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携帯端末のセンサ情報を用いた 人物移動状態の識別に関する研究

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2012 年度修士論文

携帯端末のセンサ情報を用いた 人物移動状態の識別に関する研究

指導:

甲藤 二郎

教授

小松 尚久

教授

2013 年 2 月 8 日

早稲田大学理工学術院 基幹理工学研究科 情報理工学専攻

5111B015-1 上原 聡介

(2)
(3)

目次

第1章 序論 1

1.1 本研究の背景と目的 . . . 1

1.2 2010年度までの研究内容と2011〜12年度の検討項目 . . . 3

1.3 本論文の構成と概要 . . . 4

第2章 センサを用いた人物移動状態の識別 5 2.1 従来研究 . . . 5

2.2 携帯端末搭載のセンサ機能 . . . 6

2.2.1 加速度センサ[13] . . . 6

2.2.2 測位センサ[14] . . . 8

2.2.3 地磁気センサ(電子コンパス機能を含む)[15] . . . 9

2.3 携帯端末搭載センサの出力データ . . . 11

2.4 人物移動状態の識別 . . . 15

2.4.1 識別における要素 . . . 15

2.4.2 本研究で取り扱う特徴量 . . . 17

第3章 磁気データ調査 19 3.1 磁気データ調査実験 . . . 19

実験諸元 . . . 19

実験結果と考察 . . . 20

3.2 電車における磁気データ調査実験 . . . 22

3.2.1 再現性調査実験 . . . 22

実験諸元 . . . 22

実験結果と考察 . . . 23

3.2.2 電車内磁界のメカニズム[18] . . . 24

3.3 バスと自動車における磁気データ調査実験 . . . 27

3.3.1 車内磁気データ調査実験 . . . 27

実験諸元 . . . 27

実験結果と考察 . . . 27

3.3.2 各方角における車内磁気データ調査実験 . . . 29

実験諸元 . . . 29

実験結果と考察 . . . 30

(4)

第4 加速度データ調査 33

4.1 加速度データ調査実験 . . . 33

実験諸元 . . . 33

実験結果と考察 . . . 34

4.2 バスと自動車における加速度データ調査実験 . . . 35

実験諸元 . . . 35

実験結果と考察 . . . 35

第5章 提案する識別手法 41 識別手法 . . . 41

実験諸元 . . . 42

5.1 磁気量を用いた電車の識別手法 . . . 43

5.2 加速度を用いた徒歩の識別手法 . . . 45

5.3 磁気量と進行方向を用いたバスと自動車の識別手法 . . . 47

5.4 加速度を用いたバスと自動車の識別手法. . . 49

5.5 加速度と速度を用いたバスと自動車の識別手法 . . . 52

結果と考察. . . 54

5.6 決定木(アルゴリズムはJ48)を用いた識別器の設計と評価 . . . 56

実験諸元 . . . 56

識別器の設計 . . . 57

評価と考察. . . 58

第6章 結論 61 6.1 まとめ . . . 61

6.2 今後の課題と検討 . . . 62

謝辞 63 参考文献 65 付録A オフセット磁場とDOE[19] 67 付録B 電車の各車両における磁気データ 69 実験諸元 . . . 69

結果と考察. . . 70

付録C 電気自動車における磁気データ 71

(5)

目次

結果と考察. . . 72

(6)
(7)

1

序論

1.1 本研究の背景と目的

国内における携帯電話の契約者数は電気通信事業者協会が公開している月末累計(Figure1.1)[1]

のように増加の一途を辿り,携帯電話の人口普及率は2012年3月末時点で100%を超えた.普及 率から見ると,携帯電話はすべての人にとって日常生活に欠かせない機器になったと言える.そ して,近年,急激な普及とともに携帯電話はスマートフォンやタブレット型コンピュータといっ た高機能かつ多機能な携帯端末へと移り変わり,それに伴ってライフログを利活用したビジネス が注目されてきている.

Figure1.1 Transition in mobile phone subscribership and penetration rate

ライフログとは,利用者の個人に関わるネット内外の活動記録(行動履歴)が,パソコンや携帯 端末などを通じて長時間に渡り取得・蓄積されたディジタルデータのことである.昨今の携帯端 末では,通話履歴,Webアクセス履歴,位置情報履歴などの,色々なサービスを行う上で価値の

(8)

高い,様々なライフログ情報が取得可能となった.特に,その携帯端末に蓄積されるライフログ情 報を収集し分析することで,従来の大雑把なユーザの類型化とは異なった個人の行動に基づく詳 細なユーザ特性を把握でき,本人だけでなく第三者にも有益な情報を提供することが可能となる.

ライフログ利活用のメリットとして,パーソナライズの高度化,個人が自覚してない自己の再認 識,個人ではなしえない情報へのアクセス,個人では価値を見出していない情報の発信などが挙 げられる.ライフログの利用により個人に適したサービス提供が可能となるので,顧客満足度が 迅速にかつ効率良く向上し,サービス競争力を格段に上げることができる.また,消費者の創り 出すライフログが重要な素材となり、マーケティングが深まることも期待される.例えば,ポイ ント,マイレージ,電子マネー,ECなどで個人ごとの購買履歴を取得することで,購買エリア,

来店頻度などの実世界での動線を把握することができる.第三者向けの様々なサービスでは,リ アルタイムな交通量や通行量,地域における人口の流動を調査するパーソントリップ調査や,感 染者との接触を知らせて感染の拡大を防ぐ,パンデミックの抑制などが期待される.

その一方で,ライフログを活用したサービスの提供にあたり,考慮しなければならないのが個 人情報およびプライバシー保護の問題である.個人の行動データを用いるため,個人特定に繋が る情報を削除,または抽象化する技術的課題,制度的課題,さらに利用者の不快感という心情的 な問題も残っている.

センサの性能向上、小型化,協調フィルタリングによって,サイバースペース(ネットなどの 電脳空間)と現実世界の両方で,個人のライフログだけでなく,多人数のライフログを活用する ことも可能となるなど,あらゆる場面でのライフログを取得できる環境が整備されつつある.ラ イフログ活用サービスを実現する基本技術には,ユーザの許諾を得た上で手間を取らせないデー タ収集,個人内の蓄積情報の統計的分析による情報マイニング,集団と個人の関係性を利用した 情報の利活用や,柔軟性が高く,理解しやすい情報開示制御が求められる[2].

以上のようなライフログ活用技術の動向を踏まえ,本研究グループでは,携帯端末から取得で きるライフログ情報の中でも,主にセンサデータ(位置,加速度,磁気量など)から人の移動に関 わる情報や,本人確認情報(歩き方など)を把握し,複合的に分析することで新しいサービスの提 供を目指している.特に,ユーザの時々の移動状態を把握することは,前述したパーソントリッ プ調査や交通インフラの整備および評価,行動ターゲティング広告などにも広く利用できる可能 性があり,極めて有用であると考えられる.

(9)

1.2 2010年度までの研究内容と201112年度の検討項目

1.2 2010 年度までの研究内容と 2011 12 年度の検討項目

Figure1.2 Example of a Flow Line Map

2008年度は,GPSの位置情報履歴を用いた人物の滞留時間や場所の測定による滞在区間の検 出を行った [3].その結果,動線マップ(Figure1.2)を作成する上で重要となる POI(Point Of

Interest)を推定することができた.また,P形フーリエ記述子を用いて位置情報履歴から取得し

た動線のデータ量を軽減し,少ないデータで動線の概形を表すことができた.

2009年度は,加速度センサを用いてユーザの移動状態を識別することについての検討を行った [4].その結果,加速度センサから取得できる加速度データが移動状態の識別に有用であることが 確認できたが,加速度データはユーザの動きによる影響を受けるため,電車・バス・自動車を厳 密に判別することは難しく,加速度センサから取得できる加速度データ単体による識別では精度 が不十分であると考えた.

2010年度は,加速度センサとともに携帯端末への搭載が進んでいた地磁気センサ(電子コンパ ス)を用いてユーザの移動状態を識別することについての検討を行った[5].その結果,地磁気セ ンサから取得できる磁気データも,電車内でのみ観測される特有な磁気の乱れから,電車の識別 には有用であることが確認できたが,これも加速度センサから取得できる加速度データと同様に 単体では徒歩,電車,バス,自動車といった移動状態の識別は望めないことがわかった.

そこで,2011〜12年度は,携帯端末に搭載されている加速度センサ,地磁気センサ,測位セン サから取得できるそれぞれのセンサデータを複合的に用いることで,より精度の高い移動状態の 識別手法の検討を行うことにした.

(10)

1.3 本論文の構成と概要

[ 1 ] 序論

 本章.研究を行うにあたっての背景,目的と,本論文の構成を述べた.

[ 2 ] センサを用いた人物移動状態の識別

 センサを用いた人物移動状態の識別に関する従来研究,携帯端末搭載のセンサ機能と出力 データ,および人物移動状態の識別における要素などについて述べる.

[ 3 ] 磁気データ調査

 各移動状態(徒歩,電車,バス,自動車)において地磁気センサから取得できる磁気データ についての評価を行う.

[ 4 ] 加速度データ調査

 各移動状態(徒歩,電車,バス,自動車)において加速度センサから取得できる加速度デー タについての評価を行う.

[ 5 ] 提案する識別手法

 3章において調査した磁気データの特徴の結果と,4章において調査した加速度データの特 徴の結果を踏まえ,各センサデータから得られた平均値,標準偏差値,パワースペクトルの最 大値といった特徴量を用いることによる移動状態(徒歩,電車,バス,自動車)の識別手法の 提案を行う.

[ 6 ] 結論

 本論文のまとめと今後の検討について述べる.

(11)

2

センサを用いた人物移動状態の識別

本章では,人物移動状態の識別に関する先行研究について言及するとともに,携帯端末搭載セ ンサの基本原理を解説し,2009年度の研究[4]で検討したセンサデータを用いた人物移動状態の 識別手法について述べる.

2.1 従来研究

センサデータを用いてユーザの移動状態を識別する研究は,これまでにもいくつか行われてい る[6][7][8][9]

ATRメディア情報科学研究所の田淵らが行った研究[10]では,加速度センサを多数用いて識 別し,装着位置や装着数,サンプリング周波数についての評価を行っている.識別対象は,立つ,

座る,階段の上り下り,読書などのオフィスワークでの移動であり,特徴量は平均,標準偏差など の5種類を用いている.結果,「両手首・両足首」の4箇所の装着位置で,識別率89.8% という 高い識別率が得られている.

しかし,このような高い識別率が得られたのは,4つというセンサの数の多さとセンサが固定さ れているため,正確なデータが取りやすいからではないかと考えられる.特に携帯端末に搭載す るためには,少ないセンサ個数で識別できる必要がある.

山崎らが行った研究[11]では,加速度センサ単体を使用して,移動状態の特徴を表したモデル データと観測された加速度のパワースペクトルの相関を利用することで,徒歩,停止,自転車,電 車,バス,自動車の計6種類の移動状態を50% 以上の精度で推定できることを示した.また,小 林らが行った研究[12]では,携帯端末に搭載することを想定し,加速度センサ,GPS,マイクを 併用して識別を行っている.識別対象は,歩行,走行,停止,自転車,電車,バス,自動車であ り,加速度データに対しての特徴量はパワースペクトルを用いている.結果として,加速度セン サ,GPS,マイクを複合的に使用することで,全移動状態を概ね80% 以上の精度で推定できるこ とを示した.

しかし,これらの研究では,電車・バス・自動車に関しての識別精度が,他移動状態と比較する と,ユーザの着席・起立状態などの要因により影響を受けると考えられるため,安定性に欠ける という問題点がある.

そこで,電車・バス・自動車では,駆動源や車載電子機器などの影響により,車内において観測

(12)

される磁気データに差異が存在する可能性があると考え,近年になって携帯端末の搭載機能とし て標準採用される傾向にある地磁気センサに着目した.各移動状態における磁気データにそれぞ れ固有の特徴があることを確認できれば,前述の識別精度の問題を改善できると考えられる.本 研究では,従来研究で用いられている加速度センサや測位センサに加え,新たに地磁気センサを 移動状態の識別に使用することによって全体の精度向上を目指す.

2.2 携帯端末搭載のセンサ機能

本節では,本研究で取り扱う携帯端末であるiPhoneに登載される三種類のセンサについての基 本原理を説明する.

2.2.1 加速度センサ [13]

加速度センサとは,センサ自体の一定時間あたりの速度変化を検出するセンサである.重力加 速度も検出できるので,人や物体の動きや地震などの振動を検出できる.また,三軸の加速度セン サであれば水平状態の検出も可能である.加速度センサは測定範囲によって低G加速度センサ,

高G加速度センサに分けることができる.

低G加速度センサとは,±20G以下の汎用計測用センサを指し,腕や手の動きを検出するモー ション・センサとして使用されており,小型で安価なため多くの民生機器にも組み込まれている.

例えば,任天堂のゲーム機「Wii」のコントローラや,本年度の実験に用いるiPhoneには低G三 軸加速度センサが採用されている.

一方,高G加速度センサとは,±20G〜±250Gの衝突衝撃検出用センサを指し,大型で高価 なため主に産業機器に使用されている.自動車や飛行機の衝突検出実験等に使用され,エアバッ グを膨らませる仕組みにも採用されている.

(13)

2.2 携帯端末搭載のセンサ機能

Figure2.1 The Detection Principle of the 3-axis Acceleration Sensor

2009年度の実験では,乗り物の揺れや振動を検出することと,携帯電話に搭載することを想定

して,iPhoneに搭載されているものと同じ低G三軸加速度センサを使用した.三軸加速度セン

サは,Figure2.1[13] に示すように,ばね定数k のばねに支えられた質量mのおもり一つを使っ

て,ばねの変位量x を基に各方向の加速度a を検出する.物体に働く力はニュートンの法則に よりF = maで表されるが,ばねとおもりの関係から kx = maが成立するので,加速度 aa =kx/mと置き換えられる.kmは既知なので,おもりの移動距離xが分かれば加速度aが 求められる.

(14)

Figure2.2 The Structure of the 3-axis Acceleration Sensor using the MEMS technology

MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技 術 を 用 い た 三 軸 加 速 度 セ ン サ の 場 合 ,

Figure2.2[13]に示すようにおもりの側面にくし状のコンデンサが形成されており,電子回路によ

り静電容量の変化を加速度に対応する電気信号に変換している.MEMS技術とは半導体技術を用 いて,一枚のシリコン基板上に機能を集積化することであり,加速度センサに MEMS技術を使 うことにより,小型化,高精度化,低価格化が実現された.

2.2.2 測位センサ [14]

現在地を測定するための測位センサには,GPS(Global Positioning System),Wi-Fi測位,基 地局測位と呼ばれる3種類がある.

GPS

GPSは,アメリカが打ち上げた三十個ほどのGPS衛星のうち,上空にある数個の衛星からの 信号をGPS受信機で受け取り,現在位置を知るシステムである(Figure2.3[14]参照).GPS 衛星からの信号には,衛星に搭載された原子時計からの時刻のデータ,衛星の軌道情報など が含まれている.GPS受信機にも正確な時刻を知ることができる時計が搭載されているなら ば,GPS衛星からの電波を受信し,発信-受信の時刻差に電波の伝播速度(光の速度と同じ 30万km/s)を掛けることによって,その衛星からの距離がわかる.三個のGPS衛星からの 距離が分かれば空間上の一点は決定できるが,時刻の誤差がたとえ100万分の1秒であった としても距離の誤差は300mにも及んでしまうため,四つのGPS衛星からの電波を受信し,

(15)

2.2 携帯端末搭載のセンサ機能

Figure2.3 Placement of the GPS Satellite

Wi-Fi測位

Wi-Fi測位は,Wi-Fi(Wireless Fidelity)機器を使用して現在位置を短時間でリアルタイム に測定することができるテクノロジーである.Wi-Fi 測位では周囲にある複数の無線LAN アクセスポイントからの電波を受信し,その電測情報を用いて現在地を推定するため,ビル の谷間や屋内や地下街のようなGPSが機能しない場所でもフロアごとの位置測定が可能で あることが特徴である.しかし,当然のことながらWi-Fiアクセスポイントがない場所では 位置検出ができないため,海上や山など都市以外の場所では利用できない.また,都市につ いてもデータベースにWi-Fiアクセスポイントを登録しておく必要がある.

基地局測位

基地局測位は,携帯電話と直接交信をする携帯電話網の末端にあたる装置である基地局を利 用した測位技術である.基地局は主に電柱やビルの屋上,電話ボックス,地下鉄ホームの天 井などに設置されている.基地局測位では,基地局の識別情報と携帯端末自身が受信した基 地局からの電波の強さ(電界強度)を基に,基地局から半径何メートルの範囲に対象端末が あるかを測位している.GPSと比べて精度は劣るものの,基地局さえあれば屋内でも位置検 索が可能であることが特徴である.

2.2.3 地磁気センサ(電子コンパス機能を含む) [15]

電子コンパスは,地球の発する磁気を検知して方位を算出し,北方向を電気的に示すコンパス である.方位磁石の代わりに地磁気を検知する地磁気センサと,センサからの信号を増幅するIC と,信号から方位角を演算するソフトウェアからできている.北の方向を知るためには,地磁気 が水平方向にどちらを向いているかを調べる必要があり,二つの地磁気センサを直角に組み合わ せて,前後方向と左右方向の地磁気を検出し,その強さからどちらが北の方向なのかを計算する

(Figure2.4[15]参照).

(16)

Figure2.4 The Principle of the Electronic Compass

電子コンパスが方位磁石と異なる点は,針式に比べて揺れや振動での誤差が出にくいこと,コ ンパクトであることなどの他,影響を及ぼす装置内の磁気に強いことが挙げられる.電子コンパ スは,装置の中の磁気の影響を受けても,その磁気の影響の大きさを検出し,瞬時に分析するこ とで磁気の影響を補正することができる.このことにより電子コンパスは,正しい方位を示すこ とが可能となる.

電子コンパスには 二軸タイプ と 三軸タイプ がある.北の方向を検出するために,地磁 気が水平方向にどちらを向いているかを調べる際,二つの地磁気センサを組み合わせて,前後方 向と左右方向の地磁気を検出するものを 二軸タイプ と呼び,三つの地磁気センサを組み合わ せて,前後方向と左右方向に加えて,上下方向の地磁気を検出するものを 三軸タイプ と呼ぶ.

二軸タイプ では,電子コンパスを地面に対して水平に持たなければならず,傾けて使うと,正 しく水平方向の地磁気を検知できないため,示す方位に誤差が含まれてしまう.一方, 三軸タイ プ では,携帯電話を傾けて手に持っている場合など,電子コンパスが傾いた状態でも,傾きの角 度を検知することができるため,その傾き分を差し引いて水平方向の地磁気を計算し,正しい方 位を表示することが可能である.また,電子コンパスは周囲の磁気の影響を受けて方位に誤差が 生じた場合は,磁気補正をする必要がある.例えば,電子コンパスを水平に数周回すことで,影 響する磁気の大きさを検出して補正をすることができる.

(17)

2.3 携帯端末搭載センサの出力データ

2.3 携帯端末搭載センサの出力データ

本節では,2.2節で解説した携帯端末搭載センサから得られる出力データについて述べる.

■加速度センサの出力データ

加速度センサから取得できるデータをTable2.1に示す.

Table2.1 The Output Data from the Acceleration Sensor

property mean unit sample data

timestamp date 8598.113275

X X-axis acceleration [G] 0.072448 Y Y-axis acceleration [G] -0.362243 Z Z-axis acceleration [G] -1.050506

iPhoneに搭載されている加速度センサは三軸加速度センサを用いており,時間,X軸・Y軸・Z

軸方向の加速度[G]を取得することができる.また,加速度センサにおける Timestamp は実行 時の時刻ではなく,CPU時間を基準とした経過時間である.iPhone搭載センサにおけるX軸・

Y軸・Z軸の方向を以下のFigure2.5[16]に示す.

Figure2.5 Orientation of the 3-axis Sensor for iPhone

(18)

本研究では,三軸加速度センサはデータ取得端末の向きにより,各軸から出力される値が異 なってしまうため,三軸の加速度を合成した値を検討に用いることにした.三軸加速度センサか ら取得できるTable2.1におけるX,Y,Z軸の加速度データを合成し,1つのデータに変換した

(以降,本論文では「三軸合成加速度」と定義する).三軸合成加速度を A とすると,三軸合成加 速度Aは式(2.1)によって求められる.

A =√

(X2+Y2+Z2) (2.1)

これにより,データ取得端末の向きが異なっても,加速度センサの変動値を他と比べることが できるようになった.Figure2.6は三軸の加速度データを合成した様子を表している.

Figure2.6 3-axis Acceleration

(19)

2.3 携帯端末搭載センサの出力データ

■測位センサの出力データ

測位センサから取得できるデータをTable2.2に示す.

Table2.2 The Output Data from the Positioning Sensor

property mean unit sample data

timestamp date 2010/11/14 16:06:23.550

latitude latitude [°] 35.677088

longitude longitude [°] 139.396037

altitude altitude [m] 90.251800

verticalAccuracy accuracy of vertical direction [m] 23.164149 horizonalAccuracy accuracy of horizonal direction [m] 17.068495

speed speed [m/s] 1.903444

前述の通り,測位センサには,GPS測位,Wi-Fi測位,基地局測位の三種類があり,指定した 精度に応じてiPhoneが自動的に測位方法を選択し,位置情報のデータを取得している.得られ るデー タは,時刻,緯度[度],経度[度],高度[m],高度の精度 [m],水平精度[m],速度[m/s]

である.時刻は年月日時分秒(ミリ秒は小数点第三位まで)で表示される.水平精度とは,実際 に取得された位置情報を中心として,そこから半径何[m]の円の中にデバイスが実際に存在して いるかどうかを表している.高度の精度・水平精度で負の数が取得される場合は,その取得され たデータが無効であることを表している.速度は,現在向いている方向のデバイスの瞬間の速度 を表している.

■地磁気センサの出力データ

地磁気センサから取得できるデータをTable2.3に示す.

Table2.3 The Output Data from the Magnetic Sensor

property mean unit sample data

timestamp date 2010/6/2 17:12:46.380

X X-axis magnetism [μT] 18.625478

Y Y-axis magnetism [μT] -14.375184

Z Z-axis magnetism [μT] -34.4375209

trueHeading true north [°] 227.934634

magneticHeading magnetic north [°] 235.892004

headingAccuracy accuracy of magnetic north [°] 10.000000

(20)

iPhoneに搭載されている地磁気センサは三軸地磁気センサを用いており,時刻,X軸・Y軸・

Z軸方向の磁気量[μT],真北[度],磁北[度],精度[度]を取得することができ,時刻は年月日時 分秒(ミリ秒は小数点第三位まで)で表示される.

本研究では,この三軸地磁気センサにおいても,三軸加速度センサと同様に,三軸の磁力を合 成することによって,その場の全磁気量の値を測定することとした.三軸地磁気センサで取得し

たTable2.3におけるX,Y,Z軸の磁力データを合成し,1つのデータに変換した(以降,本論

文では「三軸合成磁気量」と定義する).三軸合成磁気量をF とすると,三軸合成磁気量F は式

(2.2)によって求められる.

F =√

(X2+Y2+Z2) (2.2)

これにより,データ取得端末の向きが異なっても,地磁気センサの変動値を他と比べることが できるようになった.

また,iPhoneでは,三軸の磁気量を元にして磁北を算出し,算出された磁北と観測地点の磁気

偏角により真北を算出している.精度は,得られる磁北と実際の磁北からの最大偏差を表してお り,この精度が負の値を示す場合は,強い磁場の影響をデバイスが受けた場合などで,データが 無効であることを示している.

磁北とは,方位磁針のN極が指す方向であり,地球上の磁力は磁北に向かっている.現在の磁 北の極点はカナダの北(北緯78度,西経98度)のあたりに存在し,この磁北点は年を経る毎に 徐々にずれている.真北とは,北極点,すなわち地球の自転軸の北端(北緯90度地点)を指す方 位であり,北極星のある方位である.この真北と磁北にはズレがあり,そのズレを磁気偏角とい う.磁気偏角は日本では3〜9度の偏角があり,アメリカでは地域により30〜40度の偏角がある ところもある.

また,地磁気に関して,赤道付近での地磁気の大きさは約30〜35μT,極域では約55〜60μ Tとされており,日本国内だと,沖縄では約44μTなのに対して,北海道では約50μTとされ ている.本研究の実験場である東京付近の平均磁場は約45μTと観測されている[17].

(21)

2.4 人物移動状態の識別

2.4 人物移動状態の識別

本節では,本研究で検討する人物移動状態の識別における要素について解説する.また,本研 究の2010年度までの研究内容と,201112年度の検討項目について述べる.

2.4.1 識別における要素

本項では,センサ情報を用いた人物移動状態の識別における各要素について述べる.

まず,本研究では,人物移動状態を識別するにあたって,以下の要素が重要であると考える.

■識別において重要な要素

識別対象区間の決定

特徴量の抽出

識別アルゴリズムの考案

それぞれの要素についての意味は以下に解説する通りである.

■識別対象区間の決定

識別対象区間の決定は,各移動状態のどこを識別対象とするのかを定めることである.

移動状態の識別においては,移動状態の特徴を得るためのデータ数と精度の関係を知ることが 重要である.移動状態の識別を携帯端末のアプリケーションで行うことを考えると,識別対象区 間は移動状態によらず一定でなくてはならない.つまり,最低何個集まれば全ての移動状態の特 徴が得られるかを検討し求めなくてはならない.そして,どの程度のデータ数でどの程度の精度 を発揮できるのかを精査し,識別にかかる時間設定との兼ね合いを検討する必要がある.

■特徴量の抽出

特徴量とは,対象(例えば,本研究では徒歩,電車,バス,自動車といった移動状態)の特徴を 数値化したものである.そして,特徴量の抽出とは,入力されたデータから識別に有効な特徴量 を取り出す処理のことである.

センサ情報を用いた人物移動状態の識別では,入力されたセンサデータから抽出した特徴量を もとに識別処理を行う.特徴量の抽出で重要なことは,複数の特徴量の組み合わせから,各移動 状態の特徴を算出する有効な特徴量を見つけることである.

具体的に有効な特徴量とは,Figure2.7のように,特徴空間で各クラスが分離でき,重なりが少 ない特徴量のことである.逆にFigure2.8のような,各クラスが分離できず,重なりがある特徴 量は識別に有効でないと言える.

■識別手法の考案

識別手法は,入力されたセンサデータから出力された特徴量について評価を行い,どの移動状態

(22)

Figure2.7 Examples of the distribution of good features for identification

Figure2.8 Examples of the distribution of bad features for identification

(23)

2.4 人物移動状態の識別

に属するかを判定する手法である.識別器の最後に位置し,移動状態の識別結果を出力する.特 徴空間での各クラスの分布の様子を踏まえ,識別手法を決める必要がある.

以上,三種類の重要な要素を紹介したが,特に特徴量の抽出が重要であると考える.特徴量の 抽出が適切でなければ,識別器の設計にいかに力を注いでも,高精度の識別は実現できない.特 徴量の抽出は認識性能を左右する極めて重要な処理である.

そのため,本研究では,ユーザの移動状態の識別手法を考案するため,携帯端末に搭載されて いる地磁気センサ,加速度センサ,測位センサから取得できる,徒歩,電車,バス,自動車といっ た移動状態におけるセンサデータの性質や特徴分布空間の様子についての検討と評価を行う.

2.4.2 本研究で取り扱う特徴量

本項では,本研究で検討する特徴量について述べる.

本研究における特徴量の抽出方法は,各センサから取得できる三軸合成加速度や三軸合成磁気 量などのセンサデータを一定時間のウィンドウに分割し,ウィンドウごとに特徴量を求めるもの である.2009年度の三軸合成加速度を用いた研究[4]では,ウィンドウサイズを256サンプルに 設定して特徴量を求める方法と,256サンプルのウィンドウを128サンプルずつスライドさせる ことで,データの重複を行い,特徴量を求める方法を行った(以降,本論文ではウィンドウスライ ド方式と定義する).

Figure2.9 Window Slide Method

(24)

Figure2.9にウィンドウスライド方式の分割方法について示す.ウィンドウスライド方式の利 点は,特徴量データを増やしたい場合,本来ならばウィンドウサイズを狭めて取得するのが,ウィ ンドウを狭めずに,多くの特徴量が得られることである.音声認識では,データ取得の際にデー タを重複させた方が,特徴抽出がしやすいという結果が出ていることから,本研究でも用いた.

そして,本研究では,地磁気センサから取得された磁気データから抽出する特徴量には平均値 と標準偏差値,加速度センサから取得された加速度データから抽出する特徴量には平均値と標準 偏差値,そしてパワースペクトルの最大値を用いた.これらの特徴量は,センサデータを用いた 移動状態識別の先行研究[10][11][12]にも使用されているため,本研究で取り扱う磁気データや加 速度データにも有効ではないかと考えて採用した.

■平均値

平均値x¯は式(2.3)より求められる.

¯ x= 1

n

n

i=1

xi (2.3)

■標準偏差値

標準偏差値σは式(2.4)より求められる.

σ = vu ut1

n

n

i=1

(xi−x)¯ 2 (2.4)

■パワースペクトル

本研究で取り扱うパワースペクトルは,三軸合成加速度にFFT(Fast Fourier Transform:高 速フーリエ変換)を行い,周波数成分ごとのパワーを求め,横軸を周波数としてグラフ化したも のである.三軸合成加速度の時間信号x(t)のフーリエスペクトルをX(f)とすると,パワースペ クトルは式(2.5)より求められる.

powerSpectrum=|X(f)|2 =|X(f)| ∗ |X(f)| (2.5)

(25)

3

磁気データ調査

本章では,各移動状態(徒歩,電車,バス,自動車)において地磁気センサから取得できる磁気 データについての評価を行う.

3.1 磁気データ調査実験

本実験では,徒歩,電車,バス,自動車においてデータ取得を行い,それぞれの磁気データの三 軸合成磁気量や,その平均値や標準偏差値といった特徴量について比較を試みた.

実験諸元

実験諸元をTable3.1に示す.

Table3.1 Specifications of the experiment

walk train bus car

date 2012/06/04 2012/05/29 2012/11/06 2012/10/15

time 11:26:39 12:22:33 16:04:37 12:02:25

place neighborhood Sobu Line(Mitaka〜Nakano) Hino〜Tachikawa

holding pocket of the right leg

number of data 12000

device iPhone 4S

(26)

実験結果と考察

Figure3.1 3-axis Magnetism

徒歩,電車,バス,自動車において観測される三軸合成磁気量の推移を比較した結果をFigure3.1 に示す.グラフの横軸は時間[10ms],縦軸は三軸合成磁気量[μT]である.

調査の結果,徒歩の磁気量は40〜50μTの範囲で推移していることが確認できた.気象庁の 地磁気観測所が公開している観測結果によると,東京近辺の平常な地磁気の値は約45μTとさ れているため,この徒歩における磁気量は地磁気そのものの値であると言える.一方,電車内の 磁気量は,徒歩とは異なり,通常では生じ得ない100μT以上の値が多く見られ,一定の値に収 まらず大きく変動しながら推移していた.また,自動車とバスは似通った値での推移が確認され た.電車ほどに磁気量は乱れていないものの,自動車とバスも徒歩とは異なる値で推移している ことが分かる.

次に,徒歩,電車,バス,自動車における三軸合成磁気量の10秒(=1000データ)毎の平均値 と標準偏差値の散布図を取り,比較を行った結果をFigure3.2に示す.グラフの横軸は三軸合成 磁気量の平均値[μT],縦軸は三軸合成磁気量の標準偏差値である.

(27)

3.1 磁気データ調査実験

Figure3.2 Scatter Plot of Average and Standard Deviation

比較の結果,電車の磁気データを見ると,三軸合成磁気量の平均値と標準偏差値の両方が非常 に大きい範囲に分布しており,徒歩,バス,自動車とは明確に区別されていることが確認できる.

また,電車と同様に,バスと自動車における平均値も地磁気の値とは異なるため,ここでは徒歩 も電車,バス,自動車とは区別されていることが確認できる.しかし.バスと自動車に関しては,

両方ともに分布が重なってしまっていることが分かる.

以上の結果から,電車とその他の移動状態は,電車内では磁気量が乱れるという特性から,時々 の三軸合成磁気量の平均や標準偏差の値を用いることによる識別の可能性が期待できる.

そこで,電車内において磁気量の乱れがいかなる状況でも同様に見られるかを調査する必要性 と,バスと自動車において取得できる磁気データに特徴の差異がないかを詳細に調査する必要性 があると考えた.

電車における磁気データ調査実験の結果を3.2節,バスと自動車における磁気データ調査実験 の結果を3.3節で示す.

(28)

3.2 電車における磁気データ調査実験

本節では,電車において取得される磁気データについての詳細な調査を行った.

3.2.1 再現性調査実験

本実験では,電車において確認される磁気量の乱れに再現性があるのかを調査するため,東西 線の中野〜三鷹間で,データ取得時に用いた車両や座席の位置,端末の方向などの状況を再現し て二度のデータ取得を行い,電車内において観測される三軸合成磁気量の比較を試みた.

実験諸元

実験諸元を表3.2に示す.

Table3.2 Specifications of the experiment train(first) train(second)

date 2010/09/04

time 17:14:58 17:50:04

place Touzai Line (Nakano〜Mitaka)

holding hand

number of data 765

device iPhone 3GS

(29)

3.2 電車における磁気データ調査実験

実験結果と考察

Figure3.3 Reproducibility of the Magnetism in the Train

同様の環境において電車の1回目と2回目において観測される三軸合成磁気量の平均値の推移 を比較した結果をFigure3.1に示す.グラフの横軸は時間[s],縦軸は三軸合成磁気量の1秒毎

(=100データ)の平均値[μT]である.

結果として,同じ状況を再現してデータ取得を行っても,一度目と二度目で観測された磁気量 の乱れは完全に異なっており,電車内における磁気量の乱れに再現性がないことが見受けられた.

これは,電車の磁界は多数の原因から生じており,磁界の周波数や磁束密度は,測定位置や測定 時間の他,車載機器の位置や運転状況(力行,だ行,制動などの走行モード)により,時間的局所 的に異なるからである.

3.2.2項において,この原因について詳細な調査を行った結果を示す.

(30)

3.2.2 電車内磁界のメカニズム [18]

ここでは,電車内磁界のメカニズムに関して,先行研究[18]を調査した結果をまとめる.

電気鉄道は,架線から電流を取り,車内の電気機器に電力を供給し,レールに帰線電流として帰 すという電流の流れにより磁界を放射している.従って,電車の磁界は大きく二つに分類される.

■電車の磁界

架線ー車両ーレールを流れる電流ループからの磁界

車載機器や配線を流れる電流からの磁界

そして,上記の二種類の磁界は,以下の通り,さらに細かく分類される(Figure3.4,Figure3.5 参照).

■磁界の分類

き電方式の違い(交流き電 or 直流き電)

駆動制御方式の違い(インバータ制御 or チョッパ制御)

車載機器の特徴(静止型インバータ,リアクトルなど)

Figure3.4 The magnetic field from the rail and overhead wires

(31)

3.2 電車における磁気データ調査実験

Figure3.5 The magnetic field from the train

また,これらの磁界には,基本周波数の磁界以外に高調波電流による磁界も重畳されるため,さ らに複雑な磁界分布になる.こうした鉄道からの複雑な磁界は,測定位置や測定時間によって周 波数や磁束密度が大きく異なり,Figure3.3のような特徴がある.

Figure3.6[18]は,磁界測定器による車内(インバータ上,モータ上,リアクトル上,座席上)の

磁界測定結果解析例である.この例からも,車内における磁界は場所や時間により大きく異なる ことが裏付けられた.

(32)

Table3.3 Characteristic of the magnetic field from the railway[18]

magnetic field strength 10nT1mT

frequency range 0〜several thousands[Hz](except the magnetic field from the separation line

distribution characteris- tic

interior depends on the position of the vehicle equipment and the driv- ing situation

exterior depends on the position of the substation, the train, and the driving situation

driving situation depends on driving mode(power running, coasting, braking)

reproducibility not much

Figure3.6 Analysis Sample of Measurements of the Magnetic Field in the Train

本節において説明した電車内磁界におけるメカニズムをまとめると以下の通りである.

電車の磁界は多数の原因から生じている.

磁界の周波数や磁束密度は,測定位置や測定時間によって異なる.

磁界は走行モード(力行,だ行,制動)により異なる.

(33)

3.3 バスと自動車における磁気データ調査実験

3.3 バスと自動車における磁気データ調査実験

本節では,バスと自動車において取得される磁気データについての詳細な調査を行った.

3.3.1 車内磁気データ調査実験

本実験では,バスと自動車において確認される磁気量の乱れが,どのような状況で生じるのか を把握するため,バスと自動車で取得した磁気データについて詳細な調査を行った.

実験諸元

実験諸元をTable3.4に示す.

Table3.4 Specifications of the experiment

bus car

date 2012/10/14 2012/10/15 time 14:19:06 12:04:32 place Hino〜Hachioji

holding hand

number of data 2000

device iPhone 4S

実験結果と考察

バスと自動車の走行中において磁気量が乱れるケースを調査した結果,以下の状況において車 内の磁気量が大きく変動することが判明した.

■車内の磁気量が乱れる状況

鉄橋,立体交差上,立体交差下などの通過時

右左折などによる,車体が向いている方角の変更時

自動車が鉄橋,立体交差上,立体交差下を通過した際の三軸合成磁気量の推移をFigure3.7,バ スと自動車が交差点を右折した際の三軸合成磁気量の推移をFigure3.8に示す.グラフの横軸は 時間[10ms],縦軸は三軸合成磁気量[μT]である.

(34)

Figure3.7 Histogram of 3-axis Magnetism (East)

Figure3.8 Histogram of 3-axis Magnetism (East)

(35)

3.3 バスと自動車における磁気データ調査実験

まず,バスと自動車の車内において観測される磁気量が地磁気の値と異なるのは,車体や車載 電子機器などが形成する磁界の影響によるものと考えられる.

そのため,鉄橋,立体交差上,立体交差下などを通過した際に車内の磁気量が乱れるのは,車 体や車載電子機器などが形成する磁界が,これらの構造物を構成している鉄筋などによって生じ ている磁界から影響を受けるのが原因であると考えられる.

そして,右左折によって車内の磁気量が変化するのは,車体が向いている方角が変わることに より,車体や車載電子機器などが形成する磁界の向きも変わるのが原因であると考えられる.

以上の結果より,各方角における車内の磁気量が,バスと自動車によって差異があるのかを確 認するため,バスと自動車の各方角における磁気データの調査を行う必要性があると考えた.

3.3.2 各方角における車内磁気データ調査実験

本実験では,車体が向いている方角によって変動する車内の磁気量が,バスと自動車によって 差異があるのかを確認するため,暫定的に東西南北を設定してデータ取得を行い,各方角におけ る車内磁気データの調査を試みた.

実験諸元

実験諸元をTable3.5に示す.

Table3.5 Specifications of the experiment

bus car

date 2012/11/06

time 14:17:35 14:29:53 place Hino〜Tachikawa

holding hand

number of data 12000

device iPhone 4S

(36)

実験結果と考察

Figure3.9 Average of 3-axis Magnetism for Each Direction

各方角における三軸合成磁気量の平均値を比較したところ,バスと自動車で取得できる磁気量 に差異があることが判明した.その結果をFigure3.9に示す.

この結果を受けて,今度は直進中のバスと自動車が向いている各方角における三軸合成磁気量 の分布の比較を行った.東方向,南方向,西方向,北方向における結果を,それぞれFigure3.10, Figure3.11,Figure3.12,Figure3.13 に示す.グラフの横軸は三軸合成磁気量[μT],縦軸は各 値におけるデータ数である.

東方向(Figure3.10)の結果を見ると,一部の値は重なってしまっているものの,バスの磁気量

は20μTより小さい値に多く分布しており,これらの値は自動車ではどの方角においても見ら れない特徴である.南方向(Figure3.11)でも一部の値に重なりが見られるが,バスの磁気量の多 くは20μT台,自動車の磁気量はすべてが30μT台に分布しており,西方向(Figure3.12)に 至っては分布が重なることなく明確に区別されている.しかし,北方向(Figure3.13)においては 分布の大半が重なってしまっており,区別することが困難である.

以上の結果から,北方向以外については磁気量の分布がある程度異なることが確認された.携 帯端末に搭載されているGPSからユーザ(端末)の移動方向を取得できるため,地磁気センサと GPSを複合して利用し,車体が向かっている方角と車内の磁気量を関連付けることで,バスと自 動車の識別精度を向上できる可能性が考えられる.

(37)

3.3 バスと自動車における磁気データ調査実験

Figure3.10 Histogram of 3-axis Magnetism (East)

Figure3.11 Histogram of 3-axis Magnetism (South)

(38)

Figure3.12 Histogram of 3-axis Magnetism (West)

Figure3.13 Histogram of 3-axis Magnetism (North)

(39)

4

加速度データ調査

本章では,各移動状態(徒歩,電車,バス,自動車)において加速度センサから取得できる加速 度データについての評価を行う.

4.1 加速度データ調査実験

本実験では,徒歩,電車,バス,自動車においてデータ取得を行い,それぞれの加速度データの 三軸合成加速度の平均値や標準偏差値といった特徴量について比較を試みた.

実験諸元

実験諸元をTable4.1に示す.

Table4.1 Specifications of the experiment

walk train bus car

date 2012/06/04 2012/05/29 2012/11/06 2012/10/15

time 11:26:39 12:22:33 16:04:37 12:02:25

place neighborhood Sobu Line(Mitaka〜Nakano) Hino〜Tachikawa

holding pocket of the right leg

number of data 12000

device iPhone 4S

(40)

実験結果と考察

Figure4.1 Scatter Plot of Average and Standard Deviation

徒歩,電車,バス,自動車における三軸合成加速度の10秒(=1000データ)毎の平均値と標準 偏差値の散布図を取り,比較を行った結果をFigure4.1に示す.グラフの横軸は三軸合成加速度 の平均値[G],縦軸は三軸合成加速度の標準偏差値である.この際,徒歩,電車およびバスにおい ては歩行状態,着席・起立状態によって得られる加速度データが異なるため,徒歩は歩行・走行・

停止,電車およびバスは着席・起立と場合分けして検討を行った.

Figure4.1を見ると,三軸合成加速度の標準偏差値を用いることで,徒歩(歩行・走行・停止)

は他移動状態と明確に区別できることが確認できる.一方で,電車・バス・自動車に関しては値 が重なってしまっており,単純な統計量では区別することが困難であることが分かる.

しかし,電車に関しては,前章で述べたように三軸合成磁気量の平均や標準偏差の値を用いる ことで高精度の識別が可能であると考えられるので,ここでは加速度データを用いたバスと自動 車の識別を目指す.また,バスにおいては着席状態と起立状態によって得られる加速度データが 異なると考えられるため,両方の場合において検討を行う.

バスと自動車における加速度データ調査実験の結果を4.2節に示す.

(41)

4.2 バスと自動車における加速度データ調査実験

4.2 バスと自動車における加速度データ調査実験

本実験では,バスと自動車において取得される加速度データの三軸合成加速度,鉛直方向加速 度,進行方向加速度,側面方向加速度のパワースペクトルといった特徴量について比較を試みた.

実験諸元

実験諸元をTable4.2に示す.

Table4.2 Specifications of the experiment

bus car

date 2012/12/02

time 15:06:22 15:35:36 place Hino〜Tachikawa holding pocket of the right leg number of data 1024

device iPhone 4S

実験結果と考察

まず,バスと自動車の進行中と停止中における約10秒間(=1024データ)の三軸合成加速度 に対して,それぞれ高速フーリエ変換を行い算出した周波数スペクトルの比較を試みた.ここで 進行中とは運転状況が加速,直進,減速状態にあることを指し,停止中とは運転状況が信号待ち などにおける一時的な停止状態にあることを指す.進行中と停止中における周波数スペクトルを Figure4.2,Figure4.3に示す.グラフの横軸は周波数[Hz],縦軸は各周波数におけるパワースペ クトルである.

進行中におけるパワースペクトルの最大値を比較すると,バスは着席状態と起立状態に関わら ず10以上を示しているが,自動車は10に満たないことが確認できる.一方,停止中においては,

全体的にパワースペクトルの大きさが低下してしまうものの,自動車よりはバスの方が大きいこ とが確認できる.これは,駆動源や車体の大きさの違いにより,車体の揺れが異なるからである と考えられる.

(42)

Figure4.2 Spectrum of 3-axis Acceleration (Moving)

Figure4.3 Spectrum of 3-axis Acceleration (Suspension)

(43)

4.2 バスと自動車における加速度データ調査実験

次に,バスと自動車における鉛直方向,進行方向などの加速度成分から重力加速度の分離を行 い,ユーザ加速度を算出した.三軸合成加速度には常に重力による加速度が含まれているが,こ の重力成分は三軸合成加速度にローパスフィルタをかけることで分離することができる.ユーザ 加速度とは,三軸合成加速度から分離した重力加速度を差し引いた値で,ユーザ(端末)の動きに よって生じる加速度である.

まず,ユーザ加速度ベクトルを重力加速度ベクトルが向いている方向に射影することで,鉛直 方向の加速度を算出した.この鉛直方向加速度を用いた場合の,進行中と停止中における周波数 スペクトルをFigure4.4,Figure4.5に示す.グラフの横軸は周波数[Hz],縦軸は各周波数におけ るパワースペクトルである.

進行中におけるパワースペクトルの最大値を比較すると,先程と同様に,バスは着席・起立状 態とも10以上を示しているが,自動車は10に満たないことが確認できる.しかし,停止中にお いては自動車よりも起立状態におけるバスの方がパワースペクトルの最大値が下回っていること が確認できる.これは,停止中における車体の縦揺れは起立状態だとユーザの脚によって振動が 吸収されてしまうからであると考えられる.

Figure4.4 Spectrum of Vertical Acceleration (Moving)

(44)

Figure4.5 Spectrum of Vertical Acceleration (Suspension)

続いて,ユーザ加速度を重力加速度ベクトルが向いている方向に垂直な平面に射影することに より,水平方向加速度ベクトルを算出した.この水平方向加速度ベクトルは進行方向の加速度と 車体ないしユーザの横揺れによる加速度を含んでいるが,進行中においては,データ取得端末が 固定されているという条件下では得られた水平方向加速度ベクトル群を足し合わせれば進行方向 の加速度が支配的になると考えられる(以下,進行方向加速度と呼称する).そのようにして進行 中に得られた進行方向加速度を用いた場合の周波数スペクトルをFigure4.6に示す.また,この 進行方向加速度ベクトルに垂直になるよう個々の水平方向加速度ベクトルを射影することで横揺 れの加速度も算出できる(以下,側面方向加速度と呼称する).進行方向加速度と同時に得られた 側面方向加速度を利用した場合の周波数スペクトルをFigure4.7に示す.グラフの横軸は周波数 [Hz],縦軸は各周波数におけるパワースペクトルである.

(45)

4.2 バスと自動車における加速度データ調査実験

Figure4.6 Spectrum of Acceleration of Traveling Direction

Figure4.7 Spectrum of Acceleration of Lateral Direction

(46)

結果,進行方向加速度におけるパワースペクトルの最大値を比較すると,今度は起立状態のバ スと自動車は10以上を示しているが,着席状態のバスは10に満たないことが確認できる.また,

側面方向加速度におけるパワースペクトルの最大値を比較しても,起立状態のバスと自動車より も着席状態のバスの方が小さい,このことから,着席状態のバスにおいては,鉛直方向における 加速度成分が支配的であることが分かる.これは,データ取得端末を右脚ポケットに装着してい るため,着席していることにより,バスの縦揺れが座席からユーザの身体に吸収されず直積伝わ りやすいためと考えられる.同様に,自動車においては,進行方向や側面方向における加速度成 分が支配的であると推測される.また,起立状態のバスが,進行方向と側面方向において最もパ ワースペクトルが大きくなるのは,ユーザ(データ取得端末)が固定されていないため,バスの加 速や減速に伴って生じる慣性力により,水平方向に大きく揺れやすいからであると考えられる.

以上の結果から,バスと自動車を識別するには,着席状態と起立状態に関わらず,バスと自動 車を区別できる特徴を用いるのが相応しいので,三軸合成加速度や鉛直方向加速度を用いた場合 のパワースペクトルが適切であると考えられる.

(47)

5

提案する識別手法

本章では,3章において調査した磁気データの特徴の結果と,4章において調査した加速度デー タの特徴の結果を踏まえ,各センサデータから得られた平均値,標準偏差値,パワースペクトル の最大値といった特徴量を用いることによる移動状態(徒歩,電車,バス,自動車)の識別手法の 提案を行う.

識別手法

以下に5章で提案する識別手法の概要を示す.また,概要図をFigure5.1に示す.

■磁気量を用いた電車の識別手法

5.1節において,磁気データから得られた三軸合成磁気量の平均値と標準偏差値を用いることに よる電車と他移動状態(徒歩,バス,自動車)の判別についての検討を行う.

■加速度を用いた徒歩の識別手法

5.2節において,加速度データから得られた鉛直方向加速度の平均値と標準偏差値を用いること による徒歩と他移動状態(バス,自動車)の判別についての検討を行う.

■磁気量と進行方向を用いたバスと自動車の識別手法

5.3節において,磁気データから得られた三軸合成磁気量の平均値と,位置データから得られた 進行方向を用いることによるバスと自動車の判別についての検討を行う.

■加速度を用いたバスと自動車の識別手法

5.4節において,加速度データから得られた四種類の加速度のパワースペクトルの最大値を用い ることによるバスと自動車の判別についての検討を行う.

■加速度と速度を用いたバスと自動車の識別手法

5.5節において,加速度データから得られた三軸合成加速度のパワースペクトルの最大値と,位 置データから取得可能な1秒毎の速度[m/s]を用いることによるバスと自動車の判別についての 検討を行う.

(48)

Figure5.1 Schematic View

実験諸元

実験諸元をTable5.1に示す.

Table5.1 Specifications of the experiment

walk train bus car

date 2012/06/04 2012/05/29 2012/12/02

time 11:26:39 12:22:33 15:06:22 15:35:36

place neighborhood Sobu Line(Mitaka〜Nakano) Hino〜Tachikawa

holding pocket of the right leg

number of data 12000

device iPhone 4S

(49)

5.1 磁気量を用いた電車の識別手法

タ,電車に関しては着席・起立状態それぞれにおいて3.2.2項で述べた各走行モード(力行,だ 行,制動)および停止中を含めた12000個のデータ,バスに関しては着席・起立状態それぞれに おいて進行中(加速,直進,減速状態)および停止中を含めた12000個のデータ,自動車に関し ては進行中(加速,直進,減速状態)および停止中を含めた12000個のデータを用いている.

5.1 磁気量を用いた電車の識別手法

本節では,磁気データから得られた三軸合成磁気量の平均値と標準偏差値を用いることによる 電車と他移動状態(徒歩,バス,自動車)の判別についての検討を行う.

徒歩,電車,バス,自動車における三軸合成磁気量の10秒(=1000データ)毎の平均値のヒス トグラムをFigure5.2に示す.グラフの横軸は平均値[μT],縦軸は頻度[%]である.

Figure5.2 Histogram of Average of 3-axis Magnetism

まず,三軸合成磁気量の平均値を用いた識別手法において,電車以外の移動状態(徒歩,バス,

自動車)が明確に区別できる閾値として,55μTという値を設定した.

結果として,Figure5.2を見ると,ここでは電車のデータの約98%が設定した閾値よりも高い 範囲に分布していることが確認できた.そのため,電車と他移動状態(徒歩,バス,自動車)の識 別に用いる特徴量として,三軸合成磁気量の平均値を採用することにより,かなりの高精度で電 車の切り分けを行うことが可能であると言える.

約2%が閾値よりも低い範囲に分布してしまう原因としては,電車が駅のホームに停車してい る平均約30秒弱の最中などに,一時的に三軸合成磁気量の値が下がってしまう場合があるためで

(50)

あると推測されため,この対処法としては,平均値を算出する時間幅を10(=1000データ)

はなく30秒(=3000データ)とすることにより,一時的な磁気量の低下を抑制すればよいと考え

られる.

Figure5.3 Histogram of Standard Deviation of 3-axis Magnetism

徒歩,電車,バス,自動車における三軸合成磁気量の10秒(=1000データ)毎の標準偏差値の ヒストグラムをFigure5.3に示す.グラフの横軸は標準偏差値,縦軸は頻度[]である.

先程と同様に,三軸合成磁気量の標準偏差値を用いた識別手法において,電車以外の移動状態

(徒歩,バス,自動車)が明確に区別できる閾値として,18という値を設定した.

結果として,Figure5.3を見ると,ここでは電車のデータの約50%が設定した閾値よりも高い 範囲に分布していることが確認できた.約半分が閾値よりも低い範囲に分布してしまう原因とし ては,電車内の磁気量は大きく変動しながら推移するが,標準偏差値を算出するのが10秒間とい う短い時間幅の場合,磁気量の変動が小さい箇所も含まれてしまうからである.そのため,この 対処法としては,標準偏差値を算出する時間幅を10秒(=1000データ)よりも長くすることで,

全体的に標準偏差値を高くするなどが考えられるが,今回のデータで実際に30秒(=3000デー タ)で標準偏差値を算出したところ,閾値よりも高い範囲に分布した電車のデータは約80%程で あり,平均値を用いた場合よりも区別することができなかった.

以上の結果から,電車と他移動状態(徒歩,バス,自動車)を判別するには,磁気データから得 られた三軸合成磁気量の10秒間もしくは30秒間における平均値を用いるのが有効であると考え られる.

(51)

5.2 加速度を用いた徒歩の識別手法

5.2 加速度を用いた徒歩の識別手法

本節では,加速度データから得られた鉛直方向加速度の平均値と標準偏差値を用いることによ る徒歩と他移動状態(バス,自動車)の判別についての検討を行う.

ここで,三軸合成加速度ではなく鉛直方向加速度を用いたのは,徒歩の停止中におけるユーザ の無意識な横揺れの影響をなくすためである.

また,電車に関しては,5.1節より磁気データから得られた10秒間もしくは30秒間における三 軸合成磁気量の平均値を用いることで切り分けが可能であると考えられるため,識別対象の移動 状態からは除いている.

徒歩,バス,自動車における鉛直方向加速度の10秒(=1000データ)毎の平均値のヒストグラ

ムをFigure5.2に示す.グラフの横軸は平均値[G],縦軸は頻度[%]である.この際,徒歩,バス

においては歩行状態,着席・起立状態によって得られる加速度データが異なるため,徒歩は歩行・

走行・停止,バスは着席・起立と場合分けして検討を行った.

Figure5.4 Histogram of Average of Vertical Acceleration

まず,鉛直方向加速度の平均値を用いた識別手法において,徒歩(停止)と他移動状態(バス,

自動車)が明確に区別できる閾値として0.004G,徒歩(歩行・走行)と他移動状態(バス,自動 車)が明確に区別できる閾値として0.4Gという二つの値を設定した.

結果として,Figure5.4を見ると,ここでは徒歩(停止)のデータは100%が設定した閾値より も低い範囲に分布しており,徒歩(歩行・走行)のデータは100%が設定した閾値よりも高い範 囲に分布していることが確認できた.そのため,徒歩と他移動状態(バス,自動車)の識別に用

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