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長大式知能検査の基盤と経過

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(1)

長大式知能検査の基盤と経過

 昭和31年以来・我々は新しい立場に立つ知能検査を作成する企図を持った。我々がi新しい立 場という意味は従来からの知能検査がBinet, A.の立場を採用して一般知能検査に終始して いてInterIndividual的にi. Qを利用することは出来るがCounselingや臨床診断に役立た ないことが多かったためにlntra・lndividua1的に知能構造の解明できる知能検査,従って,よ

り広義の立場,即ちAlexander, W. P.の言う X Z を含んだ知能,或はWechsler, D。の 言う情緒に反映する知能因子を含んだGlobalな立場をとった知能検査を作ろうとしたのであ

る。

 我々は以下順を追って我々の知能検査の基盤,並に,その作成経過を中間報告して長大式知 能検査の完成をめざし,多くの識者に批判をあおごうと思う。

(1)Wechsler Testについて

 臨床心理学者たちは,従来から流行していたBinet Testや,それに類するTestは一般知 能の単なる測定であるので,個人の心的機能の型について明らかになるようなTestを望んでい た。若し,人間の特殊な強さ,弱さ,更に,人間の一般的発達水準が測られるような信頼すべ きTestが出来るならばCounselingや精神的患者の傾向について調査するのに極めて有益な 道具であると,Cronbach,:L. E.はいう。(1)この意味で, Cronbachは上記の丈献でWechsler Testの性格について次のように述べている。

(1)Binet尺度は心的能力の柵究において大いに貢献してきたのであるが, Termanその他 がBinet尺度を修正するに際して多くの欠陥を見出した。例えば,成人に知能Testを実施し

ようとしてもBinet Test叉はStanford−Binet Testは子供に対する知能Testである関係上 実際問題として成人に対しては困難な疑わしい問題を惹き起こすことになる。例えば,成人に 知能Testを実施すると,彼等は何故に,このような自明のことをするのであるかと不思議に 思うし,叉,Testの多くが意味を理解するということで得点になるということよりも,語や 材料を操作する個人の能力によって点をつけるようになっていることに興味を失なうのであ る。叉,成人,特に老人は,生理的に速度Testでは成績があがらないようになっているのに Binet Testは速度を要求しすぎている。(2)

 以上のことを考えてWechslerは彼の要求に応ずるTestを作成した。 New Yorkの Bellevue病院の臨床心理学者としてのWechslerの位置が彼の目標に影響した。彼の研究は 精神薄弱児,精神病患者,犯罪者などの研究も含めて,これら被験者たちが真に知能的に普通

_71_

(2)

以下であるかどうかを如何なる根拠に従って決定するかということであった。Binet Testで は成人の被験者は厳密な意味ではTestするこ・とが出来ない。そこでWechslerにとって成人 の知能(標準)を年令に従って決定するということが薪しい研究の対象になったのである。即 ち,平均成人は彼が青年の時と同一の精神力をいつまでも保持し続けているというBinetの 考え方は正当でないとWechslerは考えたのである。

 Wechslerの資料からすると,図に示すように成人の平均成績は20才の始め頃から落ち始め

る。

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このことは極めて注目すべきことであると同時に,各下位Testsは下図に示すように,各下

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(3)

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位Tests夫々の曲線を描きながら20才頃から下降して行く,この下降の仕方,および,下降 する下位Testsのもつ性格が後述する情緒因子と極めて密接な関係を保つのであって,例え ば,Botwinick,J.たちや,(3)Birren, J. E.が言っているように,(4)老衰に際しては,

Verbal曲線の下降よりもPerformance曲線の下降の方が急激にあらわれるのである。

 このことを全体的に,1.Qについて考えてみてもわかることであるが,例えば16才の1.Qが 約100であるとすると,50才の1.Qは約75となる。即ち,計算上,50才の1.Q(75)は12才の LQと同等となって来る。即ち, Binet的に考えると,50才と12才の知能指数が同等であると いうことになる。これは常識から考えても,明らかに矛盾したことである。そこで,この矛眉 を解消するために,成人の知能測定に際して,その素点を換算する場合に,年令に応じて標準 化することの必要をWechslerは痛感したのである。

 斯くて出来たWechslerの尺度が成人用のWechsler・Bellevue Test(1939年)であり,

後に改正されてWAIS(Wechsler Adult Intelligence Scale 1955年)となり,成人用の Testを子供用のTestに改定したものがWISC(Wechsler Intelligene Scale for Children 1945年)である。

 Binet,A・は小学校入学に際して,子供の知能を検査して精神薄弱児を摘出しようとした。

その結果遂に子供から大人への幅広いBinet Testを完成した。これに反して, Wechslerは 精神病患者,精薄者其他成人の研究から出発して逆に年令をさげて子供の知能の研究にまで広 げて行ったのである。然しCronbachの批判によるとWechslerの知能に関する理論の部分,

部分や,Wechslerが選んだTest Itemsについては未だ不明確で不徹底の所がある。

 確かにWechslerは一方ではBinetの一般知能,又は,全体的能力の理論に味方して1.Qの 算出をめざし,他方ではThurstoneの群因子を認めて下位Tests各々を独立的に取扱ってい

るのである。即ち,Wechslerは彼の患者に役立つと思われる。種々のTestsを従来から知ら れた多くのTests申から選んで 思考対作業 という立場から両者の区別の出来るように,而 も両概念を同時に包含するTest尺度を作成したのである。このことは極めて特色のあること と考えることが出来るが,然し,この特色は他方では折衷的,包括的であるために二兎を追い

一73一

(4)

すぎるきらいがあるのである。即ち,WechslerのTes切ミー方でBinet的であり他方で Thurstone的であると批判されるのは上記の意味からであり,この意味において,特色はある が,却って,そのために多くの問題を蔵していると言うことも出来よう。

(2)Wechsler TestはPoint Scaleである。 Testは二つの下位Tests群に分かれている。

この思考対作業という立場によって人聞行動の各型を知ろうとしている。前者をVerbal I.Q 後者をPerformance I.Q両者を綜合してTotal I.Qとして,部分と全体とを同時に算出しよ

うとしている。

 Verbal尺度は知識(lnformation)理解(Complehentioの数唱(Digit Span)類 似(Similarity)算数(Arithmetic)の五つの下位Tetsから成り立っているが,その後の改定 によって語彙(Vocabulary)が附加されている。 Wechslerは最初語彙Testを代替Testの 程度に考えたのであるが・現在においては語彙Testを言語性Testの代表的なものの一つで あると考える程,重要な下位Testとして認めているのである。 Performance尺度は絵画完成

(Picture Completion)絵画配列(Picture Arrangement)積木模様(Block Design)組合 せ(Oblect Assembly)記号(Digit Symbo1)で成り立っている。

 以上の如くにして出来たVerbalとPerformanceの得点を加算して年令別の全1.Qを算出す るように作成した。例えば,総計70の素点は35才では1.Q=89,45才では1・Q=93,55才では 1.Q=97というように,成人あるいは老人になるにつれて年令に従って1.Q換算が増大するよう に作成されている。換言すると,前述したように実験の結果,20才頃からWechsler Testの 素点は,成人が心的速度に欠げると同時に,知的Puzzleを連続的に実施する力に欠げている などの理由によってTest得点の素点が落下するために,これを正常に修正して,例えば・16 才の青年の1。Qよりも30才の成人の1.Qが低下するというTestの矛盾を防禦しているのであ る。このことはBinet Testで考慮されなかったことであって, Wechsler Testの注目すべ き特色の一つである。斯くてWechslerによって始めて老人から幼児までの広がりをもつ知能 Testが出来あがつたのである。

(3)上記の如くして出来あがつたWechsler Testの下位Testの性格をCronbach・:L・E・

(5)およびWatson, R.1.(6)によって解釈すると下記の如くになる。

語  彙

知  識 注脚∫数

意劉算

過去の教育に依存する。

なかなか退行しない。

      過去の環境,過去の教育を示す。

一時的な神経症で阻害され得る。

概念構成

現実情i勢での判断 主として注意テスト 主として注意集中テスト

(5)

欝纐醐緬・戴予想

翻樋完成臆集中・関係評価

1

組合せ

積  木 記  号

型の認知,motor actionの導入

目的物を作成するために型を部分,部分,分 解すること

心的運動速度

Wechslerは上記の言語性と動作性の各1・Qを比較すると同時に,言語性の各下位Testsあ るいは,動作性の各下位Testsの得点を比較することによってIntra−lndividual的に被験者の 診断を行う。このため,彼はScatter理論を用いながら後述する種々のPatternの設定を試み たのである。

 これについてRapaport, D.は次のように批判している。(7)即ち, Wechslerの尺度は二 つの大別された下位Testsからなりたっており, Verbal TestとPerformance Testは更に5

〜6個の第二次下位Testsから構成されている。従って下位Tests間の得点を比較すること が出来る。例えば,一つの下位Testの15点と他の下位Testの9点とは明らかに相違してい ることがわかるようになっている。更に,Binet Testでは甲,乙両人が夫々1.Q=120である 時はInter・individua1的に両人の知能が同等であると判断するが,甲,乙両人の内部構造,即

ち,Intra−iudividua1としては,両者が知能構造的に同等であるということは出来ない。例え

 甲 言語性1・Q=130 動作性LQ出90 全1.Q=120

 乙〃〃=88 〃〃軍135〃〃躍120

というようであったとすると,甲,乙の知能構造は完全に対立するものと考えることが出来 る。この意味においてWechslerのTestはBinet−Testと異なって,個人の内部構造を解明し これら内部相互を比較することによって個人を診断するように出来ている。この意味で診断用 のTestとしてWechsler Testは極めて価値あるものであるとRapaportはいう。

 然しながら,それにも拘わらずCronbachが, Wechslerの考え方をBinet的に1.Qを求め ながら而も同時にScatter的に各下位Testsの得点を比較することが出来るようにしているこ

とは各下位Testsの共通性を認めると同時に認めない という矛盾を含むことになるとする。

換言すると各下位Testsが共通因子を測定するのに好都合であれば,これら下位Tests聞の 関係は診断を妨げるであろうし,診断に好都合にするためには下位Tests間の関係が殆んど共 通でない方が望ましいのである。そうなると共通因子の測定は困難になって来る。Wechsler TestがBinet TestとThurstone Testとの両性格,即ち,一般共通因子と群因子との両者を 同時に認めている二兎を追う方法が真にTestとして正当であるか否かは将来の問題として残 ることでCronbachが・一個の菓子を食べると同時に,その菓子を持ち続けるようなものだ,

一75一

(6)

と批評するのもうなづけることである(8)

 だがWechslerがVerbalとPerformanceの両者を区別して知能構造の解明を志ざしたこと は卓越的考想であると言わなければならない。我々は,進んで上記両能力の関係について文献 的に一隅を一進めることにする。

(皿)Verbal能力(V)とPerformance能力(P)

 Verbal能力とPerformance能力とは,その性格を異にする別個の能力であると多くの学者 が注目し始めた。

 Wechsler, D・はV>Pの被験者は分裂症的傾向があるとし,若し,このことが確実であるな ら,この発見は患者の診断治療にとって極めて有意義なことであると述べている。(9)

 Rabin, A.1.も分裂症は例外はあるが,一般にV>PであるとしてWechslerの窃究に賛意を 表している。 (10) 更にRabinは同雑誌の414頁にBrown, J. E.たちの口答発表を引用して V>PはDepressive患者にも見出され, V−Pの差が顕著にDepressiveとPsychonehrotics

とを見分ける好材料であるといっている。(11)

 その外,Heyer, A・W・もWechslerの患者がV>Pであったことを認めている。(12)

 所が分裂症患者は年令に無関係にV>Pとなるのであろうか。

 Magaret, A・とWright, C・は(30〜39)才の80人の分裂患者を用いてV>Pの傾向のない ことを発見したが,(13)

 Rabin, A. Lは(16〜49)才の分裂患者78名を調査して,そのうち若年のものは極めてV>

Pであることを見出した。(14)

 Weider, A・も(16〜28)才の若年の分裂症患者にV>Pの傾向のあることを発見した。然 し,Weider, A.は(31〜49)才の成人ではV>Pの差を見出すことが出来なかった。(15)

 Gilliland, A. R.たちはRabin, Wechsler, Magaret, Weiderたちの上記の研究に対して消 極的であるが,(16)兎に角,上記の文献を通して考察するにV<Pは何らかの形において情 緒的なあるものと関係すると推定することが出来るようである。

 更に思うに,V>PにおけるVが情緒的障害によって向上するとは考えられない関係上,情 緒的障害はP,即ち,動作性に影響が来るものと推定することに誤りがあるであろうか。

 この意味で,Granick, S・が下記の如き種々の研究を引用して,動作性の顕署な変化は妨げ られた人格機能と関連するといっていることに耳を傾けるべきであろう。(17)即ち,

Granickは

 α)B曲ler, ch.がStanford−BinetのBall−and−Field Itemsで神経症と正常人との差異のある ことを報告したこと。

 ㈲Wile,1. S.およびDavis, R.が問題児に対してK:ohs Test(積木模様)が情緒的に干渉 する傾向のあることを明らかにしたこと。

(7)

 のBijou, S. w.が人格性の悩みをもつ被験者に知的変化が起きるか否かを次の四項目を用 いて調べた結果,一(1)一一般に用いられている知能Testで子供に上記のことが起きるかどう か。 (2)情緒的に悩んでいる被験者と比較して,正常人に容易か,叉は,困難であるような 特殊なTest項目や項目の型があるかどうか。(3)正常,異常をきめる知的機能,叉は,特質 があるかどうか。 (4)その結果に心理学的意味があるかどうか一以上の四項目と取組んだ結 果,Nonverbal Typeの項目が正常人よりも情緒的に不安定な人々に,より困難な傾向のあ

ることを発見した。これらに基づいてGranickは知能,特に動作性知能と人格性との関係を 唱えるのである。

 Allen, R. M.は50人の脳損傷群と標準群とに対してWechsIer Testを施し, Wechsler Test の1,Qによって下記の如き比較表を得た。(18)

年令 20〜24 25〜29 30〜34 35〜39 40〜44  計

言語性

 脳損傷  99.42  100.64  96.75  102.00  100.67  99.58

標準群 102.09

】OL 58 98.82 99.98 100.52 100。75

  四 壁損傷 90.05 90.64 88.58 94.50 95.33 90.46

作性

 標準群  99.00  100.22  100.00  99.13  100。47  100,U

 この表からAllenは脳損傷群の動作性の1,Qが極めて不良であること,換言すると,言語性 よりも動作性の方が脳損傷にとって何等かの異常が生ずることを明らかにした。

 分裂症患者,脳損傷患者,情緒的に障害されている患者がPerforrnance I・Qに損傷を来たす 傾向のあるという発見は,知能の研究にとって一大発見であり,この発見が誤りないものとな

るならば,従来のBinet的知能観は一変されなければならない。

 次に,V>Pとは逆に, VくPについてであるが, Wechslerの研究によると,精神薄弱者は VくPである(19)普通児でも少年は一般にV<Pである。

 所が,このV<Pである少年が成長するとV>Pとなるもので,これが極端にV>Pとなると 前述のように分裂症的傾向,其他の惜緒的障害のある患者となることがある。

 このことは我々の研究からも一応いえることであって,下図の始く,小学校下学年において は,小学生の得点した何れの段階の1・Qにおいても,常にV<Pの傾向を示しており,小学校 5.6年において始めて優秀児がV>Pの傾向をとるのである。 (20)

 このことは幼少時はAbstractよりもConcreteであるが年令の進むに従ってAbstractの方 が,Concreteを凌ぎ,この釣衡が極端に失なわれると分裂症的傾向を生ずるのである。所が 精神薄弱者はAbstractがConcreteを凌駕しないで,どこまでもConcreteな世界に生活し続

一77一・

(8)

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1

1

けようとする。

 武藤雪下によると精薄児9湖中8名までもVく

Pであり, (21)

 我々の研究によっても精薄児28名中24名までが VくPである(22)

 Beck, H:・Sらも精神欠陥者は一般にVくPであ るといい(23)

 Corsini, R. TもVくPは知的欠陥のよき判定で あるといっている。 (24)

 Wechsler, D・は更に詳細に精薄者,並に,境界 線に位置する者を研究して下記の如き表を得るこ

とが出来た。 (25)

Wechslerによると,精神薄弱者,境界線者に 共通なことは,(10〜14)才,(15〜19)才におい

V<Pであったが, (20〜49)才においてはV=P に近よってきているということである。換言すると 精神薄弱児および境界線児は共通してV<Pが特徴 であり,その後の発達によって成人してからV=P に近くなるということ,つまり精神薄弱者にとって はV>Pは一般的に考えられないということである。

 従って,

Verbalの発展性を高なっているということが出来る。

年令

10〜14才 15〜19 20〜49

 精薄者   境界線者

(1.Q 50〜65) (IQ 66〜79)

  51名     63名   38       53   45       82

     精神薄弱者のVくPは情緒的関係というよりも二般に抽象的知能の欠陥によって        それ故に精神薄弱者の欠陥は,精神病

的の欠陥を伴なっている精神薄弱者は別として,一般に,知能の中の抽象的因子の欠陥で情緒 的因子の欠陥というものでなさそうである。従って,知能と気質との干渉の問題に進むために        む精神薄弱者の問題は別個の問題として,目下,この問題に深入りすることを避けることにす

る。

 我々は,この章の目的である。Verbal能力と, Performance能力の気質に関係する方面に ついて稿を進めて来たのである。而して,惰緒に障害されやすい能力はPerformance能力で あるということを文献的に略々知ることが出来た。然らば,Verbal能力, Performance能力 の各下位testsの何れが情緒的に変化を被り,変化を被むらないかについて,今少し,下位に 亘って文献的に調べることにする。

       〔変化を被り難いTests〕

 ④ Gilhooly, F. M.は神経症患者はWechsler Testの知識,語彙,類似,理解が比較的変 化しない。換言すると,懸緒によって変化させられて得点が退行するということはないと発表

(9)

した。(26)

 (ロ)Raynell, W・R・の研究をRabin, A.1が引用している所によると,戦争で脳を損傷した 患者でさえも,他のWechslerの下位Testsと比較して,語彙,知識,理解に障害の起きる率 が少なかったと報告している。(27)

 の Schlosser, J. R.らも163人の精神病患者を実験して,語彙,知識,絵画完成,組合せが 変化し難いことを見出した。(28)

 ←)Allen, R. M.は脳損傷者にWechslerのMental. Deteriofation IIldex.即ち,

  H:01d の得点一 Don t Eold の得点

       を応用した結果,知識が非損傷の最右翼であること        Hold の得点

を見出し,次に語彙,理解が続いて損傷を被り難いことを報告した(29)(30)

 ㈲ 然し,Blake, R. R。とMacarty, B. S.はAllenの用いた,12人の大学生に対する誤診を 見付けWechslerのMental Deterioration Index(M。 D。1。)の方法は有益ではあるが26%は 誤診があると警告を発している(31)

 囚 Goldman, Rらも脳損傷患者にWechsler−Bellevue Testを施し,知識理解が損傷し

 ドないことを報告したが,Goldmanらの研究は統計的分析でなく一般的印象に基づいているも のである。 (32)

 (ト)McCullough, M. Wが(15−51)才の前頭葉手術を10人の患者に施す一週間前に,

Wechsler一一Bellevue Test. Rorschach Test.其他を実施し,手術治療8週問後に再びTests した結果,語彙,知識,類似は治療前と変化がなかった。(33)

 ㈱然しRabin, A・しが疑問を投げているようにTestとRetestの関係は注意を要すること でその結論が治療の結果から生来したものが,練習効果によるものかは詳細に研究する必要が あると言っていることには耳を傾けなければならない。(34)

 (リ)其他,Verba1の不変性について,老人に対する研究の一二を附記すると, Hmt, W.:L.

は(20〜24)と(55〜5の才との群について比較研究した結果,知識と理解とが極めて変化し 難い下位Testsであることを明らかにした。(35)

 図 Fox, c.らも,語彙と知識は老人においても長く保持される傾向があるといっている。

(36)

 ω 更に,Botwinick,J・やBirren, J・E・なども,老衰に際してはVerbalにも影響が来るが,

それよりも早くPerformanceに損傷が来るといっている(38)

 以上の文献から推測すると,情緒に障害のある患者,脳損傷者,老衰などについても,

Verbal的なものは比較的障害を被る率が少ないように思われる。例えばWechsler Testにつ いていうと,語彙,知識,理解あるいは類似などの基本的言語性(WechslerのEssential Verbal)は安定な下位Testsということが出来よう。

これに反して,惰緒的患者,精神病患者,アルコール中毒患者,或は,老衰者たちが損傷しや すい知能の下位Testsは如何なるものであろうか。

一・79一

(10)

〔変化を被り易いTe8t8)

 α)分裂症患者は符号,絵画配列などに極めて悪るい成績を示すとRabin, A・1・は言う。(39)

 (ロ)Carp, A.は患者にInsulin Shockを施し,その治療の結果,絵画配列,絵画完成,積木 模様に顕著な変化を生じたと報告している。(40)

 の Allen, R. M.は脳損傷患者は数唱,符号,積木,組合せが最も影響を被るようだといっ ている。 (41)

 ←)McCullough, M. W.は前頭葉手術患者10人(男4人女6人)(15〜51)才に治療前と 治療後とにTestを行ったが,その結果,数唱,絵画配列に極めて大きい変化があったと報告

した。(42)

 ㈲ Hunt, w.:L.は(20〜24)才と(55〜59)才との二巴に, Wechslerの下位Testsを施 し,積木と符号が変化することを発表した。(43)

 8 Binder, A。はThurstone Testの改定版(S. R. A.)を用いて分裂症患者を研究し,

Verbal Meaning. Number Word Fluencyの如き言語性のものよりも, Space. Reasningの 如き柔軟:性のあるものに患者が因難を感ずる傾向のあることを見出し,彼は,このことを基に

して,知能の或る部面の欠陥は人格性と関係があると暗示している。(44)

〔結 論〕

 以上の文献は,正常人,精神病患者,老人など多岐に亘る被験者につての研究である関係 上,健康者特に学童に直接密接に関係すると推測することをさし控えるが,それにも拘わらず 上記の文献を整理すると,Wechsler Testの語彙,知識,更に,範囲を拡げると理解,類似 の各下位Testsは不変的,安定性があると言えそうであり,数唱,絵画完成,絵画配列,積木 模様,組合せは不安定な下位Testであるとすることが出来そうである。 (45)(46)

 而も上記で明らかなように,Verbalよりも, Performanceに動揺が来ることが推測される。

Wechsler Testsの下位Testsの安定,不安定,については知ることが出来たが,日本におけ る従来から流行している知能Testsは,その何れの下位Testsが安定,或は,不安定なので あるか,而して,日本のTestsはWechsler TestのPerformance Testと如何なる関係にあ るのか,日本におけるTestsの何程が情緒によって障害され易いTestsであるのか,これらの 疑問に答えるため,我々は日本における代表的Testsの因子分析をすることによって研究を進

めて行こうと思う。

(11)

(m 〔日本における代表的Testsを用いての因子分析〕

 上記したように我々は知能はIntellectiveのみのものでなく, Non−lntellectiveのものを も含んでいるという立を保ち続けたのであるが,然らばNon・lntellectiveなものは知能 Testsの如何なる下位Testsに,より多く含まれているか,文献的に,特に, Wechsler Test の研究を再吟味する多くの学者の賛否については既にふれたのであるが,我々が我々の手で,

これを明らかにするには如何なる方法をとるべきであるか。

 ここにおV・て,我は,昭和30〜31年現在の日本においての代表的団体知能Testsを利用して,

これら知能Testsの下位Testsが抽象的のものであるか,叉は, Wechslerの下位Tests(動 作性)の如く,情緒によって障害され易い下位Testsであるかを,因子分析法によって明らか にしょうとする。而して,その結果を用いて更に進んで新しい実験に移って行き,あくまでも 情緒に障害され易い知能因子の発見をめざす。

Test

(1)実施年月日 昭和31年7月及び9月

(2)被験者  小学校6年生  男96名 女100名        中学校2年生  男100名 女100名

(3)Test材 料

  WISC=知識,理解,算数,類似,語彙の忠言語性Tests絵画完成,絵画配列,積木       模様組合せ,符号,の各動作性Tests

  田中A=文章完成,命令,反対,類推,置換,数字弁別,推理

  田中B=迷路,立方体,幾何学的図形置換,異同弁別,数系列完成,図形抹消

  古賀=図形再認,数系列,語の類推,図形の転位,置換及び計算,文章完成,形態の発見   脳 研=立方体,充翼法,批判,時間的順序の把握,類推法,

   桂 =異同弁別,類推,混乱交,直接再生,間接再生,迷路,転換応用問題,数値計       算,語彙1,語彙H,

(4)被験者の抽出

      都市(長崎市)農漁村(東彼杵郡)の層別抽出を行い,WISC全1, Q,による       下表の如き分布表を得た。

      65  79 LQ段階  〜  〜         66

鴬霧E2・8

蠕響 u5

90

80 31

110

91 97

31   104 119

111 32 30

127

120 14 16

128  2 3

一81一

(12)

(5)整 理 小学校6年生196名について前記知能Testsを施し,その結果を用いて相関行 列を求め,順を追って因子分析を完了した。

中学校2年生200名について小学校6年生に実施したと同様知能下位Tests 47 個を施し,因子分訴を行い,小学校,中学校の各結果を統合して新しい日本に おける知能Testを作成した。

因子分析其一(小学校6年生)

 先づ,47個のTestsの相関行列Table Iaを作成した。次にThursto盆eのCe豆troid法に基 づいて因子数因子負荷量:,共通性を求めた。(47)(48)(49)(50)(51)

 Table 8aは因子負荷量行列である。従って,これを心理学的像とするためには,廻転させ る必要がある。我々はBenjamin, F.の引用したHarrisの斜交軸廻転方法によってこれを行

った。 (52) (53) (54)

 斯くて最後的に求められたものがTable 13aである。

 以下,これら各表を添付する。

 以上の操作によって,Tabie 13aを得ることが出来た。ここにおいて5因子,各々において 因子負荷量第一位のもののみを選び出せば一先ず各因子に属するTests名を見付けることが出 来るのであるが一実は結果的には上記手続程度で良好であったと思う。厳密性を保つために 下記の如き操作をして多大の時間と複雑さをもたらすことになった一厳密にするため5個の 因子各々の比較において因子負荷量第二位までを選び出して第二次因子分析を試みた。

 これらについて以下順を追って論述する。

 (1)第一因子中のTestsより選び出されたものはTable 13aのTest名で明らかなように,

因子負荷量第一位のTestsは,6番WISCの絵画完成(.36),8番WISCの積木模様(.35)

9番WISCの組合せ(.27)13番田中Bの幾何学的図形構成(.30)24番古賀の形態の発見(.2 7)43番桂の転換,(.21)であり,負荷量第二位のTestsは,11番田中Bの迷路(.13)12番田

中Bの立方体(。25)16番田中Bの数系列完成(.06)21番古賀の図形の転位(.15)25番脳研 の立方体(.14)であった。

 このうち第二位の因子負荷量である11番田中Bの迷路,16番田中Bの数系列完成,25番脳研 の立方体の分析は,負荷量夫々.13。G6.14の僅少である関係上,第二次因子分析の際除外し,

6,8,9,12,13,21,24,43番の8個のTestsを変数として第二次因子分析を行った,そ の結果は下表の如くである。

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