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興福寺中金堂院の調査

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Academic year: 2021

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(1)

興福寺中金堂院の調査

第369次

  はじめに

 今回の調査は、興福寺第1期境内整備事業における回 廊周辺排水施設関連工事の事前調査である。

 興福寺中金堂院ではこれまで中金堂、中門及び東面回 廊の調査を実施し、各建物の規模、基壇外装を確認して

いる(『興福寺 第1期境内整備事業にともなう発掘調査概報 I〜IV』、以下『概報工〜IV』とする)。

 今回実施した調査では、3ケ所の調査区を設けた。こ のうち主調査区(西エ区)は既に確認した南面回廊東側の 暗渠を中門の中軸線で西に折り返した位置にあたる。他

の2ケ所(西II区・東区)は、中門南面の参道上に位置す る(図142)。

 今回の調査は、設置する排水施設が基壇面以下には及 ばないことから、調査区における遺構面の高さを確認す ることを目的として実施し、南面回廊西側の暗渠および 南面・西面回廊の両基壇について部分的な調査を実施す ることとした。調査は2004年3月3日に開始し、3月11

日に終了した。調査面積の合計は32,8 「である。

106

図141 雨落溝SD7420 ・ SD8802と暗渠SD8800 C北東から)

奈文研紀要 2005

        図142 第369次調査位置図   検出遺構

西I区 南北12.8m、東西2mの調査区を設定し、現地表 下5〜20cmで、南面回廊の西側暗渠SD8800、南面回廊 SC7417と西面回廊SC8804の基壇土を検出した。遺構面

の標高は、調査区北端で95. 06m、南端で94.85mである。

近代の遺物を含む溝SD8801が調査区中央に位置し、溝 底部で黄茶褐色土(地山)を確認した。

 この断面でSC7417、SC8804の築成状況を観察すると

 (図143)、地山上面に黄褐色土(整地土)で平らにし、この 上にSC7417では1層、SC8804では3層の黄灰褐色土(基 壇積土)を確認した。現状の基壇高は地山から約50cmで ある。整地土の上では、SD8800の底石を検出した。底石 は幅約40cm、厚さ約20cmで、側石は抜き取られていた。

なお、底石両脇に凝灰岩片を多数含む黄褐色砂質土層を 確認でき、この上面は基壇土で覆われていた。

 一方、調査区北の断割箇所ではSC7417、SC8804の内庭 側の基壇外装SX7418、SX8803と雨落溝SD7420、SD8802 を検出し、調査区北と中央の断割箇所ではSD8800の底

石、側石を検出した。 SX7418は地覆石と羽目石の一部、

SX8803は地覆石のみ検出した。地覆石の幅は約20cm、

長さ約40cmで、羽目石の幅は約5cmである。 SD7420は 溝幅約45cm、SD8802は溝幅約40cmで、それぞれ内庭側

に川原石および凝灰岩を立て、底部に川原石を並べる。

底石の上面はSD7420の東端(94.87m)とSD8802の北端 (94.90m)で高く、南西隅(94.81m)に向かって低くなる。

 SD8800の側石は幅約12cm、長さ約30cmで上部が欠け

(2)

表20 第369次出土瓦碍類集計表 軒丸瓦

型式

6671(興540) 巴

軒 丸 瓦 計

重量

丸瓦 14. 1kg

̲旦_

点数

II

 平瓦  32. 0kg   375

型式 興909

軒平瓦  種

軒 平 瓦 計      凝灰岩      100. 6kg .._    103

点数

 A

H = 95.

Y−15,504   1

SX8803

基壇土⊇整地上属地llj      SD8802

Y一15,502    1

SD7420

A・

SX7418

― X‑146.125

― X‑146,130

   |      |  Y ‑15,504         Y‑15.502 図143 第369次遺構平面図・断面図 1:60

Ⅲ‑2 平城京と寺院の調査 107

る。底石は一辺約40cmの正方形の切石で、調査区中央で はその長さを確認できなかったが、幅は約40cmで両側 に5cm程の切り欠きを持ち、上面には著しい風化がみ られた。北端の底石は幅約30cm、長さ約50cmで、北縁と 西縁を隣あう地覆石と揃え、中金堂院内庭側南西隅の交 点をなす。また側石はSX7418の地覆石と羽目石ととも に基壇土を掘り込み、一連に据え付けられていることを 確認でき、改修の痕跡は見あたらなかった。

西II区・東区 西11区は南北9.5m、東西0.4mの調査区 で、東区は南北8.6m、東西0.4mの調査区である。地表面 から深さ10〜40cm程の掘削をおこなった。浅い掘削の ため、遺構は検出できなかった。

  出土遺物

 調査区からは土器、金属器、瓦、凝灰岩が出土した。

土器はコンテナ1箱程度、金属器は鉄釘2点であり、奈 良時代から近代のものを含んでいる。瓦については表20

を参照されたい。

  まとめ

 本調査は部分的な調査ではあったが、南面回廊西側の 暗渠を検出することができた。さらに内庭側の基壇外装 と雨落溝を検出し、中金堂院の回廊南西隅の地覆石交点 を確定することができた。既に確認した東南隅の交点部 の座標を用いて検討すると、南面回廊内庭側の振れは、

E O °19'31″Nになる。また、今回検出した地覆石および 雨落溝は中門北半で検出したものと一連のものと考える ことができ、その遺存状況からはB期(『概報工』)のもの

と推定できる。

 なお、SD8800底石両脇にひろがる土層は溝状の遺構 になる可能性がある。 SD8800北端でみられた基壇土を 掘り込み据え付ける暗渠側石の据付状況と一致せず、据 付掘形とは考えにくい。このため、中金堂院の造営に際 し、暗渠に先行して掘られた溝とも考えることができる が、今回は、部分的な確認に留まったため、詳細は今後 の課題として残された。         (清永洋平)

参照

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