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(1)

第一種使用規程承認申請書 ... 1 生物多様性影響評価書の概要 ... 2 第1 生物多様性影響の評価に当たり収集した情報 ... 2 1. 宿主又は宿主の属する分類学上の種に関する情報 ... 2 (1) 分類学上の位置付け及び自然環境における分布状況 ... 2 (2) 使用等の歴史及び現状 ... 2 (3) 生理学的及び生態学的特性 ... 3 2. 遺伝子組換え生物等の調製等に関する情報 ... 4 (1) 供与核酸に関する情報 ... 4 (2) ベクターに関する情報 ... 6 (3) 遺伝子組換え生物等の調製方法 ... 7 (4) 細胞内に移入した核酸の存在状態及び当該核酸による形質発現の安定性 ... 8 (5) 遺伝子組換え生物等の検出及び識別の方法並びにそれらの感度及び信頼性 ... 9 (6) 宿主又は宿主の属する分類学上の種との相違 ... 9 3. 遺伝子組換え生物等の使用等に関する情報 ... 12 (1) 使用等の内容 ... 12 (2) 生物多様性影響が生ずるおそれのある場合における生物多様性影響を防止するための 措置 ... 12 (3) 国外における使用等に関する情報 ... 12 第2 項目毎の生物多様性影響の評価 ... 13 1. 競合における優位性 ... 13 2. 有害物質の産生性 ... 13 3. 交雑性 ... 16 4. その他 ... 16 第3 生物多様性影響の総合的評価 ... 17 緊急措置計画書 ... 19

チョウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシ

(改変

cry1F

, 改変

bar

,

Zea mays

subsp

. mays

(L.) Iltis

.

) (TC6275, OECD UI: DAS-Ø6275-8) の生物多

様性影響評価書の概要

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第一種使用規程承認申請書 平成 19 年 6 月 7 日 農林水産大臣 赤 城 徳 彦 殿 環 境 大 臣 若 林 正 俊 殿 氏名 ダウ・ケミカル日本株式会社 申請者 代表取締役 フィリップ・ファイル 印 住所 東京都品川区東品川2丁目2番24号 第一種使用規程について承認を受けたいので、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生 物の多様性の確保に関する法律第4条第2項の規定により、次のとおり申請します。 遺伝子組換え生物等の 種類の名称 チョウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシ (改変

cry1F

, 改変

bar

,

Zea mays

subsp

. mays

(L.) Iltis) (TC6275, OECD UI:DAS-Ø6275-8) 遺伝子組換え生物等の 第一種使用等の内容 食用又は飼料用に供するための使用、栽培、加工、保管、運搬及び 廃棄並びにこれらに付随する行為 遺伝子組換え生物等の 第一種使用等の方法 ―

(3)

生物多様性影響評価書の概要

第1 生物多様性影響の評価に当たり収集した情報

1. 宿主又は宿主の属する分類学上の種に関する情報

(1) 分類学上の位置付け及び自然環境における分布状況 イ 和名、英名及び学名 和名:イネ科トウモロコシ属トウモロコシ 英名:maize、corn

学名:Zeamays subsp. mays (L.) Iltis

ロ 宿主の品種名 宿主としてはHi-II(デント種)を使用した。 ハ 国内及び国外の自然環境における自生地域 トウモロコシの祖先はメキシコ原産のイネ科植物テオシント種(teosinte)であると言われてい る。幾千年にわたって種子の人為的選抜が行われ、テオシントは今日知られているトウモロコシ として作物化された。分枝および種子数の主な変化については、数百年の選抜を経た結果と考え られる。トウモロコシは、すでにテオシント種とは違い、種子を自然に散布させる能力を失って おり、我が国の自然環境における自生地域はない。 (2) 使用等の歴史及び現状 イ 国内及び国外における第一種使用等の歴史 子実用トウモロコシは、1930 年代以降、特に米国で交配により様々な品種が作り出されてきた。 それらは、長い時間をかけてヒトの手により改良され、ヒトが手をかけなければ育たない。我が 国には長年にわたり、食品加工用・飼料用として海外より輸入されている。 ロ 主たる栽培地域、栽培方法、流通実態及び用途 トウモロコシは、現在、緯度30 度から 55 度に至る範囲で栽培されているが、47 度以上の緯度 で栽培されることは比較的少ない。2005 年の全世界における生産量は 7 億 937 万トンで、主な 栽培国は米国(2 億 8,231 万トン)、中国(1 億 3,951 万トン)、ブラジル(3,513 万トン)、アル ゼンチン(2,048 万トン)、メキシコ(1,801 万トン)である(FAOSTAT, 2007)。 我が国においては全国にわたって栽培可能である。飼料用としてデント種が、食用としてスウ ィート種が栽培されている。主に子実が輸入されて飼料として利用されるが、食用油、澱粉など の加工用など、食品としての用途も多岐にわたる。

(4)

(3) 生理学的及び生態学的特性 イ 生育可能な温度域、水分条件及び土壌条件 トウモロコシの発芽温度の最低は 6~11℃、最高は 42~43℃で、最適は 32~36℃とされてい る。播種から収穫までの全期間の温度は、日平均気温22~23℃程度が望ましいとされている。生 育期別には、初期と後期が比較的低温で、中期が高温であることが望ましい。夜温はある程度低 い方がよく、暖地では25℃以上、寒地では 20℃以上にならない方がよく、いずれの地域でも 15℃ 前後が望ましい。トウモロコシの乾物1g を生産するための要水量は他の作物より少ないが、乾物 生産が多いため多量の水を必要とし、全生育期間では350~500 トン/10a の水量を必要とする。 トウモロコシは土壌の酸性に対しても強く、正常に生育する pH の範囲は広い。栽培可能な pH は5.0~8.0 の範囲にあるが、5.5~6.5 の範囲が望ましい。トウモロコシ品種の早晩性については、 播種期から成熟期に至る日数が品種間で差があり、我が国では90~170 日である。 ロ 繁殖又は増殖の様式 ① 種子の脱粒性、散布様式、休眠性及び寿命 トウモロコシは種子で繁殖する。包葉に覆われた穂芯のついた雌花のある花序がある。したが って、個々の粒の種子拡散は自然には行なわれない。種子の休眠性は極めて低く、前年に栽培さ れこぼれ落ちた種子であっても、土壌温度が 6~11℃以上ないと発芽しないため、多くの場合、 発芽せず枯死する。 ② 栄養繁殖の様式並びに自然条件において植物体を再生しうる組織又は器官からの出芽特性 トウモロコシは種子繁殖であり、塊茎や地下茎などによる栄養繁殖はしない。また、トウモロ コシには、自然条件において植物体を再生しうる組織等がある、あるいはそこから発芽するとい うような報告はこれまでのところない。 ③ 自殖、他殖性の程度、自家不和合性の有無、近縁野生種との交雑性及びアポミクシスを生ずる 特性を有する場合はその程度 トウモロコシは雄穂と雌穂が分かれており、他家受粉が一般的で、雄穂から放出された花粉が 同じ株か隣接しているトウモロコシの雌しべに運ばれ、受粉する。近縁野生種との間では、交雑 は容易には起こらないことが知られており(Doebley, 1984)、我が国においては交雑可能な近縁 野生種(テオシント等)は存在しない。種子は受精によって作られ、アポミクシスは生じない。 ④ 花粉の生産量、稔性、形状、媒介方法、飛散距離及び寿命 トウモロコシ花粉は、直径約0.1mm 程度である。風により飛散するが、ほ場の端から 60 メー トル以上飛散する花粉は、全体の1%以下であると報告されている(Raynor et al., 1972)。飛散 した花粉の寿命は、一夜または一昼夜であるが、5℃前後の低温下でシリカゲルを入れて封入する と、4~5 日間は受精能力を失わない。

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ハ 有害物質の産生性 他感作用物質のような野生動植物等の生息又は生育に影響を及ぼす有害物質の産生性は知られ ていない。

2. 遺伝子組換え生物等の調製等に関する情報

(1) 供与核酸に関する情報 イ 構成及び構成要素の由来

チョウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシ(改変cry1F, 改変bar, Zea mays subsp. mays (L.) Iltis) (TC6275, OECD UI:DAS-Ø6275-8)を、以降「本組換えトウモロコ シ」と称する。 構成要素は表1(4 ページ)のとおりである。 表1 供与核酸の構成、構成要素の由来及び機能 名 前 機 能 改変cry1Fカセット UBI1ZM トウモロコシ由来のユビキチンプロモーター(イントロンと5'末端の翻訳されな い配列を含む)(Christensen et al., 1992)。植物体の全体において遺伝子の転 写を開始させる。 改変cry1F

Bacillus thuringiensis var. aizawai由来のcry1F遺伝子のコア蛋白質をコード する遺伝子で、改変Cry1F 蛋白質を発現させる。トウモロコシ内での発現を高 めるためにアミノ酸配列を変えずにCry1F 蛋白質のコア蛋白質のコード領域の GC 含量を高めている。なお、クローニングサイト導入により全長 606 のアミノ 酸配列のうち、C 末端側に位置する 604 位のフェニルアラニンがロイシンに置換 されている。

PINII ジャガイモ由来のプロティナーゼ阻害物質al., II からのターミネーター配列(An et 1989)。遺伝子の転写を終結させる。

改変barカセット

CaMV35S-1841 enhancer カリフラワーモザイクウイルスet al., 1841 菌株由来の上流のエンハンサー(Pietrzak 1986)。遺伝子の転写効率を増強させる。

CaMV35S-1841 promoter カリフラワーモザイクウイルスet al., 1841 菌株由来の 35S のプロモーター(Pietrzak 1986)。遺伝子の転写を開始させる。

ADH1 トウモロコシ由来のアルコール脱水素酵素イントロン1。改変bar遺伝子及び改 変PAT 蛋白質の発現を高める。

改変bar

Streptomyces hygroscopicusから単離されたフォスフィノスリシン・アセチル トランスフェラーゼ遺伝子(Thompson et al., 1987)で、改変 PAT 蛋白質を発 現させる。植物での発現に適応させるために、開始コドンを変更しており、1 位 のアミノ酸が置換されている。野生型とは異なり、本改変PAT 蛋白質でのみ翻 訳後に1 位のアミノ酸が除かれる。

PINII ジャガイモ由来のプロティナーゼ阻害物質al., II からのターミネーター配列(An et 1989)。遺伝子の転写を終結させる。

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ロ 構成要素の機能 ① 目的遺伝子、発現調節領域、局在化シグナル、選抜マーカーその他の供与核酸の構成それぞれ の機能 挿入遺伝子の各要素の機能を表1(4 ページ)に示した。 ② 目的遺伝子及び選抜マーカーの発現により産生される蛋白質の機能及び当該蛋白質がアレル ギー性を有することが明らかとなっている蛋白質と相同性を有する場合はその旨

Bacillus thuringiensis var. aizawai (B.t.a.)は、世界的に広く自然の土壌中に存在する。全 てのBacillus thuringiensis菌株は、デルタ-エンドトキシンという殺虫性蛋白質を生産する。天 然のデルタ-エンドトキシンの多くは、ほぼ 120~140kDa の蛋白質から成る(Schnepf et al., 1998)。本蛋白質は感受性のある昆虫に摂取されると、完全長の蛋白質の結晶が腸のプロテアー ゼにより消化され、殺虫活性のあるコア蛋白質を放出する(図1、5 ページ)。コア蛋白質は 65~ 70kDa であり、中腸上皮にある特異的な受容体と結合することにより、蛋白質の立体配位構造が変 化して、膜への侵入が起こる。蛋白質のオリゴマー形成は、中腸細胞膜に細孔構造をつくり、浸透 圧性の細胞溶解が起こり、昆虫を死に至らしめる(図1、5 ページ)。改変cry1F遺伝子により発現 する改変Cry1F 蛋白質は、B.t. var. aizawai が産生する Cry1F 蛋白質のコア蛋白質の部分であり、 改変cry1F遺伝子はトウモロコシ内での発現を高めるためにCry1F 蛋白質のコア蛋白質をコード する部分を、アミノ酸配列を変えずにG(グアニン)及び C(シトシン)含量の割合を高めて合成 した。なお、クローニングサイト導入により全長606 アミノ酸配列のうち、C 末端側に位置する 604 位のアミノ酸が、フェニルアラニンからロイシンに置換されているが、野生型Cry1F 蛋白質と同様 に主要なトウモロコシの害虫であるヨーロッパアワノメイガ(Ostrinia nubilalis)、サウスウエス タンコーンボーラー (Diatraea grandiosella)、フォールアーミーワーム (Spodoptera

frugiperda)等に優れた抵抗性を示すことが確認されている(Babcock et al.,2003)。 図1 B.t. 蛋白質の標的昆虫・アワノメイガ(Ostrinia nubilalis)等への作用機作 デルタ・エンド ト キ シ ン を 幼 虫が摂取 中腸内でアルカリプロテアーゼ により部分的に消化され、活性 コア蛋白質が放出される 中 腸 細 胞 が 破 壊 さ れ 、 死 に至る 中腸細胞受容体に 活性コア蛋白質が 結合する 細胞破壊 デルタ・エンドトキシン 活性コア蛋白質 受容体

(7)

改変bar遺伝子により発現する改変PAT 蛋白質は、除草剤であるグルホシネートをアセチル化 し、無毒のアセチルグルホシネートに変換する。このことにより、除草剤耐性を示す(図2、6 ペ ージ)。 図2 PAT(Phosphinothricin Acetyltransferase)蛋白質によるグルホシネート除草剤に対する 作用機作 改変Cry1F 及び改変 PAT 蛋白質が既知アレルゲンと機能上重要なアミノ酸配列を共有するかど うかをアレルゲン・データベース(Swiss‐Prot, PIR, GenPept, FARRP Protein Allergen Database)を用いて比較したところ、既知アレルゲンと構造的に類似する配列を共有していなか った。 ③ 宿主の持つ代謝系を変化させる場合はその内容 改変Cry1F 蛋白質は酵素ではなく、植物の代謝系に影響を及ぼすものではないと考えられる。 また、改変PAT 蛋白質はきわめて特異的にグルホシネートをアセチル化する酵素である(Tompson et al., 1987)。したがって、改変 PAT 蛋白質が他の代謝系に関与することは考えにくい。 (2) ベクターに関する情報 イ 名称及び由来

導入したPHP12537 作製に用いたベクターは、Agrobacterium tumefaciens LBA 4404 株に由 来する。 ロ 特性 ① ベクターの塩基数及び塩基配列 発現ベクターPHP12537 の塩基数は 49,698bp である。発現ベクターPHP12537 の塩基配列を 添付資料1に示した。 グルタミン酸 + アンモニア グルタミン グルタミン合成酵素の活性を阻害し、アンモニアが蓄積され、枯死する。 L-グルホシネート(除草剤バスタの活性成分) PAT 蛋白質 アセチルグルホシネート(無毒化) アセチル化

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② 特定の機能を有する塩基配列とその機能

tet及びspc遺伝子がそれぞれテトラサイクリンとスペクチノマイシンを発現し、発現ベクター PHP12537 の選択に用いられるが、T-DNA 領域の外側に位置するため、本組換えトウモロコシに これらの遺伝子は導入されていない。

③ ベクターの感染性の有無

発現ベクターPHP12537 の基となったA. tumefaciens LBA 4404 株由来のベクターの T-DNA 領域は、改変cry1Fカセット及び改変barカセットに置き換えられており、アグロバクテリウム の感染を可能とする配列は含まれておらず、感染性は知られていない。 (3) 遺伝子組換え生物等の調製方法 イ 宿主内に移入された核酸全体の構成 発現ベクターPHP12537 の構成図を図 3(8 ページ)に示した。また、添付資料2に発現ベク ターPHP12537 の作成過程を示した。本組換えトウモロコシにおける挿入遺伝子及び隣接境界領 域の塩基配列を調べた結果、発現ベクターPHP12537 上の T-DNA 領域のうち、UBI1ZM プロモ ーター及び UBI1ZM イントロンの一部と左側境界配列が欠失してトウモロコシゲノムに移入さ れていることが明らかになった(図 4、8 ページ)。本組換えトウモロコシのゲノムに挿入した DNA 及び隣接境界領域の塩基配列を添付資料3に示した。 ロ 宿主内に移入された核酸の移入方法 核酸の宿主への導入はアグロバクテリウム法により行った。 ハ 遺伝子組換え生物等の育成の経過 ① 核酸が移入された細胞の選抜の方法 除草剤グルホシネートを含む培地で培養することにより選抜した。 ② 核酸の移入方法がアグロバクテリウム法の場合はアグロバクテリウムの菌体の残存の有無 抗生物質(カルベニシリン)を添加することにより、アグロバクテリウムを殺菌後、抗生物質 を含まない再生培地にカルスを移して培養した際にアグロバクテリウム菌体が残存していないこ とを確認した。 ③ 核酸が移入された細胞から、移入された核酸の複製物の存在状態を確認した系統、隔離ほ場に 供した系統その他の生物多様性影響評価に必要な情報を収集するために用いられた系統まで の育成の経過及び系統樹 本組換えトウモロコシは近交系トウモロコシと交配し、ヨーロッパアワノメイガ抵抗性、除草 剤グルホシネート耐性及び農業形質から総合的に判断し、選抜育種を行った。次に自家受粉を行 った後、近交系トウモロコシと交配し、商業用品種を得た。詳細を図5(8 ページ)に示す。

(9)

本組換えトウモロコシの我が国における認可、申請の状況は次のとおりである。 2004 年 6 月 農林水産省及び環境省より「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の 多様性の確保に関する法律」に基づく第一種使用規程(隔離ほ場試験)の承認 を得た。 2006 年 5 月 農林水産省及び環境省より「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の 多様性の確保に関する法律」に基づく第一種使用規程(隔離ほ場試験)の承認 を得た。 2006 年 9 月 農林水産省に「組換えDNA技術応用飼料及び飼料添加物の安全性審査基準」に 基づく飼料利用としての安全性確認の申請を行った。 2006 年 9 月 厚生労働省に「遺伝子組換え食品(種子植物)の安全性評価基準」に基づく食 品利用としての安全性確認の申請を行った。 図3 発現ベクターPHP12537 の構成図及び制限酵素切断部位 社外秘情報につき非公開 図4 発現ベクターPHP12537 内 T-DNA 領域の挿入概要図 社外秘情報につき非公開 図5 本組換えトウモロコシ TC6275 の育成図 社外秘情報につき非公開 (4) 細胞内に移入した核酸の存在状態及び当該核酸による形質発現の安定性 イ 移入した核酸が存在する場所 移入した核酸は、いったん植物染色体に組み込まれると、メンデル遺伝の法則に従う。本組換 えトウモロコシに導入された形質が、T1 及び T1F2 世代の集団でどのような分離を示すかを分析 した(添付資料4)。除草剤グルホシネート耐性の有無を調べた結果、核内の一遺伝子座における メンデルの法則から予想される分離比と試験結果がほぼ一致したことにより、移入した核酸が染 色体上に存在していることを確認した(表2、8 ページ)。 表2 本組換えトウモロコシの T1 及び T1F2 世代の形質分離 社外秘情報につき非公開

(10)

ロ 移入された核酸のコピー数 移入された核酸のコピー数を確認するためT1F2 世代と BC5F1 世代についてサザンブロット分 析を行った結果、改変cry1F及び改変bar遺伝子はそれぞれ1コピー移入されていることを確認 した(添付資料5)。 ハ 染色体上に複数コピーが存在している場合はそれらが隣接しているか離れているかの別 染色体上に複数コピーは存在しない。 ニ 自然条件の下での個体間及び世代間での発現の安定性 移入した核酸による蛋白質の発現の有無を、除草剤グルホシネートの葉面塗布により調べた結 果、各世代で安定して発現していることを確認した(添付資料4)。 なお、Hybrid C(図 5、8 ページ)について、除草剤耐性を示した 338 個体にヨーロッパアワ ノメイガのふ化幼虫を接種し、食害程度を調べた結果、すべての個体がヨーロッパアワノメイガ の食害に対する抵抗性を示した。このように、改変Cry1F 蛋白質の発現は個体間で安定している ことが確認された。 ホ ウイルスの感染その他の経路を経由して供与核酸が野生動植物等に伝達されるおそれ 本組換えトウモロコシには、伝達性を有する配列は含まれておらず、本組換えトウモロコシに 導入された遺伝子が伝達されることはない。 (5) 遺伝子組換え生物等の検出及び識別の方法並びにそれらの感度及び信頼性 本組換えトウモロコシの検出及び識別の方法として、本組換えトウモロコシに特異的な塩基配 列をプライマーとして用いたPCR 法が開発されている(添付資料6)。さらに、Cry1F 蛋白質の 検出用キット(米国 Strategic Diagnostics 社)と PAT 蛋白質の検出用キット(米国 EnviroLogix 社)が販売されている。 (6) 宿主又は宿主の属する分類学上の種との相違 イ 移入された核酸の複製物により付与された生理学的又は生態学的特性の具体的な内容(特定 の組織又は生育段階において特異的に発現している場合は、その内容を含む) 改変 Cry1F 蛋白質を発現している本組換えトウモロコシは、米国におけるほ場試験において、 主要なトウモロコシの害虫であるヨーロッパアワノメイガ(Ostrinia nubilalis)、サウスウエスタ ンコーンボーラー (Diatraea grandiosella)、フォールアーミーワーム (Spodoptera frugiperda) 等に対する優れた抵抗性を示すことが確認された(Babcock et al., 2003)。また、B.t. var. aizawai

由来の Cry1F 蛋白質は、ヨーロッパアワノメイガ、オオタバコガ(Heliothis virescens)、シロ イチモジヨトウ(Spodoptera exigua)に殺虫活性を示す(Chambers et al., 1991)。

一方、オオカバマダラ(Danaus plexippus)、マイマイガ(Lymantria dispar)等の非標的チョウ目 昆虫を含め、オオミジンコ、ミミズ、コリンウズラ、ミツバチ、クサカゲロウ、寄生蜂、テント ウムシの非標的生物に対する改変Cry1F 蛋白質の影響は少ないものと考えられた(添付資料7)。

(11)

改変PAT 蛋白質は除草剤グルホシネートを特異的にアセチル化する酵素であり、他の代謝系に 関与することは考えにくい。 ロ 生理学的又は生態学的特性について、遺伝子組換え農作物と宿主の属する分類学上の種との 間の相違の有無及び相違がある場合はその程度 平成 18 年度に、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 畜産草地研究所において 隔離ほ場試験を行い、本組換えトウモロコシと非組換えトウモロコシの相違を検討した(隔離ほ 場試験結果報告書)。 ① 形態及び生育の特性 形態及び生育の特性として、発芽揃い、発芽率、雄穂抽出期、絹糸抽出期、稈長、草型、分げ つ数、着雌穂高、成熟期、雌穂数、有効雌穂数、雌穂長、雌穂径、粒列数、一列粒数、粒色、百 粒重、粒形、収穫期の地上部生体重について、本組換えトウモロコシと対照の非組換えトウモロ コシの比較を行った。本組換えトウモロコシと非組換えトウモロコシはともに発芽揃いは良好で、 雄穂抽出期及び絹糸抽出期に差異はなかった。本組換えトウモロコシと非組換えトウモロコシの 草型は、ともにアップライトであり、分げつは見られず、黄熟期にも差異はなかった。本組換え トウモロコシと非組換えトウモロコシの雌穂数及び有効雌穂数に差異はなかった。また、本組換 えトウモロコシと非組換えトウモロコシの粒色及び粒形は、ともに黄色のくさび形をしており、 差異はなかった。さらに、稈長、着雌穂高、雌穂長、雌穂径、粒列数、一列粒数、百粒重、収穫 期の地上部生体重について、本組換えトウモロコシと非組換えトウモロコシの間に統計学的有意 差は認められなった。発芽率については、本組換えトウモロコシと非組換えトウモロコシの間に 統計学的有意差が認められ、本組換えトウモロコシの発芽率が非組換えトウモロコシより低かっ たが、収穫種子の発芽率は本組換えトウモロコシ、非組換えトウモロコシともに 98.0%と高いも のであった。 ② 生育初期における低温又は高温耐性 本組換えトウモロコシと対照の非組換えトウモロコシの生育初期における低温耐性について検 討した。ほ場試験で収穫した種子をポットには種し、2~3 葉期まで生育した個体を平成 18 年 12 月30 日に野外に放置した。その結果、本組換えトウモロコシ及び非組換えトウモロコシともに、 18 日間程度で全ての個体が枯死し、差異は認められなかった。 ③ 成体の越冬性又は越夏性 トウモロコシは夏型1年生作物であり、成熟後、自然に枯死する。そのため、越冬性について は試験を行なっていない。 ④ 花粉の稔性及びサイズ 本組換えトウモロコシと対照の非組換えトウモロコシの花粉の稔性(充実度)及びサイズをア セトカーミン溶液で染色して観察した。その結果、本組換えトウモロコシと対照の非組換えトウ モロコシの間に統計学的有意差は認められなかった。

(12)

⑤ 種子の生産量、脱粒性、休眠性及び発芽率 種子の生産量については、本組換えトウモロコシと対照の非組換えトウモロコシの有効雌穂数、 粒列数、一列粒数、百粒重を比較した。その結果、全ての項目において統計学的有意差が認められ なかったことから、本組換えトウモロコシと非組換えトウモロコシの種子の生産量に差異はないと 判断した。種子の脱粒性については、本組換えトウモロコシ及び対照の非組換えトウモロコシの 雌穂が収穫時に苞皮に覆われており、種子の脱粒は認められなかった。種子の休眠性については、 本組換えトウモロコシ及び対照の非組換えトウモロコシの種子親及び収穫種子の発芽率がともに 高く、両者に差異は認められず、休眠性は極めて浅いと判断された。 ⑥ 交雑率 我が国において交雑可能な近縁野生種は自生していないので、試験を行っていない。 ⑦ 有害物質の産生性 本組換えトウモロコシと対照の非組換えトウモロコシの有害物質の産生性を比較するために、 後作試験、鋤込み試験及び土壌微生物相試験を行った。 <後作試験> 本組換えトウモロコシ及び非組換えトウモロコシの栽培土壌を用いた後作試験において、検定 植物であるハツカダイコンの発芽率、草丈、新鮮重及び乾燥重について統計学的有意差は認めら れなかった。 <鋤込み試験> 本組換えトウモロコシ及び非組換えトウモロコシの植物体を用いた鋤込み試験において、検定 植物であるハツカダイコンの発芽率、草丈、新鮮重及び乾燥重について統計学的有意差は認めら れなかった。 <土壌微生物相試験> 本組換えトウモロコシ及び非組換えトウモロコシの収穫後の土壌を採取し、希釈平板法により、 糸状菌数、細菌数及び放線菌数を測定した。その結果、本組換えトウモロコシと非組換えトウモ ロコシの間で統計学的有意差は認められなかった。 以上の結果から、有害物質の産生性に関して、本組換えトウモロコシにおいて意図しない有害 物質の産生はないと考えられる。

(13)

3. 遺伝子組換え生物等の使用等に関する情報

(1) 使用等の内容 食用又は飼料に供するための使用、栽培、加工、保管、運搬及び廃棄並びにこれらに付随する 行為。 (2) 生物多様性影響が生ずるおそれのある場合における生物多様性影響を防止するための措 置 「緊急措置計画書」を参照。 (3) 国外における使用等に関する情報 国外における本組換えトウモロコシの安全性に係る承認の状況を表3(12ページ)に示した(添 付資料8参照)。 表3 国外における本組換えトウモロコシの安全性に係る承認の状況 国 名 承認機関 承認時期 承認内容 米 国 米国食品医薬品局 2004年 6月 食品及び飼料安全性 米国農務省 2004年11月 無規制栽培 米国環境保護局 2005年 5月 植物農薬登録 カナダ カナダ食品検査庁 2006年 6月 飼料安全性及び環境放出 カナダ保健省 2006年 6月 食品安全性 なお、本組換えトウモロコシの我が国における認可、申請の状況は次のとおりである。 2004 年 6 月 農林水産省及び環境省より「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の 多様性の確保に関する法律」に基づく第一種使用規程(隔離ほ場試験)の承認 を得た。 2006 年 5 月 農林水産省及び環境省より「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の 多様性の確保に関する法律」に基づく第一種使用規程(隔離ほ場試験)の承認 を得た。 2006 年 9 月 農林水産省に「組換えDNA技術応用飼料及び飼料添加物の安全性審査基準」に 基づく飼料利用としての安全性確認の申請を行った。 2006 年 9 月 厚生労働省に「遺伝子組換え食品(種子植物)の安全性評価基準」に基づく食 品利用としての安全性確認の申請を行った。

(14)

第2 項目毎の生物多様性影響の評価

1. 競合における優位性

(1) 影響を受ける可能性のある野生動植物等の特定 平成18年度に、独立行政法人 農業・生物系特定産業技術研究機構 畜産草地研究所において、 野生植物との競合における優位性に寄与すると考えられる特性(形態及び生育の特性・生育初期 における低温耐性・種子の生産量・脱粒性・休眠性・発芽率)について調査を行った。その結果、 発芽率を除くいずれの項目においても、本組換えトウモロコシと非組換えトウモロコシとの間に 統計学的有意差や相違は認められなかった。発芽率については、本組換えトウモロコシと非組換 えトウモロコシの間に統計学的有意差が認められ、本組換えトウモロコシの発芽率が非組換えト ウモロコシより低かったが、収穫種子の発芽率は本組換えトウモロコシ、非組換えトウモロコシ ともに98.0%と高いものであり、この差異により本組換えトウモロコシの競合における優位性が、 非組換えトウモロコシに比べて高まることはないと考えられる。また、トウモロコシについては 我が国においてこぼれ落ちて自生したという報告はない。 本組換えトウモロコシは、チョウ目害虫抵抗性を持つ。しかし、チョウ目害虫による食害は、 トウモロコシが我が国の自然条件下において生育することを困難にさせる主な要因ではないこと から、チョウ目害虫抵抗性であることが競合における優位性を高めるとは考えにくい。また、本 組換えトウモロコシは、除草剤グルホシネート耐性を持つが、グルホシネートを散布されること が想定しにくい自然条件下においてグルホシネート耐性であることが競合における優位性を高め るとは考えにくい。 以上のことより、競合における優位性に起因する影響を受ける可能性のある野生動植物等は特 定されないと判断された。 (2) 影響の具体的内容の評価 ――― (3) 影響の生じやすさの評価 ――― (4) 生物多様性影響が生ずるおそれの有無等の判断 影響を受ける可能性のある野生動植物等は特定されず、本組換えトウモロコシの競合における 優位性に起因する生物多様性影響を生ずるおそれはないと判断された。

2. 有害物質の産生性

(1) 影響を受ける可能性のある野生動植物等の特定 平成18年度に、独立行政法人 農業・生物系特定産業技術研究機構 畜産草地研究所において、 有害物質の産生性に関して、後作試験、鋤込み試験及び土壌微生物相試験を行った。その結果、

(15)

いずれの試験においても、本組換えトウモロコシと非組換えトウモロコシとの間に統計学的有意 差は認められなった。また、トウモロコシについては、野生動植物等に対して影響を与える有害 物質の産生性は知られていない。したがって、本組換えトウモロコシには意図しない有害物質は 産生されていないと判断された。 本組換えトウモロコシは、除草剤グルホシネート耐性を付与する改変PAT 蛋白質とチョウ目害虫 抵抗性を示す改変Cry1F 蛋白質を産生する。改変 PAT 蛋白質については、有害物質としては知ら れておらず、改変PAT 蛋白質が他の代謝系に関与するとは考えにくい。また、改変 Cry1F 蛋白質 及び改変PAT 蛋白質のアミノ酸配列は、既知アレルゲンと構造的に類似する配列を共有していない。 改変Cry1F蛋白質については、非標的チョウ目昆虫に対する影響試験を実施し、影響は少ない ことを確認している。また、同様にミツバチ、ミジンコ等の非標的生物についても試験を実施し、 影響は少ないことを確認している。 しかしながら、本組換えトウモロコシを使用した場合、チョウ目昆虫が本組換えトウモロコシ を直接摂食する、あるいは本組換えトウモロコシの花粉に曝露することにより、本組換えトウモ ロコシで発現する改変Cry1F蛋白質がチョウ目昆虫に何らかの影響を与える可能性が考えられる。 本組換えトウモロコシを直接摂食するチョウ目昆虫は、農業上の害虫として防除されることから、 ここでは考察の対象としない。 次に、本組換えトウモロコシの花粉を食餌植物と共に摂食した場合には、何らかの影響を受け る可能性を完全に否定することはできない。そこで、現在絶滅のおそれがあるチョウ目昆虫が本 組換えトウモロコシの花粉の飛散により改変Cry1F蛋白質に曝露される可能性を検討した。 環境省レッドデータブック(2006年版)に記載された絶滅危惧種のチョウ目昆虫のうち、トウ モロコシの栽培が可能な低地から山地にかけて生育し、トウモロコシの開花時期に幼虫生育期間 が重なる種としてウスイロヒョウモンモドキ(Melitaea regama)、シルビアシジミ(Zizina otis

emelina)、タイワンツバメシジミ(Everes lacturnus)、ヒョウモンモドキ(Melitaea scotosia)、 ミツモンケンモン(Cymatophoropsis trimaculata)、ウラナミジャノメ(Ypthima motschulskyi

niphonica)、コヒョウモンモドキ(Mellicta ambigua niphona)、ツマグロキチョウ(Eurema

laeta betheseba)、ヒメシロチョウ(Leptidea amurensis)、ヒメヒカゲ(Coenonympha oedippus)、 ミヤマシジミ(Lycaeides argyrognomon)、ヒョウモンチョウ(Brenthis daphne)の12種を特 定した。 これらの中で、産卵が年一回のみであり、幼虫の生育期間がトウモロコシの開花時期と重なる 種は、ウスイロヒョウモンモドキ、タイワンツバメシジミ、ヒョウモンモドキ、ウラナミジャノ メ、コヒョウモンモドキ、ヒメヒカゲ、ヒョウモンチョウの7種である。このうち、ウスイロヒ ョウモンモドキ、タイワンツバメシジミ、ヒョウモンモドキ、コヒョウモンモドキの4種は、食 餌植物がそれぞれ、オミナエシ科、マメ科、キク科、ゴマノハグサ科であるが、幼虫は主に蕾の 内部や葉の裏面を摂食するか、あるいは集団でネット状の巣を作り、その中の葉しか食べないた め、本組換えトウモロコシの花粉中で発現する改変Cry1F蛋白質に感受性が高いと考えられる若 齢幼虫が、その生存に影響する量の花粉を摂食するとは考えにくい。一方、ウラナミジャノメ、 ヒメヒカゲ、ヒョウモンチョウの3種については、幼虫が食餌植物の葉の表面を摂食する。ウラ ナミジャノメとヒメヒカゲの食餌植物はカヤツリグサ科やイネ科であり、花粉を摂食する可能性 があると考えられる。また、ヒョウモンチョウは、食餌植物がバラ科で、主な生息地が湿原であ ることから、トウモロコシ畑用辺に生息する可能性はほとんどないと考えられる。

(16)

次に、産卵が年に複数回であるシルビアシジミ、ミツモンケンモン、ツマグロキチョウ、ヒメ シロチョウ、ミヤマシジミは、その一部の幼虫の摂食期がトウモロコシの開花時期と重なる。し かしながら、産卵が年に一回のみの種と比較した場合、種としての存続に影響がある可能性は低 いと考えられる。 このように、本組換えトウモロコシの栽培における花粉の飛散により、種としての存続に影響 がある可能性が低いと考えられるもの、葉の摂食とともに花粉を摂食する可能性があるものに分 かれる。したがって、花粉の飛散によるチョウ目昆虫の種としての存続に対する影響を完全に否 定することができないため、以下の検討を行った。 (2) 影響の具体的内容の評価 チョウ目昆虫への影響に関して、本組換えトウモロコシと同じ宿主を用いて作出し、同じ改変 Cry1F蛋白質を発現する組換えCry1Fトウモロコシ1507でのヤマトシジミに対する生物検定結果 を用いて評価を行なうこととした。なお、ヤマトシジミはB.t.蛋白質に対して感受性であることに 加えて、集団飼育がし易く、採集や継代飼育が容易である等の理由により選ばれた。 ヤマトシジミに対する生物検定では、ふ化後12時間以内の1齢幼虫を用いた。直径1cm、長さ 5.5cmの小試験管に所定量の花粉を載せたカタバミ葉片(直径1cm)、湿らせたろ紙片及びヤマト シジミの1齢幼虫(5頭)を収容し、シリコン栓をした。ヤマトシジミ幼虫を新しい葉片と交換し ながら7日間飼育し、生存虫数及び発育段階を調査した。なお、以前に行ったトーマ血球計算板を 用いた花粉重量調査において、花粉1個の重量が 6.4±0.4×10-7g(平均値±標準誤差)であった ことより、この花粉1個当たりの重量を、本生物検定における花粉密度の換算に用いた。 その結果、組換えCry1Fトウモロコシ1507では、100個/cm2の花粉密度で、調査5日後に約50% のヤマトシジミの幼虫が死亡した(添付資料9)。 (3) 影響の生じやすさの評価 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 畜産草地研究所における隔離ほ場試験におい て、本組換えトウモロコシと組換えCry1Fトウモロコシ1507の花粉における改変Cry1F蛋白質の 発現量を比較した結果、本組換えトウモロコシの花粉における発現量は、組換えトウモロコシ 1507の約14分の1であった。このように、本組換えトウモロコシの花粉飛散によるチョウ目昆虫 に対するリスクは、組換えCry1Fトウモロコシ1507より低いものと考えられる。 野外においてトウモロコシ花粉の植物葉上における堆積密度を調べた研究では、我が国におけ るヒマワリ及びイヌホオズキ葉上のトウモロコシ花粉の最大堆積密度は、ほ場縁(0m)において は、ヒマワリ葉上で81.7個/cm2、イヌホオズキ葉上で71.1個/cm2であった。しかし、ほ場縁から 5mの地点では、ヒマワリ葉上で19.6個/cm2、イヌホオズキ葉上で22.2個/cm2に減少し、さらに10m

の地点では、ヒマワリ葉上では10個/cm2以下であった(Shirai and Takahashi, 2005)。

また、北米におけるトウワタ葉上のトウモロコシ花粉の堆積密度を調べた研究では、ほ場内が 最大で平均170.6個/cm2であり、ほ場縁から1m、2m及び4-5mの地点で、それぞれ平均35.4個/cm2

14.2個/cm2及び8.1個/cm2まで減少した(Pleasants et al., 2001)。さらに、カナダにおけるトウ

ワタ葉上のトウモロコシ花粉の堆積密度を調べた研究では、ほ場縁から1m内側で平均78個/cm2

(17)

した(Sears et al., 2000)。このように、北米の野外においてトウモロコシ花粉の植物葉上にお ける堆積密度を調べた研究においても、我が国で行われた研究と同様の結果が得られており、ト ウモロコシ畑から10m以上離れれば、植物葉上のトウモロコシ花粉密度はかなり減少するものと 考えられる。 以上のことから、本組換えトウモロコシの栽培ほ場周辺に非標的チョウ目昆虫が生息している場合 でも、影響を受ける密度の花粉に非標的チョウ目昆虫の幼虫が曝露されることは考えにくい。 (4) 生物多様性影響が生ずるおそれの有無等の判断 以上のことから、本組換えトウモロコシは、有害物質の産生性に起因する生物多様性影響を生 ずるおそれがないと判断された。

3. 交雑性

(1) 影響を受ける可能性のある野生動植物等の特定 我が国では、本組換えトウモロコシと交雑可能な近縁野生種は自生していないため、交雑性に よって影響を受ける野生動植物等は特定されないと判断された。 (2) 影響の具体的内容の評価 ――― (3) 影響の生じやすさの評価 ――― (4) 生物多様性影響が生ずるおそれの有無等の判断 以上のことから、本組換えトウモロコシは、交雑性に起因する生物多様性影響を生ずるおそれ がないと判断された。

4. その他

上記の他に生物多様性影響の評価を行うことが適切であると考えられる本組換えトウモロコシ の性質はないと考える。

(18)

第3 生物多様性影響の総合的評価

宿主の属する分類学上の種であるトウモロコシは、我が国において長期間の使用経験があり、 我が国においてこぼれ落ちて自生したという報告はされていない。また、競合における優位性に 関わる諸形質について、本組換えトウモロコシは非組換えトウモロコシとの相違は認められなか った。また、本組換えトウモロコシはチョウ目害虫抵抗性を持つが、チョウ目害虫による食害は トウモロコシが我が国の自然条件下において生育することを困難にさせる主な要因ではないため、 チョウ目害虫抵抗性であることが競合における優位性を高めるとは考えにくい。さらに、本組換 えトウモロコシは除草剤グルホシネート耐性を持つが、グルホシネートを散布されることが想定 しにくい自然条件下において、グルホシネート耐性であることが競合における優位性を高めると は考えにくい。 以上のことから、本組換えトウモロコシは、競合における優位性に起因する生物多様性影響を 生ずるおそれはないと判断された。 有害物質の産生性については、改変PAT蛋白質は有害物質としては知られていない。改変Cry1F 蛋白質により影響を受ける可能性のある野生動植物としては、非標的チョウ目昆虫が考えられる が、本組換えトウモロコシと同じ宿主を用いて作出し、同じ改変Cry1F蛋白質を発現する組換え Cry1Fトウモロコシ1507の花粉を用いたヤマトシジミに対する生物検定結果及び花粉中の改変 Cry1F蛋白質量の比較と、野外におけるトウモロコシ花粉の飛散によるほ場周辺における植物葉 上での花粉堆積量より、非標的チョウ目昆虫に影響を与える可能性は少ないと判断した。さらに、 本組換えトウモロコシの後作試験、鋤込み試験及び土壌微生物相試験では、意図しない有害物質 は産生されていないことが確認されている。 以上のことから、本組換えトウモロコシは、有害物質の産生性に起因する生物多様性影響を生 ずるおそれはないと判断された。 また、本組換えトウモロコシと交雑可能な近縁野生種は我が国に自生していないため、本組換 えトウモロコシは、交雑に起因する生物多様性影響を生ずるおそれはないと判断された。 よって、総合評価として、本組換えトウモロコシを第一種使用規程に従って使用した場合、我 が国の生物多様性に影響が生ずるおそれはないと結論された。

(19)

参考文献

社外秘情報につき非公開

添付資料一覧

添付資料1:発現ベクターPHP12537 の塩基配列(社外秘情報につき非公開) 添付資料2:発現ベクターPHP12537 の作成過程(社外秘情報につき非公開 添付資料3:トウモロコシ 6275 系統の挿入遺伝子配列及び隣接領域配列(社外秘情報につき非公開) 添付資料4:本組換えトウモロコシのメンデル分離-各世代ごとの性質(社外秘情報につき非公開) 添付資料5:細胞内に移入した核酸の存在状態の確認試験(社外秘情報につき非公開) 添付資料6:遺伝子組換え生物等の検出及び識別の方法並びにそれらの感度及び信頼性の 確認試験(社外秘情報につき非公開) 添付資料7:非標的生物に対する影響(社外秘情報につき非公開) 添付資料8:米国における承認書簡(社外秘情報につき非公開) 添付資料9:Cry1F 害虫抵抗性及びグルホシネート耐性トウモロコシ 1507 系統の隔離ほ場 における環境に対する安全性評価(抜粋)(社外秘情報につき非公開) 隔離ほ場試験報告書:チョウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシ

(改変cry1F, 改変bar, Zea mays subsp. mays (L.) Iltis)(TC6275, OECD UI : DAS-Ø6275-8)の隔離ほ場試験結果報告書(社外秘情報につき非公開)

(20)

緊急措置計画書 (食用、飼料用に供する場合)

平成

19 年 6 月 7 日

氏名 ダウ・ケミカル日本株式会社

代表取締役 フィリップ・ファイル

住所 東京都品川区東品川

2丁目2番24号

第一種使用規程の承認を申請しているチョウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネ

ート耐性トウモロコシ

(改変

cry1F

, 改変

bar

,

Zea mays

subsp

. mays

(L.) Iltis)

(TC6275, OECD UI:DAS-Ø6275-8) (以下、本組換えトウモロコシ)について、第一

種使用規程に従った使用が承認された場合においても、今後、生物多様性影響が生ず

るおそれがあると、科学的根拠に基づき認められた場合には、当該影響を効果的に防

止するため、以下の措置をとることとする。

1 第一種使用等における緊急措置を講ずるための実施体制及び責任者

ダウ・ケミカル日本株式会社内に、緊急措置に適切に対応するための危機対策本部

を速やかに設置する。危機対策本部は、代表取締役を本部長とし、広報部、総務部、

登録部の部門長から構成される。同時に、危機対策本部並びに本組換えトウモロコシ

の開発社である米国ダウ・アグロサイエンス社との円滑な連絡を確保するための連絡

窓口を設置し、登録部長が責任者となる。

2 第一種使用等の状況の把握の方法

弊社は、米国ダウ・アグロサイエンス社と連絡をとり、第一種使用等の状況に関し、

可能な限り情報収集を行う。

(21)

3 第一種使用等をしている者に緊急措置を講ずる必要があること及び緊急措置の

内容を周知するための方法

米国ダウ・アグロサイエンス社は、販売した種子の購入者及び穀物取扱い業者、ト

ウモロコシの栽培者が加入する団体に対して、広く情報を提供するための連絡体制を

保有している。したがって、今後、本組換えトウモロコシが我が国の生物多様性に影

響を与えるおそれがあると科学的根拠に基づき認められた場合には、これらの連絡体

制を使って、関係各者と連絡を取る。

また、必要に応じて、日本国内の主要3紙並びに、ダウ・ケミカル日本株式会社の

ホームページ上に、本件について通知するための記事を掲載する。

4 遺伝子組換え生物等を不活化し又は拡散防止措置を取り、その使用等を継続する

ための具体的な措置の内容

今後、本組換えトウモロコシが我が国の生物多様性に影響を与えるおそれがあると

科学的根拠に基づき認められた場合には、弊社は、米国ダウ・アグロサイエンス社と

ともに、日本向けに輸出している穀物取扱い業者及び種子取扱い業者に対して不活化

及び拡散防止措置を講じるように通知する。

5 農林水産大臣及び環境大臣への連絡体制

科学的正当性のある根拠に基づき、本組換えトウモロコシが我が国の生物多様に性

影響を与えるおそれがあると認められた場合には、弊社は、速やかに農林水産省農産

安全管理課及び環境省野生生物課に連絡するとともに、緊急措置対応のための体制及

び連絡窓口を報告する。

以上

(22)

緊急措置計画書(栽培目的の場合)

平成

19 年 6 月 7 日

氏名 ダウ・ケミカル日本株式会社

代表取締役 フィリップ・ファイル

住所 東京都品川区東品川

2丁目2番24号

第一種使用規程の承認を申請しているチョウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネ

ート耐性トウモロコシ

(改変

cry1F

, 改変

bar

,

Zea mays

subsp

. mays

(L.) Iltis)

(TC6275, OECD UI:DAS-Ø6275-8) (以下、本組換えトウモロコシ)について、第一

種使用規程に従った使用が承認された場合においても、今後、生物多様性影響が生ず

るおそれがあると、科学的根拠に基づき認められた場合には、当該影響を効果的に防

止するため、以下の措置をとることとする。

1 第一種使用等における緊急措置を講ずるための実施体制及び責任者

ダウ・ケミカル日本株式会社内に、緊急措置に適切に対応するための危機対策本部

を速やかに設置する。危機対策本部は、代表取締役を本部長とし、広報部、総務部、

登録部の部門長から構成される。同時に、危機対策本部並びに本組換えトウモロコシ

の開発社である米国ダウ・アグロサイエンス社との円滑な連絡を確保するための連絡

窓口を設置し、登録部長が責任者となる。

2 第一種使用等の状況の把握の方法

弊社は、米国ダウ・アグロサイエンス社と連絡をとり、第一種使用等の状況に関し、

可能な限り情報収集を行う。

(23)

3 第一種使用等をしている者に緊急措置を講ずる必要があること及び緊急措置の

内容を周知するための方法

米国ダウ・アグロサイエンス社は、販売した種子の購入者及び穀物取扱い業者、ト

ウモロコシの栽培者が加入する団体に対して、広く情報を提供するための連絡体制を

保有している。したがって、今後、本組換えトウモロコシが我が国の生物多様性に影

響を与えるおそれがあると科学的根拠に基づき認められた場合には、これらの連絡体

制を使って、関係各者と連絡を取る。

また、必要に応じて、日本国内の主要3紙並びに、ダウ・ケミカル日本株式会社の

ホームページ上に、本件について通知するための記事を掲載する。

4 遺伝子組換え生物等を不活化し又は拡散防止措置を取り、その使用等を継続する

ための具体的な措置の内容

今後、本組換えトウモロコシが我が国の生物多様性に影響を与えるおそれがあると

科学的根拠に基づき認められた場合には、弊社は、種子取扱い業者及び国内の本トウ

モロコシの栽培者に対して本件を通知する。

5 農林水産大臣及び環境大臣への連絡体制

科学的正当性のある根拠に基づき、本組換えトウモロコシが我が国の生物多様に性

影響を与えるおそれがあると認められた場合には、弊社は、速やかに農林水産省農産

安全管理課及び環境省野生生物課に連絡するとともに、緊急措置対応のための体制及

び連絡窓口を報告する。

以上

MfeI (44507)

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