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35 40
45
練 習
問 題
次の文章を読んで︑あとの問いに答えなさい︒ 八月も終わりになった︒ 信子はあす市の学校の寄宿舎へ帰るらしかった︒指の傷が治ったので︑天理様へお礼に行ってこいと母に言われ︑近所の人に連れられて︑そのお礼も済ませてきた︒その人がこの近所では最もネッシンな信者だった︒﹁荷 に札 ふだは?﹂信子の大きなこうりをシバってやっていた兄がそう言った︒﹁何を立って見とるのや︒﹂兄がおこったようにからかうと︑信子は笑いながら探しに行った︒﹁ないわ︒﹂信子がそんなに言って帰ってきた︒﹁いや︑まだたくさんあったはずや︒あのひきだし見たか︒勝子がまたしまいこんどるんやないかな︒いっぺん見てみ︒﹂兄がそんなに言って笑った︒勝子は自分のひきだしへごくくだらないものまで︑拾ってきてはしまいこんでいた︒﹁荷札ならここや︒﹂母がそう言って︑それ見たかというような軽い笑 えがお顔をしながら持ってきた︒﹁やっぱり年寄りがおらんとあかんて︒﹂兄はそんなジョウアイのこもったことを言った︒
晩には母が豆をいっていた︒﹁峻 たかしさん︒あんたにこんなのはどうですな︒信子が寄宿舎へ持って帰るおみやげです︒一 いっ升 しょうほど持って帰っても︑じきにぺろっとなくなるのやそうで⁝⁝︒﹂
峻が話を聞きながら豆をかんでいると︑裏口で音がして信子が帰ってきた︒﹁貸してくれはったか︒﹂
1
①
㋐
*1㋑
㋒
② ﹁はあ︑裏へ置いといた︒﹂﹁雨が降るかもしれんで︑ずっと中へ引きこんでおいで︒﹂﹁はあ︑引きこんである︒﹂﹁吉 よし峰 みねさんのおばさんがあしたお帰りですかて⁝⁝︒﹂信子は何かおかしそうにことばをとぎらせた︒﹁あしたお帰りですかて?﹂母が聞き返した︒
吉峰さんのおばさんに︑﹁いつお帰りです︒あしたお帰りですか︒﹂と聞かれて︑信子がまごついて︑﹁ええ︑あしたA︒﹂と言ったという話だった︒母や彼 かれが笑うと︑信子は少し顔を赤くした︒
借りてきたのはうば車だった︒﹁明日一番でたつのを︑こうり乗せて停車場まで送っていってやります︒﹂母がそんなに言ってわけを話した︒
たいへんだな︑と彼は思っていた︒﹁勝子も行くて?﹂信子が聞くと︑﹁行くのやと言うと︑今夜は早うからおやすみや︒﹂と母が言った︒ 彼は︑朝が早いのに荷物を出すなんてめんどうだから︑今夜のうちに切符を買って︑先へ手荷物で送ってしまったらいいと思って︑﹁ぼく︑今から持っていきましょうか︒﹂と言ってみた︒一つには︑彼自身体 てい裁 さい屋 やなので︑年ごろの信子の気持ちを先まわりしたつもりであった︒しかし母と信子があまり﹁かまわない︑かまわない︒﹂というのであちら任せにしてしまった︒
夏の朝の明け方を三人で︑ひとりはうば車をオし︑ひとりはいでたちをしたひとりに手を引かれ︑停車場へ向かっていく︑その出発を彼は心に思い浮 うかべてみた︒美しかった︒ ③
④
⑤㋓⑥
⑦
─ 5 ─
﹁おタガいの心の中でそうしたBをあてにしているのじゃなかろうか︒﹂そして彼は心が清く洗われるのを感じた︒
︵梶 かじ井 い基 もと次 じ郎 ろう﹃城のある町にて﹄︶
*1こうり=柳 やなぎや竹で編み︑衣類などを納める直方体の入れ物︒ 問一 線㋐〜㋔のかたかなを漢字に直しなさい︒
問二 線①﹁そのお礼﹂とありますが︑どんなことに対するお礼ですか︒
問三 線②﹁貸してくれはったか﹂とありますが︑何を何のために借りたのですか︒
問四 Aにあてはまる言葉として最も適当なものを次のうちから選び︑記号で答えなさい︒ ア 帰りますイ お帰りです
ウ 帰るはずです
エ お帰りになるはずです 問五 線③﹁年ごろの信子の気持ちを先まわりした﹂とありますが︑﹁彼﹂は︑信子の気持ちをどのように推察したのですか︒三十五字以 ㋔
㋐㋑って㋒
㋓し㋔おい 内で具体的に書きなさい︒
問六 線④﹁あちら任せにしてしまった﹂とありますが︑どんなことを任せたのですか︒
問七 線⑤・⑥・⑦の﹁ひとり﹂は︑それぞれだれのことですか︒文中の言葉で答えなさい︒
⑤ ⑥
⑦
問八 Bにあてはまる言葉として最も適当なものを次のうちから選び︑記号で答えなさい︒ ア 出発のあわただしさ イ 出発の寂 さびしさウ 出発の楽しさ エ 出発のむなしさ 問九 この文章は︑大きく二つの場面に分けることができます︒後半の場面の初めの五字を文中から書き抜 ぬきなさい︒
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5 10
15 20
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次の文章を読んで︑あとの問いに答えなさい︒ そのころは日課として小説を書いている時分であった︒飯 めしと飯の間はたいてい机に向 むかって筆をにぎっていた︒静かな時は自分で紙の上を走るペンの音を聞くことができた︒伽 が藍 らんのような書 しょ斎 さいへは誰 だれも入ってこない習慣であった︒筆の音にさびしさという意味を感じた朝も昼も晩もあった︒しかし時にはこの筆の音がぴたりとやむ︒またやめねばならぬおりもだいぶあった︒その時は指の股 またに筆をはさんだまま手の平へあごをのせて硝 ガラス子越 ごしに吹 ふき荒れた庭を眺 ながめるのが癖 くせであった︒それがすむとのせたあごを一応つまんでみる︒それでも筆と紙がいっしょにならない時は︑つまんだあごを二本の指で伸 のしてみる︒Ⅰ縁 えん側 がわで文鳥がたちまち﹁ちよちよ﹂と二声鳴いた︒
筆を置いて︑そっと出て見ると︑文鳥はわたしの方を向いたまま︑止まり木の上から︑のめりそうに白い胸を突 つき出して︑高く﹁ちよ﹂といった︒わたしはかごの傍 そばにしゃがんだ︒文鳥はふくらんだ首を︑二︑三度縦横に向け直した︒やがて一かたまりの白いからだが︑ぽいと止まり木の上を抜 ぬけ出した︒︵ A ︶と思うと︑きれいな足の爪 つめが︑半分ほど餌 え
壺 つぼの縁から後ろへ出た︒小指を掛 かけてもすぐひっくり返りそうな餌壺は︑つり鐘 がねのように静かである︒︵ B ︶なんだか淡雪の精のような気がした︒文鳥はつとくちばしを餌壺のまん中に落とした︒そうして︑二︑三度左右に振 ふった︒きれいにならして入れてあった粟 あわがⅡかごの底にこぼれた︒文鳥はくちばしをあげた︒のどの所でかすかな音がする︒また︑くちばしを粟のまん中に落とす︒また︑かすかな音がする︒その音がおもしろい︒静かに聞いていると︑丸くて細やかで︑しかも非常にすみや
1
*1
①
㋐
②
㋑
㋒ かである︒菫 すみれほどの小さい人が︑黄 こ金 がねの槌 つちで瑪 め瑙 のうの碁 ご石 いしでもつづけざま にたたいているような気がする︒くちばしの色を見ると︑紫 むらさきを薄く混ぜた紅のようである︒その紅がしだいに流れて︑粟をつつく口先のあたりは白い︒象 ぞう牙 げを半透明にした白さである︒このくちばしが︑粟の中へはいるときは︑非常に早い︒左右にふりまく粟の珠 たまも︑非常に軽そうだ︒ ︵ C ︶かごの底に飛び散る粟の数は︑幾 いく粒 つぶだかわからない︒それでも︑餌壺だけは︑寂 せき然 ぜんとして静かである︒︵ D ︶重いものである︒わたしは そっと書斎へ帰って︑ペンを紙の上に走らせることにした︒縁側では文鳥が﹁ちち﹂と鳴く︒おりおりは﹁ちよ︑ちよ﹂とも鳴く︒外では木 こ枯 が
らしが吹いていた︒
︵夏 なつ目 め漱 そう石 せき﹃文鳥﹄︶
*1伽藍=僧 そうたちが仏道を修行する寺院の建築物のこと︒ *2寂然=静かなさま︒ 問一 線㋐〜㋔の漢字の読みをひらがなで書きなさい︒ ︵
4点×
5︶ 問二 Ⅰ・Ⅱにあてはまる言葉として最も適当なものを次のうちから選び︑それぞれ記号で答えなさい︒ ︵
6点×
2︶
Ⅰ ア だから イ しかも
ウ または エ すると ③④⑤
㋓
㋔
*2
⑥
㋐れた㋑㋒
㋓く㋔
得点
100点
総
合
問
題
(1)
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Ⅱ ア そろそろと イ はらはらとウ きらきらと エ はたはたと 問三 この文章には︑次の一文が抜けています︒文中に戻 もどすとすると︑ ︵ ︶A〜Dのどこに入れるのが最も適当ですか︒記号で答えなさい︒ ︵
8点︶ さすがに文鳥は軽いものである︒ 問四 線①﹁筆の音にさびしさという意味を感じた﹂とは︑どういうことですか︒最も適当なものを次のうちから選び︑記号で答えなさい︒ ︵
10点︶ ア ひっそりと静かな場所で使う筆からは︑さびしそうな音が出ていたということ︒
イ 筆の音が聞こえるほどの静けさの中に一人でいることを︑さびしく感じたということ︒ウ 小説を書くことに集中できず︑自分で使う筆の音がさびしく聞こえたということ︒
エ もうしばらくすると筆が進まなくなることが予感され︑さびしい思いになったということ︒
問五 線②﹁筆と紙がいっしょにならない﹂とは︑どういうことですか︒最も適当なものを次のうちから選び︑記号で答えなさい︒
︵
8点︶ ア ペンのインクが紙の上でかすれてしまうということ︒ イ 手が疲 つかれてしまってペンを持てないということ︒ウ 体を動かしたいという思いが頭を離 はなれないということ︒
エ 小説を書き進めることができないということ︒ 問六 線③﹁菫ほどの小さい人﹂︑④﹁黄金の槌﹂︑⑤﹁瑪瑙の碁石﹂は︑何をたとえたものですか︒それぞれ文中の言葉を使って書きなさい︒ ︵
6点×
3︶
③ ④
⑤
問七 線⑥﹁そっと﹂には︑﹁文鳥﹂に対する筆者のどんな気持ちが表れていますか︒次の︹ ︺にあてはまる言葉を書きなさい︒ ︵完答
12点︶ 文鳥を
という 気持ち︒ 次の 線部を正しい敬語表現に直して書きなさい︒ ︵
4点×
⑴あなたはコーヒーと紅茶とどちらにいたしますか︒ 3︶ ⑵ わたしの母がお宅にお行きになります︒
⑶ 校長先生が教室に来た︒