• 検索結果がありません。

量子力学への統計力学的アプローチ:新しい統計解釈の試み

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "量子力学への統計力学的アプローチ:新しい統計解釈の試み"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

量子力学への統計力学的アプローチ:新しい統計解釈の試み

白井仁人 (Hisato SHIRAI

)

一関工業高等専門学校

量子力学の実在的な解釈の一つとして、ベルの不等式と矛盾しない新しい「量子力 学の統計解釈」を研究している。この解釈では、量子力学と統計力学の間の詳細な比 較に基づき、統計力学的な考え方を通して量子力学を再解釈する。したがって「量子 力学への統計力学的アプローチ」とも呼べる解釈である。この解釈は「運動量の統計 解釈」と「干渉する量子確率の統計解釈」という二つの柱からなっている。「運動量の 統計解釈」では「個別の系が位置と運動量の両方を持つのではなく位置だけしか持た ない」と考える。つまり、運動量やスピンは個別の系の性質ではなく系の統計集団の 性質だと考えるのである。そう考える理由は三つある。第一に、「位置」以外の物理量

(スピンや運動量等)の測定がその物理量の直接的な測定によって行われるのではな く、「位置」の測定から二次的に導出されるという事実である。第二に、運動量に対す る考え方は古典力学から量子力学に移行する際に大幅に変更されており、その概念に ついては再検討する必要があるということである。(古典力学では運動量は速度に比例 する量mvで表されるが、量子力学では波数に比例する量hkで表され、後者は波動 性を表す量だが個別系が波動性を持つかどうかは明らかでない。)そして第三に、こう 考えることによって統計解釈において最大の難問であったベルの不等式などのNOG O定理の問題が回避されることである。これら三つの理由により「運動量の統計解釈」

を提案している。

また、「干渉する量子確率の統計解釈」とは、確率の干渉性を全体論的な考え方によ って説明しようという試みである。この解釈では、まず確率分布 P(x,t)が(想定した 範囲の全時空に渡って)全体的に決まっていると考える。つまり、確率過程論のよう に遷移確率 f(x’→x)によって P(x,t)=∫P(x’,t-dt) f(x’→x) dx’という形で局所 的に分布が決まるのではなく、想定した範囲の全体としてある統計的な量を最小にす るように分布の全体 P(x,t) が決まっていると考えるのである。そして、干渉性はそ れらの間に無理やりに遷移確率 f(x’→x)を想像したときに、その仮想的な遷移確率 の間に

f(x’→a→x)+f(x’→b→x)≠f(x’→x)

という形で現れるものであり、分布 P(x,t)だけを考えていれば何も干渉性などは現れ ないと考える。つまり、確かに干渉性は実際に観測される現象だが、それを確率の非 加法性と同一視するのは人間であり、人間が勝手に(不要な)遷移確率を想像するた めにそこに確率の非加法性が見かけ上現れてしまうと考えるのである。こう考えるこ とによって、統計解釈において問題となる確率の非加法性の問題が解決することにな る。

(2)

さて、本講演で発表する内容はこの解釈に対する次の二つの疑問への説明である。

その二つの疑問とは、

1.相互作用は個別の系の間で起こり運動量やエネルギーを交換する。このような相 互作用による個別の系の間の運動量交換と「個別の系が運動量を持たない」とい う考えをどのように矛盾なく説明するのか。

2.ベルの不等式やCHSH不等式は、個別の系がスピンの方向を持つとか持たない とかの議論とは別に、とにかくスピンの方向に対する確率分布というものさえあ れば成り立つ不等式であった。したがって、スピンを統計集団の性質と考えたと してもそこには確率分布があるのだからベルの不等式やCHSH不等式は成り立 つことになり、量子力学と矛盾するのではないか。

これら二つはこの解釈の本質を突く疑問であり、それゆえにそれらに答えることに よってこの解釈の本質がより鮮明に理解され、その無矛盾性が明らかになるのではな いかと思われる。そこで本講演ではこの二つの問題に的を絞りそれらについて議論す る。上の質問に対する答えを簡単にまとめると以下のようになる。

第一の疑問(個別系の相互作用に関する疑問)について答えると、相互作用は運動 量の変化として理解できる量であるが、古典力学では運動量が速度と結びついた概念 であったため相互作用(力)は速度の変化(加速度)と結びついていた。これに対し 量子力学における運動量は直接速度と結びついておらず波数ベクトルと関係している。

そして、新しい統計解釈では波数を温度のような統計集団の性質と見なしているわけ だから、相互作用は異なる統計集団への遷移を表すことになる。問題は個別の系の間 でのやりとりによって、そのような統計集団の性質の遷移を引き起こせるのかという ことだろう。それができると考えても問題は何も生じないだろう。なぜならここで言 う統計集団は統計力学でいうギブス流の統計集団のことであり、複数の粒子という意 味は全く持っていないからである。簡単に言うと、ギブス流の統計集団はたった1個 の粒子に対しても考えることができるのであり、したがって個別の系の間の相互作用 によって統計集団の性質を表す統計パラメーターが変わると考える事は矛盾した考え ではないのである。

次に、第二の疑問(ベルの不等式に関する疑問)について考える。この疑問はスピ ンの確率分布を考えれば必ずベルの不等式が導出できるということに基づく疑問であ った。確かにその通りなのだが、その導出過程では単に確率分布を持つということだ けが前提とされているのではなく、対象としている系が少なくとも3つの方向に対し てスピンの値を持つということも前提とされている。これが重大な問題である。新し い統計解釈では(運動量と同様に)スピンも統計集団の性質であると考え、それゆえ スピンの値も実験装置の配置のしかた(の全体)に依存して決まることになる。した がって、3つの方向に対するスピンの値を同時に測定するような実験装置の配置のし かたは存在しないので、3つの方向に対してスピンの値を持つという前提が成り立た ず、ベルの不等式の成立との矛盾が回避されることになる。

参照

関連したドキュメント

・子会社の取締役等の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制を整備する

需要動向に対応して,長期にわたる効率的な安定供給を確保するため, 500kV 基 幹系統を拠点とし,地域的な需要動向,既設系統の状況などを勘案のうえ,需要

社会調査論 調査企画演習 調査統計演習 フィールドワーク演習 統計解析演習A~C 社会統計学Ⅰ 社会統計学Ⅱ 社会統計学Ⅲ.

原子炉隔離時冷却系系統流量計 高圧炉心注水系系統流量計 残留熱除去系系統流量計 原子炉圧力計.

現在まで地域経済統合、域内の平和と秩序という目的と、武力放棄、紛争の平和的解

 貿易統計は、我が国の輸出入貨物に関する貿易取引を正確に表すデータとして、品目別・地域(国)別に数量・金額等を集計して作成しています。こ

二院の存在理由を問うときは,あらためてその理由について多様性があるこ

当事者の一方である企業者の手になる場合においては,古くから一般に承と