今田正
一 会計実務の制度性 (一)会計と経済現象の成立
こんにち,会計は税務申告書上,株主総会の決算書類,証券取引所への届出
(1)
書類,あるいは公共料金決定のための届出書類等としてたち現われている。
会計は,いわゆる決算実務を中心として遂行せられ,この決算制度の表現で ある会計利益によって企業課税,支払配当が決められるという仕組みとなっ ている。すなわち,会計実務の結果としての計上利益にもとづく配当可能利 益の媒介によって利益配当が決定せられ,この株主総会によって確定された 利益に基づいて課税所得が決まる。また,公共料金の改訂にあたっては,そ の原価計算が料金決定の資料として用いられるのである。このように,形式 的,手続的には,配当,税,公共料金,その他は一定の会計方法にもとづい て算出された会計上の利益数字によって決定される仕組みのものとなってい る。かくて,会計という表示形式がなければ,税,配当は決まらないという 事実関係からすれば,税,配当は表面上は会計によって決定されているかに みえる。すなわち,経済的現実現象が会計という形式に依拠しているのであ
る。
では,会計は現実の関係として税,配当を決定しているであろうか。留意 すべきことは,税,配当は,現実に支払わねばならないという客観的,経済 的な現実過程である。つまり,税,配当は客観的に,経済的なものとして,
すなわち,客観的経済法則に規定されるものであって,文書上,書かれるこ とによって決まるというものではない。それらは客観的経済現象であり,実 質内容的には,その経済法則の規定するところによって独自に決定せざるを
得ないものである。したがって,その実質は会計(形式)の如何にかかわら ず,また極端には,会計がなくとも,その経済過程は存立し発現しなけれ ばならない。たとえば,会計上,いわゆる「赤字」であっても,賃金は支払 われねばならないし,また「蛸配当」とよばれるごとく,
r
赤字」であって も,配当は支払われねばならない。このことは,配当現象がし、かに厳然、たる 経済法則に規定されたものであるかの証拠でもある。それでは,何故会計上の利益数字を基礎として税,配当は決定されるもの と
L
、う形式が必要とされるのであろうか。それは,配当抑制,減免税といっ た法則的経済現象はそのままでは現実的に社会的に成立し得ないからであ る。すなわち,r
実質的内容的な配当などが,その成立のための媒介手段として会計と
L
、う形式的な表現を要求するのである」。しかし,税,配当などが,現実社会的に成立しうるためには,それが客観 的で正当なものであるという社会的合意が必要である。ここに,税,配当が 利益数字を最終的な計算項目とする決算制度によって自動的に導き出された ものであると
L
、う会計形式が用いられ,そのように外貌化されるのである。このように,会計形式は客観的経済法則によって成立するその経済現象を現 実的に成立せしめることに必要とされる制度的形式なのである。かくて,現 実の会計実務は税,配当といった経済的現実内容に直接に規定されて,その 合理化要請に応じた制度的会計実務とならざるを得ない。かくて,会計実務 は多様であるD しかし会計実務は完全、意的な会計方法によるものとして利益 数字を描きだすことは許されない。それでは会計利益に信頼性を付与するこ とはできな
L
、。ここに本来多様で変動的な会計実務に「合意」を得るために は会計実務を権威づけ,合理づける手段,論理が必要となる。この会計実務 の制度的機能を支える役割を演ずるのが会計監査,会計諸法規および会計原 則を含む会計理論なのである。かくて,会計実務および,これを論理化する会計原則はそれ自体の論理性 においてではなく それを規定づけている経済現象(配当抑制・減免税)との 関係において考察されねばならない。
(
斗 会計実務を規定する経済過程
では,以上のような会計制度の機能を要請している経済的現実はし、かなる 内容のものであろうか。制度現象としての会計が果す経済関係は税,配当現 象に典型的にみることができょう。
~ '"1,ここで,アメリカ法人税の動向を例にとろう。税収源泉に着目すれ ば,個人所得税が戦時税収源として大きく拡大を示す
1 9 4 1
年以前の2 8
年間0913
年の法人税導入以降)のうちの1 7
年間は法人税収入ば個人所得税のそれ を上回っていた。しかるに,1 9 4 1
年から1 9 6 7
年の間は法人税収入は個人所得 税収入を下回り,以降,漸次その比重を低下せしめている。かくて,連邦歳 入に占める法人税収入は1 9
パーセントであったが,1 9 8 2
年度には,それがわ ずか6
パーセントを占めるにすぎない。この間,第E
次大戦以降法人税率は1 9 5 3
年一1 9 6 3
年の聞の5 2
パーセントをピークに,1 9 7 9
年度当初に4 6
パーセン トに低下したにすぎない。このような連邦歳入に占める法人税収入比率の相対的低下は企業減税と個 人所得税等の相対的増税を意味している。では,この企業減税において会計 はいかなる機能と論理を果しているのであろうか。企業の総売上収益額は増 大するのであるから税額の減少は費用の傾向的増大の結果に他ならない。す なわち,法人税率は比較的高率で推移してきたのであるが,費用増大は,な かんづ、く,減価償却引当額等の増大に帰せられる。減価償却に関していえば,
第
2
次世界大戦前においては直線法が基準であったが,1 9 5 4
年税法により加 速減価償却法の導入が計られ,1 9 6 2
年からは,一時中断があったが,機械,設備資産投資に対する投資税額控除が導入されたのである。これらの税会計 実務の会計効果はつぎのような数字に示されている。第1表は企業の税引前 利益に対する支払税額の比率を示す。
1 9 5 1
年,会社の税引前利益に対する法人税額の比率は4 4 . 3
パーセントであ った。それが,1 9 6 5
年には3 4 . 3
パーセント,1 9 7 5
年,2 8 . 0
パーセント,1 9 8 1
年
2 0 . 4
パーセント,そうして,1 9 8 2
年1 3 . 1
パーセントと,著しい減少傾向を示 している。しかるに,このいわゆる実効税率の減少は一般的な法人税率が5 2
ミ一セントから
4 6
パーセントへと,わずか6
パーセント減少した期間に生じ〔 第 1
表〕会社利益に対する一般税率と実効税率 連邦法人税年
法人(%税)率 税00
引1
立前ド利ル益)金 額
税対す引前る比利率益に( 1 0
億ドル)1 9 5 0 4 2 . 0 0 4
1.1 1 5 . 6 3 8 . 0 1 9 5 1 5 0 . 7 5 4 2 . 7 1 8 . 9 4 4 . 3 1 9 5 2 5 2 . 0 0 3 7 . 9 1 6 . 7 4 4 . 1 1 9 5 3 5 2 . 0 0 4 0 . 6 1 7 . 6 4 3 . 4 1 9 5 4 5 2 . 0 0 3 8 . 3 1 6 . 6 4 3 . 3 1 9 5 5 5 2 . 0 0 4 9 . 3 2 0 . 8 4 2 . 2 1 9 5 6 5 2 . 0 0 4 9 . 2 2 0 . 5 4
1. 71 9 5 7 5 2 . 0 0 4 7 . 6 1 9 . 9 4
1. 81 9 5 8 5 2 . 0 0 4 3 . 4 1 7 . 5 4 0 . 3 1 9 5 9 5 2 . 0 0 5 2 . 2 2
1.6 4 1 . 4 1 9 6 0 5 2 . 0 0 5 0 . 2 2 0 . 5 4 0 . 8 1 9 6 1 5 2 . 0 0 5
1. 02 0 . 8 4 0 . 8 1 9 6 2 5 2 . 0 0 5 7 . 8 2
1.7 3 7 . 5 1 9 6 3 5 2 . 0 0 6 2 . 4 2 3 . 7 3 8 . 0 1 9 6 4 5 0 . 0 0 6 9 . 1 2 4 . 5 3 5 . 5 1 9 6 5 4 8 . 0 0 8 0 . 4 2 7 . 6 3 4 . 3 1 9 6 6 4 8 . 0 0 8 6 . 5 2 9 . 8 3 4 . 5 1 9 6 7 4 8 . 0 0 8 4 . 1 2 8 . 0 3 3 . 3 1 9 6 8 5 2 . 8 0 9 2 . 7 3 0 . 2 3 2 . 6 1 9 6 9 5 2 . 8 0 9
1. 22 9 . 7 3 2 . 6 1 9 7 0 4 9 . 2 0 7 8 . 5 2 6 . 3 3 3 . 5 1 9 7 1 4 8 . 0 0 9 0 . 9 3 0 . 1 3 3 . 1 1 9 7 2 4 8 . 0 0 1 0 6 . 8 3 3 . 4 3
1. 31 9 7 3 4 8 . 0 0 1 2 6 . 2 3 9 . 0 3 0 . 9 1 9 7 4 4 8 . 0 0 1 3 4 . 3 4 0 . 0 2 9 . 8 1 9 7 5 4 8 . 0 0 1 3 6 . 3 3 8 . 2 2 8 . 0 1 9 7 6 4 8 . 0 0 1 6 8 . 0 4 8 . 7 2 9 . 0 1 9 7 7 4 8 . 0 0 2 0 3 . 0 5 5 . 7 2 7 . 4 1 9 7 8 4 8 . 0 0 2 3 7 . 7 6 4 . 3 2 7 . 1 1 9 7 9 4 6 . 0 0 2 5 5 . 4 6 4 . 9 2 5 . 4 1 9 8 0 4 6 . 0 0 2 5 4 . 8 5 8 . 6 2 3 . 0 1 9 8 1 4 6 . 0 0 2 6 1 . 9 5 3 . 5 2 0 . 4 1 9 8 2 4 6 . 0 0 2 3 8 . 3 3
1. 31 3 . 1
〔出所 J Pechman
,J . A.
,F e d e r a l T a x PoU
り,4 t he d .
,1 9 8 3
,p . 1 4 4
より作成。た の で あ る 。 他 方 , こ の よ う な 税 引 後 利 益 の 減 少 ( = 費 用 増 大 ) は 配 当 可 能 利益の縮小を意味する。事実,
] . A .
ベックマンCPechman)
は , 第2
次 世 界大戦以後,会社のキャッシュ・フローに対する配当の比重は,戦前に比し,16)
著 し く 低 下 し て い る と し づ 。 い う ま で も な く , こ れ は 主 要 に は 高 い 減 価 償 却 引当額の結果に他ならない。とりわけ,
1 9 5 4
年 以 前 , 資 産 は 基 本 的 に 直 線 法 によって償却された。しかるに,1 9 5 4
年法は新資産について,二倍定率法,お よ び 級 数 法 を 導 入 し た の で あ る 。 ま た , 減 価 償 却 費 増 大 の い ま 一 つ の 要 素
は耐周年数の短縮である。
1 9 4 2
年,5
,0 0 0
項目からなる「ブレティンFJ ( B u l l e t i n F )
が発行された。これは1 9 6 2
年歳入法細則( R e v e n u eP r o c e d u r e 6 2 ‑ 6
1),すなわち「減価償却ガイドライン及び規則J
くD e p r e c i a t i o nG u i d e l i n e s a n d R u l e s >
に転換されるのであるが,この「ガイドライン」は製造企業の償 却期間を,従来の基準に比べ1 5
パーセントも短縮したのである。また,1 9 7 1
年 には,議会は,1 9 6 2
年「ガイドライン」の2 0
パーセントの範囲内での機械設備 の耐周年数を用いることを認める「資産減価償却範囲J( a s s e t d e p r e c i a t i o n r a n g e )
システムを認めたのである。では,この利益の縮小化において会計はいかなる役割を果しているのであ ろうか。つぎに,配当現象についてみれば,いうまでもなく,配当支払は,
直接には財務的また法的問題である。計七利益は,長期に配当として支払い うる,いわゆる最高限度額を示すにすぎない。あるいは,短期には,多くの 場合,配当は当期利益のいかんにかかわらず,過去の留保利益を基準に支払 われるであろう。報告利益が直接に配当として支払われるのではな
L
、。計上 利益が縮小化されるのは,これをもって,現実に支払われる配当(法則的に その平準化と抑制)を利益数値の縮小化をもって合理づけることにある。そし て,これが正当なものであることを論理づけるのが会計実務である。こんにち,アメリカにおける会計実務の展開は,原価配分論を軸とする,
1 9 5 4
年税法以降その大きな比重を占めてきた加速減価償却実務にとどまらな い。情報理論の展開とともに,原価配分論でもっては論理化できない,典型 的にはインフレーション, リース,年金,税効果,偶発債務といった会計取 引領域の拡大は税,配当といった経済的現実に果す会計実務の機能内容の多 様化を要請している。このようなアメリカ会計実務の基本的性質を検討するため,以下,アメリ カ会計実務のもつ制度的あり方の内容について分析検討しよう。
(注)
( 1 ) 宮上一男『会計学木質論 J 森山
i1 i ‑ 1 6 ,昭和 5 4 年. 2 6 8 ‑ 2 6 9 頁参照。加藤盛弘稿「会
計原則新展開の立味 J . 官上ー男編『現代の会計 1
~世界力院,昭和 59 年 2 月.1
頁 。
( 2 ) 宮上一男,前掲古, 2 7 1 頁 。 ( 3 ) 前掲吉, 2 7 2 頁 。
( 4 ) Pechman
,J . A.
,F e d e r a l Tax P o l i c y
,F o u r t h E d i t i o n
,Washington
,D . C . The B r o o k i n g s I n s t i t u t i o n
,1 9 8 3
,p . 1 2 9 .
( 5 )
昂i d . , p . 1 5 0 . ( 6 ) 昂 i d . , p . 1 4 3 .
( 7 ) Murray , Alan P . , D e p r e c i a t i o n , Cambridge : H a r v a r d Law Schoo
,l1 9 7
,1p p . 3 0
‑3 1 . B r i t t a i n , ] . A. , Co ゆ o r a t eD i v i d e n d P o l i c y , Washington , D . C . : The B r o o k ‑ i n g s I n s t i t u t i o n , 1 9 6 6 , p . 4 3 .
( 8 ) 減価償却目的の耐周年数表が 1 9 2 0 年に初めて内国歳入局によって発表されている (Pechman , J . A . , F e d e r a l TaxPolicy , o p , c i t . , p . 1 5 2 . ) o K i e f e r , D.W. , A c ‑ c e l e r a t e d D e p r e c i a t i o n and The I n v e s t m e n t Tax C r e d i t i n t h e P u b l i c U t t i i t y I n d u s
:tη,
Columbus , Ohio: The O h i o S t a t e U n i v e r s i t y , 1 9 7 9 , p . 1 7 . ( 9 )
昂i d .
,p . 1 5 2 .
( 1 0 ) Ray , D . D . , A c c o u n t i n g and B u s i n e s s F l u c t u a t i o n s , U n i v e r s i t y o f F 1 0 r i d a P r e s s , 1 9 6 5
,p . 1 2 5 .
( 1 1 ) I b i d .
,p . 1 2 6 .
二
会計原則の性質と会計実務
(一) 一般に認められた会計原則の実際
いうまでもなく,会計原則および監査基準とは,財務諸表の作成および財 務諸表の検証および報告に関する独立監査人の仕事にとって中心的な二つの 基準をなしている。たとえば,基本的財務諸表に関して,
AICPA(
アメリカ 公認会計協会)のメンパーである監査人の短文式監査報告書様式の意見区分 はつぎのような形式のものである。われわれの意見によれば,ここに添付しである貸借対照表,損益計算書および剰
余金計算書は,前年度と同一基準に基き一般に認められた会計原則に準拠して×会
社の 19xx 年 1 2
月31 日現在の財政状態および同日をもって終了する年度の経営成績
を適正に表示している。
このように,監査人はその監査証明書において,財務諸表の適正意見につ いて「一般に認められた会計原則
J( g e n e r a l l y a c c e p t e d a c c o u n t i n g p r i n ‑ c i p l e s = GAAP)
に準拠し「適正に表示しているJ ( p r e s e n t f a i r l y )
むね述べることが定められている。まさに,この監査証明書の標準様式において,監査 人は,財務諸表が「会計原則に準拠している」と L、う文言を明記すべきこと が規定されたことが,アメリカ会計原則形成の出発点をなしていた。とりわ け,この「一般に認められた会計原則」なる用語がし、かなる内容を意味する かがアメリカ会計原則形成の展開内容をなしていた。特に,その出発点での 大きな転換点をなしたのが,アメリカ証券取引委員会が,
1 9 3 8
年4
月,その 会計連続通牒第4
号( A c c o u n t i n gS e r i e s e R e l e a s e
,No.4)
を表わし,届出 るべき財務諸表は「有力な権威の支持J ( s u b s t a n t i a l a u t h o r i t a t i v e s u p p o r t )
のある会計原則に準拠したものでなければならない,とし,アメリカ会計士 協 会( A I A )
に会計原則の形成の権限と責任を実質的に移譲したことである。レリーズ第
4
号はつぎのように規定する。1 1 9 3 3
年の証券法あるいは19 3 4
年の証券取引法にもとづくルールあるL、はレギュ レションにしたがって当委員会に提出される財務諸表が有力な権威の支持のある会 計原則にしたがって作成されないかぎり,たとえ,その事実が監査証明言?あるいは 財務諸表の脚注において開示されようとも,その事実が重要であるかぎり,かかる 財務諸表は誤りであるか,不正確である。J
結局, レリーズ第
4
号は「有力な権威の支持」ある会計原則がSEC
に受 け入れられ,それを有しない場合は誤りであり,不正確であるとL
、う立場を とったのである。だが,その「有力な権威の支持」の源泉については何ら規 定していない。このことの意味は,その「支持」はSEC
以外にその源泉が 求められることを意味し,実質,会計原則の形成を私的な職業会計士の団体 であるアメリカ会計士協会にゆだねたのである。これをうけて,1 9 4 0
年につ くられたのが会計士協会の会計原則形成機関である会計手続委員会(Com‑
m i t t e e on A c c o u n t i n g P r o c e d u r e )
である。同委員会は,1 9 5 9
年アメリカ公認 会計士協会の会計原則審議会( A c c o u n t i n gP r i n c i p l e s B o a r d )
に移行するまでの
1 8
年間,その作業の焦点はむしろ既存の実務の整理と特定問題の実際的 な処理方法におかれた。会計原則についての概念的な基礎構造の構築につい ては,APB
において,特定問題の会計原則の形成と並んで作業が進められ ることとなったが,拘束力のある会計原則のステイトメントを発表するにい たらず,その課題は1 9 7 3
年以後は,財務会計基準審議会C F i n a n c i a l Accoun~
t i n g Standards Board)
に継続されることになったのである。L
、ずれにしても,このような会計原則形成の中にあって,会計士とその職 業団体であるAICPAの最大の関心事は,先の「適正表示」また「一般に認
められた会計原則」なる用語がし、かなる意味内容のものであるかということ であり,その模索の繰り返しであったといえよう。たとえば,
A.
ブリロフ( B r i l o f
f)によれば,アメリカ法曹協会CAmerican Bar A s s o c i a t i o n )
のA.A.
ゾンマーCSommer)
は19 7 0
年学会において「適正 表示」の概念と「一般に求められた会計原則」とは区別されるとし,後者が かならずしも前者の結果となるものではないことを明言している。また,
J .
マクマホン判事は,1 9 7 4
年,一般に認められた会計原則への準 拠性は会計士が自己の責任を果す上での根拠としては必ずしも十分でない。適正表示は開示と財務諸表の適切性を決定する試金石であるが,一般に認め られた会計原則へ従うことは会計士の社会的責任を果すための手段であって も,それは必ずしも適正性の保証にならない。事実,一般に認められた会計 原則への準拠性は会計士をして刑事上有罪な許欺から逃れさせるものとはな らない。財務諸表がその時における原則,実務または慣行に正式に従ったも のであるかどうかに注意を向けることで,財務諸表が明瞭表示の機能を果し ているかどうかと
L
、う基本的問題をおおい隠すことになってはならないと,述べたと
L
、う。仁) 一般に認められた会計原則の性質
では,
r
一般に認められた会計原則」とはいかなる性質のものであろうかOL
、ま GAAPなる用語の意味についてみれば,会計原則形成運動の初期の過 程におけるAIA証券取引所協力特別委員会とニューヨーク証券取引所との
書簡における
a c c e p t e dp r i n c i p l e s o f a c c o u n t i n g "
という用語をその出発点 とする。この用語は,1 9 3 4
年,AIAI
会社会計の監査J ( A u d i t s o f C o r p o r a t e A c c o u n t s )
において示された監査報告書の標準様式において用いられた。この
a c c e p t e dt r i n c i p l e "
こそGAAP
の先駆的用語であるが,先の往復書簡 の初期においてはa c c e p t e da c c o u n t i n g p r a c t i c e s "
なる用語が用いられたの であり,I
原則J ( p r i n c i p l e s )
と「実務J ( p r a c t i c e s )
とは相互に交替しうるも のとして用いられ,最終的に,監査意見の標準様式において,前者が採用せ られたのである。これは, I原則」なるものは決して実務とかけ離れたもの ではなく,広く受け入れられている実務,すなわち,その基礎に有力な権威 の支持をもっ実務を原則として認め,一般に受け入れられている諸会計方法 について選択的適用の幅を認めるというものであった。かくて,APB
は, その「基礎的概念と幅広い会計原則」プロジェク卜において,つぎのように 規定している。一般に認められた会計原則はその性質上,本来的に慣行的なものである。それら は意思決定の結果である。それらは,一定の時点において,いかに財務会計手続は 機能すべきか,また財務会計手続を通じて得ることのできる情報からいかに財務諸 表が作成されるべきかに関する合意を表わしている。
一般に認められた会計原則が合意を具現するものであるかぎり,それは「一般的 承認」また「有力な権威の支持」といった,けっして正確に定義されることがなか
った,またできない概念、に大きく依存している,と。
また,
1 9 4 7
年( 1 9 5 4
年再発行)に初めて示された「一般に認められた監査 基準J ( G e n e r a l l y A c c e p t e d A u d i t i n g S t a n d a r d s )
はつぎのように述べている
r l l 一般に i i E められた会計原l1I U かどうかの決定は,独立した公認会計士の側の
判断の行使と,また,ある会計原I1I J が限られた実務への適用しかされてい tn 、場合
でも,どの原則が一般的承認を得ているかについての知識を要請してきた
nJr 会計
原則の適用におし、ては,会社間で,かなり実務上の多様性が存在するということを
考慮に入れる必要がある。減価償却引当金についても,その日的については一般的
な日立があるとしても,その原 W J が適用される詳細な過程においてはかなりの相違
があるものである。したがって,ある会社が,明らかにその会社に特有な会計手続 に従っているとしても,もしその手続が実行しようとしている幅広い原則が実際に 一般に認められたものであれば, r 一般に認められた会計原則』に従ったものであ
って,不適正意見の対象となるものではない。」
このように,一般に認められた会計原則の実体は専門的職業会計人の判断 に大きく依存すると同時に実務の多様性をも否定するものではない。むしろ,
その会計原則形成の過程は,職業会計士の専問的知識,判断を制度的な前提 として,原則形成当初から「一般的承認
J ( g e n e r a l a c c e p t a n c e )
性を軸に会 計原則形成を現実の既存の実務に求めたのである。かくて,初期における会 計原則形成の接近法は包括的な会計原則のフォーミュレーションとしてでは なく,会計原則のケース・パイ・ケースの取扱いを示すとL
、う接近法がとら れたのであり,会計原則の適用においては,個々のケースについて,適切な 会計方法の自由な選択に委ねられたので、ある。そして,独立監査人がその実 務が「一般に認められる」に足る有力な権威の支持を有するかどうかを判断 するのである。R.K.
ストーリィ( S t o r e y )
がし、うように,会計原則は「論理 的に一貫した」というより「一般的承認」というコンペンションに依拠した のである。かくて,この点に関して,
P .
グレディー( G r a d y )
は,ある会計実務が有 力な権威の支持をもつかどうかを決定する源泉の第一位に, I経営者の指針 または投資家その他への情報として,信頼すべき結果をもたらすことが企業の 経験から証明された,広く企業で用いられている実務」をかかげている。すなわち,これは「実務」そのものが権威の源泉になりうることを指摘した ものである。
さらに,
M.S.
アームストロング( A r m s t r o n g )
は「有力な権威の支持」の源泉に関して,つぎのごとく列挙している。彼は,その源泉を二つのクラ スに区分する。第1クラスはそれ自体で有力な権威の支持の十分な源泉を構 成す証拠となるものであり,第
2
クラスはそれ自体では有力な権威の支持を 構成するには十分ではないが,他の源泉とのコンビネーションで十分な証拠となるものである。
第
1クラス.APB
オ ピ ニ オ ン.会計研究公報
. AICPA
の企業監査ガイド.SEC
のレギュレーションS‑x
および会計連続通牒‑上記の
4
つの項目がない場合には当該産業に固有の支配的実務がある場合はそ の実務。当該産業に固有の支配的実務がない場合には企業一般における支配的 実務第
2クラス・産業監督諸機関のレギュレーション
・産業内において相当程度おこなわれている実務
. AICPA
の「会計調査研究」‑権威ある会計団体および産業協会によって公表された調査研究
・連邦法,州法,地方の法律
・高い評価をうけている人々の会計学のテキストおよび参考図吉(辞典,年鑑等)
・認められている産業団体の刊行物
‑著名な個人の論文および講演
このように,
WAPB
オピニオン』やWFASB
ステイトメント』といった会 計原則形成機関プロナウンスメントは,それ自体が第一義的優位性を有してGAAP
を形成し,このことは同時に,一般に受け入られた実務を「原則」として権威づけ,さらに,実務界において現実に要求されている新しい実務 を合理化し,それら実務の導入を正式化すると
L
、う機能を果していることを 意味する。さらに,GAAP
の構成要素に著名な個人の見解ないし学説が含 められるということは,単に既存の実務のみならず,GAAP
そ れ 自 体 の 解 釈と運用によって,新たな会計方法をGAAP
として論理化する機能を果す ことになる。レうまでもなく,このような権威化を要求しているのは実務で ある。一般に受け入れられ,企業において広く用いられている実務を会計原 則として権威づけ,論理化しているのが会計原則形成機関の機能である。(注)
( 1 ) See , R a p p a p o r t , L o u i s H. , SEC A c c o u n t i n g P r a c t i c e and P r o c e d u r e , 3 r d e d . , N.
Y . : John Wi1ey & S o n s , 1 9 7 2 , p.2‑6. Armstrong , M a r s h a l l S . , Some Thoughts on S u b s t a n t i a l A u t h o r i t a t i v e S u p p o r t , The J o u r n a l o f A c c o u n t a n り , A p r i , l 1 9 6 9 , p . 4 7 . P i n e s , J . A. , t h e S e c u r i t i e s and Exchange Commission and A c c o u t i n g P r i n ‑ c i p 1 e s ,
Law And C o i z t e n l p o r a r y P r o b l e m s , N o r t h C a r 0 1 i n a : The Duke U n i v e r s i t y S c h o 0 1 o f Law , Vo
l.3 0 . , Autamn , 1 9 6 5 , Number4 , p p . 7 3 0 ー 7 3 1
( 2 ) B r i l o f f , Abraham J . , More D e b i t s Than C r e d i t s , N . Y . Harper & Raw , P u b 1 i s h e r s
,1 9 7 6
,p . 4 .
( 3 ) B r i 1 0 f f , A . J . , U n a c c o u n t a b l e A c c o u n t i n g , N.Y.: Harper&Raw , P u b l i s h e r s , 1 9 7 2 , pp.16‑17.
( 4 ) B r i l o f f , A . J . More D e b i t s Than C r e d i t s , p . l
l.( 5 ) I b i d . , pp.11‑12.
( 6 ) Grady , Pau , l I n v e l l t o
ヮ ザG e n e r a l l yA c c e p t e d A c c o u n t i n g P r i n c i P l e s f o r B u s i n e s s E n t e ゆ r i s e s , AICPA , A c c o u n t i n g R e s e a r c h S t u d y N o . 7 . 1 9 6 5 , p . 4 7 .
( 7 )
昂i d . , p . 4 9 .
( 8 ) S t r o t h e r , James F . , The E s t a b 1 i s h m e n t o f G e n e r a l l y Accepted A c c o u n t i n g P r i n ‑ c i p 1 e s and G e n e r a l l y A c c e p t e d A u d i t i n g S t a n d a r d s , V a n d e r b i l t
Law R e v i e w , Vo
l.2 8 . 1 9 7 5
,p . 2 0 3 .
( 9 ) 加藤盛弘『会計原則の理論 J 森山古庖,昭和 5 5 年 , 3 6 ‑ ‑ ‑ ‑ 3 7 頁参照。
( 1 0 ) Armstrong , M. S . , o p . c i t . , p . 5 0 . ( 1 1 ) Grady , Pau , l o p . c i t . , p . 5 1
(
1
のS t r o t h e r , J . F . , o p . c i t . , p . 2 0 3 .
( 叫 加藤盛弘前掲稿「会計原則新展開の意味 J 16~ 1 7 頁 。
( 1 4 ) S t o r e y , Reed K . , The S e a r c h f o r A c c o z m t i n g P r i n c i p l e s , Houston , Texas S c h 0 1 a r s Book C o . , 1 9 6 4 , p . 2 5 .
( 1 5 ) G r a d y . P .
,o p . c i t .
,p . 5 2 .
( 1 6 ) Armstrong , M. S . , o p . c i t . , p . 5 0 .
三 税会計制度と一般に認められた会計原則
(一) 税法一般規定
7
メリカにおいて,税法はその課税所得概念を認められた会計原則・実務 に基本的に依存しているものと認識されてきた。議会において,最初に法人所得税法が成立したのは
1 9 1 3
年1 0
月である。同 法は1 9 1 3
年 (3 月 l
日)以降稼得されたすべての所得に対して一律1
パーセ ン ト 課 税 を 行 う も の で あ っ た 。 し か し そ の 課 税 所 得 算 定 方 式 は 同1 3 年法
以前も含めて)現金基準に基づくものであった。これに対して,
1 9 1 8
年歳入法は発生主義会計の導入を計ると同時に,税会 計基準に関する「一般規定」を同法2 1 2
条(のち41
条)につぎのように規定し fこ。課税所得は納税者の会計期間を基準にして,その帳簿記録において正規に採用し ている会計方法にしたがって算定されるべきである。しかしもし,どのような会 計方法も正規に採用されていず,あるいはまた,採用されている方法が明瞭に所得 を反映してしない場合には,所得は歳人局長官の意見により所得を明瞭に反映する
と認められる基準および方式で算定されるものとする。
さらに,同法規則
( r e g u l a t i o n )
は採用される会計方法について,4 5
条2 2
項,同23項につぎのように規定する。
1 .総益金およびその損金の算定時期については,その計算が,納税者の所得を明 瞭に反映するような基本的な規則に照らして決定されねばならない。
2 . 認められた標準的会計方法は通常所得を明瞭に反映したものとみなされる。
これら一般規定設定の意味するところはなにか。まず,課税所得算定の基 礎は納税者が通常採用している実務に求められ,その会計実務が一般に承認 された会計方法に基づいてなされることが要請されている。基本的に,税法 は課税所得の算定基礎を会計実務に委任し,その会計方法(実務)の権威づ けを「認められた基準的会計方法
JC a p p r o v e d s t a n d a r d m e t h o d s o f a c c o u n ‑
t i n g )
に求めたのである。このことを,H.E.
アーネット( A r n e t t )
は税法規 定が初めて「一般に認められた会計原則」に依拠するとした例であるという。かくて,このことは税法がその課税所得の算定にあたって,その基礎に
「一般に認められた会計原則(実務 )J の存在を制度的に措定したことを意 味する。
このように,税法は課税所得算定を納税者の会計実務(=自主経理)に依 拠するとともに,その実務の一般承認可能性にその権威を求めたのである。
したがって,このことからまた,とりわけ減免税現象が進行するもとで,こ れら税現象への合理化要請が強まれば強まるほど,税現象成立の社会的認承 のため,
r
一般に認められた会計原則」のフォーミュレーションもまた不可 避となるのである。かくて,
1 9 5 4
年内国歳入法第4 4 6
条はつぎのごとく規定した。課税所得は納税者が自己の帳簿記録において正規に利益を計算するその会計方法 に基づいて算定しなければならない。
また,同法規則
1 . 4 4 6
‑l(C ) ( 1 ) ( 2 )
はし、う。….¥.、っ利益を計上すべきかを決定する場合に,納税者によって用いられる方法 は,それが一般に認められた会計原則に合致する場合,かつ納税者によって継続し て用いられる場合,かつ所得税規則に合致する場合に受け入れられる。
この一般規定は,先にも指摘したごとく,
GAAP
が税会計の基礎を支え るということを明示したものにほかならない。グロール=レームケ (P.R.G r a u l and K. W. Lemke)
は,GAAP
は会計専門家によって認承された会計 方法を代表し,すべての企業によって用いられている。したがって,GAAP
は課税所得の基礎的決定要素として準法律的権威を有したことになる,ともL
、う。事実,1 9 6 5
年,内国歳入局長官は「税目的に報告される企業の総益金 および損金額の9 5
パーセント以上が一般に認められた会計原則に従って決定されている」と述べたとし、う。
(二) 課税所得と財務会計利益の異同
ところで,課税所得の計算式は,納税者の会計年度に基づいて,総益金
( g r o s s i n c o m e )
から(控除が認められる)損金( d e d u c t i o n s )
を控除した金額である。一般原則として,課税所得は,納税者が正規に財務会計上の利益を 算定するその会計処理基準に従って算定される。この会計処理基準は発生主 義,現金主義といった一般的処理基準と,さらに個別の会計処理基準からな る。ただし,この個別の会計処理基準については,財務会計上の処理基準と 税務上の処理基準とに差異が生ずることがある。すなわち
a .
減価償却法,b.
後入先出法以外の棚卸資産評価方法c .
割賦基準d.
全額貸倒損と なる場合の貸倒損失等について税法は帳簿要件(損金経理)を要請していな い。かくて,課税所得は基本的に会計上の利益を基礎に,財務会計上の処理 と財務会計上の処理の差異額がS c h e d u 1 eM ‑1
表上調整される構造となって いる。先にみたごとく,歳入法第
4 4 6
条「一般規定」は1 9 1 8
年法以来,歳入法の 基本原則であり,議会および裁判所によっても認められてきた。かくて,例 えば,1 9 5 4
年,議会は,歳入法規定第4 5 2
条,4 6 2
条の立法によってGAAP
と税会計との差異の縮小化の試みを行った。
4 5 2
条は前受収益は受取時では なく,稼得時に課税することを認めたものであり,また,4 6 2
条では,課税 所得の算定において一定の見積費用(引当金)を認めたのである。これらの 規定は1 9 5 5
年には歳入欠陥や行政上の困難性の理由をもって徹回されたので あるが,所得税法とGAAP
との調整自体が否定されることはなかった。しかしこのように,課税所得算定の
GAAP
への準拠性が強調されると はいえ,税会計上の所得と会計上の利益とが完全に一致するとはかぎらない。その第ーは,純利益の計上時点の差異から生ずるとされる。「期間差異」
( t i m i n g d i f f e r e n c e )
は,一つには,税務行政上の利便性上からも生ずるとL
、 う。例えば,前受収益は納税者が発生主義に基づいている場合でも,実際の 受取り時に課税所得に計上される。割賦販売収益を回収基準で課税所得に計 上することも選択可能である。また,当期売上げに伴う製品保証費はその発 生時の所得から控除しうる,がごときである。第二は,帳簿上の純利益と課税所得とは同ーの会計方法に基づいて計算さ れるとする「一般規定」に対する例外を設ける(すなわち,損金経理が要求さ
れな~, )ことによる差異である。かつて,内田歳入局長官
S . コ ー エ ン
( C o h e n )
はつぎのように述べたとL
、う。「一般に,課税所得は一般に認められた会計原則に従って算定されるが,税法は 租税政策の遂行に必要な場合には一般に認められた会計原則を用いることを必然、的 に無視しなければならない」と。
この租税政策上の要請の典型例が加速減価償却制度である。ここでは,課 税目的と会計目的との相違が積極的に強調されることによって税会計実務が 合理化されるのである。
税目的に加速減価償却を認める第一義的目的は新規設備投資を刺激するこ とにあり,その手続が必ず費用・収益の対応をもたらす結果となるからでは ない。したがって,会計目的の達成のためにはある方法が要請されるであろ うし一方,租税目的には異った他の方法が有効である。すなわち,一つの 方法が同時に,かつ効果的に両目的を達成することはできない。税会計手続 の発展を支配している目的と
GAAP
の発展のそれとは異にしている,というように論理化されるのである。
(三) 税会計と
GAAPの調整
いうまでもなく,課税所得は内国歳入法規定,財務省規則,裁判所判例に 規定された法的概念である。税法は課税所得の計算的基礎を会計に求めたの である。その連結環が先の「帳簿記録要件
J( b o o k i n g r e q u i r e m e n t )
に他な らない。だが,この「帳簿記録要件」は決して統一的に適用されるわけではない。
特に代替的会計方法の場合はそうである。先に掲げた例のごとく,特に租税 政策に伴う項目は必ずしも記帳要件が要請されていない。むしろ,
I
帳簿記 録要件」は課税所得決定の支えに必要であるというだけに維持される場合に,その会計機能が端的に示されている。その例はLi
Fo棚卸評価法である。こ
れは,もし税務H的に採用された場合には財務報告会計目的に対しても用いられねばならない(~、わゆる損金経理を必要とする )0
G . E . レント ( L e n t )
はい う。LiFo
は19 3 9
年に認められたのであるが,それ自体は新しい性質のものである。もしそのような報告実務,すなわち,
r
帳簿記録要件」がなけれ ばLiFo
がこんにちにみるごとき社会的承認を得た会計方法となりえたか疑 わしい,と。また,同様の「帳簿記録要件」は減価償却方法の一層の自由化にあたって の条件ともなったのである。かくて,
1 9 5 4
年法における加速減価償却制度の 導入は,税目的でのその採用に関しては「帳簿記録要件」を必要としないに もかかわらず,多くの会社が財務会計上も同じ基準で記録するように促進す ることなったとし、ぅ。特に,償却方法,および,耐周年数の「自由化」)とし、った減価償却規定の変更は一般目的上の減価償却と税務上採用されるそれと が異る場合,その償却額の差異が必然、的に拡大することは避けられない。
かくて,
AICPA
をはじめ多くの機関は基本的に課税所得は一般に認めら れた会計原則のもとに決定された利益に最大限合致することが主張されてき た。だが,現実には,両者には差異が存在する。その一つは,同じ会計方法を採用する場合でも,両者の発生主義に関する 考え方の相違に基づく場合,すなわち
t i m i n g "
の差異である。たとえば,税務目的においては,課税所得算定の要素として益金に関しては「権利確定
j
基準(c1aim‑of‑right d o c t r i n e )
,損金控除時期に関して,発生主義を採用 する場合,負債を確定するすべての事象が発生した年度に控除しうる,とす る「すべての事象」テストが採用される。これは,利益の見積計上を行わず,すべての損失に対しては見積計上を行うとし、う会計との調整を困難とする。
たとえば,見積費用は税務目的には損金控除とはならないのであるから,同 じ会計方法が用いられながらこれら期間差異は税会計と財務会計間との差異 をっくりだし,両者の完全な調整を不可能とするものである。
第二は,加速減価償却といった
GAAP
の論理でもっては論理化しえない 税法目的・政策に基づく差異である。現実には,税務目的に用いられる会計 方法は,結局において財務会計目的のための会計方法を支配する傾向がある。納税者は最小限の課税となるような会計方法を用いるであろうが,それらの 方法は財務報告目的にとって堅実,かつ適切な方法であるか否なかにかかわ
らず,財務報告にも用いられねばならないのである。
では,このような会計処理の矛盾はどのように論理化されるであろうか。
ここでは,税目的と財務会計目的への利益決定方法の相違が積極的に強調さ れるのである。すなわち,税法の目的は政府歳入を計ることにあり,財務諸 表の目的は経済的意思決定に有用な情報を提供することにある。税法の目的 は歳入を計ることにあるのであるから,必ずしも費用‑収益の対応を計り,
その他の目的を達成することにあるのではない,と。また,減価償却につい てみれば,いま,税務申告書上で加速減価償却が用いられ,帳簿減価償却も これに従った場合,多くの場合帳簿減価償却費は過大計上され,利益は過少 計上される。かくて,もし費用‑収益の対応が基本的会計目的であるとすれ ば,加速減価償却は財務諸表上用いることはできない。したがって,帳簿減 価償却は必ずしも税務減価償却と合致する必要はな
L
、。むしろ,多くの場合,よりよい会計方法としては,帳簿と税務減価償却との差異は避けられない。
会計実務としては帳簿記録と税控除との期間差異が税引後の報告利益を歪め ることのないようにするには繰延税会計が採用されるべきである,とこのよ
うに論理化されるのである。
以上のように,課税所得と会計利益との差異は,
( 1 )
税法と GAAPにおい て収益および費用を計上する時点が異るか,( 2 )
会社が,財務会計上,税1 1
的 のそれと異なる会計実務を採用することに起因するとされる。かくて,これらの差異は発生原因の如何にかかわらず,一般的に,
r
期間 差異J ( t i m i n g d i f f e r e n c e )
あるL
、は「永久差異J ( p e r m a n e n t d i f f e r e n c e )
として概念化され,区分される。先づ,
r
永久差異」は,( 1 )
会計上認識された 特定の収益が税法上非課税,( 2 )
会計上認識された特定の費用が非控除,( 3 )
GAAPでは費用と認められない課税控除項日の存在といった差異で,この「差異」は会計利益か課税所得のどちらかに効果をもつが,両方に与えるこ とはない。
問題とされるのは「期間差異」である。これは,例えば,経営者は,通常,
税日的上,すべての費用を可能なかぎり早期に認識計
k
し,課税の減額と繰 延を計らんとする。この意思決定も「期間差異」をもたらすが,この差異は 一定期間後逆転すると仮定される。税率の変化がないとすれば,財務諸表上と税務申告書上の所得税額は各年度によっては異なるが 長期間をとれば支 払税総額は等しくなる。かくて,所得税額の配分は適切な費用・収益対応の ために必要となる,と,このように論理化されるのである。すなわち,税配 分会計が塁手入されるのである。税配分会計は,課税所得と会計上の税引前利 益の算定基準が,期間差異を生みだす場合,財務諸表に計上する所得税額を 課税所得を基礎にした実際支払税額ではなく,会計上の税引前利益を基礎じ して算定した額によって表示する会計処理法をし、う。すなわち,実際の支払 所得税額と会計上の所得税額との差額,すなわち 税効果
( t a xe f f e c t )
を会 計上繰延べるというものである。所得税法による減免税の拡大は,結果として,実際支払所得税額よりも会 計上の所得税費用の不断の拡大傾向を生みだす。このため,税配分会計実務 の採用によって,所得税費用は拡大され,税引後利益は縮小表示されること になる。すなわち,企業は税会計上で加速減価償却等課税所得の圧縮を通じ て課税額が縮小化される一方,税配分会計を通じて配当可能利益たる税引後 利益が縮小化され,配当抑制が合理づけられるのである。
税配分会計はまた,公益事業会計についても
FASB
,連邦エネルギ一規 制委員会C F e d e r a lEnergy R e g u l a t o r y C o m m i s s i o n )
,その他の規制機関に よって規定されている。また,内国歳入法,同規則も,減価償却及び投資税 額控除に関して税配分会計原則(繰延税法または正常化法)に従うことを要請 している。この要請は公益事業会社がその税務申告書上加速減価償却及び投 資税控除の特典を受ける場合の要件である。公益事業会社はこの繰延税効果 が料金決定目的上営業原価を構成する限りこの実務に従うことになる。一般 に,この繰延会計は,事業会社にとって税務加速減価償却の結果,実際支払 税額より帳簿上の所得税費用は大きくなり,営業原価を増大せしめる。とりもなおさず,事業会社の顧客への高料金決定が合理づけられるのである。
(四) 税会計制度の基礎をなす
GAAP
以上,アメリカ税会計実務の制度的構造について検討してきた。
( 1 )
税額の決定において,その基礎となるのは会計上の利益である。納税申告占
F o r m l 1 2 0‑ S c h e d u l e Ml
上,まず帳簿上の利益から出発し課税所得に 調整される。課税所得の算出の基本構造は形式的には税法規定に依拠しつつ も,内容的には, GAAPにもとづく帳簿会計利益に根拠づけられることに よって支えられるとL
、う関係にある。( 2 )
たしかに,税会計手続は租税政策等税1 1
的に従って,税法によって規定 され,またこれに従って,解釈されるものである。だが,税会計制度はそれ 自体で成立しているのではない。それは会計制度の支えによってのみ成立し うる。税会計制度は会計制度の基盤の上に成立している。会計上の純利益額 と異った税法上の純所得が成立し,それが「一般的承認可能性」をもちうる のは,その基礎に「一般に認められた会計原則」が制度的に措定されている からに他ならない。 GAAPに基づいて会計上の利益が算定され,この会計 上の利益を基礎に税法規則に従って純所得が計算される。これによって, I課 税所得」は GAAPによって裏うちされ,社会的認承を得て合理化されるの である。そして,このアメリカにおける所得算出過程の GAAPへの準拠性 が社会的認承を得て成立しうるのは会計プロフェッションの有する専門性に 裏うちされるからに他ならない。それは,アメリカにおける GAAP形成自 体が会計プロフェッションに委任され,実際に担われてきたのであり,さら には課税所得算定の基礎たる帳簿会計の GAAPへの準拠性は会計プロフェッションの専門的判断によって支持されるという意味においてである。
( 3 )
だが,課税所得は直接に客観的租税現象に規定され, これを合理化する 税会計上の概念であり,直接に GAAP会計利益と合致しえない。換言すれ ば,加速減価償却といった租税政策とL
、う論理が税会計実務の実質を規定し,これらについては直接に GAAPをもってはその合理化を補完することはで きない。むしろ,課税所得と会計利益との算定が異なる場合,両者の関係に おいて重要なことは,租税政策によって導入される税務会計処理基準から独 立した GAAPの論理的一貫性を制度的に保持することである。ここに,税 配分会計の機能は税務会計上算定される(実際支払)所得税額を直接に会計 上の所得税費用に連結させないことにより,会計上の(税引後)利益の適正 表示を保持するよう調整を計ることにある。これによって, GAAPに基づ
く一般目的会計の合理性を保持し一方 これによって 税務会計実務を特 殊目的にそった会計制度として合理化し,社会的認承を計ると L、う論理機能 を同時に達成せんとするのである。
税会計制度と