演算クロックの高速化による 1bit 信号の処理
Single-Bit Signal Processing Using High Speed Clock
5114E002-6 今井 亮太 指導教員 及川 靖広 教授
IMAI Ryota Prof. OIKAWA Yasuhiro
概要:本研究ではΔΣ変調を用いない高速
1bit
符号化による記録再生システムを用いて,1bit
信号の処理を検討し た.近年,1bit
オーディオの普及によりマルチトラックでの1bit
で録音するケースが増えている.1bit
信号に対し てマルチビット信号と同様に処理をすることが可能であるが,その結果はマルチビット信号となる.1bit
信号を得る ためには演算結果に再度1bit
量子化を行う必要がある.一方で,高速1bit
信号をゼロで補間することで標本化周波 数を上げ,その後配列順序や構成比を操作することで,マルチビット信号に変換せずとも直接信号処理が可能である.1bit
のまま処理が可能であれば1bit
信号のもつアナログの性質とデジタルの性質を活かすことが期待できる.本研究 ではFPGA
を用いた1bit
信号のミキシングを実現している.キーワード:
AD
変換,1bit
,信号処理,量子化雑音,ディザKeywords: AD transiation, 1bit, signal processing, quontization noise, dither
1. は じ め に
アナログ信号をディジタル化するには標本化と量子化 の操作が必要であるが,標本化周波数と量子化ビット数 の組み合わせの選択をするよりも,その片方の極限であ る
1bit
量子化に着目し,様々な検討が加えられてきた.1bit
符号化の手段としてΔΣ変調[1]
が広く用いられて いる.一方,適切なディザを加算した上で量子化し,量 子化後にディザを減算することで,量子化雑音を白色化 することが可能である[2]
.近年,1bit
オーディオの普及 によりマルチトラックでの1bit
で録音するケースが増え ている.1bit
信号に対してマルチビット信号と同様に 処理をすることが可能であるが,その結果はマルチビッ ト信号となる.1bit
信号を得るためには演算結果に再度1bit
量子化を行う必要がある.一方で,高速1bit
信号を ゼロで補間することで標本化周波数を上げ,その後配列 順序や構成比を操作することで,マルチビット信号に変 換せずとも直接信号処理が可能である.2. 量子化雑音とディザ
量子化は連続分布する標本値を離散的な値で表現する ので,入力と出力に差が出る.この差を量子化雑音と呼 び,量子化による信号の劣化,情報の欠落は不可避であ る.量子化雑音を白色化する目的で信号にディザと呼ば れる確率変数を加算した上で量子化する手法が知られて いる
[2]
.量子化ステップ幅を∆
としたとき,±∆/2
に 一様に分布したディザを量子化に先立ち加算し,量子化 後に減算することで,量子化雑音は入力に関わらず,±∆/2
に一様分布する電力∆
2/12
の白色性雑音とするこ とが可能である.このとき量子化雑音は標本化周波数の1/2
まで分布する.そのため,標本化周波数を2k
倍とすると信号帯域での量子化雑音電力は
∆
2/12k
となる.誤 差のある現実の変換器を用いる場合,振幅の大きいディ ザを加算して量子化し,量子化後に減算することで,ディ ザ本来の効果のほかに誤差の分配,精度の向上が期待で きる.ディザの振幅が小さいと量子化特性のごく一部し か使われないが,比較的振幅の大きいディザを入力に重 畳すると,量子化特性の広い部分が使われ,偏在してい た誤差が分散,平均化されるからである.ディザの分布 幅は ±∆/2
の整数倍で大きいほど効果があるが,大き過 ぎると入力信号の過負荷レベルが下がる[3]
.また,加 算するディザの周波数分布を高域に集中することによっ て,減算しなくてもディザの効果を得ることができる.量子化後の信号では高域にディザが残るものの,中低域 の量子化雑音電力はディザ減算した場合と等しい
[2]
.3. ΔΣ変調を用いない 1bit 符号化
これまでΔΣ変調を用いない
1bit
量子化の検討を行っ てきたが,本研究において標本化周波数500MHz
まで の記録,1GHz
までの再生を実現した.そのシステムを 図―に示す.1bit
量子化する量子化信号の伝送速度の速 さと信号のデータ量の多さから,そのまま量子化信号を 記録することは困難であるが,FPGA
とシリアルATA
(SATA)
を用いて1bit
量子化及び大容量記録システムを 構築することにより,高い標本化周波数でも長時間での 記録が可能である.FPGA
にアナログ信号を入力する と高速標本化された1bit
量子化信号となり,SATA
規 格に則った信号に変換しSATA
ケーブルを通じてSSD
に転送,高速書き込みを行う[4-6]
.SATA
規格とは主にHDD
とSSD
などの記録媒体とコンピュータを接続する ためのインターフェース規格であり,記録信号にクロッ ク信号を重畳した差動シリアル信号へ変換し転送することによって高いデータ転送速度を実現している.大きな 伝送容量を持つ
1bit
信号をFPGA
からSSD
という大 容量記憶装置に転送するためにSATA
規格を使用した.FPGA SSD
アナログ信号
バランス入力 デジタル信号
バランス出力
SATA 転送
ディザ図―1
1bit
量子化録音再生機のシステム概要図―2
1bit
量子化録音再生機4. 実 験
1bit
信号に対してサンプル間を0
で補い,標本化周波 数を高くすることで直接処理が可能である.例えば,標 本化周波数が等しい2
つの1bit
信号があるとき,各サン プルを交互に並べて標本化周波数を2
倍にすることで,2
つの信号を1bit
のままミックスすることができる.また,各サンプルの構成比が各信号の振幅比を決めるため,任 意の音量バランスでミックスすることが可能である.こ のようにサンプルの構成比や順序を操作することで様々 な
1bit
信号処理が可能である.図―3
1bit
信号のミックス概要製作した
1bit
直接量子化録音再生機を用いて,正弦波1240Hz
と3540Hz
をそれぞれ1bit
量子化した信号を録 音し,FPGA
上でそれらのミックスを行った.記録には 信号電圧20Vp-p
,28.97MHz
の正弦波をディザとして 用いた.記録したデータをSSD
からPC
に読み込み,解 析した.
)UHTXHQF\>N+]@
9>G%@
図―4
1:1
ミックスのスペクトル
)UHTXHQF\>N+]@
9>G%@
図―5
9:1
ミックスのスペクトル5. む す び
ΔΣ変調を用いない
1bit
量子化による標本化周波数500MHz
での記録,1GHz
での再生をすることができ,SN
比の向上を確認できた.また,2ch
化によって利便性 が向上した.録音した複数の1bit
信号をミックスするこ とに成功し,より実用的な録音再生機となった.しかし ミックスの比率を変更するにはPC
側からの操作が必要 であり,今後はハードウェア上での操作を可能とするこ とが課題である.また,ミックスだけでなくリバーブな どのエフェクト処理も目指す.参 考 文 献
[1] Hiroshi Inose,Yasuhiko Yasuda, A Unity Bit Cod- ing Method by Negative Feedback, Proceedings Of The IEEE,Vol.51,No.11,pp1524-1535,Nov.1963 [2]
大賀寿郎,山崎芳男,金田豊, 音響システムとディジタル処理, コロナ社,pp.51-94,July.1995