体ウェブサイトの内容を事例として‑
著者 菊地 達夫
雑誌名 北翔大学北方圏学術情報センター年報
巻 2
ページ 129‑134
発行年 2009
URL http://id.nii.ac.jp/1136/00001139/
Ⅰ.は じ め に
日本各地では,文化遺産をはじめとした各種遺産を観 光資源化する動きが盛んである参1)。その代表的なもの が,世界遺産である。これまで文化遺産と呼ばれる類の ものは,文化財として保存・保全するような形態が大半 であった。この文化財も,地域によって観光資源化した ところが少なくない。他方,各種遺産は,文化財に類似 しているところがあるものの,その選定基準の位置付け は微妙に相違する注1)。そもそも,このような「〜遺産」
の出現は,世界遺産の影響を多分に受け,観光活用につ なげたい意図が強い。
北海道遺産は,そのような遺産の代表的なものであ る。北海道遺産は,次世代に引き継ぎたい北海道の大切 な宝物として,自然,歴史,文化,生活,産業など有 形・無形の候補物から52件選定した注2)。また,北海道 遺産の構想として,選定遺産の保存,保全,活用をしな がら,地域の活性化,郷土愛の育成に役立つことを期待 している注3)。とりわけ,活用では,観光商品を含め観 光資源化することを強く望んでいる。
本稿では,北海道遺産の観光活用として,観光情報に 焦点をあて,どのような内容を示し,活用につなげよう としているのか,明らかにする。具体的には,自治体の ウェブサイト(観光項目)を指標とし,北海道遺産を観
光情報として,どのように掲載しているのかを検討す る。自治体として,北海道,14支庁,市町村を対象とし た。また,市町村では,自治体間の比較ができるよう,
複数の市町村にまたがる人文社会的遺産と自然的遺産を 取り上げた。なお,ウェブサイトの情報として,自治体 管理のものを取り上げる理由は,内容の信憑性が高いこ と,ほとんどの自治体で観光項目をもっていることにあ る。現在,ウェブサイトの観光情報は,民間企業(旅行 会社など)の内容,旅行者のブログなど有力なツールが 存在する。ただ,北海道遺産のような知的観光資源は,
学術的な評価を受け,観光資源に変化を遂げたものであ る。それ故,観光情報として,北海道遺産の有する知的 な情報発信を見極めるため,ウェブサイトの内容の信憑 性を重視した。
なお,ウェブサイトの内容は,2010年2月時点のもの である。また,知的観光情報とは,観光資源化した文化 財,各種遺産における学術的評価の基礎的,概略的な内 容を指すものと定義しておきたい。
Ⅱ.北海道庁と支庁の情報発信の実態
本章では,北海道庁,各支庁の内容を指標として,北 海道遺産を観光情報として,どのように活かそうとして いるのか検討する。手法として,各支庁又は観光項目の ウェブサイトのトップ頁に北海道遺産に関する内容が取 研究報告
菊 地 達 夫(北翔大学短期大学部 こども学科)
抄 録
本研究では,北海道遺産の観光活用として,観光情報に焦点をあて,どのような内容を示 し,活用につなげようとしているのか,明らかにする。具体的には,自治体のウェブサイト
(観光項目)を指標とし,北海道遺産を観光情報として,どのように掲載しているのかを検討 する。
調査の結果,北海道遺産の観光活用は,支庁,市町村のウェブサイトいずれでも低調であっ た。よって,観光情報として,北海道遺産の観光活用の位置付けは低いと判断できる。
その原因として,行政機関において,北海道遺産の観光活用の共通理解がされていないこと を指摘できる。また,北海道遺産の認知度が低く,どのような点を評価したものか,十分に認 識されていないことも考えられる。
それをふまえ,望ましい観光情報の活用のあり方として,函館市の事例を示した。
キーワード:北海道遺産・自治体・ウェブサイト・知的観光情報
北海道遺産の有する知的観光情報の発信実態
―自治体ウェブサイトの内容を事例として―
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【増毛の歴史的建造物群(駅前の歴史的建造物群と増毛小学校)】人 文社会的遺産
北海道庁ウェブサイトの内容
留萌線の終着駅「増毛」。駅の周りには明治初期から営業を続けて きた「旧商家丸一本間」を始め,日本海の風雪に耐えた石造りや木造 の建物が並ぶ。高台にある増毛小学校は1936年に建築された戦前期都 市木造校舎としては道内唯一の現役校舎。今も子どもたちが元気に学 び,体育館ではコンサートも開かれるなど,卒業生をはじめ町内外の 多くの人に親しまれている。
留萌支庁ウェブサイトの内容
増毛駅周辺には,明治初期から営業を続けてきた豪商旧商家丸一本 間家(平成15年12月に国の重要文化財に指定)をはじめ,華やかな昭和 初期の名残がある建物が並び,道北ではほとんど唯一といってよい歴 史的な街並みを今に残しています。
また,市街地背後の高台にある増毛小学校は,昭和初期に建造され たもので,道内最後の貴重な戦前期都市型木造校舎として,今も現役 で使われています。
【宗谷支丘陵の周氷河地形】自然的遺産 北海道庁ウェブサイトの内容
宗谷丘陵に見られるなだらかな地形は,約2万年前の最終氷期の間 に形成された氷河由来の特徴的なもので,氷河周辺部での凍結融解の 繰り返しによって出来たもの。谷が樹枝状に伸びる地形は上空から観 察することができる。日本最北端のこの兵陵には広大な肉牛牧場が広 がり,厳しくも豊かな自然に育まれた健康な黒牛が約3000頭,放牧さ れている。
宗谷支庁ウェブサイトの内容
宗谷丘陵に見られるなだらかな地形は,約2万年前の最終氷期の間 に形成された氷河由来の特徴的なもので,氷河周辺部での凍結融解の 繰り返しによってできたものです。
明治44(1911)年5月に起きた山火事で森林が失われて,その後は 多くの笹に覆われていますが,谷沿いにはようやく森林が回復しつつ あるのが見られます。
日本最北端のこの丘陵には,国内最大規模を誇る広大な肉牛牧場が あり,厳しくも豊かな自然に育まれた健康な黒牛が放牧されていま す。
第1図 北海道庁と支庁のウェブサイトの内容(事例)
資料)北海道庁,留萌支庁,宗谷支庁のウェブサイト(2010年2月)
り上げられているかどうかで判断する。
北海道遺産は,14支庁に1以上の遺産が分布してお り,どの支庁においても取り上げることができる。ま た,北海道遺産のいくつかは,文化財として指定を受け ているものもあり,教育項目(教育委員会)のウェブサ イトに掲載されていることも考えられる。しかしなが ら,本稿では,北海道遺産の観光活用に重きを置くた め,教育項目のウェブサイトの内容を,原則省いた。イ ンターネットの観光情報を収集する場合,多くの観光客 が,教育項目のウェブサイトを閲覧する可能性を低いも のと考えた。
1 北海道庁の内容
北海道庁では,北海道遺産に関する内容を,北海道総 合政策部地域づくり支局で管理している注4)。その中身 は,北海道遺産の概要,遺産構想,選定基準,歩み,地 理的分布,各遺産の説明となっている。また,関連サイ トとして NPO 法人北海道遺産推進協議会のウェブサイ トにも,たどり着ける注5)。中身の構成は,ほぼ同じで あり,各遺産の説明も共通している。よって,両ウェブ サイトを閲覧することで,北海道遺産全般と各遺産の概 要を理解できる。
2 各支庁の内容
続いて,各支庁の内容では,どうであろうか。14支庁 のうち,北海道遺産の内容を取り上げている支庁は,5 支庁に過ぎない。
具 体 的 に は,網 走 支 庁 の「ワ ッ カ・小 清 水 原 生 花 園」,空知支庁の「炭鉱関連施設と生活文化」,「北海幹 線用水路」,留萌支庁の「留萌のニシン街道」,「増毛の 歴史的建造物群」,「天塩川」,胆振支庁の「昭和新山国 際雪合戦」,「登別温泉地獄谷」,「内浦湾沿岸の縄文文化 遺跡群」,宗谷支庁の「稚内港北防波堤ドーム」,「宗谷 丘陵の周氷河地形」であった注6)。
さらに詳しくみると,網走支庁,空知支庁では,管内 にその他の北海道遺産がありながら,そのことに触れて いない注7)。網走支庁では,「流氷とガリンコ号」,「オ ホーツク沿岸の古代遺跡群」,「ピアソン記念館」,「森林 鉄道蒸気機関車雨宮21号」,空知支庁では,「雨竜沼湿 原」がある。ただ,これら一部の遺産は,観光情報を発 信している。「流氷とガリンコ号」では,流氷の接岸状 況の映像やガリンコ号の説明,「オホーツク沿岸の古代 遺跡群」では,常呂遺跡群,モヨロ貝塚など説明してい る。また,「雨竜沼湿原」は,画像情報を通じて紹介し ている。
なお,北海道遺産が,どのようなものか説明している ところは胆振支庁,留萌支庁,宗谷支庁に限られた。
3 北海道庁と支庁の内容比較
次に,北海道庁と支庁の内容について比較する。人文 社会的遺産の例として「増毛の歴史的建造物群」(留萌 支庁),自然的遺産の例として「宗谷の周氷河地形」(宗 谷支庁)を対象とした注8)。
「増毛の歴史的建造物群」の場合,代表的な建物とし て,旧商家丸一本間と増毛小学校を取り上げ,建築年代 や用途など,ほぼ同じ内容となっている。一方,北海道 庁では,増毛小学校を道内唯一の現役校舎であること,
留萌支庁では,歴史的街並みが道北で唯一であることが 相違している。地域スケールを考えた場合,北海道庁 は,全道的な立場にたつものであり,留萌支庁は,道北 地域の立場にたつ。よって,地域スケールに応じた内容 と考えれば妥当である。
「宗谷の周氷河地形」の場合,周氷河地形の形成と現 在の状況(肉牛牧場)を取り上げ,ほぼ同じ内容となっ
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北海道遺産(関係遺産) 所在地 遺産の説明 備考(主な観光情報の内容)
留萌のニシン街道 留萌市 ×
小平町 ○ 旧花田家番屋
苫前町 ○ 岡田家番屋
空知の炭鉱関連施設と生活文化 三笠市 ×
夕張市 ×
美唄市 × 炭鉱施設(炭鉱メモリアル森林公園)
赤平市 ×
歌志内市 × 炭鉱施設(旧空知炭鉱倶楽部 社員合宿所)
芦別市 ×
岩見沢市(栗沢) ×
上砂川町 × 炭鉱施設(旧三井砂川竪抗 旧地下無重力実験センター)
浦臼町 ×
奈井江町 × 炭鉱施設(にわ山自然森林公園 石炭の広場)
内浦湾沿岸の縄文文化遺跡群 函館市 × 大船遺跡
史跡北黄金貝塚公園 伊達市 ×
五稜郭と箱館戦争の遺構 函館市 × 道南・箱館戦争めぐり 9箇所の位置と説明
開陽丸 江差町 × 同
館の新城 厚沢部町 × 同
矢不来・中山峠・二股口 北斗市 × 同
福山城 松前町 × 同
鷲の木霊鷲院(森町) 森町 × 同
明治新政府軍上陸の地 乙部町 × 同
峠下 七飯町 × 同
野付半島と打瀬船 別海町 ×
標津町 × 野付半島(写真のみ)
オホーツク沿岸の古代遺跡群 北見市 △ 世界文化遺産登録提案書、常呂遺跡群
モヨロ貝塚 網走市 ×
斜里町 × 知床世界自然遺産
黒曜石の露頭 遠軽町 ×
根釧台地の格子状防風林 中標津町 × 開陽台展望台
別海町 ×
標津町 ×
標茶町 ×
ワッカ・小清水原生花園 北見市(常呂) ○ ワッカ原生花圏・ピアソン記念館 小清水町 × 網走国定公園
資料)各自治体のウェブサイト。
注1)表中の○印は、「北海道遺産」の記載はあり、説明している場合 注2)表中の△印は、「北海道遺産」の記載はあるが、説明なしの場合
第1表 北海道遺産に関する市町村のウェブサイトの内容(2010年2月)
ている。一方,北海道庁では,谷に対する景観の内容,
宗谷支庁では,明治期の山火事の内容で相違している。
一見,全く相違する内容にみえるが,宗谷支庁の内容 は,谷の森林状況が過去の自然災害に影響を受けている 点を強調したものであり,北海道庁の内容を補足するよ うなものになっている。
両者の比較では,多少の内容の違いはあるものの,相 互に補完できる域にはなっていない。
4 小活
以上,北海道庁と各支庁の内容について小活しておき たい。各支庁の内容では,北海道遺産の観光活用に対す る扱いに格差のあることがわかった。また,管内の遺産 の多少が影響しているわけでもない。とりわけ,遺産の 数の多い石狩支庁や後志支庁でも,北海道遺産に関する 内容を確認することはできなかった。それ故に,行政機 関において,北海道遺産の観光活用に向けて推進する体 制が共通理解されていないと判断できる。
一方,選定された北海道遺産が,観光情報を発信して いないわけではない。むしろ,ほとんどが観光情報を発 信している。ただ,観光情報の中で,北海道遺産の内容 をほとんど触れていない。
他方,同じ遺産でも世界遺産に関する内容は,観光情 報を積極的に発信している。知床世界自然遺産の場合,
関係支庁である網走支庁,根室支庁で発信している注9)。 また,胆振支庁では,洞爺湖・有珠山地域の世界地質公 園(ジ オ パ ー ク)の 内 容 を 発 信 し て い る注10)。い ず れ も,選定されたことを強調し,観光活用につなげたい姿 勢が明確である。
Ⅲ.市町村の情報発信の実態
本章では,人文社会的遺産と自然的遺産のうち,複数 の自治体にまたがる北海道遺産を取り上げ,それぞれの 観光情報の発信状況・内容について検討する。具体的に は,市町村のウェブサイトのトップ頁から観光情報とし て北海道遺産に関する内容を取り上げているかどうかで 判断する。
事例とする北海道遺産は,人文社会的遺産として,
「留萌のニシン街道」,「空知の炭鉱関連施設と生活文 化」,「内浦湾沿岸の縄文文化遺跡群」,「五稜郭と箱館戦 争の遺構」,「野付半島と打瀬船」,「オホーツク沿岸の古 代遺跡群」,自然的遺産として「根釧台地の格子状防風 林」,「ワッカ・小清水原生花園」を対象とした注11)。
1 市町村の内容
北海道遺産を取り上げている市町村は,苫前町と小平
町の「留萌のニシン街道」,北見市の「ワッカ・小清水 原生花園」,「オホーツク沿岸古代遺跡群」の3自治体で あった。これらの市町村は,前章で確認できた留萌支庁 と網走支庁に属する。
細かくみると,苫前町と小平町では,「留萌のニシン 街道」の中で,町内に位置するものに限定している注12)。 北見市の「ワッカ・小清水原生花園」でも同様であっ た注13)。自 治 体 が 管 理(関 係)す る ウ ェ ブ サ イ ト の た め,他市町の遺産を取り上げにくいことはあろう。た だ,岡田家番屋(苫前町),旧花田家番屋(小平町)が 北海道遺産に選定された記載はあるものの,「留萌のニ シン街道」の文言を確認できなかった注14)。両町の内容 では,それぞれの番屋が個別に北海道遺産に選定された ような誤解を与えかねない。北見市の場合でも,「ワッ カ原生花園」のみの記載であった注15)。もう一方の小清 水原生花園には,全く触れていない。こちらも,「ワッ カ原生花園」が,個別に北海道遺産に選定されたような 誤解を与えかねない。
北見市の場合,他に「ピアソン記念館」と「オホーツ ク沿岸古代遺跡群」も市内に位置する。しかしながら,
その説明は,「ピアソン記念館」のみで,「オホーツク沿 岸古代遺跡群」は,常呂遺跡群が含まれる記載はあるも のの,それについての説明はない注16)。また,「ピアソン 記念館(北海道遺産)」は,項目の後に括弧書きで北海 道遺産の記載がある。他の2つは,項目一覧に同じよう な北海道遺産の記載はなく,ウェブサイトをさらに開か なければわからない。北見市は,北海道遺産全般の説明
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* 北海道遺産の下線は筆者
【留萌のニシン街道】人文社会的遺産
苫前町ウェブサイトの内容(教育委員会管理)
「岡田家番屋」の説明
この番屋は昭和15年に下窓石太郎氏(現当主,岡田一孝氏の父)が海淵虎之助氏から購入。ニシン漁に使用 し,その後隆盛を極めた。(平成13年度北海道遺産に登録される)
小平町ウェブサイトの内容
「旧花田家番屋」の説明(重要文化財を明記)
日本最北端の国指定重要文化財。平成13年には北海道遺産にも認定されています。明治38年頃に建築され,道 内で現存する番屋では最大の規模を有し,当時雇い人が200人を超えた大鰊漁家。「道の駅」を併設し,年間を通 じて公開されています。また,国道232号線をはさんで海側にはにしん文化歴史公園があり,北海道の名付け 親,松浦武四郎翁の像が建っています。
毎年5月下旬に鰊番屋まつりを開催。各種ゲームやイベントが行われ,多くの来場者で賑わいます。
【ワッカ・小清水原生花園】自然的遺産
北見市ウェブサイトの内容(北見観光協会 北見商工会議所管理)
「ワッカ原生花園」の説明(網走国定公園・北海道遺産を並記)
オホーツク海とサロマ湖を隔てる砂州に広がる海浜植物の一大群落地。季節の変化に合わせて約300種類以上 の草花が咲き野鳥の繁殖地にもなっています。平成13年10月には北海道遺産に選定されました
「ピアソン記念館」の説明(項目に北海道遺産を明記)
北見地方でキリスト教伝道に尽くしたピアソン夫妻の住宅で,北海道遺産に指定されています。1階はピアソ ン夫妻の遺品など,2階は姉妹都市のエリザベス市(アメリカ合衆国)の資料が展示されています
「北海道遺産」に関する説明(北見市ウェブサイトの内容)
北海道内の自然や歴史など有形・無形に関わらず,さまざまな価値の中から次世代に伝えたいものを「北海道 遺産」として選定し,その保全,活用を通じて新しい魅力を持った北海道づくりを進めよういう道民運動です。
「ワッカ原生花園」のほか,「オホーツク沿岸古代遺跡群」として「常呂遺跡群」も北海道遺産に認定されて います。
第2図 市町のウェブサイトの内容
資料)苫前町,小平町,北見市のウェブサイト(2010年2月)
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第2表 北海道遺産と世界遺産の情報発信などの比較
北海道遺産 世界遺産
選定(登録)遺産の対象地域 北海道(地域限定) 世界(地球規模)
価値・評価点の公表 マスメディア等の発表は少ない マスメディア等の発表は多い 情報発信状況(自治体) 少ない(ウェブサイト) 多い(ウェブサイト)
観光情報の活用(自治体) 少ない(ウェブサイト) 多い(ウェブサイト)
資料)関係自治体ウェブサイト(2010年2月)の内容 注)世界遺産は、知床自然遺産の内容
があり,評価できる一方で,個別の選定遺産の内容につ いては統一がとれていない。
2 考察
以上から,市町村では,支庁以上に北海道遺産を観光 活用していく姿勢の低いことがわかった。また,北海道 遺産を取り上げている市町村でも,あくまで自治体内に 位置するものに限り,正確な情報を発信しているとは言 い難い。
他方,北海道遺産に選定されたものについて,多くの 市町村では,観光情報を発信している。すなわち,観光 情報の中で,北海道遺産の内容に触れていない。こうし た傾向は,支庁の内容でも同様であった。
その原因として,北海道遺産そのものがわかりにくい ことが考えられる参2)。選定基準は,ウェブサイトで公 開しているものの,その基準が抽象的である。例えば,
選定基準の「北海道らしさ」は,キャッチフレーズとし ては良いが,厳密の審査する基準としては曖昧 で あ る注17)。選定基準が曖昧であれば,北海道遺産の客観的 な評価をしにくい。
世界遺産でも,同様なことを指摘できるが,こちらは マスメディアを通じて評価点が明らかにされる。例え ば,評価員が,候補地の現地視察した場合,マスメディ アを通じて評価した点が示される。すなわち,具体的な 選定基準はわかりにくくても,評価点を示すことで,基 準も明らかとなる。知床の場合,海と陸の食物連鎖がみ られる自然環境として貴重である,と評価された。それ 故,登録地としての情報を発信する意義が高まる。知床 の場合,関係自治体(斜里町・羅臼町・標津町)は,い ずれも世界遺産登録地の情報を発信している注18)。
むろん,世界遺産は,認知度が高い点も重視しなけれ ばならない。世界遺産は,候補地の対象が地球全体であ り,北海道以外に登録地はいくつもある。一方,北海道 遺産は,地域限定された遺産である。選定遺産の応募 は,道外居住者でも可能であったが,認知度は格段の差 があると考えられる。道外居住者の認知度が低いとすれ ば,北海道遺産の内容を取り上げても,その価値は伝わ
りにくい。その結果,観光情報の中で北海道遺産の内容 を優先する必要はなくなる。
Ⅳ.望ましい観光情報の活用の構築を目指して
−結びにかえて−
1 情報発信の課題
北海道遺産の観光情報としての活用(支庁・市町村)
は,総じて低調であった。他方,北海道遺産の推進(協 力)には,北海道,北海道市町村新興協会,北海道市長 会,北海道町村会が名を連ねている参3)。形式的には,
推進体制が構築されている。しかしながら,北海道の出 先機関である各支庁ですら,内容の統一をしていない。
当然ながら,市町村が,北海道遺産を観光情報として活 用していくことを期待できない。
結局,北海道遺産の目的は,優れていながら,具体的 な活用を地域住民,企業にすべて任せている点が大きな 課題である。北海道遺産の観光活用を積極的に推進しよ うとするならば,共通理解のもと自治体が観光情報とし て活用することが先決となろう。
2 望ましい情報発信の事例
そこで望ましい観光情報の活用として,函館市の事例 を紹介しておきたい。函館市では,「道南・箱館戦争め ぐり」と題する観光情報を発信している注19)。これは,
北海道遺産の「五稜郭と箱館戦争の遺構」を対象とした ものである。北海道遺産の記載はないものの,情報発信 のあり方として優れている。その内容は,道南地域の地 図上に関係する遺構(上陸地や合戦地など)を示し,そ れぞれに説明も掲載している。すなわち,主題(遺構)
を中心とした内容になっている。このような情報発信 は,単なる周遊観光とは違い,ストーリー性を生み,知 的な観光行動(生涯学習活動)につながっていく。観光 客が,単体の観光情報を受信できても,他の関係ある観 光資源すべてに気付くことは難しい。
3 情報発信の提言
北海道庁や支庁の内容では,広域にまたがる遺産の情 報を発信する。具体的には,主題を中心とした関係ある 観光資源の分布を示す。続いて,市町村の内容では,そ れら観光資源の詳細な説明を掲載する。また,相互に関 連サイトを設定し,情報交換できる体制も必要となる。
本来,ウェブサイトは,このような情報の付加価値化 と交換するしくみの構築に優れている。北海道遺産は,
全域又は複数の自治体にまたがるものが少なくない。そ のため,函館市の情報発信のあり方に学ぶところはあ
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る。
近年,自治体合併により,ウェブサイトの構成を変更 するような事がある。また,2010年4月より,支庁制度 改革により,地域主権局(地域総合振興局)に変更し,
一部は境界も変わる。こうした変更の機会において,内 容の再検討を期待したい。
参考文献
参1)伊東孝:日本の近代化遺産,岩波書店(2000)
竹 内 正 浩:戦 争 遺 産 探 訪 日 本 編,文 春 新 書
(2007).
保岡孝之:伝統の町並みの歩き方,青春出版社
(2003)等.
参2)菊地達夫:知的観光資源の有する情報認識の実態
−北海道遺産における観光活用に関するアンケー ト調査結果を用いて−,苫小牧駒澤大学紀要第22 号,pp.125−142.(2010).
参3)北海道遺産構想推進協議会:北海道遺産,北海道 遺産構想推進協議会事務局(2004).
注
注1)多くは,歴史性や希少性を評価される点で共通性 があるが,対象となる事象(人文社会や自然),
地域,生起した年代,保存や保全活動の取組,地 域住民の意識など評価項目に違いがある。
注2)平成13年10月第1回選定分25件,平成16年10月第 2回選定分27件。
注3)NPO 法 人 北 海 道 遺 産 協 議 会 http://www.
hokkaidoisan.org/を参照.
注4)北 海 道 総 合 政 策 部 地 域 づ く り 支 援 局 http://
www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/ckk/isantop を 参 照.
注5)前掲書注3).
注6)網 走 支 庁 http://www.abashiri.pref.hokkaido.
lg.jp/index.htm,空知支庁http://www.sorachi.
pref.hokkaido.lg.jp/index.html,留萌支庁http://
www.rumoi.pref.hokkaido.lg.jp/index.html,
胆 振 支 庁 http://www.iburi.pref.hokkaido.lg.
jp/index.html,宗 谷 支 庁 http://www.souya.
pref.hokkaido.lg.jp/index.html を参照.
注7)網 走 支 庁 http://www.abashiri.pref.hokkaido.
lg.jp/index.htm,空知支庁http://www.sorachi.
pref.hokkaido.lg.jp/index.html を参照.
注8)留萌支庁 http://www.rumoi.pref.hokkaido.lg.
jp/index.html,宗谷支庁http://www.souya.pref.
hokkaido.lg.jp/index.html を参照.
注9)網 走 支 庁 http://www.abashiri.pref.hokkaido.
lg.jp/index.htm,根室支庁http://www.nemuro.
pref.hokkaido.lg.jp/index.html を参照.
注10)胆 振 支 庁 http://www.iburi.pref.hokkaido.lg.
jp/index.html を参照.
注11)留萌市,小平町,苫前町,三笠市,夕張市,美唄 市,赤平市,歌志内市,芦別市,岩見沢 市(栗 沢),上砂川町,浦臼町,奈井江町,函館市,伊 達市,江差町,厚沢部町,北斗市,松前 町,森 町,乙部町,七飯町,別海町,標津町,北見市,
網走市,斜里町,遠軽町,中標津町,標茶町,小 清水町の市役所・役場ウェブサイト。
注12)苫前町http://www.town.tomamae.lg.jp/www/
toppage/0000000000000/APM03000.html,小 平 町 http://www.obira.on.arena.ne.jp/を参照.
注13)北見市 http://www.city.kitami.lg.jp/を参照.
注14)前掲書注12).
注15)前掲書注13).
注16)前掲書注13).
注17)前掲書注3).
注18)斜里町 http://www.town.shari.hokkaido.jp/,
羅 臼 町 http://www.rausu!town.jp/,標 津 町 http://www.shibetsutown.jp/を参照.
注19)道南・箱館戦争めぐり
http://www.city.hakodate.hokkaido.jp/soumu
/hensan/hakodate!map/map!meguri.htmを参照.
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