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「テ- メン」 による学習者 中心の授業 の試み -

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55.

「テ‑ メン」 による学習者 中心の授業 の試み

‑ 95 年 ドイ ツ語 IA授 業 報 告 ‑

大 塚 譲

0.は じめに

ドイツ語系で は,過去 3 年間 にわた って教育改善 のた めの努力 を積 み重ね て きた。主 な成果 を挙 げれば,第一 に ドイツ語 Ⅰで統一教科書 を採用 してい る ことである 。 第二 に各 クラスに主担 当者 ( 週 2 回担当) を置 き, もう一人 の担 当者 とのテ ィーム ワークの下で教育 に当たっていることである ( スタ ッ フの関係で 1 クラスだ け止む を得ず 3 人 で担 当)。第三 に 95 年度か ら全 クラ ス とも週 に 1度 ネイテ イヴス ピーカーの授業が受 けられ るようになった こと で ある。第 四に ドイツ語 Ⅰ Ⅰで は ,93 年 にお けるアラカル ト方式の試行 ,94 年 度 にお ける統一教材 としての 「テ‑メ ン 2 」の採用,95 年度後期 にお けるク ラス制 の下での 4 技能重視 を踏 まえた緩やか なアラカル ト方式 の試行等,外 国語教育 のあるべ き姿 を求 めた模索 を続 けて きた ことである 。 第五 に ドイツ 語 Ⅱ r で は, 4 技能重視 を踏 まえつつ,学習者 のニーズの多様性 に留意 して知 識受容型 のクラス (日本人教師担 当) と自己発信型 のクラス ( ネイテ イヴ教 師担 当) を設 けていることである。第六 に学期始 めや クラスの選択 に当たっ ては,学生 に事前 にシラバ スの形で正確 な情報 を提供す るよう努 めて きた こ と,第七 には,過去 3 年間学期終了時 に組織 的なアンケー トを実施 し ( 昨年 度 は個々の教師 の授業 の評価 にまで踏 み込 んだ) ,学生側 か らの よ り正確 な

フィー ドバ ックを得 る仕組 み を工夫 して きた こと,第八 に特別 の講習 を行 っ

た こと等 もあって, ドイツ語技能検定試験 の受験者,合格者 の数が着実 に増

えて きてい ること ( 95 年度 か ら本学が 6 月の試験 の会場 を提供 す るよ うに

なったので,この傾 向が さらに増進 され ることが期待 され る),第九 に ドイツ

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語教育 の コンセプ トを一貫 して コ ミュニケー シ ョン能力 を中心 とす る 4 技能 の総合力 の育成 に据 えて きた こともあって,短期語学研修 の参加者が コンス タン トに現 われている (3 年間で合計 20 名) こと,等々で ある 。

こうした ドイツ語教育改善 の流れの中で,今年度 ( 9 5 年度) ドイツ語 Ⅰに 当初 か ら本格的な ドイツの総合教科書 「テ‑メ ン 1 」 ( 正確 には The me nne u 1 ,MaxHue be rVe r l ag 刊) を使用す る選択 クラス を設 けることに踏 み切 っ た。 その意 図 は,第一 に国際水準 を視野 に入れた本格的な 4技能対応教育 に 着手す る こと,第二 に本格的な外国語 コースの実現 を遠望 して初級か ら上級

に至 る一貫 したカ リキュラム立案 に向 けてその第一歩 を踏 み出す こと ( 「テ‑

メン 1‑ 3 」は 600‑700 時間の一貫 したカ リキュラムに裏打 ち された もので ある) ,第三 に心か ら ドイツ語が好 きな学生 を作 ること(これ は多分 に私 の個 人的 な見解 か もしれ ないが),にあった。これ らの要件 を全 て備 えた教科書 は

日本 にはまだないはずだ。

しか し私 は,第三 の意図が最 も大切 だ と思 ってい る。「 好 きこそ物 の上手 な れ」 の誓 え通 り,学ぶ ことへの喜 びがなけれ ば学習 の成果 は上が らない

そ して クラス全体 を学習の喜 びへ誘 う点 にか けては,伝統的 な文法訳読法 より も 4 技能対応 の教授法の方が はるか に優れている と思われ る

例 えばここで 紹介す る 「テ‑メ ン」 は,学習者 を否応 な くアクテ ィヴな参加へ引 き入れ る 仕組 みを備 えてい る 。 従来 の文法訳読型 の授業で は, 1年間で接続法 に至 る 全 ての形態規則 を終 了す ることが至上命令 になってお り,応用練習 の機会が 少 ないため結局生 きた力 として定着す ることが極 めて困難 であるばか りで は な く,学習者 の立場 か らす ると,予習 して きた ことを確認 す ることに終始す る極 めて受動的な学習形態であ り,ア クテ ィヴな参加 を通 して発見 と実行 の 喜 び を味わ うことはほ とん ど不可能だ った ように思われ る。

もちろん教科書が授業 をして くれ るわ けで はないか ら, 「テ‑メン」が その

真価 を発揮す るた めには, これ を使 う教師 は献 身的な研究 と努力 を注がなけ

ればな らない。肝心 な ことは,授業 の結果 を決 して学習者 の責 に帰 さない こ

とだ。授業が うま く行かない ( 学習者 の乗 りが悪い) とすれば,必ず こち ら

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「テ‑メン」による学習者中心の授業の試み 57

に何 か しら工夫 と努力 について問題が あるか らだ。「テ‑メ ン」による授業 の 成否 は,学習者が 9 0 分間集 中力 を保 ってアクテ ィヴに参加 し続 け得 る手順 を 考 え抜 き, この手順 を支 える的確 な仕掛 ( 教材) を用意 す ることに掛 かって い るように思われ る

しか しこうした準備段 階での洞察 とエネルギー を支 え る ものは,技術 的な ものではな くむ しろ極 めて人間的な もので あるように思 われ る。以下の報告 は, この ような悪戦苦闘の一端 の記録 である。

1.95 年度 ドイ ツ語 Ⅰの教 育態勢

所属方法 クラスサイズ 教師担当状況 教 室 教 科 書 A クラス 選択者のみ 2 2 名 ネ※: 日※:2 1 回 回 ネ : 冒 :通常 AV The me n 他クラス 学生番号順 約 4 0 名 ネ : 1 回 ネ : AV 共 通 某 日‑日本人教師。ネ‑ネイテイヴスピーカー教師

※ 「コ ミJ ユニケ‑ シ ョンのた めの ドイ ツ語 」 と 「アル フ ァー ドイ ツ語文法」 ( いず れ も三修社刊)を併用。

上記の ような経緯で,今年度,スタ ッフの合意 に基づ く共通 の実験 として,

「テ‑メ ン」を用い る選択 クラス を設 けた。選択 した学生 の人数 は予想 よ り少 な 目の 22名 ( 女子 17名,男子 5名)である

その他の クラスについては, A 以外 の学生 を学生番号順 に振 り分 けた。 また A 以外の クラスの教育方針 も A クラス とそれほ ど違 い は無 く, 日本 の教科書 を用いて 「4 技能 の基礎 的総 合力」の育成 を図 ることを目的 としている 。 教師 のクラス担当状況 は, 1ク

ラス を除いて全 クラス とも基本的 に同一で ある

過 3 回の授業 の うち 1 人 の 日本人教師が 2 回, もう 1 回 をネイテ イヴス ピーカーの教師が教 えている 。

もちろん ,A クラスを除いた全 クラスは教材 を統一 し, 教師間のテ ィームワー

クに基づいて授業 を行 っている 。

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2.9 5 年度 ドイ ツ語 IA の 授 業 内容

2. 1 . 基本計画一 目標 ・方法 ・教材 ・期待 され る参加姿勢 ・評価方法 ・教材 の配布方法

2. 1 . 1 . 目標

キーワー ド : 4 技能の基礎的 な総合 力の育成/ ドイツ語 を好 きに させ る 現代 の国際関係 にあっては,先進文化 ・文明 を一方的 に受容 し模倣 す るあ り方 は遠 い過去 の もの とな り,相互依存的 ・双方向的な文化 ・文明関係 を基 本 としている。 こうした国際関係 の推移 に対応 して,文化 ・文明間の情報流 通 を媒介す る外国語能力へのニーズ も,先進文化 ・文明 を一方的 に受容 す る ことか ら,文化 ・文明間の双方向的 なコ ミュニケー シ ョンを実現す る ことへ と変化 して来 ている

こうした外国語能力へのニーズの変化 に伴 って, これ を育成す る方法 も,一方的受容 を目指す文法訳読法か ら, コ ミュニケーシ ョ ン能力 を中心 とす る 4 技能 の総合 的習得 を目指 す方法へ と変貌 を遂 げて来 た。 しか し残念 なが ら,わが国の外 国語教育 はこの変化 に十分対応 している

とは言 えず, ドイツ語教育 を例 に取 って も, この変化 を踏 まえて初級 か ら上 級 まで一貫 した方針 の下 に編 まれた ドイ ツ語教 科書 はい まだ出現 していな い。それ どころか,ほ とん ど全 ての教科書 は 1 人 の教師が週 1 回年間 2 5 回程 度教 えることを前提 とした 自己完結型 の ものばか りであ り, とて も総合力 を 習得 させ うる体 の もので はない。

従 って, ドイツ語能力 の総合的育成 を目指 そ うとすれ ば,取 りあえず は ド イツの教科書 に頼 らざるを得ず,今年度 は この点で ドイツで も定評 を得 てい る 「テ‑メン 」( The me nne ul ) を採用す ることにした。同時 に, この教科 書 を選 んだ理 由は,国際基準 に叶 った ドイツの教科書 の中で も,特 にそれが 学習者 を学習の喜 びへ と誘 うコンセプ トに貫 かれている点で優 れてい るか ら で ある. ことは,すでに述べた とお りで ある 。 学習者 を実行 と発見へ と不 断に 誘 い続 ける縦横 の仕掛 を備 えた優れた教科書無 しには, 4 技能 の総合 的習得

とい う困難 な試 みは,お よそ不可能 である。

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「テ‑メン」 による学習者中心の授業の試 み 59

2. 1 . 2. 授業の方法

辛‑ ワー ド①教室 での学習 と復 習 を重視 ( 彰多様 な練 習形態 ( 勤カー ド作成 によ る語重力の育成

① 一般 に予習 を前提 にす る と出発点が揃 わず クラス全体 のアクテ ィヴな参 加 はお よそ期待 し得 ない。 これ は, 「テ‑メ ン」の ような学習者 の積極 的な 参加 を不可欠 とす る教科書 で は特 に注意 しなけれ ばな らない。む しろ「テ‑

メ ン」 その ものが予習 を前提 として はお らず,教室での学習 を共通 の出発 点 とし,ワー クブ ックな どでのた くさんの復習 を通 して これの定着 を図 る,

とい う基本方針 に立 って編 まれてい るように思われ ろ.

② 多様 な練習形態 ( Sozi al f or men) の導入 によって,学習者 は飽 きず集 中 力 を失わず に参加 し続 ける ことが出来 る。 「テ‑メ ン」は この点 にか けて は 十分 に工夫 の行 き届 いた出色 の教科書 で ある。

③ これ は「 語重力 の 自動化」( 語桑 を即座 に理解 で き,また 口にで きること) を図 るた めに採用 した。しか も実用性 を高 め るため,思考 の単位 であ る「 文」

と共 に記憶 させ る方法 を採 った。詳 し くは 「 年間授業計 画」 の項 で説 明す る。

2. 1 . 3. 教材

( 彰 Themenneu l ( 全 6 冊 ・ 付属 カセ ッ ト 6 本 か ら成 る教科書群O近 い将 来 には これ に ビデオ教材が付 け加 わ る。)

② 特製 自作教材 ( 「 文法 の概要 [日本語版 ] 」 「 語嚢 ・例文集 」)

③ 個別 的補足教材

① Themenneu lの構成 a) 教科書 ( Kur sbuch)

外 国人 のた めの 4 技能対応 の ドイ ツ語総合教材 として最 も高 く評価 され最

も広 く使用 されてい る一貫教材 「テ‑ メ ン」 の基礎編 ( 1 ) の コア教材。文法事

項 ・生活文化上 の主要 な事項 ・4 技能 の訓練 が常 にほぼ同時並行 的 に複合的

に取 り扱われ る多様 かつ複雑 な構造 を持 ってい る 。 アイデ ィア溢 れ る多様 な

練習 内容や練習形態 には目を見 張 る ものが ある . 全 1 0 課, 1 6 0 ペー ジ ( 巻末

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の 「 索引 」, ・ 「 文法 の概要」 を含 む)0

リスニ ング問題用のカセ ッ ト ( 2 巻) は最初か ら自然 の早 さで吹 き込 まれ てい る 。

b) ワークブ ック ( Ar bei t s buch)

教科書の各課 の個々の練習問題 に対応 し主 として文法 ・語桑 に力点 を置い た応用練習問題 を満載。各課 冒頭 に重要語桑 ・表現,文法事項 を整理 した一 覧が掲 げ られてい る。全 1 2 2 ペ ージ。

C) 口顕練習帳 ( Spr echubun gen ‑ Te x the f t)

教科書の各課 の重要文法事項や重要 な言い回 しを総合的 に復習す るための 教材 で,与 えられたパ ター ンにな らってカセ ッ トの問いに口頭 で答 える練習 をす る。問い と答 えのテキス トが付 いている。テキス ト 4 6 ペー ジ,カセ ッ ト 全 4 巻。

d) 日本人学習者用用語集 ( Gl os s er )

教科書お よびワークブ ックで使用 されてい る全語嚢 を日本語で説明。巻末 に全語桑 の使用箇所一覧索引。尚,95 年度版 か ら新 たに 日本語 による各課別 文法説明が付 け加 えられた。全 1 71 ペ ー ジ。

e) 教師用指導書 A ( Lehr er han dbuch‑A)

これ を参考す る こと無 しには多様 ・複雑 な構造 を備 えた 「テ‑メン 」 を使 い こなす ことは経験 あるネイテ イヴス ピーカーの教師 に も不可能 と言われて いる。 ここには,各課 ・各練習問題 の狙 い,各練習問題 の進 め方の詳細 な提 寡 (これ らとの関連 で ワークブ ックの練習問題や教師用指導書 B の練習教材 等 を どの ように活用 した らよいか についての提案 も含 む), 各練習問題間の関 連付 け方 についての提案等が分 か りやす く図表化 されて提示 されてい る。全 6 4 ページ。

f)教師用指導書 B

この教師用指導書 B の有効 な活用無 しには,や は り 「テ‑メ ン」 による本

来 の授業 は実現 しないだ ろう。 この指導書 は,( ∋教科書 の練習問題 に付 随 し

たゲーム的な練習教材 ( 教室で使 えるペ ア練習や グループ練習用)②文法事

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「テ‑メン」 による学習者 中心の授業の試み 61

項 や ランデスクンデ (ドイツ事情)関連事項 に関す る懇切 ・的確 な解説 ( 敬 室 での説明への ヒン トとして貴重)③ テス ト案④教科書 リスニ ング問題用 カ セ ッ トの文字 テキス ト⑤教科書主要練習問題 の解答か ら成 っている。特 に① の練習教材 を活用す るか否か, また どの ように活用す るかで学習のプロセス や成果 は質的 に異 なった もの とな るだ ろう 。 教科書 の各練習問題 をさらに掘

り下 げてアクテ ィヴに練習す る ( 練習 して しまう′)教材が数多 く提案 され ているか らで\ ある。

( 卦 特製 自作教材 (a)文法の概要 [日本語版] b)語垂 ・例文集) a) 文法の概要 [日本語版]

教科書巻末 の 「 文法 の概要」 を日本人学生用 に編訳 した もの。 日本 の学習 者 の条件 を考慮 して詳 しい解説 を加 え例文 に訳文 を付 した もの。全 30ペー ジ。冊子 として学生 に配布 し,教室での説明 に際 して は OHP で提示。大塚作 成。

b)語曇 ・例 文集

語桑習得用教材。 ワークブ ックに整理 された各課別 の重要語桑 ・表現 に例 文 ( 教科書 の文 に倣 った もの) を付 し,両者 に 日本語訳 を与 えた もの。各課 1 0 ペー ジ前後。これ に基づいて単語 カー ドを作成 させ てい る( 後述 )0 1‑ 4 課, 6 , 8 課 ‑ホル ツ アー+寺 田 ( 共 に北大)作成 / 5 , 7 課 ‑大塚作成。

③ 個別的補足数材

教科書や ワー クブ ックの練習問題 の学習 を容易 にす るための補助教材や全 く新 た に付 け加 えた補足教材。 コピーや OHP マ ッ トの形 で活用。

2. 1 . 4. 期待 され る参加姿勢 :

( 丑アクテ ィヴな参加姿勢 ( 訂間違 いを恐れ ない ③分か るまで質問す る

知識 の一方的受容 に慣れている日本 の学生 には, これ らは特 に強調 してお

く必要が ある。彼 らは長 い間 この習慣 の中 にあった はずなので,意識 的 に新

しい学習態度 を獲得 して もらう必要が ある 。 日本人教師側 も,間違 いを細 か

く質す旧癖 を克服 し,間違 いの理 由を柔軟 に理解す る姿勢へ脱却す ることが

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求 め られ る。 もち ろん 「テ‑メ ン」の真髄 を生か した授業 を行 うよう努 めれ ば,学習者 の態度 も徐々 に変化 して行 くはずである。

2. 1. 5. 評価 :

A 案 :①参加姿勢約 1 0% ② 出席約 1 0 % ③提 出物約 1 0 % ④試験約 7 0%

B 案 :①参加姿勢約 3 0% ②提 出物約 3 0% ③試験約 4 0 %

最初 は A 案 の方 を学生 に提示 したが, その後,参加型 の授業で 「 参加」 よ りも 「 試験」 の成績 を重視 す るのは間違 っていることに思 い至 り, B案への 方針変更 を行 った。

2. 1. 6. 教材配布の方法

① 学習者 は,上記 2. 1 . 3. ( ∋ a) の教科書 ( Ku r s buc h) のみを購入 ・ 所持 す る 。 他 の一切 の教材 は, こち らで コピー を用意 ・ 配布す る 。 OHP マ ッ ト

も使用後 そのコピーを配布す ることがある 。 毎回平均 2種類 の資料が配布 されてい る と思われ る。 ともか く大量 の資料 とその コピーを用意 しなけれ ばな らない。 これ らを用意 しまた保管 してお くことに要す る労力 はかな り の もので ある 。 また学習者 の方 も膨大 な資料 の有効 ・的確 な整理方法 を工 夫 しなけれ ばな らない。

② 問題 は欠席者への対応方法である。授業 の基本方針 は,教室 での学習 を

共通 の出発点 としそれ に基づいて各 自がか な りの量 の復習 をこなす ことに

あ る。教室 では, その場 での学習 と自宅 での復習 のために毎回かな りの分

量 の教材が配布 され ることになるか ら, 1回欠席 して も授業 の脈絡がつか

めな くなった り学力の定着度 に差が生 じ得 る 。 これ をカバ ーす るために特

別 の システムを導入 している 。 研究室 の前 に 4 種類 のフ ァイル を用意 し欠

席者 に迅速 ・的確 に対応 させ てい る。一つ はその 日に教室 で配布 した新規

の教材資料用,二 つにはその 日に提 出を求 めた提 出物用 ( 通常 の簡単 な宿

題 は授業 冒頭 に答合わせ をす るが, ライテ ィング等 の細 かいチ ェックを要

す る宿題 は提 出 させてい る。) ,三つ にはその 日に返却 したテス トや提 出物

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「テ‑メン」 による学習者中心の授業の試み 6 3

( 早 めに各 自の問題点 を確認 す ることは重要である),四つ にはその 日の授 業 の概要 と宿題等 の課題 の説明。 この システムは 9 5 年 1 0 月か ら導入 して いるが, ほぼ学習者 の間で定着 した模様 で,落後者 の発生 を未然 に防 ぐ上 でそれな りの効果 を発揮 してい る と思われ る。

2. 2. 具体的 な年間授業計画 2. 2. 1 . 個 々の課題の取扱 い

① 教科書

あ らか じめ, この教科書 を完全 に こなす ことは時間的 に無理である, とい う判断 に立 って計画 を立てた 。1 0 課 ( 特 に新規 の文法上 の課題 は無 い)お よ び各課末尾の Le s e t e xt ( 基本的な読解力 は他 の練習問題 で育成で きる)を割 愛可能 な個所 とし ( その他割愛 し得 る細 かい練習問題が幾つかあるが ここで は計算 に入れ ない),また各課 冒頭 の導入ペー ジは計算外 とした。これ らを差 し引いて 1 ・ 回のノルマ ( ペース)を弾 き出す と,全部 で 9 3 ペ ージ, これ を授 業可能 回数 87 で割 る と ,9 3÷8 7 ≒ 1. 1 ( ペ ージ)となる 。 しか し当初 は, 1. 5 ペ ージ位 は進 めるか もしれない, な どとい う希望的観測 もあった。 い まか ら 思 えば,実 に安易で粗雑 な 目算 をしていた ものだ と思わ ざるを得 ない。

途 中で到達 目標 を 8 課 まで に修正せ ざるを得 な くなった。最大の計算 ミス は各課終 了後 に行 うべ きテス トを算入 しなか った ことである ( 例 えば 8 課 を 目標 にす る と 8 回分 の時間 を確保 しなければな らない) 。また実際 には授業 を 休 まざるを得 ない ことも何度か はある 。 今年度 について言 うと,学 内事情 で 1 回,ゲス トを招 いてのイ ンタヴューで 1 回,パー トナーの教師の ドイツ語 教育研究 のために行 われた調査 テス トで 2 回, 出張 による休講 で 1 回,計 5

回正規 の授業が行 えなかった。参考 まで に, これ までの進度,今年度 の今後 の進度 お よび一般的 に可能 と思われ る進度 を示 してお く。

〈 95 年 1 2 月 1 8 日現在 の進度) 実質授業 回数 : 6 4 回。

学習済 み頁数 : 6 8頁

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1 回の平均進度 : 6 8÷6 4 ≒ 1. 0 6

〈これか ら学年末 まで の進度 ( 8 課終 了 を目標 とす る)〉

実質授業可能 回数 : 1 3 回 学習予定頁数 : 1 5 頁

1 回の平均進度 : 1 5÷1 3 ≒ 1. 1 5

※ これ まで以上 の進度 は考 え られ ないか ら, この進度 は とて も不可能 で 2 頁 ( 約 4 回分)ほ どを し残 す ことにな ろう 。 後 に述 べ るワー クブ ックか らの宿 題 の処理 方法 を変 えれ ばあ るいはなん とか な るか もしれない。 しか し確信

はない。

く 一般的 に可能 な進度 ( 8 課終了 を目標 とす る)〉

実質授業可能 回数 : 7 5 回 ( 87‑1 2) 学習必要頁数 : 83 頁

1 回の平均進度 : 83÷75 ≒ 1. 1

※ これ はか な り厳 しい数字 だ。 目標 を 7課終 了 に修正す るか, ワー クブ ック か らの宿題 の処理方法 を大幅 に合理化 す る以外 ないで あろう。

② ワークブ ック ( Ar bei t sbu ch)

「 単語 カー ド」 の作成 ・ 習得 と並 んで, ワー クブ ックに よる豊富 な練習 問題 の消化が, このクラスの 「 復習重視」 の方針 の根幹 を成 してい る

目標 は, その 日に学 んだ教科書 の練習問題 に対応す る全 問題 を宿題 として課 し,最終 的 には この問題集 を完全 に終 える ことで あ る 。

答 の確認 は授業 の冒頭 1 0 分程度 で処理 す る ことに してい る。書 く問題 は, 当初 は添 削の上返却 していたが,現在 は OHP で説 明 し学生各 自が チ ェック す るよ り簡便 なや り方 に改善 されてい る。

ワー クブ ックのた めに要す る学習時間 は 30分〜 1時間程度 と聞 いてい る 。

目下 の課題 として は, 8課終 了 とい う修正 目標 を達成 す るには, これ まで の授業時間 内処理 方式 を提 出方式 に切 り替 えるべ きか否 か を検討 中で ある こ

とだ。宿題 による集 中的応用練 習が 「テ‑メ ン」 による学習 の一 つの柱 を成

してい るだ けに,慎重 な検討 を必要 とす る

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「テ‑メン」 による学習者中心の授業 の試み 65

宿題 の処理方法 は,今 の時間の枠 内で 「テ‑メ ン」 を使 お うとす る限 り, 多分 いつ も頭 を悩 ます問題 にな りそ うだ。 もちろん,授業時間内処理方式 と 提 出方式 との中間的なや り方 もあ り得 る

例 えば, ライテ ィング関連 の練習 問題 だ け教室で扱 い,その他 は質 問の機会 を与 えた上 で基本 的 に提 出させ る,

といった方法で ある 。 しか し難 しい問題が増 えて くる といつ もその ように機 械 的 に処理 で きる とは限 るまい。 この ような合理化が不可能 である ことが明

らか になれ ば,到達 目標 を 7 課終了 に修正す る他 はないであろう 。

③ 教師用指導書 B

「 教材」の項 の説明 を参照。一言だ けしてお くと, ここに用意 された練習素 材 ( Vor l a ge) には,刺激的な応用練習 を通 じて学習事項 を定着 させ る上 で, 極 めて有効 な ものが少 な くない。中で もビンゴ形式の もの,お よび「 枠組 み」

のみ与 えメモだ けで対話練 習す る方式 の練習素材 は出色 で あって,「テ‑メ ン」全体やペ ア練習教材 の傑作 「 We c hs e l s pi e l 」 ( Lange ns c he i dt 社刊)な ど に共通 した,アクテ ィヴな練習へ導 く根本的アイデ ィア を示す ものであるよ うに思われ る

教師 の側が事前 に練 習の手順 についての十分 な見極 めさえ怠 らなけれ ば,学生が乗 って くることは間違 いない。ただ し,「 枠組 み」にやや 混乱 が含 まれ手直 しを要す る場合が あること, また何分量が多 いので的確 な 取捨選択 が大切 であること,等 に留意す る必要が あろう。

( 彰 単語 カー ドの作成 とそれ に基づ く語轟の習得 キーワー ド

目的 :語桑の 自動化

作成方法 :マニュアル に従 い用語集 を素材 に作成。

習得方法 :三つのボ ックス ( 新 出用 ・反復用 ・習得済み用 ) を活用。

チ ェック :時折提 出 させ,出来映 えの良 い者 にごは うび。

この単語 カー ドの作成 とこれ に基づ く語桑 の習得 は, ワークブ ックによる

沢 山の練習問題 の消化 と並んで, このクラスの 「 復習重視」の授業方針 の根

幹 を成 している。 その意図 は,文 の中で基本単語 を覚 えることによって,実

用 に耐 える自動化 された語重力 を育成す る ことにある 。

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カー ドの作 成方法 は,用意 された語桑葉 ( ワー クブ ック掲載 の各課 の重要 単語 とそれ を用 いた例文,お よび両者 の和訳か ら成 る自作教材) を素材 に し て,マニ ュアル に従 って表 に ドイ ツ語,裏 に日本語で記入 して行 く。後 日よ り高い水準 の情報 を書 き加 えるために, カー ドは大 きめの ものを用 い余 白を 十分 に残 してお くのが よい。

こうして作成 され たカー ドを 3 つの ボ ックス を利 用 して習得作業 を進 め る 。

( 1 ) 新 出単語用 カー ドボ ックスのカー ドは毎 日声 を出 して覚 える .

( 2 ) す っか り覚 えた ら反復単語用カー ドボ ックス に移 し 2‑ 3日に 1 回 ( 1) と 同 じ作業 をす る。

( 3) 完全 に覚 えた ら習得済 み単語用 カー ドボ ックス ( アル ファベ ッ ト順 に整 理 していわば手製 の辞書 を制作 して行 く) に移 すが, その際 その前後 の 2

ない し 3枚 ( 都合 4‑ 6枚)のカー ドの記憶 を再確認 し,不確か になって いれば反復用 ボ ックスに戻 し( 2) の作業 を繰 り返 す。

これ まで に 2 回カー ドの提 出 を求 めたが,作成 に工夫 を凝 らししか も着実 に習得作業 を進 めてい る者 にプレゼ ン トを与 えることに してい る。冬休 み前 に 3 度 目のチ ェックを行 う予定である 。

これ までの ところは,大半 の学生がカー ドを作成 し,半数程度 の学生 は自 分 のペースで習得作業 を進 めている様子である。 しか し今後 の課題 として, 小 テス トによる定期的なチ ェックの実施 を検討中である 。 提 出 を求 める課題 やテス トが多いのでそれ らとの兼ね合 いを考 えて決 め ようと思 ってい る。

( 釘 テス ト

各課終 了後 にまとめのテス トを行 ってい る。 しか しテス トについての確た

る方針 はまだ出来 ていない。 「テ‑メン」の内容が多様 なのでテス トで取 り上

げるべ き事項や それに相応 しい問題形式 の選択が必ず しも容易で はないか ら

で ある。確かに 「 教師用指導書 B」 にはマルチプルチ ョイス形式 のテス ト問

題 が用意 されて はいるが, しか しこれ らのテス ト問題 は二つの課 についての

総合 問題 であ り, また易 しす ぎる嫌 いが ある上 に重要 な点 を十分 に網羅 して

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「テ‑メン」 による学習者 中心の授業 の試み 67

いない面が あ り,結局採用可能 な ものはそれほ ど多 くはない ように思われ る。

ところで,95 年 1 0 月以来,ゲーテ・イ ンステ イ トウ‑ ト製作 の「テ‑メ ン」

のた めのテス ト問題 の提供 を受 けるようにな り, 状況 はかな り好転 してい る 。

問題 は,ゲーテ ・イ ンステ イ トウ‑ トのコースは全 てか な りイ ンテ ンス イヴ なので,テス ト問題 の程度が高す ぎることで ある。 この高 い基準で満点近 い 点数 を取 る学生が少数 なが らい ることは喜 ばしいか ぎ りであ り, また一般的 な基準で学習結果 をチ ェックす ることは重要で もある。 しか し本学 の ような 週 3 回だ けの コース には この基準 はや は り高 す ぎて,学生 の達成感 にネガ テ ィヴな影響 を与 える ことが懸念 され る。ゲーテ ・イ ンステ イ トウ‑ トのテ ス ト問題 をやや易 しい問題 に変 えて活用す ることが,当面考 え られ る最善 の 道で あるように思われ る。ある大学の独文科で行われてい るように,ゲーテ・

イ ンス テ イ トウ‑ トの テ ス ト問題 に よ るテ ス トの後,学 習 者 に共 通 す る ウイー クポイ ン トをフォローす る小 テス トを行 う仕組 み を取 り入 れ る ことも 重要 な検討課題 であろう。 もち ろん, これ まで何度 か試 みて きた ように,教 科書や ワー クブ ックの重要な練習問題 のみを対象 とす る小 テス トは,や は り 今後 とも実施 し続 けるべ きであろう

この ような小 テス トの場合 には,学習 者 自身が その場 です ぐに添削 し合 える形式 にすれ ばそれ ほ どの労力で もない

だ ろう 。

総 じて, テス トとは, あ くまで も学習者が学習内容 を整理 ・統合 した り, 教師が 自 らの教育方針 ・教育実践 の問題点 をチェックす るために行 うもので ある ( 断 じて学習者 をふ るい落 とすために行 うもので はない /)。 その形式 ・ 方法 にはきわめて多 くの可能性 があ り,筆記試験 のみに単純化す ることはで

きない。 この ことは特 に 「4 技能 の習得」 に主眼 を置 く教材 に当てはまるこ とである 。 そ うした教材 のモデルケース とも言 える 「テ‑メン」 については 言 うまで もない。 この ような観点 に立 って,今年度 は夏休 み前 に 1度,冬休 み前 に 1 度,ネイテ イヴス ピーカーにイ ンタ ビューす る機会 を与 えている 。

教室 で学 んだ ことを実際 に使 ってみ るためには,テス ト以上 のエネルギー と

知恵が必要である 。 グループ単位 のイ ンタ ビューなので,学生たちがお互 い

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によ りよ く理解 し合 い協力 し合 うことを学ぶ貴重 な機会 ともな るであろう

冬休 み前 ともな る と, イ ンタ ビューのための素材 も表現方法 もかな り増 えて きてお り,成果の程が期待 され る。結果 はテープを提 出させてチ ェックす る。

この場合,評価がやや大 まか になるのは止 むを得 ない。昨年の他のクラスで の経験 か ら言 って も, この方法 によるモテ イヴェ‑ シ ョンの増大 には何 もの に も代 えがたい ものが ある 。 外 国語教育 の評価方法や評価基準 は, その学習 内容 の多様性 に応 じて多様 で なけれ ばな らない。評価 のための評価 に堕 さな い ことが大切 だ。

この ようにテ ス トについては検討課題が多い。例 えば リスニ ングやス ピー キ ングのついてのチェ ックを どうす るか,何課毎 か に中間的な まとめのテス トをす る必要が無 いか どうか, といった ことな どもよ く考 えて行 く必要が あ るだろう。同時 に,先 ほ ど述べた ように,単語 カー ドの習得状況 をチ ェック す るテス トについて も,検討 を進 め る必要がある 。 しか し, 日本で はテス ト が学習者 に対 して統制 的 に機能す る場合が多 く, テス トによる圧迫感が非常 に強 いので,学習者 のモテイヴェ‑ ションその ものを減殺 す る ことが ないよ う十分 に配慮す る必要があろう。

( む 口頭練 習帳

リスニ ング とス ピーキ ングの訓練 を含 んだ重要 な復 習用 の教材 だ と言 え る。 しか し授業 に組 み入 れ る時間的 な余裕 は とて も無 い。便法 として,長期 休暇 中の復習 を兼 ねた課題 として課 し,小 テス トで成果 を確認 す る方針 を 取 った。付属 カセ ッ トは全員が持 つ よう義務 づ けている 。

この教材 や割愛 しているユーモラスな読章 ( Le s e t e xt ) の ことな どを考 え る と,改 めて 「テ‑メ ン」を 1年で終 了す るには,や は り遇 4回 ( 45 ‑50分 ‑

1 時間 として約 8 時間)の学習が必要であることを痛感せ ざるを得 ない。

2. 2. 2. . 教師間のチーム ワーク

① 授業担 当方法

キー ワー ド :単純 引継方式。日本人 とネイチ イヴで課題 による分旭 は しない。

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「 テ‑メン」による学習者中心の授業の試み 6 9 よ く見 られ るような, 日本人 とネイテ イヴの間での課題 の固定的分担方式 (日本人 は文法 に関す る部分 を,ネイテ イヴは リスニ ングやス ピーキングに関 す る部分 を担 当す る, といったや り方) は取 らない。 もともと,「テ‑メン」

は常 にい くつかの技能 を同時 ・ 複合的 に練習す るように構成 されてい るので, 技能毎 に分担 す るわ けには行 かない し, ワークブ ック も教科書 の練 習 と関連 づ けて使用す るのが本来の主 旨であ り, この分 だ けを切 り離 して担 当す るの は学習者 の間 に混乱 を生 じる危険性が ある

止 むを得ず ワー クブ ックのみを 受 け持 つ場合 に も,教科書等のメイ ンの部分 を受 け持 つ教師 との緊密 な連携

とメイ ンの教材 の十分 な研究が不可欠で あろ う。結局,「テ‑メ ン」を使 う場 合,一人 の教師が全 ての授業 を担 当す るのがベ ス トで はあるが,仮 に複数 の 教師が担 当す る場合 に も,担 当教師全員が どこで も担 当で きることが必要で あって,従 って原則 として単純引継方式 ( 前回 に終 わ った ところか ら始 め, また終 わった ところか ら次の教師が引 き継 ぐ。全員が全教材 に責任 を持つ。) を取 るべ きなのである 。

しか しこの場合 には,学習者 の理解 に混乱が生 じない ように, その分だ け 余計 に教師間で緊密 な連絡 ・意見交換等が図 られなけれ ばな らない ことは貢 うまで もない。ただ し,今年度 に限って は,幸 いに も時間的事情が許 したの で,ネイテ イヴの授業 に私 も加 わ ってテ ィームテ ィーチ ングを行 ってお り, 授業負担 は増 えたが この上 ない連携状態 を維持 している ( 後述)0

( 卦 ミーテ ィングと連絡

キーワー ド :類繁 な ミーテ ィング/電話や ファックス による連絡

上記 の通 り, 「テ‑メ ン」 を使 う場合,教師間の緊密 ・ 周到 なティーム ワー

クが不可欠である 。 それ は,年間計画の作成 に際 して はもち ろん,個々の授

業 の実施 に当たって は特 に重要 になって くる。各課毎 の共 同での大 まかな教

案作成,週毎 の細 かな打 ち合 わせや相談,引継 に際 しての正確 な連絡 や 自分

の経験 を踏 まえての提案等々, テ ィーム ワークを厭 っていて は授業 は成 り立

たない。逆 に, テ ィームワークが緊密で あれ ばあるほ ど, クラスの雰囲気や

習得状況が 目に見 えて良 くなって くるように思われ る 。 私達 の場合,毎 過 l

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回次週 の教案 について時間 をか けて議論 をす る。次の授業への引継 や提案 は 電話や ファックスで行 っている。

⑨ 授業の準備

キーワー ド :教師用 指導書 A に基づ く教案の作成 /1 0 分 〜20 分刻 みの詳細 なプランニング/事後 に反省点 をチ ェック

以上 の ような議論 をベースに,各 自が教案 を作成 す る 。 私 は 「テ‑メ ン」

については初心者であ り, また 日本 の伝統的な教育 で育 った人間で もあるの で この授業 の準備 には膨大 な時間 を必要 とす る 。 教師用指導書 A を参照 しつ つ,授業での教材 となる教科書, ワークブ ック,教師用指導書 B 等 の該 当部 分 を総合的 に研究 し, それ に基づ いて 1 0 分 〜2 0 分刻 みの詳細 なプ ランを立 て, その上で必要 な補助教材 を作成す る。膨大 な時間 を必要 とす るのは,学 生 にアクテ ィヴに練習 させ るプロセスを微細 な点 に至 るまで見通 しかつ仕組 むのが大変だか らで ある 。 安心で きるプランに辿 り着 くまで に時間が掛か る か らで ある。プランを立 てす ぎてその半分 ほ どしか進 まない ことの方が多 い。

実際の授業で は,大筋 のプランが よ くで きていて も個々のプロセス に思いの ほか時間 を要す ることが しばしばだか らである。毎 回の ように,学習者 にお ける外 国語習得 とい うものが,いかに複雑 なプロセス を辿 る ものであるか を 痛感 させ られ る。 それ は,実行や発見への苦闘, あるいは これ らを達成 した 場合 の喜 びや満足感 に満 ちてお り,言語習得 を試 みる学習者たちの内面 の ド

ラマを垣 間み る患いである (これ は,教授者 の理解 に近づ くことのみを強 い られ学習者 の内面 の ドラマな どお よそ問題 に もされない 「 文法訳読法」 との 際だった相違 を成 してい るように思われ る)。こうした内面 の ドラマ に理解 と 柔軟 な対応 を もって立 ち会 うことがで きるためには, もちろん十分 な熟練 を 必要 とす るだ ろうが, その熟練 は何 よ りも学習者への 「 愛情」と 「 信頼の念」

に裏打 ちされた ものでなければな らない ように思われ る。 この意味で 「 学習 者 中心 の外国語教育」 は人間教育 であ り,断 じて単 な る技術教育 で はない。

お よそ信頼 の念 の無 い ところにコ ミュニケー シ ョンが成 り立 たない ように,

学習者 と教授者 との間 に信頼 の念が無 い ところにまた コ ミュニケー シ ョン教

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「テ‑メ ン」 による学習者 中心 の授業 の試 み 7 1

青 も成 り立たないのである。

ところで, 授業 の後 プラン と結果 を突 き合 わせて反省点 をチ ェックす るが, ほ とん ど毎回た くさんの反省点が出て くる。考 え抜 いたつ もりで も見通 しの 甘 い点がい くつ もあるか らだ。ちなみに,教師用指導書 Aは,過 4‑ 5回 (8

‑10時間)の時間数 を前提 にプログラムが組 まれているように見受 けられ, そっ くりその まま使 うことはほぼ不可能 である 。 また,時 には受 け入れ難 い ような提案 も無 いわ けで はない。常 に自分 の時間数や クラスの条件 に応 じて 組 み替 えた り削除す る工夫が必要であ る。

④ テ ィームテ ィーチ ング

キー ワー ド :宿題の処理 と追加説明/随時的補足説明/一緒 にダイア ローグ を演 じる/必要事項 の連絡

毎週木曜 日,た また ま私 の授業がないので毎 回テ ィームテ ィーチ ングをし ている 。 と言 って も,パー トナー教師担 当の授業 なので, 2 人 の教師が主導 権 を共有 し合 ういわ ゆる完全 なテ ィームテ ィーチ ングではない。 しか し,時 には,彼女 の求 めに応 じ, また こち らか ら提案 して シ ョー トタイムの主導権 を取 ることもある。 しか し私 は基本的 には補助 的な役割 を演 じている 。 そ こ

ら辺 は,彼女が経験豊富で柔軟 な人 なので,実 に自由かつ臨機応変 にや って いる。学生の方 も, この共 同授業 によって よ り安心 して学 んでい るように見 受 け られ るし, し ょっち ゅう交わ され る私達 のや り取 りが興味深 い ようで も

あ り, ある程度 はモテ イヴェ‑ シ ョンの喚起 に役立 ってい るので はないか と 思 ってい る 。 具体的 には次 の ような具合 である。

事前 に何ペ ージか ら何ペ ージまで を扱 うか, どの ように扱 うか,大 まかな

相談 を してお く。私 も徹底 的 に準備 は して臨む。 まず授業 に先だって私が宿

題 の処理 をす る。これ に約 1 0分程費やす。また前回の授業 で気 になった点 を

追加説明す る こともある 。 そ して授業開始。私 は一番端 の,全体 を見渡せ る

席 に座 る。時 には生徒 と同様 に当て られ ることもある

これが学生 にはいい

刺激 になる 。 また一緒 にあ るシー ンを彼女 と演 じることもある 。 また時 には

彼女 の求 めに応 じて新 出語ややや複雑 な事項や 日本 と対照 させた方が分 か り

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やすい場合 な どは こち らが説明す る 。 また私 の授業 と説明が異 な る場合 は, その場 で話 し合 って調整 し, それ をす ぐに学生 に伝 える 。 また こち らで気が ついた ことはひ ど く邪魔 になる恐れが ない限 り,その場 で口を挟 み指摘す る。

授業終 了後 に,彼女 の求 めに従 って連絡事項 を伝 えた り,私 自身が次回の私 の授業 についての連絡 をした りす る。

このテ ィームテ ィーチ ングの効 用の一 つは,私が このクラスの 過 3 回の授 業全体 の流れ を完全 に掌握 で きることであって,学習者 との意志疎通や学習 の成果 にかな りの程度役立 っているので はないか と思 っている 。 同時 に この テ ィームテ ィーチ ングは,パー トナー教 師が 「ドイツ語教育学」 の研究者 で 経験 も豊富 な人 なので,私 に とっては得難 い教員養成 ない しは教師 としての 再教育 の機会 ともなっている。次の ような点 は特 に参考 になる。 まず工夫 さ れたプ レゼ ンテー シ ョンのあ り方。第二 に,学生の前 に自分 を晒 して常 に全 体 の焦点 とな りなが ら,同時 に個々の学生 に注意 を払 いクラス全体 への視点 を失わ ない こと。第三 に,常 に好意 に満 ちた微笑 を絶や さず学生 を リラ ック スさせ る態度。第四 に,具体例 をた くさん与 えて学生 自らに答 を発見 させ る 運 び方, 分 か るまで様々 な角度 か らアプローチ を繰 り返す柔軟 な忍耐強 さ(こ れ は同時 に 「クラスルーム ドイ ツ語」 の熟練 した高度 のテクニ ックを も示 し てお り,実 に参考 になる)0

3 .結 び一 日本 人 教 師 と 「テ ‑ メ ン 」 ( ‑ つ の 自己分析 ) キーワー ド :伝統的教授法 と 「 テーメ ン」 との内面 における葛藤

「テ‑メ ン」は,学生が積極的 に参加 し沢山の練習 に触れ る中で楽 しみなが ら力 を着 けて行 くように構成 されている。お とな しい 日本 の学生 といえ ども, 気が付 いた ら積極的 に参加 し始 めていた, とい う具合 にうま く仕組 まれてい

る。

この本領 を発揮 させ るか どうか は,教師の研究 と熟練 に掛 かっている。 そ

こで一番障害 になるのは,実 は特 に日本人教師 に染 み着 いて しまってい る体

質 の ような ものだ ろうと思 う 。 文法訳読法で育 ち,文献学的研究者 として養

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「テ‑メン」による学習者中心の授業の試み 7 : 3

成 されてい る日本 の ドイツ語教師 は,長年の習慣 か ら,文法規則 に即 して正 確 に理解 し, それ を 「 正確 で美 しい訳」 によって示す ことを以て学習達成 の 目安 として きた。 その結果 そ こには,文法規則還元的な強 い de dukt i v ( 演樺 的)な姿勢がある 。 これ はテ‑メンの基本的 に i ndukt i v ( 帰納的)な姿勢 と 矛盾す る

ここで は,学習者が具体例 に触れ なが ら自ら規則 を発見す るよう に導 く仕組 みになってい る。この理解への i ndukt i v なプロセスに彼 は慣 れな けれ ばな らない。また彼 には,この規則 を絶対視 す る de dukt i v な姿勢 と「 訳」

を もって理解 の目安 とす る習慣故 に,自らの理解 をもって正解 とす る強い「 単 一正解志向」があるか もしれない。だか ら彼 は学生 の 「 間違 い」 に対 して不 寛容 だ。間違 いに気付 くとす ぐに訂正 しようとす る

しか し 「テ‑メ ン」 は 学習者が試行錯誤 を経 て 自ら規則 を発見す るように出来ている。間違 って当 然で あ り, む しろ間違 うことには積極 的な意味が ある。本来 「 間違 い」 には それぞれ何 らかの必然的な理 由があ り, それ に自 ら気付 いて訂正 して行 く学 習者 のプロセス こそが大切 なのだ。他方 この彼が 「間違 いへの不寛容 さ」か らいちいち素早 く訂正 して行 けば,「テ‑メン」において大前提 となってい る, 学習者 に とっての間違 いの積極 的な機能が失われて しまうばか りで はない。

もっ と問題 なのは, この 「間違 いの素早 いチ ェック」か ら学習者 に 「 間違 う ことへの恐れ」が生 じ,積極的参加姿勢が失われて行 くことである。 こうし た 日本 の伝統 的教授法 に見 られ る 「 間違 い」への不寛容 さか ら帰結す る悪 し き典型例 を,私達 は, 自分が一番 に反応す る ことへの薦蹄,答 える前 にまず 隣 に確認す る奇妙 な習慣 な どに見 ることが出来 るのではないか 。 「間違 うこと

への恐 れ」が支配 す る教室で は 「テ‑メ ン」 による授業 はそ もそ も成 り立た ないだろう 。 従 って彼 には常 に 「間違 いの積極的意義」 を容認す る立場 への 発想 の転換が求 め られているのだ。 また彼 は,規則や表現 の細 かい点 に至 る まで知悉 し,それ を日本語で説明で きるように徹底 して訓練 されているか ら, 自らの説明 の理解 を以 て学習の到達点 とす る傾 向が あ り,従 って基本的 に説 明が多す ぎる。 これ も学習者 自 らの i ndukt i v な理解 ・習得 を到達 点 とす る

「テ‑メ ン」の基本 的発想 と根本 的 に異 なっている 。 彼 の過剰 な説 明 は,参加

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者 の出番 を減 らし彼 らを退屈 させ ることによって,「テ‑メン」の 目指す学習 者 中心 の授業 か ら , 旧来 の教師中心の授業 に後退 させて しまう恐れが ある 。

最後 に彼 の受 けた字間的訓練 の中には,「 勉強 は厳 しくて当然,す ぐに楽 しも うな どもっての外」 とい う 「日本 的修養主義」が含 まれていた可能性が大 い にある 。 これ も 「テ‑メン」の根本的な コンセプ トと正反対 であ る 。 この教 科書 は,一見 して明 らかな ように,学習者が楽 しみなが ら積極的 に練習 に取 り組 む ように仕組 まれてい る 。 禁欲 的な厳格主義 とは正反対 の立場 に立 って いる 。 つ ま り,楽 しむ ことがモテ イヴェ‑シ ョンを高 め学習 の成果 を保証 す る構造 になってい る

従 って ここで も彼 は発想 の大転換 をしなけれ ばな らな い。学習者が よ り長 く楽 しむ ように仕組 むのが,彼 の仕事 の重要 な要素 を占 めるか らだ。

もちろん 「テ‑メ ン」 に も種々の問題点があるだ ろう 。 日 く,状況設定が 日本人 の学習者 にはあま りに ドイツ的で はないか ? ヨー ロッパ言語圏の学 習者 しか念頭 に置 いていないので はないか ? あるいは日 く,内容が あ まり

に総合 的で ごた ごた していてやた らに語嚢 ばか り多 く,一方文法が背景 に退 きす ぎてお り学習者 はまとまった知識が得 られないのではないか ? さ らに 日 く,時間が掛か りす ぎて 日本 の教育 システム に合わ ないので はないか ?

いちいち もっ ともな意見 ばか りだ。 しか し私 はこれ までの ささやかな経験 に照 らして, 「テ‑メン」ほ ど,学習者が ドイツ語が好 きになって きてい るこ

とをはっき り実感で きる教科書 を他 に知 らない。「テ‑メ ン」ほ ど初級か ら中

級 に至 る一貫 した段階性 を備 えた総合教材が 日本 に無 い ことは,い まさ ら言

うまで もない。 この事 の教材 に習熟 していない当方 には,文字通 り悪戦苦闘

の毎 日だが,学生たちが苦 しんだ り楽 しんだ り喜 んだ りしなが らともか くも

生 き生 きと学 び続 ける様子 を目の当た りにす る と, この教科書, この方法が

や は り間違 っていない ことを改 めて思い知 らされ るのである 。 昼間の このク

ラスで差 し詰 め 「テ‑メン 」 1年生だ とすれば,同 じ く 「テ‑メ ン」 を使 っ

ている夜間のクラスで は私 は何 とか 2 年生で, メンバ ーたちの森落 な個性 に

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「テ‑メン」 による学習者中心の授業の試み 7 5

も助 け られて,彼 らの ドイ ツ語 習得 のプ ロセス にさ らに一歩近 づ いて立 ち 会 ってい る気が している

このクラスの学習への熱気 には圧倒 され ることさ えある。昼 の クラスの再履修者 1 名 を除 いては, この二つにクラスに脱落者 はいない。私 も来年 は何 とか 「テ‑メン 」 3 年生 に進級で きそうだ。

付記 :本論 は文部省 のカ リキュラム改革調査研究経費 による研究 プロジェク

ト ( プロジェク ト名 :テ ィームテ ィーチ ングを中心 とした教材研究 と

教授法 の開発)の一環 を成 す ものである 。

参照

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