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厚生労働科学研究費補助金(がん対策推進総合研究事業)
小児がん拠点病院を軸とした小児がん医療提供体制のあり方に関する研究 分担研究報告書
分担課題名 「小児がん拠点病院による小児がん医療提供体制の検討:
(小児がん患者の動態調査)」
研究分担者 小川 千登世 国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科長
研究要旨
本研究では小児がん拠点病院及び小児がん診療病院における診療連携方法の確立 を研究し、真に機能する連携のあり方を検討している。診療連携の在り方の検討資料 として、本分担研究においては、国立がん研究センター中央病院小児腫瘍科での患者 動態調査を行ってきた。昨年度より、集約化の進んでいる網膜芽細胞腫において当院 を初診した網膜芽細胞腫の患者の受診状況調査を行ってきた。その居住地域は北海道 から沖縄まで広く全国に分布し、関東甲信越以外からの受診が 50%以上を占め、診 断および治療方針の確認、また、治療目的の受診であった。化学療法及び局所治療を 目的とした受診の入院回数の中央値は 6 (0‑18)回、32%が 10 回以上の入院を必要と しており、遠方より外来受診や入院加療のための来院を必要とする患者の時間的、経 済的負担が大きいことがうかがわれた。また、通院等にかかわる費用のサポートにつ いてはごく一部の自治体や患者支援団体による補助が行われているものの、すべて自 己負担である患者が大半を占め、眼球温存を目的とした局所治療等、特定の施設でし か実施できない医療を希望する小児がん患者に対する経済的支援の必要性が示唆さ れた。また、年間平均 5 例を超える網膜芽細胞腫患者の診療を行っている拠点病院は 4 施設であり、拠点病院以外の病院で診療されている患者が多いことから、他の小児 がんとは異なる体制整備の必要性も示唆された。
A.研究目的
平成24年2月に小児がん拠点病院(以下
「拠点病院」とする)が全国に15施設指定さ れたが、小児がん医療の実態と理想の間に は、依然として乖離がある。今回、拠点病院 が指定されたことは、理想実現の第一歩で あり、今後は拠点病院の医療の質を向上さ せることで、より理想的な小児がん診療を 行うことの出来る体制を構築する必要があ る。
標準リスクの白血病診療では、日本国内 での均てん化は比較的達成されていると考 えられるが、再発、難治白血病診療について は、それぞれの施設間での格差がある。また、
固形腫瘍、特に脳腫瘍、網膜芽細胞腫などあ る程度の患者数があるにも関わらず、診療 を行っている医療機関が比較的少ない疾患 に関しては、集約化はある程度進んでいる ものの、固形腫瘍、脳腫瘍等の診療を専門と する小児科医の不足、小児を専門とする脳 神経外科医、眼科医等の絶対的な不足によ り、拠点病院間のみの連携では、十分な連携 とは言えないことが問題点の一つである。
本研究全体では、拠点病院及び小児が ん診療病院における診療連携方法の確立を 研究し、チーム医療を推進することで、真に 機能する連携のあり方を検討することとし ている。
- 94 - 本分担研究においては、診療連携の在り 方の検討を目的として、初年度の 26 年度に 小児外科以外の外科系診療科との連携を必 要とする小児がん患者、特に網膜芽細胞腫 と骨軟部腫瘍患者の動態を調査し、実態を 明らかにした。この結果、造血器腫瘍の患者 はほとんどが関東圏内の居住者であった。
代表的な小児がんの神経芽腫、肝芽腫、横紋 筋肉腫においてはそのほとんどが関東圏か らの患者であり、骨肉腫、ユーイング肉腫で も、実数は小児がん拠点病院での診療数よ りも多いものの、居住地域分布はほとんど が関東圏であった。一方で、神経芽腫、肝芽 腫、腎芽腫以外の稀な胎児性腫瘍、滑膜肉 腫、悪性ラブドイド腫瘍、線維形成小円形細 胞腫瘍などの極めて稀な肉腫やその他の腫 瘍は、東北、中四国、本州外など広く日本中 からの症例が集積する傾向にあった。また、
網膜芽細胞腫においては人口分布に応じ たほぼ全国からの患者集積があり、集約化 が進んでいることがうかがわれた。
27年度は、集約が進み当院への受診率が 高いと考えられる網膜芽細胞腫につき、受 診実態につき調査した。この結果、局所療法 を目的とした全国各地からの国立がん研 究センター中央病院への複数回の受診、入 院加療が行われている実態が明らかとな った。
28年度は網膜芽細胞腫での拠点病院と 小児がん診療病院の患者分布や診療内容 を踏まえた連携方法を検討する。
B.研究方法
網膜芽細胞腫について、がん情報サービ スへの提供情報に基づき、拠点病院で提供 可能な診療につき調査した。また、当院への 実際の診療連携の状況についても引き続き
検討する。
C.研究結果
The 1st International Symposium on Recent Global Advances in Cancer Research ( February 12,13, 2015. in National Cancer Center Hospital, Tokyo, Japan)において報告された眼腫瘍登録にお ける網膜芽細胞腫登録数からのデータでは、
平均して年間5例以上の診療実態のある施 設は4施設に留まっており、このうち拠点 病院は2施設であった。拠点病院15施設全 体 に お け る 網 膜 芽 細 胞 腫 の 補 足 割 合 も 20%前後であった。また、拠点病院におけ る網膜芽細胞腫の各治療への対応は、手術 は14施設、化学療法13施設、冷凍凝固術 10 施設、光凝固術 11施設、選択的眼動脈 内注入(眼動注)3施設、また、放射線療法 では体外照射は11施設、IMRTは5施設、
小線源治療は6施設で可能と小児がん情報 サービス上に情報提供している。
一方で、当院での他院との診療連携の実 態からは、網膜芽細胞腫に対する全身化学 療法は全国各施設においても実施されてい るものの、ルテニウム小線源治療、および、
メルファラン等の動注は国立がん研究セン ター中央病院以外に国内で実施している施 設はほとんどなく、これを目的とした当院 への転院、入院加療が行われていることが 明らかとなった。
D.考察
網膜芽細胞腫は化学療法に対する感受性 が良好であり、全身化学療法により腫瘍縮 小が期待できるものの、進行期例では化学 療法のみでの病変制御は困難であり、眼球 温存のためにはルテニウム小線源治療をは じめとしたなんらかの局所療法が必要とな
- 95 - る。また、保険適応外診療ではあるものの主 にメルファランなどでの動脈内化学療法も 行われる。国内年間発症症例数が全体でも 80 例前後である網膜芽細胞腫は眼科医に よる局所治療等特殊治療を必要とする疾患 であり、他の小児がんとは異なる体制整備 が必要な可能性がある。全身化学療法以外 の治療は現状でも集約化がなされているも のの、遠方の患者での時間的、経済的負担は 大きいことから、医療費そのもののみなら ず、入院や外来受診を含めた通院等にかか わる費用軽減を図る必要があると考えられ る。
E.結論
網膜芽細胞腫においては拠点病院での患 者捕捉割合は約20%であり、全身化学療法 以外の治療法提供は少ない。特殊な疾患に おいては他の小児がんとは異なる体制整備 の必要性も示唆された。
F.健康危険情報 なし
G.研究発表 1.論文発表
(雑誌論文)
関連するものなし
2.学会発表
(1) 小川千登世:小児固形腫瘍における分 子標的薬の治療開発.第 58 回日本小児血 液・がん学会学術集会.シンポジウム 1(厚 生労働省特別セッション) 小児固形がんに 対する分子標的治療開発.開催日:2016 年 12 月 15 日.開催場所:品川プリンスホテ ル、東京
(2) 小川千登世:小児がんにおける治療開
発.第 54 回日本癌治療学会学術集会.シン ポジウム 11 希少がん治療における EBM と は何か?.開催日:2016 年 10 月 20 日(木). 開催場所:パシフィコ横浜、神奈川
H.知的財産権の出願・登録状況
1.特許取得 なし
2.実用新案登録 なし
3.その他 なし