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(1)

[特  集]

[刊行物紹介]

[コ ラ ム]

[事業報告]

[レポート]

自主研究7Aプロジェクト研究主査インタビュー ADB寄託図書館受け入れ資料紹介

タイ特集第1回

第6・1・2回ワークショップ、市民セミナー、

第1次若手研究者活動助成対象者決定 若手研究者研究活動報告

ルオン・シュアン・ニー《読書する若い娘》1940/ベトナム 福岡アジア美術館所蔵

(2)

[特  集]

第7期自主研究7Aプロジェクト 研究主査インタビュー

7Aプロジェクト

「中国における『西部大開発』の戦略と実態  〜雲南省の事例を中心に〜」

波平 元辰  氏

(なみひら げんしん) 

中村学園大学家政学部教授

1940年生まれ。九州大学 大学院農学研究科農芸化学 専攻修了。専門は食生態学。

アメリカ・テキサス大学研 究員等を経て現職。

●研究期間

  

2001年4月〜2003年3月

●研究主査

  波平 元辰 中村学園大学家政学部教授

●共同研究者 

  王 孝 廉 西南学院大学国際文化学部教授   横山 廣子 国立民族学博物館民族社会研究部助教授   山   朗 九州大学大学院経済学研究院教授   車 志 敏 雲南省人民政府経済技術研究センター主任・研究員   格 桑 頓 珠 雲南省民族事務委員会主任

  賀 聖 達 雲南省社会科学院副院長・研究員

  何   宣 雲南省人民政府経済技術研究センター副主任・研究員

●顧問

  権藤與志夫 財団法人アジア太平洋センター理事長

今回のテーマは「中国における『西部大開発』の 戦略と実態」ということですが、この「西部大開発」

の目的及び趣旨について簡単に説明してください。

少数民族

◆「高層ビルの間を高速道路が 縫うように走っている。きらび やかな街の通りは人で溢れ、談 笑している…」

これは、中国経済の著しい発展 ぶりを実感させる上海の一光景 です。その一方で、雲南省、新 疆ウイグル自治区、チベット自 治区などの西部地域では、経済 発展は大幅に遅れています。東 部に比べGDPは3分の1以下で あ り 、 輸 出 に 関 し て は 東 部 が 90%を占めるのに対して、西 部は4%に過ぎません。この東 部と西部の経済格差は深刻さを

増しており、少数民族問題とからんで将来の社会不安の火種になり つつあります。さらに、西部地域には豊富な天然資源が眠っており、

中国の発展にはその開発が欠かせません。

 2001年、中国政府は第10次5カ年計画の目玉となる「西部大開発」

をスタートさせました。その目的は

(1)東部と西部地域間の貧富の格差是正

(2)西部の天然資源、エネルギー開発と環境保護 などです。

 しかしこれらの目的を達成させるためのインフラ整備や産業振興 は膨大な資金と技術援助を必要としており、それらが当面の課題と いえましょう。そのために昨年朱鎔基首相が来日し、支援要請され たのは記憶に新しいことです。

 2001年4月から、アジア太平洋センターの第7期自 主研究がスタートしました。今期の自主研究では、中 国国内でこれまで関心の薄かった内陸地域における開 発で、その起爆剤になるものとして注目されている内 陸12の地域を対象とした「西部大開発」について、

雲南省の事例を中心に調査・分析を行い、雲南省の戦 略及びその課題を明らかにし、今後九州と交流する可 能性を探ろうとするものです。

 今回は、7Aプロジェクト研究主査の波平元辰中村 学園大学家政学部教 授にプロジェクトの テーマである「中国 における『西部大開 発』の戦略と実態−

雲南省の事例を中心 に−」の趣旨や意義 についてお話を伺い

ました。

昆明市内の街なみ

プロフィール

(敬称略、順不同)

(3)

雲南民族村

石林

    どうもありがとうございました。

「西部大開発」では中国内陸の12の地域が対象 とされていますが、今回特に雲南省を事例研究 地域としてとりあげられた理由は何ですか。

◆雲南省は中国の西南に位置しており、北はチベット自治区、四川 省に接した寒帯の高山地帯、中央には常春の高原地帯、南は東南ア ジア諸国に隣接した熱帯の低海抜地帯と、多様な地形と気候区を有 しております。このような地形的、気候的要因も影響して、雲南省 には多彩な動物や植物が育まれています。

 鉱産物資源も豊富で、その埋蔵量のうち52種が全国10位、28種 が3位、鉛、亜鉛、リン等8種が1位となっております。加えて25 の少数民族の情緒溢れる風土と人情、歴史、文化が美しい自然に彩 りを添えております。

 同省はベトナム、ラオス、ミャンマーなどの東南アジア諸国と隣 接しており、これらの国々は雲南省の交通ルートにアクセスするこ とを強く願っております。また、雲南省にとっても東南アジア、南 アジアの広大な市場が目の前に広がっており双方にとって好条件が そろっている地域だと言えます。

 以上のように、雲南省は、開発の大きな可能性と魅力に満ちた地 域でありながら、他方開発に伴う環境破壊、民族問題などの課題を 内包している地域であるという点で、事例研究には最適なフィール ドではないかと思います。それに、何よりも雲南省政府の方々の「西 部大開発」への意欲的な取組がベースにあることは言うまでもあり ません。

「西部大開発」における雲南省の開発戦略とはど のようなものでしょうか?その現状と課題及び「西 部大開発」の推進における役割を教えてください。

◆雲南省は次の主要目標を掲げ、三段階で、2050年までにこれら の目標を達成しようとしております。

(1)緑色経済強省…豊富な生物、鉱山物資源開発、水力発電所建     設など

(2)民族文化大省…民族文化、生態環境および社会の調和のとれ     た発展

(3)国際大動脈の建設…東南アジア、南アジアとの貿易と国際経     済技術協力の継続的発展

 雲南省の現状について、共同研究者の雲南省人民政府経済技術研 究センター主任、車志敏氏は次のように述べられています。

 「省全体の産業構造は単一で、資源型産業の比重がかなり大きく、

国有経済の割合が高い。都市と農村の格差が著しく、衣食問題が解 決されていない貧困人口がまだ355万人もいる。インフラ整備が不 十分で、道路の多くは等級が低く、水力エネルギーの開発レベルは 5%前後にすぎない。省の人的資源開発も遅れており、労働者の科 学技術文化資質がかなり低い」

 なかなかに厳しい現状分析ですが、だからこそ氏の語る将来の夢 には迫力があり、このプロジェクトに省の専門家を参加させた氏の並々 ならぬ意欲に応えねばと決意しているところです。

今回のプロジェクトの成果としてはどのような ものが期待されますか?また将来の雲南省と九 州との交流の可能性についてお聞かせ下さい。

◆昨年、雲南省の省都昆明で一冊の本「照叶 林文化之路一自不丹、

云南至日本」を手に入れました。これは前国立民族学博物館教授、佐々 木高明著「照葉樹林文化の道−ブータン・雲南から日本へ」の漢語 訳本で、その内容は「ブータン、雲南、西日本は共通の照葉樹林(カ シ、クス、ツバキなど、葉の表面が光っている樹木)で連なっており、

従って文化にも共通性が認められる」というもので、日本文化のル ーツ探しに一石を投じた本であります。雲南にも、日本への深い関 心を持った人がいることを知ってうれしくなりました。

 このプロジェクトの主な舞台は雲南省ですが、開発に伴う様々な 課題に、我が国の経験が生かされると思いますし、また逆に我々が 学ぶことも多いと思います。先日、農産物や花卉の流通関係者と話 し合いの場を持つ機会がありましたが、雲南の植物、食品に非常に 興味を持っており、ぜひ輸入したいとのことでした。

 このプロジェクトは単なる研究で終わるのではなく、具体化でき るものは積極的に取り組んでいきたい

と思います。我々も、各々の専門 的立場から皆様の御協力を御願 いすることが多くなると思い ますが、どうぞよろしくお 願いいたします。本研究を きっかけに、九州と雲南が 理解を深め、経済、文化交 流が活発に行われることを 期待いたします。

(4)

[刊行物紹介]

●アジア開発銀行(ADB)

 寄託図書館とは?

 アジア太平洋センターは、1998 年5月にアジア開発銀行(ADB)の 寄託図書館に指定され、ADBが刊 行する出版物を受け入れてきまし た。受け入れ数は現在のところ約 1,100点で、全て英語で書かれています。内容としては、アジア太 平洋地域にかかわる開発、教育、保健・衛生、環境面等での調査報 告書が主なものになります。資料は全て一般に公開されていますので、

お気軽にご利用下さい。

ADB寄託図書館受け入れ資料紹介

タイ特集

●お勧めの一冊

Annual Report 2000

(P.6 "Develop a Child" より)

〈概要〉

 子供は将来の社会を担う重要な存在である。にもかかわらず、貧困地 域における最大の被害者は、社会的に弱い立場である子供たちに他なら ない。特にアジア地域では、それが顕著に見られる。

◆アジア地域での5歳以下の子供の死亡数は毎年600万人。その半分以  上は飢えによるものである。

◆世界における発育不良の子供のうち、4分の3はアジアの子供である。

◆アジアにおける6歳から11歳までの子供で、学校に行っていないもの  は3,000万人を超え、そのほとんどは女子である。

 子供の発育不良、教育水準の低さなどが、次世代の社会によい結果を 残せるはずもなく、貧困の悪循環となっている。ADBのなすべきことは、

子供たちを援助し、この悪循環を断ち切ることにある。

 特に女子に対するケアは、その健康状態が次世代の子供に直接影響を 及ぼすため、重要である。発育不全の子供が将来的に妊婦になった場合、

初めての出産で死亡するケースは通常の妊婦の約10倍で、未熟児出産

になる確率も高い。

 また、母親の教育レベルや社会的地位は子供の発育に大きく影響する。

それらが向上することにより、若年出産の減少、出生率の低下につながり、

適切な育児環境が整いやすくなると考えられる。

 ADBでは、アジア諸国への貸付を積極的に行っている。

●平成13年度4月〜6月までの  寄託図書

Women's Education 43%

Source: United Nations Administrative Coordinating Committee/Subcommittee on Nutrition 2000.

Bangladesh Bhutan Cambodia Hong Kong, China Indonesia Kyrgyz Republic Lao PDR Malaysia Marshall Islands Micronesia Mongolia Myanmar Pakistan Papua New Guinea Philippines Singapore Sri Lanka Tajikistan Thailand Viet Nam Total

134.1 10.0 20.0 19.5 743.4 4.1 25.0 181.5 10.6 8.0 15.9 63.1 264.5 119.9 79.9 19.0 35.4 7.9 150.0 111.3 2,023.2

6.6 00.5 1.0 1.0 36.7 0.2 1.2 9.0 0.5 0.4 0.8 3.1 13.1 5.9 3.9 0.9 1.7 0.4 7.4 5.5 100.0 Health

Envionment 19%

Women's Relative Status

12%

National Per Capita Food Avaiability

26%

Total %

■表1:子供の栄養摂取に寄与する要因

■表2:保健衛生分野における、ADBからアジア諸国への貸付額(1978〜2000)

Measuring Environmental Quality in Asia

Energy End Use : An Environmentally Sound Development Pathway Environmental Planning and Management

Fighting Urban Poverty Volume 5 : Asian Cities in the 21st Century Moving the Poverty Reduction Agenda Forward in Asia and the Pacific Poverty Reduction : What's New and What's Different?

INDIA : Mainstreaming Environment for Sustainable Development Asian Development Outlook 2001

Annual Report 2000   など。

■表1 ■表2

第1回

〈プロフィール〉

片山 隆裕(かたやま たかひろ)

1957年生まれ 西南学院大学文 学部教授。九州大学大学院教育 学研究科終了。専門は文化人類学。

今年8月まで12ヶ月間調査・研究 のためにタイに滞在後、帰国し 現職。

 この「コラム」は、今号から4回にわたってシリーズで掲載す るものです。今年度は「タイ特集」とし、タイの様々な社会、

文化、生活事情などについて、西南学院大学文学部教授の片山 隆裕氏に書いていただきました。

($ million)

〈チュー・レン―タイ人のニックネーム〉

 私は、2000年8月から1年間の予 定で、タイ北部の古都チェンマイで 生活する機会を得ました。チェンマ イ滞在中に、カエルくん、にわとり さん、鳥くん、みかんちゃん、バナ ナちゃんなど、多くのタイ人の友人 ができました。こう書くと、「少し 頭がおかしいのでは」と思われるか もしれません。でも、これらは、タ イの友人のニックネーム(チュー・

レン)なのです。日本とは違って、

タイでは「小泉さん」「土井さん」とい うように、お互いを名字で呼び合う 習慣はありません。日常生活はもち ろん、公の場面でも名前で呼び合う のが普通です。例えば、現在の首相・

タクシン・チナワット氏は、タクシ ン首相と呼ばれています。また、親 しい友人同士や、職場などの同僚同 士などで呼び合うときは、お互いを

「チュー・レン」で呼び合います。

私は、上記のカエルくんたちの本名

を知りません。でも、彼らの本名を 知らなくても、友人関係には何の障 害もなく、仲良くやっています。

 ところで、タイ人の「チュー・レン」

には、幾つかの特徴があります。例 えば、雨(フォン)ちゃん、みかん(ソ ム)ちゃん、バナナ(クルアイ)ちゃ んなどは、女性だけにみられるそうで、

鳥(ノック)さん、にわとり(ガイ)

さん、かえる(コプ)さんなどは、男 女ともにみられるそうです。チェン マイ市内にあるP小学校の6年生の あるクラスには、みかん(ソム)ちゃ んが3人います。こんな場合、まぎ らわしいので、パッタイ屋(=タイ 風やきそば)のみかんちゃん(ソム・

パ ッ タ イ )、 プ レ ー県出身のみかん ち ゃ ん( ソ ム ・ プ レ ー )、 太 っ ち ょ のみかんちゃん(ソ ム ・ ウ ア ン )と い った具合に、彼女 たちがもつ特徴や 属性に基づいた「形 容詞」つきのチュ ー・レンで呼び合 っています。また、

犬が糞を食べるこ とや、水牛が愚鈍

な動物と考えられていることから、

犬(マア)さんや水牛(クワーイ)くん はいません。また、地域による違い もあります。「ヌイ」(通常、肥った という意味)というチュー・レンは、

南タイにはないそうです。南タイで は、「ナン・タルン」という影絵芝居 に出てくる猿の名前に通じるためで、

先ほどのマア(犬)やクワーイ(水牛)

と同じように、猿も含めていくつか の動物はチュー・レンとしては、ふ さわしくないのです。ちなみに、私 は、ドラえもんに出てくるのび太く んに似ている(?)ためか、タイの友 人たちからは、「ノビ」とか「ノビタ」

というチュー・レンを頂戴しています。

Thailand

チェンマイのワット

(5)

5

第6回 ワークショップ

テ ー マ:

講   師:

コメンテーター:

日   時:

会   場:

テ ー マ:

講   師:

コメンテーター:

日   時:

会   場:

多民族国家マレーシアの発展戦略

〜社会文化的側面から〜

文 平 強  氏 

京都大学東南アジア研究センター客員研究員 前マラヤ大学東アジア研究所長(マレーシア)

中澤 政樹  氏   

九州産業大学国際文化学部助教授

平成13年3月13日 (火)13:30〜15:30       アクロス福岡大会議室

平成 12 年度

第1回 ワークショップ

中国の社会問題と法

〜揺れ動く人治国家のゆくえ〜

李 潔  氏   

西南学院大学法学部交換研究員 中国・吉林大学法学研究院副院長・教授

小川 雄平  氏

西南学院大学大学院経営学研究科長・教授

平成13年4月10日 (火)13:30〜15:30 福岡市役所15階講堂

〈講演要旨〉

 中国では、「改革・開放」政策が導入され20年が経ち、様々な 変化がおきている。専制政治から民主政治へ、計画経済から市場経

済へ、閉鎖的な外交政策 から開放政策へ、文化は 一元的から多元的へと変 わっていっている。経済 は急速に発展し、社会状 況も大きく変化した。国 民は、衣食住、高級品、

観光などを楽しみ、質を 重視するようになった。

しかし、同時に、様々な

社会問題が派生している。権力機関による職権乱用、賄賂や汚職の 増加、職務怠慢、目先の利益のみを追求する経済活動、偽物製品の 製造、そして、家庭問題(片親家庭の増加、家庭内暴力、売買春、

重婚と愛人)や、社会治安の悪化(犯罪率の上昇、「黒社会」(犯罪 の組織化)、殺し屋の登場)などが挙げられる。

 問題解決には、意識の改革、経済発展、法律の整備が必要であるが、

中国が法治国家になるには、まだまだ長い時間がかかるだろう。

平成 13 年度

テ ー マ:

講   師:

コメンテーター:

日   時:

会   場:

第2回 ワークショップ

東南アジアに見る民主主義の姿 

〜開発独裁からの脱却をめざして〜

オマール・ファルーク 氏    

広島市立大学国際学部教授

薮野 祐三  氏         

九州大学大学院法学研究院教授

平成13年6月1日 (金)13:30〜15:30 アクロス福岡大会議室

平成 13 年度

〈講演要旨〉

 マレーシアは、多民族、

多宗教、多言語社会であ り、各民族集団に独自の 社会文化、生活様式、経 済的ニーズ、政治的要求 がある。

 植民地時代からの民族 間の経済格差は、1957

年の独立後も続き、民族間の対立が深まった。そして、1969年に は民族暴動が起き、それ以降、民族間の不平等を最小化し、将来の 紛争を防ごうと、マレー人優遇政策が強調された。そして、この 20年間、マレーシアは民族間の調和をとりながら高い成長率を達 成した。文化的多様性は将来のマレーシアの発展の可能性を表して いる。このようなマレーシアの開発へのアプローチは、同じような 背景を持つ発展途上国にとって多くの役立つ教えがあるであろう。

〈講演要旨〉

 第2次世界大戦後、多くの東南アジア諸国は次々に独立を果たし、

多くの国家が民主化を進めたが、不成功に終わった。その理由とし ては、民主主義制度を維持するよりも、領土の保全、独立国家とし ての基盤整備、政治安定などがより重要であったこと。議会や選挙 など制度を導入しても、市民に民主主義的な文化がなかったこと。

また、冷戦時代だったた め、反共産主義であれば、

独裁政権でも西側から援 助を受けたことなどがあ る。しかし、冷戦終結に より欧米諸国は外交政策 を変更、基本的人権や民 主化への要求を強めるよ うになった。また、市民 社会も民主化の文化を担

うようになり、政治的変化に目をむけるようになった。経済の自由 化や発展、グローバリゼーション、97年のアジア通貨危機は政治 変化の要求を加速した。また、IT革命により、情報へのアクセスは 以前より容易になった。現在では、民主制度が必要かどうかではなく、

民主制度の質が問われている。人権の尊重、機会均等、富の公平な 分配などが、国際社会においては同じレベルにならねばならないが、

それぞれの国の事情が違うので、すべての国が同じ方法、同じペー スで、同じ制度を達成することは難しいであろう。

(6)

2001年6月23日付  西日本新聞掲載記事

[事業報告]

(講演要旨)

 現在の日中関係は、1972年 に発表された日中共同声明の大 きな枠組みのもとでスタートし ており、この根本を変えること はできない。しかしながら中国 は昨今急速なスピードで変化し ており、この変わっていく中国 と我々がどうするかということを考えて創造的にこれからの対中関 係を考えていくことが重要である。

 中国は経済面においては、 小平の改革開放路線以降、ルビコン 川を渡った状態であり後戻りはできない。中国の経済の発展は社会 空間の広がりにつながっており、これは中国共産党の一党支配と相

容れない性質を帯びてきて いる。伝統社会や農村に対 するコントロールも挑戦を 受けている。

 政治面では統治の正当性 が問題となってくる。中国 政府ではまだ組織的な腐敗構造が存在しており、中国政府が万一崩 れるとするとこの腐敗が問題になるのではないかと考えている。

WTOに入れば構造改革が進み国有企業が解体され失業が増える。

一方で中国は税収機能が弱く政治の不安定化につながる可能性がある。

経済が自由化されると、中国の政治は変わらざるを得ないと確信し ている。

 日本は中国と引越しできない隣国同士であり、それも大国同士で あることを考えると、競争的共存こそが日本の選択すべき道となる。

市民セミナー

 この助成は、アジア太 平洋地域の異なる文化理 解の促進または地方発展 に関する研究を対象とし、

九州北部4県の若手研究 者(40歳未満)の研究活 動を資金的に支援するも のです。対象となる活動は「海外現地調査」、「国際研 究会参加者招へい」、 「研究成果出版」の3つで、平成 13年度の第1次募集では、17件の申請があり、次の9 人の方を助成対象者に決定しました。

「変わりゆく中国とどう付き合うか」

−ポスト冷戦時代の日中外交を考える−

宮本 雄二  大使

外務省軍備管理・科学審議官

2001年6月22日 (金)13:30〜15:30 ホテル福岡ガーデンパレス1階ガーデンホール

テ ー マ:

講   師:

日   時:

会   場:

平成13年度第1次

若手研究者研究活動助成対象者を決定

新専務理事就任

永松利文(立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部助教授)

  「オーストラリアにおける多文化政策化下でのメディア・リテラシー教育」

王 貞月(西南学院大学大学院文学研究科博士課程)

  「台湾シャーマンに関する民俗医療の治療メカニズム」

金  宥(九州大学大学院比較社会文化学府博士課程)

  「韓国人に対する書く訓練」

蘇 鳳 鳴(九州大学大学院比較社会文化学府博士課程)

  「カム地域・チベット族における開発、文化、アイデンティティ」

中村 聡(九州大学大学院人間環境学府博士課程)

  「香港における観光戦略と都市イメージ」

李 頚 松(九州大学大学院比較社会文化学府博士課程)

  「中国における朝鮮族の適応の特徴と意識の重層性に関する研究」

倪   (九州大学大学院人間環境学府博士課程)

  「中国農村部における革命以降の集落空間構造の変化に関する研究」

三本 泉(九州大学大学院比較社会文化学府博士課程)

  「社会体制移行期におけるモンゴル国のカザフ人社会の文化の動態」

飯嶋秀治(九州大学大学院人間環境学研究科博士課程)

  「オーストラリア先住民の新しい社会運動−アリス・スプリングスの試み」

(敬称略、申請順)

*すべて、海外現地調査活動。

 2001 年 4 月 1 日付けで、アジア太平洋セ ンターの専務理事に就任いたしました。これ まで福岡市の交通局に所属しておりましたが、

福岡市のアジア戦略の一環であるアジア太平洋地域の国際的な学術 研究交流推進事業に従事することになりました。今までとはまた違 った分野ではございますが、センターが設立以来構築してまいりま した学術交流のネットワークを十分に活用しながら、同地域におけ る今後のさらなる相互理解の促進と発展に寄与することができます よう最大の努力をいたす所存でございます。何とぞご支援ご指導を 賜りますようどうぞよろしくお願い申し上げます。

岩瀬 信一郎

(いわせしんいちろう)

(7)

 平成13年度の第1次若手研究者活動助成 対象者の1人である飯嶋秀治氏に、今回の 研究テーマであるオーストラリアの先住民 についてレポートを書いていただきました。

おわりに

●オーストラリアに移民達が到着して以来、先 住民達の過去は決して明るいものではなかった。

しかし、そうした中でも彼らは自らの環境感覚 を継承してきたし、今、それを未来に向かって 開いてゆこうとしている。思うに、アジア太平 洋における共生とは、こうした双方が解放され る理念と実践を追う中で実現されるのであろう。

[レポート]

先住民の子供たち 九州大学大学院人間環境学研究科博士課程

飯嶋 秀治

オーストラリア

先住民の過去と未来

オーストラリア先住民について

●オーストラリアは現在、多文 化主義を国是とする多民族国家 である。大陸に先住していた者 達は、「オーストラリア先住民」

と呼称され、イギリスの移民達 が到着した1788年当時、彼ら は約25万人、約500もの言語集 団が存在していたと推計されて いる。一言語を一民族の指標と すれば、この当時、大陸には既 に約500もの民族がいたことに なる。しかし、移民達が農業や 牧畜に適した土地を求めて「開 拓」を進めるにつれ、暴力的な 衝突・殺戮・栄養不良や新たな 病が先住民を襲い、1921年に は実に人口が6万人にまで減少

してしまった。当時の政策は、移民達の不要な土地に先住民達を隔 離して絶滅を待つ政策であった。第二次世界大戦への人手不足から 先住民の戦争参加が求められると、移民達との間に協働体験が生まれ、

この政策も変化をみせたが、これも先住民達を移民達の宗教に改宗 させ、同じ慣習行為に同化させようという政策であった。1967年 になり、ようやく彼らもオーストラリアの国民として認められ、

1999年現在、彼らの人口は約35万人、約370の言語集団にまで回 復してきたものの、同化政策で親元から連れ去られた子供達は、

現在も「失われた世代」として大きな社会問題となっている。

彼らは現在全オーストラリア人口の約2.5%を占めるが、

彼らの総人口の約73%は郡部に、約27%は都市部に暮 らしている。

新しい社会運動

●一方、約3割の先住 民は既に都市部に住ん でいる。私が調査対象 地域としているアリス・

スプリングスは、オー ストラリア中央砂漠地 帯の都市であり、一見、

移民達が経営するスー パー・マーケットや観 光客用の店舗が目立っ

ている。しかし、そこには先住民達の芸術家や観光ガイド達、コミ ュニティから観光で出てきた先住民の家族や野宿者までいる。こう した移民達と先住民達の交錯するアリス・スプリングスで、今年、

第1回目の先住民祭りが開催される。この祭りは、上述の歴史的経 緯を持った先住民が催す祭りであるという意味で、当然、何らかの 政治的主張を発するであろうが、企画当初から移民の芸術家を参加 者に組み込むなど、開かれた性格を示している。そこで、この祭り を「新しい社会運動」として研究することが、若手研究活動助成の テーマである。

環境感覚

●現在、主に彼らは郡部のコミュニティで暮らしている。

去年、私はこうしたコミュニティの1つである西オースト ラリアのワルムン・コミュニティで2ヶ月を過ごした。週 日こそ大人は生業に従事し、子供は学校に向かうが、学外 では10歳の子供でさえ、どこに行けばどういう植物が取れ るか知っており、週末になると大人と一緒に四輪駆動車 でブッシュにいる大トカゲや魚を獲りに行く。これ らは彼らが狩猟採集をしていた頃から継承してき た伝統的な生活形態である。しかし彼らの環境 との関係は、単にこうした食物をそこから引 き出すだけの関係ではない。彼らはそこに自 らがその動植物から生まれてきて、死後には そこにまた還ってゆくという神話を語り、ま た、そうした動植物は食物の対象から慎重に 避けられ、こうした動植物のために土地の面 倒をみなければならない、という関係を感覚 で身につけている。こうした総体が彼らの環 境感覚なのである。

アリス・スプリングスの街並み

ブッシュでの食事

資料:オーストラリア先住民の分布図

(Horton. 1999)

アリス・スプリングス

(8)

福岡市総合●

図書館  RKB● TNC●

西新駅 福岡市営地下鉄

藤崎駅

●マリゾン

福岡ドーム ホテルシーホーク

福岡都市高速

●福岡市 博物館

●早良消防署 福岡タワー 南口バス停

西鉄バス アジア太平洋センター

(福岡タワー内)

編 集 後 記

テ ー マ:中国客家のイメージと実像

       〜文化人類学的アプローチから〜

日  時:2001年 8月21日(火)13:30〜15:30

場  所:天神ビル10号会議室(福岡市中央区天神2-12-1)

講  師: 暁華 氏 

     (国立民族学博物館客員教授、中国・厦門大学教授)

コメンテーター:横山 廣子 氏 

     (国立民族学博物館助教授)

募集定員:150名 内  容:

 歴史的に北方の中原から追われ、中国南部の山間地帯にひっそ りと暮らしていた客家(はっか)は、近代以降、孫文や 小平、李 光躍(リークアンユー)など華人世界の名高い指導者を輩出したため、

今や世界的に関心を呼び、数々のイメージが作り出されました。

また、中国大陸をはじめ世界に散在する客家の人々も、独自の生活習 慣や宗教意識、さらに強固な家族の絆をベースに絶えずアイデンティ ティの確立を繰り返し、それが各分野における客家集団の活躍を支え る原動力となっています。

 今回のワークショップで は、中国厦門(アモイ)出身 の文化人類学研究者に、客家 イメージの形成過程及び客家 集団の実像との相異について お話いただきます。

●[アゴラ]は再生紙を使用しています。●[Agora]とは古代ギリシャの集会所、広場を意味する言葉です。

URL http://www.apc.or.jp   E-mail [email protected] 財団法人アジア太平洋センター

発  行  日/2001年7月31日

編集・発行/財団法人アジア太平洋センター       〒814-0001 

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ニューズレター

Vol.10 No.33

古紙配合率100%再生紙を使用

第4回 ワークショップ受講者募集

 1999年3月に福岡アジア美術館がオープンして以来ずっと、このアゴラの表紙を同美術館の所 蔵作品に飾ってもらっています。2年前に初めてアジア美術館に作品をお借りしに行った時は、西 洋のものとは全く違ったアジア近現代美術の作品の奇抜さ、斬新さにかなり圧倒されたことを覚 えています。

 今ではアジア美術の魅力にすっかり引き込まれ、学芸員の方の親切なアドバイスをいただきな がら楽しく選ばせていただいており、気に入った作品が多すぎて迷ってしまうくらいです。

 アゴラも、今号から新しいシリーズなどがスタートしました。これからも学術面でのアジア太 平洋地域のさまざまな「今」の発信に努めていきたいと思っています。〈K〉

■表紙

 ルオン・シュアン・ニー

《読書する若い娘》

1940/ベトナム 福岡アジア美術館所蔵 フランスの植民地政府によって1925年ベトナムに創設 されたインドシナ美術学校。ルオン・シュアン・ニー はその第7回卒業生である。この作品は、インドシナ 美術学校最初期の、詩的で、ロマンチックなリアリズ ムのスタイルがよくでている。作者は、その清新な色 彩の使用が評価され、「緑色の巨匠」と呼ばれている。

◆年会費(毎年度継続して納入いただきます)

 個人:1口   3,000円   法人:1口 30,000円

●賛助会員の特典

 ○センターが発行しているニューズレター「アゴラ」や   ニュースレポート「中国動向」・「韓国動向」、研究誌「A   PCアジア太平洋研究」等の刊行物をお送りいたします。

 ○センター主催の講演会、ワークショップ等にご案内い   たします。有料のものは受講料が割引になります。 

 ○企業内セミナーなどの講師についてご相談に応じます。

ほかにもいろいろな特典がありますので、この機会にぜひご入会ください。

当センターの事業・趣旨に賛同し、アジア太平洋地域の知的交流や国際理解を深めるためのAPCの活動を応援して いただける賛助会員の方を募集しています。会員には個人、法人の2種類があります。

今回新たにご入会いただいた会員の皆様をご紹介いたします。

ご入会誠にありがとうございます。

●個人会員

 荒木 理人   一木 岳志   今枝   仁   大島 重史  尾上  司   川原貴美子   相良  津一   佐々木憲文  杉  英彰   田中 幸一   谷口  興二   鳥居裕美子  永瀬 眞二   野田昌太郎   橋本  満弘   福田 幸雄  堀之内耀子   水城 秀行   山崎  みさ

   ●お申し込み・お問い合せはこちらへご連絡下さい!

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アジア太平洋センター(APC)賛助会員募集中

(五十音順・敬省略)

2 3- 2 6 財 団 法 人 ア ジ ア   太 平 洋 セ ン タ ー

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お申し込みは、はがき、FAX、電子メールに講演会名を明記の上、郵 便番号、住所、氏名(ふりがな)、年齢、職業、電話番号を記入して当 センターまで。電話でもお申し込みできます。(入場無料)

参照

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