南 ア ジァ研 究 第19号(2007年)
書評
『
渡辺 昭一 〔帝 国の終焉 とアメリカ―アジア国際秩序の再編―』
編 〕清水 学
本 書 は、今 日注 目を集 めて い る一 連 の 「帝 国 」研 究 や ヘ ゲ モ ニ ー研 究 に とって極 め て刺 激 的 な作 品 であ る.「 非公 式 」帝 国 を含 む 「帝 国 」研 究 へ の 関心 の 高 ま りは、冷 戦体 制 崩壊 後 の グ ローバ ル化 の進 展 、BRICsに 見 られ る新 たな経 済発展 の核 の登 場 、米 国 のヘ ゲモ ニーが 強化 された世 界 システ ムな どを どの よ うに理解 す るか に関 わっ てい る。 グ ローバ ル ・ヒス トリーや 覇権 交代論 、経 済 シス テ ムあ るい は資本 主義 の発展 段 階論 的 アプ ローチ とい う ような巨視 的 な問題 意 識が 人 々を捉 え てい るの は、現代 の 大 きな枠 組 み変 更 と流 動化 に対 す る不安 と理 解 の必 要性 に裏付 け られ てい る ため であ ろ う。 この よ うな 「帝 国」研 究 は、現 代 史、 国際政 治学 、 国際経 済学 、 さ らに文 化 の問題 を含 め た学 際的 な アプ ローチが特 に必要 なテー マ であ り、研 究 プ ロジ ェク トの組織 の仕 方 自体 が 成果 に直 結す る課 題 であ る。 本 書 は、科 学研 究費 プ ロ ジェ ク ト 『ア ジアにお け る帝 国の終 焉 と欧米 関係 の諸変 化』 に基 づ くシ ンポ ジ ウム 『帝 国 の終焉 と国際秩 序 の再編― ア ジア をめ ぐる欧米 諸 国 の相 克―』(2004年5月)の 研 究 成 果 を ま とめ た もの で ある。 本 書 は、編者 に よれ ば 「『二十 世紀 的世界 』 の特 徴 の一 つ をな して い る 冷戦 構造 の展 開 を視野 に入 れ なが ら、 ア ジア にお ける帝 国の終 焉=脱 植 民 地化 と英 米 の問 のヘ ゲモ ニー転 換 との 関連 、つ ま り従 来 ともす れ ば問 われ るこ とが少 なか った 『脱植 民地 化 と冷戦構 造 との関連 や植 民地 期 ヨー ロ ッ パ支 配 との継 承性』 に注 目しア ジア国際秩 序 の再 編過 程 を明 らか にす る こ とを課題(3頁)」 と した もの で あ る。「二 十世 紀 的世 界 」 とは、帝 国主 義 時代 に始 ま りソ連 邦 の解 体 に至 る もの であ るが、 イ ギ リス の覇 権が ア メ リ カのそ れ に移行 す る時代 で もあっ た。 こ こで帝 国 とは、 国民 国家 を基 調 と して対 外 的 に膨 張 した植 民 地帝 国 と してい る。問題 にな って いるの は、 公 式 帝 国 と非 公式 帝 国、非 公式 帝 国 とヘゲ モニ ー国家 との相違 で あ る。執 筆 者 達 は 「帝 国 」や ヘゲ モニ ー に関す る理論 的 な枠組 み を提起 す る とい う点 で 問題 意 識 を共 有 して い る。渡 辺 は 非公 式 帝 国 とヘ ゲ モ ニ ー 国家 の 違 い書評 渡辺昭一 〔編〕『帝国の終焉とアメリカーアジア国際秩序 の再編-』 につ い て、 「非公 式 帝 国 は、内 政 に関 して政 治 のみ な らず金 融 ・財 政 の支 配 を も コ ン トロー ル してい くの に対 して、 ヘ ゲ モ ニ ー国家 の場 合 は、体 制 維持 の観 点か らの軍事 力行使 に と どま らざる を得 ない こ とで 区別 され よ う(9頁)」 と して い る.編 者 に よれ ば、本 書 で留意 された三 点 は、第 一 に、 帝 国 シス テムの 移転 に 関わ る もの で、公 的 支配 の終焉 後 も引 き続 き影響 力 の行 使 を可 能 と したか ど うか 、第 二 に、脱植 民地 化過 程 にお け る南 アジ ア、 東南 アジ ア、東 ア ジアの比 較考 察 、第 三 に、本 国政府 と植 民地 民衆 の 問 を と りもつ 協力 者 の存在 とな ってい る(6頁). 本 書 は編者 の序 章 に続 いて 、第1部 で は 「イギ リス帝 国の たそが れ 」 と 第2部 の 「ヘ ゲモ ニ ーの 交代 とア ジ ア世 界 」 の主 題 の下 に、 そ れぞ れ5本 の論 文 が集 め られ て い る。 まず第1部 をみ る と、 第1章B.Rト ム リ ンソ ン、 渡辺 昭一 訳 「二 十 世紀 南 ア ジア に お け る帝 国 とヘ ゲ モ ン」 は、 ア メ リ カ のヘ ゲモ ニ ーの成 立、 後退 しつ つ ある イギ リスの 影響力 維持 の 努力 と限界 、 ヘゲ モ ニー と帝 国の 問題 を主 と してイ ン ドを対 象 と して論 じてい る。植 民 地 イ ン ドと脱植 民 地 イ ン ドの 「ヘ ゲ モ ニー 支 配 の概 念 図(34-35頁)」 は 興 味深 い 問題提 起 で、 イ ン ドの 自立化 の 契機 を、 ヘゲ モ ン(ヘ ゲモ ニー を 行 使す る国家)と サバ ル タ ン(こ こで は従 属権 力 を指 して い る)と の関連 で分析 してい る.植 民地 イ ン ドの民族 運動 が成 功 した の は、統治 機構 と公 共 財 に関 して は 「操縦 と転覆 」、 文化 的支 配 に対 して は 「文化 的 自立 」、武 力 に対 して は 「抵抗 」 を対置 したた めで あ る とす る.脱 植民 地 イ ン ドにお いて は、 ヘ ゲモ ンに よる 「操 縦 と転覆 」、 あ る いは 国際 的機 構 と公 共財 に 対 して、 「国 内機構 と公 共財 」 に よ って対 抗 す る とい う図式 とい う点 が異 なっ てい る。 イ ン ドの 自立化 を保 障 した 国内的 要 因 と して、 イ ン ド国民会 議 派の指 導 者 たちが 、 国民 の意味 、 国家 の本 質 や 目的 に関す る植 民地 的思 考 に挑戦 して論破 した点 を指摘 してい る。 この指 摘 は 「文化 的 自立」 に 関 わる もので あ るが、伝 統 的文化 の再 解釈 、英 国 の論理 の読 み替 えを通 じた 受容 や英 国 の論理 を逆 手 に とって の英 国批判(ダ ー ダバ ー イ ・ナオ ロー ジー の 「非英 国 的 イ ン ド支 配 」)な どを指す と思 われ るが 、 「植 民地 的思 考 」の 検討 は今 日的 に も重 要 な意義 を もつ 。第2章 渡 辺昭 一 「イギ リス統 治 の終 焉 とイ ン ド鉄 道 シス テム の 自立化 」 は、 イ ギ リス 統治 の終 焉 とイ ン ド鉄 道 シス テ ムの 自立化 をシス テム の移転 の指標 として扱 か つ た もの で あ る。 イ ン ドの鉄道 は、 イギ リス に とって 「統 治 の要 と して、 資本輸 出、市場 開発 、 財 政 の三 位 一体 的収 奪 の核 心部 門(46頁)」 で あ った。本 論 考 は鉄 道機 関
南 アジァ 研究 第19号(2007年) 車 ・鉄 道車両 の供 給 の観点 か ら、 イ ン ド鉄道 システ ムの独 占 ・競合 ・自立 の プ ロセ ス を分 析 した もの であ る.第2次5力 年計 画 期 の後 半 で は国産 化 が加 速化 し輸 入が ほ ぼ消滅 した。機 関車 輸入 の ため の開発 資金 もス ター リ ング残 高 か ら世 銀へ 、 ポ ン ドか ら ドルへ と移 行 す るの であ る。 第3章 横 井 勝彦 「南 アジ アにお け る武 器移 転 の構 造 」 は、 国際 的 な武 器取 引 を 「シス テム としての武 力 ない しは軍備 の移 転 」 と捉 え、1950"60年 代 の イ ン ドの 航空 機産 業 、具体 的 に は ヒン ドス ター ン航空 機会 社(国 営)に 焦 点 をあて 、 IAF(イ ン ド空軍)の 自立 化 を支 えた軍 事技術 の イギ リス依存 か らの脱 却 と超 音 速 ジェ ッ ト戦 闘機 の ライセ ンス に よる国 産化 に至 る プロセ ス と特 徴 が分 析 されてい る。 ここで はア メ リカが冷戦 の論 理 とパ キス タンへ の 配慮 か ら対 印兵 器 供給 に制 約 を設定 せ ざる を得 ず 、 その 間 隙 をつ く形 で ソ連 が ミグ戦 闘機 の対 印 輸 出 とライセ ンス 生産 で イ ン ドと協力 を深 めた 図式が 描 か れて い る。 第4章N.I.ホ ワイ ト、秋 田茂訳 「帝 国の残 影― イギ リス の 影 響力 と東 南 ア ジアの脱 植民 地化 」 は、東 南 ア ジアの ビルマ、 タイ、マ レー シア 、 シ ンガ ポー ル、 ブル ネイ の第2次 大 戦後 の イギ リス との 関係 を 扱 ってい る。 その過 程 で コモ ンウ ェルスが多 様 な政体 を受 け入 れ ざる をえ ず 、 「そ の定 義 を 自己否 定 」 し、加 盟 国 を結 びつ け る 「政体 や 法律 が存 在 しない、組織 化 され てい ない機 構 」 とな った こ と(109頁)、 イギ リス は 「脱 植 民地 化 は別 の形 での帝 国 の継 続 」 の論理 を持 ち続 け た こ とが指摘 され て い る。 それ との関 連 で ウ ィル ソ ンが1965年 にニ ュ ーデ リ一で 「イギ リス の フロ ンテ ィア は ヒマ ラヤ 山脈」 とい う述 べ たエ ピ ソー ドを紹介 してい る (107頁).第5章 秋 田茂 「一 九五 〇年代 の東 ア ジア 国際 経済 秩 序 とス ター リ ング圏」 は、1950年 代 の 東 ア ジ ア国際 経 済秩 序 と経 済 発展 に果 た した ス ター リ ング圏 に注 目 し、 その観 点 か ら二 国 間協定 と して の対 日ス ター リ ング支 払協 定 を分析 した もので あ る。支払 協定 を単 に英 国 ・日本 間の貿易 摩 擦 に限定 す る観 点 は不 十分 で あ り、 む しろス ター リ ング圏が ロ ン ドン ・ シテ ィーの経 済利 害 とイ ギ リス帝 国 の経済 権益 を反映 した制 度 とみ る こ と でそ の意 義 を把 握 しうる もの と分 析 してお り、興 味深 い論 考 とな って いる。 英大 蔵省 とイ ング ラ ン ド銀行 が世 界 通貨 と しての ポ ン ドの維 持 とい う観 点 か ら対 外 経済 政策 に影響 を及 ぼ して い た こ と、 またス ター リ ング 圏が東 ア ジア諸 国の経 済発展 を支援 す る役 割 を果 た してお り、 地域経 済 システ ムに 注 目す る と、50年 代 の東 ア ジア 国際経 済秩 序 は両大 戦 問 の30年 代 と類似 した共通 の側 面が あ る こ とに注 意 を喚起 してい る.
書 評 渡 辺 昭 一 〔編 〕 『帝国 の終 焉 とアメ リカーア ジア 国 際秩 序 の 再 編一 』 第2部 第6章AJ.ロ ッ タ、 山 口育人 訳 「交 渉 され たヘ ゲモ ニ ー一 アメ リ カ と東 南 ア ジア世 界 一 九四五 ∼ 一九 六 〇一」 は、 第2次 大 戦後 の アメ リ カの東 南 ア ジアへ の 「ヘ ゲモ ニ ー 」が、 ハ ー ド ・パ ワー とソ フ ト ・パ ワー (文化 的説 得力)を 動 員 した もの であ りなが ら、相 手 国 の条 件 の相 違、 内 外 の制約 条件 に よって多様 な形 態 の関与 に な った こ とを 「交渉 されたヘ ゲ モ ニ ー」 とい うキー ワー ドで 分析 した もの で あ る。 フ ィ リ ピ ンの独 立 容 認 と事実 上の ヘ ゲモ ニーの維 持 、交 渉 され たヘゲ モニ ーの事 例 と しての タ イ、 交渉 され たヘ ゲモ ニ ーの失 敗 と して の ヴェ トナ ム を分 析 し、 さ らに 「 交 渉 」とい う側面 が 一層 強 く出 て きた南 ア ジ アを事例 に挙 げて いる.内 外 の制約 条件 と して は、 旧宗主 国 であ る西 欧の制 約、 ソ連 ・中国 の共産 主義 勢 力 の影響 の ほか 、 アジ ア 自身 の制約 、地域 通 商 の 「サ ブ シス テム」 の存 在 や ナ シ ョナ リズ ムの制 約が 非常 に大 きかっ た と して いる。 また米 国の 国 内政治 の制 約 条件 も重 視 して い る.第7章 菅英 輝 「アメ リカのヘ ゲモ ニ ー とア ジア の秩 序 形成 、一 九 四五∼ 一九 六五 年」 は、 ア メ リカのヘ ゲモ ニー 行使 の仕 方 との 関連 で現 地 の 「協 力者(コ ラボ レー ター)」 の存 在 の有 無 とそ の役 割 に注 目 した もので あ る。協 力者 の存 在 の あ りかた が、 ハ ー ド ・ パ ワー の使用 か ソ フ トパ ワー の行使 か の選択 に影 響 を与 え る とい う問題 意 識 であ り、事 例 と して 日本 の吉 田茂 とイ ン ドの ネル ー を対 照的 に比 較 して い る。 第8章 吉 田修 「ヘ ゲモ ニー ・ギ ャ ップ とイ ン ドー世 界 システ ムの状 態 とアメ リカの認 識一」 は、1958年 の第1次 ケ ネデ ィー ・クーパ ー決議 か ら1960年 の世 界銀 行 の 「三 賢人 使 節 団」 に至 る時期 をイ ン ドが世 界 経 済 シス テ ムへ の再統合 圧 力 を最初 に本格 的 に受 け た時期 と して、 それ を担 っ たヘ ゲモ ニ ー国家 であ る アメ リカ 自身の イ ン ドへ の アプ ローチ を分析 した もの であ る。 それ が う ま くいかず 、 その 反動 か ら再 びイ ン ドが 内向 きの独 自経済 路線 に戻 ってい く過程 が興 味深 く描 か れて い る。 第9章 中野聡 「『帝 国の 終 焉』 と東 南 ア ジ アの 国民 国家 エ リー ト」 は、R.ロ ビ ンソ ンの 「協 力 者」 の役 割 を重視 した 「協 調理 論」 を出発 点 と して、脱 植 民地期 の 東南 ア ジアの政 治エ リー トが ア セア ン結成 と発展 に どの ように関 わ ってい っ た か を分 析 した もの であ る。 「協調 理 論 」 は帝 国 と 「協 力者 」 との関係 の変 化(相 互依存 、協 調 、対立)や 協力 者 自身 の対象 社会 におけ る地位 の変 化 (正統性 の 増大 や 喪失)こ そが、 非 公式 ・外 部 帝 国す な わ ち間接 支 配か ら 直接 支 配へ の移行 、 あ るい は関与 の後退 す なわ ち独 立 と脱 植民 地化 の規 定 的 な要 因 で あ った、 とみ な す もの であ る(255頁).第10章 木畑 洋 一 「イ
南 アジ ァ研 究第19号(2007年) ギ リス帝 国 の崩 壊 とア メ リ カー1960年 代 ア ジ ア太平 洋 にお け る国 際秩 序 の変容 一」 は、 ア ジア太平 洋地 域 、 イ ン ド洋 地域 におい て、 帝 国主義 世界 体 制 の も とでつ くりあ げ られて いた 国際秩序 が 、政 治的 脱植 民地化 が ピー ク を迎 えた1960年 代 にい か に変 化 してい っ たか を、 軍事 的秩 序 に焦 点 を あて て検討 し よう とした もので あ る。 イ ン ド独 立後 にシ ンガポ ール英 軍基 地 の意 味が 一 時期 む しろ 強 ま った こ と、1957年 の イギ リス ・マ ラヤ 防衛 協 定 に示 され る イギ リスの影 響力 維持 戦略 、 マ レー シア形成 とマ レー シア 紛 争 、 アメ リカが イギ リス の影響 力 の残存 をむ しろ望 んだ こ とな どが分析 され てい る。 イ ン ド洋 の英領 デ ィエ ゴ ・ガ ルシ アに米 軍が基 地 を建 設 した の は、 イギ リス をア ジア に引 き留 め よう とす る アメ リカの 意志 が働 い てい た とす る指摘 は、今 日の米 英 関係 を考 える上 で示 唆的 で ある. 本 書 は 「帝 国」 の 問題 を考 える上 で、多 くの知 的刺激 と示 唆 を与 え る も の であ る.そ の意 味 で今後 の研 究 を進 める上 で貴 重 な貢献 で ある。 以下 は、 通読 して得 た所感 で あるが 、 同時 に評者 自身が 自 らに問 う疑 問で もあ る。 第1に 、 ヘ ゲモ ンに対 す る文化 的 自立 は興 味深 い課題 で あ るが、 トム リ ンソ ンの 「ヘゲ モニ ー支配 に抵抗 す る最 善 の方法 は 、そ の文化 的機構 を放 棄す る こ とで あ る(36頁)」 は評 者 に は十分 そ の意 味 をつか む こ とが で き なか った。 「放棄 」 と 「破壊 」 は どう異 な るのか 、 「放 棄 」 と 「創造 」 との 関係 を どう考 えてい るの か、植 民地 的 「遺制 」 との 関係 で付加 的説 明 があ れ ば助 か る.第2に 、 イ ン ドの輸入 代替 工業 化政 策 の功罪 に関す る もので ある。 トム リン ソ ンは 「イ ン ド経済 は、外 国資本 の活 動 を制 限 し、 国内企 業 に多 くの 成長 と発展 の た めの機会 を確 保 す る輸 入代 替工 業化 政 策 を展 開 す る こ とが で きた(36頁)」 と肯定 的 な評価 を して い る。他 方 、吉 田修 は 「南 ア ジア の大 国(イ ン ドを指 す)は 、80年 代 にゆ っ くり と、 そ して90年 代 に は加 速度 的 に進 んで行 く経 済 自由化 まで、長 い孤立 と停 滞 の時 期 を経験 す る(227頁)」 と してい る。 こ こで は、必 ず し も輸 入 代 替工 業 化 政 策 に つ い て評価 してい る わけ で はな いが 、「長 い孤 立 と停 滞 」 の なか で形 成 さ れて きた産 業基 盤 ・技 術 が経 済 自由化 後 の発展 の基礎 となって い る側 面 を 重 視す る必 要 があ る と思 わ れ る。評者 は 「停滞 」 と見 られ てい た時期 の イ ン ド経 済 を否 定的 に見 る見方 につい て は批 判 的で あ る。世界 経済 シス テム に再統 合 され る時期 の経 済 的技術 的発 展段 階 は重要 で あ り、 自由化段 階 に おい て イ ン ドは 自 らの技 術 と輸入 技術 を比 較す る能力 を もてた の はそれ ま での 「蓄積 」 に よる もので あ る.評 者 は この事 実 が今後 の 中国 とイ ン ドの
書評 渡辺昭一 〔編〕『帝国の終焉とアメリカ―アジア国際秩序の再編―』 発 展 の あ りか た に も差 異 を もた らす 可 能性 を見 てい る。第3に 、1980年 代 以降 あ るい は冷 戦崩 壊後 は本 書 の直接 的課 題 で はない が、 それ以 前 との 対 比 で どの よ うな特 徴 づ けに な るか は興 味 深 い こ とで あ る.評 者 は1980 年前 後 での ア メ リカにお け るケ イ ンズ派 に対 す る新古 典派 の勝 利が 重要 で あ る と思 わ れ る。 これ は世 銀 な ど国際金 融機 関 の コ ンデ ィ シ ョナ リテ ィー (融資条 件)に も反映 され てい る.イ ラ ク戦 争 の課 題 の一 つ が 『アラ ブ社 会主 義』 の残 津 を除去 し中東 にお ける経 済金 融 自由化へ の突破 口で あ る と す れば、 これは軍 事 に と どま らな い系 統 的 な深 い コ ミッ トメ ン トとして見 ざる を得 な い。80年 代 以降 をみ る と、60年代 の世界銀 行 、IMFの コ ンデ ィ シ ョナ リー と形式 的 には類似 してい る面 を もち なが ら、一層 系統 的 でか つ 異 なっ た論 理 に基 づ き経 済 政策 に深 く関与 しよう と して いる と見 る ことが で きる。 これ は非公 式帝 国 とヘ ゲモ ニー 国家 の概念 に対 して、 あ らた な別 の概念 枠組 み を要 求 してい る事態 の ように思 われ る。 第4に 、 ア ジア、特 に南 ア ジア に対 す る ソ連 の 関与 を世界 シス テムの なか で ど う規定 す るか で あ る。最後 に今 後 の課題 と して 、お そ ら く本書 が企 図 して い る もの であ ろ うが英 帝 国 と現 在 の米 「帝 国」 との比 較検 討が 重要 で あ るこ とを指摘 した い。 それ は英 国、米 国 自体 の 「帝 国」 との関連 で今 日の世界 システ ムの特 徴 と特 有 の矛盾 を明 らか にす る作 業 の一つ で あ る と思 われ る。 書 誌 情 報 渡 辺 昭 一(編)『 帝 国 の 終 焉 とアメ リカ― ア ジア 国 際 秩 序 の 再 編― 』、東 京:山 川 出 版 社 、2006年 、 313頁 、3,360円 、ISBN4-6346-4019-8。