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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2022

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

心理学から見た「決断科学」 : 意思決定研究をいか に現場の社会的問題解決へと繋げるか?

縄田, 健悟

九州大学持続可能な社会のための決断科学センター人間モジュール : 講師

https://doi.org/10.15017/1563557

出版情報:決断科学. 1, pp.35-41, 2016-01-27. Institute of Decision Science for a Sustainable Society, Kyushu University

バージョン:

権利関係:

(2)

心 理 学 か ら 見 た ﹁ 決 断 科 学

意 思 決 定 研 究 を い か に 現 場 の 社 会 的 問 題 解 決 へ と 繋 げ る か

﹁決 断科 学﹂ とは 何な のか

︒私 が﹁ 持続 可能 な社 会の ため の決 断科 学セ ンタ ー﹂ の教 員と して 着任 して

︑お よ

そ1

年半 が経 つ︒ 私は 心理 学︑ 特に 集団 の社 会心 理学 を 専門 とし てい るが

︑﹁ 決断 科学

﹂と いう 言葉 を聞 いて 私 が最 初に 抱い た素 朴な 疑問 は︑

﹁決 断科 学﹂ とは 意思 決

定官官

E O

ロ自

ωE HM mU

の研 究と どう 逮う のか とい うも の であ った

︒未 だと れが 決断 科学 だと 明言 でき るよ うな 答 えは 出て いな いが

︑本 稿で は悩 みな がら 考え てき た私 な りの

﹁決 断科 学﹂ の理 解と

﹁決 断科 学﹂ への 心理 学か ら

縄 田

躍 悟

のア プロ ーチ に関 して 議論 して いき たい

︒ 意思 決定 研究 には

︑規 範的 アプ ロー チ︑ 記述 的ア プロ ー チ︑ 処方 的ア プロ ーチ とい

う3

つの アプ ロー チが ある と

される︵印南−−出田吋ま一広田・増田・坂上・NED

由 き ︶ ︒ 規範 的ア プロ ーチ とは

︑ど のよ うに 意思 決定 を行 うと 客 観的 に合 理的 で最 適な のか を理 解し よう とす る研 究領 域

嫌︒印商一路︷語却すぐれた意思理軍l

E

1

(3)

である︒数理的な最適解を探ろうとする傾向が強 く︑ 経務 学や オペ レー ショ ンズ

・リ サー チで 主に 研 究さ れて いる

︒記 述的 アプ ロー チと は︑ 現実 の人 聞 が実 際に どの よう に意 思決 定を 行っ てい るの かを 研 究す る領 域で ある

︒焼 範的 アプ ロー チと は逆 に︑ 人 聞の 判断 の歪 ロ理 性か ら人 聞の 意思 決定 の特 徴を 記 述し よう とす る傾 向が 強く

︑心 理学 や認 知科 学で 主 に研 究さ れて いる

3

つ自 の処 方的 アプ ロー チと は︑ 規範 的ア プロ ーチ と記 述的 アプ ロー チを 踏ま えた 上 で︑ 現実 の人 聞が より 的確 な意 思決 定を 行う ため の

﹁処 方舞

﹄を 提示 しよ うと する アプ ロー チで ある

決断科学プログラムにおける﹁決断﹂とは﹁現

実の 社会 的問 題解 決に 向け た意 思決 定﹂ だと 私は 理 解し てい る︒ した がっ て︑

﹁決 断科 学﹂

3は

つ自 の 処方 的ア プロ ーチ が近 いも のだ ろう

︒そ のた め︑ 現 場体 験・ 現場 実践 を非 常に 霊視 した 教意 ノロ グラ ム が構 成さ れて いる

︒そ れに 対し て︑ 上で 述べ たと お り私 の専 円で ある 心理 学は

2

つ自 の記 述的 アプ

(4)

ロl

チで ある

︒心 理学 では

︑人 関デ ータ を収 集す るこ と で︑ 意思 決定 に関 する 基礎 的な 心理

・社 会的 メカ ニズ ム の解 明に

ζ

まで 取り 組ん でき た︒ した がっ て︑ 現実 の 人間 の意 思決 定現 象の 記述 を行 って きた 心理 学の 記述 的 アプ ロー チか ら︑ 現場 の社 会的 問題 解決 に役 立つ 処方 婆 の提 示を 目指 す﹁ 決断 科学

﹂を 構築 する には

︑そ の溝 を 超え るた めの リン ク付 けと 飛躍 が必 要と なる とい える

ζ

で︑ まず 記述 的ア プロ ーチ にお ける 心理 学を 中心 と する 記述 的な 意思 決︐ 短研 究の 特徴 を理 解し た上 で︑ 次に 心理 学の 意思 決定 研究 を踏 まえ た﹁ 決断 科学

﹂の 構築 の 方向 性を 議論 した い︒ 記述 的研 究と して の心 理学 にお ける 意思 決定 研究

決断科学が目指す社会的問題解決に向けた処方議を

提示 する ため には

︑ま ず現 実の 人閣 の意 思決 定の 特徴 を 理解 する 必要 があ るだ ろう

︒心 理学 の視 点か らは

︑意 思 決定 過程 には

︑大 まか に

2つ

のプ ロセ スが ある と考 えら

れる

︒個 人の 意思 決定 と対 人・ 集団 の意 思決 定で ある

︒ 個人 の意 思決 定

人間には意思決定を行う際には︑人間が共通して持

つ傾 向や 癖の よう なも のが ある

︒こ れは 認知 心理 学︑ 認 知科 学︑ 行動 経済 学な どで 主に 研究 され てき た︒ この よ うな 心理 傾向 は日 常場 面の 大半 では 大き な問 題は なく

︑ むし ろ労 力を かけ ずに 認知 判断 を行 う

ζ

を助 ける

︒し かし

︑そ れは とき に歪 んだ 誤っ た判 断の もと とな ると と もあ る︒ この よう な誤 った 判断 を導 く偏 った 認知 傾向 は︑ 認知 バイ アス と呼 ばれ る︒

人間の認知過程は︑直感システムと熟慮システムの

2つが同時に働いているとされる突如

E S S E

N

GH

N

︒ 自分 では 意識 的に 熟慮 して もの ごと を判 断し てい ると 考 えて いて も︑ その 背後 では 同時 に無 意識 的・ 直感 的に 判 断す るシ ステ ムが 動い てい る︒ その ため

︑熟 慮し て意 思 決定 を行 った つも りで も︑ 笑は 誤っ た直 感に 基づ いた 拙 速な 意思 決定 を下 して しま うと とが ある

ζ

が認 知パ

(5)

イア スの 原因 の一 つで ある

︒己 れま での 研究 で︑ 例え ば︑ 思い 浮か べや すさ と実 際の 数量 判断 を混 同し てし まう と と︑ 質問 の枠 組み によ って 判断 が変 わっ てし まう こと

︑ 提示 され た数 値情 報に 過度 に引 きず られ た判 断を する

ζ

と︑ とい った 特徴 が指 摘さ れて いる

他にも︑例えば︑確率・統計情報を人聞は適切に認

識す るこ とが 難し いと と︑ 人間 の判 断は 自己 中心 的な も のと なり がち なこ とな ど︑ 人聞 には 多く の認 知的 特徴 が 存在 して いる

︒社 会的 な問 題解 決に 向け た決 断科 学の 構 築の ため には

︑人 間の 心理 傾向 とし ての 認知 バイ アス に 陥ら ず︑ 適切 な意 思決 定を 行う

ζ

ので きる 方策 を組 み 込む 必要 があ るだ ろう

︒ 対人

・集 団の 意思 決定 社会的な意思決定場面では︑個人が一人だけで意思 決定 する わけ では ない

︒企 業に せよ 行政 にせ よ︑ トッ プ・ マネ ジメ ント

・チ

1

や政 治家 たち が︑ 相互 に議 論を し なが ら意 見を すり 合わ せ︑ 合議 のも とで 一つ の意 思決 定 を行 う︒ した がっ て︑ 社会 的な 意思 決定 を理 解す るた め

には

︑対 人・ 集団 の意 思決 定過 程の 特徴 を理 解す ると

・と が必 要と なる

ζ

は︑ 主に 社会 心理 学の 分野 で研 究さ れて きた

︒こ れま での 研究 では

︑例 えば

︑集 団意 思決 定 は多 数決 の意 思決 定に 陥り やす く︑ 少数 派の 意見 が適 切 に考 慮さ れる とと は少 ない とと

︑意 見の 多様 性を 認め な

い閉鎖的な集団では集団浅慮

SB

吾岳皆

ε

と呼 ばれ る 衆愚 状態 に陥 る

ζ

があ る己 と︑ 共有 情報 ばか りに 話合 いの 時闘 が費 やさ れて しま うこ と︑ など の特 徴が 指摘 さ れて きた

︵市 開亀 田呂 田由 主︸

また︑意思決定場面においても︑集団状況全般に関

する人聞の判断や行動傾向を考慮する必要があるだろ

う︒ 社会 心理 学の 集団 研究 では

︑多 数派 同調

︑説 得︑ 交 渉︑ チー ムワ ーク

︑リ ーダ ーシ ップ

︑紛 争解 決と 合意 形 成に 関し て多 くの 研究 知見 が蓄 積さ れて いる 営問 釘原

NO

ニ 2

・ 山 口

NO

D

EJO

﹁決 断科 学﹂ は︑ 社会 レベ ルの 問題 解決 を目 指し てい

35

A

04

4l

有聾閣40

8 m q

Jくり務理L

鋭 機

、 島 田

(6)

るた め︑ 個人 のみ なら ず︑ 必ず 社会 的意 思決 定過 程︑ 合 意形 成過 程を 経る 必要 があ る︒ した がっ て﹁ 決断 科学

﹂ には

︑社 会心 理学 にお ける 集団 意思 決定

︑集 団行 動過 程

に関する知見者適切に組み込むととが必要となるだろ

vつ ︒

社会 的問 題解 決に 向け 存決 断科 学へ の結 実を 目指 して

以上のような心理学における意思決定研究から︑現

場の 社会 的問 題解 決に 向け た決 断科 学へ と結 実し てい く には

︑少 なく とも 次の よう なハ lF ルを 越え てい く必 要 があ るだ ろう

︒本 稿で は︑ 以下

の2

点を 指摘 した い︒ 実践

・応 用を 目指 した 現場 の知 商品 の利 用と 理論 化 心理 学の 意思 決定 研究 は基 礎的 なメ カニ ズム 理解 の研 究が 多い

︒乙 れを 現場 の社 会的 問題 解決 に向 けた

﹁決 断 科学

﹂へ と結 実す るた めに は︑ より 応用 商を 重視 した 形

で取 りま とめ てい く必 要が ある

心理学の研究では︑主に実験室での実験やアンケー

トに基づいた実証研究から原理原則を明らかにしてき

た︒ 例え ば︑ 典型 的な 集団 意甲 設定 の実 験研 究は 次の よ うな

−も ので ある

︒学

生4

名を 集め て︑ 集団 を形 成し

︑あ る意 思決 定課 題に 従事 して もら う︒ その 際に

︑こ の学 生 集団 は︑ 複数 の条 件の いず れか に割 り当 てら れて いる

条件聞で意思決定課題のパフォーマンスがどう異なる

かを 検討 する 乙と によ って

︑ど のよ うな 条件 が優 れた

/ 劣っ た集 団意 思決 定を 生み 出す のか を解 明す ると いっ た もの であ る︒ 一読 して 分か るよ うに

︑か なり 人工 的で 統 制さ れた 環境 の下 で解 明さ れて きた 知見 であ ると いえ る だろ う︒ した がっ て︑ 心理 学の 研究 では

︑実 験で 得ら れ た知 見を 現実 世界 の問 題解 決に どこ まで 一般 化と 応用 が でき るの かが 問題 とな る︒ もち ろん 実験 宅研 究で 得ら れ た知 見の 蓄積 は体 系的 なも ので あり

︑有 用な もの も多 い だろ う︒ だか らと そ︑ 現場 の社 会的 問題 解決 を目 指し た

﹁決 断科 学﹂ とし て︑ 現実 に活 かす ため には

︑よ り現 場

(7)

で汎 用性 の高 い手 法に 応用 して いく

ζ

が必 要と なる だ

ろ つ ︒

そのためには︑決断科学の理論化のために︑現場の

知恵 を取 り込 み︑ 学術 的理 論と リン クさ せて いく とと が 重要 とな るだ ろう

︒そ のた めに は︑ 決断 科学 プロ グラ ム にあ る︑ 環境

・災 害・ 健康

・統 治と いう 現場 での 問題 解 決に 携わ るモ ジュ ール があ り︑ そと で得 られ た知 見か ら ボト ムア ップ 的に 理論 化を 図っ てい くこ とが 必要 とな る だろ う︒

その一つの取り組み方としては︑認知科学・社会心

理学 等で 解明 され た人 聞の 意思 決定 の特 徴に 関す る知 識 を元 に︑ 環境

・災 害・ 健康

・統 治モ ジュ ール での 取り 組 みと リン クを 行い

︑現 場で の活 動を 踏ま えた 各モ ジュ ー ルで のガ イド ライ ンづ くり を行 って いく 乙と が挙 げら れ るか もし れな い︒ 未だ 具体 化の ため には 超え るべ きハ ー ドル は多 いが

︑モ ジュ ール 問の 連携 を取 りな がら

1つ

ずつ 取り 組ん でい く必 要が ある だろ う︒

行政

・政 治的 プロ セス

また︑決断科学の体系化・理論化において︑特に心

理学 のア プロ ーチ に欠 けて いる と考 えら れる 点と して

︑ 行政

・政 治的 なプ ロセ スを 組み 込む

ζ

が挙 げら れる

︒ 心理 学は 主に 個人

︑な いし 複数 人の 心理 とい う視 点か ら アプ ロー チす る学 問で あり

︑視 点が どう して もミ クロ に なり がち であ る︒ しか し︑ 社会 的な 意思 決定 は︑ 行政 シ ステ ムの 一環 とし て行 われ ると とが 多く

︑社 会シ ステ ム の制 度設 計の ため のマ クロ な意 思決 定の 側面 か考 慮す べ きだ ろう

︒と のよ うな 行政 的・ 政治 的な プロ セス は︑ 心 理学 の守 備範 聞外 であ るた め︑ 政治 学︑ 行政 学︑ 法学 の 専門 家と 協働 し︑ ミク ロな 個人 の判 断・ 意思 決定 から

︑ マク ロな 社会

・政 策的 な意 思決 定ま でを 網羅 する 形で の 体系 化が 求め られ るだ ろう

︒ 終わ りに

(8)

以上︑私なりに悩みながら考えている︑心理学の視 点か らの

﹁決 断科 学﹂ への アプ ロー チに 聞し て記 述し た︒ しか し︑ 具体 的に 形に する には どの よう な道 のり を辿 れ ばよ いの かは

︑未 だ明 瞭と はい えな いの が率 直な 感想 で ある

︒幸 いに も︑ 本セ ンタ ーに は多 様な 専門 性を 持つ 学 生と 教員 が集 って いる

︒試 行錯 誤を 練り 返し なが ら︑ 協 働し てい くこ とが 必要 だろ う︒

なわた けんご 偶田健悟

JH大学鵡獅持続可前な掛金のための決断科学センター人間モジュール 1甥ヰ年山口県生まれ.カ洲大学敏育学留率、同大学院人周環鳩学府修7.

得士(11}理学~).専門は省会心理学、申華民集量樋躍を対象としている.

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