[総 説]
(第58回大会特別講演)
日本食生活学会誌 第₃0巻 第 2 号 6₃︲69(2019)
1 .はじめに
日本人の食生活は,昭和20年に開始された国民栄養調 査によって把握されてきている。当初は,戦後各国から 食糧援助を受けるための基礎資料としてGHQ(連合軍 最高司令部)により実施されていたが,昭和2₇年からは 栄養改善法により,平成1₅年からは健康増進法により厚 生労働省が調査を実施している1 )。現在実施されている 国民健康・栄養調査の目的は,国民の身体の状況,栄養 摂取量および生活習慣の状況を明らかにし,国民の健康 の増進の総合的な推進を図るための基礎資料を得ること
である。調査の集計は健康増進法に基づき,国立健康・
栄養研究所が実施している。調査結果は国民の健康の目 安とされたり,一方でさまざまな健康施策の基礎資料と して用いられている。その健康増進施策の一つに,厚生 労働省が実施している健康日本21(第二次)2 )がある。
この中の基本的な方針の一つとして,栄養・食生活,身 体活動・運動,休養等に関する生活習慣の改善が掲げら れている。栄養・食生活に関する施策の基本となってい るのが「食生活指針」₃ ),「食事バランスガイド」₄ ),「日 本人の食事摂取基準」₅ )である。また,厚生労働省が策 定し,複数の学協会からなるコンソーシアムが認定して
日本人の食生活の現状と課題
―国民健康・栄養調査の結果から
石見佳子
(*東京農業大学総合研究所,元国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)
The current status and issues
of Japanese dietary habits: From the results of National Health and Nutrition Survey Japan
Yoshiko Ishimi
*Nodai Research Institute, Tokyo University of Agriculture, 1-1-1, Sakuragaoka, Setagaya-ku, Tokyo, 1₅6-₈₅02
*〒1₅6︲₈₅02 東京都世田谷区桜丘 1 ︲ 1 ︲ 1
The current status and issues of Japanese dietary habits from the results of the National Health and Nutrition Survey Japan would be discussed. Total energy intake and protein intake of Japanese in the past 45 years showed a decreasing trend. On the other hand, fat intake increased, but carbohydrate intake decreased. According to the physical condition survey of the 2017 National Health and Nutrition Survey, the proportion of obese individual (BMI≧25 kg/m2) was higher for men in their 20s to 60s compared with the goal for Healthy Japan 21 (secondary), and the proportion for thinness (BMI<18.5 kg/m2) was higher for women in their 20s. In older people, physical working hours, protein intake and oral function were associated with trend in malnutrition. Salt intake has been decreasing during a decade, however further improvement should be needed. At present, prevention of lifestyle-related diseases in men in their 20s to 60s, prevention of young women’s thinness and elderly people’s frailty might be issues. In order to resolve these issues, utilization of a Japanese Food Guide, Smart-meal system and nutrient labeling on foods, maintenance of appropriate body weight, Shokuiku throughout individual’s life, utilization of Exercise and Active Guides, maintenance for oral health, etc. might be effective. These strategies might lead to the extension of the healthy life expectancy.
6₄(₄)
いる「健康な食事・食環境」認証制度(スマートミール)6 ) も今後の発展が期待されている。本稿では,これらの国 の健康栄養施策の基本となる国民健康・栄養調査の結果 について,平成29年の報告を中心に解説し,さらにここ から見えてくる日本人の食生活の課題について考察した い。
2 .平成29年国民健康・栄養調査結果の概要
( 1 )調査の対象および調査項目
平成29年の国民健康・栄養調査では,平成29年国民生 活基礎調査において設定された単位区から層化無作為抽 出した₃00単位区内のすべての世帯および世帯員で,平 成29年11月 1 日現在で 1 歳以上の者を対象としている
(₃,0₇6世帯実施)。平成29年の調査では,第一部として 高齢者の健康・生活習慣の状況について調査している。
60歳以上の高齢者専用項目として,多周波生体インピー ダンス法による四肢の筋肉量の測定を実施している。ま た,生活習慣調査として世帯における同居者の有無,同 居者がいる場合,60歳未満の同居者の有無,週 1 回以上 の外出の有無などについても調査している₇ )。
( 2 )栄養素摂取状況
日本人の栄養素摂取量は,調査初期の19₄₇年から19₇₅ 年頃までは,たんぱく質および脂質の摂取量は急激に増 加し,その後199₅年頃までは緩やかに増加している(図 1 )。一方,炭水化物の摂取量は,19₅₅年から近年まで 継続して低下している。199₅年以後はどの主要栄養素も 低下傾向を示している。エネルギー摂取量は,19₄₇年か ら19₇0年までは増加しているが,その後低下している。
斉藤らの報告によると,最近10年間の栄養素等摂取量に ついては,総数ではエネルギーとたんぱく質摂取量には
変化はないが,脂質の総摂取量および動物性脂質の摂取 量は増加,炭水化物の摂取量は低下している₈ )。エネル ギー摂取量が低下している理由として,高齢者の割合が 増加していること,日本人の身体活動量が低下している こと,栄養調査が過小評価されている可能性などが挙げ られる。
平成29年の国民健康・栄養調査における20歳以上,性 年齢別の栄養素等摂取量の状況では,エネルギーとたん ぱく質の摂取量については60歳代が一番高かった。一方,
脂質の摂取量は,男女とも,20歳代で最も高く,炭水化 物の摂取量は男性では60歳代,女性では₇0歳代が最も高 かった。なお,平成29年度の調査では,たんぱく質,脂 質,炭水化物のエネルギー産生栄養素バランスは,各性・
年齢階級において適正であった。
( 3 )身体状況
厚生労働省が実施している健康日本21(第二次)では,
20~60歳代の男性の肥満者の割合いを₃1.2%から2₈%以 下に,₄0歳以上の女性の肥満者の割合を22.2%から19%
以下にすることを目標としている(表 1 )。平成29年の 調査における肥満者の割合は,男性では20~69歳代で
₃0%,女性では₄0~60歳代で20%を超えていることから,
中高年男女を中心としたさらなる肥満対策が必要である ことがわかる。
一方,やせ(BMI 1₈.₅ kg/m2未満)については,健 康日本21(第二次)では20歳代女性のやせの割合を20%
(令和 ₄ 年)にすることを目標としている。19₈1年から 2016年におけるやせの者の割合の経時変化では,20歳代 ばかりでなく,₃0~₅0歳代の女性においても増加してい ることから,女性のやせについては,広い年代幅で注視 していく必要があろう(図 2 )。
図 1 日本人のエネルギーおよび栄養素等の一日摂取量の推移
(厚生労働省「国民栄養の現状」)
0 160 140 120 100 80 60 40 20
0
(g) (g)600
500 400
300 200
100
2010(年) 2005 2000 1995 1990 1985 1980 1975 1970 1965 1960 1955 1950 1947
↓エネルギー産生栄養素バランスがよい期間
21%
62%
12%
動物性たんぱく たんぱく質
炭水化物 摂取カロリー(kcal)
2,000 2,098 2,104 2,096 2,184 2,287 2,188
2,084 2,088 2,026
2,0421,948 1,904 1,849
脂質 乳製品
炭水化物
動物性たんぱく質脂質乳製品たんぱく質
表 1 健康日本21(第二次)における身体状況の目標
項 目 現 状 目 標
適正体重を維持して者の増加(肥 満(BMI 2₅以上),やせ(BMI 1₈.₅ 未満)の減少)
20~60歳代男性の肥満者の割合
₃1.2%
₄0~60歳代女性の肥満者の割合 22.2%
20歳代女性やせの者の割合 29.0%
(平成22年)
20~60歳代男性の肥満者の割合 2₈%
₄0~60歳代女性の肥満者の割合 19%
20歳代女性やせの者の割合 20%
(令和 ₄ 年)
低栄養傾向(BMI 20以下)の高 齢者の増加の抑制
1₇.₄%
(平成22年)
22%
(令和 ₄ 年)
肥満傾向にある子供の割合の減少 小学 ₅ 年生の中等度・高度 肥満傾向児の割合
男子₄.60%
女子₃.₃9%
(平成2₃年)
減少傾向へ
(平成26年)
※移動平均*により平滑化した結果から作成。
* 「移動平均」とは,各年の結果のばらつきを少なくするため,各年次結果と前後の年次結果を足し合わせ,計 ₃ 年分を平均化した もの。ただし,平成29年については単年の結果である。
図 2 やせの者(BMI <18.5 kg/m2)の割合の年次推移(20~59歳,女性)
0 10 20 30
(2016)28年
(2011)23年
(2006)18年
(2001)13年
(1996)8年
(1991)平成3年
(1986)59年 昭和56年
(1981)
目標20%
7.7
13.4 13.4
10.610.1 6.3
4.0
(平成29年)21.7
20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳
(%)
図 3 やせの者(BMI <18.5 kg/m2)および低栄養傾向の者の(BMI
≦20 kg/m2)の割合の年次推移(20歳以上) (平成17~29年)
(平成29年国民健康・栄養調査)
(%)
0 10 20 30 40 50
29年 27年 26年 25年 24年 23年 22年 21年 20年 19年 18年 17年 平成
4.3 16.2
9.9
4.7 4.2 4.3 4.4 4.6 4.6 4.2 4.7 5.0 4.2 4.0
9.1 10.7 10.8 11.0 11.0 10.4 11.4 12.3
10.4 11.1 10.3 21.9 23.1 23.1 23.3 24.6 24.4 24.2 22.5 20.2 20.4 22.3 21.7
15.4 16.0 16.5 17.1 17.4 18.2 16.5
16.8 17.8 16.7 16.4
65歳以上の低栄養傾向の高齢者の割合
男性 女性
20歳代の女性のやせの者の割合
66(6)
高齢者では,低栄養によるフレイルが懸念される。平 成29年の調査では,女性では6₅歳以上で低栄養傾向の者
(BMI 20 kg/m2未満)の割合が19.6 %,₈₅歳以上では
₃₄.₃%であった。健康日本21(第二次)では,低栄養傾 向の高齢者の割合を,開始前平成22年の1₇.2%を,令和
₄ 年には22%に抑えることを目標としている。
平成1₇年から10年間のやせの者の割合の年次推移をみ ると,若年女性のやせの割合が,6₅歳以上の低栄養傾向 にある高齢者の割合より高いことは特筆すべきであろう
(図 ₃ )。このように,日本人のBMI分布の特徴として,
中年男性の肥満と若年女性のやせが挙げられる。
( 4 )栄養・食生活に関する状況
健康日本21(第二次)では,健康寿命の延伸,生活習 慣病予防と重症化予防,社会生活を営むための機能の維 持・向上,社会環境の整備および栄養・食生活と身体活 動の改善を目標としているが,中でも栄養・食生活の改 善は健康の保持・増進において重要な因子である。その 中で,「適切な量と質の食事をとる者の増加」(成人)を 目標として,主食・主菜・副菜を組み合わせた食事が 1 日 2 回以上の日がほぼ毎日の者の割合,食塩摂取量の減 少,野菜と果物の摂取量の増加の ₃ 項目を設定している。
1 )主食,主菜,副菜を組み合わせた食事が 1 日 2 回 以上の日がほぼ毎日の者の割合
平成2₃年の時点では,上記割合は61.₈%であったが,
令和 ₄ 年までに₈0%まで増加させることを目標としてい る。平成2₈年に実施された中間評価では,₅9.₇%に低下 していた9 )。
2 )食塩摂取量の状況
平成19年から29年までの10年間の日本人の一日当たり の食塩摂取量の年次推移は,平成19年では平均11.1 g/
日であったが,平成29年には9.₈ g/日まで減少してい る(図 ₄ )。日本人の食事摂取規準(2020年版(案))に
おける食塩の目標量は一日当たり男性₇.₅ g未満,女性 6.₅ g未満に設定されており,これに近づきつつあるが,
しかし,WHOガイドラインが推奨する ₅ g/日の実現 には至らない。今後は,栄養成分表示の完全義務化,事 業者の減塩商品の販売促進や食育等,社会環境の整備等 によりさらなる減塩対策が必要である。
3 )野菜摂取量の状況
健康日本21(第二次)における野菜と果物の摂取量に ついては,一日当たりの野菜摂取量の平均値を2₈2 g(平 成22年)から₃₅0 g(令和 ₄ 年度)に,果物摂取量100 g 未満の者の割合を61.₄%(平成22年)から₃0%(令和 ₄ 年度)に減らすことを目標としている。日本人の一日当 たりの野菜の摂取量は,男女ともに高齢になるにした がって増加しており,平成29年の調査では,男性で 29₅.₄ g,女性で2₈1.9 gである。また,平成19年からの 年次推移では,29₇.₈ gから29₅.₄ gまで大きな変化は ないことから,令和 ₄ 年までに野菜の摂取量を₃₅0 gま で増加させることは,都道府県や学校レベルでのさらな る努力が求められるとともに,我々個々人の努力が必要 であろう。日本人の食事摂取基準(2020年版(案))では,
食物繊維の一日当たりの目標量を男性成人で21 g以上,
成人女性で1₈ g以上に設定している。食物繊維の摂取 量と肥満との関連を示した疫学研究があることから,野 菜の摂取は生活習慣病の予防にも有用である。一方,野 菜の摂取量と食塩の摂取量は高齢者ほど多く,興味深い ことに,両者は正の相関を示している。これは漬物や野 菜と一緒にドレッシング等の調味料を使用するためでは ないかと考えられる。野菜を摂取する際には同時に食塩 の摂取量についても考慮する必要があろう。果物の摂取 量が 1 日に100 g未満の者の割合については,₃0%に減 少させることを目標としているが,平成2₈年に実施され た中間評価では60.₅%であった9 )。果物の摂取について もさらなる摂取量の増加が望まれる。
食塩摂取量は,この10年間でみると,いずれも有意に減少している。
図 4 最近10年間の食塩摂取量の推移
(平成29年国民健康・栄養調査)
食塩摂取量の平均値の年次推移
(20歳以上)(平成19~29年) 年齢調整した、食塩摂取量の平均値の年次推移
(20歳以上)(平成19~29年)
19年
平成 20年 21年 22年 23年 24年 25年 26年 27年 28年 29年 19年
平成 20年 21年 22年 23年 24年 25年 26年 27年 28年 29年
4 )朝食欠食に関する状況
朝食の欠食率は男女とも20~29歳で最も高く,それぞ れ₃0.6%,2₃.6%であった。この傾向は,平成19年から 変化がない。朝食欠食の理由の一つとして,食べる習慣 がないことも挙げられていることから,子どもの頃から 適切な食習慣を身につけることが重要であろう。
( 5 )高齢者の健康・生活習慣の状況 1 )体格の状況
表 2 に平成29年調査における6₅歳以上の高齢者を対象 とした専用調査項目を示す。6₅歳以上の男女において,
BMI20 kg/m2以下の低栄養の傾向の者の割合は,男性
12.₅%,女性19.6%であり,最近10年間の推移では大き な変化はみられなかった。日本人の食事摂取規準(201₅ 年版)で示されている目標となるBMIの範囲内にある 高齢者の割合は,6₅歳以上の男性では₅0%を超えている が,₇0歳以上の女性では₄0%を下回っている。
2 )四肢の筋肉量の状況
四肢の筋肉量の状況では,60歳以上の骨格筋指数(四 肢の除脂肪量を体重の二乗で除して算出)の平均値は,
年齢が高いほど低かった。一方,骨格筋指数は,たんぱ く質の摂取量が多いほど高いこと, 1 時間以上の肉体労 働をしているほど高いことが男女で示された(図 ₅ )。
3 )生活の様子
生活の様子では,男性では「椅子に座った状態から何 もつかまらずに立ち上っている」「日用品の買い物をし ている」者の割合が,6₅~₇₄歳に比べて₇₅歳以上で有意 に低下していた。女性では全体の調査項目で₇₅歳以上で 低下が認められた。同居者の有無による生活の様子では,
女性では有意な差は認められなかったが,男性では同居 者の有無により,「日用品の買い物をしている」,「食事 の準備」に有意な差が認めれらた。さらに,6₅歳以上の 男性では,週 1 回以上の外出の有無が,低栄養傾向の割 合に影響することが示された(図 6 )。これらのことから,
高齢者においては,特に男性では料理や外出の機会を増 やし,可能であれば肉体労働を 1 時間以上実施すること が望ましいといえる。
4 )歯・口腔の健康に関する状況
「何でもかんで食べることができる」者と歯の保存状 況の関連では,口腔機能が低下すると男女ともに低栄養 表 2 平成29年国民健康・栄養調査における高齢者(65歳以上)専
用調査項目
・身体状況調査
―多周波生体インピーダンス法による筋肉量測定(60歳以上)
・生活習慣調査
―世帯における同居者の有無
―同居者がいる場合,60歳未満の同居者の有無 ―生活の様子
・週 1 回以上外出の有無
・椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がれるか ・日用品の買い物の有無
・食事の準備の有無 ・お茶や汁ものでむせるか
図 5 たんぱく質摂取量及び肉体労働時間をしている時間別,骨格筋指数の平均値
(平成29年国民健康・栄養調査)
下位群 中位群
上位群 0
2 4 6 8 10
労働していない 1時間未満 1時間以上 労働していない 1時間未満 1時間以上
男性 女性
下位群 中位群 上位群
7.8 7.3
7.97.9 7.4
8.1 8.1 7.6
6.5 6.7
7.7 6.6
6.4 6.5 6.6 6.3 6.4 6.5
中位群:男性67.7~87.3g 女性59.9~76.2g
骨格筋指数
(g/㎡)
たんぱく質摂取量
(g/day)
6₈(₈)
傾向の者の割合が増加し,この傾向は男性で顕著であっ た。口腔機能は,20本以上歯を有する者の割合と相関し た。
( 6 )運動習慣者の状況
健康日本21(第二次)では,一日当たりの歩数を男性
(20~6₄歳)では,₇,₈₄1歩から9,000歩,女性(20~6₄歳)
6,₈₈₃歩から₈,₅00歩,6₅歳以上では,男性₅,62₈歩から
₇,000歩,女性₄,₅₈₄歩から6,000歩へ増加させることが 目標とされている。平成29年の調査では,20~6₄歳の男 性₇,6₃6歩/日,女性6,6₅₇歩/日であり,いずれの性・
年齢階級においても10%以上の増加が必要である。運動 習慣のある者の割合は,男性高齢者では₄2%,女性高齢 者では₃9%である一方,₃0歳代の男性では1₄.₇%,20歳 代の女性では11.6%と低い割合であった(図 ₇ )。運動
習慣のある者の割合は,ここ10年間の総数で男性29.1%
から₃₅.9%に,女性2₅.6%から2₈.6%に増加しているが,
さらなる普及・啓発が必要である。
4 .課題と対策
これまでに挙げた課題に対し,その対応策に関する項 目を図 ₈ に示す。「適正な栄養素の摂取」については,
生涯を通した食育の推進が重要であり,そのためには食 生活指針,食事バランスガイド,スマートミール,食品 の栄養表示の活用が望まれる。特に,食事バランスガイ ドの活用は,黒谷らの研究により,遵守率が高い者で総 死亡,がん,循環器疾患,心疾患,脳血管疾患の罹患率 が低いことが明らかになっている10)。また,加工食品の 栄養成分表示11)は2020年 ₃ 月₃1日をもって完全義務化さ れることから,今後益々の普及と活用が望まれる。さら
※ 「外出あり」は,「週に 1 回以上は外出していますか」に「はい」と回答した者,「外出なし」は,同問に「いいえ」と回答 した者。
高齢男性では,年齢階級に関係なく,外出なしの者で低栄養傾向の者の割合が高い。
女性では同様の傾向はみられない。
図 6 週に 1 回以上の外出の有無別,低栄養傾向の者(BMI ≦20 kg/m2)の割合 (65歳以上,性・年齢階級別)
(平成29年国民健康・栄養調査)
0 10 20 30 40 50
(916) (49) (516) (26) (400) (23)
11.5 28.6
10.3 30.8
13.0 26.1
総数 65-74歳 75歳以上
(1,100) (70) (629) (19) (471) (51)
19.5 18.6 19.6
15.8 19.5 19.6
総数 65-74歳 75歳以上
(%)
生活の様子
男性 女性
外出なし 外出あり
図 7 運動習慣のある者の割合 (20歳以上,性・年齢階級別)
(平成29年国民健康・栄養調査)
0 10 20 30 40 50
(1,489)総数 20-29歳
(92)30-39歳
(136)40-49歳
(193)50-59歳
(199)60-69歳
(354)70歳以上
(515)(再掲)
20-64歳
(768)
(再掲)65歳以上
(721)
(1,975)総数 20-29歳
(86) 30-39歳
(189)40-49歳
(310)50-59歳
(305)60-69歳
(426)70歳以上
(659)(再掲)
20-64歳
(1,083)
(再掲)65歳以上
(892)
35.9 28.3
14.7
24.4 27.1
42.9 45.8
26.3 46.2
28.6
11.6 14.3 16.1 23.9
29.6 42.3
20.0 39.0
(%)
36 33
目標58%
目標48%
男性 女性
に,高齢者においては,えん下機能に考慮したえん下困 難者用食品やとろみ調整用食品などを含む特別用途食 品12)の活用も有用であろう。
適正な身体活動については,健康づくりのための身体 活動基準,アクティブガイド1₃)を活用して一日10分の身 体活動の増加,一日1,000歩の歩数の増加が効果的であ ろう。高齢者のフレイル予防では,十分なたんぱく質の 摂取と一日 1 時間以上の肉体労働を心掛けることが有用 であることが明らかにされた。さらに,高齢者の低栄養 の予防には,口腔機能の維持,特に歯の健康への配慮が 必要である。
これらの方策により,中高年男性の生活習慣病の予防,
若年女性のやせと高齢者のフレイルの予防が期待できる とともに,さらには健康寿命の延伸につながると考える。
文 献 (URL は2019年 6 月16日現在)
1 ) 厚生労働省:国民健康・栄養調査,https://www.mhlw.
go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html
2 ) 厚生労働省:健康日本21(第二次),https://www.mhlw.
go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/
kenkounippon21.html
₃ ) 厚生労働省,農林水産省:食生活指針,https://www.
mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000012₈₅0₃.html
₄ ) 農 林 水 産 省: 食 事 バ ラ ン ス ガ イ ド,http://www.maff.
go.jp/j/balance_guide/
₅ ) 厚生労働省:日本人の食事摂取規準,https://www.mhlw.
go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/
eiyou/syokuji_kijyun.html
6 ) 「健康な食事・食環境」コンソーシアム:「健康な食事・
食環境」認証制度,http://smartmeal.jp/
₇ ) 厚生労働省:平成29年国民健康・栄養調査の概要,https://
www.mhlw.go.jp/stf/houdou/00001₇₇1₈9_00001.html
₈ ) Saito A, Imai S, Htun NC, Okada E, Yoshita K, Yoshiike N, Takimoto H: The trends in total energy, macronutrients and sodium intake among Japanese: findings from the 199₅-2016 National Health and Nutrition Survey. Br J Nutr, 120, ₄2₄-₄₃₄
(201₈)
9 ) 国立健康・栄養研究所:健康日本21(第二次)分析評価事業,
http://www.nibiohn.go.jp/eiken/kenkounippon21/
kenkounippon21/
10) Kurotani K, Akter S, Kashino I, Goto A, Mizoue T, Noda M, Sasazuki S, Sawada N, Tsugane S; Japan Public Health Center based Prospective Study Group. Quality of diet and mortality among Japanese men and women: Japan Public Health Center based prospective study. BMJ, ₃₅2, i1209 (2016)
11) 消費者庁:栄養成分表示,https://www.caa.go.jp/policies/
policy/food_labeling/health_promotion/#m0₅
12) 消費者庁:特別用途食品,https://www.caa.go.jp/policies/
policy/food_labeling/health_promotion/#m0₃
1₃) 厚生労働省:健康づくりのための身体活動基準,身体活動 指針,https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9₈₅2000002xple.
html 図 8 日本人の食生活の課題と対策
中高年男性の生活習慣病の予防,若年女性 のやせ,高齢者のフレイルの予防
適正な栄養素の摂取(食塩摂取量含む):生涯を通した食育の推進
・食事バランスガイドの活用
・スマートミールの活用
・栄養成分表示の活用、特別用途 食品や保健機能食品の活用 適正な身体組成の維持:適正体重の維持
朝食の欠食:生涯を通した食育の推進(特に若年男女)
適正な身体活動など:アクティブガイドの活用: 1 日10分運動を増やす 1 日1,000歩増やす(特に若年男女)
高齢者のフレイル予防:たんぱく質の摂取、肉体労働を増やす 外出の機会を増やす(特に男性)
適正な口腔機能の維持、歯の健康への配慮
健康寿命の延伸
本稿は,第₅₈回大会における特別講演をまとめたものである。