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*Department of Chemical Engineering and Materials Sciences, Doshisha University, Kyoto
Telephone: +81-774-65-6626, FAX: +81-774-65-6847, E-mail: ymori@mail.doshisha.ac.jp
** Particle Technology Center, Institute of Chemical and Environmental Process Engineering, Dresden University of Technology, Dresden, Germany
Evaluation of Structure of Aggregated Nanoparticles by Using X-Ray Scattering Method
Yasushige M
ORI*, Ryuma M
IYAMOTO*, Katsumi T
SUCHIYA*, Frank B
ABICK**, Michael S
TINTZ**, Werner S
TEFFEN***
,Hans-Jürgen B
UTT***
(Received October 31, 2014)
Nanoparticles (NPs) are recently attracted due to their unique properties, such as electrical or optical characteristics. However, most of these properties depend on the structure of aggregated NPs as well as the size or size distribution. From the view of this point, many evaluation methods were proposed to know the structure of aggregated NPs. One of their proposal methods is the fractal dimension analysis using the data of the scattered electromagnetic wave from aggregated NPs. In this paper, we examined the fractal dimension analysis using small angles X-ray scattering (SAXS) could be useful to evaluate the structure of aggregated NPs.
Samples for the analysis were prepared by adding salt with silica colloid, and their aggregated structures were changed from reaction-limited cluster aggregation to diffusion-limited cluster aggregation. The fractal dimension could be obtained by the scattering data by SAXS with the scaling approach. The surface fractal dimension was almost constant even if the aggregation state was changed. On the other hand, the volume fractal dimension depended on the aggregation state, but this tendency was not same as that in the case of the fractal dimension estimated from the light scattering data.
Key words:fractal dimension, aggregation, nanoparticles, small angles X-ray scattering method, structure analysis キーワード:フラクタル次元,凝集,ナノ粒子,小角X線散乱法,構造解析
X線散乱法を用いた凝集粒子の構造評価
森 康維,宮本 竜馬,土屋 活美,
Frank B
ABICK,Michael S
TINTZ,Werner S
TEFFEN,Hans-Jürgen B
UTT1. はじめに
ナノサイズの粒子は,それらを取り巻く場の状態 にかかわらず,少なからず凝集しており,粒子の凝 集状態はそれらを構成する物質の力学的,電気的,
磁気的,さらには光学的特性に大きな影響を与える.
近年ナノ材料の使用量が増加しているため,ナノス
ケールの凝集構造評価への関心は高まっている.し かしながら,凝集構造を定量的に捉えることは困難 であり,今までに種々の評価方法が提案されてきた.
その中に,フラクタル次元という形態学的なパラメ ータで定量的に評価することが試みられている.フ ラクタル次元による凝集粒子の構造評価法には主 に
SEM
,TEM
といった電子顕微鏡を用いる顕微鏡法と,光などの電磁波散乱を用いる散乱法,および 沈降法がある1).
顕微鏡法による凝集粒子の構造評価では,真空中 で行うため液相中での凝集構造を直接観察できな い.また,試料の一部を観察しているにすぎないた め,試料中の凝集粒子の代表的な構造が何であるか を決定するのは難しい.さらに,顕微鏡画像による フラクタル解析は
2
次元で行われるため,3
次元の 凝集構造が適切に評価されているかには疑問が残 る.これに対して,散乱法は液相状態での測定が可 能なため,液相中での凝集構造を観測でき,散乱に 寄与する粒子数が非常に多いため,統計的誤差が生 じにくい点が利点としてあげられる.なお,沈降法 は粒子の沈降速度を測定し,フラクタル次元を求め る方法なので,ナノ粒子のような沈降の遅い粒子へ の適用は難しい.前述のような利点を持つ散乱法には,用いる電磁 波の波長により,
SLS
(静的光散乱法)やSAXS
(小 角X
線散乱法),SANS
(中性子散乱法)などがあ る.SLS
は試料に可視光を入射し,散乱強度を解析 する方法で,試料中の50
~1000 nm
スケールの構造 を評価対象とする2).一方SAXS
は試料にX
線を入 射し,散乱強度を解析する方法で,試料中の1
~100 nm
スケールの構造を評価対象としている.SAXS
を用いて試料中の凝集粒子の構造をフラ クタル次元として測定したという報告は数多くな されているが,測定されたフラクタル次元が試料中 の凝集構造を適切に評価しているのかを検討した 報告はない.これはフラクタル次元を求めるには,散乱法と顕微鏡法しかないが,両方法を比較するこ とが難しいためと思われる.そこで本研究では,コ ロイド溶液の
pH
や電解質濃度を変えて粒子の凝集 プロセスの異なる試料を作製し,SAXS
測定結果を 用いたフラクタル次元解析によるコロイド溶液中 の粒子の凝集構造評価が妥当であるかを,既存のブ ラウン凝集理論によるシミュレーション3)と比較し た.2. 実験方法 2.1 装置
装置は
Ultima
Ⅲ(リガク)を用い,入射X
線の 波長0.154 nm
,出力40 kV
,36 mA
,測定散乱角範 囲0.06
゚~3.00
゚,サンプリング速度0.005
゚/min
, サンプリング幅0.005
゚で10
時間の測定を行った.発散スリット幅
10 mm
,発散縦制限スリット幅1.0 mm
,散乱スリット幅0.1 mm
,受光スリット幅0.1
mm
とした.2.2 粒子の凝集プロセスの測定
測定対象粒子には,
4
~6 nm
径の分布を持つ20 wt%
シリカ粒子(スノーテックスXS
,日産化学)を用いた.凝集状態を変える目的で,種々の濃度の
NaCl
水溶液15.0 g
にスノーテックスXS 5.0 g
を添 加した試料を作製した.作製した試料のゲル化が確 認されるまで放置した.この状態を凝集平衡状態と みなして測定した.低NaCl
濃度では反応律速凝集(
RLCA
,reaction-limited cluster aggregation
)に,高NaCl
濃 度 で は 拡 散 律 速 凝 集 (DLCA
,diffusion-limited cluster aggregation
)になると予測さ れる.しかし低NaCl
濃度の試料はゲル化しなかっ たため,ゲル化を待たずにSAXS
測定を行った.試 料の作製から測定までに放置した時間,測定時の試 料の状態,およびNaCl
濃度をTable 1
に示す.Table 1. Sample preparation (5wt% SiO
2, pH9).
Sample
name condition rest time NaCl concentration
0M_1d sol 1day [M] 0
0.02M_1d sol 1 day 0.02
0.02M_5d sol 5 days 0.02
0.03M_5d sol 5 days 0.03
0.14M_35d sol 35days 0.14
0.18M_2d sol 2 days 0.18
0.18M_15d gel 15 days 0.18
0.21M_7d gel 7 days 0.21
0.36M_2d gel 2 days 0.36
0.54M_7h gel 7 hours 0.54
0.70M_1d gel 1 day 0.70
1.1M_1h gel 1 hour 1.1
1.1M_1d gel 1 day 1.1
1.1M_6d gel 6 day 1.1
2.3 気相法で作製した凝集粒子の構造測定 気相火炎法で作製されたチタニア粒子
(P25
,Evonic)
,シリカ粒子(V15
,Wacker Chemie)
,お よびアルミナ粒子(AluC
,Evonic)
の1 wt%
水溶液 を調製した.これらの懸濁液を撹拌しながらpH
メ ーター(堀場製作所)を用いて,P25
懸濁液はpH
=
3.5
,V15
懸濁液はpH
=9.0
,AluC
懸濁液はpH
=
3.5
になるように5 M
塩酸または0.1 M NaCl
水 溶液を加えて水溶液のpH
を調整した.さらに各懸 濁液は超音波ホモジナイザー(Amplitude = 20
,pulse = 2 s on and off
,process time = 4 min
)で 分散させた.超音波分散操作後に懸濁液のpH
がず れていれば塩酸または水酸化ナトリウム水溶液を 加えて再度調整した.P25
粒子濃度を変えてSAXS
測定を行い,懸濁水 溶液中の粒子の構造因子S(q)
の変化を調べた.粒子 濃度が大きくなると粒子間距離が小さくなり,粒子 間距離が構造として散乱強度プロファイルに S(q)
として現れることが予測される.3. 結果および考察 3.1 粒子の凝集プロセス
3.1.1 散乱強度プロファイル
Scaling Approach
2)に従って測定データを整理す るために,散乱ベクトルq = 1 nm-1における散乱強 度I*で規格化した散乱強度プロファイルをFig. 1
に 示す.散乱ベクトルqはX
線の散乱角度2θ
と,X
線の波長λで次式のように示される.4 sin
q
(1)
I*は試料中の約
1 nm
スケールの構造を反映してお り,試料のSiO
2 一次粒子の大きさが4
~6 nm
であ ることから,I*は凝集構造が変化しても試料のSiO
2濃度が一定であれば変化しないと考えられる.試料 の電解質濃度を大きくすれば,
Fig. 1
の低散乱角度 領域の散乱強度が増加し,大きい構造体の寄与が増 加していること,すなわち凝集が進行していること が判る.またNaCl
濃度0.03 M
以下の試料ではフラ クタル領域が見られず,低散乱ベクトル領域の散乱強度がほぼ一定となっている.すなわち凝集体がほ とんど存在しない一次粒子のみの散乱強度プロフ ァイルに近いと考えられる.
Fig. 1. Scattering spectra of silica samples added various concentrations of NaCl solution (SiO
2: 5 wt%).
3.1.2 一次粒子径と凝集粒子径
散乱ベクトルが
0.1 nm
-1以下の範囲では,ダイレ クトビームの影響が現れる極低角度を除き,散乱強 度の傾きは,qが減少すると0に近づく.この領域 はGuinier
領域と呼ばれ,凝集粒子径xg(= 2
Rg) を次式により見積もることができる4).2 2 0
exp
3 q R
gI I
(2)
ここで,Iは散乱強度,I0はq = 0における散乱強度,
Rgは凝集粒子の回転半径である.
一次粒子を単分散球形粒子とみなすと,
Porod
plot
によって求まるPorod
定数Bと,Porod
インバ リアントQを用いて比表面積SVが得られる.この SVから,一次粒子の体面積平均径 xPを算出することができる.
4 4
( )
I q q B q (3)
2 Q 0I q q d q (4)
P v
6 6 Q
x S B (5)
一次粒子径xP,および凝集粒子径xgの
NaCl
濃度 依存性をFig. 2
に示す.全測定試料に対して同じ粒 子を用いているので,一次粒子径 xPが一定である ことは妥当な結果である.一方xgはNaCl
濃度の増 加とともに大きくなり,粒子の凝集程度が塩濃度に 依存していると推定される.しかし,NaCl
濃度が0.3 M
以上ではxgは余り増加しない.これは,凝集 の進行が停止したのではなく,凝集粒子径が大きく なりすぎ,SAXS
の測定可能な構造スケールの限界 を超えたために,xgが余り変化しなくなったと考え られる.Fig. 2. Effect of NaCl concentration on agglomerate size
xgand primary particle diameter x
Pfor the silica samples.
3.2 フラクタル次元
Scaling Approach
に基づき,散乱強度プロファイ ルの0.12
≦ q ≦0.18
の領域を直線近似して,体 積フラクタル次元Dfを,0.80
≦ q ≦1.30
の領域 の直線近似から表面フラクタル次元 Dsを求めた.結果を
Fig. 3
に示す.NaCl
濃度0.03 M
以下の体積フラクタルDf は1
以 下となり,体積フラクタルの定義(1
≦ Df ≦3
) からSAXS
スペクトルにフラクタル領域がまだはっきりと現れていないと考えられる.一方
NaCl
濃 度が0.03 M
以上では,NaCl
濃度の増加とともに体 積フラクタル次元 Df が大きくなった.ブラウン凝 集理論に基づく凝集粒子の成長モデルによると,NaCl
濃度が大きいほどDLCA
に近づくためにDf は 小さくなり,NaCl
濃度が小さいほどRLCA
に近づ くのでDf は大きくなる.しかしFig. 3
の結果はブ ラウン凝集理論から予想されるフラクタル次元と は逆の傾向を示している.この理由はどこにあるか は不明であるが,電解質濃度を変えることで凝集構 造の違いを表す体積フラクタル次元が変化するこ とが判った.一方表面フラクタルDsは,
NaCl
濃度1.1M
の試 料の測定結果を除けば,NaCl
濃度によらずDs= 1.5
でほぼ一定となった.この値は一次粒子表面が粗い ことを示している.Fig. 3. Effect of NaCl concentration on fractal dimensions for the silica samples.
Fig. 4. Fractal dimensions for fumed oxide measured by
Ultima III and Nano-viewer.
そこで,
DLCA
で凝集したと考えられる気相火炎 法で作製したアルミナ粒子(AluC)
,チタニア粒子(P25)
,シリカ粒子(V15)
の懸濁水溶液をSAXS
で測 定し,その結果からScaling Approach
を用いてフラ クタル次元を計算した.AluC
粒子では0.049
≦ q≦
0.10
および0.50
≦ q ≦1.50
,P25
粒子では0.049
≦ q ≦0.09
および0.30
≦ q ≦1.00
,V15
粒子では0.049
≦ q ≦0.09
および0.50
≦ q ≦1.10
の範囲を直線近似し,体積フラクタル次元 Dfおよび表面フラクタル次元 Dsを求めた.それらの 結果を
Fig. 4
に示す.いずれの試料においてもDf= 2.3
~2.4
となった.しかし同様の試料をSLS
で測定 した結果から求めた体積フラクタル次元は,DLCA
(Df
= 1.80
)に近いと報告されている5).本研究で使用した線光源を持つ装置では,小角度 側 の 散 乱 強 度 プ ロ フ ァ イ ル に デ ー タ の ゆ が み
(
Smearing
)が生じる.そこでこれを補正するデータ処理(
De-smearing
)が必要となる.SLS
とSAXS
との測定結果に,前述のような差違が,このデータ 処理によって生まれることも考えられるため,De-smearing
が 必 要 で な い 点 光 源 の 装 置(
Nano-viewer
,リガク)を用いて,測定した.その結果から求めたフラクタル次元を
Fig. 4
に示す.シリカ粒子
(V15)
の体積フラクタルを除いて,3
種類 の試料の表面フラクタルおよび体積フラクタルの 値はほぼ一致し,本質的にDe-smearing
処理は適切 に行われていることが確認できた.Fig. 3
においてDLCA
であると考えられる高NaCl
濃度での体積フラクタル次元は2.3
であり,Fig. 4
の結果にほぼ等しい.このことからブラウン凝集理 論の計算結果とは異なるものの,DLCA
による凝集 体の試料をSAXS
で測定した結果から求めた体積 フラクタル次元には一致が見られた.気相法で生成 されたシリカ微粒子がSLS
(静的光散乱)測定では Df= 1.80
だが,SAXS
測定ではDf= 2.1
~2.2
とな ったという報告もある6).一方で数百ナノサイズの 一次粒子の凝集プロセスを電解質濃度によって変 化させ,SLS
で測定して体積フラクタル次元 Dfを 求める研究はいくらか報告されている7 - 9).その結果はいずれも電解質濃度を大きくすれば
DLCA
に,小さくすれば
RLCA
に近づき,ブラウン凝集理論に 基づく凝集粒子の成長モデルと同じ傾向を示して いる.従ってSAXS
による測定から求めた体積フラ クタル次元が,ブラウン凝集理論に基づく凝集粒子 の成長モデルから得られる体積フラクタル次元と 逆の傾向になる理由の解明が必要である.4. 結論
シリカコロイド溶液の電解質濃度を変化させる ことで,反応律速凝集状態と拡散律速凝集状態と考 えられる試料を作製し,
SAXS
測定結果とScaling
Approach
理論を用いてフラクタル次元を求めることができた.表面フラクタル次元は凝集状態によら ず一定値を示し,測定手法の妥当性を示した.しか しながら,体積フラクタルは凝集状態に対応して異 なる値を示したが,フラクタル凝集理論から考えら れる値の傾向と逆になった.気相火炎法で作製した 拡散律速凝集状態と考えられる凝集粒子の測定や,
データ処理法(
De-smearing
)なども検討したが,こ の相違の理由を見出すことはできなかった.本研究の一部は,
2013
年度同志社大学理工学研究 所研究助成金の支援を受けて行われた.また,FB
の来日による共同研究では,日本学術振興会平成22
年度外国人特別研究員(欧米短期)の事業支援 を受けた.YM
がMax Planck Institute for Polymer Research, Mainz, Germany
で2012
年度在外研究と して実施した共同研究結果もまとめた.ここに記し て支援事業に対する謝意を表する.引用文献
1) G.C. Bushella, Y.D. Yanb, D. Woodfielda, J. Raper, R.
Amala, “On Techniques for the Measurement of the Mass Fractal Dimension of Aggregates”, Advances in Colloid and Interface Science, 95, 1-50 (2002).
2) C. M. Sorensen, “Light Scattering by Fractal Aggregates:
A Review”, Aerosol Science and Technology, 35, 648-687 (2001).
3) D.W. Schaefer, A.J. Hurd, “Growth and Structure of Combustion Aerosols: Fumed Silica”, Aerosol Science
and Technology, 12, 876-890 (1990).
4) O. Glatter and R. May, “Small-Angle Techniques”, International Tables for Crystallography, C, 89-112 (2006).
5) R. Wengeler, F. Wolf, N. Dingenouts, H. Nirschl,
“Characterizing Dispersion and Fragmentation of Fractal, Pyrogenic Silica Nanoagglomerates by Small-Angle X-ray Scattering”, Langmuir, 23, 4148-4154 (2007).
6) M. Weth, J. Mathias, A. Emmerling, J. Kuhn, J, Fricke,
“The Structure of Carbon Blacks Measured with (Ultra)-Small Angle X-Ray Scattering”, Journal of Porous Materials, 8, 319-325 (2001).
7) S. Tang, J.M. Preece, C. M. McFarlane, Z. Zhangy,
“Fractal Morphology and Breakage of DLCA and RLCA Aggregates”, Journal of Colloid and Interface Science, 221, 114-123 (2000).
8) J.L. Burns, Yao-de Yan, G.J. Jameson, S. Biggs, “A Light Scattering Study of the Fractal Aggregation Behavior of a Model Colloidal System”, Langmuir, 13, 6413-6420 (1997).
9) Z. Zhou, B. Chu, “Light-Scattering Study on the Fractal Aggregates of Polystyrene Spheres: Kinetic and Structural Approaches”, Journal of Colloid and Interface Science, 143, 356-365 (1991).