男鹿市北浦地区における漁業生態と漁業関連地域
原 田 平
キーワー ド:男鹿市北浦 沿岸漁業 ‑ タ‑ タ小型定置網 漁業生態 居住特性
Ⅰ は じめに
漁業地理学研究 には、居住の場 としての陸域 (漁 村)か らの観点 と、生産の場 としての水域 (漁場) からの観点がある。代表的な研究である薮内
( 1 9 5 7 )
、 田和( 1 9 8 7 )
、中村( 2 0 0
1) は、漁場 と漁村 とを関 係づけて研究 している。そこで本研究は、秋田県男鹿市北浦地区を対象地 域 とし、その漁業特性を水域 と陸域の両面か ら明 ら かにする。調査は漁業者や男鹿市漁業協同組合への 聞き取 りを中心 とする。
北浦地区は、男鹿半島の北岸中位に位置 し (第
1
図)、面積 は4 3 . 5 km
2、2 0 0 2
年末の人 口は4 , 1 0 7
人で ある。1 9 5 5
年に男鹿市 と合併するまでは北浦町であっ た。北浦漁港 は、1 9 3 4
年に最初の整備が終了 し、漁 港法により1 9 5 1
年 に第4
種漁港の指定を受 け、本格 的な整備が進んだ。Ⅱ 北浦地区における漁業生態
1
. 主要漁業の操業形態北浦地区はハ タハ タ漁業が特徴的な水産地域であ
第
1
図 秋田県男鹿市北浦 と周辺漁場( 2 0 0 2
年)(聞 き取 り調査、男鹿市漁業協同組合資料 によ り作成)
‑ 35‑
Akita University
る。‑ タ‑ タ漁業 に特化 したのは、北浦漁港が‑ タ
‑ タの産卵場 と して適 した地域であること、同時期 の漁業種類が少 な く、通年で も‑ タ‑ タ漁業が漁獲 量 ・金額 ともに多 くなることが主 な理 由である。
①定置網 ・小型定置網
定置網漁業 は知事許可漁業 の定置網 と共同漁業権 漁業 の小型定置網 に類別 され、‑ タ‑ タ小型定置網 は後者 に属す る。 いずれ も使用漁船 は
5
トン位で、操業人数 は
5
人〜7
人 ほどである。北浦地区のハ タ‑ タ漁 は、小型定置網だけを使用 し、漁期が ほぼ
1 2
月 に限 られ る (第2
図)。 ‑ タハ タ接岸後、満了 までの2‑ 3
週間 とい う短 い期間で、ハ タ‑ タを県内で最 も多 く漁獲す る地区 となる。
②刺網
刺網漁業 も知事許可漁業 と共同漁業権漁業 に類別 され、北浦地区で は前者の刺網が主流である。 これ は共同漁業権漁業 の操業海域が、沿岸か ら
4km
に 限 られ、 この海域 には魚 も少 な く、有用魚種 も少 な いためである。使用漁船 は1
トン位で、操業者数 は 出漁者が1
人、魚 を網か ら外す人 (主 に家族 や雇用 者)が1‑2
人 とな っている。法令 によ り同時期 に2
種類 の刺網 を行 えない。漁業種類 漁獲漁種 漁 期
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
l l
12 定置網 ヤ リイカ Iマス 1
タイ プ リ
サケ l
/J、型定置網 サケ I
ハタ‑ タ
刺網 タラ l I】
カ レイ l I
ヒラメ 】 I
アマ ダイ
キス I ll
一本釣 ミズタコ
}/<JL, 】 II i l
イナ ダ
延縄 タイ
採 月 .採集 カキ II 】I
サザエ l 】
モズク I l
ア ワビ
遊漁業 シラギス l I
マダイ I I
アイ ノメ ト 一
プ リ.アオ I l
その他 ナマ コ l l t
第
2
図 北浦地区の漁業種類 と漁期( 2 0 0 2
年)( 2 0 0 2
年1 0・
ll・1 2
月の聞 き取 り調査 によ り作成)③一本鈎
北浦地区の一本鈎漁業 は自由漁業で、法令 。規則 による制約が少 ない。一本鈎 に使用 され る漁船 は
1
トン位で、操業者数 は
1
人である。一本鈎ではタコ 釣 りが最 も盛んである。④延縄
北浦地区の延縄漁業 も自由漁業 に類別 され、餌料 引 きという方法で操業 され る。使用漁船 は 1トン位 で、操業者数 は 1人である。
⑤採員 ・採藻
採員 ・採藻 は共同漁業権漁業 に類別 され、使用漁 船 は
1
トン位、操業者数 は1
人である。⑥遊漁業
北浦地区の遊漁業 は、遊漁船 を使 った海釣 り案内 業である。遊漁業 との兼業船が約
5 0
隻 ほどあ り、北 浦地区の漁船の約半数 を占める。2.
漁業種類 の主 な組み合わせ北浦地区の漁業者 は、漁業法や県の規則 による禁 漁期問、漁業者の年齢や魚価、漁船の維持費や労働 の手間、北浦近海 の特性 によって漁業種類 を様 々に 組 み合わせ る。
①‑ タ‑ タ小型定置網 +刺網 +採員 ・採藻 北浦地区で‑ タハ タ小型定置網 に組み合わ される 漁種 と しては、刺網、一本鈎、採員 ・採藻、延縄 の
4
種が主である (第3
図)0北浦地区では
、 1
月 はタコ釣 りとタラ刺網を操業 し、 2月か らヒラメ刺網、 4月か らカ レイ刺網を操組み合 わせ 漁業種類 漁 期
1. 2 3 4 5 6 7 8 9 10 ll 12
ハ タハ タ小 型 定置網 +刺折+採兵 .採藻 ′刺網ハタハタJ、型定置網
採点
ハ タハ タ小型 定置網+制約 ハタハタ小型定置網
刺網 J l
ハ タハ タ小 型 定置網十pL‑本
釣+採見.採藻 ハタハタ/一本釣J、琴定置網 採且
ハ タハ タ小 型 定置網+一本 釣+刺網+採負 .採轟+磨
縄 ハタハタノJ、型定置網
一本釣 Z
刺網 採月 延縄
第
3
図 北浦地区における漁業種類 の組み合わせ( 2 0 0 2
年)( 2 0 0 2
年1 0・
ll・1 2
月の聞 き取 り調査 により作成)‑ 3 6‑
Akita University
業す る
。 6
月・7
月〜 8
月・9
月 までは採員 ・採藻 を行 う。 これは、多 くの漁業者が1 0
月・
11月を‑ タ ハ タ小型定置網 の準備期間 とす ることと、悪天候 日 が多 いためである。 その他 に、 9
月〜1 0
月 まで タイ 延縄、 キス漕刺網、 アマダイ漕刺網を組み合わせ る 漁業者 も多 く見 られ、9
月〜
11月 までサケ小型定置綱 を操業す る漁業者 も見 られた。
②‑ タハ タ小型定置網 +刺網
‑ タ‑ タ漁以外の時期 は刺網 を専門に行 うパ ター ンである。 その年毎 に漁獲量 の大小や金額 によ り漁 種 を変化 させ難 い
。 5
月〜1 0
月 にアマダイ漕刺綱 をシロギス漕刺網 に代用で きるだけである。
第
4
図 北浦漁港周辺 の土地利用( 2 0 0 2
年)(2002年3・4・9月の現地調査 によ り作成)
ー3 7‑
Akita University
③‑ タ‑ タ小型定置網 +一本釣 +採員 ・採藻 刺網 の代 わ りに一本鈎 を含んだパ ター ンで、 タコ 釣 りを
1
月〜 5
月 まで操業 していた。 その後6
月〜8
月 まで採員 ・採藻、 さらに7
月〜 9
月 に延縄 を行 う漁業者 もいる。④‑ タ‑ タ小型定置網 十一一本的 +刺網 +採員 ・採 漢 +延縄
最 も複合的なパ ター ンで、 それ故 に許可 さえ取れ ば、魚価や漁獲量 に応 じて漁種 を変え ることが比較 的簡単 にで きる。
Ⅲ 北浦地区における漁業関連地域
第
4
図か ら、北浦地区には漁業者が広 く分布 して いることがわか る。北浦地区の漁業者 は145
名 いる が、半数以上 の漁業者が北浦漁港周辺 の3
地区 に居 住 している。名字が同 じものは互 いに近 くに居住 し ている場合が多 く、漁業種類 も似通 っている。組 み 合わせの同 じ業種 の漁業者 も、お互 いに近 くに居住 す る傾向が見 られ る。北浦地区の漁業関連施設 は全て北浦漁港周辺 に立 地 している。男鹿市漁業協同組合、‑ タ‑ タ番屋、
冷凍冷蔵庫、加工場、漁具倉庫、製氷施設 などが見 られ る。男鹿市漁業協同組合 は地方卸売市場 も併設 しているため、男鹿半島の北岸において漁業管理 と 水揚 げの中心的役割 を持 っている。
生活関連施設である、多 くの店舗や施設が北浦北 浦地区を縦断す る道路 に隣接 して立地す る。商店 は ほとんどが個人営業であ り、多 くの業種が見 られる。
小路 には事務所 や作業場、倉庫が多 い。
Ⅳ
おわ リに北浦地区は小型定置網だけで‑ タハ タ漁が操業 さ れ る特徴のある地域である。‑ タ‑ タ小型定置網 を 中心 としなが らも、複数 の漁種 を組み合わせて、漁 業者 は通年操業を図 る。
北浦地区では‑ タ‑ タ小型定置網 に組み合わせ る 漁業種類 として、刺網 と採員 ・採藻が多 くみ られる。
このよ うな組み合わせ は、魚価や漁獲量 も良好で、
漁業者 自身の長年 の経験 と生活 に基づいている。 し か し、漁業者 の高齢化や全体的な漁獲量 ・魚価 の低 下が、組 み合わせに影響 を与 える場合 もある。
北浦地区の漁業者 は、漁港周辺や高台 に多 くが居 住す る。 また、親類や漁業種類が同 じ漁業者 はお互 いに近 くに居住す る傾向が見 られた。
本論文の作成 にあた り、現地調査 に関 しては、北 浦地区の漁業者、男鹿市漁業協同組合 の方 々か ら多 大 な御援助、御協力をいただいた。 また、秋 田大学 教育文化学部の篠原秀一先生か ら終始貴重な御意見、
ご指導をいただいた。以上、末筆 なが ら、記 して厚 くお礼 申 し上 げます。
文 献
田和正孝
( 1 9 9 7 ):
『漁場利用の生態』九州大学出版 会,4 0 2 p
.中村周作
( 2 0 0
1):漁業集落 の土地利用変化 と漁港 の発展 ‑宮崎県南郷 町 目井津地区の事例‑.歴史地理学,4