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第9回 登記上の利害関係人の承諾を証する情報、印鑑・住所を証する情報、登記申請の処理、審査請求

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(1)

第9回 登記上の利害関係人の承諾を証する情報、印鑑・住所を証する情報、登記申 請の処理、審査請求

6 登記上の利害関係を有する第三者の承諾を証する情報

(1)総論

・登記上の利害関係を有する第三者とは、登記記録上から形式的に判断し、ある登 記が申請され、実行された場合に不利益を受ける者をいう。

・このような利害関係を有する第三者が存在する登記を申請する際には、これらの 者の承諾等を証する情報を提供すべき場合がある。

(2)承諾を証する情報を必ず提供しなければならない場合

・次の場合は登記上の利害関係を有する第三者の承諾を証する情報または当該第三者 に対抗できる裁判があったことを証する情報を提供しなければ、申請が却下される

(25条9号、令7条6号→別表)。

① 抹消登記(68条、令別表26添付情報欄へ)。

・所有権移転の登記の抹消を申請する場合にはその所有権を目的として登記された抵 当権の登記名義人の承諾を証する情報を提供することを要する(S30・12・20民甲 2639号回答)。

② 抹消された登記の回復の登記(72条、令別表27添付情報欄ロ)

・先順位根抵当権について解除を原因として抹消登記後、これを錯誤として抹消回復 登記をする場合、抹消当時から設定登記がされている後順位根抵当権者があるとき はその者の承諾を要する(S52・6・16・民三2932号回答)。

③ 所有権に関する仮登記に基づく本登記(109条1項、令別表69添付情報欄イ)

・仮登記後数次所有権移転の登記がされている場合において仮登記に基づく所有権移 転の本登記を申請するときは、登記上の利害関係人の承諾書として、現在の所有権 登記名義人の承諾書のみを添付すれば足りる(S37・7・30民甲2117号通達)。

④ 所有権の更正登記(66条、68条、令別表26添付情報欄へ)

・債権者代位によりなされた、甲、乙共有名義の相続登記を甲単有名義に更正する場 合、代位登記を行った債権者は利害関係人に該当する(S39・4・14第1498号通達)。

(3)承諾を証する情報の提供が任意である場合

① 権利の変更・更正の登記(66条、令別表25添付情報欄ロ)

・権利の変更の登記、一部抹消の性質のない更正登記については、登記上の利害関係 を有する第三者がある場合、当該第三者の承諾を証する情報があるときに限り付記 で登記され、提供することができないときは主登記で登記される。

・抵当権の被担保債権の利息を引き上げる旨の登記を申請する場合、必ずしも後順位 抵当権者の承諾を要しない。承諾のない場合は主登記で登記がなされ、後順位者に 対抗できない登記となる。

(2)

7 住所証明情報

(1)総論

・住所証明情報とは、表題部所有者または所有権の登記名義人となる者の住所を証す る市区町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報をいう(令 7条 1項 6 号、令別表2添付情報ロ等)。

・不動産の表題登記、所有権保存の登記、所有権移転の登記を申請するときは、登記 される者の住所に誤りがないことを確認し虚無人名義の登記を防止するため、申請 情報と併せて、表題部所有者または所有権の登記名義人となる者の住所証明情報を 提供することを要する。

(2)住所証明情報を提供すべき場合

① 表題部所有者についての更正の登記(令別表2添付情報欄ロ)

② 土地の表題登記(令別表4添付情報欄ニ)

③ 建物の表題登記(令別表12添付情報欄ニ)

④ 合体による登記等(令別表13添付情報欄ニ)

⑤ 共用部分である旨等の規約廃止(58条6項・7項)による建物の表題登記

(令別表 21添付情報欄ハ)

⑥ 所有権の保存の登記(令別表28添付情報欄ニ)

⑦ 表題部所有者からの転得者が区分建物について申請する所有権の保存登記

(74条2項、令別表 29添付情報欄ハ)

⑧ 所有権の移転の登記(令別表30添付情報欄ロ)

(3)提供の要否

・上記(2)⑥⑦⑧について、次の場合に住所証明情報の提供の要否が問題となる。

① 仮登記の場合

・本登記の際に提供すればよく、提供は不要(S32・5・6民甲879号)。

② 判決による登記の場合

・判決時と申請時の住所が一致しているとは限らないため提供が必要(S37・7・28 民甲 2116号)。

③ 初めて所有権(持分)を取得する者がいる所有権更正登記

・初めて所有権(持分)を取得する者について提供が必要(登記研究391)。

④ 嘱託登記において、官公署が登記権利者となる場合

・官公署の所在は明確であり提供は不要。

⑤ 嘱託登記において、官公署が登記義務者、私人が登記権利者となる場合

・原則どおり提供が必要。

(3)

⑥ 死者名義での登記の場合

・その者の最後の住所を証する住民票の除票の提供が必要(S32・6・28 民甲 1218 号回答)。

⑦ 共有物分割による所有権の持分の移転登記の場合

・共有名義の登記後に各共有者の氏名・住所が変更している場合があるので提供が必 要。

(4)提供の省略

① 電子申請による場合、申請人が電子証明書(規則43 条 1項 1号)を提供したと きは、その者の住所証明情報の提供に代えることができる(規則44条1項)。

② 電子申請、書面申請を問わず、住民基本台帳法 7 条 13 号に規定する住民票コー ドを提供したときは、住所証明情報の提供は必要ない(令9条、規則36条4項)。

(5)書面申請における住所証明書

① 自然人の場合

・住民票の写し、戸籍の付票、印鑑証明書を住所証明書とすることができる。

② 法人の場合

・登記事項証明書や代表者事項証明書を添付する。

(4)

8 代表者資格証明情報

(1)総論

・法人が登記を申請する場合には、法務省令で定める場合を除き、法人の代表者の資 格を証する情報(代表者資格証明情報)の提供を要する(令 7 条 1項 1号)。また その法人の代表権のある者が申請していることを確認するために、代表者の氏名を 申請情報の内容としなければならない(令3条2号)。

(2)具体例

・代表者資格証明情報は、具体的には、登記を必要とする法人の場合は登記事項証明 書(商業登記法 10条、各種法人等登記規則5条)、登記を必要としない法人の場合 はその代表者資格に関する所轄官庁の長が作成する証明情報などである。

・これらの情報のうち、市区町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した書面に ついては、作成後 3か月以内のものでなければならない(令 17条1項)。

(3)提供の省略

・次の場合には、代表者資格証明情報の提供を省略することができる。

① 申請を受ける登記所が、当該法人の登記を受けた登記所と同一で、かつ法務大臣 が指定した登記所(大規模であり、不動産登記と商業登記の事務を連携して行うの が困難な登記所)以外のものである場合(令7条1項1号、規則36条1項1号)

・申請人である法人が、同一登記所において商業登記・法人登記をしていた場合、そ の登記所において代表者の資格を確認できることから、提供を不要としている。

② 申請を受ける登記所が、当該法人の登記を受けた登記所と同一で、かつ法務大臣 が指定した登記所に準ずるものとして法務大臣が指定した登記所である場合(令7 条1項1号、規則 36条1項2号)

・商業・法人登記事務の集中化実施後において、登記の申請を受ける登記所が集中化 により商業・法人登記事務を取り扱わないこととされる登記所となる場合であって も従前同様提供を不要とするための措置である(法務省民二1972号)。

③ 支配人その他の法令の規定により登記を申請できる法人の代理人が、当該法人を 代理して登記を申請する場合(令7条1項1号、規則36条1項 3号)

・法人が、支配人その他の法令の規定により登記を申請できる法人の代理人によって 登記を申請する場合には、その代理人自身の代理権限証明情報(令 7条1項2号)

の提供が要求されているので、代表者の資格証明情報は不要となる。

・代表取締役A、支配人Bの場合、Aの資格証明情報は不要という意味。

④ 嘱託登記の場合(令7条2項)

・不動産に関する国の機関の所管に属する権利について命令又は規則により指定され た官庁又は公署の職員が登記の嘱託をする場合には、当該職員の資格証明情報は不 要となる。

(5)

(4)提供の代替

・電子申請をした代表者が、商業登記規則33条の 8第2項に規定する電子証明書(規 則 43 条1 項2 号)を提供したときは、これをもって代表者資格証明情報の提供に 代替できる(規則 44条2項)。

9 代理権限証明情報

(1)総論

・代理人によって登記の申請をするときは、「当該代理人の氏名(名称)・住所」、「代 理人が法人であるときはその代表者の氏名」を申請情報の内容としなければならな い(令 3 条 3 号)。この登記申請に関する代理人の権限を証明するための添付情報 が、代理権限証明情報である(令7条1項2号)。

(2)代理人の種類

・代理人には、登記申請行為に関してだけ代理権を付与された者(司法書士等)と、

登記の原因となった実体法的な法律行為も含めて代理権を有する者(親権者・成年 後見人のような法定代理人・法人の支配人等)がある。

・また、その代理権の発生原因には、司法書士のような本人である申請人の委任に基 づく任意代理の場合と、親権者や成年後見人のような法定代理の場合がある。

(3)代理権限証明情報の内容

① 任意代理の場合

・登記申請行為に関して委任契約などにより個別的代理権を付与された者は、その委 任契約の存在を証明する情報を提供する必要がある。書面申請によるときは委任状

(委任による代理人の権限を証する情報を記載した書面-規則49条1項1号参照)

を添付する。

② 法定代理

・法定代理権に関しては、制限行為能力者(未成年者・成年被後見人・被保佐人)の 法定代理人の場合には戸籍事項証明書(戸籍法 10 条・120 条)や後見登記事項証 明書(後見登記等に関する法律 10条)、登記のある支配人の場合には支配人に関す る登記事項証明書(商業登記法 10 条・43 条、商業登記規則 56 条以下)を添付す る。

・これらの情報のうち、市区町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した書面に ついては、作成後 3か月以内のものであることを要する(令 17条1項)

(4)提供の省略

・次の場合には、代理権限証明情報(資格を証する情報)の提供を省略することがで きる。

(6)

① 申請を受ける登記所が、当該法人の登記を受けた登記所と同一で、かつ法務大臣 が指定した登記所(大規模であり、不動産登記と商業登記の事務を連携して行うの が困難な登記所)以外のものである場合(令7条1項1号、規則36条1項1号)

・申請人である法人が、同一登記所において商業登記・法人登記をしていた場合、そ の登記所において代理人の資格を確認できることから、提供を不要としている。

② 申請を受ける登記所が、当該法人の登記を受けた登記所と同一で、かつ法務大臣 が指定した登記所に準ずるものとして法務大臣が指定した登記所である場合(令7 条1項1号、規則 36条1項2号)

・商業・法人登記事務の集中化実施後において、登記の申請を受ける登記所が集中化 により商業・法人登記事務を取り扱わないこととされる登記所となる場合であって も従前同様提供を不要とするための措置である(法務省民二1972号)。

(5)代理権の不消滅

・代理権は原則として本人が死亡したときに消滅するが(民法 111 条1項1号・653 条1号)、登記の申請人の任意代理人の代理権は、本人が死亡しても消滅しない(17 条1号)。登記の完了という代理の目的のための例外である。

・また、代理権は原則として代理人が死亡したときも消滅する(民法111条1項2号)。

しかし、復代理人が選任されていれば、原代理人が死亡しても、復代理人は、申請 情報に本人から原代理人への委任状および原代理人から復代理人への委任状を添 付して申請できるとされている。

① 登記申請の委任があった後に委任者が死亡した場合の登記手続

・この場合、司法書士Xは改めて Cから委任を受けることを要せず、Aからの委任に 基づいて登記の申請ができる(H6・1・14民三 366号通知)。登記義務者としては亡 A相続人 Cの住所・氏名を記載し、Cが相続人であること、他に相続人がいないこ とを証する戸籍事項証明書を添付する。

事例 1

AおよびB が司法書士Xに、AからBへの所有権移転登記の申請を委任したが、

登記申請前にAが死亡し CがAを相続した。

② 登記申請の委任があった後にその委任をした法人の代表者の代表権限が消滅し た場合の登記手続

・この場合、司法書士Xは改めて Fから委任を受けることを要せず、Eからの委任に 基づいて登記の申請ができる。

D会社から Gへの所有権移転登記について、D会社の代表者Eおよび Gが司法書 士X に所有権移転登記の申請を委任した。その後登記の申請前にE が代表権を失 い、Fが新しく代表者になった。

事例 2

(7)

・Eが登記申請の委任当時、代表権を有していたことを証する情報には、D会社の閉 鎖登記事項証明書も含まれる。閉鎖登記事項証明書は 3か月以内のものであること を要しない(H6・1・14民三 366号通知)。

(6)利益相反と特別代理人の選任

・親権を行う父または母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者 は、未成年者を代理することができず、その子のために特別代理人の選任を家庭裁 判所に請求しなければならない(民法 826 条1項)。特別代理人は未成年者を代理 して、親権者との間で法律行為をする。

① 利益相反に該当する例

(ア)親権者と未成年の子の間の不動産の売買。

・ 子 が 買 主 と な る 場 合 、 売 主 と な る 場 合 の い ず れ で あ っ て も 利 益 相 反 行 為 と な る

(S23・9・18民甲 3006号回答)。

(イ)親権者の債務を担保するため、その親権に服する未成年の子の所有する不動産 に抵当権を設定すること(最判 S37・10・2)。

・親権者の意図等を考慮せず、行為自体を外形的に見て判断する。

(ウ)親権者が第三者の金銭債務について自ら連帯保証人になるとともに、子の代理 人として当該債権を担保するため、子の不動産に抵当権を設定すること。

・連帯保証人たる親権者の負担が子の不動産への抵当権設定によって軽減されるため。

(エ)親権者と未成年の子が相続人である場合に遺産分割をすること(S28・4・25 民甲 697号通達)。

・この場合は未成年の子 1 人ごとに特別代理人を選任する(S30・6・18 民甲 1264 通達)。

② 利益相反に該当しない例

(ア)親権者が未成年者の法定代理人として、未成年者の名においてその財産を処分 する行為。

(イ)親権者の所有する不動産を未成年の子に贈与すること。

・負担付の贈与は利益相反にあたる。

・贈与にかかる不動産について抵当権が設定されていても、それによって負担付贈与 となるわけではない。

(ウ)親権者とその未成年の子の共有名義で登記された不動産について「錯誤」を登 記原因として、親権者の単有名義とする更正登記をすること。

・当初から誤っていた登記を更正するだけなので利益相反にはならない。

(8)

(エ)未成年者の債務を担保するため、親権者が未成年の子に代わってその所有不動 産に抵当権を設定する行為。

(オ)代表取締役である父が、その株式会社の債務の担保として親権に服する未成年 の子の所有にかかる不動産に抵当権を設定する行為(S36・5・10民甲1042号通達)。

・利益を受けるのは会社であり、親権者個人ではないため。

(カ)他人の債務について、親権者と未成年の子が共に物上保証人となること。

・親権者と子の間では利益は相反しない。

③ 利益相反行為に基づく登記の申請

・ 利益相反に該当する法律行為を、特別代理人が未成年者を代理して行った場合、

これにもとづく登記の申請は、親権者・特別代理人・意思能力のある未成年者本 人のいずれも行うことができる(S32・4・13民甲 379号回答)。これは、登記申 請行為は既に生じた物権変動に対抗力を与えるにすぎず、登記申請行為自体が利 益相反行為に該当するとはいえないためである。

・ 親権者とその親権に服する数人の子とが遺産分割の協議をするには、未成年者1 人ごとに特別代理人を選任しなければならない(S30.6.18 民事甲第 1,264 号民事 局長通達)。

・ 未成年者相互間の利益相反行為については、そのうちの一人については親権者が 親権を行使することができ、他の未成年者については各別に特別代理人を選任し なければならない(民826条2項)。

・ 未成年の子の親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行うこととされているの で(民818条2項)、父との利益相反行為については、母親と特別代理人とが共同 で 子 を 代 表 し な け れ ば な ら な い (S23.9.18 民 事 甲 第 3,006 号 民 事 局 長 回 答 ・ S33.10.16、民事甲第 2,128号民事局長回答。)

・この事例における代理権限証明情報は次のとおりである。

事例 3

未成年者 C は両親 ABの共同親権に服している。Aが Cに不動産を売却するにあ たり Cのために特別代理人が選任され、Bと特別代理人Zが司法書士Xにこの登 記の申請を依頼した。

(ア)登記義務者Aの委任状

(イ)親権者Bの権限を証する戸籍事項証明書

(ウ)親権者Bの委任状

(エ)特別代理人Zの選任審判書

(オ)特別代理人Zの委任状 事例 4

事例 3において、親権者 ABが司法書士Xにこの登記の申請を依頼した。

(9)

・この事例における代理権限証明情報は次のとおりである。

(ア)登記義務者・親権者としてのAの委任状

(イ)親権者ABの権限を証する戸籍事項証明書

(ウ)親権者Bの委任状

(エ)特別代理人Zの選任審判書

(7)遺贈における申請人および代理権限証明情報

・遺贈による所有権移転登記の登記義務者は、あくまで登記名義人である遺贈者であ るが、その者は死亡しているので、申請人は誰になるかという問題が生じる。

・遺言執行者がいる場合には、遺言執行者が遺贈者のために代理申請を行うが、次の ものが代理権限証明情報となる。

① 遺言により遺言執行者が指定されている場合(民法1006条1項)

・遺言書および遺言者の死亡を証する戸籍事項証明書等。

・遺言は、遺言者の死亡によってその効力を生ずるが(民法 985 条)、遺言書では遺 言者の生死が確認できないため、その効力発生を証明するために遺言者の戸籍事項 証明書なども提供する必要がある。

② 家庭裁判所で遺言執行者が選任されている場合(民法1010条)

・遺言書および家庭裁判所による選任審判証明情報。

・①と異なり遺言者の死亡を証する情報の提供が不要なのは、家庭裁判所が遺言執行 者を選任する際に、遺言者の死亡の事実は審判の過程で当然確認しているためであ る。

③ 遺言により遺言執行者の指定を第三者に委託した場合(民法1006条1項)

・遺言書、遺言者の死亡を証する情報、遺言執行者の指定を証する情報。

・遺言執行者が選任されていない場合には、遺贈者の相続人が申請する。

・登記権利者・登記義務者または登記名義人が申請人となる場合は、この者の相続人 その他の一般承継人も申請人としての資格を有するので(62 条)、この場合の申請 人は代理申請ではない。

・したがって、この場合は代理権限証明情報ではなく、遺言者の戸籍事項証明書など の一般承継証明情報(相続証明情報:令7条1項5号イ)を提供する。

遺贈における遺言執行者の代理権限証明情報のまとめ

遺言執行者 遺言により指定 家庭裁判所で選任 遺言で指定を 第三者に委託

遺言書 ○ ○ ○

遺言者の死亡を

証する情報 ○ × ○

家庭裁判所の

選任審判証明情報 × ○ ×

指定を証する情報 × × ○

(10)

10 一般承継証明情報

・登記権利者・登記義務者、または登記名義人として登記を申請する者に、登記を申 請する前において死亡その他の一般承継が生じた場合には、当事者の権利義務を受 け継いだ相続人その他の一般承継人が申請人として登記を申請することができる

(62条)。

・この場合、申請人が登記権利者・登記義務者または登記名義人の相続人その他の一 般承継人である旨(令3条 11号ロ)を、申請情報に記載し、その内容の真正担保 のために、「相続その他の一般承継があったことを証する市区町村長、登記官その 他の公務員が職務上作成した情報(一般承継証明情報)」を提供しなければならな い(令7条1項5号イ)。

・具体的には個人の場合には市区町村長が作成する被相続人の戸籍事項証明書、法人 の場合には登記官が作成する法人の合併の記載がある登記事項証明書などである。

(11)

11 印鑑証明書

(1)総論

① 書面申請により登記を申請するには、一定の場合において、申請書または委任状 に印鑑証明書を添付しなければならない(令 16条2項、18条2項)。

② 登記原因につき第三者の許可、同意または承諾を証する書面を添付しなければな らない場合にも当該書面に印鑑証明書を添付することを要する(令 7 条 1 項 5 号 ハ・6号、19条2項)

③ 印鑑証明書を添付させる趣旨は、①の場合は登記申請の意思を形式的に確認する ためであり、意思の撤回のおそれがあるので、印鑑証明書は作成後3ヶ月以内のも のでなければならない(令 16条3項、18条3項)。②の場合は文書成立の真正を 担保するためであり、このような制限はない。

(2)登記申請の意思確認のための印鑑証明書

① 申請書に押印された印鑑に関する証明書

・書面申請により登記を申請する場合は、申請人またはその代表者もしくはその代理 人は法務省令で定める場合を除き、申請書に記名押印しなければならない(令 16 条1項)。

・この場合、法務省令で定める場合を除き、申請書には記名押印した者(委任による 代理人を除く)の印鑑に関する証明書を添付しなければならない(令16条2項)。

② 申請書への記名押印を要しない場合(法務省令で定める場合)

(ア)委任による代理人が申請書に署名した場合

・申請人本人が登記の申請を委任し、代理人が申請書に署名した場合、申請人本人は 申請書への記名押印を要しない(規則47条1号)。代わりに委任状への記名押印が 問題となる。

(イ)申請人またはその代表者もしくは代理人が署名した申請書について、公証人ま たはこれに準ずる者の認証を受けた場合(規則47条2号)

(ウ)申請人が次に掲げる者のいずれにも該当せず、かつ当該申請人またはその代表 者もしくは代理人が申請書に署名した場合

ⅰ 所有権の登記名義人(仮登記名義人を含む)であって、次の登記を申請するもの

(規則47条3号イ)

・当該登記名義人が登記義務者となる登記 ・共有物分割禁止の定めによる所有権の変更登記 ・所有権保存登記の抹消登記

・仮登記の抹消

・合筆の登記、合体による登記または建物の合併の登記

(12)

ⅱ 所有権の登記名義人であって登記識別情報(22条)を提供することなく担保権(根 抵当権および根質権を除く)の債務者に関する変更の登記を申請するもの(規則 47条3号ロ)

ⅲ 所有権以外の権利の登記名義人であって、登記識別情報(22条)を提供すること なく当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記を申請するもの(規則 47条3号ハ)

・事前通知等の方法による場合である。

ⅳ 21 条本文の規定により、登記識別情報の通知を受けることになる申請人(規則 47条3号ホ)

・当該登記によって登記名義人となる登記権利者等である。

③ 印鑑証明書の添付

・申請書には法務省令で定める場合を除き、記名押印した者(委任による代理人を除 く)の印鑑に関する証明書を添付しなければならない。この印鑑証明書は、記名押 印した者の住所地の市区町村長(法人の代表者の場合は登記官)が作成したもので あることを要する(令16条2項)。

・この印鑑証明書は作成後3ヶ月以内のものであることを要する(令16条 3項)。

・法定代理人が本人を代理して登記を申請するときは、法定代理人の印鑑証明書を添 付することを要する。

④ 印鑑証明書の添付を要しない場合(法務省令で定める場合)

(ア)申請を受ける登記所が、当該法人の登記を受けた登記所と同一で、かつ法務大 臣が指定した登記所(大規模であり、不動産登記と商業登記の事務を連携して行う のが困難な登記所)以外のものである場合(規則48条1号)(8 代表者資格証明 情報(3)②を参照)

(イ)申請人またはその代表者もしくは代理人が署名した申請書について、公証人ま たはこれに準ずる者の認証を受けた場合(規則48条2号)

(ウ)裁判所によって選任された者が、その職務として登記を申請する場合に、申請 書に押した印鑑について裁判書書記官が作成した印鑑証明書を添付した場合(規則 48条3号)

・破産管財人が破産財団に属する不動産を任意売却した場合の所有権移転登記等

(エ)申請人が不動産登記規則47条3号ホ(21条により登記識別情報の通知をうけ る申請人)に該当する場合

・当該登記によって利益を受ける者であり、申請意思の確認のために印鑑証明書の添 付まで要しない。

(13)

(オ)申請人が不動産登記規則47条3号イおよびロのいずれにも該当しない場合

ⅰ 所有権の登記名義人(仮登記名義人を含む)であって、次の登記を申請するもの

(規則47条3号イ)

・当該登記名義人が登記義務者となる登記 ・共有物分割禁止の定めによる所有権の変更登記 ・所有権保存登記の抹消登記

・仮登記の抹消

・合筆の登記、合体による登記または建物の合併の登記

ⅱ 所有権の登記名義人であって登記識別情報(22条)を提供することなく担保権(根 抵当権および根質権を除く)の債務者に関する変更の登記を申請するもの(規則 47条3号ロ)

(カ)官公署が登記を嘱託する場合

⑤ 具体例-申請書への記名押印および印鑑証明書の添付を要する場合

(ア)所有権の登記名義人が登記義務者となる場合の登記義務者

(イ)所有権に関する仮登記名義人が登記義務者となる場合の登記義務者

(ウ)所有権に関する買戻権の登記名義人が登記義務者となる場合の登記義務者

(エ)共有物分割禁止の定めによる所有権の変更登記をするときの共有者全員

(オ)所有権保存登記の抹消登記における登記義務者

(カ)所有権に関する仮登記の抹消登記における登記義務者

(キ)合筆等の登記の申請人

(ク)抵当権の抹消登記において、抵当権に関する登記識別情報(登記済証)を提供 しないで申請する場合の抵当権者

⑥ 具体例-申請書への記名押印を要し、印鑑証明書の添付は要しない場合

・権利の保存、移転、設定の登記を申請するときの登記権利者は申請書への記名押印 を要するが、印鑑証明書の添付は要しない(規則48条4号・47条3号ホ)。

(ア)所有権保存登記を申請する場合の申請人

(14)

(イ)所有権移転登記を申請する場合の登記権利者

(ウ)抵当権設定登記を申請する場合の抵当権者となる者

⑦ 具体例-申請書への記名押印を要しない場合

・権利の抹消登記を申請する場合の登記権利者は申請書への記名押印を要しない

(規則47条3号ホ)

(ア)所有権移転登記の抹消登記を申請する場合の登記権利者(前所有者)

・所有権移転登記の抹消により、前所有者が新たに登記名義人となるものではないた め。

(イ)抵当権抹消登記を申請する場合の抵当権設定者

(3)委任状への記名押印および印鑑証明書の添付

① 記名押印

・書面申請による場合で、委任による代理人が登記を申請するときは、申請人または その代表者は法務省令に定める場合を除き、委任状に記名押印することを要する

(令 18条1項)

② 委任状への記名押印を要しない場合(法務省令で定める場合)

(ア)申請人が署名した委任状について、公証人またはこれに準ずる者の認証を受け た場合(規則49条1項1号)

(イ)申請人が規則 47 条 3号イからホまでに掲げる者のいずれにも該当せず、かつ 当該申請人またはその代表者もしくは代理人が委任状に署名した場合

ⅰ 所有権の登記名義人(仮登記名義人を含む)であって、次の登記を申請するもの

(規則47条3号イ)

・当該登記名義人が登記義務者となる登記 ・共有物分割禁止の定めによる所有権の変更登記 ・所有権保存登記の抹消登記

・仮登記の抹消

・合筆の登記、合体による登記または建物の合併の登記

ⅱ 所有権の登記名義人であって登記識別情報(22条)を提供することなく担保権(根 抵当権および根質権を除く)の債務者に関する変更の登記を申請するもの(規則 47条3号ロ)

(15)

ⅲ 所有権以外の権利の登記名義人であって、登記識別情報(22条)を提供すること なく当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記を申請するもの(規則 47条3号ハ)

ⅳ 21 条本文の規定により、登記識別情報の通知を受けることになる申請人(規則 47条3号ホ)

(ウ)復代理人によって登記を申請する場合における代理人(委任による代理人に限 る)が、復代理人の権限を証する書面に署名した場合(規則49条1項3号)

③ 印鑑証明書の添付

・委任状に申請人等が記名押印したときは、法務省令で定める場合を除き、その者(委 任による代理人を除く)の印鑑証明書を添付することを要する(令 18条2項)

・この印鑑証明書は作成後3ヶ月以内のものであることを要する(令18条 3項)。

④ 印鑑証明書の添付を要しない場合(法務省令で定める場合)

(ア)申請を受ける登記所が、当該法人の登記を受けた登記所と同一で、かつ法務大 臣が指定した登記所(大規模であり、不動産登記と商業登記の事務を連携して行う のが困難な登記所)以外のものである場合(規則49条2項1号)(8 代表者資格 証明情報(3)②を参照)

(イ)申請人またはその代表者もしくは代理人が記名押印した委任状について、公証 人またはこれに準ずる者の認証を受けた場合(規則49条2項2号)

(ウ)裁判所によって選任された者が、その職務として登記を申請する場合に、委任 状に押した印鑑について裁判書書記官が作成した印鑑証明書を添付した場合(規則 49条2項3号)

・破産管財人が破産財団に属する不動産を任意売却した場合の所有権移転登記等

(エ)申請人が不動産登記規則47条3号ホ(21条により登記識別情報の通知をうけ る申請人)に該当する場合

・当該登記によって利益を受ける者であり、申請意思の確認のために印鑑証明書の添 付まで要しない。

(オ)申請人が不動産登記規則47条3号イおよびロのいずれにも該当しない場合

ⅰ 所有権の登記名義人(仮登記名義人を含む)であって、次の登記を申請するもの

(規則47条3号イ)

・当該登記名義人が登記義務者となる登記 ・共有物分割禁止の定めによる所有権の変更登記 ・所有権保存登記の抹消登記

(16)

・仮登記の抹消

・合筆の登記、合体による登記または建物の合併の登記

ⅱ 所有権の登記名義人であって登記識別情報(22条)を提供することなく担保権(根 抵当権および根質権を除く)の債務者に関する変更の登記を申請するもの(規則 47条3号ロ)

(カ)官公署が登記を嘱託する場合

(4)文書成立の真正担保のための印鑑証明書

① 同意または承諾を証する書面への記名押印

・不動産登記令7条1項5号ハまたは6号の規定により登記原因につき第三者の許可、

同意または承諾を証する書面を添付しなければならない場合にも、法務省令で定め る場合を除き当該書面に作成者の記名押印を要する(令 19条1項)。

② 記名押印を要しない場合(法務省令で定める場合)

・作成者が署名した同意書または承諾書について、公証人またはこれに準ずる者の認 証を受けた場合(規則50条1項)。

③ 印鑑証明書の添付

・同意または承諾を証する書面には官庁または公署の作成にかかる場合その他法務省 令で定める場合を除き、記名押印した者の印鑑に関する証明書を添付することを要 する(令 19条2項)。

・この印鑑証明書には特別の規定がないため、作成後3ヶ月以内のものであることを 要しない。

④ 印鑑証明書の添付を要しない場合(法務省令で定める場合)

・規則48条1項 1号から 3号までが準用される(規則 50条 2項)。(2)④(ア)~

(ウ)を参照。

⑤ 具体例

(ア)敷地権のない区分建物につき転得者が所有権保存登記を申請する場合には申請 人が表題部所有者から当該区分建物の所有権を取得したことを証する書面(令別 表 29 添付情報欄イ)の添付が必要である。この書面には、表題部所有者または その相続人その他の一般承継人が作成した真正な書面であることを確認するた め、作成者の記名押印と印鑑証明書の添付を要する。

(イ)仮登記の登記権利者が仮登記を単独で申請する場合(107条1項)に添付する 登記義務者の承諾書には作成者の印鑑証明書の添付を要する。

(17)

(ウ)相続による権利の移転の登記の申請書に添付する遺産分割協議書には申請人以 外の相続人の印鑑証明書の添付を要する(S30・4・23民甲742号通達)。

(エ)遺産分割協議者の一部の者の印鑑証明書を添付することができないときは、そ の者に対する遺産分割協議書真否確認の勝訴判決をもつて、その者の印鑑証明に 代えることができる(S55・11・20民三第6726号回答)。

(オ)相続を原因とする所有権移転の登記の申請書に添付された遺産分割協議書が公 正証書の正本である場合は協議に参加した者の印鑑証明書を添付することを要 しない。

(カ)登記上の利害関係を有する第三者の承諾書にも作成者が記名押印し、印鑑証明 書を添付する。

(18)

12 電子署名・電子証明書

(1)電子署名

・電子署名とは、インターネットでデータを送信する際「なりすまし」「偽造・改ざん」

を防ぐため、データを「秘密鍵」によって暗号化することをいう。

④ データ A=データ A2ならデータ B は甲の秘密鍵によって暗号化されたも のであり、途中で改ざんが行われていないということになる。

③ 乙はデータBを公開鍵によって復号し、データA2を得たとする。

② 甲はデータAとデータ B+公開鍵を乙に送信する。

① 甲は秘密鍵によってデータAを暗号化し、データBを作る。

例えば、甲がデータAを乙に送信する際に次のようにする。

事例 1

甲 乙 データA データB

秘密鍵

データ B

データA2 公開鍵 公開鍵

データA =

① ③

*1 秘密鍵で暗号化されたデータは公開鍵でないと復号できないしくみになっている。

*2公開鍵から秘密鍵を割り出すことは極めて困難である。

・電子申請(オンライン申請)により登記を申請するときは、申請情報には申請人ま たはその代表者もしくは代理人は電子署名をすることを要する(12条1項)

・共同申請による登記なら、登記権利者と登記義務者の双方の電子署名が必要である。

(2)電子証明書

・電子証明書とは、ある公開鍵が本人のものであることを証明するデータで、認証機 関により発行される。

・事例1において甲が認証機関に公開鍵を登録してあれば、認証機関から電子証明書 の発行を受けることができ、公開鍵を電子証明書と共に乙に送信できる。これによ り、この公開鍵で復号できるデータが甲本人のものであることを証明できる。

・電子申請をする場合において、電子署名がなされた情報を送信するときは、電子証 明書も併せて送信することを要する(令 14条)

(19)

電子証明書の有効性

・申請人(その法定代理人や代表者を含む)が申請情報に電子署名し、電子証明書を 提供する場合、その電子証明書の有効性は、申請の受付時を基準として判断する

(H17・2・25)

(20)

印鑑証明書と電子証明書の比較 印鑑証明書 電子証明書(認証)

登録 個人=市区町村 法人=法務局

個人=市区町村(公的個人認証) 法人=法務局

個人や法人の認証業務は民間認証局で も行う

・司法書士電子認証(日司連)

使用方法 書面に捺印 データを変換(登記の場合PDFファ

イルに電子署名)

確認方法 実印の印影と印鑑証明書を照合 公開鍵による復号化と電子証明書によ る本人確認

確認内容 実印の印影部分のみ確認 平文と復号文の違いによる原本に改竄 がないことの確認と電子証明書による 公開鍵が登録者本人のものであること の確認

有効期間 3ヶ月以内

(不登令16,18条)

有効期間の無い場合もあり(不登 19条)

なし

有効期間はないが有効性確認の際に登 録期間内でなければ確認が出来ない

添付の必要性 原 則 と し て 必 要 ( 不 登 令 16,18 条)(法務省令で不要な場合を規

定「規則48,49」)

全て必要(不登令14条)

文書改竄の確認 印影のみの確認なので不可 復号化したときに改竄の確認がされる

(平文と復号文の違いにより有効では ないと表示される)

根拠 個人=印鑑登録条例 法人=商業登記法等

電 子 署 名 及 び 認 証 業 務 に 関 す る 法 律

(電子署名法)

文書真正の推定規定 民事訴訟法228条第4項

(実印でなくても推定)

「私文書は、本人又はその代理人 の署名又は押印があるときは、真 正に成立したものと推定する。」

電子署名法第3条

「電磁的記録であって情報を表すため に作成されたもの(公務員が職務上作 成したものを除く。)は、当該電磁的記 録に記録された情報について本人によ る電子署名(これを行うために必要な 符号及び物件を適正に管理することに より、本人だけが行うことができるこ ととなるものに限る。)が行われている ときは、真正に成立したものと推定す る。」

使用の可否 全て使用可能 場合により電子証明書が限定されてい る(不登規43,準則49②)

住所移転 変更証明添付で使用可能

(昭41.1.22、民事甲第2 83号民事局長回答)

失効

登録事項(公的個人認証など)の変更 の場合は自動失効

「日司連の電子署名は事務所が登録事 項となっていないので事務所を移転し ても失効はしない」

料金 印 鑑 証 明 書 に 発 行 手 数 料 が 掛 か

個人=300円 法人=500円

無料

認証局に登録する際に登録期間により 登録料を納付するが、その期間内であ れば電子証明書は何度でも電子署名に 無料で添付できる。

関連費用 設備投資なし 設備投資等費用が掛かる

・認証局登録料(数千円~数万円)・パ ソコン・PDFソフト(約4万円)・I Cカードリーダライタ(約3千円)等

(21)

登記申請後の処理、却下・取下げ 1 登記申請後の処理

(1)受付

① 受付と順位番号

・登記官は、申請情報が登記所に提供されたときは、その登記の申請の受付をしなけ ればならず(19 条1項)、申請を受け付けたときは、その申請に受付番号を付さな ければならない(19条3項前段)。

・この「受付」は単に申請情報を受領することを指し、受付がなされても、必ず登記 が実行されるというわけではない。ただし、登記官が申請を適法と判断した場合は、

結果的に受付番号の順番で登記がなされる(19条・20条・4条1項)。

② 前後関係

・なお、電子申請により登記の申請がなされた場合は、申請情報等が登記所に到達し た時に自動的に受付番号が付される(平17・2・25民二 457号通達)ので、窓口申 請との前後関係も明らかとなる。しかし、郵送申請が複数同時に登記所に配達され た場合は、前後関係が不明になることもあり得る。そのため、同一の不動産に関し て2件以上の登記が申請された場合で、その前後が明らかでない場合には、同時に 申請されたものとみなされる(19条2項)。

・また、同時申請とみなされるときも含め、同一の不動産に関して同時に2件以上の 申請がされたときは、同一の受付番号が付される(19条 3項後段)。例えば、同一 の不動産に抵当権設定登記が 2件同時に申請された場合、同一の受付番号・順位番 号で「1(あ)番抵当権」「1(い)番抵当権」のように、同一順位の権利を特定す るかたちで登記される。

・しかし、同一の不動産に並存できない所有権の移転登記が 2件同時に申請された場 合のように、相互に矛盾する登記が申請された場合は、同一の受付番号で受け付け られ、どちらの申請も却下される(25条13号、令20条6号)。これは、同時に申 請された登記が所有権移転請求権の仮登記であった場合も同様である(S30・4・11 民甲 693号通達)。

③ 受領証

・なお、書面申請をした申請人は、その登記が完了するまでの間であれば、申請書お よびその添付書面の受領証の交付を請求できる(規則54条)。

・電子申請による場合は、処理状況に関する情報は、オンライン申請システム上に掲 示され、受領証は交付されない。

(2)登記官による本人確認

・(1)の例外として、不正登記防止の申出があった場合など、申請人となるべき者以 外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があると認めるときに、登記官の 本人確認に関する実質的審査権(本人確認調査:24条1項)が認められている。

・この本人確認調査は(準則 33条1項)、原則としてその申請を調査した登記官が行

(22)

う。ただし、本人確認調査の対象が遠隔の地に居住しているとき等は、他の登記所 の登記官に対して本人確認調査を嘱託することができる(24条2項)。

・登記の申請が資格者代理人によりなされている場合、この調査をするときは、原則 として当該資格者代理人に対して必要な情報の提供を求めるものとされている(準 則33条2項)。

・この「申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があ ると認めるとき」とは、以下のとおりである(準則 33条1項1号~7号)。

① 捜査機関その他の官公署から、不正事件が発生する恐れがある旨の通報があった とき(1号)

② 申請人となるべき者本人からの申請人となるべき者になりすました者が申請をし ている旨またはその恐れがある旨の申出(不正登記防止申出)に係る登記の申請が あったとき(2号)

③ 同一の申請人に係る他の不正事件が発覚しているとき(3号)

④ 前の住所地への通知をした場合において、登記の完了前に、当該通知に係る登記 の申請について異議の申出があったとき(4号)

⑤ 登記官が、登記識別情報の誤りを原因とする補正または取下げもしくは却下が複 数回されていたことを知ったとき(5号)

⑥ 登記官が、申請情報の内容となった登記識別情報を提供できない理由が事実と異 なることを知ったとき(6号)

⑦ 以上の場合のほか、登記官が職務上知り得た事実により、申請人となるべき者に なりすました者が申請していることを疑うに足りる客観的かつ合理的な理由があ ると認められるとき(7号)

(3) 登記の実行

・審査の結果、特に却下事由に当たらず、あるいは手続を中止するまでもなく治癒で きる程度の軽微な却下事由であれば、補正(規則 60 条)の手続がとられ、登記官 は受付番号の順に従って登記を実行する(20条、規則58条)。

・登記の実行とは、登記官が登記記録に所定の事項を記録し、登記官の識別番号を記 録することである(規則7条)。

(4) 登記完了後の処理

① 登記識別情報の通知

・登記官は、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合に、登 記を完了したときは、電子申請・書面申請のどちらで申請されたかを問わず、その 申請人に登記識別情報を通知する(21条本文)。

② 登記完了証

・登記が完了しても、登記識別情報は必ずしもすべての申請人に通知されるわけでは ない。そこで登記官は登記を完了したときは、申請人に対して登記完了証を交付す

(23)

ることにより、登記が完了した旨を通知しなければならない(規則 181条1項)。

・申請人が2人以上であるときは、その1人(登記権利者および登記義務者が申請人 であるときは、登記権利者および登記義務者の)各1人に通知すればよい(規則181 条2項)。

・交付は、電子申請の場合は登記官が登記完了証を送信し、これを申請人または代理 人がダウンロードする方法による(規則 182 条 1項1号)。書面申請の場合は登記 完了証を書面で交付する方法による(規則182条1項2号)。

・官公署が登記権利者のために電子申請により登記の嘱託をしたときは、規則182 条 1 項 1号の規定にかかわらず、登記完了証を書面で交付する方法による(規則 182 条2項)。

・登記完了証の交付を不要とする申出はできない。

・登記申請の任意代理人が登記完了証を受領するには、特別の授権は不要である。

登記完了証の例

登 記 完 了 証

次の登記申請が完了したことを下記のとおり通知します。

宿出

職印

申請受付番号 1234 受付年月日 平成何年何月何日 登記の目的 所有権移転

不動産の表示 土地 新宿区A1丁目11 不動産番号 1234567890123

・また、次の場合には、登記官は、申請人以外の者に対しても登記が完了した旨を通 知しなければならない。

① 表示に関する登記を完了した場合には、表題部所有者または所有権の登記名義人 で、申請人ではない者(規則 183条1項1号)

② 代位登記を完了した場合には、被代位者(規則183 条1項2号)

③ 表題登記のないまたは所有権の登記のない不動産について嘱託による所有権の処 分の制限の登記をした場合には、その不動産所有者(規則 184条1項)

2 却下・補正・取下げ

・登記の申請が受け付けられ、審査の結果、登記の申請が却下事由に当たる場合は、

その申請は却下される(25 条本文)。ただし、申請の不備の内容が、却下事由のう

(24)

ち一定の事 由(25条 4 号 ~12号 )に 該 当 す るもので、補充・訂正(補正)できる もの(書き落としや軽微な誤記など)であれば、補正や申請の取下げの機会が与え られる。

・補正の連絡等は電子申請の場合はオンライン申請システムに掲示され、書面申請の 場合は電話その他の適宜の方法により連絡することとされている(準則 36条)。

・補正や申請の取下げの機会が与えられるのは、あくまで却下事由が、25条 1号・2 号・3号・13号「以外の」事由の場合である。4つの事由に該当しないことは手続 的有効要件であり、4 つの事由に該当する場合には、もし誤って登記がされても、

登記完了後も対抗力がなく、登記官の職権による抹消の対象となる。

(1)却下事由

・却下事由は次のとおりである(25条1号~13号)。

① 申請に係る不動産の所在地が当該申請を受けた登記所の管轄に属しないとき

(1号)

② 申請が登記事項以外の事項の登記を目的とするとき(2号)

③ 申請に係る登記がすでに登記されているとき(3号)

④ 申請の権限を有しない者の申請によるとき(4号)

⑤ 申請情報またはその提供方法が法定の方式に適合しないとき(5号)

⑥ 申請情報の内容である不動産または登記の目的である権利が登記記録と合致し ないとき(6号)

⑦ 申請情報の内容である登記義務者の氏名住所等が登記記録と合致しないとき

(7号)

⑧ 申請情報の内容が登記原因証明情報の内容と合致しないとき(8号)

⑨ 添付情報が提供されないとき(9号)

⑩ 事前通知の申出期間内に申出がないとき(10号)

⑪ 表示登記の申請に係る不動産の表示が登記官の調査結果と合致しないとき

(11号)

⑫ 登録免許税を納付しないとき(12号)

⑬ 登記すべきものではないときとして政令で定めるとき(13号、令 20条1号~8 号)

(ア)不動産以外のものについての登記(令20条1号)

・不動産以外の登記できない動産等を目的とする場合である。

(イ)表題部所有者・登記名義人となる者に権利能力がない場合(令20条2号)

・例えば、権利能力なき社団名義の登記である。例外として、相続人が被相続人名 義に相続登記をする場合がある(62条)。

(ウ)法が登記を禁止・制限している場合に(32条・41条・56条・73条2項・3項・

80条3項・92条)、これに反する登記(令20条3号)

(エ)1個の不動産の一部についての登記(令20条4号)

・ただし、承役地について地役権の登記をする場合を除く。

(オ)登記の目的である権利が他の権利の全部または一部を目的とする場合に、その

(25)

権利が登記されていない場合(令20条5号)

(カ)同時申請の場合に、申請に係る権利が相互に矛盾する場合(令20条6号)

(キ)登記の目的である権利が、すでに登記されている権利と矛盾する場合(令 20 条7号)

・地上権設定の登記がされた土地に、さらに地上権設定登記をするような場合であ る。

(ク)申請に係る登記が実体法上無効であることが申請情報・添付情報・登記記録か ら明らかな場合(令 20条8号)

・不法条件を付した売買契約による所有権移転仮登記など、実体法上当然に無効で あるような場合である。

(2)却下の場合の処理

① 決定書の交付

・登記官は、申請を却下するときは決定書を作成して、申請人ごとに交付または送付 する(規則 38条1項・2項)。なお、代理申請の場合は、代理人に交付・送付すれ ば足りる(規則 38条1項ただし書・2項)。

② 添付書面の還付

・書面申請において、取下げの場合には申請書と添付書面の両方が還付されるのに対 し、却下の場合には申請書は還付されず、添付書面だけが還付される(規則38条3 項本文)。ただし、偽造された書面その他不正な登記の申請のために用いられた疑 いのある書面は、還付されない(規則 38条 3項ただし書)。

・申請書が返還されないので(規則38条3項本文参照)、申請書に貼り付けた印紙等 につき再使用証明は認められない。この場合、納付した登録免許税は還付請求によ る。

(3)補正

・登記の申請に一定の却下事由に該当する不備があっても、その不備が補正できるも のである場合には、登記官は相当期間を定め、申請人に補正を求める(25条ただし 書)。補正期間内は、その補正すべき事項に係る不備を理由に申請を却下すること はできない(規則 60条1項)。期間内に補正がなされなかった場合に、申請は却下 される(準則36条5項)。

・この補正は、電子申請の場合はオンラインで(規則 60条2項1号)、書面申請の場 合は書面で登記官の面前で行わなければならない(規則60条2項2号、準則36条 3項本文)。

(4)取下げ

・取下げとは、申請人の意思により登記の申請を撤回することで、補正のための取下 げと申請中止のための取下げがある。

(26)

・補正のための取下げは、申請に不備がある場合に、その不備を補正するために取り 下げる場合である。例えば、登記官から補正を求められたものの、補正期間までに 補正ができないような場合、いったん取下げをして訂正し、改めて申請する。また、

申請中止のための取下げは、申請の不備の有無に関わらず、登記申請自体を完全に 中止するために取り下げる場合である(申請の撤回)。

① 手続

・取下げができる者は、申請人本人または代理人である。申請人が複数いれば全員の 同意が必要となる。また、代理人により取り下げる場合、補正のための取下げにあ っては、取下げのための特別の委任による授権は不要であるが、申請中止のための 取下げにあっては必要となる(S29・12・25民甲2637号通達)。

・なお、取下げは、登記が完了した後はできず(規則39条2項)、登記申請の受付後、

登記完了または却下までの間に行わなければならない。

・この取下げは、電子申請の場合は申請を取り下げる旨の情報をオンラインで提供し

(規則39条1項1号)、書面申請の場合は申請を取り下げる旨の情報を記載した書面

(取下書:準則29条2項)を提出して行わなければならない(規則 39条1項2号)。

② 取下げ後の処理

(ア)書面申請の場合の書類の還付

・書面申請の場合に、申請を取り下げた場合は、申請書およびその添付書面は還付さ れる(規則 39条3項前段)。ただし、偽造された書面その他不正な登記の申請のた めに用いられた疑いのある書面は還付されない(規則 39条3項後段・38条3項た だし書)。

・電子申請の場合は、登記所に送信した申請情報、添付情報等は申請人側にも同じも のが残っているので還付されるということはない。

(イ)登録免許税の還付・印紙等の再使用証明

・申請を取り下げた場合は、すでに納付した登録免許税が還付され(登税法 31 条 1 項 2号、準則 128 条)、その際に印紙等の再使用証明の申出があれば、その旨が証 明される(登税法 31条3項、準則129条)。

・歳入金電子納付システムを利用して納付された登録免許税については、登記申請を 取り下げる場合でも、再使用証明を受けることはできない。

(ウ)一括申請の一部の取下げ

・甲乙不動産の所有権移転登記を一括申請した場合でも、乙不動産の所有権移転登記 の申請のみを取り下げることができる。この場合、申請情報の登録免許税に関する 記録は申請人が補正し、書面申請の場合には取下げ部分のみに関する添付書面が還 付される(準則 29条5項)。

(5)登記識別情報のを記載した書面の還付

・登記識別情報についてはその秘匿性を確保する必要性から、登記識別情報が記載さ

(27)

れた書面が提出された場合において、登記が完了又は請求の審査終了後において登 記所において廃棄処分され、当事者に還付される性質のものではない(規則69条)。

・しかし、申請が却下又は取り下げとなった場合においては、再度使用する必要があ ることから特別に登記識別情報の還付が認められる(準則 41条 4項)。

(28)

審査請求 1 総論

・登記官の処分を不当とする者は、当該登記官を監督する法務局長等に審査請求がで きる(156条1項)。すなわち、登記官が登記の申請を不当に却下したり、逆に不当 または間違った登記をしたりした場合には、その処分を不当とする者への不服申立 て(審査請求)が認められている。

・この審査請求は、登記手続が終了した後に、事後的に登記の真正を担保する制度で ある。

・審査請求は「登記官の処分を不当とする者」に認められる(156 条1項)。そこで、

「登記官の処分」が「不当」であること(審査請求事由)および「審査請求権者」

であることの2つの要件を満たす必要がある。

2 審査請求事由

(1)登記官の処分

・審査請求の対象となる「登記官の処分」は、公権力の行使に当たる行為でなければ ならない(行政不服審査法1条参照)。そこで、当事者の権利義務に影響を及ぼす 権利に関する登記については、審査請求の対象となるが、表示に関する登記のうち で、当事者の実体法上の権利義務に影響を与えないものは、対象とならない。ただ し、公権力の行使に当たる行為である以上、「登記官の処分」には登記手続に関係 した処分(申請の受付・審査・申請の却下・登記の実行)はもちろん、登記事項証 明書の交付に関する行為も含まれる。

・したがって、それが申請・嘱託・職権登記のどれに関するものか、また作為である か不作為であるかを問わない。

(2)処分の「不当」

・「登記官の処分」といえる場合でも、登記官が法令上義務づけられている行為に違 反した「不当」なものでなければ、審査請求の対象とはならない。例えば、虚偽の 登記原因証明情報が提供された結果、不実の登記がなされた場合は、審査請求がで きない。

(3)処分の是正可能性

・たとえ「登記官の処分」が「不当」であっても、登記官に不当処分前の原状に回復 させる権限がない行為について、審査請求をしても無意味なので、処分の是正可能 性がない場合には審査請求は認められない。

・「登記官の処分」のうち、例えば、登記を実行すべき場合に実行しなかったときのよ うな不作為による不当な処分に関しては、登記を実行せよとの審査請求ができる。

登記官には登記を実行する権限があり、不作為による不当な処分を是正することが 可能だからである。

・ところが、作為による不当な処分として、例えば、登記官が登記を実行した処分が 不当な場合でも、登記官が職権による抹消登記をできるのは、一定の事由に限られ

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ている(71条1項・25条1号~3号・13号、令20条)。そこで、それ以外の登記 に関しては、登記官は、不当処分前の原状に登記を回復する権限を持たない。した がって、このような場合には、処分の是正可能性がなく審査請求が認められない。

3 審査請求権者

・審査請求ができる者は、登記官の不当処分により直接不利益を受けた者、つまり審 査請求が認められれば不利益が除去される者(登記上直接の利害関係を有する者)

に限られる。具体的には、次のとおりである。

(1)登記申請が受理され登記が実行されたが、その際の登記官の処分が不当である として審査請求をする場合

・例えば、売主 Aと買主Bが売買に基づく所有権移転登記を共同申請したところ、登 記官の過誤で申請内容と異なる登記が実行されたような場合、登記権利者 Bまたは 登記義務者 Aは、単独で審査請求ができる。

・これに対し、登記官の行った登記手続に違法不備があったが、結果的に申請内容ど おりの登記が実行されている場合には、申請人の申請目的は結果的に達成されてい ることから、審査請求はできない。

(2)登記申請を却下した登記官の処分が不当であるとして審査請求をする場合

・例えば、Aから Bへの所有権移転登記の申請自体を却下した登記官の処分が不当と して審査請求をする場合、登記権利者Bは、申請が却下されたことにより登記の対 抗力を得られず不利益を受けているので、当然に審査請求ができる。登記義務者 A についても申請が却下されたことにより、登記申請権が認められなかったことにつ いて法律上の利害関係を有しているので、審査請求できる。

(3)申請人以外の第三者が審査請求する場合

・債務者を代位して相続の登記を行った債権者は、その相続登記の抹消について「登 記上直接の利害関係を有する者」と認められるので、審査請求ができる(大判T9・

10・13)。

・しかし、抵当権設定者は、抵当権移転の付記登記の申請が却下された場合「登記上 直接に利害を有する者」とはいえないので、その不当性に対する審査請求はできな い(大決T6・4・25)。

4 手続

・行政庁の処分に対する審査請求については、行政不服審査法が一般法として適用さ れる。行政不服審査法は、当然、登記所や登記官の行った処分についても適用され る。

・しかし、登記に関する処分の有する特殊性から、不動産登記法の審査請求に関して は、一般法である行政不服審査法の大幅な適用除外が認められている(158条)。

(1)審査請求の申立て

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