動的相互依存モデルの「空き家管理条例」への適用
著者 外川 伸一, 安藤 克美
雑誌名 山梨学院大学法学論集
巻 72・73
号 72・73
ページ 265‑292
発行年 2014‑03‑10
URL http://id.nii.ac.jp/1188/00002959/
動的相互依存モデルの「空き家管理条例」への適用 外川伸一・安藤克美
はじめに
わが国の人口は、2004年に億2784万人でピークに達した後、2005年か ら減少に転じた。わが国は既に人口減少社会に突入している。国立社会保 障・人口問題研究所が2013年月27日に公表した「日本の地域別将来推計 人口」(2013年月推計)によると、その中位推計
)に依拠した場合、わ
図ઃ 山梨県の人口推移 出典:国立社会保障・人口問題研究所推計を基に筆者作成
が国の2040年の人口は2010年と比較して約2000万人減少し、都道府県別で は25道府県で割以上の減少となる。山梨県でも20万人近く減少し、県の 総人口は70万人を割り込み66万人程度となる(図)。こうした人口減少 と少子高齢化、さらには単身世帯の増加は、都市と比べ地方ほど顕著であ り地域間格差の拡大や地方における深刻な活力低下が懸念されている。
(ઃ) 人口減少と地方の衰退
増田他(2013)はこうした人口減少にはつの段階があると指摘してい る。それは、2040年までの「老年人口増加、生産年齢・年少人口減少」の 第一段階、2040年から2060年までの「老年人口維持・微減、生産年齢・年
2010 20 0
20 40 60 80 100100
131
117
80 68
54 54 47 47 64
0〜14歳
(大都市部)
(他の地域)
(地方の中核市等)
【第1段階】
老年人口増加 生産・年少人口減少
15〜64歳 65歳以上
総数
84 71
45 35 31 120
140
30 40 50 60 70 80 90
【第2段階】
老年人口維持・微減
生産・年少人口減少 【第3段階】
老年人口減少 生産・年少人口減少
図 将来人口動向:「અつの減少段階」
出典:増田他(2013:21)
(備考)
.国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年月推計)」
より作成。
.2010年の人口を100とし、各年の人口を指数化した。
少人口減少」の第二段階、2060年から2090年までの「老年人口減少、生産 年齢・年少人口減少」の第三段階である。わが国の人口はこうしたつの 段階を経て着実に減少していく傾向にあると予測されている(図)。
これを地域別に見ると、大都市や県庁所在地等の中核都市は第一段階に あるのに対し、地方の多くの地域はそれより30年ないし50年速いスピード で人口減少が進んでおり、既に第二段階、さらには第三段階に差し掛かっ ているという(図)。
さらに、増田他は、大都市へ多くの若者が流入し、しかも大都市での出 生率が低くとどまっていることが人口減少の要因であるとして、若年女性 の減少スピードが速い地域は将来的に「消滅」するとまで述べている。
2010年から2040年に「20〜39歳の女性人口」が割以上減少する市町村は 20.7%であり、そのうちの 割以上が人口万人未満の小規模自治体であ ると指摘している(図)。
() 空き家の増加
国土交通省の「住宅土地統計調査」(2008)によると、人口減少等を要 因とする全国の空き家戸数は757万戸であり、空き家率は13.1%に及び、
年々増加傾向にある(表、図)。こうした空き家の存在は、景観上は もちろんのこと、防災・防犯上の観点から極めて深刻な問題であるととも に、地域の活力の低下を招来している。
山梨県内の空き家戸数は80,900戸で、これらは基本的に住宅市場での取 引対象とはならないため流動化が進んでおらず、空き家率は20.3%で全国 ワーストワンとなっている。
この調査では空き家を①売却用、②賃貸用、③別荘・その他の二次的住
宅、④その他の空き家の類型に区分している。このうち、①、②は新
築・中古を問わず、売買・賃貸のために空き家になっている住宅である。
2010 0
20 40 60 80 100 120 140 160 180
2040 100
100 100
72 72 72 80 80 80 94 94 94 153 153 153
2010 0
20 40 60 80 100 120 140 160 180
2040 100
100 100
64 64 64 72 72 72 85 85 85 136 136 136
2010 0
20 40 60 80 100 120 140 160 180
2040 100
100 100
56 56 56616161727272
102 102 102
2010 0
20 40 60 80 100 120 140 160 180
2040 100
100 100
47 47 47515151
78 78 78 82 82 82 東京都区部
○地域によって、将来人口動向の「減少段階」は大きく異なっている。
○東京都区部や中核市などの都市部は「第1段階」にあるのに対し、人口5万人 以下の地方都市は「第2段階」、うち過疎地域は「第2段階」に突入している。
中核市、特例市
人口5万人以下の市町村
0〜14歳 15〜64歳 65歳以上 総数
過疎市町村
図અ 地域によって異なる将来人口動向 出典:増田他(2013:21)
(備考)
.国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成25年月推計)」
より作成。
.各カテゴリーごとに総計を求め、2010年の人口を100とし、2040年の人口を指数化 した。
20〜39歳女性人口の変化率でみた 市町村数
20〜39歳女性人口が5割以上減少する 市町村の人口規模別にみた内訳 3割未満
減少 322自治体
(17.9%)
3割未満 減少 322自治体
(17.9%)
3割未満 減少 322自治体
(17.9%)
5割以上減少 373自治体
(20.7%)
5割以上減少 373自治体
(20.7%)
5割以上減少 373自治体
(20.7%)
維持・増加 7自治体(0.4%)
維持・増加 7自治体(0.4%)
維持・増加 7自治体(0.4%)
1万人以上 5万人未満 109自治体
(全体の6.1%)
1万人以上 5万人未満 109自治体
(全体の6.1%)
1万人以上 5万人未満 109自治体
(全体の6.1%)
1万人未満 243自治体
(全体の13.5%)
1万人未満 243自治体
(全体の13.5%)
1万人未満 243自治体
(全体の13.5%)
5万人以上10万人未満 11自治体(全体の0.6%)
5万人以上10万人未満 11自治体(全体の0.6%)
5万人以上10万人未満 11自治体(全体の0.6%)
10万人以上 10万人以上 10万人以上 10自治体(全体の0.6%)
10自治体(全体の0.6%)
10自治体(全体の0.6%)
3割以上 5割未満減少 1097自治体
(61.0%)
3割以上 5割未満減少 1097自治体
(61.0%)
3割以上 5割未満減少 1097自治体
(61.0%)
図આ 2010年から2040年にかけて「20〜39歳の女性人口」がઇ割以上減少 する市町村
出典:増田他(2013:24)
表ઃ 空き家の状況
出典:住宅土地統計調査を基に筆者作成
4,126,800 6,593,300
空き家総数(B)
3,674,900 賃貸用の住宅
348,800 7,567,900 53,890,900
住宅総数(A)
302,600
57,586,000 売却用の住宅
2008年 2003年
戸数、%
4.7 3.9
その他の住宅空き家率(C/ A)
13.1 12.2
空き家率(B/ A)
2,681,100 2,117,600
その他の住宅(C)
411,200 498,200
二次的住宅
(備考)
.国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成25年月推計)」
より作成。
.数値は、12政令市は区をひとつの自治体としてみており、福島県の自治体を含まな い。
③のうち、別荘は週末や休暇時に避暑・避 寒・保養などの目的で使用され、日常は居 住者のいない住宅である。③のうちその他 は、日常居住している住宅とは別に、残業 等で帰宅時間が遅くなったときに寝泊りす るなど、一時的に居住される住宅である。
④は上記以外の居住者がいない住宅で、例
えば、転勤・入院などで居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替え などで取り壊す予定の住宅などである。
都道府県別にみると、全体の空き家率の位は先述のように山梨県の 20.3%であり、全国平均の13.1%を大きく上回っている。以下、長野県 19.3%、和歌山県17.9%と続く(表)。山梨県については、空き家の大 半を占める売却用・賃貸用の双方が高くなっており(表)、このことが 全体の空き家率の高さと結びついている。表にはないが、山梨県のその他
1958 63 0
1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000
(万戸)
総住宅数(左目盛)
総世帯数(左目盛)
空き家率(右目盛)
(%)
68 73 78 83 88 93 98 2003 08 0 2 4 6 8 10 12 14
(年)
図ઇ 総住宅数、総世帯数、空き家率の推移 出典:米山(2012:15)
表 都道府県別空き家率
出典:住宅土地統計調査を基に 筆者作成
16.6 長野県
高知県
17.9 19.3 山梨県
和歌山県
20.3
空き家率(%)
16.0 香川県
の空き家率については6.4%で、全国平均の4.7%を上回っており、14位と なっている。なお、賃貸用・売却用として市場での取引対象となっている 限りは、所有者によって最低限の物件管理が行われていると考えられるの で、外部不経済(external diseconomy)(空き家の存在によって市場を経 由せずに外部にもたらされる不効用)が発生する可能性は少ない。その他 の空き家については所有者が長期不在のため適切に管理されず、誰も使う 予定のないまま放置されている場合は、外部不経済が発生する可能性が高 くなる。
空き家については、その損傷の程度や所有者の意向、あるいは周辺環境 への影響に応じて、「利活用」と「除却」(解体撤去等)の二方向での対策 が必要である。本稿ではこのうち後者に係る条例を中心に見ていく。
空き家の除却については、2012年頃から空き家の管理について規定する 条例(以下、原則として「空き家管理条例」という。)を制定する市区町 村が急増しており、国土交通省が把握したところでは、2013年月日時 点で制定済みの条例は、202件となっている(図 )
)。
市区町村が制定した空き家管理条例を都道府県ごとの制定率から見たも のが図である。空き家の増加という全国的趨勢とは異なり、条例を制定 している市区町村が全くない都道府県が山梨県をはじめ府県ある。一方、
佐賀県では制定率が 割を超え、都道府県間で大きなばらつきがあること
表અ 売却用・賃貸用・その他空き家率出典:H20住宅土地統計調査を基に筆者作成
29.1 東京都
和歌山県 賃貸用住宅空き家率(%)
9.0 大阪府
9.1
その他空き家率(%) 売却用住宅空き家率(%)
1.6 千葉県
8.8 鹿児島県
26.7 長野県
1.6 山梨県
2.0 山梨県 27.0 島根県 2.1 福井県
7.9 徳島県
25.5 青森県
1.6 奈良県
8.2 高知県
26.1 茨城県
が分かる(図)。
安藤・外川(2012)では世界文化遺産登録推進事業について、外川・安 藤(2013)では中心市街地活性化基本計画策定事業について、それぞれ政 策過程論における「動的相互依存モデル」をもとにその分析を試みたが、
本稿では、同様の観点から空き家管理条例の、特に相互参照過程について の分析を試みる。以下、第節では、空き家管理条例の構成等について簡 単に述べる。続く第節では、分析の枠組みとなる動的相互依存モデルの 概要と当該モデルを構成するつのメカニズムについて述べる。第節で は、次の節との連関を考慮し相互参照について分析したつの先行研究
(景観条例、議会基本条例)の概要にふれる。第節では、動的相互依存 モデルを空き家管理条例に適用し、条例制定過程における相互参照の動態 を明らかにする。分析手法としてはクラスター分析(cluster analysis)を 用いる。最後の第 節では、以上の分析の集約を行う。
㪇 㪈㪇 㪉㪇 㪊㪇 㪋㪇 㪌㪇 㪍㪇 㪎㪇 㪏㪇 㪐㪇
ᐕ ઙ
䌾㪈㪐㪎㪇䌾㪈㪐㪏㪇䌾㪈㪐㪐㪇䌾㪉㪇㪇㪇 㪉㪇㪇㪈 㪉㪇㪇㪉 㪉㪇㪇㪊 㪉㪇㪇㪋 㪉㪇㪇㪌 㪉㪇㪇㪍 㪉㪇㪇㪎 㪉㪇㪇㪏 㪉㪇㪇㪐 㪉㪇㪈㪇 㪉㪇㪈㪈 㪉㪇㪈㪉 㪉㪇㪈㪊 図ઈ 年度別空き家管理条例制定数
出典:国土交通省資料を基に筆者作成
空き家管理条例
先述のとおり、空き家管理条例の制定はこの〜年で著しい増加傾向 にある。北村によると、こうした傾向に大きな影響を与えたのは2010年 月制定の埼玉県所沢市条例である。この条例は、空き家管理条例制定「ブ ームの火付け役」といわれており、その後に制定された同種の条例のつ のモデルとされている(北村 2012:34)。所沢市条例の構成は、条:目 的、条:定義、条:空き家等の適正管理、条:情報提供、条:実 態調査、 条:助言・指導及び勧告、条:命令、条:公表、条:警 察その他関係機関との連携、10条:その他となっている。
所沢市条例にない規定を持ち、かつ他の市区町村に影響を与えた条例を 北村(2012:36-41)に従って整理すると、例えば、東京都足立区条例は、
㪇 㪌 㪈㪇 㪈㪌 㪉㪇 㪉㪌
ㇺᐭ⋵ᢙ
ቯ₸䋨䋦䋩 㪇
䌾㪈㪇 䌾㪉㪇 䌾㪊㪇 䌾㪋㪇 䌾㪌㪇 䌾㪍㪇 䌾㪎㪇 䌾㪏㪇 䌾㪐㪇 䌾㪈㪇㪇
図ઉ 都道府県別の市区町村空き家管理条例制定率 出典:国土交通省資料を基に筆者作成
審議会に関する規定がその多くを占めている。条例の対象については、所 沢市条例では「常時無人状態にあるもの」であり、解体に対して助成がな いのに対し、足立区条例では「老朽家屋」であり、所有者が行う解体に対 して工事費の一部が助成される。また、足立区条例では所有者自らが危険 な状態を解消できないときには、区長が最低限度の措置を講じる「緊急安 全措置」も規定されている。しかし、行政による強制力を持った「命令」
は規定されておらず、すべての措置は、権利者の同意を調達した上で行わ れる。この「緊急安全措置」について北村は、「その後の条例に伝播して いる」と指摘している(北村 2013:59)。このほか秋田県東成瀬村条例で は、「寄付申出」制度が規定されている。寄付を受けることができる要件 としては、周辺に危険を及ぼしている、公共用地としての利用価値がある などである。福岡県朝倉市条例では、家屋が老朽危険空き家になる前に
「解体撤去する義務」を規定している。なお、秋田県大仙市条例には「代 執行」の規定があり、これに基づき2012年月、空き家に対し実際に「代 執行」が行使されたことで注目を集めた。
動的相互依存モデル
政策移転(policy transfer)や政策波及(policy diffusion)、教訓導出
(lesson-drawing)の研究は、もともと比較政治学の分野において展開さ れてきた。これらの研究を応用し、わが国の自治体の政策立案・政策決定 過程における経時的な相互依存行動を「動的相互依存モデル」として最初 に提示したのは、伊藤(2002)であった。その伊藤によると、そうした相 互依存行動には「内生条件への対応」「相互参照」「横並び競争」のつの メカニズムが大きく作用するという(伊藤2002;2006)。これらについて、
伊藤(2002)に倣って述べると以下のとおりである。
内生条件は、自治体が管轄する領域の社会経済要因及び政治要因に大別 される。社会経済要因とは、自治体の政策立案を規定する社会的・経済的 環境の状態を示すものである。例えば、都市化が進んだ自治体では開発に 伴う環境破壊をめぐる紛争があり、環境保全政策が採用されやすいような 場合である。一方、政治要因とは、首長が強力なリーダーシップの下に政 策を実現するとか、逆に議会に首長の賛成派が少ない場合には首長の政策 が採用されにくいといった政治勢力の選好(preference)を示す要因であ る。自治体は政策立案・政策決定の過程で、こうした内政条件への対応を 迫られることになる。
次に、相互参照とは、自治体が政策立案や政策決定に際して、他の自治 体の動向を参考にする行動をいう。自治体の政策立案者・政策決定者は不 確実性の高い環境に向き合わなければならない。このため、他の自治体が 同一政策領域において新政策を採用するか否かを参照した上で、自らもそ の政策の採用に向けて動き出すという行動をとる。具体的には、自治体が 当該政策に係る条例を制定しようとする場合や予算措置を行おうとする場 合、当該政策を既に実施して成果を上げている自治体の取り組み内容を参 照することを意味する。その方法は、ウェブで関連情報を得た上で、不明 な部分を電話で照会したり、あるいは直接訪問して担当者の聞き取り調査 を行うという形でなされる
)。
最後の横並び競争とは、政策を採用すれば便益が見込まれる状況のもと で、自治体が他の自治体に先んじて政策の採用に乗り出す行動をいう。横 並び競争はある政策が自治体のスタンダード(標準装備)とみなされるよ うな政策の「規範化」や国の「介入」(法制化等)によりもたらされる。
このうちの相互参照メカニズムに関し、そうした行為が行われる理由に
ついて伊藤(2002:21)は、政策決定者は不確実性の高い環境に向き合わ
なければならず、こうした環境のもとでは、他の自治体の動向は意思決定
を行う際の拠り所になると述べている。しかしながら、相互参照は、伊藤 のいうような政策採用に伴う不確実性を低減するだけでなく、新たな政策 を立案する自治体にとっての「効率的行動」(efficient behavior)又は
「合理的行動」(rational behavior)とも捉えることができる。また、集合 的に見ると、同一政策分野の関係者間の政策立案コスト(policy-making cost)の総和を最小化するという側面もある。こうした相互参照先にはど のような自治体が選ばれるであろうか。本稿では空き家管理条例を制定し た市区町村についてこれを考察する
)。
相互参照に係る先行研究
(ઃ) 景観条例
伊藤(2006:183,190-191)では、政策策定時における相互参照先につい て、景観アンケート及びモデル自治体調査
)の結果をもとに、つの傾向 を抽出している。点目は神戸市、金沢市など早期に条例を制定した市区 町村が参照先として上位になっている点である。点目は近隣、特に同一 県の市区町村を参照する傾向がある点である。点目は市は市を、町村は 町村を参照先として選ぶ傾向が大きいなど自治制度上「同格」の自治体が 参照される点を挙げている。
さらに、伊藤は条例の特徴を計量的に把握し、相互参照が条例内容の類 似性をもたらすことを視覚的に理解するため、クラスター分析を採用して いる(伊藤2006:64,211-216)。制定年が1989年まで(一部1990年を含む)
の61条例を対象とし、データとしては、景観形成区域の指定や行為規制、
協定などに係る規定の有無を用いている。その結果は大きくつの群に分
類される。第Ⅰ群は歴史的景観条例を中心としたクラスター、第Ⅱ群は都
市景観条例のクラスター、第Ⅲ群はその他クラスター(県条例、風致・自 然景観)である。考察の結果、各クラスターが、それぞれの自治体が制定 した条例の目的とかなりの程度関連することを挙げている。歴史的景観保 全と都市景観形成という目的の違いに対応して、―政策手段が大きく異な るわけではないが―後から条例を制定する市区町村が、目的に応じて何ら かの選択を行ったことを示している。また、初期の条例はすべて第Ⅰ群に 含まれるが、12番目に制定された神戸市条例は他の群になる。周知のよう に神戸市は都市景観の形成を目的とした条例に先鞭をつけ、多くの新しい 制度を盛り込んだのであるが、まさに神戸市条例によって景観条例の多様 化が始まった経過が分析結果に表れたと指摘している。
その他、地理的に近い自治体が樹状図(デンドログラム)の近い位置を 占めることはあるが、クラスターは形成されておらず、地理的に近接する 市区町村の条例が類似しているという訳ではない。また、県条例に関する クラスターが形成されたことから、制度的に同格の自治体の条例の内容は 類似する傾向が認められるとしている。
() 議会基本条例
増田・深澤(2010)では、54市町村の議会基本条例の条文等についてク ラスター分析を行った結果、多くの市町村の議会基本条例の構成と条文数 が北海道栗山町の初期モデル(栗山町では後に条例を改正している)に類 似しており、栗山町の議会基本条例の「モデル規範性」が非常に強力であ ることを導出している。また、最初に制定された条例の規範性が高い場合、
その後、長期にわたって参照されると述べている。
具体的な分析方法を見ると、対象は54市町村であり、議会基本条例の条
文数と前文の有無を含む133項目を変数とし、可視化する方法としては樹
状図(デンドログラム)を、結合方法は word 法を用いている。
考察の結果、以下の点を挙げている。全体を11分類したときに、栗山町 と同じクラスターに分類されるのは、当該条例の制定が栗山町議会におけ る条例制定(2006年)から年から年以内の議会である。このことは、
栗山町の初期モデルの影響が制定過程年を経て、年以内に反映された 結果である。栗山町と同時期に制定された議会では、外形的な偏差が大き く、制定順位位までの議会はそれぞれが別個のクラスターに分散してい る。これは栗山町を参考にしながらも様々な制度的工夫をこらした、先行 自治体の独自性を示唆している。一方、同一時期に制定された条例が相互 に似かよっているケースもある。これらのケースでは、栗山町の制定後 年強を経過した時点で条例制定を行っており、すべてが自治制度上同格の
「市」という特徴も持っている。
また、栗山町初期モデルはその後改正され、条例の内容はさらに充実し てきている。このため、初期モデルの規定力は徐々に低下し以降は改正条 例の規定力が高まっている。40番台(2009年以降制定)の議会がクラスタ ー上、かなり分散していることは、普及が進展するにつれ、内容も多様化 していく様子を示唆していると考察を加えている。
動的相互依存モデルの空き家管理条例への適用
以下では、上での先行研究と同様に、クラスター分析を用いることによ り空き家管理条例の内容の類似性を計量的に把握し、それらの相互参照の 動態的特徴について考察する。対象とする条例は、北村(2013)で分析対 象とした64条例をベースに、それ以降に制定された条例のうち、本文が確 認できる147条例である(表)
)。変数は、北村(2012;2013)で採用さ れている「民事的解決との関係」「所有者の適正管理義務」「情報提供」
「実態調査」「立入調査」「助言・指導」「財政的支援」「緊急安全措置」
表આクラスター分析の対象となる空き家管理条例 都道府県 名市町村名
施行 年
有効 活用 条例
老朽 危険 条例
まち
民事代執なか 条前文勧告命令公表罰則行例
的解 決
適正 管情報理提供義務
実態 調立入助言 査調査指導
財政 的支 援
緊急
安全 措置
寄付 申出
関係 機関 協審議個人 会情報力
専門 助言
認定 台帳 作成
市町 責市民標識有効 務責務設置活用
空家 バ緊急ン命令ク
資料 提供 庁内 体制 議会 報告
訴え 提起
財産 管理 人
まち
禁止なか 居行為住
雑草 斡旋
解体 撤去 1北海道室蘭市2013室蘭市空き家等の適正管理に関する条例111111111111 2北海道滝川市2012滝川市空き家等の適正管理に関する条例111111111 3北海道秩父別町2012秩父別町空き家等の適正管理に関する条例111111111111 4北海道雨竜町2013雨竜町空き家等の適正管理に関する条例111111111 5北海道北竜町2012北竜町空き家等の適正管理に関する条例111111111 6北海道苫前町2012苫前町空き家等の適正管理に関する条例111111111 7北海道白老町2012白老町空き家等の適正管理に関する条例1111111111 8青森県青森市2013青森市空き家等の適正管理に関する条例1111111111 9青森県五所川原市2013五所川原市空き家等の適正管理に関する条例111111111111 10青森県むつ市2013むつ市空き家等の適正管理に関する条例11111111 11青森県大間町2013大間町空き家等の適正管理に関する条例1111111111 12秋田県横手市2012横手市空き家等の適正管理に関する条例111111111 13秋田県湯沢市2012湯沢市空き家等の適正管理に関する条例11111111111 14秋田県鹿角市2013鹿角市空き家等の適正管理に関する条例111111111111 15秋田県大仙市2012大仙市空き家等の適正管理に関する条例111111111111 16秋田県小坂町2013小坂町空き家等の適正管理に関する条例111111111111 17秋田県藤里町2013藤里町空き家等の適正管理に関する条例1111111111 18秋田県三種町2012三種町空き家等の適正管理に関する条例11111111111 19秋田県八峰町2012八峰町空き家等の適正管理に関する条例11111111111 20秋田県美郷町2012美郷町空き家等の適正管理に関する条例111111111 21秋田県東成瀬村2012東成瀬村空き家等の適正管理に関する条例1111111111111 22山形県鶴岡市2013鶴岡市空き家等の管理及び活用に関する条例111111111111111 23山形県酒田市2012酒田市空き家等の適正管理に関する条例11111111 24山形県新庄市2013新庄市空き家等の適正管理の促進に関する条例1111111111 25山形県西川町2012西川町空き家等の適正管理に関する条例111111111 26山形県朝日町2013朝日町空き家等の適正管理に関する条例111111111 27山形県大江町2013大江町空き家等の適正管理に関する条例1111111111 28山形県最上町2012最上町空き家等の適正管理に関する条例11111111111 29山形県真室川町2012真室川町空き家等の適正管理に関する条例1111111111 30山形県戸沢村2012戸沢村空き家等の適正管理に関する条例111111111 31山形県庄内町2103庄内町空き家等の適正管理に関する条例11111111 32山形県遊佐町2013遊佐町空き家等の適正管理に関する条例1111111111111 33茨城県常陸太田市2013常陸太田市空き家等の適正管理に関する条例1111111111 34茨城県笠間市2013笠間市空き家等の適正管理に関する条例11111111 35茨城県取手市2013取手市空き家等の適正管理に関する条例111111111 牛久市あき家等の適正管理及び有効活用に関す36茨城県牛久市201211111111111る条例 37茨城県つくば市2013つくば市空き家等適正管理条例11111111111 38茨城県八千代町2013八千代町空き家等の適正管理に関する条例1111111111 39埼玉県さいたま市2013さいたま市空き家等の適正管理に関する条例1111111111 40埼玉県川越市2013川越市空き家等の適正管理に関する条例1111111 41埼玉県所沢市2010所沢市空き家等の適正管理に関する条例11111111 42埼玉県羽生市2012羽生市空き地等の環境保全に関する条例1111 43埼玉県蕨市2013蕨市老朽空き家等の安全管理に関する条例111111111111111 44埼玉県久喜市2013久喜市空き家等の適正管理に関する条例111111111 45埼玉県坂戸市2013坂戸市空き家等の適正管理に関する条例1111111111 46埼玉県日高市2013日高市空き家等の適正管理に関する条例111111111 47埼玉県ふじみ野市2011ふじみ野市空き家等の適正管理に関する条例11111111 48埼玉県川島町2011川島町空き家等の適正管理に関する条例11111111 49埼玉県上里町2012上里町空き家等適正管理条例11111111 50千葉県千葉市2013千葉市空き家等の適正管理に関する条例111111111 51千葉県市川市2013市川市空き家等の適正管理に関する条例1111111111111