御殿場市の文化財保護行政(世界文化遺産編)
著者 勝俣 竜哉
雑誌名 金大考古
巻 61
ページ 13‑15
発行年 2008‑07‑30
URL http://hdl.handle.net/2297/11039
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金大考古 61, 2008 桜井秀雄・長野県の考古学 ―近年の調査・研究動向―・8-13
麓にのみ分布している。私は諏訪神社の「神野(御狩 野)」に関係するものではないかと理解するものである が、今後さらに検討すべき重要な研究課題である。
この他にも県下 10 点目の古代印となる佐久市西近津 遺跡群出土の銅印の発見や千曲市社宮司遺跡出土の 六角木橦の発見など、注目すべき調査・研究は幾多と 認められる。こうした考古学的新知見・新研究成果を 踏まえて、長野県の考古学研究は新たなる一頁をめく りつつあるといえよう。
Figure4 中世陥し穴 小竪穴 135
(原村教委 1998 より引用)
Fgure5 小竪穴 135 における逆茂木痕カッティング状況
(原村教委 1998 より引用)
引用参考文献
佐久考古学会 2007『佐久の遺跡』佐久考古通信 No99・
100 記念号
桜井秀雄 2006「八ヶ岳南麓の中世陥し穴」『金沢大学 考古学紀要 28』金沢大学考古学研究室
桜井秀雄 2008「長野県地方史研究の動向 考古学関係」
『信濃』60 巻 6 号
長野県教育委員会 1973 他『長野県埋蔵文化財発掘調査 要覧』その2・その 3・その 4・その 9・その 17、本稿
で触れた調査件数などの数値はこれによる。
長野県埋蔵文化財センター 2007「弥生時代における国 内最大級の竪穴住居跡の発見」『佐久考古通信 No98』
佐久考古学会
長野県埋蔵文化財センター 2008『みすずかる 15 号』
長野県埋蔵文化財センター 2008『速報写真グラフ 北 信濃 柳沢遺跡の銅戈・銅鐸』信濃毎日新聞社 長野県埋蔵文化財センター 1985 ~ 2008『長野県埋蔵 文化財センター年報 1 ~ 24』
長野市埋蔵文化財センター 2008『所報』No18 原村教育委員会 1998『南平遺跡発掘調査概報』
(e-mail : [email protected])
御殿場市の文化財保護行政
(世界文化遺産編)
勝俣竜哉
はじめに
前回、2006 年の考古学大会で「御殿場市の文化財行政」
と銘打って発表させていただいてから 2 年が経過した。
庁内において「社教の文化財担当者」として広く認識 してもらえるようになった結果、「文化財」の範疇から は外れるようなものも含め様々な案件が持ち込まれる ようになった。富士山世界文化遺産登録推進など多分 に「政治」が絡む案件が増えてきたのは大きな変化で ある。
Figure1 御殿場市の位置(カシミール 3D 使用)
Ⅰ 富士山世界文化遺産登録推進 1.経緯
富士山を世界遺産に登録しようという動きは平成4
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金大考古 61, 2008 勝俣竜哉・御殿場市の文化財保護行政(世界文化遺産編)・1-15
年に地元新聞社が中心となった大規模な署名活動に始 まる。当時は「自然遺産」登録を目指し、署名運動か ら始まる運動は衆参両院議長への誓願となり、「自然遺 産」登録を目指した検討が進められてきた。
平成 15 年に環境省・林野庁が共同で学識経験者から なる「世界自然遺産候補地に関する検討会」において 富士山を含む 1 の対象地域について検討された結果、
富士山の登録推進は断念された。理由は以下のような ものであったとのことである。
・オーバーユースにより改変が進んでいる
・,000 m超の単独の成層火山であるが多様な火山タ イプを含んでいない。つまり完全性(重要な関連す る自然要素全てを含むこと)の条件に欠ける
・ゴミ、し尿処理対策等管理体制の確立が必要である
・既に登録されている「キリマンジャロ」「ハワイ火 山」と比較すると見劣りする
2.文化遺産登録への転換
平成 12 年 月、国の文化財保護審議会は世界遺産 条約特別委員会を設置し、文化遺産暫定リスト追加物 件調査について審議した。同年 11 月、世界遺産条約特 別委員会は審議結果を文化財保護委員会に報告し了承 された。了承内容は以下のとおりである。
・「平泉の文化遺産」「紀伊山地の霊場と参詣道」「石 見銀山遺跡」を暫定リストに登載
・今後の調査研究や保護措置などにより将来的に候補 物件を追加するよう検討が必要
「例えば、富士山は、顕著な価値を有する文化的景 観として評価できると考えられるので、今後、多 角的・総合的な調査研究の一層の深化とともに、
その価値を守るための国民の理解と協力が高ま ることを期待し、できるだけ早期に世界遺産に推 薦できるよう強く要望する」
平成 17 年 4 月、「富士山を世界遺産にする国民会議」
が発足し、会長に中曽根康弘元首相、特別顧問に静岡・
山梨両県知事が就任した。同年 7 月、静岡・山梨両県 連名で文部科学省と文化庁に対し、富士山の世界文化 遺産登録に対する要望書を提出した。
同年 月、静岡県庁内に「富士山世界文化遺産登録プ ロジェクトチーム」が設置され、同年 10 月、知事を本 部長とする「静岡県世界文化遺産登録推進本部」が設 置された。
Figure2 富士山 ( 本人撮影 ) 3.文化遺産登録推進体制
(県庁内)
●静岡県世界文化遺産登録推進本部
⇒ 県知事・副知事、県部局長
● 同 幹事会 ⇒ 県関係室長・課長等
(県・市町)
●静岡県世界文化遺産登録推進協議会
⇒ 県知事・教育長、関係市町長・教育長等
● 同 幹事会
⇒ 県関係室長・課長
関係市町企画課長・文化財担当課長等
(静岡・山梨両県)
●富士山世界文化遺産登録推進両県合同会議
⇒ 両県知事・教育長、両県関係市町村長
● 同 連絡会 ⇒ 両県担当課または室職員
4.文化財担当者としての役割
富士山が文化遺産登録を目指すには、「国特別名勝と しての富士山」や「国立公園としての富士山」の範囲 だけでは不十分で、「人間との関わり」を示す信仰や眺 望、土地利用など周辺域に存在する資産を含んだ範囲 設定が必要不可欠である。平成 17 年度以降、市町の文 化財担当者として真っ先に取り組んだのは、県世界遺 産推進室が進める文化遺産としての富士山の価値を証 明するための「構成資産候補」抽出への「協力」であっ た。
(1) 現在までの取り組み
①構成資産候補のリストアップ
②構成資産候補の検討(追加資料の作成、学術委員会 の現地視察対応等)
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③構成資産候補のうち国指定文化財ではない文化財の 国指定への準備
④構成資産候補のうち既に国指定文化財になっている 文化財に関して保存管理計画が未整備のものについ て保存管理計画策定
※平成 19 年度の途中まで、③に関する業務は市町の文 化財行政の範疇として各市町の文化財担当課が実施す ることを前提に県世界遺産推進室は動いていたが、平 成 23 年度の世界文化遺産登録を目指すという目標を達 成するため、平成 19 年度末に県世界遺産推進室は「県 直営による構成資産の保存管理計画策定」という方策 を打ち出した。
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( 今後の取り組み
富士山は日本の象徴と言われるものであり、文化庁 としても富士山の世界文化遺産推薦は「日本国の威信」
を賭けたものと考え中途半端な状態でユネスコに推薦 することはあり得ない。静岡・山梨両県知事は「平成 23 年度の世界文化遺産登録」を公言しており両県の 富士山世界文化遺産登録推進担当部署はそのタイムリ ミットに向けて作業を進めている。御殿場市としては 静岡県側の関係市町として県世界遺産推進室に協力し て作業を進めているが、限られた時間で山積する難題 をクリアーするのは容易なことではない。
●平成 23 年度世界文化遺産登録を目指すための条件
・平成 21 年度中に全ての作業を終え外務省を通じて ユネスコへ推薦されること
・平成 22 年度には国際記念物遺跡会議(ICOMOS)の 現地調査を受けること
・平成 23 年度の世界遺産委員会において世界遺産一 覧表へ「記載」決議されること
(個人的見解)
県知事の肝煎りで進められてきた富士山の世界文化 遺産登録であるが、各市町に今後課せられる難題も少 なくはなく、関係市町が一丸となって世界文化遺産登 録に向けて全力を挙げているとは言い難い。
富士山が世界文化遺産に登録されるための条件は、対 象となる遺産が日本の国内法(主に文化財保護法)に よって十分に保護される体制が整うことが必要条件で ある。特別名勝「富士山」や山麓に存在する無数の文 化財が国指定文化財として保護され、限りなく無秩序
に進む市街地の開発が景観条例によって制限され富士 山麓の景観が良好な状態になることは大いに歓迎すべ きことである。しかし、既に ICOMOS が 5 月に平泉に対 して登録延期勧告を行ったとおり、昨今の世界文化遺 産登録のハードルは高いものとなっており、富士山に 関しても富士山本体と山麓に分布する無数の構成資産 を網羅する広大な緩衝地帯(バッファゾーン)の設定 が不可欠となりそうな状況である。このような状況下、
世界文化遺産登録の必須ツールとして景観条例の制定 が市町に強要されることに景観行政担当課は激しく警 戒しており、文化財担当課としても平成 23 年度の登録 ありきで突き進む今のやり方には大きな疑問を感じざ るを得ない。
平成 23 年度末を迎えたとき、仮に登録が果たされな くても平成 23 年度まで登録推進に向けて精一杯努力し たという姿勢が重要であるという声が聞こえてきそう な先行き不安な富士山世界文化遺産登録推進が今年も 進んでいる。
Figure3 バッファゾーンの考え方
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春秋戦国時代の北方系小型飾金具
高見哲士
先行研究と問題点
主に小型飾金具について扱われている近年の先行 研究は、田広金・郭素新氏 ( 同 1986)、鄭紹宗氏(同 1991)、小田木治太郎氏 ( 同 2003a・2003 b )、楊建華 氏 ( 同 2004)、高浜氏 ( 同 1999、2005) らが挙げられ る。北方系小型飾金具は、他の北方系青銅器研究の一
特別名勝富士山指定範囲 (コア)
特別名勝富士山を保護する緩衝地帯 (バッファ)
構成資産となる 国指定文化財の 指定範囲 (コア)
構成資産を保護 する緩衝地帯 (バッファ)
構成資産となる 国指定文化財の 指定範囲 (コア)
構成資産を保護 する緩衝地帯 (バッファ)
構成資産となる 国指定文化財の 指定範囲 (コア)
構成資産を保護 する緩衝地帯 (バッファ)
構成資産となる 国指定文化財の 指定範囲 (コア)
構成資産を保護 する緩衝地帯 (バッファ)
富士山本体と構成資産を 網羅するような緩衝地帯
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