緒 言
青森県は年間約
48
万トンのリンゴを生産しているが,そのうち約
10
万トンのリンゴがジュース用として利用 されている。リンゴジュースの製造過程で生成する搾り 粕は約3
万トンであるが,その一部は肥料や家畜飼料に 利用されているが大部分は廃棄処分されている。現在,食,医薬,エネルギー等の資源としてリンゴ搾り粕を利 用する研究開発が進められている。リンゴ搾り粕は水分 含量が多いので廃棄物処理法としてはメタンと炭酸ガス に分解し,再生可能なエネルギー資源として利用するメ タン発酵法が適している。青森県のジュース工場ではリ ンゴ搾り粕のメタン発酵はまだ実施されていないが,メ タン発酵は嫌気性微生物によって有機物を分解する技術 で,生成するメタンを燃料にして温水や発電に利用する ことが出来る。微生物による嫌気性処理は好気性処理と 比べて消費エネルギーが少なく,余剰汚泥の生成量が少 ないことから省エネルギー,少コスト型の処理法であ る。近年はスラッジブランケット型バイオリアクター
(Upf
l ow- Anaer obi c Sl udge Bl anket ,
上向流式嫌気汚 泥床)(1)が普及し,ビール工場や製糖工場などの製造 廃水処理に利用されている。このリアクターは自己集塊 作用を持つ嫌気性微生物を沈降性に優れた粒状汚泥とし てリアクター内に形成させ,上向流と発生ガスによる流 動状態の中で基質と汚泥を接触させてメタン発酵を効率 的に行わせることができるリアクターである。粒状汚泥 は増殖速度の遅いメタン生成菌を高い菌体濃度に維持す ると共に嫌気性菌相互の共生関係を効率的に行うことに より搾り粕の成分であるペクチンやヘミセルロースを最 も簡単な有機物,メタンにまで分解することができる。本研究は,リンゴ搾り粕のメタン発酵を効率的に行う粒 状汚泥の製造と粒状汚泥からペクチン・キシラン分解菌 を分離し,菌学的特徴を明らかにするとともにメタン生 成菌との共生について検討した。
実験材料と方法
1.リンゴ搾り粕試料
日本果実加工(株)(弘前市)のリンゴ搾り粕を使用し た。乾燥重量は試料
1
g
を秤量瓶に入れ,105 ℃ で恒量 になるまで乾燥させ,計量した。2.メタン発酵汚泥の製造
メタン発酵リアクターは円筒状容量
3
L
(直径80
mm
×高さ
600
mm
)のスラッジブランケット型バイオリア クター(Upfl ow- Anaer obi c Sl udge Bl anket
,上向流式 嫌気汚泥床)を使用した(図1
)。水田土壌をリンゴ搾り 粕で馴養し,メタン発酵汚泥を製造した。30 ℃ で約3
月間馴養し,経時的にメタンと二酸化炭素を測定した。3.ペクチン・キシラン分解菌の培養と培地組成 嫌気性細菌の培地,培養方法は土壌微生物実験法(2) に従って行った。リンゴ搾り粕で馴養したメタン発酵汚 泥
5
ml
をペクチン培地100
ml
の入った125
ml
容バイ アル瓶に接種し,30 ℃ で集積培養した。気相は窒素ガ スで置換し,容器口はブチルゴム栓,アルミキャップで 密栓し,静置培養した。集積培養を3
回行った後,ロー ルチューブ法によりペクチン分解菌を分離した。試験管 はブチルゴム中栓,スクリューキャップ付き加圧培養試 験管を使用した。ペ ク チ ン 培 地 組 成 は
NaHCO
3, 2
g
;NH4Cl , 0. 28
g;
KH
2PO
4, 0. 24
g
;(NH4)2CO
3, 0. 17
g; MgSO
4・7H2O, 0. 1
g
;CaCO3, 1. 0
g
;ペクチン,5g
;酵母エキス,0.1
g;
シ ステイン塩酸塩,0.5
g
;をイオン交換水1L
に溶かした。pH 7. 0
に調整し,オートクレーブ滅菌した。寒天は必要 に応じて3
% 加えた。糖類の試験にはペクチンの代わり に糖類を加えた。水素利用メタン生成菌は水田土壌から分離した
TM- 8
菌株(3)を使用した。TM-8
菌株の培地と培養はZou
ら(3)の方法に従って行った。AP81菌株と
TM- 8
菌株の 混合培養はペクチン培地を用いて行った。リンゴ搾り粕のメタン発酵
メタン発酵汚泥から分離したペクチン・キシラン分解菌の特徴
武田 潔・須田 育江・殿内 暁夫
応用生命工学科応用微生物学研究室
(2006年
10
月12
日受付)弘大農生報 No. 9 : 21 - 27, 2006
4.ペクチンの測定
ペクチンの測定はカルバゾール硫酸法(4)により行っ た。培養液
1
ml
にメタリン酸溶液(25 %メタリン酸-5N H
2SO
4)0.2
ml
を加え,4 ℃,10,000
r pm
,10分間遠 心分離し,上清を採取した。上清0. 5
ml
を試験管に取 り,硫酸/ホウ酸ナトリウム2. 5
ml
を加え,10分間煮 沸した。水冷後,カルバゾール液を加え,15分間煮沸し た。水冷後,波長530
nm
の吸光度を測定した。硫酸/ホウ酸ナトリウムは,Na2
B
4O
7・10H2O 0. 95g
を濃硫酸100
ml
に溶かした溶液,カルバゾール液は,C12H
9N 125
g
を無水エタノール100
ml
に溶かした溶液を用いた。5.発酵生産物の測定
発酵生産物の測定は前法(5)と同じ方法で行った。メ タン,水素,炭酸ガスの測定はリアクター,試験管の気 相をガスタイトシリンジで
3
ml
採取し,熱伝導検出器(TCD)のガスクロマトグラフ(カラム,WG-
100
)で測 定した。キャリアガスはアルゴン,カラムオーブン温度60
℃ で分析した。培養液の発酵生産物,エタノールは 水素炎イオン検出器(FID
)のガスクロマトグラフ(カ ラム,クロマトパック54
)で測定した。キャリアガスは 窒素,カラムオーブン温度180
℃ で分析した。蟻酸,酢 酸と乳酸は高速液体クロマトグラフで測定した。6.微生物の同定
分離菌株のグラム染色,嫌気度,カタラーゼ活性,イ ンドール生成,硝酸塩還元能,硫酸塩還元能,ミルク凝 固・消化試験,ゼラチン消化試験は土壌微生物実験法
(2)に従って行った。
7.GC含量の測定
DNAの
GC含量の測定はヤマサ(ヤマサ醤油,東京)
の
DNA- GC- ki t
を用い,高速液体クロマトグラフで行っ た(5)。8.電子顕微鏡写真
透過型電子顕微鏡写真と走査型電子顕微鏡写真は
Mi zukami
ら(5)と同じ方法で撮影した。9.16S rDNAの塩基配列の分析
16S r
DNAは 細 菌 16S r DNA増 幅 用 プ ラ イ マ ー S- D- Bac - 0011- a- s - 17
(for war d
)とS- D- Bac - 1492- b- A- 19
(r
ever s e
)を使用し,PCR法によって増幅後,サイクル シ ー ケ ン ス を 行 っ た。塩 基 配 列 はGenBank, EMBL, DDBJ
に登録した(アクセッション番号:AB273730)。結 果 と 考 察
1.メタン発酵汚泥の製造
メタン発酵はスラッジブランケット型バイオリアク ターを用いて行った。水田土壌を種汚泥としてリンゴ搾 り粕で馴養し,メタン発酵汚泥を製造した。リアクター にリンゴ搾り粕を
3
日毎に1
g
を加え,生成されるメタ ンと炭酸ガスを経時的に測定した。リンゴ搾り粕の主成 分は表1
に示すように多糖類ではペクチン,へミセル ロースとセルロースであり,糖類ではフルクトース,グ ルコース,ショ糖であった。馴養約
3
ヶ月後に直径0. 5
~5. 0
mm
のメタン発酵粒 状汚泥が形成された。粒状汚泥は弾力性があり,容易に 壊れなかった。図2
-a, b
に示すように表面は密に絡み 合った糸状性菌で覆われ,糸状性菌の周りには桿菌や球 菌が多数存在した。メタン発酵は嫌気環境下で起こる微 生物作用であるが,多様な機能を持つ微生物によって有 機化合物が分解される過程で還元物質が生成される。こ の還元物質は水素を利用してメタンを生成するメタン生 成菌によって酸化される。このような複数の微生物に よって有機物が分解されるので多様な微生物が隣接する 汚泥の粒状化は沈降性が良いだけなく,微生物相互の栄 養共生関係が保持される場を形成している(6)。フロッ ク表面に観察される糸状性菌はMe t hanos ae t a
の細胞と 類似していた。Me
t hanos ae t a
は酢酸のみを基質とするメタン生成菌で あり,Met hanos ae t a
が増殖することによって沈降性に優図 1 上向流式嫌気性汚泥床リアクター(UASB ) 表 1 リンゴ搾り粕の成分(% )
60- 75 3. 5 1. 5 1. 0 2. 0 5- 20 水分
ペクチン リグニン ヘミセルロース セルロース
その他(糖類,有機酸等)
青森県産業技術開発センター「キープロジェ
クト研究報告」(14 )
れた顆粒状汚泥が形成される。メタン生成量は経時的に 増加し,定常期には図
3
に示すようにリンゴ搾り粕1
g
(乾燥重量)当たり
350
ml
のメタンが生成された。この 生産量から乾燥重量1
t
のリンゴ搾り粕から350
m
3のメ タンが生産されることが期待される。以上の結果はリン ゴ搾り粕のメタン発酵は,スラッジブランケット型バイ オリアクターを用いることにより沈降性の良い粒状汚泥 が容易に形成され,メタン収率が良いことを示唆してい る。2.メタン発酵汚泥から分離したペクチン・キシラン分 解菌の特徴
メタン発酵粒状汚泥をペクチン培地で集積培養し,
ロールチューブ法によりペクチン・キシラン分解活性を 有する
AP81
菌株を分離した。本菌株は図4
に示すよう に周鞭毛による運動性があり,グラム陰性,胞子形成の 絶対嫌気性菌であり,またカタラーゼ活性,インドール 生成,硝酸還元能とゼラチン消化は陰性であった。これ らの結果を表2
に示す。本菌株の細胞形態と生理・生化 学的特徴を持つ類似の嫌気性菌はCl . ae r ot ol e r ans
(7)とCl . x y l anol y t i c um
(8)であった。本菌株はペクチン,キシランの多糖やグルコース,キ シロースなどの単糖など表
3
に示すように広い範囲の糖 類を資化する菌種であった。本菌の広範囲の糖類を資化 する特徴は,Cl. ae r ot ol e r ans
とCl . x y l anol y t i c umに類似
した。Cl. ae r ot ol e r ans
は多糖類のペクチンとキシランを 資化する点で同じであり,単糖類と2
糖類の資化性でも 類似した。しかし本菌株はマンニトールを資化し,ラク ト ー ス と ト レ ハ ロ ー ス は 資 化 し な か っ た 点 がCl . ae r ot ol e r ans
と異なった。本菌株はCl . x y l anol y t i c umが 5
単糖であるリボースとアラビノースを資化しない点で異 なった。またCl . x y l anol y t i c umはペクチンやデンプンな
どの多糖類の資化性について記載がないので比較できな かった。本菌株の発酵生産物は蟻酸,酢酸,乳酸,エタ ノ ー ル,H2とCO
2で あ っ た。発 酵 生 産 物 はCl . ae r ot ol e r ans
は 本 菌 株 と 同 じ で あ っ た が,Cl. x y l anol y t i c umは蟻酸,酢酸と乳酸であるので異なった。
本 菌 株 の
DNA
のGC含 量 は 42
mol
% で あ っ た。Cl. ae r ot ol e r ans
とCl . x y l anol y t i c um
は40
mol
%であり,本菌 株のGC含量と近い GC含量値であった。
図 3 リンゴ搾り粕のメタン発酵 0
100 200 300 400 500
0 10 20 30 40
CH4, CO2(ml)
0 100 200 300 400 500
0 10 20 30 40
培養時間(日)
CH4 CO2
図 2 リンゴ搾り粕で馴養したメタン発酵汚泥
a:Me t hanos ae t a 様糸状性細菌でおおわれたフロックの表面
b:粒状汚泥内部の糸状性細菌,桿菌,球菌。これらの汚泥は走査型電子顕微鏡で撮影した。
図 4 AP81 菌株の細胞の電子顕微鏡写真 ネガティブ染色し,透過型電子顕微鏡で撮影した。
バーは 1 μ m を示す。
AP81菌 株 の
16S r DNA
の 塩 基 配 列 はCl . ae r ot ol e r ans , Cl . x y l anol y t i c umと Cl . s ac c har ol y t i c um
(9) の16S r DNAに最も高い 97. 9
%の相同性を示した。前2
者はキシランを分解する。Cl. s ac c har ol y t i c umは広い
範囲の糖類を利用するが,ペクチン,キシランの資化性 の記載がない。またこの菌種のGC含量は 28
mol
%と かなり異なっている。AP81菌株の細胞形態,生理生化学 的 特 徴,系 統 学 的 特 徴 か ら,AP81菌 株 は
Cl . ae r ot ol e r ans
に最も近縁の菌種であると考えられる。3.AP81菌株の生育の特徴
本菌株はペクチン,キシラン,グルコースやキシロー スなど広範囲の基質を資化し,主要な発酵生産物として エタノール,酢酸,水素と炭酸ガスを生成し,微量の蟻
表 2 AP81 菌株の細胞形態・生理生化学的特長
Cl . s ac c har ol y t i c um Cl . x y l anol y t i c um
Cl . ae r ot ol e r ans AP81
0. 6 × 3. 0
+
-
- 白色
-
+
-
- 凝固
-
酢酸,乳酸,エタノール,
H
2,CO
2,ピルビン酸 28mol %
0. 5 - 0. 8 × 1. 8 - 3. 0
+
-
+
-
-
-
- ND
-
エタ蟻酸,酢酸,乳酸
40mol % 0. 4 - 0. 6 × 1. 5 - 3. 0
+
-
+
a淡褐色
-
-
-
- ND
-
エタ蟻酸,乳酸,酢酸,
ノール,H
2,CO
240 - 41mol % 0. 8 - 1. 2 × 2. 0 - 8. 0
+ 陰性
+
a白色
-
-
-
-
+
+
蟻酸,乳酸,酢酸,
ノール,H
2,CO
242mol % 細胞形態(µm )
胞子形成 グラム染色 運動性 コロニーの色 カタラーゼ活性 インドール生成 ゼラチン消化 硝酸塩還元 ミルク消化 硫化水素生成 発酵生産物
GC含量
a周鞭毛
表 3 AP81 菌株の基質利用性
Cl . s ac c har ol y t i c um Cl . x y l anol y t i c um
Cl . ae r ot ol e r ans AP81 菌株
基質
+
+
+
+
-
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
- ND
-
- ND ND ND
+
+ ND
+
-
+
-
-
-
+
+
+
-
+
- ND
+ ND ND ND ND ND ND ND
+
+
+
+
+
+
+
±
-
-
+
+
+
+
+
±
+
+
+
- W
+
- ND
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
-
+
+
+
-
+
-
+
+
+
-
-
-
-
-
+
+ グルコース
フルクトース ガラクトース マンノース アラビノース キシロース リボース マンニトール イノシトール マルトース スクロース セロビオース ラクトース ラムノース トレハロース メリビオース ラフィノース エスクリン イヌリン デキストリン デンプン ろ紙 CMC ペクチン キシラン
ND : Not Det er mi ned, W : Weak
酸と乳酸を生成した。AP81菌株を
0. 5
%ペクチン培地 で培養した時の増殖と発酵生産物を図5
-a, b
の単独培 養に示す。培養開始後,約7
日間でペクチンをほぼ分解 し,エタノール,酢酸,水素と炭酸ガスが主要な発酵生 産物であった。エタノールに対する酢酸の比は1. 8
~2. 1
の比率であった。気相中の水素と炭酸ガスは対数増 殖期にそれぞれ5
%と20
%であった。AP81菌株の増 殖は水素によって阻害されなかった。ペクチンを5
g/L
と8
g/L
培地で培養した時のペクチンの消費と水素生成 を図6
に示す。ペクチン8
g/L
で培養した時,生成した 水素は気相の8
%であったが,ペクチン5
g/L
と比べて 増殖は抑制されず,ペクチンを分解した。プロピオン酸 分解菌(10)や,酪酸分解菌(3,11
)は極めて低い水素 濃度で阻害されるが,AP81菌株は生成するかなり高い 水素濃度によっても阻害されないことを示唆している。AP81菌株はペクチン分解にともない生成する水素濃 度の高い気相下で増殖が抑制されなかったが,水素消費 菌の共存によって発酵生産物がどのように変わるか検討 した。本実験は,TM-
8
菌株の細胞数をAP81
菌株の細 胞数に対して100
倍の細胞濃度にして接種し,培養を 行った。2者混合培養のペクチン分解と発酵生産物の経 時的変化を図5
-a, b
の混合培養に示す。AP81菌株の 単独培養とTM- 8
菌株との2
者混合培養はいずれもペク チン分解にともない気相中に水素が検出されたが,AP81
菌株単独培養では最大6. 5
%であったのに対して2
者混合培養では3
日に最大1. 9
%であり,培養10
日以降 には水素は検出されなかった。TM-8
菌株は単独ではペ クチン培地に増殖しなかったのでAP81
菌株との2
者混 合培養により本菌株は水素を消費し,メタンに転換したことを示唆している。2者混合培養による主要な発酵生 産物である酢酸とエタノールは単独培養と比べ,エタ ノールは減少し,酢酸が増加した。エタノールに対する 酢酸の比は
3. 5
~4
であった。この比率はAP81
菌株単 独培養の2
倍であった。AP81菌株とTM- 8
菌株の混合 培養はルーメンから分離されたRumi noc oc c us al b us
と水 素利用メタン生成菌,Met hanobr e v i bac t e r r umi nant i umの
混合培養と似ている。Ruminoc oc c us al b us
は単独培養で は水素生成が低い水素分圧で阻害され,エタノールを生 成する菌種であるが,Met hanobr e v i bac t e r r umi nant i umと 図 5 - a AP81 菌株の単独培養と TM- 8 菌株との混合培養に
よるペクチン分解と醱酵生産物 0
1 2 3 4 5
0 2 4 6 8 10 12 14
ペクチン(g/L)
0 2 4 6 8 10 12 14
酢酸,エタノール(mM)
培養時間(日)
ペクチン(AP81) ペクチン(AP81+TM-8)
酢酸 (AP81) 酢酸(AP81+TM-8)
エタノール(AP81) エタノール(AP81+TM-8)
図 5- b AP81 菌株の単独培養と TM- 8 菌株との混合培養に よるペクチン分解と醱酵生産物
0 5 10 15 20 25 30
0 2 4 6 8 10 12 14
培養時間(日)
H2,CO2,CH4(%)
CO(AP81)2 CO(AP81+TM-8)2
H(AP81)2 H(AP81+TM-8)2
CH(AP81+TM-8)4
図 6 ペクチン分解と水素生成 0
1 2 3 4 5 6 7 8
0 2 4 6 8 10 12 14
培養時間(日)
ペクチン(g/L)
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
H2(%)
ペクチン(5g/L)
H(5g/L)2
ペクチン(8g/L)
H(8g/L)2
の 共 生 培 養 で は 生 成 す る 水 素 は
Me t hanobr e v i bac t e r r umi nant i umによって消費されるので水素は低い濃度に
維持される。そのためRumi noc oc c us al b us
は共生培養で はエタノールを生成せず,酢酸を生成することをWol i n
とMi l l er
は報告(12,13
)した。AP81菌株は気相に8
% という高い水素濃度でもペクチン分解が阻害されない菌 種であったが,水素利用メタン生成菌と共生することに よって水素は水素利用メタン生成菌によって消費される ので,エタノール生成を抑制してエネルギー生成に有利 な酢酸生成の代謝系を優先させることを示唆している。謝 辞
本研究の研究開発に協力頂いた青森県工業総合研究セ ンター弘前地域技術研究所生命科学部の方々に感謝致し ます。リンゴ搾り粕を提供していただいた日本果実加工
(株)に感謝致します。メタン発酵汚泥と微生物細胞の電 子顕微鏡試料の調製,撮影に関して指導していただいた 生物生産科学科の藤田隆助手に感謝致します。本研究の 一部は青森テクノポリス開発機構(「環境循環型社会に対 応した未利用資源の高度利用技術の開発」)から支援して 頂きました。
摘 要
メタン発酵は上向流式嫌気汚泥床(UASB)リアクター を用いて行った。汚泥は水田土壌をリンゴ搾り粕で馴養 して製造した。3ヵ月後,球菌,桿菌や糸状性菌からな る粒状汚泥が形成された。粒状汚泥からペクチン,キシ ラン分解菌,AP81菌株を分離した。本菌株は周鞭毛に よる運動性があり,グラム陰性,胞子形成の絶対嫌気性 細菌であった。本菌株は広範囲の糖類を資化し,発酵生 産物として蟻酸,酢酸,乳酸,エタノール,H2と
CO
2を 生成した。DNAのGC含量は 42
mol
%であった。本菌 株の16S r DNAの塩基配列は Cl . ae r ot ol e r ans
に最も近 縁で97. 9
%の相同性を示した。本菌株は,細胞形態,生 理・生 化 学 的 特 徴 と16S r DNA
の 解 析 結 果 か らCl . ae r ot ol e r ans
に最も近縁の菌種でると推察される。本菌 株はペクチン,キシランに加えてグルコースやアラビ ノースなど広範囲の糖類を資化し,主要な発酵生産物と してエタノール,酢酸に加えて著量の水素を生成した。本菌株はペクチン,キシランの分解にともなって生成す る水素によって生育は阻害されなかったが,水素利用メ タン生成菌との混合培養によってエタノールは減少し,
酢酸を多く生成した。AP81菌株は水素利用メタン生成 菌との共生がエネルギー生成に有利に作用することを示 唆している。
引 用 文 献
1 ) 上木勝司,永井史郎編著:嫌気微生物学,265 - 284 頁,
養賢堂,東京,1993 .
2 ) 土壌微生物研究会:新編土壌微生物実験法,23 - 35 頁,
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告,リンゴ搾汁残渣の成分 p3 ~ 8. 1992
S
UMMARYMet hane f er ment at i on was c ar r i ed out wi t h an upf l ow- anaer obi c s l udge bl anket r eac t or . The s l udge was made by ac c l i mat i zi ng paddy s oi l added as a s eed c ul t ur e wi t h an appl e pomac e. Gr anul at ed s l udge c ompos ed of c oc c oi d, r ods and f i l ament ous bac t er i a was f or med af t er 3 mont hs i nc ubat i on. Pec t i n ・xyl an degr adi ng- anaer obi c bac t er i a, s t r ai n AP81 was i s ol at ed f r om t he met hane f er ment at i on s l udge, whi c h was ac c l i mat i zed wi t h appl e pomac e. The s t r ai n was mot i l e wi t h l at er al f l agel l a, Gr am- negat i ve, s por e- f or mi ng s t r i c t anaer obes . The s t r ai n us ed a wi de r ange of s ugar s c ont ai ni ng gl uc os e and xyl os e i n addi t i on t o pec t i n and xyl an and pr oduc ed f or mat e, ac et at e, l ac t at e, et hanol , c ar bon di oxi de and hydr ogen as f er ment at i on pr oduc t s . The GC c ont ent of DNA was 42 mol %. The 16S r DNA s i mi l ar i t y of s t r ai n AP81 t o Cl . ae r ot ol e r ans was 97. 9 %. The s t r ai n i s c ons i der ed t o be c l os el y r el at ed t o Cl . ae r ot ol e r ans on t he bas i s of i t s c el l mor phol ogy and t he phenot ypi c and phyl ogenet i c c har ac t er i s t i c s . St r ai n AP81 us ed a wi de r ange of s ugar s c ont ai ni ng gl uc os e or ar abi nos e i n addi t i on t o pec t i n and xyl an, and pr oduc ed a l ar ge amount of hydr ogen i n addi t i on t o et hanol and ac et at e as t he mai n f er ment at i on pr oduc t s . The gr owt h of t he s t r ai n was not s uppr es s ed by hydr ogen pr oduc ed by degr adi ng of pec t i n and xyl an. The pr oduc t i on of et hanol , however , dec r eas ed, whi l e t hat of ac et at e i nc r eas ed by t he dual c ul t ur e wi t h a hydr ogen- ut i l i zi ng met hanogen. I t i s s ugges t ed t hat t he ener gy met abol i s m has an advant ageous ef f ec t on t he s t r ai n AP81 by t he as s oc i at i on wi t h hydr ogen- ut i l i zi ng met hanogens .
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