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論文の内容の要旨 氏名:大

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Academic year: 2021

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論文の内容の要旨

氏名:大 隅 歩

博士の専攻分野の名称:博士(工学)

論文題名:強力空中超音波を利用したコンクリートの火害計測技術に関する研究

近年、強力空中音波を利用した新たな応用技術として、物体内の非接触センシング技術の研究が精力的 に行われており、多方面から注目を集めている。ここで使用される音波の周波数は数kHzから数百kHz である。例えば、代表的な技術として、一つは音圧レベル約120 dBの数kHzの音波を建築物に照射して 非接触で励振させ、物体表面の振動を光学機器で計測し、解析することで建築物内部の欠陥を検出する方 法である。この技術の最大の問題は、照射音波が騒音になってしまうことである。長時間暴露した場合に は難聴になりうる音波強度であり、しかもヒトの聴感にとって最も感度のよい周波数であるため防音が難 しく、使用する場所と時間に制限があるなど実用の点で問題を抱えている。もう一つは、百kHz以上の強 力超音波を用いて材料内部の欠陥を検出する技術である。高い周波数を使用するので分解能に優れている が、強力音波の発生が困難なため被測定物と音源の位置関係の設定を極めて厳密に行う必要があり、検査 対象物と検査場所が限定されてしまう。

これに対し、本研究が提案する方法の最大の特徴は、音圧レベル160 dB以上の極めて強力な空中超音波 を使用していることである。音波が強力であるため固体物を容易に非接触で励振することが可能であり、

被測定物と音源の位置関係に自由度がある。また、この音波は強い非線形性を有し、駆動周波数に加えて 整数次の高調波が発生するため、対象物表面に複数周波数の振動を同時に発生させることができる。しか も、点状に集束する音波を用いているので分解能の点からも有利である。音波の周波数は20 kHz~50 kHz であり、人間の可聴範囲外であるからほぼ無騒音の状態で実用することができ、使用する場所や時間に制 限がないことも大きな特徴になっている。

なお、音波照射によって発生する物体表面の振動は、光学機器であるレーザドップラ振動計で計測して おり、これにより完全非接触のセンシングが可能となる。また、レーザドップラ振動計に使用するレーザ 光のスポット径は極めて小さいため、高分解能の計測を行うことができる。

以上の特徴を持つ本研究の計測手法は、広く利用できる可能性がある。その一つが火災にあった耐火建 築資材の火害の計測である。建築物の火害の状況を把握することは、出火原因の特定や建物の再使用の可 否、またそれに伴う補修規模を決める上で極めて重要である。計測の主な対象はコンクリート壁であり、

その調査方法は多岐に渡るが、精度の高い方法は破壊検査に限定されているのが現状である。しかし、こ の調査方法ではコンクリート壁の一部を破壊して行うため、実施には制限が伴う上に多大な時間と労力が かかることが問題点となっている。そのため、簡便かつ非破壊による精度の高い検査法が望まれている。

本研究の目的は、コンクリートの火害を非接触・非破壊で精度よく簡便に計測するシステムを構築する ことにある。そのための新たな手法として、強い非線形性を有する強力空中集束超音波とレーザドップラ 振動計を用いた計測技術を考案し、実際の火災現場で実用可能となる新たな非接触・非破壊方式の火害計 測システムの実現を目指している。

本論文は7章より構成されており、以下その概要について述べる。

1章「緒言」では、本研究の背景と目的、火害の診断と動向、本論文の構成並びに各章の概要を述べ た。

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2章「計測原理と非線形空中超音波の発生」では、コンクリートの火害を強力空中超音波を用いて非接 触かつ非破壊で行う新たな手法を提案し、その計測原理を示した。

また、強力空中超音波の特徴の一つである非線形音波の発生とその利用について提案し、強力音波発生 のための音源として駆動周波数19.6 kHz、26.8 kHzおよび50.8 kHzの縞モード振動板式点集束型音源を 作成し、その照射音波特性について比較検討した。その結果、照射音波強度および装置の機動性、操作性 を考慮し、駆動周波数26.8 kHzの音源が実用面から適当であることを示した。

3章「非線形空中超音波による固体物の非接触励振と振動特性」では、強力集束音波を固体物に照射 した際に発生する振動についての基礎検討について述べた。

まず、駆動周波数26.8 kHz音源の強力集束空中超音波を材質が均一である固体試料(アクリル材)に照射 したところ、試料表面には非線形超音波の周波数に対応した振動が発生することを明らかにし、その振動 速度は照射音波の音圧に対応することを示した。

次に、試料と音源の距離関係を変化させた場合には、両者間に形成される音響共振の影響により、試料 表面の音圧が周期的に僅かに変化し、しかもこのときの試料表面の振動速度は音圧特性にはまったく対応 しないことを示し、その原因が振動計測用レーザ光への音場の影響であることを明らかにした。また、計 測用レーザ光が音場の影響を強く受けている箇所を明らかにし、その対策を行ったところ、照射音波の音 圧に対応した振動速度を計測できることを明らかにした。

4章「コンクリートの火害計測の実験」では、強力集束空中超音波とレーザドップラ振動計を用いた 本手法を、火災現場を想定したコンクリート試料に適用し、火害を推定するための基礎検討について述べ た。

高温加熱のコンクリート試料を本手法により計測したところ、熱の影響を強く受けた試料ほど振動特性 に大きな違いが見られた。また、特性の違いは特に高調波成分において顕著であった。そこで、計測結果 を振動速度の基本周波数成分と高調波成分の割合を表わすひずみ率を用いて評価することを提案し、これ によりコンクリート表面温度と振動特性の関係を明確にできることを明らかにした。

さらに、コンクリート表面の最高到達温度がほぼ等しく、かつ温度履歴特性が異なる試料についても、

振動特性に違いが認められたことから、本手法によりコンクリートの火害の程度を推定できる可能性があ ることを明らかにした。

5章「火害計測システムの構築」では、火災現場に対応できるよう音源の改良も含めた計測機材のコ ンパクト化、および現場での計測の簡単化、効率化を目指した実用可能なシステムの構築について述べた。

火災現場での機動性を高めるには、ハンドリング可能なサイズまで装置を小型化することが必要不可欠 であり、従来音源をL字型振動伝送方式に改良することにより、音源とレーザヘッドで構成するセンサヘ ッドのコンパクト化を行った。また、計測装置全体についても、現場で実用できる音源駆動用電源とレー ザドップラ振動計のコントローラを中心とする機動性に優れた計測システムを構築した。

さらに、現場における計測作業の操作性および計測結果の処理と判定を直ちに行えるよう、専用のプロ グラムを作成した。また、これの実証試験を行い、火災現場で適用できる見通しを得た。

6章「模擬火災現場における検証実験」では、実際の集合住宅において火災を発生させ、受熱したコ ンクリート壁に対して本計測手法による火害の推定を行い、本手法および構築した計測装置の有効性につ いて検証した。

その結果、模擬火災現場の劣悪な環境下においても、本計測システムは問題なく動作することが確認で

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きた。また、模擬火災現場における燃焼実験より、火災にあったコンクリート壁面の温度履歴は各部位に よってその特性が大きく異なることを明らかにした。

さらに、火災実験におけるコンクリート壁の温度履歴と本手法の計測結果には相関関係があり、高温に 長時間曝されていた部位ほど振動速度の歪み率が大きくなることを確認した。このことより、本計測手法 が実火災におけるコンクリート壁の火害推定にも十分有効であることが明らかなった。

以上、本研究では強力空中超音波と光学機器を組み合わせた、これまでに例を見ない全く新たなコンク リート火害を推定するための手法を提案し、その有効性を明らかにした。また、実際の火災現場で本手法 を実用するための計測システムを構築し、実地試験においてもその有効性を明らかにした。

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