松 山 大 学 論 集 第 二 十 五 巻 第 四 号 抜 刷 平 成 二 十 五 年 十 月 発 行
松 山 大 学 法 学 部 松 大 G P 資 料
︵ 二
︶
古 屋 壮 一 今 村 暢 好
研 究 ノー
松
ト山 大 学 法 学 部 松 大 G P 資 料
︵ 二
︶
古 屋 壮 一 今 村 暢 好
星 野 通 編 著 ︵ 松 山 大 学 法 学 部 松 大 G P 推 進 委 員 会 増 補
︶
﹃ 民 法 典 論 争 資 料 集 ﹄
︵ 復 刻 増 補 版
︶ の 現 代 的 意 義 に 関 す る 一 試 論
︵ 二
・ 完
︶
︱
︱﹃ 準 正 規 定 創設 の 可 否
﹄ と い う 民法 典 論 争 に お け る争 点 を 例 と し て
︱︱ 古
屋 壮 一
一 はじ め に 復 刻 増補 版 刊 行の 経 緯 復 刻 増補 版 の 内容 本 稿 の目 的
︵ 以上
︑ 二五 巻 三号
︶ 二
﹃準 正 規 定創 設 の可 否
﹄を め ぐ る論 争 とそ の 影響 旧 民 法人 事 編 にお け る準 正 規定 と そ の立 法 趣旨 民 法 典論 争 に おけ る 延期 派 と断 行 派 の主 張 明 治 三一 年 民 法に お ける 準 正規 定
﹁ 民 法 典論 争 の余 波
﹂と し て の明 治 三一 年 民法 に お ける 非 嫡出 子 相続 分 不 平等 規 定の 創 設 三 若干 の 検討 現 行 民法 九
〇
〇条 四 号但 書 に関 す る 若干 の 検討 復 刻 増補 版 の 現代 的 意義 に 関す る 一 試論
︵ 以上
︑ 本号
︶
松山 大 学論 集 第二 十 五巻
第四 号
二
二
﹃準 正 規 定 創 設 の 可否
﹄ を め ぐ る 論 争 とそ の 影 響 旧
民 法 人 事編 に お け る準 正 規 定 と その 立 法 趣 旨 旧 民 法 の 準 正規 定 は
︑ 人事 編 第 六 章﹁ 親 子
﹂ 第 三節
﹁ 庶 子 及ヒ 私 生 子 ノ 嫡出 子 ト 為 ル権
﹂ 一
〇 三条 か ら 一
〇 五条 ま で で あり︵︶
︑ 現 行 民 法七 八 九 条 と 同様 の 内 容 とな っ て い る︒ 人
事 編 一
〇 三条
﹁① 庶 子 ハ 父母 ノ 婚 姻 ニ因 リ テ 嫡 出 子ト 為 ル
② 私 生 子 ハ 父母 ノ 婚 姻 ノ後 父 ノ 認 知シ タ ル ニ 因 リテ 嫡 出 子 ト為 ル
﹂ 人 事 編 一
〇四 条
﹁死 亡 シ タ ル子 ト 雖 モ 前条 ノ 規 定 ニ 依リ 嫡 出 子 ト為 ル 此 場 合ニ 於 テ ハ 其 効力 ハ 子 ノ 生ミ タ ル 子 ヲ利 ス
﹂ 人 事 編 一
〇五 条
﹁ 父 母 ノ 婚 姻ノ 時 マ テ ニ父 子 ノ 分 限確 定 シ タ ル 者 ハ 婚 姻 ノ 日 ヨ リ 又 婚 姻 ノ 後 ニ 確 定 シ タ ル 者 ハ 確 定 ノ 日 ヨ リ 嫡出 子 ノ 権 利 ヲ有 ス
﹂ 最
初 の 人 事 編草 案 が 法 律取 調 報 告 委 員 の 趣 旨 説 明 と と も に 掲 載 さ れ て い る
﹃ 民 法 草 案 人 事 編 理 由 書
﹄︵ 上 下 巻
︶︵ 発 行 所 お よび 発 行 年 不 明
︶ に よ れ ば︵︶
︑ や は り 第 六 章
﹁親 子 ノ 分 限
﹂第 二 節﹁ 庶 親 子 ノ 分 限﹂ 第 四 款
﹁ 庶 出 子ノ 准 正
﹂ 一八 六 条 は
︑﹁ 庶 出 子 ハ 其父 母 ノ 婚 姻 ニ 因 リ 当 然 正 出 子 ニ 准 ス 但 シ 親 子 ノ 分 限 適 法 ニ 確 定 シ タ ル 松山 大 学法 学 部 松大 G P資 料
︵二
︶
三
コト ヲ 要 ス
﹂ とし て お り
︵上 巻 第 五 章 から 第 六 章 ま で の 七 五 丁 裏
︶
︵
︑︶
人 事 編 一
〇 三 条 と 同 一 内 容 の 規 定 で あ る と いえ る
︒ こ の一 八 六 条 の 準正 規 定 に つき
︑ 法 律 取調 報 告 委 員
︵熊 野 敏 三
︶は
︑ 準 正 によ っ て 婚 姻 関係 に な い 男 女が 私 通 を 止め
︑ 親 族 関係 を 発 生 さ せる と と も に︑ 子 を 教 育す る 基 礎 と なる 法 律 婚 を促 進 す る こ とに な る と し︑
﹁ 法 律 婚 の促 進
﹂ を その 趣 旨 と し て挙 げ る︒ ま た
︑ 準 正 に よ っ て 非 嫡 出 子 に 嫡 出 子 の 身 分 を 取 得 さ せ る こ と は法 律 婚 を 促進 す る か ら
︑非 嫡 出 子 の 養 成 教 育 の 充 実 に つ な が る と し
︑﹁ 非 嫡 出 子 の 福 祉
﹂ も 挙 げ て い る
︒ 法 律取 調 報 告 委 員は
︑ 非 嫡 出子 は 準 正 に より
﹁ 婚 姻 関係 に あ る 男女 の 間 に 生 まれ た 子
﹂ とい え る よ うに な る と い う形 式 的 な 説 明を す る だ けで は な い の で あ る
︵
︶
︵
︒︶
な お
︑ 次 条 の 一 八 七 条 は
︑﹁ 死 去 シ タ ル 子 ト 雖 モ 其 父 母 ノ 婚 姻 ニ因 リ 正 出 子ニ 准 ス 此 場 合ニ 於 テ ハ 准正 ノ 効 果 ハ其 子 ノ 生 ミ タル 正 出 又 ハ庶 出 子 ニ 利 益ス
﹂ と 規 定し
︵ 同 七 八 丁表
︶︑ 一 八八 条 は
︑﹁ 正出 子 ニ 准 セ ラレ タ ル 者 ハ婚 姻 ノ 時 マテ ニ 其 分 限 ノ確 定 シ タ ルト キ ハ 婚 姻ノ 日 ヨ リ 又 婚姻 後 ニ 其 分 限ノ 確 定 シ タル ト キ ハ 其確 定 ノ 日 ヨ リ正 出 子 ノ 権利 ヲ 有 ス
﹂ と定 め て い る︒ 両 規 定 の内 容 は
︑ 人 事編 一
〇 四 条お よ び 一
〇 五条 と 同 じ もの と な っ て いる
︒ 右 に 述 べ た最 初 の 人 事 編草 案 は
︑ 法律 取 調 委 員会 に よ る 討 議の 結 果 修 正を 受 け て 再 調査 案 と な った︵︶
︒ 人 事 編 再調 査 案 第 五 章﹁ 親 子 ノ 分限
﹂第 二 節﹁ 私 親 子 ノ 分限
﹂第 四款
﹁ 私 出子 ノ 正 出 子 ト為 ル ノ 権
﹂一 四 一 条は
︑﹁ 私 出子 ハ 父 母 ノ 婚姻 ニ 因 リ テ当 然 正 出 子ト 為 ル 但 其 親子 ノ 分 限 ノ適 法 ニ 確 定 シタ ル コ ト ヲ要 ス
﹂ と いう 規 定 で あ る︵︶
︒ こ の 人 事 編再 調 査 案 一四 一 条 は
︑ 人事 編 草 案 一八 六 条 と 実質 的 に 同 じ であ る と い える︵︶
︒ し た が って
︑ 前 者 の趣 旨 は
︑ 後 者の 趣 旨 と 異な る と こ ろ は な い と 考 え ら れ る
︒ま た︑ 人 事 編 再 調 査 案 一 四 二 条 は
︑﹁ 死 亡 シ タ ル 子 ト雖 モ 父 母 ノ婚 姻 ニ 因 リ テ正 出 子 ト 為ル 此 場 合 ニ於 テ ハ 其 効 果ハ 子 ノ 生 シタ ル 正 出 子 又ハ 私 生 子 ヲ利 ス
﹂ と し
︑同 一 四 三 条は
︑﹁ 正 出 子ト 為 リ タ ル子 ハ 父 母 ノ 婚 姻 ノ 時 マ テ ニ 其 親 子 ノ 分 限 ノ 確 定 シ タ ル ト キ ハ 婚 姻 ノ 日 ヨ リ又 婚 姻 ノ 後 ニ確 定 シ タ ルト キ ハ 確 定ノ 日 ヨ リ 正 出子 ノ 権 利 ヲ有 ス
﹂ と 規 定す る︵︶
︒ 両規 定 も ま た
︑人 事 編 草
松山 大 学論 集 第二 十 五巻
第四 号
四
案一 八 七 条 お よび 一 八 八 条と 実 質 的 に 同じ で あ る
︒こ の 人 事 編再 調 査 案 は
︑法 律 取 調 委員 会 に お いて 討 議 さ れ たが
︑ そ の 討 議に お い て 法律 取 調 委 員か ら 提 出 さ れた 意 見 を まと め た
﹁ 民法 人 事 編 ニ 対ス ル 意 見
﹂に よ れ ば
︑ 松岡 康 毅 法 律取 調 委 員 が 人事 編 再 調 査案 一 四 一 条但 書 に つ き
︑同 一 四 三 条が あ る こ とか ら 削 除 す べき と の 意 見 を提 出 し
︑ また
︑ 村 田 保法 律 取 調 委 員は
︑ 同 一 四 二 条 に つ き
︑﹁ 其 効 果 ハ 子 ノ 生 シ タ ル 正 出 子 又 ハ 私 生 子 ヲ 利 ス﹂ と あ る の を﹁ 其 効 果 ハ死 亡 シ タ ル 子 ノ 生 シ タ ル 正 出 子 又 ハ 私 生 子 ヲ 利 ス
﹂︵ 下 線 は 筆 者 に よ る
︶ と い う よ う に修 正 す べ きと の 意 見 を述 べ て い る
︒後 者 は
︑ 文理 上 の 明 確 性に 配 慮 し たも の で あ ろう
︒ さ ら に 村田 保 法 律 取調 委 員 は
︑ 婚姻 準 正 に つい て は
︑ 同 一四 一 条 か ら婚 姻 時 に 準正 の 効 果 が 発生 す る こ とは 明 ら か であ り
︑ 同 一 四三 条 に お い てこ れ を 規 定す る 必 要 はな い と し
︑ 認知 準 正 に つい て は
︑ 準正 の 効 果 が 婚姻 時 に 生 じる の か
︑ そ れと も
︑ 認 知時 に 生 じ る のか 同 一 四 一条 か ら は 文 言 上 明 ら か で は な い た め
︑﹁ 認 知 準 正 の 場 合 に は
︑ 準 正 の 効 果の 発 生 時 が 認知 時 で あ るこ と
﹂ の み を同 一 四 三 条に お い て 注意 的 に 規 定 すべ き で あ ると 主 張 し て︑ 次 の よ う な同 一 四 三 条 の修 正 案 を 提出 し た
︒
﹁私 出 子 ハ 父母 ノ 婚 姻 ノ後 ニ 親 子 ノ 分限 確 定 シ タル ト キ ハ 確定 ノ 日 ヨ リ 正出 子 ノ 権 利ヲ 有 ス
﹂
︵
︶
後 に 述 べ る よう に 準 正 規定 創 設 の 可 否は
︑ 民 法 典論 争 に お ける 主 要 な 争 点の 一 つ で あり
︑ 延 期 派は 創 設 に 反 対し た が
︑ 延 期派 の 代 表 的な 論 客 で ある 村 田 保 が 準正 規 定 創 設に 異 を 唱 えて い な い こ とは
︑ 興 味 深い
︒ こ れ ら の再 調 査 案 に対 す る 法 律 取調 委 員 に よる 修 正 意 見は
︑ 人 事 編 再調 査 案 に おけ る 準 正 規定 を 実 質 的 に承 認 す る も ので あ る
︒ そし て
︑ 人 事編 再 調 査 案 は︑ 右 に 見 てき た よ う な修 正 意 見 を もと に さ ら に法 律 取 調 委 員会 の 討 議 に 付 さ れ
︑ 元 老院 提 出 案 が確 定 さ れ
︑さ ら に 元 老 院で の 審 議 を経 て 旧 民 法公 布 案 が 確 定し た︵︶
︒ 旧 民 法 人事 編 一
〇 松山 大 学法 学 部 松大 G P資 料
︵二
︶
五
三条 か ら 一
〇 五条 ま で の 準正 規 定 が 人 事編 再 調 査 案一 四 一 条 から 一 四 三 条 まで と 同 一 の内 容 で あ るこ と か ら す れば
︑ 後 者 は
︑元 老 院 提 出案 に お い ても 実 質 的 に 維持 さ れ た とみ る こ と がで き よ う
︒ 旧 民 法 人 事編 一
〇 三 条 から 一
〇 五 条ま で の 準 正規 定 に つ い ては
︑ 旧 民 法の 注 釈 書 も
︑そ の 立 法 趣旨 を 説 明 し てい る
︒ た とえ ば 法 律 取調 委 員 会 報 告委 員 で あ った 岸 本 辰 雄は︵︶
︑ 準 正 規 定 の趣 旨 を
﹁ 父母 タ ル 男 女 ヲシ テ 一 日 モ早 ク 正 式 ノ 婚姻 ヲ 為 シ テ不 正 ノ 交 通ヲ 止 メ シ メ 他ノ 一 方 ニ 於テ ハ 一 日 モ 早ク 私 通 ノ 結果 タ ル 子 カ社 会 ヨ リ 受 クル 不 幸 ヲ 救フ コ ト ヲ 謀 ラサ ル 可 カ ラス 是 独 リ 其 男女 ト 子 ト ノ為 メ ニ 利 益タ ル ノ ミ ナ ラス 国 家 ノ 為メ ニ モ 亦 甚 タ利 益 ア リ トス 何 ト ナ レハ 生 児 ノ 養 育︑ 教 育 ヲ 完全 ニ ス ル ノ 効果 ア レ ハ ナリ
﹂ と 説 明す る︵︶
︒ こ こ で は︑ 民 法 草 案人 事 編 理 由 書と 同 じ く
︑﹁ 法 律 婚 の 促進
﹂と
﹁ 子の 福 祉
﹂が 準 正 規定 創 設 の 理由 と さ れ て いる
︒ ま た
︑岸 本 は
︑
﹁ 元来 嫡 出 子 ト其 他 ノ 子 トノ 差 違 ハ 其 父母 タ ル 男 女 ノ 間 ニ 正 当 ノ 婚 姻 ア リ テ 生 マ レ タ ル ト 否 ト ニ 在 リ 故 ニ 嫡 出 子 ニ非 サ ル 者 即チ 庶 子 又 ハ私 生 子 ト 雖 モ其 出 生 後 ニ至 リ 其 父 母 タル 男 女 ノ 間ニ 正 当 ノ 婚姻 ア リ タ ル トキ ハ 其 出 生 ト 婚 姻 ト ノ 順 序 ノ 顚 倒 セ ル ノ ミ ナ ル ヲ 以 テ 法 律 ハ 其 子 ニ 与 フ ル ニ 嫡 出 子 タ ル 身 分 ヲ 以 テ ス ル モ 不 可 ナ ル ナ シ
﹂と も 説明 し て い る︵︶
︒ こ れ は
︑星 野 博 士 が﹁ 同 腹後 出 子 と の間 の 不 公 平 を除 去
﹂す る 趣 旨と す る も ので あ る
︒ つま り
︑ 婚 姻 前の 男 女 と の間 に 生 ま れた 子 が 非 嫡 出子 の ま ま であ り
︑ そ の男 女 の 婚 姻 後に
︑ そ の 男女 と の 間 に 生ま れ た 子 が嫡 出 子 と な ると こ ろ
︑ 両者 は 同 じ 男女 間 の 子 で ある に も か かわ ら ず
︑ 婚 姻前 に 出 生 した と い う 一 事を も っ て 非嫡 出 子 に 社会 的 不 利 益 が課 さ れ る のは 不 公 平 であ る か ら
︑ 婚姻 関 係 に ある 男 女 と の 間に 生 ま れ た 子 で あ る と いえ る こ と に着 目 し
︑婚 姻 準正 お よ び 認知 準 正 を 認 めて
︑非 嫡 出 子を 救 済 し よう と す る 趣旨 で あ る︵︶
︒ この 趣 旨 は
︑﹃ 民 法 草 案 人 事編 理 由 書
﹄に お い て 指 摘 さ れ て い な い も の で あ る
︒ 岸 本 も 指 摘 す る 準 正 規 定 創 設 に よる
﹁ 子 の 福祉
﹂ に つ い ては
︑ 井 上 操も
︑﹁ 男 女 私 通 シ テ 児 子 ヲ 挙 ク ル ニ 至 ル ハ 畢 竟 父 母 其 人 ノ 罪 過 ニ シ テ 毫 モ 児子 ノ 知 ラ サル 所 ナ リ 然カ モ 其 子 ヲ シテ 終 生 庶 子又 ハ 私 生 子 タル ノ 汚 名 ヲ戴 カ シ ム ルハ 人 情 ノ 忍 フ可 ラ サ
松山 大 学論 集 第二 十 五巻
第四 号
六
ル所 ナ リ 故 ニ 父母 ノ 位 置 ニシ テ 夫 婦 タ ルコ ト 世 上 ニ公 然 シ タ ル以 上 ハ 私 生 子又 ハ 庶 子 ヲ以 テ 嫡 出 子ト 為 ス コ ト ヲ得 セ シ ム ル ヲ允 当 ナ リ トス
﹂ と 述 べ︑
﹁ 子 の 福 祉
﹂ が 婚 姻 準 正 お よ び 認 知 準 正 を 認 め る 根 拠 の 一 つ で あ る こ と を明 ら か に して い る︵︶
︒ また
︑﹁ 独 リ 其子 ニ 利 益 ナ ル ノ ミ ナ ラ ス 又 社 会 ノ 利 益 ト 謂 フ 可 シ 何 ト ナ レ ハ 父 母 或 ハ
︵ マ マ
︶
其子 ノ 愛 情 ニ 絆サ レ 婚 姻 ヲ為 ス コ ト ア ル可 ク 従 テ 社会 ニ 混 雑 ヲ与 フ ル 私 通 ハ幾 分 減 少 ス可 キ ノ 理 ナレ ハ リ
﹂ と 述べ
︑ 子 の 社 会的 不 利 益 を除 去 す る ため に 父 母 が 私通 を や め て婚 姻 す る よう に な り
︑ 法律 婚 が 促 進さ れ る と 述 べる︵︶
︒ 井 上 の 説明 か ら
︑ 非嫡 出 子 と し ての 身 分 を 有す る こ と につ い て 何 ら 帰責 性 の な い非 嫡 出 子 に社 会 的 不 利 益を 課 す べ き では な い が
︑他 方
︑ 社 会の 風 俗 を 維 持す る べ く
︑私 通 を 防 止し て 法 律 婚 を促 進 す る とい う 要 請 が ある た め
︑ 父母 が 私 通 を やめ て 婚 姻 した こ と を 要件 の 一 つ と し︑ 非 嫡 出 子が 嫡 出 子 の身 分 を 取 得 でき る よ う に して 非 嫡 出 子を 救 済 す る制 度 こ そ
︑ 旧民 法 人 事 編一
〇 三 条 から 一
〇 五 条 まで の 準 正 であ る こ と を 確認 し う る
︒ 手 塚 太 郎 も 同様 に
︑ 私 通の 行 為 主 体で は な い 非 嫡出 子 が 行 為主 体 で あ る他 人 た る 父 母の 私 通 に よっ て 不 利 益 を 課 さ れ る のは 道 理 に 反 する と し つ つ︵︶
︑﹁ 私 通 ハ 社 会 ノ 風 儀 ヲ 紊 乱 ス ル 者 ナ レ ハ 法 律 ハ 可 成 之 ヲ 防 止 セ ン コ ト ヲ
︵ マ マ
︶
欲セ リ 是 ヲ 以 テ法 律 ハ 私 生子 ヲ 遇 ス ル コト 適 出 子 ニ比 ス レ ハ 劣等 ノ 地 位 ヲ 与ヘ タ リ 然 ルニ 其 父 母 ニシ テ 婚 姻 ヲ 為シ 以 テ 其 正 当ノ 望 ヲ 充 タス ニ 於 テ ハ尚 其 子 ヲ 待 ツニ 劣 等 ノ 地位 ヲ 以 テ スル ノ 理 ナ カ ルベ シ 況 ン ヤ父 母 ハ 屢 々
︵マ マ
︶
其子 ノ 恩 愛 ニ 誘ハ レ 其 不 幸ヲ 憐 ミ 婚 姻 ヲナ シ テ 之 ヲ適 出 ノ 子 トナ サ ン ト 欲 スル モ ノ ア ルニ 於 テ ヲ ヤ﹂ と 述 べ
︑ 私通 を 防 止 し て社 会 の 風 俗を 維 持 し
︑法 律 婚 を 促 進す る と い う要 請 の た めに
︑ 私 通 に よっ て 生 じ た子 を 非 嫡 出 子と せ ざ る をえ な い が
︑ 男女 が 私 通 をや め て 婚 姻し た の で あ れば も は や その 要 請 を 考慮 す る 必 要 がな い こ と か ら︑ 婚 姻 を 一要 件 と し て準 正 が 認 め られ る こ と を説 明 し て いる︵︶
︒ こ こ に お いて
︑ 旧 民 法人 事 編 一
〇 三条 か ら 一
〇五 条 ま で の 準正 規 定 は
︑最 初 の 人 事編 草 案 か ら一 貫 し て
︑社 会 の 風 俗を 維 持 す るた め
︑私 通 を や め させ て﹁ 法 律婚 の 促 進
﹂を 図 る べ く
︑私 通 関 係 にあ る 男 女 間 の非 嫡 出 子 が嫡 出 子 の 身分 を 取 得 す るも の と し て︑ も っ て 非 松山 大 学法 学 部 松大 G P資 料
︵二
︶
七
嫡出 子 の 養 成 教育 を 充 実 させ
︑ 非 嫡 出 子 で あ る こ と に 起 因 す る 社 会 的 不 利 益 を 除 去 し
︑﹁ 子 の 福 祉
﹂ を 向 上 さ せ る趣 旨 の 規 定で あ っ た と いえ る
︒ 星 野博 士 は
︑ こ の趣 旨 を
﹁ 男女 私 通 防 止と 私 通 関 係 適法 婚 姻 化 によ る 私 通 の 子の 救 済
﹂ と端 的 に 表 現し て い る︵︶
︒ もち ろ ん
︑ 準正 に よ っ て非 嫡 出 子 が
﹁婚 姻 関 係 にあ る 男 女 と の間 に 生 ま れた 子 と い え るよ う に な るこ と も 当 然︑ 準 正 規 定 の趣 旨 に 含 まれ て い る
︒ 民
法 典 論争 に お け る 延期 派 と 断 行派 の 主 張 旧 民 法 人 事編 一
〇 三 条 から 一
〇 五 条ま で の 準 正規 定 に つ い ては
︑ 民 法 典論 争 に お いて
︑ そ の 創 設自 体 が 延 期 派か ら 批 判 され
︑ 断 行 派が そ の 批 判 の不 当 を 論 じた
︒ 旧 民 法人 事 編 の 準 正規 定 を め ぐる 延 期 派 と 断行 派 の 論 争 は
︑ 星 野 博 士に よ っ て 簡潔 に 整 理 分析 さ れ て い るの で︵︶
︑ そ の 先行 研 究 を も とに 復 刻 増 補版 も 活 用 し なが ら 両 派 の主 張 を 確 認 した い
︒ 延 期 派 は
︑ 明治 二 五
︵ 一八 九 二
︶ 年五 月 二 五 日 発兌 の 法 学 新報 一 四 号 掲載 の
﹁ 社 説 法 典 実 施 延期 意 見
﹂ に おい て
︑ 人 事編 に 準 正 規 定が 置 か れ てい る こ と を批 判 し た
︒ 同意 見 は
︑ 復刻 増 補 版 一 七一 頁 上 段 から 一 八 五 頁 にわ た っ て 収録 さ れ て いる
︒ 復 刻 増 補版 末 尾 の
﹁対 照 表
﹂ も参 照 し つ つ︵︶
︑ 対照 表 に 示 され て い る 原 典と の 不 一 致箇 所 に つ い ては
︑ ゴ チ ック で 表 示 し︑ そ れ に 続 いて 原 典 の 表記 を
﹇
﹈ 内で
︵ や は りゴ チ ッ ク で︶ 指 摘 し た 上で
︑ 以 下 に同 意 見 に お ける 準 正 規 定批 判 部 分
︵ 復刻 増 補 版 一七 六 頁 上 段一 三 行 目 か ら同 頁 上 段 二一 行 目
︶ を 復刻 増 補 版 から 抜 き 出 し て紹 介 し た い︒ な お
︑ 同意 見 の 原 典 は︑ 漢 字 と 片仮 名 で 表 記さ れ て お り
︑濁 点 は な い が
︑ 一 部 に 句読 点 が 付 され て い る︵︶
︒ 下 記の 右 批 判 部分 に つ い て︑ 濁 点 は
︑ 星野 博 士 が 付し た も の で あっ て
︑ 原 典に お い て は 付さ れ て い ない
︵ 原 典 にお い て
︑ 句 点は 下 記 の 引用 部 分 と 同じ 位 置 に の み付 さ れ て いる が
︑ 読 点 は全 く 付 さ れて い な い
︶︒
松山 大 学論 集 第二 十 五巻
第四 号
八
﹁人 事 篇 第 百三 条 ニ 依 レ バ庶 子 ハ 父 母ノ 婚 姻 ニ 依 リ テ 当 然 嫡 出 子 タ ル コ ト ヲ 得 ベ キ モ ノ ト ス レ ド モ 是 レ 亦 個 人 主義 ノ 欧 洲 制度 ニ シ テ 家 督相 続 ヲ 以 テ人 事 ノ 最 モ 重キ モ ノ ト 為ス ノ 邦 国 ニ取 リ テ ハ 甚 ダ不 当 ノ 規 定ト 謂 ハ ザ
︵ マ マ
︶
ルヲ 得 ズ
︒ 蓋 シ此 法 文 タ ル羅 馬 法 ニ 基 キ又 羅 馬 法 ハコ ン ス タ ン帝 ガ 仁 慈 心 ト当 時 羅 馬 ノ風 俗 敗 頽 ノ結 果 ト シ テ 私生 子 ノ 夥 多 ナル 弊 ヲ 救 ヒ且 父 母 ヲ シテ 可 成 正 当 ノ婚 姻 ヲ 為 サシ メ ン ト スル ノ 政 策 ト ニ淵 源 セ リ 而シ テ 今 ヤ 民 法ハ 直 ニ 此 政策 ヲ 採 テ 以 テ我 国 俗 ヲ 変更 セ ン ト セリ
︑ 豈 国 情 ニ﹇ セ リ 是 豈国 情 ニ
﹈ 適シ 時 弊 ニ 切 ナル モ ノ ノ 謂 フベ ケ ン ヤ
﹇切 ナ ル モ ノト 謂 フ ヘ ケ ンヤ
﹈﹂ 右
の 延 期 派の 準 正 規 定創 設 に 対 す る批 判 は
︑ 準正 規 定 に より 非 嫡 出 子 に嫡 出 子 の 身分 を 取 得 させ る こ と は
︑ 家 督 相 続 制 度︵ 旧 民 法 財産 取 得 編 二八 七 条 お よ び同 二 九 四 条参 照
︶ に 反す る と い う もの で あ る
︒旧 民 法 財 産 取 得 編 二 九 五条 一 項 に よ れば
︑ 戸 主 たる 被 相 続 人 と 親 等 の 最 も 近 い 卑 属 親 の う ち
︵同 条 一 項 第 一
︶︑ 男 子 が 優 先 的 に 家 督 相 続人 と な り︵ 同 条 一 項第 二
︶︑ 男 子が 複 数 人 いる 場 合 は
︑ 先に 生 ま れ た男 子 が 家 督相 続 人 と な る︵ 同 条 一 項 第 三 本文
︶︒ そ して
︑ 嫡 出 子 と 非 嫡 出 子︵ 庶 子 ま た は 私 生 子
︶が い る と き は
︑ 嫡 出 子 で あ る 男 子 が
︑ 非 嫡出 子 で あ る男 子 を 排 除 して 家 督 相 続 人 と な る
︵ 同 条 一 項 第 三 但 書︶
︒ ま た
︑ 戸 主 た る 被 相 続 人 と 親 等 の 最 も 近い 卑 属 親 の うち
︑ 男 子 がお ら ず 女 子の み が 複 数 人い る 場 合 も︑ 先 に 生 ま れた 女 子 が
︑優 先 的 に 家督 相 続 人 と なり
︵ 同 条 一項 第 四 本 文
︶︑ 嫡 出 子 で あ る 女 子 と 非 嫡 出 子︵ 庶 子 ま た は 私 生 子
︶で あ る 女 子 と で は
︑ 嫡 出 子 が 非 嫡出 子 を 排 して 家 督 相 続人 と な る
︵ 同 条 一 項 第 四 但 書
︶︒ 同 意 見 は
︑ 婚 姻 準 正 ま た は 認 知 準 正 に よ っ て 非 嫡 出 子が 嫡 出 子 と なる と
︵ 旧 民法 人 事 編 一〇 三 条
︶ 結 果的 に
︑ 先 に生 ま れ た 非嫡 出 子 が 前 に存 在 し て いた 嫡 出 子 を 準正 に よ り 排除 し て 家 督 相続 人 と な る と こ ろ
︵ 旧 民 法 財 産 取 得 編 二 九 五 条 一 項 第 三 お よ び 第 四
︶︑ こ れ は 嫡 出 子 が優 先 的 に 戸主 と な る とい う 家 督 相 続 制 度 に 反 し
︑﹁ 伝 統 的 家 制﹂ を 無 視 す る も の で あ る と し て
︑ 旧 民 法 松山 大 学法 学 部 松大 G P資 料
︵二
︶
九
人事 編 一
〇 三 条か ら 一
〇 五条 の 準 正 規 定創 設 を 批 判す る
︒ 延 期派 は
︑ 非 嫡 出子 が 嫡 出 子に 優 先 す るよ う な 相 続 制度 は
︑ 個 人 主義 を 基 礎 とす る ヨ ー ロ ッ パ の そ れ で あ っ て
︑﹁ 伝 統 的 家 制
﹂ を 重 ん じ る 日 本 の そ れ と 合 致 し な い とい う の で ある
︒ これ に 対 し て断 行 派 は
︑ど の よ う な 反論 を し た ので あ ろ う か
︒星 野 博 士 は︑ 復 刻 増 補版 に は 収 録 され て い な い﹁ 法 治 協 会 々員 某 執 筆 の弁 妄 書
︵ 法 治 協 会 起 稿
︶﹂ の 該 当 部 分 を 紹 介 し て い る︵︶
︒ 星 野 博 士 が 引 用 し て い る 箇 所 から み て
︑ それ は
︑ 明 治二 五
︵ 一 八 九二
︶ 年 五 月一 二 日 発 行 の﹁ 弁 妄
﹂ とい う タ イ トル の 冊 子 体
︵本 文 末 尾 に﹁ 未 完
﹂ と の表 記 が あ る︶ で あ る と 考え ら れ る︵︶
︒筆 者 が 参 照し た 冊 子 体 は︑ 東 京 大 学大 学 院 法 学 政治 学 研 究 科 附 属 近 代 日 本 法 政 史 料 セ ン タ ー 原 資 料 部 所 蔵 の マ イ ク ロ フ ィ ル ム 版 で あ る︵ マ イ ク ロ フ ィ ル ム 版 の 原 資 料 は
︑筑 波 大 学 附 属図 書 館 が 所蔵 し て い る︶
︵
︒︶
以 下
︑星 野 博 士 が 引用 し て い る﹁ 弁 妄
﹂に お け る 断行 派 の 反 論︵ 冊 子体 一 四 頁 か ら一 五 頁 ま で
︶ を 掲 載 す る こ と に し た い
︒た だ し︑ 星 野 博 士 の 引 用 と 冊 子 体
﹁ 弁 妄
﹂︵ 原 典
︶ を 対 照し た 結 果 判明 し た 不 一 致が み と め られ る 箇 所 は︑ ゴ チ ッ ク で表 記 し
︑ それ に 続 い て
﹇
﹈ 内 で
︵や は り ゴ チ ック で
︶ 原 典の 表 記 を 指摘 す る こ と にし た い
︒ 原典 は
︑ 漢 字と 平 仮 名 で 表記 さ れ て おり
︑ 句 点 も 濁点 も な い が︑ 一 部 に 読 点が 付 さ れ てい る
︵ 原 典で は 以 下 の 引 用 部 分 に 読 点 は な い
︶︒ 下 記 の 引 用 部 分 に 付 さ れ て い る 濁 点 と句 読 点 は
︑星 野 博 士 が 付し た も の であ る
︒
﹁彼 等 の 此 言
︵先 に 紹 介 した
﹁ 法 典 実 施 延 期 意 見
﹂ の 該 当 部 分 の こ と
︱筆 者 注︶ あ る は 庶 子 の 定 解 を 得 ざ る に 因る の み
︑ 法 文の 所 謂 庶 子と は 従 前 の如 く 特 に 妾 腹の 子 を 指 すに あ ら ず
︑ 即ち 正 式 の 婚姻 に 基
﹇ 原﹈ つ か ず し て生 め る 子 は汎 く 之 を 庶 子と 称 す る も の と す
︵ 其 定 ま り た る 父 あ る こ と は 勿 論 な り
﹇ 父 あ る は 勿 論 た り﹈
︒ 父 の 知れ ざ る 子 を﹇ 知れ さ る 子 を は﹈ 私生 子 と 言 ふ﹇ 云ふ
﹈人 事 編 九十 六 条﹇ 第 九十 六 条
﹈︶
︒茲 に 一 男 子 あり
︑
松山 大 学論 集 第二 十 五巻
第四 号
一〇
相当 の 手 続 を 以て 妻 を 娶 りた る も 適 法 に婚 姻 の 儀 式を 行 は ず して 生 め る 子 は庶 子 た り
﹇生 め る 子 は法 律 上 庶 子 たり
﹈︒ 又 私 通に て 生 れ たる 子
﹇ 出 て たる 子
﹈︑ 並び に 妾 を 置 きて 生 め る 子も 庶 子 た り 故に 爾 後 其 父母 が 適 法 に 婚姻 を な す にお い て は 其 の庶 子 た る 者を
﹇ 為す に 於 て は曩 の 庶 子 たる 者 を
﹈嫡 出 子 とな す べ き こ と実 に 当 然﹇ 為 すへ き こ と 事実 当 然
﹈ なる に あ ら ず や︒ 唯 父 母 が公 然 婚 姻 をな さ ず し て
﹇為 さ す し て﹈ 生 め る の 故を 以 て
︑ 同 胎 前 出 の 子 を﹇ 同 胞 前 出の 子 を は
﹈如 何 に す る も嫡 出 子 と なす こ と
﹇ 為す こ と
﹈ 能 はず と す る は寔 に 是 れ 不 条 理 な る の みな ら ず 旧 慣 に違 ふ も の なり
﹇ 全 く 旧慣 に 違 ふ も のな り
﹈︒ 初 め妾 と し た る﹇ 初 め 妾 とし て 幸 し た る﹈ 婦 を 本 妻 とな し た る に 拘 ら ず﹇ 為 し た る 拘 は ら す
﹈︑ 後 出 の 子 の み
﹇子 を の み
﹈嫡 出 と 呼 び
︑同 胎
﹇ 同 胞
﹈ 前 出 の 子 を ば 必ず
﹇ 必 ら す﹈ 庶 子 と 呼び た る 実 例 は余 の
﹇ 余 輩の
﹈ 曾 て 聞か ざ る 所 な り︒ 蓋 し 彼 等は 異 母 の 庶 子 を 嫡 出 と 做し
︑ 以 て 真 の嫡 出 子 を 凌が し む る は家 を 重 ん ず る国 風 に 適 はず と 思 推
﹇ 思意
﹈ し た るや 疑 な し
﹇疑 ひ な し
﹈ と雖 も
︑ 斯 の如 き は 我 民 法﹇ 我 か 民 法﹈ の 固 よ り 行は ざ る
﹇ 許さ さ る
﹈ 所な り
︒ 家 督 相続 に 関 し て男 女 長 幼 嫡 庶の 分 別 を 正し た る こ と財 産 取 得 編 第二 百 九 十 五条 に 就 き 見 るべ し
﹂ 断
行 派 は︑ 準 正 規 定を 創 設 し なけ れ ば
︑ 婚 姻関 係 に な い男 女 と の 間に 生 ま れ た 子は た と え その 後 父 母 が婚 姻 し て も 嫡出 子 と は な りえ ず 社 会 的不 利 益 を 負う が
︑ そ の 父母 の 婚 姻 後に そ の 父 母と の 間 に 生 まれ た 子 は 嫡出 子 と な る こと か ら
︑ 父母 の 婚 姻 前 に出 生 し た かそ の 後 に 出生 し た か で
︑社 会 的 不 利益 を 負 う 子 とそ う で な い子 が 生 じ て しま い
︑ 不 公平 な 状 態 が発 生 す る と 主張 し て い る︒ ま た
︑ 延期 派 が 批 判 する
︑ 嫡 出 子よ り も 先 に 生ま れ た 非 嫡出 子 が 準 正 によ っ て 嫡 出子 と な り
︑家 督 相 続 に つい て 嫡 出 子に 優 先 す る こと
︵ 旧 民 法財 産 取 得 編二 九 五 条 一 項第 三 お よ び第 四
︶ は
﹁ 伝統 的 家 制
﹂を 破 壊 す る とい う 点 に つい て は
︑ 準正 に よ り 非 嫡出 子 が 嫡 出子 と な る の はそ の 子 が
﹁婚 姻 関 係 にあ る 男 女 と の間 に 生 ま れた 子
﹂ と い える か ら
︑ つま り
︑ そ の子 は 嫡 出 子 であ る か 松山 大 学法 学 部 松大 G P資 料
︵二
︶
一一
らで あ り
︑ 準 正規 定 創 設 によ り
﹁ 伝 統 的家 制
﹂ を 害す る こ と はな い と し て いる
︒ ま た
︑婚 姻 関 係 にな い 男 女 と の間 に 生 ま れ た子 に つ い て︑ 父 母 が 婚姻 し な く て も嫡 出 子 の 身分 を 取 得 する の で あ れ ば︑ 嫡 出 子 が戸 主 と な る とい う 家 督 相続 制 度 に 反 し︑
﹁ 伝 統 的家 制
﹂を 破 る こと に な り か ねな い が
︑ 旧民 法 人 事 編一
〇 三 条 は 父母 の 婚 姻 を準 正 の 一 要件 と し て おり
︑ 婚 姻 関 係に な い 男 女と の 間 に 生ま れ た 子 を 嫡出 子 と は しな い の で あ るか ら
︑ 旧 民 法 財 産 取 得 編二 九 五 条 一項 第 三 お よび 第 四 の 但 書ど お り
︑ その 非 嫡 出 子は 嫡 出 子 に 優先 し て 家 督相 続 人 に な る こ と は な いと す る
︒ し たが っ て
︑ 断行 派 は
︑ 延期 派 の 批 判 は的 外 れ で ある と す る の であ る︵︶
︒ ま た
︑ 断 行 派の 水 町 袈 裟六 か ら も 延 期派 の 批 判 に対 す る 反 論が な さ れ て いる
︒ 復 刻 増補 版 二 五 一頁 下 段 か ら はじ ま る
﹁ 法 典実 施 延 期 意見 書 ニ 対 スル 弁 駁
﹂ に おけ る 該 当 部分 を 紹 介 した い︵︶
︒ な お
︑原 典 は
︑ 漢 字と 片 仮 名 で表 記 さ れ て おり
︑ 一 部 に句 読 点 と 濁点 が 付 さ れ てい る
︵ こ れか ら 紹 介 す る該 当 部 分 には 句 読 点 およ び 濁 点 は ない
︶
︵
︒︶
復 刻 増補 版 に 収 録 され て い る 水町 論 文 と 原 典 と の 間 に 不 一 致 が あ る 箇 所 に つ い て は
︑ ゴ チ ッ ク で 表 記 し
︑﹇
﹈ 内 に 原典 の 表 記 を示 す︵︶
︒
﹁延 期 論 者 ハ何 ソ 外 国 ノ 古ニ 詳 ニ シ テ我 邦 ノ 今 日 ニ 昧 キ ヤ 夫 レ 庶 子 カ 父 母 ノ 婚 姻 ニ 依 リ テ 嫡 出 ノ 子 ト 為 ル ハ 今 日既 定 ノ 慣 例ニ 非 ス ヤ 之 ヲ説 明 ス ル ニハ 必 ス シ モ 個人 主 義 ヲ 借リ 羅 馬 ノ 古ニ 遡 ル ヲ 須 タサ ル ナ リ 且母 既 ニ 正 式 ノ結 婚 ヲ 為 シタ ル 時 ハ
﹇結 婚 ヲ 為 シ タル ト キ ハ
﹈其 結 婚 前 ノ 子ヲ 嫡 出 子 ト為 ス モ 何 ノ背 理 カ 之 レ アラ ム 母 既 ニ同 シ ク 父 又 タ同 シ 而 テ 母ハ 正 式 ノ 婚 姻ニ 依 リ テ 嫡母 ト ナ ラ ハ其 子 何 ソ 庶 子タ ラ サ ル 可カ ラ サ ル 理ア ラ ム ヤ 今 此規 定 ノ 条 理 ニ反 セ ス 且 我邦 今 日 既 ニ定 マ レ ル 慣 習ナ ル コ ト 右ノ 如 シ 何 ソ必 ス シ モ 個 人主 義 或 ハ 羅馬 古 法 ノ 政 策説 ヲ 借 テ 之ヲ 説 明 ス ル ヲ要 セ ン 又 タ何 ソ 此 ヲ 彼ニ 附 会 シ テ 此ヲ 非 難 ス ルノ 理 ア ラ ムヤ
﹂
︵
︶
松山 大 学論 集 第二 十 五巻
第四 号
一二
水 町 も
︑ 非 嫡出 子 が 父 母の 婚 姻 を 一 要件 と し て 嫡出 子 の 身 分を 取 得 し う るこ と は 日 本の 慣 習 に よる も の で あ るこ と を 強 調 し︑ し た が って
︑ 準 正 規定 を 創 設 す るこ と は
﹁ 伝統 的 家 制
﹂を 破 壊 す る もの で は な いと 反 論 し て いる
︵ 実 質 論︶
︒ ま た
︑ 非嫡 出 子 で あ っ て も
︑ そ の 父 母 が 婚 姻 す れ ば
︑ そ の 子 は
﹁ 婚 姻 関 係 に あ る 男 女 の 間 に 生ま れ た 子
﹂ とな り う る ので あ る か ら
︑準 正 規 定 を認 め て か まわ な い と 説 いて い る
︵ 形式 論
︶︒ こ う し て み ると
︑﹁ 旧 民法 人 事 編 一
〇三 条 か ら 一
〇 五 条 ま で の 準 正 規 定 を 創 設 す る こ と は
︑ 嫡 出 子 よ り も 先 に 生ま れ た 非 嫡出 子 が 嫡 出 子に 優 先 し て家 督 相 続 人と な り︵ 旧 民 法財 産 取 得 編 二九 五 条 一 項第 三 お よ び第 四
︶︑
﹃ 伝統 的 家 制
﹄を 破 壊 す る
﹂と い う 延 期派 の 核 心 と な る 主 張 は
︑子 の 父 母 が 婚 姻 し て い な い 場 合 に 妥 当 す る の で あっ て
︑ 準 正は 父 母 の 婚 姻を 一 要 件 とす る こ と か ら︑ 準 正 規 定創 設 に 対 する 批 判 と は なり え な い もの と 考 え ら れる
︒ し か し︑ 後 述 す る よう に
︑﹁ 非 嫡 出 子 は
︑嫡 出 子 と の 間 の 法 律 関 係 に つ い て
︑嫡 出 子 に 劣 後 し な け れ ば なら な い
﹂ と いう 延 期 派 の主 張 こ そ が
︑法 典 調 査 会 に お け る 旧 民 法 の 規 定 の 修 正 作 業
︵ 新 規 定 の 起 草 作 業
︶ に お いて
︑ 準 正 以外 の 規 定 の 修正 や 起 草 に影 響 を 及 ぼす こ と に な るの で あ る
︒ 明治
三 一 年 民法 に お け る 準正 規 定 民 法典 論 争 に おけ る 延 期 派の 勝 利 を 受 けて 旧 民 法 を修 正 し て 新 民法 を 起 草 した 法 典 調 査会 に よ っ て
︑旧 民 法 人 事編 一
〇 三 条 から 一
〇 五 条ま で の 準 正 規定 は
︑ ど のよ う な 修 正を 受 け た の であ ろ う か
︒明 治 二 九︵ 一 八九 六
︶ 年 一 月 二 七 日 に 開 催 さ れ た 第 一 五 七 回 法 典 調 査 会 に お い て
︑ 準 正 規 定 に 関 す る 甲 号 議 案 八 三 六 条 が 審 議 さ れ た
︒ 甲号 議 案 八 三六 条 は
︑ 次 のよ う な 規 定で あ る
︒
﹁
①父 母 ノ 知 レ タル 私 生 子 ハ其 父 母 ノ 婚姻 ニ 因 リ テ 嫡出 子 タ ル 身分 ヲ 取 得 ス 松山 大 学法 学 部 松大 G P資 料
︵二
︶
一三
② 前 項 ノ 規 定ハ 子 カ 既 ニ死 亡 シ タ ル 場合 ニ 之 ヲ 準用 ス
③ 婚 姻 中 父 母カ 認 知 シ タル 私 生 子 ハ其 認 知 ノ 時 ヨリ 嫡 出 子 タル 身 分 ヲ 取 得ス
﹂
︵
︶
甲 号 議 案 八 三六 条 は
︑ 実質 的 に 旧 民 法人 事 編 一
〇三 条 か ら 一〇 五 条 ま で と同 じ で あ り︑ 現 に こ の甲 号 議 案 八 三六 条 の 審 議 の冒 頭 富 井 政章 起 草 委 員 は︑
﹁ 本 条 ハ 人 事 編 第 百 三 条 カ ラ 第 百 五 条 迄 ヲ 合 セ タ ノ デ ア リ マ ス
﹂ と 述 べて い る︵︶
︒ また
︑ 同 条 の審 議 に あ た って
︑ 村 田 保や 土 方 寧 とい っ た 延 期 派の 論 客 で あっ た 委 員 から も 同 条 の よう な 準 正 規 定創 設 に 対 する 反 対 意 見は
︑ 提 出 さ れな か っ た
︒同 条 は
︑ 形式 的 な 文 言 上の 修 正 を 経て
︑
﹁
① 庶 子 ハ 之ヲ 認 知 シ タル 父 母 ノ 婚姻 ニ 因 リ テ 嫡出 子 タ ル 身分 ヲ 取 得 ス
② 婚 姻 中 父母 カ 認 知 シタ ル 私 生 子 ハ其 認 知 ノ 時ヨ リ 嫡 出 子 タル 身 分 ヲ 取得 ス
③ 前 二 項 ノ規 定 ハ 子 カ既 ニ 死 亡 シ タル 場 合 ニ 之ヲ 準 用 ス
﹂ と
な り︵︶
︑さ ら な る 形式 的 修 正 を受 け て
︑明 治 三 一年 民 法 八 三六 条 と な っ た︒ 明治 三 一 年 民法 施 行 時 の同 条 は
︑ 以下 の よ う な 規定 で あ る
︒
﹁① 庶 子 ハ 其父 母 ノ 婚 姻ニ 因 リ テ 嫡 出子 タ ル 身 分ヲ 取 得 ス
② 婚 姻 中 父母 カ 認 知 シ タル 私 生 子 ハ其 認 知 ノ 時ヨ リ 嫡 出 子 タル 身 分 ヲ 取得 ス
③ 前 二 項 ノ規 定 ハ 子 カ既 ニ 死 亡 シ タル 場 合 ニ 之ヲ 準 用 ス
﹂
︵
︶
松山 大 学論 集 第二 十 五巻
第四 号
一四
民 法 典 論 争 にお い て 延 期派 は
︑ 準 正 規定 を 創 設 する と
︑ 非 嫡出 子 が 後 で 生ま れ た 嫡 出子 を 排 除 して 家 督 相 続 人︵ 戸 主
︶ と なり う る こ とに つ い て
︵旧 民 法 財 産 取得 編 二 九 五条 一 項 第 三お よ び 第 四
︶
︵
︑︶
﹁ 伝 統 的 家制
﹂ を 破 壊 する と し て
︑ その 創 設 に 反対 し た
︒ し かし
︑ 準 正 が認 め ら れ る子 は 嫡 出 子 であ り
︑ そ の子 が 後 で 生ま れ た 嫡 出 子に 優 先 し て家 督 相 続 人 にな っ た と し て も
︑﹁ 伝 統 的 家 制﹂ を 害 す る こ と に は な ら な い
︒ し た が っ て
︑ 法 典 調 査 会は
︑ 延 期 派の 主 張 を 勘案 す る こ と なく
︑ 旧 民 法人 事 編 一
〇 三条 か ら 一
〇五 条 ま で の準 正 規 定 の 趣旨
︑ つ ま り︑ 私 通 を 止 めさ せ て
﹁ 法律 婚
﹂ を 促 進し
︑ 父 母 の婚 姻 前 に 生ま れ た 子 と 婚姻 後 に 生 まれ た 子 の 双方 を 嫡 出 子 とし
︑ 前 者 に対 す る 社 会 的不 利 益 を 除去 し
︑ も っ て両 者 間 の 公平 を 図 る こと を 妥 当 と して︵︶
︑ 旧 民 法 と実 質 的 に 同様 の 準 正 規 定を 創 設 し たも の と 考 え ら れ る
︒民 法 修 正 案 理 由 書 も 明 治 三 一 年 民 法 八 三 六 条 に つ い て
︑﹁ 本 条 ハ 既成 法 典 人 事編 第 百 三 条 乃至 第 百 五 条ノ 精 神 ヲ 採用 シ タ ル モ ノナ リ
﹂ と 述べ て い る︵︶
︒明 治 三 一 年 民法 八 三 六 条は
︑ 実 質 的 に現 行 民 法 七八 九 条 に 引 き継 が れ て いる
︒ た だ し
︑ 非 嫡出 子 が 旧 民法 人 事 編 一〇 三 条 に よ り嫡 出 子 と なり
︑ 後 に 生ま れ た 嫡 出 子を 排 除 し て家 督 相 続 人 にな る こ と
︵旧 民 法 財 産 取得 編 二 九 五条 一 項 第 三お よ び 第 四
︶に つ い て は︑ 準 正 前 に すで に 出 生 して い る 嫡 出 子の 家 督 相 続に 対 す る 期待 を 害 す る とし て
︑ 旧 民法 財 産 取 得 編二 九 五 条 一項 第 三 お よび 第 四 は
︑ 法典 調 査 会 に お い て 修 正 され た
︒ 明 治三 一 年 民 法九 七
〇 条 二 項は
︑ 旧 民 法財 産 取 得 編 二九 五 条 に はな い 内 容 を備 え て い る
︒ 明 治 三 一 年民 法 九 七
〇 条二 項 は
︑﹁ 八百 三 十 六 条ノ 規 定 ニ 依 リ 又 ハ 養 子 縁 組 ニ 因 リ テ 嫡 出 子 タ ル 身 分 ヲ 取 得 シ タル 者 ハ 家 督相 続 ニ 付 テハ 其 嫡 出 子 タル 身 分 ヲ 取得 シ タ ル 時 ニ生 マ レ タ ルモ ノ ト 看 做ス
﹂ と 規 定 して い る
︒ 梅 謙 次 郎 起 草 委員 は
︑ 明 治二 九︵ 一八 九 六
︶年 六 月 一〇 日 に 開 催 され た 第 一 七七 回 法 典 調 査会 で 説 明 に立 ち
︑﹁ 庶 子 ガ 嫡 出 子ト ナ ル 場 合 此場 合 ニ 置 キマ シ テ ハ 其 者ガ 嫡 出 子 ニナ ル 前 ニ 既ニ 純 然 タ ル 嫡出 子 ガ ア レバ 年 齢 ハ 下デ ア ツ テ モ 其ガ 兄 サ ン ノ ヤウ ニ 相 続 ノ上 カ ラ ハ 看ラ レ ル ト 云 フノ ガ 穏 当 デア ツ テ 又 従来 ノ 慣 習 ニ モ適 ウ コ ト ノヤ 松山 大 学法 学 部 松大 G P資 料
︵二
︶
一五
ウニ 見 ヘ マ ス
﹂と 述 べ た︵︶
︒ま た
︑ 著 書
﹃民 法 要 義
﹄の 中 で
︑ 明治 三 一 年 民 法八 三 六 条 一項 お よ び 九七
〇 条 一 項 三号 な ら び に 五号 に よ り
︑準 正 子 が 嫡出 子 の 身 分 を取 得 し た 時点 で 出 生 して い た 自 分 より 後 に 生 まれ た 嫡 出 子 を排 除 し て 家督 相 続 人 と なる こ と に つい て
︑﹁ 啻 ニ 慣 習 ニ 反 ス ル ノ ミ ナ ラ ス 理 論 ニ 於 テ モ 嫡 出 子 タ ル 身 分 ハ 年 少 者却 テ 先 ニ 之ヲ 取 得 シ タル カ 故 ニ 後 ニ生 シ タ ル 事実 ニ 由 リ 其既 得 権 ヲ 奪 ハル ヘ キ 理 ナシ
﹂ と 説 明し て い る︵︶
︒ 梅起 草 委 員 の 説明 か ら す ると
︑ 明 治 三 一年 民 法 九 七〇 条 二 項 は︑ 先 に 生 ま れた 準 正 子 は︑ 後 に 生 まれ た が 準 正 の時 点 で は 出 生し て い た 嫡出 子 の 家 督相 続 に 対 す る期 待 を 害 して は な ら ない と い う 趣 旨で あ る と 考え ら れ る
︒ ただ し
︑ 注 意す べ き は
︑ 準正 子 が 右 の嫡 出 子 に 家督 相 続 に お いて 劣 後 す るの は
﹁ 伝 統的 家 制
﹂ を 破壊 す る か ら では 決 し て なく
︑ あ く まで も 右 の 嫡 出子 の 家 督 相続 に 対 す る期 待 を 保 護 する た め で ある と い う こ とで あ る
︒ な お
︑ 民 法 修 正案 理 由 書 も︑ 明 治 三 一年 民 法 九 七
〇条 二 項 に つき
︑ 梅 起 草委 員 が 述 べ てい る 趣 旨 と同 様 の そ れ を 説 い て い る︵︶
︒
﹁ 民 法 典 論争 の 余 波
﹂ とし て の 明 治三 一 年 民 法に お け る 非 嫡出 子 相 続 分不 平 等 規 定の 創 設 旧 民 法 人 事 編一
〇 三 条 から 一
〇 五 条に 対 す る 延 期派 に よ る
﹁準 正 規 定 を創 設 す る と
︑嫡 出 子 よ りも 先 に 生 ま れた 非 嫡 出 子が 嫡 出 子 に 優先 し て 家 督相 続 人 と なり
︵ 旧 民 法 財産 取 得 編 二九 五 条 一 項 第三 お よ び 第四
︶︑
﹃ 伝 統 的家 制
﹄ を 破壊 す る
﹂ とい う 批 判 が 論理 的 妥 当 性を 欠 き
︑ 法 典調 査 会 の 旧民 法 規 定 の修 正 作 業 に おい て 考 慮 さ れ な か っ た こと は
︑ 前 述の と お り であ り
︑ 旧 民 法人 事 編 一
〇三 条 か ら 一
〇五 条 は 実 質的 に
︑ 明 治三 一 年 民 法 八 三 六 条 に 引き 継 が れ た
︒し か し︑ 右 の 批 判 か ら 導 か れ る
﹁﹃ 伝 統 的 家 制
﹄ を 維 持 す る た め
︑ 非 嫡 出 子 は
︑ 嫡 出 子と の 法 律 関係 に つ い て︑ 嫡 出 子 に 劣後 す る
﹂ とい う 考 え 方 は︑ 明 治 三 一年 民 法 に おけ る 準 正 規 定以 外 の 規 定 の 起 草 に 影 響を 与 え た ので あ る
︒ とこ ろ で
︑ 明 治三 一 年 民 法に お い て は
︑家 族
︵ 明 治三 一 年 民 法七 三 二 条
︑ 同
松山 大 学論 集 第二 十 五巻
第四 号
一六
七二 五 条
︶ の 死亡 に よ る 相続 た る 遺 産 相続
︵ 同 九 九二 条
︶ に つい て は
︑ 被 相続 人 の 子 は相 続 人 と なる
︵ 同 九 九 四条 一 号
︶︒ 被相 続 人 の 嫡出 子 も 非 嫡 出子 も
︑ 同 順位 の 相 続 人で あ る
︵ 同 条二 号
︶︒ し かし
︑ 嫡 出 子と 同 順 位 で ある 非 嫡 出 子は
︑ 同 じ 被 相続 人 の 子 であ る に も かか わ ら ず
︑ その 法 定 相 続分 は
︑ 嫡 出子 の 二 分 の 一と さ れ て い る︵ 同 一
〇
〇四 条 但 書
︶︒ 一
〇
〇 四 条の
︵ 明 治 三一 年 民 法 施 行時 の
︶ 条 文を 次 に 掲 げ る︒
﹁ 同 順 位 ノ相 続 人 数 人ア ル ト キ ハ 其各 自 ノ 相 続 分 ハ 相 均 シ キ モ ノ ト ス 但 直 系 卑 属 数 人 ア ル ト キ ハ 庶 子 及 ヒ 私 生子 ノ 相 続 分ハ 嫡 出 子 ノ 相続 分 ノ 二 分ノ 一 ト ス
﹂ こ
の 規 定 が明 治 三 一 年 民法 に 置 か れ た の は
︑ ど の よ う な 理 由 に よ る も の で あ ろ う か
︒ 明 治 二 九
︵ 一 八 九 六
︶ 年九 月 一 六 日 に開 催 さ れ た第 一 八 七 回法 典 調 査 会 にお い て
︑ 明治 三 一 年 民 法一
〇
〇 四 条の 前 身 で ある 甲 号 議 案 一〇
〇 七 条 が審 議 さ れ た
︒甲 号 議 案 一〇
〇 七 条 は
︑以 下 の よ うな 規 定 で ある
︒
﹁ 同 親 等 ノ 直系 卑 属 数 人ア ル ト キ ハ其 各 自 ノ 相 続 分 ハ 相 均 シ キ モ ノ ト ス 但 庶 子 及 ヒ 私 生 子 ノ 相 続 分 ハ 嫡 出 子 ノ相 続 分 ノ 二 分ノ 一 ト ス
﹂
︵
︶
穂 積 陳 重 起 草委 員 は
︑ 甲号 議 案 一
〇
〇七 条 の 審 議に 先 行 す る甲 号 議 案 九 九四 条 の 審 議︵ 明 治 二九
︹ 一八 九 六
︺ 年九 月 一 一 日 開催 の 第 一 八六 回 法 典 調 査 会
︶ に お い て︵︶
︑﹁ 本 案 ニ 於 キ マ シ テ ハ 唯
﹃ 親 等 ノ 異 ナ リ タ ル 者 ノ 間 ニ 在 リテ ハ 其 近 キ者 ヲ 先 ニ ス
﹄ト 言 ツ テ 別ニ 嫡 出 子 ノ区 別 ヲ 為 シ マセ ヌ 是 ハ 嫡出 子 モ 庶 子 モ私 生 子 モ 同ジ 相 続 権 ガ アル ト 云 フ 意味 デ ハ ア リマ セ ヌ 次 ニ 提出 致 シ マ スル 案 ニ 依 テ 相続 分 ハ 異 ナル 併 ナ ガ ラ苟 シ ク モ 子 ト云 フ 者 ガ 松山 大 学法 学 部 松大 G P資 料
︵二
︶
一七