の 1.5 倍と言われており、排出される温室効果排出物 が上空でさまざまな影響をもたらしている。飛行機が飛んだ後に生成させる飛行機雲はエンジンから でる排気ガスの水蒸気が凍って雲になったものである。「29日にネイチャー・クライメート・チェン ジ誌上で公表されたドイツ航空宇宙センター(DLR)の専門家の研究結果によると、空を横切る飛

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行機雲が地球温暖化に寄与しており、通常一日に生じる飛行機雲の温暖効果は、1903年のライト 兄弟による初飛行以来、飛行機が排出したすべての二酸化炭素(CO2)による温暖効果を上回って いる可能性があるという。」引用(http://jp.reuters.com/article/idJPjiji2011033000412) 二酸化 炭素CO 2 地球の赤外線放射を抱え込み、温室効果を促進。 飛行機のCO2排出量は、全化石燃料排出量の2~3% ※CO2 は大気中での滞留時間が長く、(≒100 年)大気全体で混ざり合う ため、他の排出源のものと区別できない。 オゾン O3 温室効果ガス、地球を有害な紫外線から保護する物質、また一般的な大気 汚染物質でもある。 (航空機から排出される)NOxはオゾンの化学反応に関係する。 NOxが増加→オゾンも増加(低い高度より対流圏上部での増加が放射強制 力を増大させる) メタンの増加→オゾンの減少 成層圏内での硫黄や水蒸気の排出→オゾンを破壊 →相殺効果(さらなる研究が必要) メタン CH4 NOxの排出→対流圏内でのメタン濃度を減らす(温室効果ガス)→地球表 面の寒冷化 メタンの変化は地球規模。 窒素酸 化物NO x (一酸 化窒素・ 二酸化窒 素) 上部対流圏・下部成層圏にあるオゾンの量に影響。 →気候システムへの放射作用に更に影響する可能性あり。 ①成層圏中層ではNOxが O3を分解。 水素、塩素、臭素とも反応する。 ②対流圏と下部成層圏ではNOx と HC の存在が O3生成を促進 →オゾン層には良い影響を与えるが、温暖化にも少し関係。 水蒸気 H2O 大半が対流圏に放出され、1・2 週間のうちに降水として速やかに取り除か れる。 ごく一部が成層圏下部に放出、濃縮され、強い温暖化ガスとなり、地表の 温暖化に影響。 水蒸気は温暖化ガスのひとつであり、水蒸気の増加は地球の表面を暖める。 この水蒸気の影響は、二酸化炭素やNOxの影響よりも小さい。 飛行機 高層の薄雲と同様に、地球表面を暖める傾向を持つ。

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雲 航空機の燃料効率向上の結果、飛行機雲が作られやすくなったり、その高 度を飛行する航空機輸送が増加すると見られている。 絹雲 飛行機雲が繰り返し生成された後、かなり発達した絹雲が生じる。 絹雲は平均すると地球表面を暖める傾向がある。 硫酸塩 とすすの エアロ ゾル すすが増加すると、地球表面への温暖化につながり、硫酸塩が増加すると 寒冷化につながる。 水蒸気と共にあるとき、圏界面領域の放射バランスに影響 ①直接的な放射効果 ②雲の形成に果たす役割 ③(粒子)不均一系科学の重要性を大きく強調 引用(http://airsickness.fc2web.com/frame.htm) 1.2. 国際航空における排出規制 航空機による輸送は世界の経済発展に伴い、急速に発展してきた。これまで国際航空分野の温室効 果ガス排出は、京都議定書やパリ協定で削減の対象とはされてこなかった。2005 年に EU 連合で企 業や国が排出できる温室効果ガスを排出枠として設定し、その枠を超えてしまったら、まだ排出枠を 超えていない国や企業との間で取引を行う欧州連合域内排出量取引制度が開始された。国際民間航空 機関によると「航空機の環境問題はこれまでICAO によって調査・対策及び規制の内容が検討されて きた。ICAO の検討が開始された当初は航空機騒音問題が中心に議案されてきたが、2016 年 2 月 8 日、航空環境保全会議(CAEP9 )において、初めて航空機から排出される二酸化炭素を規制する国際基 準に関する合意された。その中でも重さが60 トン以上の航空機は国際的な航空排出の 90%を占める とされ、その基準は特に厳しいものとなっている。」10また2012年の第二読会で航空分野への排出 権取引が適用された。日本をはじめとした世界各国がこれに反対している。しかし日本の空港からEU の空港に飛ぶ航空便もその対象になるので、日本の航空会社はそれらの対応を行わなければならない。 ANA 総合研究所によると「しかし、2012年11月に ICAO 理事会での国際的枠組み策定作業に て、MBM( Market Based Measures:市場メカニズム)の導入も視野に入れたハイレベル政策協議 会を設置する旨を欧州委員会に対し言及し、欧州委員会は2013年秋までEU-ETS の一時凍結を決 議しました。また、2014年1月に欧州委員会は、EU(欧州委員会)の EU-ETS を発行し、201 6年の総会までは、適用路線を欧州領空域離発着便のみ(Intra EU)が対象となり、2017年以 降はICAO 総会での決議内容を見て決定することとしてます。」11 ICAO は 2010 年度で2013年

9 Committee on Aviation Environmental Protection ICAO 総会の開催サイクルの 3 年ごとに開催さ

れる。

10国際民間航空機関(ICAO),

http://www.icao.int/Newsroom/Pages/New-ICAO-Aircraft-CO2-Standard-One-Step-Closer-To-Fin al-Adoption.aspx,2016/10/25

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末までに航空機CO2排出基準を制定するとしている。またグローバル削減目標として国や企業間で 取引国際的な排出量の削減目標として、燃料の効率を毎年2%改善し、2020年度以降総排出量を 増加させないと定めた。 1.3 航空管制システム 航空機の燃費を減らし、CO2 排出量を減らす手段には以下のようなものがある。 ・カーボン複合材を使った機体の軽量化 ・ファンやブレード、コンプレッサーなどによるエンジンの開発 ・翼の改良による空気抵抗の低減 ・オペレーションによる環境負荷削減 そして、本論文の趣旨である航空機の定時運行による環境負荷の削減と関係する手段がオペレーシ ョンによる環境負荷削減である。 ANA 総合研究所(2012)では、オペレーションによる環境負荷削減は以下のように説明されてい る。「運行管理者(ディスパッチャー)と呼ばれる人たちにより出発離着時の空港や経路の運用状況や 気象状況、航空機の重量計算が管理され、飛行実施計画が策定される。そして毎日毎時間ごとにかわ る天候や気流の変化や航空管制に基づいて、より燃費が良く効率が良い速度や高度を計算し、ルート を提案して運行を行っている。運行管理者によって作成された飛行実施計画はパイロットによって承 認・変更することができ、航空機を運行する際の様々な状況下の中、安全性・定時性・快適性を考慮 した運行を実施している。また各空港の天気の変動や乗客の情報などの最新の情報は運行支援者によ って運行管理者とパイロットに伝達されている。(p128~132)」つまり定時運行と行うにあたり、運 行支援者・運行管理者・パイロットによるオペレーションがいかに重要であるかがわかる。

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第二章 本論

2.1 研究方法 本研究ではインタビューとアンケート調査を行った。インタビューは定時運行と環境負荷削減の関 係性について日本航空株式会社コーポレートブランド推進部シチズンシップグループ喜田俊郎氏にお 話を伺った。現在行われている定時運行と環境負荷削減の関係性に対する情報発信への取り組みを知 ることを目的として行った。 アンケート調査では定時運行が環境負荷削減に繋がるという事実の認知度を知ることを目的に行っ た。尚、このアンケートを通して、定時運行と環境負荷削減の関係性についての認識を広げることも 目指した。20 代から 60 代までの年代層を対象とし、計56人に回答していただいた。アンケート項 目は以下の通りである。 アンケート項目は以下の通りである。(1)飛行機の利用度(2)航空会社によるCSR 活動への認 知の有無(3)定時運行の認知度(4)定時運行と環境負荷削減の関係性への認知の有無(有と回答し た人のみそのきっかけについての回答)(5)定時運行と環境負荷削減の関係性を知った上での定時運 行への協力の有無 2.2 インタビュー結果 定時運行と環境負荷削減の関連性を明らかにすべく、日本航空株式会社コーポレートブランド推進 部シチズンシップグループ喜田俊郎氏にインタビューを行った。 まず、航空機を定時に運行させることで環境負荷が削減される仕組みを述べる。乗客が飛行機に搭 乗し、パイロットが管制官に管理承認を取った順番でプッシュバックと呼ばれる飛行機を後方へ押し 出す作業が行われる。同時刻出発・近くの飛行機でもその順番によって、高度や航路を先着順に選ぶ ことができる。そのためプッシュバックの押し出す方向によっては隣の飛行機のスポットをブロック する可能性もでてくる。また高度や重量によっての燃費効率が変化するため、同じような行先・重量 の飛行機が同時刻に出発した際、同じような航路に集中してしまう。ただしその航路は先着順で決め る事が出来るため、定時で運行できなかった飛行機は燃費の悪い航路を飛ばなければならない。つま り定時運行を実現させることによって、より燃費消費が少ない高度・航路また速度で飛行計画を立て ることができるのだ。 航空会社にとってまず一番に安全面に重点を置かなければならなく、安全性が十分に確保できたう えで定時性を実現させることができるそうだ。たとえ遅れが生じていたとしても、他の航空会社によ って管理されている飛行機との関係もあるため、定時運送事業が乗客にとっての品質であることに間 違いはないが安全性を脅かしてまで行うものではないということであろう。 現在、定時運行が環境負荷削減につながるということを社会に向けて発信する手段として行ってい るのが「TIME IS エコ」というポスター空港内に張り、機内誌やホームページ上でも記載している ことだ。それによると『駐機中の航空機は地上設備方電力が供給されており、出発予定の10分前に 補助エンジンに切り替える。しかし出発予定時刻がすぎ、補助エンジンを回したままにすると、ボー

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イング777型機で、一分あたり約13kgものCO2が余分に排出させてしまう。また、出発が遅 れ定刻に飛行機を到着させようとすると、通常時よりスピードを出さなければならない。同様に77 7型機で三分の遅れを取り戻そうとした場合およそ430kgものCO2が余分に排出される』 引 用(https://www.jal.com/ja/environment/happyeco/ecocolumn_201112.html)つまり飛行機にとって のたった数分の遅れは環境負荷が促進されてしまう大きな原因の一つといえるだろう。 だがこの事実を社会に発信する手段は現状弱い。その理由として「旅行を目的に乗る乗客が多いた め、TIME IS エコなどのポスターを張り続けていくことは困難である」「乗客の関心の指標に合わせ ると環境からのアプローチがしにくい」とのことであった。つまり航空会社は乗客にとって、「飛行機 に乗ることは環境を意識して乗るものではなく、旅行や交通手段が目的であるということ」、また「定 時運行とは約束された時間に飛び、目的地に着くという目的意識であること」の認識しているのでは ないだろうか。 次節のアンケート調査結果では、この航空会社の認識と、一般の人びとの認識の間にずれがあるか どうかを明らかにする。 2.3 アンケート結果 本調査は定時運行が環境負荷削減に繋がるという事実の認知度を知ることを目的に行った。 アンケート項目は以下の通りである。(1)飛行機の利用度(2)航空会社によるCSR 活動への認 知の有無(3)定時運行の認知度(4)定時運行と環境負荷削減の関係性への認知の有無(有と回答し た人のみそのきっかけについての回答)(5)定時運行と環境負荷削減の関係性を知った上での定時運 行への協力の有無 アンケート調査の分析結果を以下の通りに分けた。 I. 「定時運行という言葉を知っているか」を尋ねたところ、知っていると回答した人は 44.6%(25 人)であり、「聞いたことがない」という人も 21.4%(12 人)いた。ここから、定時運行という 言葉自体を知らない人もかなりことがわかる。 II. 定時運行という言葉を知っていると回答した人の中で、定時運行が環境負荷削減を削減させるこ とを知らない、また聞いたことはあるが知らないと回答した人は 72%(18 人)、知っていると回 答した人は 28%(7 人)であった。定時運行という言葉を知っているけれど、環境負荷削減に繋 がることを知らない人たちのほうが圧倒的に多かった。 III.定時運行により環境負荷が削減されると知らせたところ、定時運行に協力したいと回答した人が 全体の 92.9%(52 人)を占めた。

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図 1 定時運行を行うことで環境負荷が削減されることを知っていますか (定時運行を知っていると回答した人) IV. 「どのくらいの頻度で飛行機を利用しますか」という質問に対し、月に数回と回答した人の内 75.0%(3 人)が定時運行の存在を知っていた。そして 25%(1 人)が定時運行が環境負荷を削減 させることを知っていた。それに対し、飛行機を利用する頻度がそれ以下と回答した人の内、37.5% (9 人)が定時運行の存在を知っていた。そして、8.3%(2 人)が環境負荷を削減させることを知 っていた。つまり飛行機の利用度が高ければ高いほど定時運行への認識も環境負荷削減に繋がる 認知も高いことが分かった。 知っている 28% 聞いたことはある が知らない 24% 知らない 48%

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図 2 どのくらいの頻度で飛行機を利用しますか 図 3 定時運行という言葉を知っていますか。 A) 飛行機を利用する頻度が高いと回答した人 ・B) 飛行機を利用する頻度が低いと回答した人 図 4 定時運行を行うことで環境負荷が削減されることを知っていますか 年に数回 50% それ以下 43% 月に数回 7% 知って いる 75% 聞いたこと はあるが知 らない 25% 知らな い 0% 知ってい る 38% 聞いたこ とはある がよく知 らない 33% 知らない 29% 知って いる 50% 聞いた ことは あるが 知らな い… 知らな い 25% 知ってい る 9% 聞いたことはあ るが知らない 8% 知らない 83%

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V. 航空会社が環境問題の取り組みや CSR 活動を行っていることを知らないと回答した人(14 人)は、 定時運行が環境負荷を削減させることを全員が知らなかった。それに対して、環境問題の取り組 みや CSR 活動を行っていることを知っていると回答した人(7 人)にうち、定時運行が環境負荷 を削減させることを「知っている」「聞いたことはあるが知らない」「知らない」と回答した人は ほぼ同数だった。これは航空会社の環境問題の取り組みや CSR 活動についての知識がある人の方 が、定時運行と環境負荷削減の関係性について知っている可能性が高いことを示している。 図 5 定時運行を行うことで環境負荷が削減されることを知っていますか VI. アンケート調査において、定時運行が環境負荷を削減させるということを「知っている」と回答 した人は、飛行機を利用する頻度に違いはなかったが、全員航空会社が環境問題の取り組みや CSR 活動を行っていることを知っていると回答した。また、定時運行と環境負荷削減の関係性につい て「知っている」と回答した人は、定時運行に協力すると回答した人が 100%だったことから、 定期運行に対して非常に協力的であることがわかる。 VII.定時運行に協力しようと思わないと回答した人は、そもそも航空会社が環境問題の取り組みや CSR 活動を行っていることを誰も知らなかった。また「定時運行」という言葉を知っている人も いなかった。 知っている 35% 知らない 35% 聞いたことはあるが 知らない 30%

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VIII. 定時運行が環境負荷を削減させることを知っていると回答した人に、そのことを知ったきっ かけについて質問した。 • 航空事業に携わる知り合いに聞いたことがある • 仕事の一環で知る機会があったため • 船舶・鉄道等の交通インフラにおいても同様の取組事例があることを知った為 • 臨時シャトルバス運行に係わる経費及び排出ガスの増加など。 • JAL の CSR レポートをたまたま読んで知りました。 • きっかけはなく待ち時間が長くなれば電力もより消費されスピードも上がるのでおそらく CO2 の排出量は多くなるのだろうと推量しているだけです このことから定時運行が環境負荷を削減させることを知るきっかけは仕事や知り合いから話を聞い たなど、ほんの小さなものであることが明らかになった。

第三章 結論

インタビュー及びアンケート調査から分析した結果、一つ大きな事実として利用者と航空会社との 間に、定時運行の認識について差があるということが明らかになった。乗客は定刻通りに目的地に着 くという表面的な理由でしか定時運行を認識していないと航空会社は感じているのではないだろうか。 しかし実際は、定時運行と環境負荷削減の関係性を知った人は、環境負荷削減の意味を持った定時運 行への協力に意欲的であることがアンケート調査で明らかになった。ただしこれは利用者が定時運行 によって環境負荷が削減されることを知った上の結果であるため、航空会社は利用者の実態を認識し た上で、情報発信を行わなければならないのではないだろうか。アンケート調査から明らかになった 通り、航空機の定時運行と環境負荷削減の関係性の認知度は限りなく低い。そのため情報発信を行わ ない限り、環境負荷が削減されることを知らずして乗客は定刻に目的地に着くことをニーズにして、 このまま飛行機に乗ることになるだろう。 そうならないためにも利用者もまた定時運行という言葉を知ること、環境面から認識することが必 要である。今回の調査では、定時運行が環境負荷削減に繋がることを知っていた人は、この事実を仕 事や知人・CSR レポートを通して知ったと回答していた。よって、定時運行と環境負荷削減の関係性 についての情報発信を、もっとさまざまな媒体を通じて行うことが必要ではないだろうか。利用者へ 知らせるためのほんの少しのきっかけを作り出すことによって、環境負荷の削減につながる定時運行 を実現することができると考える。 今回インタビュー調査とアンケート調査を行ってみて、初めて分かったこと・明らかになったこと があった。今回の反省点として、分析結果の確実性を上げるためにアンケート調査における対象人数 をもっと増やすべきであったが、定時運行が環境負荷を削減させることの認知度の低さは事実である。 そのため、①航空会社が「利用者は、環境負荷につながる定時運行に対して協力的である」と認識 を変えること、②利用者が定時運行の意味を知ること、③定時運行が環境負荷削減に繋がることを知 ることの三つのアプローチを進めていくことが、今後の重要な課題であると考える。

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参考文献

1 気象庁,IPCC 第5次評価報告書,(2016/10/16 取得,http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar5/) 2 外務省,気候変動交渉と日本の取組, (2016/10/30 取得, http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000087932.pdf#search='%E3%83%91%E3%83%AA%E5%8D%9 4%E5%AE%9A+%E6%97%A5%E6%9C%AC) 3 温室効果インベントリ,日本国温室効果ガスインベントリ報告書 2016,(2016/10/13 取得, http://www.cger.nies.go.jp/publications/report/i129/i129.pdf) 4 日本空港コンサルタンツ,航空関連データベース, (2017/01/05 取得,http://www.jacinc.jp/db/pdf/dom_pax_cargo1827.pdf) 5 REUTERS,(2016/01/24 取得,http://jp.reuters.com/article/idJPjiji2011033000412) 6 ひこうきとかんきょう,ひこうきの排気ガス, (2016/11/16 取得,http://airsickness.fc2web.com/frame.htm) 7 国際民間航空期間(ICAO),UNITING AVIATION, (2016/10/25 取得, http://www.icao.int/Newsroom/Pages/New-ICAO-Aircraft-CO2-Standard-One-Step-Closer-To-Fin al-Adoption.aspx) 8 (株)ANA 総合研究所『エアラインオペレーション入門改訂版』株式会社ぎょうせい 9 日本航空株式会社,機内誌SKYWARD 連載中「空のエコ」, (2017/01/19 取得,https://www.jal.com/ja/environment/happyeco/ecocolumn_201112.html)

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アンケート項目

問一 どのくらいの頻度で飛行機を利用しますか。 1. 週に数回 2. 月に数回 3. 年に数回 4. それ以下 5. 利用したことがない 問二 航空会社が環境問題の取り組みやCSR 活動を行っていることを知っていますか。 1. 知っている 2. 聞いたことはあるがよく知らない 3. 知らない 問三 「定時運行」という言葉を知っていますか 1. 知っている 2. 聞いたことはあるがよく知らない 3. 知らない 問四 定時運行を行うことで環境負荷が削減されることを知っていますか 1. 知っている 2. 聞いたことはあるがよく知らない 3. 知らない 問五 問四において「1.知っている」と回答した人に伺います。定時運行を行うことで、環境負荷が 削減されることを、どのようなきっかけで知りましたか。 問六 「定時運行を行うことで、環境負荷が減る」のであれば、今後、航空機を利用する際、定時運 行への協力をしようと思いますか 1. はい 2. いいえ 問七 最後にあなた自身のことを教えてください。 ⒜性別 ⒝年代

図  1  定時運行を行うことで環境負荷が削減されることを知っていますか  (定時運行を知っていると回答した人)  IV.  「どのくらいの頻度で飛行機を利用しますか」という質問に対し、月に数回と回答した人の内 75.0%(3 人)が定時運行の存在を知っていた。そして 25%(1 人)が定時運行が環境負荷を削減 させることを知っていた。 それに対し、 飛行機を利用する頻度がそれ以下と回答した人の内、37.5% (9 人)が定時運行の存在を知っていた。そして、8.3%(2 人)が環境負荷を削減させることを知

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一方で、自動車や航空機などの移動体(モービルテキスタイル)の伸びは今後も拡大すると

船舶の航行に伴う生物の越境移動による海洋環境への影響を抑制するための国際的規則に関して

パターン 1 は外航 LNG 受入基地から内航 LNG 船を用いて内航 LNG 受入基地に輸送、その 後ローリー輸送で

現時点の航続距離は、EVと比べると格段に 長く、今後も水素タンクの高圧化等の技術開