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ネットワーク空間上における空間的解析ツールの開発

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Academic year: 2021

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ネットワーク空間上における空間的解析ツールの開発

佐藤 俊明,奥貫圭一,岡部篤行,岡部佳世,塩出志乃

Software toolbox for spatial analysis on a network

Toshiaki Satoh,Kei-ichi OKUNUKI, Atsuyuki OKABE, Kayo OKABE, Shino SHIODE

Abstract: This paper shows a software toolbox for spatial analysis on a network. This tool provides analytical tools for network Voronoi diagram, network Kernel density estimation, network nearest neighbor distance method, network conditional nearest neighbor distance method, network K function method, network cross K function method, network spatial interpolation and network Delaunay diagram. This tool is implemented as an extension of ArcGIS. This tool is provided free for academic users.

Keywords: ネットワーク空間解析(Spatial analysis on a network),ソフトウェア(Software), R 言語

(GNU R)

1. はじめに

本稿では,交通事故やひったくり犯罪などの道路網 上で発生するような点的事象に対して,空間的分析を 行うことが可能なネットワーク空間解析ツールについて 紹介する.

ネ ット ワー ク 空間 上で の 解析 手法 の 意義 は,

Okabe and Satoh (2009),奥貫ほか(2005)などで述 べられているように,従来の平面空間上の解析手法 で用いる直線距離より経路距離を用いた方がより現 実世界に沿った解析が可能になる点である.また Okabe et al. (2009)は,従来の平面空間上のカーネル 密度法をネットワーク空間上の事象に適用すると交 差点付近で誤差を生じることを指摘し,このような 事象に対してはネットワーク空間上の密度解析手法 が必要であることを述べている.こうした問題点が あるため,これまでに様々なネットワーク空間上の 解析手法が提案されてきた(山田・岡部, 2000,塩出,

2005 など).

一方,これらの解析手法を利用するためには,最 短経路距離などの複雑な計算を必要とするため,コ ンピュータによる処理が必要となる.しかし,この 場合、経路距離などを算出するための複雑なプログ ラムを作成する必要があり,このような手法を用い た解析を行おうとする解析者にとっては敷居の高い 解析手法となってしまう恐れがある.

そこで,Okabe et al.(2006),奥貫ほか(2005)は,

これまでにネットワーク空間上の解析ツールである

SANET を開発し,ネットワーク空間上での解析を行

いたい解析者に配布を行ってきている.しかしこの ツールも扱えるネットワーク数や点数に限りがある ため,解析対象が限られるという問題があった.本 稿で紹介するツールは,この SANET の後継にあた るものであるが,ユーザインターフェースからプロ グラムの内部処理にいたるまで新たな思想で開発さ れたものであり,解析対象の扱えるデータ量も多く し,ユーザにとって利用しやすいものとした.

以降,本ツールに関して、ツールの構成、機能概

佐藤:〒153-0043 東京都目黒区東山2-8-11 目黒ビル新別館1F

株式会社パスコ 研究開発センター TEL: 03-3715-4011

E-mail:[email protected]

(2)

要の順に紹介する.

2. ネットワーク空間解析ツールの構成

本ツールは,ESRI 社の ArcMap(ArcGIS Ver.3)の拡 張機能として開発を行った.プログラムとしては,

解析処理を行うコア部分と,ArcMap から起動され るグラフィックユーザインターフェース(以降,

GUI)部分の大きく二つに分かれて開発されている.

コア部分の開発言語は Microsoft 社の Visual C++

2008 を用いて開発しており,.Net Framework として 開発を行った.そのためコア部分は ArcMap に限ら ず様々なプログラムに応用が可能である.また GUI の開発言語は同じく Microsoft 社の Visual C# 2008 を 用いた.また, K 関数法などのグラフ表示が必要な 部分では,R 言語で読み込みが可能な形式(R コー ド)で出力を行い,その出力結果を R 言語から読み 込むことによりグラフ表示を可能とした.

本ツールでは,基本的にひとつの解析機能に対し てひとつのダイアログボックス(図 1,図 3,図 5,

図 7 など)が表示され,そのダイアログボックス上 で必要最小限のパラメータを指定し,解析を実行す ることによって結果を得る,という単純な操作方法 をすべての解析機能において踏襲した.

3. ネットワーク空間上の解析ツールの機能

本ツールでは,ネットワークボロノイ図生成,ネ ットワークカーネル密度法,ネットワーク点分布パ ターン解析,ネットワーク補間法,ネットワークド ロネー図生成,ネットワーククランピング,ポイン ト間経路距離マトリクス出力機能および隣接ノード 関係テーブル出力機能がある.以降にいくつかの機 能の概要を述べる.

3.1.ネットワークボロノイ図生成機能

ネットワークボロノイ図とは,ネットワーク空間 上の点分布に対して最短経路距離圏を示すものであ る.本ツールでは,図 1 に示すようなダイアログボ ックス上で,解析対象ネットワーク,ボロノイ母点,

解析結果表示のためのラインシェープファイルおよ びポイントシェープファイルの出力先を指定するだ けでネットワークボロノイ図の生成が可能となる.

図 2 は出力例を示す.白丸が解析対象となる点で,

この点の解析対象ネットワーク上の最寄りの地点

(黒丸)を探索し,この地点をボロノイ母点とした ネットワークボロノイ図を表示したものである.

3.2.ネットワークカーネル密度推計

ネットワークカーネル密度推計とは,ネットワー ク空間上に分布する点的事象がどのあたりで多発し ているかを密度として地図上に表示する方法である

( Okabe et al., 2009 ).

本ツールでは,図 3 に示すようなダイアログボッ クス上で,解析対象ネットワーク,解析対象となる 点,カーネルタイプ,カーネルバンド幅,密度を表 示するためのセグメント長(セル幅)および解析結 果表示のためのラインシェープファイルおよびポイ ントシェープファイルの出力先を指定することによ り解析が可能となる.本ツールで利用可能なカーネ ルタイプとしては, Equal split continuous at nodes と

図 1 ネットワークボロノイ図生成機能設定画面

図 2 ネットワークボロノイ図

○:解析対象点

●:解析対象点の最寄り点(ボロノイ母点)

(3)

Equal split discontinuous at nodes の二つの選択が可能 である.詳細は Okabe et al.(2009)を参照されたい.

図 4 は解析結果の一例である.セグメント(セル 幅以下の長さで分断されている)の中央地点におけ る密度値がグラデーション表示され,密度の高低が 地図上に表示される.なお,解析結果のラインシェ ープは 3D に対応しており, ArcGIS 3D Analysis の機 能を利用すれば 3 次元表示も可能となっている.

3.3.点分布パターン解析機能

本ツールでは,点分布パターン解析手法として,

最近隣距離法(四茂野, 1993),条件付き最近隣距離法 (Okabe and Miki, 1984), K 関数法およびクロス K 関 数法(山田・岡部, 2000),ボロノイクロス K 関数法 (佐藤・岡部, 2007)を利用することが可能である.こ れらのツールはネットワーク空間上で点分布パター ンを凝集型,ランダム型,均等型に分類することが 可能なものである.

図 5 はネットワーククロス K 関数法用のダイアロ グボックスで,解析対象ネットワーク,解析対象と なる基盤点と非基盤点,シミュレーション回数,累 積グラフ横軸の集計間隔,棄却域,シミュレーショ ンにより求められる期待値と観測値の CSV ファイ ルおよびグラフ出力のための R コードの出力先を指 定することにより解析が可能となる.

図 6 は解析結果( R コード)を R 言語により表示 したものである.

3.4.ネットワーク補間機能

空間補間をネットワーク空間上で行うツールであ る.観測地点で得られている観測値を用いて,ネッ トワーク空間上の地点全体もしくは値が未知である 地点の推定値を求めることが可能となる。

図 7 のようなダイアログボックス上で,解析対象 図 3 ネットワークカーネル密度推計設定画面

図 4 ネットワークカーネル密度推計結果

○:解析対象点

●:解析対象点のネットワーク上の最寄り点

図 5 ネットワーククロス

K

関数法設定画面

図 6 ネットワーククロス

K

関数法結果

(4)

ネットワーク,観測地点およびその観測値,補間タ イプ,バンド幅,推定値表示のためのセグメント長

(セル幅)および解析結果表示のためのラインシェ ープファイルおよびポイントシェープファイルの出 力先を指定することにより解析が可能となる.補間 タイプとしては,スプライン補間,スプライン近似,

逆距離加重法(塩出, 2004)の 3 種類を選択すること が可能である.また、解析結果はカーネル密度推計 と同様に 3D シェープファイルで出力される。

図 8 は解析結果で、カーネル密度法と同様にグラ デーション表示される。

4. おわりに

本稿では,ネットワーク空間上の解析ツールに関して その機能の概要を紹介した.本ツールは,アカデミック ユーザに対して,東京大学空間情報科学研究センター のホームページより所定の手続きを経て,無償で利用し てもらえるよう計画が進められている

注 1)

謝辞

ネットワーク補間に関しては,明治大学の杉原厚吉教 授に多大なるご支援を賜った.ここに謝意を表したい.

注1)

本ツールの著作権は株式会社パスコに帰属する。

参考文献

奥貫圭一・塩出志乃・岡部篤行・岡野京子・金子忠明 (2005) ネットワーク上の空間分析のためのソフトウェ ア SANET 第 3 版の開発.「地理情報システム学会講 演論文集」, 14, 337-340.

佐藤俊明・岡部篤行 (2006) ネットワークボロノイクロス K 関数法の提案とそのツール開発.「GIS-理論と応 用」, 14(2), 53-62.

塩出志乃 (2005) 逆距離加重法によるネットワーク空間 上での点補間に関する研究.「GIS-理論と応用」, 13(1), 33-41.

山田育穂・岡部篤行 (2000) ネットワーク空間における

K 関数法.「GIS-理論と応用」, 8(1), 75-82.

四茂野英彦 (1993) ネットワーク上での最近接距離分 布の計算可能性.「GIS-理論と応用」, 1, 47-56.

Okabe, A., Okunuki, K. and Shiode, S. (2006) SANET:

A Toolbox for Spatial Analysis on a Network.

Geographical Analysis, Vol.38. pp.57-66.

Okabe, A. and Miki, F. (1984) A conditional

nearest-neighbor spatial association measure for the analysis of conditional locational interdependence.

Environment and Planning A, Vol.16. pp.163-171.

Okabe, A. and Satoh, T. (2009) Spatial Analysis on a Network. In A. Stewart Fotheringham and Peter A.

Rogerson. eds. The SAGE Handbook of Spatial Analysis, Los Angeles・London・New Delhi・Singapore:

SAGE, pp.443-464.

Okabe, A., Satoh, T. and Sugihara, K. (2009) A kernel density estimation method for networks, its

computational method and a GIS-based tool.

International Journal of Geographical Information Science, Vol.23:No.1. pp. 7-32.

図 7 ネットワーク補間法設定画面

図 8 ネットワーク補間結果

●:解析対象点の最寄り点

図 1  ネットワークボロノイ図生成機能設定画面
図 7  ネットワーク補間法設定画面

参照

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