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Ⅰ 課題分析 1 課題設定の理由 (1)置籍校の概要

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Academic year: 2021

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(1)

自校の教育課題の可視化と課題解決に向けた協働的な取組に基づく学校改善 -信頼を礎に生徒と教師が共に文化を築く学校をめざして-

高度学校教育実践専攻 実習責任教員 久 我 直 人 教職実践力高度化コース 実習指導教員 大 林 正 史 煙 草 香 織

キーワード:協働,組織化,学校改善,信頼関係,実践研究

Ⅰ 課題分析

1 課題設定の理由

(1)置籍校の概要

生徒数 813 名、学級数 26 学級(各学年 8、特 別支援 2)、教職員数 59 名の大規模校である。

生徒は落ち着いた学習・生活環境のもと、行事 や部活動にも熱心に取り組んでいる。保護者や 地域住民の学校に対する期待も大きい。

(2)置籍校の課題把握

調査資料の分析から、「安定した学校生活の中 で、埋もれている生徒の存在」が浮き彫りにな り、生徒の課題と教職員の課題が表裏一体であ ることも読み取れた(表 1)。

表 1 置籍校の課題の整理

(3)実践研究の目的と課題

生徒の内面的な教育課題と教師の指導の質的 課題、組織上の課題という 3 つの課題を一つの こととし、生徒が抱える教育課題解決に向けた 組織的取組(協働)を通して、生徒の変容と教 師の指導の質的改善、教職員の組織化を同時に

実現することを本実践研究の目的とした。また、

実践研究の目的達成のための課題として次の 4 つを設定した。

2 先行研究

①生徒の意識と行動の構造に適合した教育改善 プログラムの開発に関する研究(久我 2014)

②勇気づけに関する研究(岩井 2013)

③自己調整学習に関する研究(伊藤 2012)

④目的意識醸成に関する研究(有澤 2015 他)

⑤学校の組織特性に関する研究(佐古 2011)

⑥組織的省察に基づく教育改善プログラムに関 する研究(久我 2013)

3 実践研究の枠組み

(1)置籍校の教育課題に適合した教育改善 プログラムの策定

置籍校の生徒が抱える教育課題の解決のため に、「生徒の意識と行動の構造に適合した教育改 善プログラム」(久我 2014)を参考に、①自分 のよさを生かした夢づくり、②自分を高める学 びづくり、③人のことを大切にした生活づくり、

④全員参加の自治的な活動づくり、の 4 つを具 体的な手立ての柱とした。また、これらの基底 となる「自分への信頼」を支える手立てとして、

生 徒 が 抱 え る教育課題

適応できない生徒の存在 満たされない承認欲求 問題解決への消極的な姿勢 自分の弱さを見せられない集団 目的意識の乏しさ

教 職 員 の 教 育 活 動 に 関 する課題

教師主導の統制的な指導 教師間ギャップ

教 職 員 の 組 織上の課題

個業化

脆弱な信頼関係

①置籍校の教育課題の可視化

②組織化と教育改善を実現する教育改善プロ グラムの構築

③構築したプログラムの展開による組織化と 教育改善に向けた実践

④プログラムの効果性の検証

(2)

⑤チャレンジを促す信頼づくり(「ボイスシャワ ー、ポジティブフォーカス(久我 2014)」)によ る、勇気づけの取組を設定した(図 1)。

図 1 教育課題解決に向けた手立て

(2)教育改善を実現するための教師の組織 化を促す学校組織マネジメントの枠組み 置籍校の教育課題解決のために、「教師の主 体的統合モデル」(久我 2011)を参考に、実践 研究の基本的な枠組みを作成した(図 2)。

図 2 実践研究の基本的枠組み

Ⅱ 課題解決

1 実践研究の実施

(1)Research 期

2014 年 1 月の校内研修において、本学の久我 教授の講演(「潤いのある学校づくり」)と、筆 者のプレゼンテーションをもとに、置籍校の学 校アセスメントデータの共有、教育課題の焦点 化と効果のある指導についての話し合いをワー

クショップ型研修として行った。こうして、「生 徒が目標をもつこと」「全員の生徒が参加し、本 気を引き出すことのできる活動、支援の在り方」

が、教育課題として可視化、共有された(図 3)。

図 3 ワークショップで出た意見の集約

(2)Plan 期

可視化された教育課題の解決をめざし、教職 員の組織力と協働の意識を高めるための取組を 次のように設計し、共有した。①課題解決のた めのプロジェクト設計、②目的意識醸成を促進 するサポートツール「未来開拓シート」の導入、

③組織的な意思形成の促進(管理職・主幹等と の打ち合わせ、合い言葉づくり、教育改善の組 織的展開イメージ⦅図 4⦆の作成、学校経営書 による教育課題の共有、新年度拡大運営委員会)。

共有した取組構想は、年度初めに開かれた各種 会議において、各担当が提案、報告をし、その 場で検討、最終確認を行った。このようにして、

組織的意思決定がなされた。

図 4 教育改善の組織的展開イメージ

(3)

(3)Do 期

1)自分のよさを生かした夢づくり 未来開拓シート

目的意識の醸成を図る方策として、未来開拓 シートを導入した。生徒が自分のよさや将来の 夢、がんばったことについて思いを巡らせ、自 分と向き合う貴重な時間となった(図 5)。

図 5 自分のよさや目標、努力の跡を記入

2)自分を高める学びづくり 学ぶ意義について考える初期指導

「将来の幸せのために共に学ぼう」をテーマ に、なぜ夢や目標をもつことが必要なのか、な ぜ学校で学ぶのか、などについて考えるための 学習オリエンテーションを行った。生徒の感想 から、将来の夢や、それを叶えるための目標を もつこと、目標達成に向けて努力や挑戦をして いくことの大切さを学び、地道に努力をしてい きたいという思いが読み取れた。

3)人のことを大切にした生活づくり 社会で通用するマナーを学ぶ初期指導

生徒指導主事から、学校生活のルールやマナ ーは、社会生活を送るうえでも重要なものであ ること、自分や他の人たちを大切にするために も、まずは人の話をきちんと聞くことを心がけ ることなどが伝えられ

た(図 6)。指導は、2 学期、後期のスタート 時にも、ステージ目標 や生徒の表れをふまえ

た形で行われた。 図 6 初期指導の様子

4)全員参加の自治的な活動づくり

思いを形にするための生徒会ワークショップ 生 徒 会 発 信 で 全

員参加の自治的な活 動を進めていくため に、総務、専門委員

長によるワークショッ 図 7 熱心な話し合い プを 3 月と 9 月の二度にわたって行った(図 7)。

話し合いをもとに、生徒大会ではリーダーがそ れぞれの思いを語り、その後の諸活動につなげ ていた(図 8、9)。

図 8 思いを伝える会長 図 9 身だしなみの呼びかけ

5)チャレンジを促す信頼づくり

「〇〇さんのよいところ見っけ」

保護者参観会において、「〇〇さんのよいとこ ろ見っけ」と題したワークショップを行った。

笑顔の絶えない和やかな雰囲気の中、充実した 時間を過ごしたことで、自分を見てくれている 人がいること、自分に数多くのよさがあること に自信をもち、今後、様々なことに挑戦する中 で、さらに自分

や友達のよさを 見つけたいとい う生徒の声が聞

かれた(図 10)。

図 10 よさを出し合う幸せな時間

6)組織化の促進・活性化のための支援

「すだち通信」の発行

各活動における目標、生徒の表れや成果を共 有し、意思統一を図る手立てとして、教職員向 けに「すだち通信」を発行した。

(4)

「素敵なよつば見付隊」(自主勉強会)の実施 若手教師を中心に、自

主勉強会を実施した。模 擬授業や意見交換の場を 提供することで、指導の

イメージをもち、ゆとり 図 11 模擬授業の様子 をもって生徒に向き合えるよう図った(図 11)。

2 実践研究の総括

(1)生徒の変容

目的意識、被承認感の向上(強い否定層の減 少を含む)が読み取れると同時に、学習、生活、

諸活動に対する自律、クラス効力感の向上も見 られ、課題となっていた「安定の中で埋もれて いる生徒の存在」の減少が推察された(図 12)。

図 12 生徒の変容(生徒アンケート結果より)

(2)教師・組織の変容

教育課程編成や授業 づくりにおけるワーク ショップ型研修、自主勉強会等で意見交換をし、

課題や取組の共有を図ったことで、統制型の指 導から、生徒個々のよさを認め、内面に迫る指 導への転換が見られた。また、教師間の信頼関 係も向上したことが読み取れた(図 13)。

図 13 教師・組織の変容(教職員アンケート結果より)

(3)実践研究の成果

本実践研究の成果を次の 6 点とした。①生徒 相互、生徒から教師への信頼関係の構築。②目 的意識、自律的な学びへの姿勢の向上。③生徒 相互、生徒と教師間の信頼関係構築による諸活 動の活性化。④教師主導の統制的な指導から、

「3 つの視座」(久我 2012)を備えた指導への転 換。⑤授業づくりに対する意識、実践の在り方 の変容。⑥教職員組織における、信頼関係の向 上による協働の促進。これらのことから、生徒 が抱える教育課題を可視化し、教育課題の解決 に向けて、生徒の変容と教師の指導の質的改善、

教職員の組織化を実現するという実践研究の目 的は一定程度達成されたと推察された。

(4)今後の課題と展開の可能性

今後の課題として、次の 2 点が挙げられる。

①学校生活に適応できない生徒への継続的な支 援、配慮。②個々の教師の実践力向上に向けた 取組の模索。

現在、置籍校区において、「A 中学府」を立ち 上げ、小中学校の連携を図っている。本実践研 究をふまえ、子どもたちの内面にアプローチす る取組を小中学校で一貫して実践していくこと が課題解決においても有効であると考える。そ のためにも、本実践研究の枠組み等を精緻化し、

小中学校において汎用可能なものにしていきた いと考えている。

54.2 52.6%

26.1 22.5%

12.9 15.9%

6.7 9.0%

2015.11 2014.11

わたしは、将来の夢や目標を持っている

24.6 22.2%

39.9 38.2%

27.1 28.3%

8.5 11.3%

2015.11 2014.11

わたしは、卒業後の進路を実現するために計画的に学習をしている

50.6 42.2%

38.4 44.3%

9.7 11.5%

2015.11 2014.11

わたしたちのクラスは、行事などの活動に、自分たちの思いや創意工夫 をもとにして取り組んでいる

31.8 21.1%

47.3 48.5%

17.6 25.0%

3.3 5.4%

2015.11 2014.11

わたしたちのクラスは、先生に言われなくても、みんなが学級のルールを 守ることができる

27.4 24.2%

48.0 50.5%

20.7 20.3%

3.9 5.0%

2015.11 2014.11

わたしは、まわりの人(家族、友だち、先生)から認められている

75.0 55.6%

20.5 40.0%

4.5 4.4%

2015.11 2014.11

個々の生徒のがんばりを見つけ、ほめている

62.5 38.6%

37.5

52.3% 9.1%

2015.11 2014.11

私の学校の教師は、学校の教育をよくしていこうとする意識が高い

20.5 12.5%

61.5 50.0%

17.9 37.5%

2015.11 2014.11

学校の重点目標や課題の作成過程に、ほとんど全ての教師が関わって設定してい

よく当てはまる 少し当てはまる あまり当てはまらない まったく当てはまらない

参照

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