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厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)

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Academic year: 2022

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厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)

総合分担研究報告書

ニーマンピック病の臨床および病態に関する研究   

分担研究者:高橋  勉(秋田大学大学院医学系研究科医学専攻小児科学講座教授)

研究要旨 

ニーマンピック病は、ライソゾームにおける水解酵素ASM(A/B型)あるいは膜蛋白の

異常NPC1あるいはNPC2(C 型)でスフィンゴミエリンあるいはコレステロールがエン

ドゾームに蓄積し肝脾腫・肺機能異常・多彩な神経症状などを示す稀な遺伝性疾患である。

脂質の蓄積減少を起こす薬物療法の開発が期待されている。本研究では C 型細胞に対して 蓄積脂質減少をもたらす酢酸(butyrate)およびHistone Deacetylase (HDAC) Inhibitor の効果に関してスフィンゴミエリン分解酵素ASMの発現量の観点から分析し、C型細胞へ の蓄積脂質減少効果に二次的ASM欠損の改善が重要であることを示した。

A.研究目的 

ニーマンピック病 A/B型は、ライソゾーム酸 性 ス フ ィ ン ゴ ミ エ リ ナ ー ゼ ( Acid sphingomyelinase: ASM)異常によりライソゾ ームにスフィンゴミエリンが蓄積し、二次的に コレステロールが蓄積する。一方、ニーマンピ ック病C 型は細胞内コレステロール輸送に関与 するNPC1あるいはNPC2の異常によりライソ ゾームに遊離コレステロールが蓄積する。ニー マンピック病C型細胞では二次的にASM 活性 低下とスフィンゴミエリン蓄積が観察される。

ASM 酵 素 の 酵 素 活 性 刺 激 薬 と し て 酪 酸

(butyrate)が知られている。そこでまず、C 型細胞に酪酸を投与して本細胞に観察される二 次的ASM欠損に対する効果を詳細に分析した。

次に、C 型細胞に対して報告された Histone Deacetylase (HDAC) Inhibitorの蓄積脂質減少 効果に関して検討した。この効果に関しては変 異NPC1 蛋白の発現量を増加させる効果から生 じる可能性が示され、軽症C型細胞だけへの効 果である点が報告されている。しかし、我々が 見出した酪酸(butyrate)のC 型細胞に対する

蓄積脂質減少効果も酪酸がHDAC Inhibitorの1 つであることから減少効果にASM活性が関与し ている可能性を想定し検討した。

B.研究方法 

Ⅰ.酪酸(butyrate)とASM

正常培養リンパ芽球および C 型培養リンパ芽 球 に 対 し て 、ASM 活 性 上 昇 作 用 を 持 つ 酪 酸

(butyrate)を添加(10mM)し、各細胞の、1)

ASM 活性、2)ASM mRNA レベル、3)細胞 内コレステロール含量、を調べた。次に、4)C 型皮膚線維芽細胞および5)ASM 欠損皮膚線維 芽細胞に関して、酪酸(butyrate)添加の有無に より細胞内遊離コレステロールをフィリピン染 色で調べ検討した。

Ⅱ.HDAC inhibitorの効果とASM

6)正常皮膚線維芽細胞およびC型皮膚線維芽 細胞に対して、HDAC Inhibitorとしてvalpronic acid (2μM)、vorinostat (10μM), panobinostat (75μM) を 加 え コ レ ス テ ロ ー ル 蓄 積 の 程 度 を Filipin 染 色 お よ び Amplex Red cholesterol

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quantification (Fluoroscan Asent system)にて 評価した。7)ASMのコレステロール輸送への 関与を調べるために ASM  Inhibitor として desipramine (50μM)を追加で加えその蓄積 脂質に関して調べた。

C.研究結果 

研究結果は以下の通りであった。

Ⅰ.酪酸(butyrate)とASM

1)24 時間 10mM 酪酸添加後,正常および NPC1培養リンパ芽球のASM活性は,負荷前 と比較しそれぞれ3.3倍および4.6倍と有意に 増加した(p < 0.01)。

2)両細胞のASM mRNA発現レベルは,24 時間10mM酪酸添加後,著明に増加した(p <

0.01)。

3)NPC培養リンパ芽球における,酪酸添加 前および10mM酪酸添加後の細胞内遊離コレ ステロール量は酪酸添加により有意に低下し た(p < 0.05)。

4)NPC1 皮膚線維芽細胞におけるフィリピ ン染色では,24時間10mM酪酸添加後,細胞 内遊離コレステロール蓄積の劇的な減少が観 察された。

5)ASM欠損皮膚線維芽細胞では酪酸添加後 フィリピン染色で,細胞内遊離コレステロー ルの蓄積の減少を認めなかった。

Ⅱ.HDAC inhibitorの効果とASMの

6)C 型培養皮膚線維芽細胞に観察される遊 離コレステロール蓄積は valpronic acid、

yorinostat、panobinostat により減少した。

しかし、desipramine を加えることでコレス テロール蓄積が再び観察された。この結果は、

7)HDAC Inhibitorによる細胞内コレステロ ール輸送の改善には、ASM活性の存在が重要 であることを示していた。

D.考察 

ASM活性上昇作用を持つ酪酸(butyrate)は、

培養リンパ芽球に対して ASM mRNA を上昇さ せることでASM活性を上昇させた。そして、二 次的ASM活性低下がみられるC型細胞において は、ASM 活性を正常化することで細胞内蓄積遊 離コレステロールを減少させた。この酪酸の作用 はASM欠損コレステロール蓄積細胞では観察さ れなかった。

細胞内遊離コレステロール蓄積は C 型細胞の 基本病態であるが、二次的 ASM活性の低下を回 復させることで、蓄積コレステロールを減少させ たことは、今後の ASM酵素を調節する薬剤開発 の可能性を示すものである。

今回の対象としたC型細胞は、比較的軽症のタ イプであり、重症度の違う細胞に対する検討や新 たなASM活性のアクチベーターの検索など今後 の課題である。

C 型 細 胞 の 蓄 積 脂 質 に 対 す る HDAC  inhibitor の 減 少 作 用 は ASM 抑 制 剤 で あ る

desipramineにより軽減され、減少した脂質が再

び増加した。その結果は細胞内でコレステロール 輸送に関与する NPC1 および NPC2 の作用には ASMが大きく関与していることを示している。

E.結論 

細胞外由来のLDLコレステロールはLDL受容 体からライソゾームに至り酸性リパーゼにより 遊離コレステロールとなる。その後のライソゾー ㇺから細胞質への輸送に C 型ニーマンピック病 の原因である NPC1 およびNPC2 が関与する。

本研究によりこの輸送には A/B 型ニーマンピッ ク病の欠損酵素であるASMが関与している可能 性がある。従って、C型ニーマンピック病の細胞

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内脂質蓄積の改善には、二次的ASM欠損を改善 する必要がある。

ニーマンピック病C型の原因であるNPC1お よびNPC2 のコレステロール輸送にはASM が 関与している可能性がある

F.研究発表 

<論文> 

1) Takamura A, Sakai N, Shinpoo M, Noguchi A, Takahashi T, Matsuda S,  Yamamoto M, Narita A, Ohno K, Ohashi T, Ida H, Eto Y: The useful preliminary diagnosis of Niemann-Pick disease type C by filipin test in blood smear. Mol Genet Metab, 111:

401-404, 2013

2) Oyama C, Hirayama M, Noguchi A, Arai H, Takahashi T. : Butyrate reduces free cholesterol accumulation in Niemann-Pick disease type 1 cells (Nova Scotia form) through the induction of acid sphingomyelinase. Akita J. Med 38:

111-119, 2011.

<著書>

1) 高橋  勉:Niemann-Pick病、新領域別症候 群シリーズNo.23、血液症候群Ⅲ(第2版)

―その他の血液疾患を含めて―、日本臨床、日 本臨床社、491-75、2013.

2) 小山千嘉子、高橋  勉:ニーマンピック病A, B型、新領域別症候群シリーズNo.20、先天 代謝異常症候群(第2 版)下―病因・病態研 究、診断治療の進歩―、日本臨床、日本臨床 社、472-75、2012.

3) 野口篤子,高橋  勉:Niemann-Pick病C型,

先天代謝異常症Diagnosis at a Glance,診断

と治療社,東京,28-31、2011.

4) 高橋  勉:ニーマンピック病A、B型,ラ イソゾーム病−最新の病態、診断、治療の 進歩−(初版),診断と治療社,東京,154-158,

2011.

5) 高橋  勉:ライソゾームの生成と膜代謝,ライ ソゾーム病−最新の病態、診断、治療の進歩−

(初版),診断と治療社,東京,10-13、2011.

6) 高橋  勉:Niemann-Pick病.小児科臨床ピク シス23,中山書店,東京、235-237, 2010.

7) 高橋  勉:Niemann-Pick病,小児疾患診療の ための病態生理,小児内科 vol.41 増刊号,

pp.462-465、2009.

<学会発表>

1) Hirayama, M., Oyama, C., Noguchi, A., Takahashi, T. Histone deacetylase inhibitors need acid sphingomyelinase to reduce the abnormal storage of cholesterol in Niemann-Pick C1 cells. The 3rd Asian congress for inherited metabolic diseases, Chiba, Japan, Nov. 2013.

G.知的財産権の出願・登録状況  なし 

参照

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