平成 18 年度
硫化物沈殿法による排水中からの金属回収技術開発 報告書
平成 19 年 3 月
財団法人 造水促進センター
頁
1.緒言 1
1.1 目的 1
1.2 内容 1
1.3 スケジュール 1
1.4 期待される成果 2
1.5 委員会 2
2.金属の処理技術について 4
2.1 概要 4
2.2 中和法 5
2.3 硫化物法 6
2.4 新しい硫化物法 7
2.4.1 概要 7
2.4.2 フローシート 8
2.4.3 実施例 9
3.実験結果 10
3.1 基本性能確認実験 10
3.1.1 緒言 10
3.1.2 実験方法および試料 10
3.1.3 実験結果および考察 12
3.1.4 まとめ 23
3.2 パイロット試験 24
3.2.1 試験設備仕様 24
3.2.2 試験方法 31
3.2.3 試験結果 32
3.2.4 まとめ 37
4.まとめ 38
4.1 本年度の結果 38
4.2 来年度の計画 38
5.結言 39
6.添付資料 41
(1)委員会議事録 43
1.緒言
1.1 目的
現代の大量生産・大量消費型社会経済活動から発生する大気、水、土壌等への環境負荷量の増 大は、現在自然の自浄能力を超えて増大している。自然の物質循環を阻害することがないよう社 会経済システムにおいても、適正な資源投入、製造、流通・販売、消費、廃棄、資源再生といっ た物質循環の輪を形成していくことが求められている。
「循環型社会形成推進基本法」にも示されているとおり、廃棄物・リサイクル対策は、第一に 廃棄物等の発生抑制(リデュース)、第二に使用済み製品、部品等の適正な再使用(リユース)、
第三に回収されたものを原材料として適正に利用する再生利用(マテリアルリサイクル)、第四に 熱回収を行い、それでもやむを得ず循環利用が行われないものについては適正な処分を行うとい う優先順位を念頭において進めていかなければならない。
日本政府は、上記基本法に基づき、平成 15 年3月に「循環型社会形成推進基本計画」を策定し、
わが国が目指す循環型社会の具体的イメージ、数値目標を示すとともに、国民、民間団体、事業 者、地方公共団体、国が果たすべき役割等を定め、計画に基づいて廃棄物・リサイクル対策を総 合的かつ計画的に進めることとしている。
こうした社会的背景のもと、技術開発においては産業排水処理で発生する汚泥のリサイクルの 一環として、排水中に含まれる有価金属の回収を目的として、硫化物法による金属回収技術に関 して研究開発を行うものである。
1.2 内容
本事業では、とくに銅の回収を中心に実験を行うこととし、パイロット試験装置をプリント配 線板製造工場内に設置し、銅イオン含有排水を対象に硫化物法による処理実験を行うとともに、
各種金属硫化物の沈殿反応とpHとの関連性に関する基礎実験を東京大学にいて実施した。
1.3 スケジュール
本研究は、平成 18 年度と 19 年度の 2 カ年間で実施する予定であるが、予算の確定が単年度ご とであるため、各年度で研究結果の結論を得る必要がある。
スケジュールおよび実施状況は以下に示すとおりである。
4〜6 7〜9 10〜12 1〜3 4〜6 7〜9 10〜12 1〜3 1.基礎データの収集
2.基本性能確認実験
3.パイロット試験 (1)装置設計・製作 (2)硫化物の反応試験
4.設備改造
5.委員会
1.4 期待される成果
本技術開発により以下のような成果が期待される。
1) 銅イオンの硫化物法による処理・回収技術の確立。
2) 脱水性のよいスラッジを得ることによる運搬経費の節減。
3) 運搬経費節減によるスラッジリサイクル率の向上。
4) スラッジリサイクルによる廃棄物埋立処分場の延命化。
1.5 委員会
本研究の実施に当たっては、学識経験者、水処理メーカーなどからなる委員会を(財)造水促進 センター内に設置し、委員各位のご指導をいただきながら進めた。委員会の構成は以下のとおり である。
硫化物沈殿法による排水中からの金属回収技術開発委員会
氏 名 所 属
委員長 委員 委員 委員 委員
藤田 豊久 所 千晴 志賀 孝作 宮嵜 毅 大西 彬聰
東京大学大学院工学系研究科地球システム工学専攻 教授 早稲田大学理工学部環境資源工学科 助手
東京都鍍金工業組合環境科学研究所 所長 株式会社太洋工作所堺事業部 次長 株式会社アクアテック 代表取締役 事務局
〃
秋谷 鷹二 長澤 末男
財団法人造水促進センター 常務理事
〃 水処理技術部 部長代理
第 3 回委員会 平成 19 年 3 月 19 日
各委員会の議事録は、添付資料(1)「委員会議事録」参照。
2.1 概要
廃水に重金属が含まれる業種としては、次のようなものが考えられる。
1)金属表面処理業(電解研磨、アルマイト防錆、研磨など)Cu、Al など
2)非鉄金属製造業((i)非鉄金属一次精錬業:銅、鉛、亜鉛、アルミ、チタンなどの精錬、 (ⅱ) 非鉄金属一次加工業:伸銅、伸線、圧延、合金など)
3)めっき業:電気めっき業(Cr、Ni など)
4)化学工業:ソーダ工業(Hg など)
5)ガラス工業:特殊ガラス業(Cd、Pd など)
6)製鉄業:酸洗、高炉ダスト(Fe、Zn など)
7)製革業:皮なめし業(Cr など)
8)鉱業:坑内水、選鉱排水(Cu、Pb、Zn など)
9)その他薬品工業、染料工業、合成樹脂工業など
これらの業種の事業所から排出される排水は、量、質ともに種々雑多であるが、いずれの業種 においても、ある一定の方法によって処理が行われている。
水中にある重金属イオンを除去する方法としては以下のような方法がある。
(1)中和法 (2)硫化物法 (3)還元法 (4)酸化法
(5)イオン交換樹脂法 (6)吸着法
(7)イオン浮選法 (8)生物処理法 (9)フェライト法 (10)HGMS 法
これらの手段のうちで、主力となっているのは中和法で、その他の方法は補助手段ともいえる位 置付けにある。
すなわち、各種処理の組み合わせは、一例をあげれば次のようになっている。
例1 クロム含有重金属排水:6価クロムを還元したのち中和法を行う。
例2 第一鉄含有重金属排水:第一鉄は、酸化法またはバクテリアなどで酸化したのち中和をす る。
例3 水銀含有排水:中和法ののち、活性炭、イオン交換樹脂などにより微量残留の水銀を除く。
2.2 中和法
含重金属排水から重金属を水酸化物として析出させるためには、中和法が使われることが多い。
NaOH、NH4OH、Ca(OH)2、CaCO3 などが中和剤として使われる。ソーダ類は、沈殿物量が少ないなど の利点が多いが、高価なのであまり使われない。少量の液の中和とか、沈殿物の生成を避けたい 場合とか、とくに高い pH を必要とする場合に限られる。
石灰類は、水溶性が悪いので、未反応の粒子を生成させ、スラッジが大量に発生するが、pH は 10〜11 ぐらいにあげることができて、比較的安価である。
中和については溶解度積(Solubility product)の概念で説明されることが多い。
M(OH)2 M2++2OH Ks(溶解度積)=[M2+ ] [OH‑ ]2 したがって、
[M2+ ]=Ks/[OH‑ ]2 =Ks[H+]2/10−28 ∴ log[M2+ ]=logKs+28−2pH
溶解度積 Ks を表 2.1 に示す。
しかしながら、強アルカリ性における錯陰イオンの再溶解、共存イオンの存在、錯形成イオンの 影響などがあり、一般の排水では、必ずしも溶解度積だけの問題では解釈できない。
重金属含有排水の中和処理には 2 つの考え方がある。第一の考え方は pH を一度にあげて各種イ オンを一度に混合沈殿物として除去してしまう方法である。第二の考え方は、排水の pH をコント ロールして、沈殿物を分別採取して利用する方法で、たとえば炭酸カルシウムで pH をコントロー ルし、まず Fe3+を除き、さらに炭酸カルシウムで pH をあげ石膏を除去し、さらに pH を石灰によ ってあげ、重金属を除くという方法がとられる場合もある。
表 2.1 金属水酸化物の溶解度積
化合物 溶解度積 温度(℃) 化合物 溶解度積 温度(℃)
AgOH
〃 Al(OH)3
〃
〃
1.52×10−8 2.4〜3.1×10−8
1.1×10−15 3.7×10−15 4.8×10−31
20 25 18 25 22
Hg2(OH)2
Hg(OH)2
Mg(OH)2
Mn(OH)2
Ni(OH)2
7.8×10−24 1 ×10−26 1.2×10−11 4 ×10−14 8.7×10−19
18 18 18 18 18 重金属
含有排水 中和法
還元法 酸化法 生物処理法
イオン交換樹脂法 放流 もしくは 再利用 硫化物法
図 2.1 重金属イオンの除去法
Cd(OH)2
Cu(OH)2
Fe(OH)2
Fe(OH)3
〃
1.7×10−13 4〜5×10−19 1.64×10−14
1.1×10−36 3.8×10−38
20
− 18 18 18
Zn(OH)2 1.0×10−18 18
2.3 硫化物法
硫化物法は、排水中に硫化剤を投入してイオンを硫化物として沈殿させる方法である。
硫化剤としては、硫化ソーダ、硫化水素などが使われる。この方法は、表 2.2 に示すように硫 化物の溶解度積が水酸化物に比べて小さく、酸性側でも溶解しにくく、沈殿物のろ過も中和法に 比べると容易であるという利点を持つ。
硫化物の沈殿は pH に支配されるところが多い。たとえばカドミウムなどは、酸性側でも硫化物 による除去が良好であり、水酸化物沈殿にくらべて効果的な除去が可能である。
同和鉱業花岡鉱山で行っていた硫化水素による排水処理は、排水(130m3/日、Cu:500mg/l、
Fe2+:340mg/l、Fe3+:380mg/l)を、まず炭酸カルシウムで pH4にして Fe3+を沈殿させ、ついでその オーバフローに硫化水素を加えると、排水は(Cu:Tr、Zn:Tr、Fe3+:3.5mg/l)
になる。沈殿物は乾量で月 10t、品位 50%の銅分の高い副産物を得ることができていたとのこと である。
表 2.2 金属硫化物の溶解度積(18〜25℃) 硫化物 Ksp 硫化物 Ksp
HgS CuS CdS PbS SnS FeS
4×10−53 6×10−36 2×10−28 1×10−28 1×10−25 6×10−18
ZnS CoS NiS MnS
α−:2×10−24 β−:3×10−22 α−:4×10−21 β−:2×10−25 α−:3×10−19 β−:1×10−24
(Amorph) 3×10−10 (Cryst) 3×10−13
図 2.2 に、硫化物法における金属イオンと pH の関係を示す。
2.4 新しい硫化物法 2.4.1 概要
硫化物法は中和法と比べて、処理水中の金属イオン濃度を低い値まで下げられ、しかも発生 スラッジも少なく、比較的山元還元しやすいなど利点の多い技術であるが、現実には中和法が金 属イオンの処理の主流を占めており、硫化物法はほとんど普及していない。その理由は硫化物 法の持つ以下のような問題点にある。
1)硫化剤の添加制御が難しい。
2)沈殿生成物が微細で凝集しにくくコロイド化しやすい。また高分子凝集剤が効きにくい。
3)有毒な硫化水素ガス発生の危険がある。硫化水素は人体に有毒で毒性、腐食性があり、
ごく微量でも悪臭がする。
硫化物法を現実のものにするには、上記三つの問題点を克服せねばならない。
1)については、近年の研究により金属イオンを含む溶液中の硫化物の生成反応の進 行と硫化水素ガス発生の間に、図2.3に示すような関係があることを確認した。重金 属イオンを含む廃水に硫化剤を添加して、硫化物を沈殿させる場合、反応槽内では金属 イオンが残留する間は、たとえ、pHが低くても式(1)の反応が式(2)の反応に先行し、金属 硫化物の沈殿によって、液中の金属イオンの濃度が十分に低くなってから硫化水素ガス が発生する。
この方法で、硫化ソーダの添加制御をすれば、正確・安価・安定して硫化物沈殿プロ セスを制御できることが、試験装置により確認された。
M2+ + S2− MS (1)
2H+ + S2− H2S (2)
図 2.2 pH と金属硫化物の溶解度
2)については、硫化物添加制御を適正に行うとコロイド化しないため、2)の問題 は大方解決する。
3)についてもガスセンサーによる硫化剤の添加制御を行うと、処理液中に硫化物イ オンがほとんど残らないので、反応槽の液相では、多少硫化水素の臭いはするものの、
後続の凝集槽、沈殿槽、脱水機では臭いがしない。
2.4.2 フローシート
硫化物法プロセスのフローシートを図 2.4 に示す。プロセスは基本的には従来法とあまり変わ らない。異なる点は、
① 反応槽、凝結槽、沈殿槽上部に蓋をし、排気ダクトが設置されている。
② 小型スクラバーが設置されている。
③ 硫化水素モニターが設置されている。
④ 硫化剤のタンクと薬注ポンプが設置されている。
基本的なフローは変わらないために、既設設備の改造でも実施可能である。
図2.3 硫化物添加量と水槽内反応
PH調整剤 硫化剤 凝結剤 硫化水素 ガスモニタ-
排ガス 処理装置
原水槽 反応槽 凝結槽
沈降槽 中和槽 次工程
2.4.3 実施例
ガスセンサーで硫化剤を添加制御する新開発の硫化物法によるニッケル回収設備が、2004 年 10 月に産業廃棄物処理事業所に設置された。工業規模での実施は初めての設備である。
約2週間の運転結果を表 2.3 に示す。
運転結果から以下の結論が得られた。
① 処理工程中、硫化水素ガスのにおいはしない。また、硫化物法特有の沈殿生成物の微細化や コロイド化も起こらない。硫化物法はこれまで硫化水素ガスの悪臭やコロイド化の問題でこ れまで見捨てられてきたが、硫化水素ガスセンサーで硫化剤添加を制御する方式で、これら の問題を解決できた。
② スラッジの発生量は従来法の 40%に削減された。スラッジの含水率は表1に示すように 40%程度であり、そのため脱水ケーキ中のニッケル含水率は従来法より遙かにリッチである。
③ 従来、当工場ではニッケル廃水は塩化第二鉄などの無機凝集剤を添加しないと処理できなか ったが、本法では無機凝集剤は全く使用しなくても良好な結果を得ている。
④ 廃水からのニッケル除去率は 99.9%であり、非常に高効率である。
⑤ 従来、ニッケルスラッジは鉱山に売却できず処分費を払って引き取ってもらっていたが、こ の脱水ケーキは製錬所にかなりの金額で売却できることがわかった。
表 2.3 硫化物法によるニッケル廃液処理結果 処理
バッチ
原水 Ni 濃 度(mg/l)
処理 pH (‑)
凝結剤 添加時間
残留 Ni 濃 度(mg/l)
脱水 バッチ
含水率 (%)
Ni 含有 率(%)*
1 5,000 7.0 15〜30 分 − 2 5,000 7.5 15〜30 分 − 3 5,000 7.0 15〜30 分 1.4
① 42 32
4 5,000 7.5 30 分 4.3 5 5,000 6.5 30 分 1.5 6 5,000 6.5 30 分 2.1
② 46 36
7 5,000 6.5 無 2.4 8 7,000 6.5 無 5.4 9 7,000 7.0 無 0.9
③ 38 26.5
10 6,000 7.0 10 分 5.7 11 6,000 7.0 10 分 3.0 12 6,000 7.0 10 分 10.1
④ 44 30.7
13 5,000 6.0 10 分 1.2 14 5,000 6.0 10 分 2.2 15 5,000 6.0 10 分 0.5 16 5,000 6.0 10 分 0.5
⑤ 42 33.2
* Ni 含有率は、乾燥後の固形分中の含有量。今後のスラッジの洗浄技術で不純物が除去でき ると思われるのでさらに良くなることが期待できる。
硫化物法によるニッケル回収の詳細は、添付資料(2)「硫化物法によるニッケル回収に関す る文献」参照。
3.1 基本性能確認実験 3.1.1 緒言
硫化物沈殿法は、重金属含有廃水に硫化物イオンを添加し、有害重金属イオンを硫化物沈殿 として除去するものである。重金属含有廃水の一般的な処理法である水酸化物沈殿法と比べ、
金属硫化物は廃水に含まれているキレート剤などの共存物質の影響を受けにくいことや、金属 水酸化物よりも溶解度積が小さいなどの特徴を有する。また、金属硫化物は疎水性であること から、含水率が低く重金属含有率が高い殿物を得られる可能性があるという利点を有する。し かし、硫化物イオンは溶液中反応が敏感であり、実際の廃水処理における硫化物沈殿生成の挙 動は、理論上の金属硫化物溶解度とは大きく異なることが知られている。
そこで本研究では、溶液中における硫化物生成の基礎的挙動を把握するために、単成分系を 模擬した人工廃水を作成し、pH および硫化剤添加量と硫化物沈殿生成との関係を実験的に検 討した。また、化学平衡計算を用い、実験結果と計算結果との相違点を考察した。
3.1.2 実験方法および試料
(1)実験装置
本研究では、図 3.1.1 に示す実験装置を製作した。装置はドラフト内に設置し、温度調整器
(FHP-301、Fine製)にて水温を25±2℃に保った。装置内を還元雰囲気に保つため、実験中 および前後にわたってN2ガスを500 mL/minで注入し、装置は閉鎖系とした。排気はH2Sガ スセンサ((株)アクアテック社提供)に導入し、H2S ガス濃度を測定した。また、実験中は pH/ORP複合電極(9107BNMD、Orion製)にてpHおよびORPを測定した。溶液内はPTFE 被覆の攪拌子を使用したマグネチックスターラ(PC-420、旭テクノグラス(株)製)にて実験 中にわたって攪拌した。
(2)実験試薬
人工廃水としてCuCl2・2H2Oを二回蒸留水に溶解させた銅水溶液を、硫化剤としてNa2S・
9H2Oを使用した。各試薬を二回蒸留水に添加し、Cu濃度およびS濃度が所定の濃度になるよ うに調整した。pH調整剤にはNaOHまたはHClを使用した。
図3.1.1 実験装置概要図
N
2Magnetic stirrer 200rpm Heat sensor
Heater 25℃
pH/ORP meter
Sample injection
To H2S Gas Sensor N2
Reaction vessel 1000ml
Metal solution
φ 85mm
N2ガス曝気を行った二回蒸留水を用いたCu 人工廃水300cm3を容器に入れ、pH 調整剤に て所定のpHに調整した後、200rpmのマグネチックスターラにて30分間攪拌した。さらに、
硫化剤溶液100cm3を添加し、溶液量を400cm3とした後、再び所定のpHに微調整し、200rpm のマグネチックスターラにて30分間攪拌した。H2Sガスセンサにて、反応中のH2Sガス濃度 を測定した。
反応後の溶液を重力ろ過(孔径1μm、アドバンテック製)にて固液分離し、ろ液の残存Cu 濃度をICP(SPS4000、セイコー電子(株)製)にて定量分析した。
3.1.3 実験結果および考察
(1)硫化剤添加量およびpHの影響
図3.1.2〜3.1.4に、初期Cu濃度3.15×10-3mol/dm3(200mg/dm3)、添加S濃度3.15×10-3
(1当量)または6.30×10-3mol/dm3(2当量)の場合の、反応後の残存Cu濃度、反応中の最 大H2Sガス濃度およびORP測定値を示す。図3.1.2より、硫化剤をCuの1当量添加した場 合には、pH が上昇するにつれて残存 Cu 濃度は減少するものの、排水基準値(3mg/dm3)に は達しないが、2当量添加した場合には、排水基準値以下に除去可能であることがわかる。
図3.1.2 残存Cu濃度に対する添加S濃度およびpHの影響
0 50 100 150 200
0 1 2 3 4
pH
Residual Cu Co ncn. (mg/L)
T-S = 3.15 mmol/L
T-S = 6.30 mmol/L
図3.1.3 H2Sガス濃度に対する添加S濃度およびpHの影響
図3.1.4 ORP値に対する添加S濃度およびpHの影響
0 10 20 30
0 1 2 3 4
pH
H
2S(g) Conc n. (m g /L ) T-S = 3.15 mmol/L
T-S = 6.30 mmol/L
0 100 200 300 400
0 1 2 3 4
pH
ORP (mV)
T-S = 3.15 mmol/L
T-S = 6.30 mmol/L
は、H2Sガスが発生することが確認できる。一方、図3.1.2および図3.1.4より、ORP値はpH と相関があるものの、残存 Cu濃度とは相関がないことがわかる。したがって、硫化物沈殿法 における硫化剤添加量制御においては、ORP値による制御は困難であるが、H2Sガス発生量に よる制御は可能であることが確認されたと言える。
(2)初期Cu濃度およびpHの影響
図3.1.5に、初期Cu濃度および添加S濃度が1.57×10-3mol/dm(初期3 Cu濃度で100mg/dm3)、
または初期Cu濃度および添加S濃度が3.15×10-3mol/dm3(初期Cu濃度で200mg/dm3)の 場合の、反応後の残存 Cu濃度を示す。図より、初期Cu濃度の影響は低pH領域で確認でき ることがわかる。なお、これらの反応では、H2Sガスの発生は認められなかった。
図3.1.5 残存Cu濃度に対する初期Cu濃度の影響
0 50 100 150 200
0 1 2 3 4 5
pH
Residual Cu Concn. (mg/L)
T-Cu = 100 (mg/L)
T-Cu = 200 (mg/L)
(3)硫化剤添加速度の影響
硫化剤添加速度が硫化物生成に及ぼす影響を調べるため、硫化剤添加時にマイクロチューブ ポンプ(MP、東京理化器械(株)製)を用いて添加速度を調整する実験を行った。図3.1.6に、
初期Cu濃度3.15×10-3mol/dm3(200mg/dm3)、添加S濃度1.89×10-3mol/dm3(3/5当量)
の場合の、硫化剤添加速度と残存 Cu濃度との関係を示す。図より、硫化剤添加速度が大きい ほど残存 Cu濃度は小さくなる傾向が見られるが、その傾向はさほど顕著ではないことがわか る。
図3.1.6 残存Cu濃度に対する硫化剤添加速度の影響(Cu:S=5:3)
0 50 100 150 200
0 1 2 3 4 5
pH
Residual Cu Concn. (mg/L)
33.6 (µL/s)
62.5 (µL/s)
177 (µL/s)
at once
(4)残存Cu濃度の経時変化
図3.1.7および図3.1.8に、初期Cu濃度1.57×10-3mol/dm3(100mg/dm3)、添加S濃度5.25
×10-4mol/dm3(1/3 当量)および1.57×10-3mol/dm3(1 当量)の場合の、残存Cu 濃度の経 時変化を示す。図より、低pHではほとんど経時変化は見られないが、pH4では時間の経過に つれて残存 Cu濃度は減少する様子が確認でき、その傾向は硫化剤添加量が少ないほうが著し いことがわかる。
図3.1.7 残存Cu濃度の経時変化(Cu:S=3:1)
0 20 40 60 80 100
0 1 2 3 4
Reaction times (days)
Resi dual Cu Conc n. (m g/L)
pH1
pH2
pH3
pH4
図3.1.8 残存Cu濃度の経時変化(Cu:S=1:1)
(5)硫化物粒径把握のための簡易実験結果
生成するCuS粒子の粒径を簡便的に調べるために、ろ紙の孔径を変えて残存Cu濃度を測定 する実験を行った。本研究では、一連の実験において 1µm 径のろ紙を用いた重力ろ過を行っ ているが、本項では、0.2µmのろ紙を用いた加圧ろ過も同様に行い、両者のろ液の残存Cu濃 度を比較した。
図3.1.9に、初期Cu濃度3.15×10-3mol/dm3(200mg/dm3)、添加S濃度1.89×10-3mol/dm3
(3/5当量)の場合の、残存Cu濃度に対するろ紙孔径の影響を示す。図より、pHが大きいほ ど、ろ紙孔径の影響が大きいことが確認できる。したがって、pH が大きくなるほど、比較的 微細な(0.2µm〜1µm)CuS粒子が生成するものと推察される。
また、図3.1.10および3.1.11に、図3.1.9と同条件における残存Cu濃度の経時変化を示す。
図より、ろ紙孔径1µmの場合には残存Cu濃度の経時変化が見られるが、ろ紙孔径0.2µmの 場合には、さほど変化が見られないことがわかる。したがって、前項で確認されたpH4におけ る残存Cu濃度の経時変化は、微細なCuS粒子のゆっくりとした凝集によるものであると推察 される。
0 20 40 60 80 100
0 1 2 3 4
Reaction times (days)
Resi dual Cu Conc n. (m g/L)
pH1
pH2
pH3
pH4
図3.1.9 残存Cu濃度に対するろ紙孔径の影響
図3.1.10 残存Cu濃度の経時変化(ろ紙孔径1µm)
0 20 40 60 80
0 1 2 3 4 5
pH
Resi dual Cu Conc n. (m g/L)
0.2µm 1µm
0 20 40 60 80 100
0 1 2 3 4 5 6 7
Reaction times (days)
Residual Cu Concn. (mg/L)
pH1
pH2
pH3
pH4
図3.1.11 残存Cu濃度の経時変化(ろ紙孔径0.2µm)
(6)電解質種の影響
残存Cu濃度に対する電解質種の影響を調べるため、人工廃水作成のためのCu塩およびpH 調整剤を、Cl系の他に、NO3系およびSO4系に変えた実験を行った。すなわち、NO3系では、
Cu(NO3)2・3H2O、HNO3を用い、SO4系では、CuSO4・5H2O、H2SO4を用いた。
図3.1.12に、初期Cu濃度3.15×10-3mol/dm(200mg/dm3 3)、添加S濃度2.10×10-3mol/dm3
(2/3当量)の場合の、残存Cu濃度に対する電解質種の影響を示す。また、図3.1.13に添加 S濃度3.15×10-3mol/dm3(1当量)の場合の、残存Cu濃度に対する電解質種の影響を示す。
図より、Cl系およびNO3系ではpHの上昇に従って残存Cu濃度が減少する様子が確認できる が、SO4系では残存Cu濃度に対する pHの影響が顕著ではないことがわかる。したがって、
CuS沈殿生成は、溶液中の電解質種にも影響を受けることが確認されたと言える。
0 20 40 60 80 100
0 1 2 3 4 5 6 7
Reaction times (days)
Residual Cu Concn. (mg/L)
pH1
pH2
pH3
pH4
図3.1.12 残存Cu濃度に対する電解質種の影響(Cu:S=3:2)
図3.1.13 残存Cu濃度に対する電解質種の影響(Cu:S=1:1)
0 50 100 150
0 1 2 3 4 5
pH
Residual Cu Concn. (mg/L)
Cl system NO3 system SO4 system
0 50 100 150 200
0 1 2 3 4 5
pH
Re sidual Cu Conc n. (m g/ L) Cl system
NO3 system
SO4 system
(7)化学平衡計算を用いた考察
本項では、以上の実験より得られた結果と理論値との相違点を明らかにするため、化学平衡 計算との比較を行う。本研究では、化学平衡計算ソフト PHREEQC を用い、ソフトに付属の データベースminteq.v4を用いて化学平衡計算を行った。計算においては、溶液組成を実験系 と厳密に一致させた。また、固相に下記の反応式で示されるCuS(Covellite)を、気体にH2S を仮定した。
CuS(s) + H+ = Cu2+ + HS- log k = -22.3 (1) H2S(g) = H+ + HS- log k = -8.01 (2) 式(1)および(2)で示した平衡定数を用い、図3.1.2および3.1.3に示した初期Cu濃度3.15×
10-3mol/dm3(200mg/dm3)、添加 S 濃度 3.15×10-3(1当量)または 6.30×10-3mol/dm3(2 当量)の場合の化学平衡計算を行ったところ、計算上はいずれのpHにおいてもCuS沈殿が全 量生成し、H2Sガスは全く発生しない結果となった。実験結果である図3.1.2では溶液中に残 存するCuが確認でき、図3.1.3ではH2Sガスの発生が確認できることから、本研究における 実験系は、化学平衡計算に比べて CuS 沈殿は生成し難く、H2S ガスは生成し易い傾向にある と言える。
そこで、以下の考察では、式(1)および(2)に示した平衡定数値を、実験結果へのフィッティン グパラメータとして求めた値を用いることとした。フィッティングの結果得られた平衡定数値 は以下の通りである。
CuS(s) + H+ = Cu2+ + HS- log k = -15.5 (3) H2S(g) = H+ + HS- log k = -9.55 (4) また、図 3.1.14 および 3.1.15 に、フィッティングの結果の計算値を示す。フィッティングの 結果、添加S濃度が2当量の場合に、pHが上昇するにつれて残存Cu濃度が上昇する傾向を 再現できたが、これは、以下の錯イオンの生成が要因であることが確認された。
Cu2+ + 3HS- = Cu(HS)3- log k = 25.899 (5) 図 3.1.16 は、式(3)および(4)に示した平衡定数のフィッティング値を用いて計算した、電解 質種の影響を示したものである。ここで、実験値は図 3.1.13 に示した初期 Cu 濃度 3.15×
10-3mol/dm3(200mg/dm3)、添加S濃度3.15×10-3mol/dm3(1当量)の場合の結果である。
計算値と実験値は定量的には一致しなかったが、実験値では、pH1において、残存Cu濃度が Cl 系、NO3系、SO4系の順に大きい傾向を、計算でも再現することができた。これは、pH1 における以下の錯イオンの生成が要因であることが確認された。
Cu2+ + Cl- = CuCl+ log k = 0.2 (6) Cu2+ + 2Cl- = CuCl20 log k = -0.26 (7) Cu2+ + 3Cl- = CuCl3- log k = -2.29 (8) Cu2+ + 4Cl- = CuCl42- log k = -4.59 (9)
Cu2+ + NO3- = CuNO3+ log k = 0.5 (10) Cu2+ + 2NO3- = Cu(NO3)20 log k = -0.4 (11)
Cu2+ + SO42- = CuSO40 log k = 2.36 (12)
図3.1.14 計算値と実験値の比較(残存Cu濃度)
図3.1.15 計算値と実験値の比較(H2Sガス濃度)
0 50 100 150 200
0 1 2 3 4 5
pH
Residual Cu Concn. (mg/L)
T-S = 3.15 mmol/L (Exp.) T-S = 6.30 mmol/L (Exp.) T-S = 3.15 mmol/L (Calc.) T-S = 6.30 mmol/L (Calc.)
0 10 20 30 40 50
0 1 2 3 4 5
pH H
2S(g) Conc n. (m g /L )
T-S = 3.15 mmol/L (Exp.)
T-S = 6.30 mmol/L (Exp.)
T-S = 3.15 mmol/L (Calc.)
T-S = 6.30 mmol/L (Calc.)
図3.1.16 計算値と実験値の比較(電解質種の影響)
3.1.4 まとめ
溶液内でのCuS生成反応に関する基礎的検討を行った。添加S濃度が初期Cu濃度の1当量 では残存Cu濃度は排水基準値以上であったが、2当量では基準値を下回った。ClおよびNO3
共存系ではpH1においてpH2以上に比べて残存Cu濃度が増加したが、SO4系ではpHの影 響は顕著には見られなかった。また、初期Cu濃度の影響もpH1でのみ確認された。
残存Cu濃度が排水基準値を下回る際には、H2Sガスの生成が確認された。しかし、残存Cu 濃度と ORP には顕著な相関が見られず、ORPは CuS沈殿生成の指標とはなり難いことが確 認された。
硫化剤添加速度に関する検討を行ったところ、添加速度が大きいほど残存 Cu濃度が減少す る傾向が見られたが、その傾向はさほど顕著ではなかった。また、異なる孔径のろ紙を用いた 実験結果より、pHが大きいほど生成するCuS粒径が小さくなる可能性が示唆された。さらに、
pH4において生成する微細なCuS粒子は、数日間で徐々に凝集することが確認された。
化学平衡計算を用いて理論値と実験値の比較を行ったところ、実験値は計算値よりも CuS 沈殿は生成し難く、H2S ガスは生成し易い傾向にあることがわかった。また、CuS 生成への pH および共存イオンの影響に関しては、Cu(HS)3-や CuCl+などの錯イオン生成が複雑に影響 している可能性が示唆された。
0 50 100 150 200
0 1 2 3 4 5 6
pH
Residual Cu Concn. (mg/L)
Cl system (Exp.)
NO3 system (Exp.)
SO4 system (Exp.)
Cl system (Calc.)
NO3 system (Calc.)
SO4 system (Calc.)
3.2.1 試験設備仕様
(1)概要
本試験装置は、プリント配線板製造工程排水から銅を回収することを主な目的としている。
反応槽のpH を変えるなどすれば、他の金属含有排水の処理・金属回収も可能である。これ まで、2 L/hr の小型連続処理実験機での実験は行われたが、中規模、工業規模での実験は行わ れていない。
本試験装置では、将来の大規模な連続式処理設備建設を視野に、中規模実験機(最大処理能 力 128L/hr)として製作している。硫化水素検知・硫化剤添加制御装置(SS コントローラ)は 独立させ、既設設備に取り付け可能な仕様である。種々のケースを考えて、回分式でも処理で きるように 200L の反応槽を別に設けた。回分式で実験を行う場合は、タッチパネルで別プログ ラムにし、pH 電極やpH 調整剤添加チューブを差し替え、SS コントローラを繋げば回分式で 実験が行えるようにしている。将来、反応槽が実機規模になったとしても、ある程度の大きさ までは対応可能な仕様となっている。
原理的には優れているが悪臭とコロイド化の問題で殆ど普及していなかった硫化物法が、硫 化水素を検知し、硫化剤を添加制御すれば、問題なく処理できるという知見に基づき装置が設 計されている。
以下、本処理プロセスを NS プロセスと称することとする。
設備一式を共通の架台の上に設置し、全体が可般式としている。
( 2 ) 装 置 納 入 場 所
大 阪 府 堺 市 石 津 西 町 1 1 番 地 株 式 会 社 太 洋 工 作 所
主要業務:プリント回路基板のスルーホールめっき等
(同社の業務内容に関しては、添付資料(3)「株式会社太洋工作所案内」を参照。)
(3)主要機器リスト
表3.2.1および表3.2.2参照。
(4)フローシートおよび設備配置図 図3.2.1および図3.2.2参照。
(5)研究内容
① 硫化水素ガスの発生量と原水中銅イオンとの関連。
② 反応時のpHと処理水中の銅イオン濃度との関連
③ 連続運転における原水変動と処理水中銅イオン濃度との関連
表 3.2.1 主要機器リスト
名 称: 硫化物沈殿法による排水中からの金属回収技術開発に係る試験装置 電 源: AC100V単相50/60Hz15A
設 置: 河搬式とする。
処理能力:120 l/h(連続運転が可能とする。)
機器構成:
名 称 個数 1.反応処理槽部
1−1:反応槽(連続処理方式) 1−2:沈殿槽(連続処理方式)
1−3:架台 A
1式 1式 1式 1台 2:薬品注入設備 2−1:原水ポンプ 2−2:pH調節用ポンプ 2−3:凝結剤ポンプ 2−4:薬品容器 2−5:架台 B
1式 1台 1組 1台 3個 1台 3:回分式反応槽 3−1:回分式反応槽
1式 1台 4:制御盤
4−1:制御盤 1式 1面 5:硫化水素モニタ−制御盤 5−1−a:硫化水素モニタ−盤 5−1−b:硫化物モニター 5−1−c:オートドレーン 5−1−d:ガス吸引ポンプ(テフロン製)
5−1−e:吸引・排気ライン 5−1−f:制御機器 5−2:硫化剤注入設備 a:硫化剤注入ポンプ b:薬液タンク 5−3:架台 C
1式 1面 2台 1台 1台 1式 1式 1式 1台 1個 1台
注)機器の詳細は、「表 3.2.2 機器明細」参照。
表 3.2.2 機 器 明 細
名 称 個数
1:反応処理槽部 1−1:反応槽(連続処理方式)
形状、材質 長角型三槽一体型、中仕切り板分割越流管設置 透明PVC加工
容 量 反応部2槽、撹拌器付 容量 10L×2、
排水バルブ 2個
凝集部1槽、撹拌器付 容量 10L、排水バルブ 1個 上蓋配置部品 pH電極、ORP電極、原水注入口、酸・アルカリ注入口、
硫化剤注入口、凝結剤注入口、発生ガス排気口 1−2:沈殿槽(連続処理方式)
形状、材質 三重円筒型底部円錐、 透明PVC加工、排水バルブ20A 速度可変型撹拌器 1〜9rpm(60Hz)
流入口VP16A、上澄み液流出口VP16A、
容 量 10L、
1−3:架台 A
SUS304アングル熔接加工、SUS304 板巾 1,050mm 奥行 500 高 540mm, 全高約 1,200mm
1式 1台 1台 1台
2:薬品注入設備 2−1:原水ポンプ 東京理化製チューブポンプ 型式 RP−1000 吐出量0.7〜138L/h.
2−2:pH調節用ポンプ 2−2−1:酸用ポンプ タクミナ製電磁定量ポンプ 吐出量1.0〜30ml/min PVCヘッド、バルブシート、Oリング材質 酸用 2−2−2:アルカリ用ポンプ タクミナ製電磁定量ポンプ 吐出量1.0〜30ml/min PVCヘッド、バルブシート、Oリング材質 アルカリ用 2−3:凝結剤ポンプ
タクミナ製電磁定量ポンプ 吐出量1.1〜38ml/min PVCヘッド、バルブシート、Oリング材質 アルカリ用
2−4:薬品容器 偏平角型ポリエチレン瓶 容量 10L
2−5:架台 B
1 式 1台 1組 1台 1台 1台 3個 1台
3−1:回分式反応槽 仕 様 ダイライト製円筒形バッフル付 容量 200Lポリエチレン製 上蓋材質 PVC3分割、中央部板ボルト止め、両側蓋透明PVC 原水注入口、薬品注入口4ヶ所、排気管接続口、電極接続口2個所 テフロン製フロートスイッチ2個(上限、下限)
撹 拌 200V3相ギヤードモーター90Wベーパーシール 撹拌羽根2枚パドルφ250×2枚
撹拌棒は天然ゴムライニング加工
回転数 138rpm(制御盤内インバーターにより制御可能) 架 台 SSアングル熔接加工、巾750奥行700高950mm
1台 1台
4:制御盤 4−1:制御盤 鋼鈑加工屋外仕様、前面・背面防水カバー取り付け
巾420奥行580高530mm 計器(パネル面配置部品)
a:pH指示調節形 0−10PH(記録出力DC4〜20mA)
酸・アルカリポンプ作動用上下限接点付
b:ORP指示調節形 ±1000mV(記録出力DC4〜20mA)
c:撹拌速度調節器 d:タッチパネル キーエンス製 型式VT3−7S 有効表示160×120㎜
e:メタルコネクター(撹拌機用×4個、ポンプ用×3)
f:コンセント2P1E(ポンプ用×2,モニター用、予備各1個)
制御部品(盤内配置) a:スイッチ 電源保護用漏電ブレ−カ−
b:インバーター 回分式反応槽撹拌機用 入力AC100V単相、出力AC200V三相0.1kw c:シーケンサー 三菱電機製 FX2N−24MR アナログ/デジタル変換ユニットFX2N−4A/D デジタル/アナログ変換ユニットFX2N−4D/A d:その他配線部品
1式 1面 1式 1台 1台 3個 1台 1式 1式 1式 1個 1台 1台 1台 1台 1式 5:硫化水素モニタ−制御盤 5−1:硫化水素モニタ−盤 a:制御盤 鋼鈑加工屋外仕様、前面スイッチ操作窓付
巾710奥行373高1000㎜
b:硫化物モニター 濃度指示警報計(入力、出力 DC4〜20mA)
c:オートドレーン 1式 1面 1面 2台 2個 1台
d:ガス吸引ポンプ(テフロン製)
e:吸引・排気ライン テフロン製電磁弁口径PT1/8B×4個、配管テフロンφ6㎜
流量形(試料ガス用1L/m,希釈空気用5L/m)
f:制御機器 f−1:漏電ブレ−カ− 2P15A f−2:シーケンサーFX2N−16MR f−3:スイッチ 運転開始、運転停止、自動/手動選定、各1個
照光セレクトスイッチ(硫化物モニター×2個、吸引ポンプ、硫化剤 ポンプ×1、電磁弁用×4個)
f−4:ランプ(電源、自動、各1個)
f−5:データー収集装置 キーエンス製 型式DT−100+DC24V電源
f−6:その他 リレー、端子台、配線部品、
f−7:排気ガス洗浄容器 PVC角型 短絡防止用隔壁付 容量 5L
5−2:硫化剤注入設備 a:硫化剤注入ポンプ タクミナ製電磁定量ポンプ 吐出量1.0〜30ml/min
PVCヘッド、バルブシート、Oリング材質 アルカリ用 b:薬液タンク タクミナ製ポリエチレン容器、形式 PTU−25 容量 25L 5−3:架台 C SSアングル熔接加工、巾700奥行600高750mm
1台 1式 各1台 1式 1個 1台 1式 1台 1式 1個 1式 1台 1個 1台
(2)研究内容
① 銅イオンと硫化物の反応の進行と硫化水素ガスの抑制効果
② 硫化水素ガスセンサーの効果
③ 硫化銅沈殿物の生成とコロイド化抑制効果(水酸化物法による沈殿処理より低い金属イ オン濃度の処理水を得ることを目標とする。)
④ 脱水スラッジの含水率(水酸化物法より低い値を目標とする)
図 3.2.1 パイロット試験設備フローシート
3.2.2 試験方法
試験は、以下に示す4回の試験を行った。
1) 試験−1 H2S ガス発生量と処理 Cu の関係
実験条件 H2S ガス発生量 0.05―5.00mg/L・Hr 反応時間 40 分
反応pH 2.0
* H2S ガス発生量:単位反応槽容量(L)あたりの 1 時間に発生する H2S ガス量
2) 試験−2 反応 pH と処理水 Cu の関係
実験条件 H2S ガス発生量 2.00mg/L・Hr 反応時間 40 分
反応pH 1.5、2.0、2.5、3.0
3) 試験−3 連続処理実験による原水変動と処理水 Cu の関係 実験―1、2より下記条件として実験を行う
実験条件 H2S ガス発生量 5.00mg/L・Hr 反応時間 40 分
反応pH 1.5
4) 試験−4 脱水処理実験
実験条件 硫化物スラリー 実験 1 で得られたスラリー 圧力 3Mpa
反復脱水時間 2 時間
注:なお、今回実験開始に当たり硫化物の添加制御を比例制御から PID 制御に変更、発生 H2S ガス量の安定化を図った。
50 100 150 200 250 300 350 400
Cu濃度[mg/L]
250 500 750 1000 1250 1500 1750 2000
Fe濃度[mg/L]
(1)原水水質
実験期間中の原水水質について表 3.2.3 に示す。
試験装置を設置した㈱太洋工作所はプリント配線版の表面処理事業所で,銅メッキが主とし て行われている関係から、原水中には銅イオンが多く含まれている(水質データについては、
添付資料(4)「パイロット試験水質データ一覧」を参照。)。
表 3.2.3 原水水質
項目 Mn Fe Ni Cu Zn Sn 月 日
単位 mg/l mg/l mg/l Mg/l mg/l mg/l 平均 2.38 13.1 26.2 395.2 0.54 0.94 最小 2.01 8.9 17.2 220.6 0.45 0.05
1 月 19 日
最大 3.17 24.4 42.3 459.8 0.73 2.03 平均 6.78 419.0 26.5 184.5 0.46 0.33 最小 3.35 39.8 12.8 0.9 0.31 0.00
1 月 25 日
最大 14.60 1400.5 49.5 329.4 0.60 1.46 平均 3..70 275.9 9.7 241.6 0.38 0.87 最小 2.07 51.5 7.7 91.0 0.30 0.00
1 月 30 日
最大 6.22 743.3 11.3 544.1 0.64 3.15 平均 1.78 23.6 7.9 310.1 0.45 1.10 最小 1.37 11.0 6.3 257.8 0.33 0.30
2 月 05 日
最大 2.32 60.9 9.0 437.2 0.76 3.26 平均 18.96 25.1 26.9 133.6 0.44 0.08 最小 9.85 9.1 9.0 68.4 0.34 0.00
2 月 08 日
最大 30.50 127.6 39.1 272.6 0.58 1.15 平 均 6.72 151.4 19.4 253.0 0.45 0.66
原水中には、Cu 以外の成分としては Fe、Ni、Mn、Zn、Sn が含まれている。
Cu が少ない日の Cu と Fe の経時変化を 調べると、図 3.2.3 のようになった。
図 3.2.3 から原水中の Cu 濃度が低下すると Fe 濃度は上昇し 1000mg/L 以上となる。
そして、Cu 濃度の上昇とともに Fe は低下 し 20‑30mg/L 程度となる。
これは原水をフェントン法で処理している
図ー3処理水Cu濃度とH2Sガス発生量の関係 y = 51.971e-1.5065x
R2 = 0.8316
0.001 0.010 0.100 1.000 10.000 100.000
0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 H2Sガス発生量[mg/L・Hr]
Cu濃度[mg/L]
反応時間 40分 反応pH=1.5-2.0
次に、原水中の Cu 濃度のヒストグラムを調べると図 3.2.4 のとおりである。
同図より Cu 濃度は約 40%が 200〜299mg/L の間であること、600mg/L 以下が全体の 90%を 占めていることがわかる。また、平均 Cu 濃度は 253mg/L であった。
(単位:mg/l) 1000 以上
900〜999 800〜899 700〜799 600〜699 500〜599 400〜499 300〜399 200〜299 100〜199 100 以下
0 5 10 15 20 原水中の Cu 濃度の件数
図 3.2.4 原水中 Cu 濃度のヒストグラム
(2)処理水 Cu 濃度と H2S ガス発生量及び ORP の関係 処理水 Cu 濃度と H2S ガス発生量を図示すると 図 3.2.5 のとおりとなる。
同図より明らかなように処理水 Cu 濃度と H2S ガス発生量には明白な相関関係が得られた。この ことから、H2S ガス発生量で硫化剤の制御を行う ことにより、処理水の Cu 濃度の制御が行える事 が明らかとなった。
なお、Cu 濃度を 1mg/L 以下に抑えようとする ときの H2S ガス発生量は 4mg/L・Hr 必要であっ た。
図 3.2.5 処理水 Cu 濃度と H2S ガス発生量の関係
図ー4処理水Cu濃度とORPの関係 y = 24.025e0.017x
R2 = 0.2528
0.100 1.000 10.000
-150 -100 -50 0 50 100
ORP[mV]
Cu濃度[mg/L]
pH=2.0 指数 (pH=2.0)
図ー5 Cu残留濃度と反応pHの関係
y = 5.646e0.5451x R2 = 0.7738 1
10 100
1 1.5 2 2.5 3 3.5
反応pH
Cu濃度[mg/L]
処理水 指数 (処理水)
反応時間 40分 H2Sガス発生量=2mg/L/Hr
すると図 3.2.6 のとおりとなった。
同図より、処理水 Cu 濃度と ORP との間に は相関関係は認めにくかった。これは、当該 原水に過酸化物等が存在し、そのことにより、
ORP が変動していると考えられ、従って、
本原水では Cu の硫化物処理における硫化物 制御は困難であると考えられた。
(3)反応 pH と処理水 Cu 濃度の関係
ガス発生量を 2mg/L・Hr になるように硫化剤の制御を行い、反応 pH を変化させて処理水の Cu 濃度を測定した。その結果をプロットすると図 3.2.7 のとおりである。
同図より通常 pH が上昇すると、金属の硫化物の溶解度は下がるが、Cu の硫化物の場合、pH が上昇すると、逆に処理水 Cu 濃度が上昇する傾向が見られた。
これは、当該原水だけでなく、当社で行 った Cu 標準液を使った実験でも同様の傾 向が見られており、CuS は反応時の pH が 高くなるとヒドロオキシ態ができてしまう と考えられた。
従って、Cu の処理を行う場合の最適 pH は 同図より pH=1.5 であると思われた。
図 3.2.6 処理水 Cu 濃度と ORP の関係
図 3.2.7 Cu 残留濃度と 反応 pHの関係
図ー6 反応pHとNiの除去率
y = 0.025e0.8467x R2 = 0.8745
0%
10%
20%
30%
40%
50%
1 1.5 2 2.5 3 3.5
反応pH
Ni除去率[%]
次に、Ni の除去率と反応 pH との関係を示すと、図 3.2.8 のとおりとなる。
通常 NiS の反応は pH5以上で行われるが、Cu が存在し、CuS の沈殿ができる場合、Ni も共沈 反応をおこす。
同図より反応 pH が上昇すると、Ni の除去率があがり、pH=3.0 では 30%前後除去されている。
したがって、生成した CuS の純度を考えると、pH=1.5 で反応させる方が望ましいと考えら れた。
(4)連続処理実験
反応 pH=1.5、H2S ガス発生量をガスモニターで 5.0mg/L・Hr で 7 時間連続処理を行い、原水 水質の変動がある場合、処理水 Cu 濃度がどう変化するかの実験を行った。
実験時における原水と処理水は以下の写真のとおりである。処理液では全く濁り、色はなく なっており、浮遊 SS も認めれなく、沈降性の良好な CuS であった。
原水と処理水の Cu 濃度の経時変化を図 3.2.9 に示す。
図 3.2.8 反応 pH と Ni の除去率
写真−1 原水のようす 写真−2 処理水のようす
図ー7連続試験による原水と処理水のCuの経時変化 0
100 200 300
9:30 10:00
10:30 11:00
11:30 12:00
13:00 13:30
14:00 14:30
15:00 15:30
16:00 16:30 時間
原水Cu濃度[mg/L]
0.00 0.05 0.10 0.15
処理水Cu濃度[mg/L]
原水 処理水
反応時間=40分 反応pH=1.5 制御H2S量=
同図より原水濃度は 68mg/L から 273mg/L で変動しているが、処理水 Cu 濃度は 0.05mg/L 以下 で推移していることがわかる。
このことより、原水が変動しても H2S ガス発生量もガスモニターで制御して、硫化剤の添加 制御を行う本処理プロセスで、Cu 濃度は一定濃度以下で安定して処理されることが明らかとな った。
(5)脱水処理及び脱水ケーキ成分
実験―1(H2S ガス発生量と処理 Cu の関係調査実験)において沈殿槽で分離されたスラリー を
下記の写真―3 のフィルタープレス型脱水機にて脱水処理実験を行い、写真―4 のような脱水ケ ーキが得られた。
図 3.2.9 連続試験による原水と処理水 Cu の経時変化
写真―3 フィルタープレス型脱水機 写真―4 脱水ケーキ(開板時)
開板状態での脱水ケーキのろ布の剥離性は良好であった。
この脱水ケーキの含水率並びに組成を調べると表 3.2.4 のとおりとなる。
表 3.2.4 脱水ケーキ成分含有量(乾物当たり) 1 月 30 日脱水テスト 金 属 比 率 (%)
含水率
(%) Mn Fe Ni Cu Zn Sn
55.78 0.00 2.14 0.39 96.87 0.09 0.51 100.0
同表より、脱水ケーキの含水率は 55.78%であり、水酸化物の脱水ケーキ(75%含水)より低 い含水率の脱水ケーキが得られていることがわかる。
また、脱水ケーキ中の金属成分を見てみると、Cu は 96.87%と高含有率であることがわかる。
その他の金属では Fe が 2%存在した。この他の金属の存在は含水中の金属イオンと考えられ、
水ケーキを水洗浄できるタイプの脱水機を用いればより純度の高い CuS が、得られると考えら れた。
3.2.4 まとめ
以上の実験結果から、以下のような結論が得られた。
・ 原水中の Cu 濃度の平均値は 253mg/L で 100‑500mg/L の間で変動した。
・ 原水中には Cu 以外に Fe、Ni、Mn、Zn、Snが含まれていた。
・ 原水中の Fe 濃度は Cu 濃度が低いときには 1000mg/L 以上となった。
・ NS プロセスで処理を行うと、処理水 Cu と H2S ガス発生量の間に明確な関係が見られ た。
・ ガス発生量を 4mg/L・Hr で制御すると、処理水 Cu 濃度は 1mg/L 以下にすることがで きた。
・ 過酸化物が含まれるような原水では ORP による制御は困難であった。
・ 最適反応 pH は 1.5 であった。
・ 連続処理で原水の Cu 濃度が変動しても処理水 Cu 濃度は安定して推移した。
・ 脱水ケーキは剥離性のよいケーキとなった。
・ 脱水ケーキの含水率は 55.78%で水酸化物に比べ低い含水率のケーキが得られた。
・ 脱水ケーキの Cu 含有率は 46.76%(乾物当たり)と高含有の CuS であった。