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本誌に関するお問い合わせはみずほ総合研究所株式会社調査本部大嶋寧子 電話 (03) まで 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり 商品の勧誘を目的としたものではありません 本資料は 当社が信頼できると判

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2007 年 9 月 11 日発行

「募集・採用時の年齢制限禁止」の義務化

~法改正に伴う成果と課題~

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本誌に関するお問い合わせは みずほ総合研究所株式会社 調査本部 大嶋寧子 yasuko.oshima@mizuho-ri.co.jp 電話 (03) 3201-0287 まで。 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたもの ではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき作成されており ますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容 は予告なしに変更されることもあります

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1.雇用対策法の改正により、07 年 10 月 1 日以降、募集・採用に係る年齢制限禁止が義務 化される。国が募集・採用時の年齢制限禁止の義務化に踏み切った背景には、わが国 でフリーターや子育て後の女性、高齢者等の活用が急務となる一方、募集・採用時の 年齢制限がこれらの人々の就業を阻む「壁」となっていることがある。 2.今回の法改正により、企業が募集・採用時に年齢制限を設ける余地は大幅に縮小する。 募集・採用に係る年齢制限禁止の義務化に加え、例外的に年齢制限が認められる事由 が10 から 6 つに絞り込まれたからである。なかでも、これまで年齢制限を伴う求人の 8 割が掲げていた 2 つの例外事由のうち、1つが例外事由から削除され、もう 1 つはこ れを使用するための客観的な基準が設けられた。このように今回の法改正は募集・採 用時に限定されているとはいえ、年齢によらない雇用機会の確立に向けて評価すべき 内容が盛り込まれている。 3.しかしながら、募集・採用時の年齢差別禁止それのみでは、その政策目的の達成は難 しい。わが国では、年齢に基づく雇用慣行が広く定着しており、入口の募集・採用時 について年齢制限を禁止しても、それによって企業がフリーターや子育て後の女性、 高年齢者の採用を行うインセンティブが直接高まる訳ではない。企業がフリーターや 子育て後の女性の活用をためらってきた背景をみると、フリーターに対する定着率や 能力形成に対する懸念、子育て後の女性に対する労働条件面でのミスマッチや離職後 の職業能力低下への懸念がある。これらの懸念や不安を解消しないことには、せっか くの募集・採用時の年齢制限禁止の義務化も絵に描いた餅となる可能性がある。 4.したがって、募集・採用時の年齢制限禁止の実効性を高めていくためには、これまで能 力形成機会に恵まれなかったフリーター等の職業能力開発、採用したフリーターや子 育て後の女性に能力開発を行う企業や仕事と育児を両立しうる働き方を整備した企業 への支援、企業の意識改革の推進など、企業がフリーターや子育て後の女性に対する 採用意欲を高める方策を強化していくことが不可欠である。 5.すでに国はフリーターの安定的な就業や子育て後の女性の再就職に向けた支援を強化 してきた。08 年度にはフリーターや子育て後の女性の就職・再就職を支援する「ジョ ブ・カード制度」の創設をはじめとする支援策の強化が予定されている。これらの取 り組みが効果を発揮するためには、制度が産業界のニーズに合ったものとなることが 必要である。企業との連携のもとに制度構築を進めるほか、効果や制度のあり方につ いて、企業を巻き込んだ評価・見直しの仕組みを導入していくことが求められる。 (政策調査部 大嶋寧子)

要旨

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1. はじめに··· 1 2. 募集・採用に係る年齢制限禁止の義務化とその背景 ··· 1 3. これまでの募集・採用に係る規制とその評価 ··· 2 (1) 雇用における年齢差別禁止に向けた議論 ··· 2 (2) 従来の規制··· 4 (3) 従来の規制の効果··· 4 4. 雇用対策法改正による 3 段階の規制強化··· 6 (1) 努力義務から企業の義務へ··· 6 (2) 例外事由の絞込み··· 6 (3) 例外事由に該当するための条件の厳格化 ··· 8 5. 募集・採用に係る年齢制限禁止の実効性 ···11

目次

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1. はじめに 07 年 6 月 1 日に改正雇用対策法(「雇用対策法および地域雇用開発促進法の一部を改正 する法律」)が成立した。本改正により、同年10 月 1 日以降、これまで努力義務であっ た募集・採用に係る年齢制限の禁止が義務化される。 募集・採用時の年齢制限は、新卒中心の採用、企業内 OJT による能力開発、年功型の処 遇をはじめとするわが国の雇用慣行と結びつき、わが国で広く用いられてきた。01 年 9 月 にハローワークで受理した求人のうち、年齢制限のある求人は 95%を占めた。その後、こ の割合は低下が続いてきたものの、07 年 4 月時点でも約 5 割を占めている。こうしたなか、 国が募集・採用に係る年齢制限禁止の義務化に踏み切った背景には、少子高齢化・人口減 少により労働力人口の大幅な減少が見込まれるなか、わが国でフリーターや子育て後の女 性、高齢者等の活用が急務となっていること、募集・採用時の年齢制限は、これらの人々 の就業を阻む「壁」と考えられたことがある。本稿では、今般の募集・採用時の年齢制限 禁止の成果を踏まえた上で、その政策目的達成に向けた課題を考察する。 2. 募集・採用に係る年齢制限禁止の義務化とその背景 募集・採用に係る年齢制限禁止の義務化については、過去にも検討の必要性が指摘され てきたものの1、具体的な議論が進展したのは 07 年に入ってからであった。06 年 12 月に 公表された労働政策審議会の建議(「人口減少下における雇用対策について」)は、フリー ターの再チャレンジ策の一環として、企業における募集・採用のあり方の見直しが重要で あると指摘した。しかし、そこで挙げられた見直し策とは、①募集・採用時の事業主の努 力義務に、若者の能力を正当に評価しうるよう募集方法を改善することや採用後に実践的 な職業訓練を実施することを加えること、②事業主がこれらの努力義務に適切に対処する ために国が指針を策定すること2などであり、募集・採用時の年齢制限の禁止にまで踏み込 むものではなかった。 国はその後、06 年 12 月 25 日に「再チャレンジ支援総合プラン」を取りまとめたが、こ の時点でも募集・採用に係る年齢制限禁止の義務化は対策に盛り込まれなかった。同プラ ンがこの時示した法改正事項にも、「若者の能力・経験の正当な評価による雇用機会の確 保等について、事業主の努力義務などを定める」と表記されるに止まっていた。 しかし、07 年に入ると、募集・採用に係る年齢制限禁止の義務化に向けた議論が急速に 高まり、同年 1 月中には、07 年通常国会に提出される雇用対策法改正案にこれを盛り込む 1 例えば、04 年 3 月に公表された総合規制改革会議「規制改革・民間開放推進3か年計画」には、募集・ 採用時の年齢制限について、「中長期的には、年齢制限そのものを禁止することについてもその可能性 を検討する」ことが盛り込まれた。 2 国の指針には、人物本位による採用が行われるべき旨明記することのほか、採用基準や職場で求められ る能力・資質の明確化、求人の応募可能年齢の引き上げ、応募資格の既卒者への開放、通年採用の導入、 トライアル雇用の活用等有期契約から正社員への登用制度の導入、職業能力開発の推進などが盛り込ま れることとされた。

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2 方針が固められた。その結果、07 年 2 月 25 日に改定された「再チャレンジ支援総合プラ ン」の法改正事項にも、「労働者の募集採用に係る年齢制限の禁止について義務化する」 との文言が追加された。 このように募集・採用に係る年齢制限禁止の義務化に向けた議論が急速に高まった背 景には、2 つの要因があると考えられる。第一の要因が、この措置によって就業を促進す べき対象の拡大である。従来、募集・採用時の年齢制限は、中高年齢者の再就職を阻む問 題として捉えられることが多かった。しかし近年では、少子高齢化に伴う労働力人口の減 少や、ワーキングプアをはじめとする「働く人の格差」問題への懸念が高まり、中高年齢 者だけでなく、フリーターや子育て後の女性の働く意欲や能力の活用が急がれるようにな った。こうしたなか募集・採用時の年齢制限は「中高年齢者の再就職の壁」から、「幅広 い人々の活用を阻害する壁」及び「働く人の格差の一因」として位置づけが変わり、対応を 急ぐ声が拡大してきたのである3。第二の要因は、より直接的である。第一の要因で挙げた ように、募集・採用時の年齢制限に対する問題意識が高まってきたところに、夏の参院選 を前に、若者、女性、高年齢者の再チャレンジに向けた取り組みの進捗をアピールするべ きという与党の意思が働いたことが、募集・採用時の年齢制限禁止に向けて議論を加速さ せる要因となったと推察される4 3. これまでの募集・採用に係る規制とその評価 (1) 雇用における年齢差別禁止に向けた議論 なお、募集・採用時の年齢制限に関しては、01 年より、これを緩和することが企業の努 力義務とされてきた。わが国では主に中高年齢者の雇用対策の観点から、雇用における年 齢差別禁止の是非に関する議論が行われてきた。そうした議論を踏まえ、まずは募集・採 用という雇用の一局面を切り取って、年齢差別を是正する取り組みが開始されてきたので ある。 経緯を簡単に振り返ろう。わが国では 00 年頃より、雇用における年齢差別禁止の是非 が議論されるようになった。背景には、高齢化により社会保障財政が悪化するなか、意欲 や能力のある中高年齢者の就業継続を促す必要が高まったことがある。しかし、定年制に より能力に関わらず退職を迫られる高齢者が存在すること、募集・採用時の年齢制限によ って一旦失業した中高年労働者の再就職が極めて困難であることにみられるように、年齢 による一律の取り扱いが、中高年齢者のより長い就業を阻む要因となっているとの認識が 3 07 年 4 月 18 日の衆議院厚生労働委員会では、厚生労働省職業安定局長より、01 年の雇用対策法改正時 に募集・採用時の年齢制限が行われた主眼は、厳しい雇用環境にある中高年齢者の再就職促進であった が、今回の雇用対策法改正ではそうした背景が変化していること、すなわち、少子高齢化時代に経済社 会の活力を維持増進させていくために、中高年齢者に限らず、女性、若者の活用が重要課題になってお り、募集、採用の年齢制限の禁止の意義が従来以上に拡大しているとの説明がなされた。 4 各種報道によれば、自民・公明両党は 2007 年 1 月 24 日に発足した与党協議会で、募集・採用時の年齢 制限を禁止する方向で一致し、同月 26 日には厚生労働大臣が雇用対策法の改正案に、募集・採用時の

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高まった。そこで、雇用における年齢差別を禁止すべきかどうかが問われたのである。 この問題に対する立場は 2 つに大別できる(図表 1)。その一つは、わが国では年齢に基 づく雇用慣行が広く定着しており、年齢差別を幅広く禁止することは労働市場の混乱を招 くために現実的でないとする見方である。もう一方は、定年制や募集・採用時の年齢制限 の存在が高年齢者の能力発揮を阻害しているので、成果主義の浸透や公正な職務評価をは じめ実現のための諸条件をクリアした上で、雇用における年齢差別の禁止を真剣に検討す べきという見方である。 ここで問題となるのは、両者の立場に基づく政策が、企業の内にいる労働者と外にいる 労働者に、それぞれ異なる影響を及ぼしうることである。前者を重視する政策を推進する 限り、今現在雇用されている労働者は定年まで安定した雇用の下に置かれるが、定年退職 後や失業後の再就職は困難な状態が続く。一方、後者の立場の政策を推進する場合、定年 の廃止により年齢を基準に一律に退職を迫られることはなくなるほか、失業した中高年齢 者のなかでも意欲や能力の高い者の再就職が進む可能性がある。しかし、年齢差別の禁止 によって定年制を廃止する場合、企業には他の雇用調整手段を認めていく必要が生じるた め5、今現在企業で雇用されている中高年齢者の雇用は今より不安定化する可能性がある。 図表 1 雇用における年齢差別禁止の是非に関する議論 雇用における包括的な 年齢差別禁止は適当でない 雇用における年齢差別禁止を 真剣に検討すべき 厚生労働省「今後の高齢者雇用対策に関する 研究会」(2003) 法律による包括的な年齢差別禁止は、①年齢 が採用、処遇、退職の重要な決定要因である 日本で労働市場の混乱を招く可能性があるこ と、②定年制の禁止は定年制の有する雇用保 障機能の低下につながるため、高齢者の雇用 機会の確保にかえって悪影響を及ぼす懸念が あることなどから、現時点では適当ではない と結論付け、募集・採用時の年齢制限の是正、 定年制を維持した上での高年齢者の雇用機会 の確保等、雇用の各場面に応じた是正を行っ ていくことが、現実的かつ効果的と指摘。 旧経済企画庁「雇用における年齢差別禁止に関 する研究会」(2001) 現状では、定年制の存在により必ずしも高 齢者の能力が十分に発揮されていないこ と、中途採用の年齢制限によって失業した 中高年労働者の再就職が困難になっている ことを踏まえると、成果主義の浸透や公正 な職務評価をはじめ、年齢差別禁止を導入 する際の前提条件について検討を深めてい く必要があるものの、高年齢者の雇用およ び採用時の年齢制限のいずれの問題の解決 方法としても、年齢差別禁止は真剣に検討 すべき一つの理念型であると指摘。 (資料)各資料をもとに、みずほ総合研究所が抜粋・作成 年齢制限の禁止規定を盛り込む考えを示した。 5 わが国では企業の解雇権が厳しく制限されていること、加齢に伴い賃金が逓増する傾向にあることなど から、判例や学説の多くが定年制に合理性があるとの判断を行ってきた。このように、定年制と年功型 処遇、長期雇用は分かちがたい関係にある。ここで仮に、年齢差別の禁止によって定年制を廃止する場 合、労働者に対する強い雇用保障を維持したままでは、企業は雇用調整手段を失い、人事刷新が難しく なる。このため、同時に他の形で企業の雇用調整手段を認めていく必要が生じると考えられている(旧 経済企画庁「雇用における年齢差別禁止に関する研究会」(2001))。

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4 このように、雇用における年齢差別の禁止は、年齢が採用、処遇、退職の重要な決定要 因となってきた日本で労働市場の混乱を招く可能性があることから、今のところ実現に向 けた現実的な動きは生じていない。実際、日本の高年齢者雇用対策も、既に企業で雇用さ れている高年齢者のより長い活用を促すことに力点が置かれてきた。06 年 4 月 1 日以降 は、企業に原則希望者全員に対する 65 歳までの雇用確保措置を導入することが義務付け られた6。これもまた、すでに雇用されている高年齢者が、より長く同じ職場で働き続ける ことを目指す政策の典型といえる。 (2) 従来の規制 一方で、わが国でも年齢差別への取り組みが全く行われてこなかった訳ではない。先に 述べたように、募集・採用という雇用の一局面に限定した形で、国は年齢制限の是正に取 り組んできたからである。01 年 7 月の雇用対策法改正では、企業の募集・採用時の年齢 制限が、中高年齢者の再就職を極めて困難にしているとの認識を踏まえ、「労働者の募集・ 採用において、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えること」が企業の努力義務とさ れた。 また、同じ月には総合規制改革会議(2001)が、内外の競争環境の激化や技術構造の急速 な変化に対応するために、人材の円滑な移動を促しうる労働市場システムの整備が必要で あると指摘し、その具体策として、01 年の雇用対策法改正に伴い策定される「指針」に、 募集・採用時に年齢要件を課す場合、求人企業にその理由を明示することを求める内容を 盛り込むべきであること、中長期的にはこれを法律で義務付けることを検討すべきとの指 摘を行った7 こうした指摘を受け、04 年 6 月に改正された高年齢者雇用安定法では、事業主が労働 者の募集・採用時に、やむを得ない理由により65 歳未満の年齢制限を行う場合、求職者、 公共職業安定所、職業紹介事業者等に対して、その個別的、具体的な理由を書面や電子媒 体により提示することが義務づけられた。 (3) 従来の規制の効果 従来の規制、すなわち、「募集・採用時の年齢制限緩和」の努力義務化及び「65 歳未満 の年齢制限を行う場合の理由の明示」の効果については2 つの見方がある。一つは、ハロ ーワークにおける年齢不問企業の割合が上昇してきたことを踏まえ、規制は一定の効果が 6 高年齢者雇用安定法の改正による。ただし、これには年金の支給開始年齢の引き上げスケジュールに沿 った段階的な措置が設けられている。 7 このほか労働政策審議会(2004)も「個人の能力や適性にかかわらず年齢のみを理由として就職の機会を 奪うものであり、その是正を図るべきものである。したがって、本来は原則として禁止することが求め られる」としながら、ハローワークに寄せられた求人のうち年齢不問求人が少数派に止まることや、01 年の雇用対策法改正に基づき年齢制限緩和の努力義務化が行われてから間もないことを理由に、募集・ 採用時の年齢制限の禁止ではなく、募集・採用時にやむを得ず年齢制限を行う場合に、求人企業に理由

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あったとみるものである8。実際、公共職業安定所で受理する求人のうち年齢制限を行う企 業の割合は、01 年 9 月の 95.3%から、07 年 4 月の 49.2%にまで低下した(図表 2)。 図表 2 年齢制限のある求人の割合(ハローワーク) 98.2 49.2 61.4 76.5 85.8 87.3 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 01/9 02/9 03/9 04/9 05/9 09/4 (%) (年/月) (注)ハローワークにおける求人のうち、年齢不問求人の割合を引いたもの (資料)厚生労働省「募集・採用時における年齢制限禁止の義務化について」 一方、「年齢制限の緩和」が企業の努力義務に止まったこと、さらに厚生労働大臣の指 針(「労働者の募集及び採用について年齢にかかわりなく均等な機会を与えることについて 事業主が適切に対処するための指針(以下、年齢指針という)」)で、年齢制限が認められ る例外事由が幅広く設けられたことから、従来の規制の実効性を疑問視する声も存在する9 この「年齢指針」では 10 の例外事由が定められた。具体的には、長期雇用の観点から 新卒者のみを採用の対象とすること、定年年齢を考慮して採用に上限年齢を設定すること、 年齢給との兼ね合いを考慮して採用に年齢枠を設定することなど、従来の雇用慣行に配慮 した例外が幅広く設けられている。「年齢指針」はまた、体力・視力等が勤務期間を通じ て一定水準以上であることが必要な業務に関して、募集・採用時に上限年齢を設けることも 認めている。 このほか、特定の年齢層をターゲットとする業務で、そのターゲット層との関係で円滑 の明示を義務付けることが適当であるとの報告を行った。 8 例えば、北浦(2003)など。 9 例えば、岩田(2001)は例外規定が緩すぎるとの意見や、罰則規定がないので実効性を疑問視する意見を 紹介しつつ、これまでの規制が雇用におけるエイジフリー化に踏み出した意義は大きいと指摘している。

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6 に業務を遂行するために、年齢制限を設けることも認められている。その具体的な例とし ては、店員が商品を着用しつつ販売する 10 代向けの洋服店で、顧客に近い年齢層の者を 募集・採用する場合が挙げられるという10 このように募集・採用時に年齢制限を設ける余地は大きく残されてきたため、45 歳以降 の求職者に対し求人が大きく不足する状況は変わっていない。07 年 6 月の時点で、44 歳 以下の有効求人倍率は1.09 である一方、45 歳以上のそれは 0.65 に止まった。加えて、年 齢不問企業の中に、実際には若い年齢の労働者を要望する企業が存在する可能性を含めれ ば、45 歳以上の再就職は有効求人倍率が示す以上に困難な状況にあると言える。従来の規 制は、年齢に関わりない働き方の実現に向けて最初の一歩を踏み出したという点では重要 な意味があったが、それが中高年齢者の再就職機会を十分拡大することには、必ずしも繋 がってこなかったと考えられる。 4. 雇用対策法改正による 3 段階の規制強化 (1) 努力義務から企業の義務へ それでは、今般の雇用対策法の改正により、募集・採用時の年齢制限に対する規制はど のように変化したのであろうか。第一の点は、これまで述べたとおり、募集採用に係る年 齢制限禁止が義務化されたことである(雇用対策法第 10 条)。これまで事業主が課されてい たのは、あくまで募集・採用時の年齢制限を緩和するよう「努力する義務」であった。こ のため、新聞等の求人広告では「大卒以上30 歳~40 歳位までの方」「既卒者の場合、1977 年4 月 2 日以降の出生者」などの文言が容易に目に付くように、ハローワーク以外の求人 では年齢制限のある求人は珍しくない状況にある。しかし、今般の改正で募集・求人の際 に年齢制限を設けることが原則「違法」となったこと、この年齢制限の禁止が公共職業安 定所を利用する場合、民間の職業紹介事業者、求人広告などを通じて募集・採用する場合 を含め、募集・採用時に広く適用されることは、現状を変革する上で一定の効果をもたら すことが期待できる。 (2) 例外事由の絞込み 第二の点が、例外的に年齢制限が認められる事由が10 から 6 つに絞り込まれたことで ある。参議院厚生労働委員会における改正雇用対策法の審議では、年齢制限が認められる 例外事由を必要最小限にするとの内容を盛り込んだ付帯決議が採択された11。厚生労働省 10 厚生労働省(2001)より。なお、こうした事情の存在しない小売商品等で、単に主な顧客が若年層であ るからといって販売業務について高年齢者を対象外とすることはできないと説明されている。 11 雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律案に対する附帯決議。労働者の募集及び採 用に係る年齢制限の禁止の義務化に当たっては、「事業主等への周知徹底に努めるとともに、真に実 効性あるものとなるよう、従来、例外的に年齢制限が認められる場合として指針に定められてきた事 項を抜本的に見直し、必要最小限に限定すること。また、国家公務員及び地方公務員についても、民 間事業主への義務化を踏まえ、本改正の理念の具体化に向け適切な対応を図ること。」との内容が盛

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が8 月 3 日に公布した関係省令・政令はこの付帯決議の趣旨に沿ったものとなっている。 同省令によると、07 年 10 月 1 日以降、例外的に年齢制限が認められるのは、①定年年 齢を下回ることを条件に募集・採用を行う場合(期間の定めのない労働契約を締結する場 合に限る)12、②労働基準法等の法令により特定の年齢層の就業が禁止・制限されている 場合13、③長期間の継続勤務による職業能力の開発・形成を目的に、特定の年齢以下の者を 募集・採用する場合(正社員としての採用、業務経験不問、新卒又は新卒と同等の処遇を行 う場合に限る)14、④特定の年齢層に属する特定の職種の労働者数が相当程度少ないとして 厚生労働大臣が定める条件に適合する場合 (正社員として採用する場合に限る)、⑤芸能・ 芸術分野で表現の真実性を確保するために特定の年齢層の労働者の募集・採用を行う場合、 ⑥高齢者の雇用促進のために60 歳以上の特定年齢以上の高齢者の募集・採用を行う場合や 特定年齢の雇用を促進する場合(これに関わる国の施策を活用する場合に限る)15 6 つの ケースに限定される (図表 3)。 り込まれた。 12 有期労働契約である場合、上限年齢と定年年齢が一致しない場合、下限年齢を付している場合はこの 例外に該当しない。 13 例えば、労働基準法では使用者は満 18 歳に満たない者を一定の危険な業務又は厚生労働省令で定める 重量物を取り扱う業務、有害な原料等を取り扱う業務などに就かせてはならないことが規定されてい る。また、警備業法で 18 歳未満の者は警備員となってはならないこととされている。 14 同等の処遇とは、新卒者と道央の訓練・育成体制、配置・処遇をもって育成しようとしている場合を 指し、賃金等が新卒者と完全に一致することを求めるものではない。なお、経験不問が条件の一つと される理由は、この例外事由が新卒やこれに近い年次の者を採用し、社内教育で能力形成を行ってい く企業に配慮するものであり、経験者に限定して募集する企業の場合に年齢制限を認めることは、こ の例外事由の趣旨に反するからであるという。 15 60 歳以上の高年齢者に限定して募集・採用を行う場合でも、「60 歳以上 70 歳未満の方を募集」など のように、上限年齢を付すことは認められない。

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8 図表 3 規制の例外の縮小 07 年 9 月 30 日まで 募集・採用に係る年齢制限禁止の 努力義務の例外 07 年 10 月 1 日~ 募集・採用に係る年齢差別禁止の義務化の例外 1 長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、 新規学卒者等である特定の年齢層の労働者を 対象として募集及び採用を行う場合 長期間の継続勤務によるキャリア形成を図る観点 から青少年その他特定の年齢を下回る労働者を募 集・採用する場合(正社員として採用、経験不問、 新卒又は新卒と同じ処遇の場合のみ) 2 技能・ノウハウ等の継承の観点から、労働者の 年齢構成を維持回復させるために、特定の年齢 層の労働者を対象として募集及び採用を行う 場合 技能・ノウハウ継承の観点から、特定の職種にお いて労働者数が相当少ない特定の年齢層に限定し て募集・採用する場合(特定の年齢層が相当少な いとして厚生労働大臣が定める条件に適合し、正 社員として採用する場合のみ)。 3 定年年齢との関係から雇用期間が短期に限定 される場合に、特定の年齢以下の労働者を対象 として募集及び採用を行う場合 定年年齢を上限として募集・採用を行う場合(期 間の定めのない労働契約の対象とする場合のみ) 4 既に働いている他の労働者の賃金額に変更を 生じさせることになる就業規則の変更を要す る場合に、特定の年齢以下の労働者を対象とし て募集及び採用を行う場合 なし 5 商品やサービスの特性により顧客等との関係 から業務を円滑に遂行する必要から、特定の年 齢層の労働者を対象として募集及び採用を行 う場合 なし 6 芸術・芸能の分野における表現の真実性等を 確保するために、特定の年齢層の労働者を対象 として募集及び採用を行う場合 芸術・芸能の分野における表現の真実性を確保す るために、特定の年齢層の労働者の募集・採用を 行う場合 7 労働災害の防止の観点から特に考慮する必要 がある業務について、特定の年齢層の労働者を 対象として募集及び採用を行う場合 なし 8 体力、視力等が使用後の勤務期間を通じ一定水 準以上であることが不可欠の業務について、特 定の年齢以下の労働者について募集 及び採用 を行う場合 なし 9 行政の施策を踏まえて中高年齢者の募集及び 採用を行う場合 60 歳以上の高年齢者や特定の年齢層の雇用を促 進する国の施策の対象となる者に限定して募集・ 採用する場合 10 労働基準法等法令の規定により年齢制限が設 けられている場合、禁止又は制限されている年 齢層の労働者を除いて募集及び採用を行う場 合 労働基準法等法令の規定により年齢制限が設けら れている業務について、当該年齢層の労働者以外 の労働者の募集・採用を行う場合 (資料) 厚生労働省資料をもとに、みずほ総合研究所作成 (3) 例外事由に該当するための条件の厳格化 第三に、これまで募集・採用時の年齢制限を正当化するために最も多く使用されてきた 2 つの事由について、例外事由からの削除や該当要件の厳格化が行われている点が挙げら れる。これまで募集・採用時に年齢制限を行っていた企業の8 割は「体力、視力等が採用

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後の勤務期間を通じ一定水準以上であることが不可欠な業務である場合」または「技能・ ノウハウ等の継承の観点から、労働者の年齢構成を維持回復させる場合」を理由として挙 げていた(図表 4)。 図表 4 年齢制限を正当化する理由別にみた年齢制限のある求人の割合 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ その他 割合 3.1 41.3 6.5 1.8 2.9 0.0 0.2 42.4 1.4 0.2 0.2 (注)1.ハローワークにおける年齢制限のある求人(07 年 4 月新規求人)のうち、個々の理由が占める割合。 2.図表中の番号は以下に対応。 ①長期勤続によるキャリア形成の観点から、新規学卒者等特定の年齢層を対象とする場合 ②労働者の年齢構成を維持回復させるために、特定の年齢層の労働者を対象とする場合 ③定年年齢との関係から雇用期間が短期に限定される場合に、特定の年齢以下の労働者を対象とする場合 ④既に働く他の労働者の賃金額に変更を生じさせることになる場合に、特定の年齢以下の労働者を対象とする場合 ⑤商品やサービスの特性により顧客等との関係から業務を円滑に遂行する必要から、特定の年齢層を対象とする場合 ⑥芸術・芸能の分野における表現の真実性等を確保するために、特定の年齢層の労働者を対象とする場合 ⑦労働災害の防止の観点から特に考慮する必要がある業務につき、特定の年齢層の労働者を対象とする場合 ⑧体力、視力等が勤務期間を通じ一定水準以上であることが不可欠の業務について、特定の年齢以下を対象とする場合 ⑨行政の施策を踏まえて中高年齢者の募集及び採用を行う場合 ⑩労働基準法等法令の規定により年齢制限が設けられている場合 (資料)厚生労働省「募集・採用時における年齢制限禁止の義務化について」 厚生労働省令によると、前者は業務内容と必要な能力等を明記することで事足りるとし て例外事由から削除されることになった16。一方、後者は例外事由として残されたが、「特 定の年齢層が相当程度少ないとして厚生労働大臣が定める条件」が具体的に定められ、主 観的な理由からこれを用いることが出来なくなった(図表 5) 17。具体的には、労働者の年 齢構成の維持・回復のために年齢制限を設けようとする企業は、まず、「特定の職種」に 従事する労働者の年齢について、30~49 歳までの範囲内で、5~10 歳までの任意の幅で一 定の範囲(以下、「特定の年齢層」という)を特定しなければならない。「特定の職種」 としては、技能・ノウハウの継承が必要となる具体的な職種を指し、厚生労働省の「職業 分類」における小分類または細分類、総務省「職業分類」の小分類を参考にすることが求 められる。その上で、その「特定の年齢層」に含まれる労働者の数が、その範囲と同じ幅 で上下に設定した年齢層の労働者数に対し、それぞれ2 分の1以下である場合に、ようや くこの条件を満たすことが出来る。 これらを考慮すると募集・採用時に年齢制限を設ける余地は、07 年 10 月 1 日以降、そ 16 以下の記述は厚生労働省資料による。 17 当初厚生労働省が示した案では、「相当程度少ない」の判断にあたっては企業単位で判断することの みが認められていたが、エリア限定の社員が増えている現状を鑑み、人事管理制度上、事業所単位で 採用などの雇用管理を行っている場合には、事業所単位で判断することが認められることとなった。

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10 れまでよりも大幅に縮小するということができる。とりわけ、ハローワークにおける年齢 不問企業の割合や45 歳以上の有効求人倍率は、07 年 10 月 1 日以降、明確に改善するこ とが見込まれる。 図表 5 特定の年齢層が相当程度少ないとして厚生労働大臣が定める条件 特定の職種に従事する労働者(人事管理制度に照らし必要と認められるときは、一部の事業所 において雇用する特定の職種に従事する労働者)の年齢について、30~49 歳までの範囲内で、5 ~10 歳までの任意の幅で一定の範囲(以下、「特定の年齢層」)を特定した場合で、その特定範 囲の年齢層の労働者数が、その特定の年齢層の幅と同じ幅でその両側に設定したそれぞれの範 囲の労働者数のそれぞれ 2 分の1以下であること ○A 社の電気・電子技術者として 30~39 歳の方を募集(A 者の電気・電子技術者は、20~29 歳 が 200 人、30~39 歳が 80 人、40~49 歳が 300 人 ×B 社の電気・電子技術者として 25~34 歳の方を募集 ・・・30 歳から 49 歳の範囲に入っていないので不可 ×C 社の電気・電子技術者として 35~49 歳の方を募集 ・・・年齢幅が 5~10 歳を超えているので不可 ×D 社の電気・電子技術者として 30~39 歳の方を募集(D 社の電気・電子技術者は、20~29 歳 が 30 人、30~39 歳が 15 人、40~49 歳が 30 人) ・・・上下の年齢と比較して 1/2 未満となっていないため不可 (資料)厚生労働省資料をもとにみずほ総合研究所作成 特定の職種に従事する労働者 特定の年齢層(5~10 歳、任意) 同左 同左 30~49 歳 1/2 以下 1/2 以下

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5. 募集・採用に係る年齢制限禁止の実効性 これまで見てきたように、今回の雇用対策法の改正には年齢にかかわらない雇用機会の 確立に向けて評価すべき内容が盛り込まれている。それでは、今回の募集・採用に係る年 齢差別禁止の義務化は、その政策目的からみて、十分フィージビリティ(実現可能性)が 高いものとなったといえるのだろうか。結論から先に述べると、今回の措置の実効性につ いては慎重にみるべきであるように思われる。繰り返し述べてきたように、わが国では年 齢に基づく雇用慣行が広く定着している。このため入口について年齢制限を禁止しても、 それによって企業がフリーターや子育て後の女性、高年齢者の採用を行うインセンティブ が直接高まる訳ではないという問題がある。さらに、外部労働市場にいる労働者にとって、 面接段階で年齢によるスクリーニングがあったかどうかは見え難く、それ故に問題が顕在 化しにくいのが実情である。こうした点を総合すると、募集・採用に係る年齢制限禁止の 義務化それのみでは、企業が年齢によらない採用を大きく拡大するとは考え難い。 今回、募集・採用に係る年齢差別禁止が義務化された目的を改めて確認すると、第2 章 で述べたように、新卒一括採用、企業内職業訓練による能力開発、年功型処遇、長期雇用 といった日本型の雇用システムに乗り込めなかったフリーターや、一旦このシステムから 離脱した女性の活用を進めることにあった。そもそも、企業がフリーターや子育て後の女 性の活用に二の足を踏む背景を振り返ると、募集・採用時の年齢制限は企業の低い採用意 欲を反映しているに過ぎず、より根本的にはフリーターに対する定着率や能力形成に対す る懸念、子育て後の女性に対する労働条件面でのミスマッチや離職後の職業能力低下への 不安がある。企業へのアンケート調査では、フリーター経験を評価しないと回答した3 割 の企業のうち、「根気がなくいつ辞めるかわからない」ことを挙げる企業が全体の71%を 占めた。また、「年齢相応の技能・知識がないこと」や、「職業に対する意識などの教育 が必要であること」を挙げる企業もそれぞれ51%、43%を占めた(内閣府(2006))。また、 子育てが一段落した女性についてのアンケート調査では、これから働こうとする女性の 6 割が「自分の希望(職種や勤務時間等)にあった働き口がみつからないこと」を、また 3 割が「小さな子どもがいることで採用してもらえないこと」を不安に思っているほか、「ブ ランクがあるためにスムーズに職場の環境になじめないこと」や「自分の技術や知識が役 に立たないこと」など、仕事を離れていることによる障害や不安感を指摘する声も目立っ た(図表 6)。これは子育て後の女性に対するアンケートではあるものの、ある程度企業側の ニーズとのミスマッチを反映した不安であると考えられる。 仮に企業の立場からみたフリーターの姿が上記のようである場合、実際の意欲や能力に かかわらず、企業にとってフリーターの採用は、社会人としての基本的な教育、年齢に相 応しい技能・知識の形成などの職業訓練に要するコストが大きい一方、定着率に疑問があ るため、そのコストを回収できる可能性が低い存在となってしまう。また、子育て後の女 性については、いつまでたっても企業側の働き方のニーズに合わない存在として、採用に 結びつき難い状態が続いてしまう。

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12 図表 6 子育て中の女性の再就職に向けた不安・障害 (注)不安・障害の内容の詳細は以下のとおり。 「ブランク」:ブランクがあるために、スムーズに職場の環境になじめないのではないか 「技能・知識の陳腐化」:自分が持っている技術や知識が役に立たないのではないか 「子どもの預け先」:子どもの預け先がすぐにみつからないのではないか 「企業との労働条件のミスマッチ」:自分の希望(職種、勤務時間など)に合った働き口がみつか らないのではないか 「再就職の費用」:再就職をするための費用(ベビーシッター代・講習代など)がかかりすぎる のではないか 「家族の同意や協力」:家族の同意や協力がなかなか得られないのではないか 「小さい子どもがいること」:小さい子どもがいることで、採用してもらえないのではないか (資料)千葉県「女性の再就職支援 1 万人ネット調査」、2006 年 したがって、募集・採用時の年齢制限禁止の実効性を高めていくためには、この措置の運 用を確保するための指導や助言を行っていくことはもちろん、より根本的にはフリーター や子育て後の女性の採用にかかる企業の懸念や不安を解消していくことが必要となる。具 体的には、国や地方による職業能力開発を推進するとともに、採用した元フリーターや子 育て後の女性に対して企業が行う能力開発へ支援を行うことで、能力開発にかかわる企業 のコストを軽減していくことが必要であると考えられる。さらには、仕事と育児を両立し うる働き方を整備した企業への支援、企業の意識改革の推進など、フリーターや子育て後 の女性に対する企業の採用意欲を高める方策を強化していくことも重要であろう。 20 14 19 62 5 5 32 15 2 0 10 20 30 40 50 60 70 ブ ラ ン ク 技 能 ・ 知 識 の 陳 腐 化 子 ど も の 預 け 先 企 業 と の 労 働 条 件 の ミ ス マ ッ チ 再 就 職 の 費 用 家 族 の 同 意 や 協 力 小 さ い 子 ど も が い る こ と そ の 他 不 安 な し (%)

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これに関し、すでに国はフリーターの安定的な就業や子育て後の女性の再就職に向けた 支援を順次強化してきている。04 年には若者の職業能力の形成を目指す「日本版デュアル システム(実務・教育連動型人材育成システム)」18、若者向けに情報提供やカウンセリ ング、職業紹介を行うサービスセンター(通称「ジョブカフェ」)、企業が求める基礎的 な職能について国が証明書を発行する「若年者就職基礎能力支援事業」を導入・開始した ほか、翌 05 年にはフリーターや学卒未就職者を短期間受け入れる企業への支援事業(若 年者トライアル雇用事業)や日本版デュアルシステムの拡充、ハローワークにおけるフリ ーター常用雇用化のための専門窓口の設置(フリーター支援担当)などを行った。また、 05 年には子育てをしながら就職を希望する女性が子供連れで来所し、就職支援を受けられ るマザーズハローワークの設立も行われている。 さらに、国は 07 年 6 月に公表した「経済財政改革の基本方針 2007(骨太の方針)」で示 した「成長力底上げ戦略」において、更なる支援策の強化を行う方針を示した。具体的に は、フリーターや子育て後の女性の就職・再就職を支援する「ジョブ・カード制度」の創 設を打ち上げたほか1908 年度には小学校低学年の子を養育する労働者向けに短時間勤務 制度を導入した事業主に対する助成措置の創設、中小企業における短時間勤務制度の導 入・利用に対する重点的な支援、マザーズハローワークの事業拠点の拡充や機能拡充(独自 求人の確保、保育所入所の取次ぎ、出張相談等)などを行う方針である(図表 7)。 もちろん、ジョブ・カード制度や企業への助成制度など、今後予定されている支援策の成 果を現時点で評価することはできない。しかし、これらの一見時間のかかる取り組みが、 募集・採用時の年齢制限禁止の義務化が本当に効果を発揮するための重要な条件となるこ とは間違いない。そのためには、これらの取り組みが産業界のニーズに合ったものとなる よう、企業との連携による制度構築を進めるほか、効果や制度のあり方について、企業を 巻き込んだ評価・見直しの仕組みを導入していくことが求められる。 18 同システムは、企業における実習訓練と教育訓練期間の座学を並行的に実施し、若年者の職業人とし ての効率的な育成を目指す仕組み。 19 この制度は、フリーター等職業能力形成機会に恵まれない者に対し、職業能力形成プログラム(企業 における実習と座学を組み合わせた訓練)を提供し、訓練修了者の評価結果や職務経験等の情報をジ ョブ・カードとして取りまとめ、求職活動などに活用することで、求職者と求人企業のマッチングを図 る制度である。

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14 図表7 08 年度に検討されているフリーター、子育て後の女性の就業支援策(抜粋) ●「職業能力形成システム」(通称『ジョブ・カード制度』)の構築 ・・・中央及び地域におけるジョブ・カードセンターの設置、広報・啓発及び活用促進事業 ・・・産業界・企業に受け入れられる実践的な訓練・職業能力評価のための基準づくり ・・・職業能力形成プログラムへの参加者の誘導とキャリア・コンサルティング ・・・実践的な訓練・職業能力評価制度への参加者・参加企業等に対する支援(実習と座学 とを組み合わせた新たな有期実習型訓練の創設、訓練や能力評価等に取り組む事業主へ の助成措置等) ・・・「実務・教育連結型人材育成システム」等の拡充など ●若者の雇用・生活の安定と働く意欲の向上 ・・・年長フリーターに対する常用就職支援、職業能力開発機会の充実、若者の応募機会の 拡大等にかかる周知、広報、相談機会の強化など ●仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)関連 ・・・ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた社会的気運の醸成(業界トップクラス企業 による先進的モデル事業の展開等) ・・・ワーク・ライフ・バランスの実現のための企業の取組の促進 ・・・仕事と家庭の両立が図れる環境整備の推進(短時間勤務制度を導入した事業主に対す る助成措置の創設、短時間勤務にかかる雇用管理のノウハウ習得に向けた取組への助 成、事業所内託児施設の設置・運営に対する支援、マザーズハローワーク事業の拠点拡 充・機能強化)など (注)厚生労働省平成 20 年度予算要求のうち、フリーターの就業、子育て後の女性の再就職に関連す る事項のうち主要なものを抜粋。 (資料)厚生労働省「平成 20 年度厚生労働省予算概算要求の主要事項」

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【参考文献】

岩田克彦(2001)「日本における高齢者雇用就業と政策展開」(2001 年 11 月 29 日 JIL 国際ワークショップ) 北浦正行(2003)「中途採用時の年齢制限緩和策について」(労働政策研究・研修機構『日 本労働研究雑誌』第521 号) 厚生労働省「今後の高齢者雇用対策に関する研究会」(2003)『今後の高齢者雇用対策に関 する研究会報告書』 ―――――(2001)『年齢にかかわりなく均等な機会を』 総合規制改革会議(2001) 「「重点 6 分野における中間取りまとめ」 内閣府(2006)『平成 18 年国民生活白書』 ―――――「雇用における年齢差別禁止に関する研究会」(2001)『雇用における年齢差別 禁止に関する研究会(中間報告)』 濱口桂一郎(2004)「高年齢者雇用政策における内部労働市場と外部労働市場」(労働開発研 究会『季刊労働法』第204 号) 労働政策審議会(2004)『今後の高齢者雇用対策について』

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