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家庭科における概念の形成(第2報)

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(1)

家庭科における概念の形成(第2報)

八幡(谷口)彩子

・恒 松 真穂子

**

Conceptualization in Home Economics Education (Part 2) Ayako Y

AHATA-

T

ANIGUCHI

and Mahoko T

SUNEMATSU**

Abstract

The purposes of this paper were 1)Present a framework of conception of Tsunematsuʼs home economics lessons titled “Comfortable! Letʼs open a housing fair (Comfortable clothes and housing),” according to Nakamaʼs life skills model as living problem solution skills (2002), and 2) Analyze the pupilʼs documented statements about Tsunematsuʼs lesson and examine the state of their conceptualization after learning about “how to dwell in a house warmly in winter” and the state of their logical thinking, in Tsunematsuʼs home economics class of elementary school.

The results were as follows : 1) We present a framework of conception for learning about “how to dwell in a house warmly in winter” in home economics education of elementary school, from the standpoint of Nakamaʼs life skills models as living problem solution skills. 2) Analyzing Tsunematsuʼs lesson documents, we observe more pupils speaking about scientific understanding of housing than living skills or value recognition for living. 3) We observe both logical thinking flows : they begin by discussing living skills, and then they state the reasons why, according to their scientific understanding of housing in order to explain the meaning of the living skills, and the other hand, they begin by stating their scientific recognition for housing introducing a well-grounded judgement of a better way of living, and next they present the living skill.

Key words

: conceptualization, home economics education, life skills, learning about housing

は じ め に

熊本大学教育学部附属小学校では,平成18年度以 来,「『みんなで伸びる授業』をデザインする」を研 究主題に掲げ,研究を進めてきた.とりわけ認知心 理学の手法を拠り所に,授業における認知的葛藤の 場面を設定し,その問題解決過程における児童の学 びのプロセスを見取りながら,適切なリフレクショ ンのあり方について検討を重ねている.こうした研 究は,国際的な学力観に対応するものであると同時 に,教科の立場から見れば,各教科が児童にどのよ うな概念の形成をめざすものであるのか,教科の意 義や特性を解明する上でも意義あるものと考える.

さらに,平成21〜23年度には,文部科学省指定研究

開発学校として,新教科「論理科」の提案を行って いる

1)

同校におけるこうした研究の背景には,平成20年 3月に改訂された新学習指導要領において,あらゆ る学習活動の基盤として,言語活動の充実を目指し ていることがある

2)

.平成22年12月にまとめられた

「言語活動の充実に関する指導事例集【小学校版】」

では, 「思考力・判断力・表現力等をはぐくむ観点か ら,それぞれの教科等において言語活動を充実する 際の基本的な考え方や,言語の役割を踏まえた指導 について解説するとともに,優れた指導事例(100)」

が収録されている

3)

.そこに述べられた「言語の役 割を踏まえた言語活動の充実(第2章)」では,

⑴知

的活動(論理や思考)に関すること(ア 事実等を 正確に理解し,他者に的確にわかりやすく伝えるこ と,イ 事実等を解釈し説明するとともに,互いの 考えを伝え合うことで,自分の考えや集団の考えを 発展させること),

⑵コミュニケーションや感性・情

家政教育学科

** 人吉市立人吉東小学校

(元熊本大学教育学部附属小学校)

(2)

緒に関すること,がおもな言語の役割として挙げら れている.

一方,小学校家庭科において,どのような知的活 動(論理や思考)が行われるのか,という点に関す る理論的・実証的研究は,現段階では少ないと言え る.家庭科という教科で育むべき基礎的・基本的な 知識及び技能,思考力・判断力・表現力を育成する ためには,前述「指導事例集」第1章で述べられて いる,実際の生活体験や家庭科で行う実践的・体験 的な学習を通して,感じたこと・気づいたこと・わ かったことを正確に理解し伝達することが必要であ り,「概念・法則・意図(恒松実践では,家庭生活の

「意味」)などを解釈し,説明したり活用したりする こと,さらに,各家庭の生活実態を踏まえてよりよ いくらし方や生活課題の解決方法を解決するための

「構想を立て実践し,評価・改善する」ことが求めら れるが,具体的にどのような学習過程を展開するべ きなのか,実践の積み重ねが必要である.

このような背景の下,筆者らは,学習前後の児童 の自由記述式の学習シートの分析を通して,小学校 家庭科における概念形成の過程について研究を行っ ている

4)5)

.これまでの研究では,学習前後の児童 の概念の状況を比較することにより,学習による概 念化の成果を把握することができても,実際の授業 の中で,そうした概念を獲得するために,児童がど のような思考のプロセスや論理的思考を行っている のか,という検討が不十分であった.

そこで,本稿では,恒松が,平成22年度の熊本大 学教育学部附属小学校研究発表大会における研究主 題をふまえて行った「快適!住まいフェアを開こう

(快適な衣服と住まい)」

6)

の公開授業における授業 者・児童の発言内容を記録したプロトコル資料

7)

を 用いて,本授業実践の特徴を分析し,本題材におけ る家庭科(住生活分野)の概念形成とはどのような ものなのか,児童の実際の思考のプロセスをふまえ て考察を加えたいと考えた.

本研究の目的は,①分析対象とした恒松授業実践

「快適!住まいフェアを開こう(快適な衣服と住ま い)」における「生活問題解決スキルとしてのライフ スキル」の概念モデルについて提案を行うこと,② 授業のプロトコル分析を通して,本授業実践におけ る児童の概念形成と,授業で展開されている論理的 思考の特徴を分析することの2点である.

恒松授業実践「快適!住まいフェアを開こう

(快適な衣服と住まい)」と分析方法

恒松授業実践の概要

恒松授業実践「快適!住まいフェアを開こう(快 適な衣服と住まい)」は6時間取り扱いとして開発 された題材である.

題材全体の目標は, 「⑴住まいについて調べ,暖か い住まい方を提案することに関心をもつ.⑵家庭で 調べたことや,実験の結果をもとにして,暖かい住 まい方を考えることができる.⑶暖かい住まい方に ついて,家庭で調べたり,実験をしたりすることが できる.⑷暖かい住まい方について,日光や空気の 流れなど自然の力を効果的に取り入れるよさがわか る.」の4点である.

題材全体の指導計画としては,「第1次 住まい に関する疑問を交流し,主題をつかむ(1時間)→

第2次 暖かい住まい方を調べる(2時間)→第3 次 暖かい住まい方について,調べたことをもとに して話し合う(2時間)→第4次 暖かい住まい方 を提案する(1時間)」となっており,附属小学校研 究発表大会(平成23年2月10日)では第3次の1時 間目の授業が公開された.

公開授業では,「暖かく過ごす住まい方について,

調べたことをもとに話し合うことを通して,日光や 空気の流れなどの,自然の力を効果的に取り入れる よさを理解することができる.」ことが目標に設定 された.児童は,暖かく過ごすために,部屋の温度,

空気の流れ方,日光の当たり方などを調べており,

公開授業時は,暖房機器を増やさず,暖かく過ごす ためにはどうすればいいか,調べたことをもとにし た話し合いを通して,日光や空気の流れなど,自然 の力を取り入れるよさをつかませることを意図した 内容が展開された.

「快適!住まいフェアを開こう(快適な衣服と 住まい)」における児童の思考過程の分析方法

本稿では, 「冬暖かい住まい方の工夫」 (『小学校学 習指導要領』(平成20年3月28日改訂)「第2章 第 8節 家庭」に示されている内容C⑵)を学習内容 として恒松が授業実践を行った題材「快適!住まい フェアを開こう(快適な衣服と住まい)」の附属小学 校研究発表大会公開授業後に,恒松が作成した当該 授業時のプロトコルを分析資料として,児童の思考 過程の把握を試みた.

まず,前稿で提案を行った中間美砂子氏の「生活 問題解決スキルとしてのライフスキル」

8)

の構造を

― 60 ―

(3)

もとに,本題材における概念モデルの提案を行う.

つぎに,提案した概念モデルの3つの概念区分(① 生活技能,②生活に関する科学的認識・事実認識,

③生活に関する価値認識)に該当する児童の発言内 容をプロトコル資料から抽出・整理し,分析する.

さらに,3つの概念区分相互の論理的関連づけが児 童の発言からどのように読み取れるか,分析を行う.

最後に,これらの分析結果をもとに,恒松授業実践 の特徴を考察し,家庭科における論理的思考の特徴 について考察を行いたい.

「快適!住まいフェアを開こう(快適な衣服 と住まい)」における概念の形成

中間美砂子「生活問題解決スキルとしてのライフス キル」による概念モデル

筆者らは,前稿において,中間美砂子氏がモデル を示した「生活問題解決スキルとしてのライフスキ ル」の構造をよりどころに, 「みそ汁」の学習におけ る「生活問題解決スキル」としての概念モデルを提 示した

9)

本稿でも,中間氏の「生活問題解決スキルとして のライフスキル」の構造をよりどころに,恒松授業 実践「快適!住まいフェアを開こう(快適な衣服と 住まい)」における学習題材「冬暖かい住まい方の工

夫」における概念モデル(案)をまとめたものが表 1である.この概念モデル(案)における概念区分と は,冬暖かい住まい方を実現するための「生活技能」

と,冬暖かく住まうためのポイントとなる「生活に 関する科学的認識・事実認識」,そして,本学習題材 がめざす「快適な」住まい方とはどのようなものな のか,という概念に関わる「生活に関する価値認識」

の3つである.

以下,表1に示す概念モデルを本研究の分析枠組 みとして考察を行った.

「生活技能」に関する発言の内容

恒松授業実践のプロトコルから「冬暖かい住まい 方の工夫」に関わる「生活技能」に関する児童の発 言をまとめたのが表2である.

表2によると,児童が「冬暖かい住まい方」を実 現するための方法として,①窓からの夜間放熱を考 えた対処法(カーテンの開閉,夜間は窓の近くは寒 いので,それを考慮したくらし方をすること,二重 窓,など),②断熱の方法(プチプチシートや断熱シー ト,ダンボールを貼ること,など),③エアコンの使 い方(送風口の向き,扇風機を併用する,エアコン の位置,など)に関する発言があった.

表1.「冬暖かい住まい方の工夫」の学習における生活問題解決スキルとしてのライフスキルの概念モデル(案)

(4)

「生活に関する科学的認識・事実認識」に関する発言 の内容

恒松授業実践のプロトコルから「冬暖かい住まい 方の工夫」を考える場合のポイントとなる「生活に 関する科学的認識・事実認識」に関する児童の発言 をまとめたのが表3である.「生活問題解決スキル としてのライフスキル」の3つの概念区分のうち,

授業中の児童の発言が最も多かったのが,この「生 活に関する科学的認識・事実認識」に関わるもので あった.

表3によると,この授業では, 「窓とカーテンの利 用」「断熱材の使い方」「暖房器具(エアコン)の使 い方」に関する科学的認識・事実認識に基づいた発 言が行われている.いずれもカーテンや断熱材を利 用したり,エアコンと扇風機を併用するのはなぜか,

という実際の生活で行われる行動(「生活技能」)が どのような意味を持つのか,その理由や科学的根拠 に関する発言である.とくに,断熱材として児童で も扱うことができるものとして,プチプチシートと ダンボールが児童の関心を集めており,それぞれの 方法において「断熱」とはどのようなことなのか,

説明が行われている.また,授業の後半では,暖房 器具として,エアコンのより効果的な使用法を考え 始めているが,温かい空気の性質と扇風機を併用し たエアコンの効果的な使い方に関しては,言葉によ る説明だけではなく,黒板に図を描いて説明を行う など,児童の知的関心が集まっている.

「生活に関する価値認識」に関する発言の内容

恒松授業実践のプロトコルから「生活技能」に関 する児童の発言をまとめたのが表4である.

表4によると,夜間の窓からの放熱を防ぐ断熱の 方法として,自分たちの手に負えない住居の工事を 伴うようなやり方ではなく,自分たちにもできるや り方で,目的(冬暖かい住まい方)を実現するため の方法を考えたほうがよい,という方法を選択する 場合の価値基準に関する発言に限られている.分析 対象とした恒松の公開授業では,「冬暖かい住まい 方の工夫」に関する方法(「生活技能」)とその理由 づけや判断根拠に関わる(「生活に関する科学的認 識・事実認識」)に関する発言が中心を占めていたこ とがわかる.

一方, 「生活に関する価値認識」は,一連の学習活 動を経て,学習内容をふり返り,獲得された概念(恒 松授業実践では, 「冬暖かい住まい方の工夫」に関す る方法)をふり返り,確認する過程で,いろいろな

「工夫」のよさを見つめ直す(再概念化)ことになる と推察する.

「快適!住まいフェアを開こう(快適な衣服 と住まい)」における論理的思考過程の分析

論理的思考の特徴

さて,前述した表2〜4にまとめた,「生活技能」

「生活に関する科学的認識・事実認識」「生活に関す る価値認識」それぞれの内容が相互にどのように論

― 62 ―

表2.恒松授業実践における「生活技能」に関する児童の発言

(5)

表3.恒松授業実践における「生活に関する科学的認識・事実認識」に関する児童の発言

(6)

理的に関連づけられるのかという児童の論理的思考 の特徴を把握するために,恒松授業実践のプロトコ ル資料をもとに表5を作成した.表5では,児童の 発言の主旨を「生活技能」「生活に関する科学的認 識・事実認識」 「生活に関する価値認識」に分類して 配置し,個々の発言相互の論理的関係を矢印等で示 した.また,児童の思考過程に授業者がどのような 役割を果たしているのかを把握するため,授業者の 発言内容も記載した.

表5によると,授業の前半では,例えば, 「生活技 能」に配置された「昼はカーテンを開けて夜はカー テンを閉める」から「生活に関する科学的認識・事 実認識」に配置された「夜は寒いので」への矢印の ように,「生活技能」に関わる発言の理由づけ(「な ぜなら〜」)として「生活に関する科学的認識・事実 認識」が述べられるケースが多くみられた.一方,

授業の後半では,例えば,「生活に関する科学的認 識・事実認識」に配置された「エアコンの送風口の 向きで温度の上がり方が異なる」ことを述べ,それ

(「生活に関する科学的認識・事実認識」)を根拠にし て(「〜だから」),「生活技能」に関わる「冬暖かい 住まい方の工夫」に関する提案が行われる,という

「生活に関する科学的認識・事実認識」から「生活技 能」への矢印の向きが多く観察された.「生活技能」

に関する発言と「生活に関する科学的認識・事実認 識」に関する発言を論理的に関連づける矢印の向き が前半と後半で異なった理由は,授業の前半では,

前時までの学習により,すでに「冬暖かい住まい方 の工夫」に関する方法(「生活技能」)を児童は理解 しており,なぜ,そうするのか,という説明のため に「生活に関する科学的認識・事実認識」に関する 発言を行っているからである.一方,授業の後半で は, 「温まった空気と冷たい空気の性質」を根拠とし て,エアコンの送風口の向きやエアコンと扇風機を 併用するよりよい方法を導き出そうとしているため である.

授業の前半で多くみられる「生活技能」から「生 活に関する科学的認識・事実認識」に向かう矢印は,

日常生活場面で行われている生活の方法(「生活技 能」)がなぜそのように行われるのか,という意味の

「説明」を行うための「理由づけ」であり,一方,授 業の後半でみられる「生活に関する科学的認識・事 実認識」から「生活技能」に向かう矢印は,「温かい 空気と冷たい空気の動き」を理解して,どのような 生活の方法(「生活技能」)を行うのが妥当なのか,

という「判断」を行うための「根拠」として「生活 に関する科学的認識・事実認識」に関する発言が位 置づけられていると考える.

筆者らは,児童それぞれの生活の状況を踏まえて,

「よりよい生活を実現するための方法」を「思考」し,

「判断」して,実行に移せる児童の育成を目指したい と考えている.そのためには,「生活に関する科学 的認識・事実認識」を根拠として児童が置かれてい る状況の中で最善の「判断」ができる能力(「判断力」)

を高めていくための学習場面の設定が必要である.

一方,この数年来,附属小学校が掲げた研究テーマ に従って取り組んできた家庭科の授業では,実生 活・実社会(家庭科では実際の家庭生活を想定する 場合が多い)でなぜそのような方法が行われるのか,

という「意味」を説明解釈的に「わかり直す」こと に重点を置いた授業の提案が行われてきたと言えよ う.家庭生活の「意味」をわかり直す家庭科の授業 と,よりよい生活を実現するために適正な「判断力」

を身につけることを目指す家庭科の授業の双方を,

家庭科の授業の中でどのように位置づけていったら よいのか,という点については,今後の課題とした い.

論理的思考の特徴からみた恒松授業実践の特徴

最後に,これまで述べてきた恒松授業実践におけ る児童の概念形成と論理的思考過程の分析を踏まえ て,恒松授業実践の特徴について考えてみたい.

恒松授業実践では,児童が共有しやすいシンプル な場面や状況(本授業の冒頭で示されたとある家の 部屋)を設定し,共同で「冬暖かい住まい方」につい て児童の「思考」を中心にして探究する授業が行わ

― 64 ―

表4.恒松授業実践における「生活に関する価値認識」に関する児童の発言

(7)

表5.恒松授業実践におけるおもな授業者・児童の発言内容等と「生活技能」等との関係

(8)

― 66 ―

(9)

れている.授業では,「ことば」や「図」を用いて説 明するなど,言語等による事実や推測内容の説明の 時間が十分に確保されている.「冬暖かい住まい方 の工夫」を考えるための,原理的な内容(生活に関 する科学的認識・事実認識)と,そうした原理的な 内容を踏まえて,どのように部屋を温めたらよいの か(生活技能)という方法の提案,そして,そうし た生活技能を行うことのよさ(生活に関する価値認 識)が学習過程を通して,相互に関連づけられ,論 理的に児童の概念化につながっていくところに特徴 がある.

さらに,注目すべきは,授業における授業者の役 割である.恒松授業実践では,授業者が何かの知識 や技術を「教え込む」場面はほとんどない.恒松授 業実践における授業者の役割とは,児童の発言内容 を確認したり,質問を発することで児童の考えを確 認・整理したり,発言のキーワードやキー概念を強 調するなどの児童が主体的に思考を深めていくため の補助者として,授業の舵取りをする役割を果たし ている.こうした特徴は,通常の家庭科の授業にお ける教師の役割とは大きく異なる点であろう.

要 約

以上,家庭科における「概念の形成」に関する研 究の一環として,本稿では,①恒松授業実践「快適!

住まいフェアを開こう(快適な衣服と住まい)」にお ける「生活問題解決スキルとしてのライフスキル」

の概念モデルを検討すること,②授業のプロトコル 分析を通して,本授業実践における児童の概念形成 の状況と,授業で展開されている論理的思考の特徴 を分析することの2点を目的として研究を行った.

プロトコル分析を行うにあたっては,中間美砂子 氏が提唱する①生活技能,②生活に関する科学的認 識・事実認識,③生活に関する価値認識の3つを一 体的にとらえた生活問題解決スキルとしてのライフ スキルの概念モデル(案)を提案し,その3つの概 念区分に従って,児童の発言内容を分析した.その 結果,今回分析対象とした授業では,②生活に関す る科学的認識・事実認識に関する発言が最も多く,

生活に関する科学的認識・事実認識に関する概念形 成が顕著であった.

さらに,上記①と②に関する児童の発言相互の論 理的関係性について分析を行ったところ,日常生活 で行われている生活行為(「生活技能」)の「意味」

を説明・解釈的に関連づける「生活技能」に関する

発言→(なぜなら) 「生活に関する科学的認識・事実 認識」に関する発言という論理の流れと,よりよい 生活行為(「生活技能」)を導き出すための判断根拠 として「生活に関する科学的認識・事実認識」→(と いう理由で) 「生活技能」の提案を行うという論理の 流れの双方が確認された.

家庭実践や生活技能に関する学習内容を家庭科の 特色ととらえるならば,後者の論理の流れが重視さ れなければならないが,そこに,家庭生活における 営みを説明・解釈する前者の論理の流れをどのよう に位置づけ,総合的な学習過程を構築したらよいの かという点については,今後の研究課題としたい.

1) 熊本大学教育学部附属小学校(編)(2011)『紀要』第60 集,pp. 4-11,pp. 150-199

2) 文部科学省(2008)『小学校学習指導要領解説 家庭編』

東洋館出版社,p. 7

3) 文部科学省(2010)『言語活動の充実に関する指導事例 集〜思考力,判断力,表現力等の育成に向けて〜【小学 校版】』(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new- cs/gengo/1301088.htm)

4) 八幡(谷口)彩子・恒松真穂子(2009)「家庭科における 概念の形成」『熊本大学教育実践研究』26,pp. 25-32 5) 八幡(谷口)彩子・恒松真穂子・松原三也子(2011)「児

童・生徒の思考のプロセスに着目した小・中学校家庭科 のカリキュラム開発」,熊本大学教育学部(編)『新学習 指導要領キックオフシンポジウム報告書』,pp. 58-69 6) 恒松真穂子(2011)「第5学年1組 家庭科学習指導案」,

熊本大学教育学部附属小学校(編)『学習指導案〈2年次〉

ことばの力に培う「みんなで伸びる授業デザイン」〜豊 かな対話を育む「論理科」カリキュラムの開発〜』pp.

70-73

7) なお,本稿において分析資料としたのは,熊本大学教育 学部の主催により平成23年3月に実施した「新学習指導 要領キックオフシンポジウム」教科別分科会(家庭科)

において資料として配付された,公開授業時のプロトコ ル資料である.

8) 中間美砂子(2002)「1.生活問題解決とライフスキル」

内藤道子・中間美砂子・金子佳代子・高木直・田中勝(共 著)『生活を創るライフスキル:生活経営論』建帛社,pp.

41-44

9) 前掲,八幡・恒松(2009)「家庭科における概念の形成」,

p. 27

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