ミリ波ホログラフィにおける解像度について
(昭和48年10月20日 原稿受理)
電子工学教室(大学院)山木戸一夫
電子工学教室鹿 毛 慶 雄
松下電器産業KK山下
彰日本電気KK渡辺隆弥
On The Resolution of MM−Wave Holography
by Kazuo YAMAKIDO Yoshio KAGE
Akira YAMASHITA Takaya WATANABE
W。h。ve experim。nt・11y・x・min・d th・p・imary fact・rs th・t h・v・agreat in且u・nce
up。n the res。1uti・n・f th・・ptical rec・n・t・u・t・d im・g・f・・m th・h・1・g・am f・rmed w t
g隠=隠1°三:9㌶i麗e Th。se are;(・)scanning・ang・whirh. i・scanned with an antenna to pick up the丘eld pattern,(2)characterlstics of recelvlng
ant。nn。,(3)・ign・1 tran・f・rmati・n f・・m・1ect・ica1・n・t・・ptica1・n・・and(4)・ha「ac
teristics of丘1m. . .It is experim・nt・11y p・・v・d th・t th・f・rmer(1)and(2)are m・・nly lmp°「tant
factors.
1. ま え が き 2. 受波器走査型ミリ波ホログラフィの方法 波動の干渉性を利用するホログラフィ技術は, 図1は受波器走査型のミリ波ホログラムを作製
レ_ザのコヒ_レント光以外の波動を用いても原 する方法を示す。振幅変調(1KHzの矩形変調)
理的にはまったく同様な理論が適用できるもの されたクライストロン出力波を調整用減衰器を通
で,電磁波や音波でも多くの実験や理論的検討が して電磁ホーンで空間に放射すると,物体後方に なされている。しかし,電磁波や音波を用いる場 は,その物体の回折波(物体波)と直接波との電 合には,光波ホログラフィにおける写真フィルム 界強度干渉パターンができる。これを機械的に二 のように,直接に干渉パターンを記録できる媒体 次元走査されるアソテナで受信し,クリスタルダ がまだ十分に開発されていないため,ホログラム イオードで検波する。低周波増幅器で適当に増幅を作製するには,それらの強度分布を光の強度分 し,オシロスコープのCRTのz軸に輝度変調入力
布に変換する必要がある。本論文ではミリ波を使 として加えれば,受信された電界強度に応じて明 用し,受波器を走査してホログラムを作製し,レ るさの変化するスポットを螢光面上に得ることが 一ザ光でもとの物体の光学的な像を再生する方法 でき,このスポットを受信アンテナの空間位置と をとった場合,ホログラム作製途中の信号変換の 場所的に同期させて走査すれば,開放したカメラ 各過程が再生像の解像度にどのような影響を与え で,フィルムに黒化度分布としてホログラムを記 ているかを,実験的に検討したので報告する。 録することができる。ホログラムからの像再生に は,レンズで広げたレーザ光を用いるが,これがX
万締 /1雀波器
物体発振器 ホ0グラム
C盟
A図P
z…「元「/ ぴ a↑Y 継走査 受信璽鑛遜
光学像 再生 縮小 撮影
図3 ミリ波ホログラフィの再生までの過程
カメラ夜
@ 墾籔簾鷲曇鷲了㌘罵
図1 ホログラム作製装置 および写真処理過程,物体や検波器の支持装置お
D.
真の像\㍉べ、
・ 為 よび周囲物体の影響,波源からの波の波面が完全
02
に平行でないこと,などである。このうち,波面の曲りは物体の位置を波源から充分遠方におく
か,放射器に電波レソズをつけることによってほ 共役1 ぼ平面波とすることができる。検波器のクリスタ ルダイオードは,測定の結果ほぼ完全に二乗特性 ホロゲラム である。増幅器は受信検波信号レベルで充分な 図2 ホログラムからの像再生 SN比が必要であるが,周波数帯域幅は狭くても
よい。CRTの輝度変調のために2軸に加える増
平行光である場合・再生像の結像条件は次式で与 幅された電界強度信号電圧は,ブラウン管面のスえられる。 ポットの明るさと比例する範囲内でなければなら
ぴ一曇㎜培 ……(・) ‡:;覆ξ撚!難㌶㌶莫難ど
ここでμ一λ、/λ、はミリ波とレーザ光の波長の 強いので,特にミリ波領域では注意が必要であ 比,nは空間走査面と実際のホログラム面との縮 る。諸要因のうちで,特に影響が大きいと思われ 小比である。この縮小は,μが大きいために再生 るのは,(1)ホログラムの記録範囲の制限,(2)
像の位置までの距離D2が非常に大きくなるのを 受信アンテナの特性,(3)電気信号から光信号へ 防ぐためとンーザ光のスポットが小さいために必 の変換特性,(4)フィルムの特性である。これら
要である。 の点について実験的に調べた結果を以下に述べ
る。3再生像の解像に影響を与える醒因 (、)加グ私の酬鞭の制限の鰭
図3は像再生過程を示したものである。この過 図1および図2において,物体面,ホログラム
程の各段階で生じる再生像への影響の要因とし 走査面,再生像面に,それぞれκ、,X、,X3をとる。て,次のようなことがあげられる。 物体として点物体δ(x、一のを考えると,再生面
すなわち,走査することによる情報の脱落走 上の波の複素振幅E(X3)は,近軸近似のもとで
査面積の大きさ,受信アンテナの形状や指向性, 次式のようになる。E(x・)−C・xp[一ノ2D、1芸1告、){x沽罐4)2}]
×∫・xpレ伝慧5D(噺D課14)}刈彪 一(2)
ここでCは定数,ηは縮小比, 、−2π/λ、であ て積分を行なうと,(2)は
る。いま,ホログラム走査範囲を一6〜+bとし
鋼⇒嚇1告)←…一櫟川×鱗藷ξ藁り
・・・…
@(3)
となる。すなわち,x、−4にある点物体は, x、一 二点が分離して見える最小距離εは
(1)・+1)1)4/η1)・を中心として広がった像を再生 1(0)−0.741(α) ……(7)
する。中心からE(X3)が最初に0となる点まで
の距離を,。として,こ纏離像の広力・りを示 の関係から
す目安とすれば・(3)から ・一・・45D当鞠一・・45翌1……(8)
翻一誓D課 一(4) となる.(5)または(8)から,点の像の広力・り
を小さくして解像度を良くするには次のことが必
もともと再生像が(1)。+1)、)/ηD。倍に拡大される
要である。
ことを考慮すれば・類的紘がりは・ (、)物体とホ。グラム走査面との距離D、を小
句苦 一(5)さぽもグラム走査幅2bを大きくして言己録範
となる・次に接近した2点δ( εx一百)・δ(x・囲を大きくする・
+丁)が物体である場合裁ると・この再生像;i遮蕊:鷲〉嬢王面が物体から
の強度分布1(X3)は 遠いほど,より広く走査しないと同じ解像度が得
卿一
・…(6) の銅板を間隔1λ・および2λ・で並べて用いた。
となる・ここでα一鵠号である・ここで二;選;㌫㌶㌶繋るアンテ
Rayleighの解像限界の定義によると・再生像の ナはある有限の大きさの開口をもっているが,こ _ のことによって,空間の点の情報を検出できず,
したがって空間周波数の高域がカットされて細か いパターンを再生できないことになる。大きな開 口をもつアンテナは鋭い指向性を有するが,指向 性が鋭いアンテナでは,利得は大きいけれどもホ ログラム走査面の周辺部では物体波を受信できな a。20侃 くなり,有効ホログラム面積が小さくなって解像 α・to徹 度は低下する。ゆえに,走査受信アンテナとして 昨05m は,幾何学的な開口が小さく,指向性がブロード
0 02 04 06 08 tO〔cm〕 なものが良いことになる。このことから,波源の
走査幅2b 出力増大と, SN比が良好で高利得な増幅器が必
図4 走査幅と解像度の関係 要である。図6に2種のアンテナを示す。図7
D1_0.5m D1=1.Om Dl=2.Om
2b=0.8rn ノ 、
ざ,ヒ
[疑ξ:塁
㌦・ ^ ≒
㌔ ・蘇』、 ㌦ ・七泌〉
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図5 実 験 結 果
L」 L=1λ1
(ω誘電体ロッドアンテナ(テフロン)
L=1〜5λ¶
、ご二ニー−」一一一一一一… 一乙一2λ1
(b)ホーンアンテナ
図6受波器
L=3λ1
は,図6(a)の誘電体ロッドアンテナを用いて,
指向性と有効ホログラム面積との関係を実験で求 めたものである。指向性のブロードなものほど有 効ホログラム面積が大きいことが認められるであ
ろう。図7の配置で,遠方の波源からの波は走査 L4λ、
面に平行であるとしたとき,走査面での空間周波 数∫は次式で表わされる.
∫一i(mつ ……(9)
ロツドアンテナ L=5λ1
曹
c −06
〜 卯 一一一一一一一一一 〇.0
L4。凧 !
(の受信パターン
(a)実験配置図 _
図7 指向性と有効ホログフム面竃
:
薔4
輻。λ1
る。これからも,開口の大きいホーンアンテナよ
θ=ταγピ(Z十α6)
り,開口が小さく指向性がブロードな誘電体ロッ ドアンテナの方が,よい解像のホログラムを作製
.(MO.αめ00α〜0α10 Q60 できると予想される。つぎに,指向性半値幅を角 走査面」二の位置ズ〔吋 度で表わしたものと,その解像限界との関係を定
(b)走査面上の空間周波数 量的に求めてみた。アンテナ系のインパルス応答 ここで,θ一tar1(x+0.6),λ1−8.7mmであ る。
図8は,図2の配置で,走査面に生じる電界強
ヂ.血旦 度分布の,計算値と測定値を比較したものであ
一…理論値
・…・木一ンア〉テナ 10
拠ざ D1=05・m 一 ロΨドアンデナ
漂9 廻
噺・Ω
†7 0
枢蛍光休B−11
9
md図9 CRTの輝度変調特性
D1=tO徹
情 、㌔ ㌦一254志・ ……(・2)
li .パ 蛭 で示される.このときの才旨雌半値幅句ま(・・)
雌 i をフーリェ変換することによって求まり
9
8
w σ=0・83示i輌 (13)
0 石
の関係式を与えるから,(12)は
D1=20m 錫一α341)。酔」恥▲二とα34s轟……(14)
訓ωとすれば・物体・ω一δ( εx2一牙)+アンテナの雛による嫌度を上げなければなら x( ε十一 2)⊇生像の振幅 なしll)電気信号から光信号一の変換特幽こよる
Eω一c[乃・(・x・」坐丁) 走査麓信さ噸界強度分布‥幅され
吋噺竿訓……(・・);㌫㌶㌶熟㌶程撫籔
を与える。ここで 響を与える要因は・z軸の入力電圧と螢光面のス
ポットの輝度が直線的に比例しているかどうかと㊨一・xp[xl2σ2] ……(・・) いうことと・rトの広がりである・図9は・
このスポヅトの輝度変調特性を測定した方法と結
と仮定すれば,Rayleighの解像限界は 果である。2軸の入力電圧には,1KHzの正弦
, となる。これを,ホーンアンテナ(ψ一7.5°),お.縄 轡ノV よび5λ、@一・ぴ),3λ、@一・4牟),・λ、(ψ一25°)
1§・ . , の各誘電体ロッドアンテナに適用すると,それぞ
〆u・》㌧. れ・。−25η、,・.93λ、,・.36λ1,α79λ1である。
このアンテナによる解像限界の値が走査面積制限 0 石 に伴う解像限界の値より大きければ,ホログラム 図8 走査面上の電界強度分布 の再生像の解像度はすべてそのアンテナの特性で 格子間隔1λ・ 決められることになる。したがって,走査面積を 大きくして解像度を上げようとすれば,同時に,
波を加えた、測定に用いたCRTの螢光体(B一 てスポットのみを検出できるようにした・これに
11)は,直線部での輝度が非常に強くてスポット よれば.入力電圧の中心を12V位にすればよい のまわりに月がさができたので、フィルタをつけ ことになる、図10は.スポットの広がりを測定したもので,z軸入力は15 V,走査密度は上か
ら順に10/2,10/4,10/6,10/8,10/10(本/mm)
である、実験結果から,スポットの広がりの大き
]o乍2mm さは0.5mm以下である、スポットの広がりに
10本]mm
]Oイミ!10mm
よる解像度への影響は,アンテナの開口の大きさ が与える影響と同様に考えることができる、すな わち,スポットの広がりがガウス分布(分散が σi)であるとすると,その解像限界ε、は(12)
から
・・−254D告・・ユ5飢…・・…(15)
で表わせる.したがってη一80/6であるとき,
スポットの受信走査面での大きさは,0.77λ1以下 に相当することになるが,これは長さが1λ1の誘 スポットの広がりによって再生像の解像度がさら に悪くなるということはないことになる、
(4) フィルムの特性による影響
螢光面上の光の強度分布はフィルムにその黒化 度分布として記録され,再生のために適当な大き さに縮小されて最終的なホログフムとなる、この ときの撮影はカメラのシャッタを開放して行なう ので,フィルムの黒化度は絞り植によって決ま
り,この黒化度が光の強度に直線的に比例するよ うな絞り値を知る必要がある。これは使用フィル ムの感光度の他に,走査速度やスポットの輝度に よって異なるので,あらかじめ実験的に求めなけ ればならない,つぎに,最終的な縮小ホログラム の縮小比が大きければ,それだけフィルムに記録 図10スポット大きさの測定 されるべき空間周波数が高くなるので,これを十
(a) ホログラム (b)縮小(1/400) (c)(b)の拡大
図11 縮小前後のホログラム比較
分に記録できるフィルムが必要である。図1の配 を及ぼすのは,走査面積の制限と受信アンテナの 置で,1)、−0.5m,2b−0.8rn,縮・」・比500であ 特性である。すなわち,再生像の解像度を向上さ れば,フィルムの必要最小空間周波数は約40本/ せるためには,走査面積を広くとり,開口面積が
mm程度となる。したがってこの程度の空間周 小さくて指向性のブロードなアンテナを用いなけ
波数は一般撮影用フィルムでも十分に記録できる ればならない。しかもこの条件は同時に満足されので・フィルムの解像力についてはほとんど問題 る必要がある。なお,CRT面上のスポットの影
にしなくてよいことになる。図11は,縮小ホロ 響およびフィルムの特性は,適当な使用状況の下 グラムを拡大して,縮小前のホログラムと比較し で,縮小比があまり大きくなければ,ほとんど問 たもので,干渉パターンは縮小前と同じであるこ 題にならない。とがわかる。
文 献
4.むすび 1)山下・渡辺:ミリ波ホログラフィの解像度,九工
大電子科修士論文,(昭46)
ミリ波による走査型ホログラフィに関して,再 2)鹿毛ほか:マイクロ波およびミリ波ホログラフ
生像の解像度に影響を及ぼす諸要因について検言寸3)イ
蜚ノ慮⑫㌶1、おける解鯛.し,実験結果を示した。諸要因のうちで最も影響 ついて,信学会マイクロ波研資(昭46−6)